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822 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ:2011/06/25(土) 21:39:22 ID:cTZsJos6 詩宝が2人組の女警官に連れ去られた後、あたしは男装したまま、すぐに最寄りの警察署に怒鳴り込んだ。 「詩宝は無実なんだ! すぐに釈放しろ!」 その場にいた警官を片っ端から罵倒し、責任者を出せと追及すると、数人の警官が出てきてあたしを別室に通そうとした。 まあ、他の一般市民もいる場所で騒がれては迷惑だろうから、仕方がない。 あたしは彼らに通された部屋で、改めて詩宝の無罪放免を要求した。 ところが、どうも話が噛み合わない。警官達は、詩宝のことを何も知らない様子であった。 どうなっているのか。よく調べさせると、詩宝は逮捕されていないことが判明した。それどころか、成金豚は被害届を出してさえいなかった。 それでは、あたしの家に押し入ってきた女警官どもは、一体何者なのか。 ――成金豚の回し者だ! あたしは直感した。確かに、メイド豚の線もなくはない。 しかし、詩宝があたしの家にいると知っていたこと、驚くほどの短時間でニセ警官とミニパトを用意したとなると、成金豚の可能性の方が高いだろう。 「くそっ! 豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚豚……」 「あ、あの……」 警官に話しかけられて、あたしは我に返った。そうだ。早くあの成金豚を逮捕しないと。 未成年を、警官に化けて攫ったのだから、これは立派な犯罪だ。 あたしはいち早く、友人がニセ警官に連れ去られたと訴え、成金豚の家を強制捜査するよう命じた。 ところが中一条の名前を聞いた途端、警官達は及び腰になった。 とりあえず事実関係をとか、愚にも付かないことを言いだす。 あたしはキレた。 「早くやれ! もし詩宝が何かあってみろ。警察庁長官が泣くまで、警察糾弾の投書を新聞に一日百通送ってやるからな!」 「わ、分かった……捜査するから、君はひとまず帰りなさい……」 「馬鹿言うな! 今すぐ捜査本部を設置しろ! 俺はその長に就任し、この手で中一条の糞に手錠をかける!」 「ま、まあまあ……」 警官達は、口々に帰宅するようあたしに哀願し、最後にはとうとう、署長が出てきて土下座した。 こんなヘタレどもに関わって時間を潰す愚を悟ったあたしは、早急に解決するという誓約書を力ずくで署長に書かせ、警察署を後にした。 823 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ:2011/06/25(土) 21:40:32 ID:cTZsJos6 ――全体、どうしてくれようか…… 家への道を歩きながら、あたしは考えていた。 誓約書を書かせたからと言って、それで人任せにする程あたしは能天気ではない。 やはり、詩宝の妻であるこのあたしが自らアクションを起こし、夫を取り戻さなければ。 それでこそ、詩宝はこのあたしに身も心も依存し、朝も昼も夜も犯してくれるというものだ。 では、具体的にはどうしたら、詩宝を奪還できるか。 家に帰ってしばらくすると、いい考えが浮かんだ。 うちの団体の道場が、成金豚に襲われたことをネタに、明日もう一度成金豚の家に乗り込もう。 そうすれば、もう一度詩宝を連れ出せる機会もあるに違いない。 あたしは早速、長木のところに電話をかけた。深夜だけど構うものか。 「もしもし。社長? 明日ちょっと付き合ってほしいんだけど」 『と、堂上。俺は、俺は……』 「指の十本や二十本、折れた程度でガタガタ言わない! 男でしょ!?」 『し、しかし……』 「明日もっかい中一条んとこ行くよ。うちの道場が襲われた件で、糾弾しなきゃ」 『で、でもこっちはプロだし、女子高生率いる女3人にやられたなんて恥は……』 「ん? 何? 男装したレスラーに殺されるならいいの?」 『おおお、神よ……わたくしが、わたくしが一体何をしたと……』 「うるさい! さっさと中一条にアポ取る! 後でかけ直すからね。ちゃんと段取りしてなかったら承知しないよ!」 乱暴に通話を切り、しばらく待ってやることにした。 何もしないでいると、当然のように詩宝のことに考えが及ぶ。 今この瞬間にも、詩宝は成金豚から、どんな虐待を受けていることか。 それを思うと、とても平静ではいられない。 詩宝。あたしだけの詩宝。 さっきまで、あんなに激しく求め合っていたというのに、 今、あたしの側に彼の温もりはない。 どうしようもなく、心が寒かった。 ああ、詩宝詩宝詩宝詩宝詩宝詩宝詩宝詩宝詩宝詩宝詩宝詩宝詩宝詩宝詩宝詩宝詩宝…… 帰ってきて、帰ってきて、帰ってきて…… 切ない想いを抱えていると。携帯が鳴った。長木からだ。向こうからかけてくるとは。 「もしもし?」 『す、済まん……中一条会長と、アポが取れなかった』 「何!?」 『お、怒るな。しょうがないんだ。中一条会長は、事故に遭って緊急入院中した。少なくとも、明日一杯は退院できないらしい』 「ふ~ん」 あたしは、昼間、成金豚の巣を出るときのことを思い出していた。 あの会長、ロクデナシ外人秘書に折檻されて、重傷を負ったか。 自分のところの従業員も御せないとは、使えない奴め。 なるべく早く、中一条会長にアポを取るよう長木に命じてから、あたしは通話を切った。 「糞っ……」 一体、どうしたらいいだろうか。