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16 名前:深優は泣いた[sage] 投稿日:2011/04/05(火) 01:16:56 ID:tpEbVLGc [2/6] ○菱島へ 俺は決意した。 行く事に決めたのだ。 なんだかんだ言って、このような機会を待っていたのではないか。 先生から話を持ちかけられて以降、心臓が速く鼓動し、 これを悪い動悸かと思ったが、ただ単に心底喜んでいるだけだった。 先生に行く旨を三日ほど経ってから伝え、 後処理、下準備に奔走する事となった。 一周間が過ぎた現在でも、準備の真っ最中で、勤め先にはすでに辞表を出し、 親戚や友達、世話になっている人たちへの挨拶回りも大体済ました。 他、ほぼ毎日、先生の部屋であちらの事を聞いている。 先生は何度も菱島を行き来しているため、 かなり詳しく、期待をかき立てられる。 ただひとつ、ミューの事が心残りだ。 連れて行ってあげたいと思って、先生に七、八回ほど説得を試みたが、 首を縦に振らず、なぜかと聞くとミューのためにならないからと言う。 だが今夜こそ先生をうんと言わせるつもりだ。 俺は先生とは逆で、連れて行ってあげる事こそがためになると思っており、 それはなぜかと言えば、 ミューは引っ込み思案で社交性があまり無く、人見知りが激しい。 そんな事では後々苦労する事になる。 なので、 様々な人と関わり合わねば生活が難しい菱島へ連れていく事によって、 人間的に成長する事が出来る。 うん・・・よし、行くか! 開きっ放しになった道場の門を跨ぎ、修練場を通過し、 二階の先生の部屋へ向かう。 階段を登りきると、佇むミューが目に飛び込んできた。 「お兄ちゃん」 「おやおや、ミューさんじゃないか」 「えっ・・・なんでさん付けぇ?」 「いや、何となく」 「そっかぁ・・。あっ、あのね、私の部屋に来て。 お兄ちゃんに見て貰いたいものがあるの。いやなら大丈夫だからっ」 ミューは指を胸の上で絡ませて、いつものいじらしい姿になる。 小さいころから、ミューが無意識に良くやる癖の一つである。 いいよ、と頷くとミューは嬉しそうにしながら、 俺の手をしっかりと握って歩み出した。 17 名前:深優は泣いた[sage] 投稿日:2011/04/05(火) 01:17:29 ID:tpEbVLGc [3/6] ミューの部屋に行くのは二週間振り、 と言っても俺がずっと断っていただけだが。 ミューが障子襖を引くと、眼前に部屋一面が広がる。 自らで作った小物類を始め、 ぬいぐるみなどがいたるところに並べられている。 趣味である散文書、詩集などが右手の本棚にきっちり収納され、 正面には小さな机と障子窓、 左手には押入れと座布団が3枚積み上げられてある。 「うん、相変わらず綺麗な部屋だ、感心感心」 「ありがとう・・・。ねっねぇ、お兄ちゃんこれ見て!」 ミューはなにやら人型の三頭身くらいの人形を見せた。 「えーと、誰?」 「お兄ちゃんだよっ!」 またかい。 一体何体俺を作るつもりだ。 しかも、妙に特徴を捉えていて、誰が見ても竜史と答えそうだ。 周りを俺がたくさんの俺の分身に囲まれているという異常な状況、怖。 「こわっ、あっ、じゃ、じゃなくてっ、本当に上手だな~でかした!」 「えへへ・・・お兄ちゃんに褒めてもらうと、 また作りたくなっちゃうね・・・ありがとね。 あっそうそう、最近はこのお兄ちゃんを抱っこして眠ってるんだよ!」 まだ、そんなことしてるんだ・・・喜んでいいのやらなんやら・・・。 「そっ、そーなんだっ。あっ、これはミューかな」 「うん!見て見て、お兄ちゃんと手を繋ぐことができるんだよっ!」 そう言うと、ミューらしきぬいぐるみを俺の分身と繋げた。 「面白い仕様だね・・」 「仲良しだって事を表したかったのっ!」 ミューは無邪気な笑顔で二つのぬいぐるみをまとめて抱きしめた。 なんか変な怖さを感じたので、話題を変える事にする。 「あーそういやぁ、ミューは人形で抱き枕やめるって言ってなかったけ」 「ごっ、ごめんなさい・・・寂しくてつい・・・ お兄ちゃんが一緒に寝てくれなくなったから・・・」 「当り前じゃないか、ミューはもう十六だぞ。 こんな年になって一緒に寝てる兄妹はいないよ。 むしろ二、三年前までたまに眠ってあげてた俺が変だったんだ」 ミューは俺が俺自身を卑下した事に気付いて、慌てて否定する。 「お兄ちゃんは悪くないよっ、私が世間知らずだっただけ。 嫌がってる事知らないで、わがまま言ってごめんね・・・」 俺も即座に否定返し。 「違う違う、全然嫌なんかじゃないよ、これはミューとの良い思い出」 「本当?ありがとう・・。 じゃぁ・・・・良い思い出はいっぱいあった方が良いよね? じゃぁ、今日一緒に・・・お眠り会しようよ・・」 「ええっ!結局それ?」 「最近寒くなってきたし、お兄ちゃん、冷え症でしょう? 私、寒さに強い方だから、体温が高い方なの。 だから・・・わ、私を・・・湯たんぽ代わりにしたらきっと・・・温かいよ。 それに、お兄ちゃんが近くにいると、 よく分らないけど体が凄く火照っちゃて、 もっと温かくなるの・・・ど・・・どうかなっ・・・!」 ミューはうっとりしたような表情とうるんだ瞳で答えを待っている。 ミューは服、装飾品、玩具、お菓子など、 年頃の娘が欲しがる物をねだったりする事は、 物心付いた以降はほとんど無かったように記憶している。 物を贈られる以外は自分でなんでも作っていたから、 こんなにも縫物が上手。 とにかく、わがままを言う事自体ほとんど無い、全く手のかからなかった子。 だから、これくらいのささやかなお願いは聞き入れてあげたい、さて・・・。 18 名前:深優は泣いた[sage] 投稿日:2011/04/05(火) 01:17:57 ID:tpEbVLGc [4/6] 悩んでいると、先生の部屋から呼ぶ声が聴こえた。 ミューに失礼だが、渡りに船だと思って、 また後でな、と言うとすぐに部屋を出た。 お兄ちゃんは出て行っちゃいました、残念です。 一日に一回は会っておしゃべりをしないと、夜明けを迎える気になりません。 そう言えばお兄ちゃん、出ていく時、助かったって顔をしていませんでした? 嫌われたり、飽きられちゃったりしているのかなぁ・・・。 気のせいならいいですが、ここ数年お兄ちゃんとの距離を感じます。 一緒にお風呂もお出かけも、 私の部屋でお泊まりしてくれる事も無くなりました。 私がもう少し小さかった頃までは、 一緒に遊んで、勉強して、眠って、働いてと、 永遠に離れる事なんてあり得ない、と信じていました。 どこに行くときもお兄ちゃんの後ろに付いて行って、 事あるごとに抱きついて、抱っことかおんぶとかして貰いました。 要するにお兄ちゃんと体を密着させて、肌をすりすりするのが好きなんです。 ああ、お兄ちゃんはここにいるんだ、こんなにも近くで優しく守ってくれるんだ、という究極の安心感がそこにあるからです。 ただでさえ最近、二人の都合で顔を合わす機会が減ってきてるというのに、 お兄ちゃんだけ菱島に行ったら、かなりの溝ができてしまいます。 菱島の件ですが、ここ一週間、 先生に連れて行って下さるよう頼んでいますが、 一向にお認めになりません。 きっと私のためをお思いになさって、頑なに拒んでおられるのでしょう。 でも私は、どうしてもお兄ちゃんと離れたくないのです。 あちらで何が起きようとも、 完全な自己責任でもって受け入れる覚悟はできております。 なにを大それたことを、とお思いになるかもしれません。 ですが本気です。 こんなにもわがままで欲深い私をどうかお許しください。 もし行けないとなると、それは胸が張り裂けそうなほど辛い事で、 考えるだけで涙がでそうになります。 お兄ちゃんは私の全てであって、 元気をもらう事によって私は生きているのです。 なんだか、虚しくなってきました。 お兄ちゃんに会って褒めてもらったばかりだというのに・・・。 すぐこんな事を考えるから気持ちが沈むんです、悪い癖です。 負の感情を振り払うように、やるべき家事はないか考え、 庭に洗濯物が干しっぱなしになっている事を思い出しました。 さっそく取り掛かろうと、部屋の襖に手をかけました。 襖の取っ手に手を掛けたところで、 反対側からの力によって襖が力いっぱい引かれました。 開かれた空間には、お兄ちゃんが立っていました。 とても興奮した様子で 「喜べ、連れてってやるって!さぁ、ミューも先生の部屋に来い!」 驚きのあまり、言葉がでませんでした。 急いで向かうと、入ってすぐに先生が声をお掛けになりました。 「深優の気持ちを理解できないで済まなかった、わしは真に頑固じゃったの」 と申し訳なさそうにされました。 先生は私の事を思ってこそ、この決断をなさって下さったのに、 無理やり私が反故にしてしまったようで、 心苦しくも思いましたが、負い目は喜びの前に飲まれてしまいました。 みっとも無いですが、うれし涙を流しながら先生に何度も感謝を表しました。 ですが、一緒に行けるという事は、 同時に私の出自がお兄ちゃんに知られるという事でもありました。 先生はこの場で例の秘密をお告げになりました。 あんなにも嬉しそうに私の背中をさすりながら喜んでいたお兄ちゃんが、 今までに見た事も無いくらい動揺して、 本当かどうかの確認を何回も繰り返していました。 私は何も言えないまま、終始やり取りを聞いているだけでした。 19 名前:深優は泣いた[sage] 投稿日:2011/04/05(火) 01:18:44 ID:tpEbVLGc [5/6] そのうち、外も大分暗くなっていたので、先生に促され、お開きなりました。 「ではまた明日の、竜史。 深優、今日でできる準備は全てやってしまうように」 襖の境目越しからそう言うと、先生は部屋の襖を閉じました。 お兄ちゃんは何か言いたげな表情でしたが 「じゃ、遅いんで俺は帰る。ミュー、お休みなさい。準備しっかりやっとくんだぞ」 とだけ言って、階段を降りはじめました。 私も何も言わず、お兄ちゃんを見送るため後ろに付いて行きました。 どういった事を言えばいいのか、見当がつかなかったからです。 きっと、お兄ちゃんも同じ気持ちになっていたのではないでしょうか。 結局、普段の見送りと同じような形となり、 あの事が誰の口からも聞かれる事はありませんでした。 199 :深優は泣いた ◆J9zPo6rgI.:2011/04/23(土) 02:08:35 ID:E6QwOv/U 今日は記念すべき出発の日だ。 日がやっと顔を出したくらいの早い時間帯に、 修練場に集合しているミューと俺。 他の三人はまだ来ていないようで、先生は「渡島準備じゃ」とか言って、 俺が来たのを確認するとどっかへ出かけて行った。 ミューは隣でわくわくしながら熱く菱島の事について語っていた。 正直かなり眠く、頭が回らないので、あまり話を聞く気がしないが、 ミューの上機嫌さを見ていると、軽く受け流してしまうのも悪いなと思い、 ある程度質問や受け答えをしてやる事にした。 「あのね、お兄ちゃんっ!菱島って正式名称じゃないんだよ。 菱形をした島だからそう呼んでるだけだって。 本当は『凱苑』って言うの」 「へぇ~」 知ってるけど。 「銀髪の人たちが先住民さんとして住んでいたのだけど、 百五十年前に大飢饉が発生したの、これは神様のお怒りに触れたからだって。 それで豊かさを求めて、東にある大きな本島、 黒髪の人たちが住むここ陽ノ国列島に多くの先住民さんが移り住んできたの。 それで一時期、菱島は人口不足になっちゃたんだけど、 軍事的な迫害から逃れてきた 紫髪赤眼のヴェイルハマ人さんが定住するようになると、 菱島は復興し発展しはじめ、たくさんの民族が住むようになったの」 「へぇ~」 知ってるけど。 「もともと菱島は陽ノ国の文化圏だったから、 便宜のため、みんな陽ノ国語と自国語を喋るようにしてるんだよ。 でもね、いろんな民族街があって、それぞれで文化を大切にしてるよ。 ちなみに、先住民さんより、ヴェイルハマ人さんの方が力が大きいよ。 すごく商売が上手で、頭がいい人たちなんだって。 だから、菱島の一番偉い人はヴェイルハマ人さんなんだよ」 「へぇ~」 知ってるけど。 「あ・・・もしかしてうるさかったかなぁ・・・?」 どうやら、つまらなそうにしてるのがバレたようだ。 いや、厳密にいえば眠いからなのだが。 取りあえず謝る。 「ごめん、ちょっと眠たくてさぁ。 今日の事いろいろ考えていて全然昨日の夜寝てないんだよ」 ミューはうんうんと頷ながら賛同した。 「お兄ちゃんも?私だけじゃなかったんだぁ~。 生まれ育った故郷を離れるってきっと辛い事だよね。 それに私、この町出た事すらほとんど無いのに、 遠い遠い見知らぬ町へ行くんだもの・・・不安でしょうがないよ・・・」 「一人で行くわけじゃないだろ。 先生も俺も向川さんも、紅子も銀次郎もいるじゃない。 なーんにも怖い事なんかありゃしないよ」 「うん・・・みんながいるものね、ありがとうお兄ちゃん。 あっ、励ましてくれたお礼にって言うのかな・・・嫌じゃなかったら、 私の膝を枕に使って・・・下さい・・・ダメ・・・?」 ミューはちょっと照れくさそうにひざまずきをする。 柔らかそうなふともも・・・じゃ遠慮して・・・って、じゃないじゃない。 妹の膝枕で気持ちよさそうに寝ている姿なんて誰かに見られたら 恥ずかしくてしょうがないし、先生がいつ帰ってくるかも分らん。 「寝心地良さそうだけど・・・一度寝たら、起きれないかも。 遠慮しとくわ、また今度お願い」 「ううぅ・・・残念、計画失敗・・・」 「なにがだよ・・・あ、そーいやあ、先生っていつ頃戻ってくんだろうな」 「あのね、先生なら当分帰ってこないよ・・・お隣(小琉ノ町)に行くって」 「え~そうなのか・・・つーかなんでわざわざあっちまで行くんだよ、 港ならすぐそこだろ」 200 :深優は泣いた ◆J9zPo6rgI.:2011/04/23(土) 02:09:47 ID:E6QwOv/U 「転送師さんを迎えに行ってるんだよ」 な、な、なんとナント何と、ミューさん今なんとおっしゃいましたか? 船で行くとばかり思っていたが、転送術とは。 「おいおい本当かよ!最近失敗事故があったじゃん。 なんでも、頭の上半分だけどっかに転送して、 その人死んじゃったらしいじゃん!」 「でも失敗する方が珍しいから、大丈夫じゃないかなぁ・・・。 お兄ちゃん、不安なの?」 「ああ・・・不安で落ち着かねぇ、体が半分になるかも知れないんだぞ。 ちくしょう、逃げる事は今更できんよなぁ。 あっそうだ、目でもつぶって他の事考えればいい! そうすりゃあ、少しは気持ちを沈められるよな!?よしっ、早速・・・」 そう自分に言い聞かせて、人べんが付く漢字を考える事にした。 信、仕、任、伐、儚、仇・・傾、偕、使、依・・・仔・・・便・・偲・・・・ 伺・・・・・係・・・・・・・・・むにゃむにゃ・・・もうむりぽ・・・。 「お兄ちゃんっ、お兄ちゃんっ・・・・もしかして眠てる?」 すやすや寝てしまっています、これぞ早技です、びっくりです。 お兄ちゃんは壁にもたれ掛ったまま静かな寝息を立てています。 ものすごく可愛い寝顔で、 よだれが垂れてきそうなくらい大きく口を開けています。 いつ見ても愛おしく感じます。 このまま眠ってしまっては、首を痛めるかも知れないので、 お兄ちゃんのそばまで寄って正座をして、 ゆっくりと慎重にお兄ちゃんの頭を私の膝の方に倒して、膝枕の形にします。 ぐっすり眠ってしまっているので、今なら口付けをしても、 ほっぺをぷにぷにつついても、びっくりされる事はなさそう。 はぁ・・・お兄ちゃんを見ていると心がなごみます。 優しくて、強くて、かっこよくて、頭がよくて、 なにより私を愛してくれている。 そんな人が私の膝で眠っているのに、 どきどきしないわけ無いじゃありませんか。 …あっ、お兄ちゃんよだれが出てる、拭かなきゃっ。 拭き物が手元に有りませんでしたので、ためらわず中指でそっとすくいます。 わっ・・・お兄ちゃんのよだれ・・・どうしよっかなっ。 服で拭きとるのは行儀が悪いし・・・うん・・・仕方ないよねっ。 お兄ちゃんが眠りの底にいることを再確認して、 中指に付いたよだれを口の中でじっくり味わい・・・いやっ、 私ったらなんてふしだらな行為を。 あんっ、ごめんなさい、でもこれは仕方のないのです。 難しく言えば、必然的なる本能的衝動なのです。 はぁん・・・このよだれ、お兄ちゃんの味、 ねっとりとほのかに温かく濃密な蜜の味。 きっと、激しい接吻だともっと凄いんでしょうね、 頭がくらくらするようです、あっ、これは小説からの知識です。 お兄ちゃんにしてみれば、 兄妹の関係にある私が兄の近くでイケナイ事をして、 性的な事を考えているなんて夢にも思っていないのでしょうね。 なんだか騙してるみたいで心苦しくもありますが、 なんだかちょっと興奮します、背徳感のある行為だからでしょうか・・・。 複雑な気分になりながら、お兄ちゃんの頭を撫でていると、 艶やかな黒が窓の外に見えたような気がしました。 私が目のまたたきをする間もないほどの時間で、 正面入り口から、綺麗な黒髪をなびかせてあの人が突進してきました。 「あわわわわっ、おっ遅れて申し訳ない!一生の不覚! 罰として同行を認めないというのはご勘弁願いたいっ! 次回からはこのような規律を乱す行為を再発させぬよう努めるゆえっ! であるからっ・・・うんたらかんたら・・・かくかくしかじか・・・」 並みの人間を超越した身のこなしで、 眼前に現れたのは紅子お姉ちゃんでした。 かなり慌てながら、事情を力説しています。 とりあえず、お兄ちゃんと私しか集まっていない事を説明して、 お姉ちゃんに落ち着いてもらいます。 「あっ、あのねっ、お姉ちゃん、ちょっと聞いて・・・」 私の声が小さい事、 お姉ちゃんが詫びの姿勢になりながら訴えている事とが相まって、 なかなか私の存在に気付いてもらえません。 201 :深優は泣いた ◆J9zPo6rgI.:2011/04/23(土) 02:10:22 ID:E6QwOv/U  ・・・・・・あ・・・やっと気付いてくれたようです。 「おやっ、深優ちゃんそんなとこに!・・・って、なぜに膝枕っ!?」 えっとぉ・・・なんて説明しようかな。 あ・・・お姉ちゃん、大きな声出しちゃダメぇ。 「お兄ちゃん起きちゃうから、ちょっとだけ静かに・・・あっ・・・」 「先生来たかぁ~~むにゃむにゃ・・・来てないならあと五分・・・なぬ!?一体どういう状況なんだ俺!」 わっ、お兄ちゃん飛び上がるように起きちゃいました。 もっとお兄ちゃんの髪を撫でていたかったです・・・。 お姉ちゃんは顔を膨らませて不機嫌に。 「ボク、キミを見損なったよ。 年頃の妹に膝枕を強要するなんてねっ。ふん~だっ!」 身に覚えのない疑惑をかけられたお兄ちゃんは当然焦ります。 ごめんなさい、お兄ちゃん。 「いやいやいやいやっ、これはおそらく誤解だよ。 起きたばっかだから、自分でも意味がわからないというか」 「助平な人はほっといて、深優ちゃん、先生まだかな?」 お兄ちゃんの弁解は流すようです、ちょっとかわいそうです。 「えっ、うんっ。 朝早くから隣町にね、転送師さん呼びにいったみたいなの」 と言った瞬間、お姉ちゃんの顔が引きつりました。 「て、て、て、て、テンソウ師・・・あわわわわっ、転送師っ! うわ~、ボクてっきり船で行くのかと思っていたよっ。 ボクんちの近所のおじさん、 それやって頭が半分くらいごっそり無くなって死んじゃった! そんな危険な事を朝っぱらからやるなんてねっ、ガクブルだよ!ぶるぶる」 「でも・・・失敗する方が珍しいから、大丈夫じゃないかなぁ・・・。 お姉ちゃん、不安なの?」 先ほどもこの台詞を口にしたような気がします。 「そうさっ、失敗なんてするわけないもんね、ねっ深優ちゃん!? 挑戦する前からおどおどするなんて、カッコがつかないじゃないか。 うう、でも手の震えが止まらない・・・はっ!そうだ。 いとへんのつく漢字を考えよう、うんっ!それがいい。 よぉし行くぞぉ、始めっ!…………………………………………………………  ……………………………………………なんにも浮かばないや・・・」 「ちょっ、おまっ、馬鹿すぎだろ、自分の名前はどうした」 「へ、変態兄に言われたかぁないやいっ!」 「おい! 変態でもなんでもいいから、この事は口外すんなよ、本当頼みますわ」 「へ~んだ、どうしよっかなぁ~~、うひゃっ!そうだ。 キミに贖罪の機会をくれてやるっ」 「うわっ、めんどくせぇ話に発展したなぁおい」 「もし、庭で斬り返しの受け役をやってくれるんであれば、 眠っているふりをしながら、 実は深優ちゃんのおっきな胸を至近距離で見上げ、 『すげぇー、ミューのおっぱいでか過ぎてミューの顔が見えねぇ、 これならこっちの顔も確認できないだろう、しめしめ』って考えながら、 巨乳を満喫していたことは言わないであげてもいいよっ」 「え~と、どこから突っ込めば良いのやら」 そうなのお兄ちゃん・・・?私、心の準備がまだ・・・でも嬉しい・・・。 「ほーら、深優ちゃん赤くなるくらい怒ってるじゃないかぁ、謝らないとぉ」 「どー見ても、照れているように思えるのだけど」 二人ともはずれ・・・興奮してきちゃったから赤くなってるの、ふふ・・・。 あのお兄ちゃんが私をし、し、視姦しているなんて。 言ってくれれば脱いだのにっ・・・、触って貰っても全然構わないに・・・。 膝枕という、ほのぼのとした光景の裏で、こんな事が・・・。 もう落ち着いて膝枕してあげられなくなっちゃいます、 はあん、体が疼いてきちゃった・・・はぁ・・・いけないいけない。 いつまでもひとり妄想の世界にいちゃだめ、会話に参加しなくちゃ。

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