当然、中一条会長の回復なんか待っていられない。 「…………」 824 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ:2011/06/25(土) 21:41:31 ID:cTZsJos6 気が付くと朝だった。どうやら、気付かない間に眠ってしまったらしい。 とりあえず、学ランを着て学校に行くことにする。家でいくら悶々としていても、詩宝は戻ってこないのだ。 教室に入ると、数人の男子生徒が興奮した面持ちで何か話し合っていた。 はっきり言ってキモい。 そのうちの1人が、何を血迷ったのか、あたしに話しかけてくる。 「おい、堂上。ビッグニュースだぜ!」 ピッグ(豚)と聞き、あたしの堪忍袋の緒は一瞬で切れた。 「だしゃあ!」 男子生徒の顔に張り手をぶちかますと、そいつは水平に吹っ飛んだ。 バリーン! そのまま、窓を突き破って階下へと落下していく。 「ふう」 自分の席に腰を下ろす。ちょっとやりすぎただろうか。まあいい。あたしに成金豚のことを連想させた、当然の報いだ。 「で、ニュースって何だよ?」 別の男子生徒を睨み付け、聞いてみた。もしかしたら、成金豚が頓死したという朗報かも知れない。聞くだけは聞いてみよう。 聞かれた男子生徒は、やや脅えた表情になりながら言った。 「じ、実は昨日、凄い美人の新任教師と編入生がこのクラスに来たんだよ。2人ともモデル並みのスタイルで、特に胸なんか……」 「だしゃあ!」 バリーン! 期待したあたしが馬鹿だった。 こんな連中といても無駄だ。帰ろう。 あたしは席を立ち、校門へと歩き出した。 ところが。校舎を出たとき。 校門から入ってくる2人連れを見て、あたしは体が凍り付いた。 詩宝だ! 顔を見た途端、あたしの女が反応する。乳房が、子宮が疼く。 だが、詩宝の隣にいるゴミクズが余計だった。 「成金豚……」 生意気にも人間並みにセーラー服を着た豚は、あたかも政権の座を手放すまいとする総理大臣の如く、妄執に満ちた醜い表情で詩宝にしがみ付いていた。 可哀そうに。詩宝は今にも嘔吐して失神しそうなのを、必死に耐えているに違いない。 何としても、助けてあげなくては。 そう。聖騎士であるあたしが、囚われの王子様を邪悪な魔女から救い出すのだ。 2人はまだ、あたしに気付いていない。 足早に近づき、あたしは成金豚を怒鳴り付けた。 「こらあっ!!」 825 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ:2011/06/25(土) 21:42:38 ID:cTZsJos6 気が付くと、誰かが僕の肩を揺り動かしていた。 「詩宝さん、朝ですよ」 「んっ……」 僕は何をしていたんだ…… 思い出した。胃がガボガボになるまで大量の薬を飲まされ、気を失っていたのだ。 「詩宝さん、起きてください」 目を開けると、全裸の中一条先輩が、仰向けの僕に馬乗りになっていた。 場所はどうやら、あの“取り調べ”をした地下室から移動していないようだ。照明がまぶしい。 視線が合うと、先輩はにっこりと微笑んだ。 「お早うございます、詩宝さん」 「お、おはようございます……」 「お早うございます、詩宝様」 「よくお眠りになれましたか?」 「あっ……」 左右を見ると、これまた裸のエメリアさんとソフィさんがいた。かく言う僕自身も、何も着ていなかったが。 「立てますか? 詩宝さん」 先輩が僕の上からどく。ひどく体が重だるかった。体中の皮膚に違和感がある。辛うじて動く右手で触ってみると、何だか分からない、ぬるぬるした液体が全身に付着していた。 「何だこれ……?」 「さあ、詩宝様。シャワーにしましょう」 エメリアさんとソフィさんに無理やり立たされ、僕はシャワー室に引っ立てられていった。 そして、先輩を入れた3人に、丹念に体を洗われる。 僕は抵抗することも、自分で洗うこともできない。それくらい衰弱していた。 体を拭かれ、バスローブを着せてもらい、ベッドの上に横たわっていると、またソフィさんが新聞を持ってきてくれた。 少し体が動くようになっていたので、目を通してみる。 幸いなことに、メイドが何かしでかしたという記事はなかった。 1面を見ると、内閣の支持率が0%を切ったという記事が載っていた。 さらに巨額の違法献金と、悪質な脱税と、外国への利益供与が発覚したらしい。 首相は辞任する気は全くなく、続投に強い意欲を持っているそうだ。 ――僕もこの1%くらい、図太ければなあ…… いや、見習っちゃいけない大人のナンバーワンなんだけどね。 そんなことを思っていると、また部屋に誰かが入ってきた。 「失礼いたします。詩宝様」 「あっ、エメリアさん」 「今日からは、お嬢様と一緒に学校へ行っていただいて構いません。もちろん、詩宝様の体調がよろしければですが……」 「だ、大丈夫です……」 少し元気を取り戻していた僕は、ベッドから立ち上がった。 このお屋敷に閉じ込められているよりは、まだしも学校に行った方が、何かよさそうだから。 根拠はないんだけどね。 「かしこまりました。では、登校のご用意をいたします」 エメリアさんが一礼して退室しようとしたとき、僕は大事なことを思い出した。 「あ、ちょっと待って!」 「はい。何でしょうか?」 「あの、道善さんは、今……」 「本当に知りたいですか?」 「……いや。いいです」 笑ってください。 僕はどうしようもないヘタレです。 826 :触雷! ◆0jC/tVr8LQ:2011/06/25(土) 21:44:16 ID:cTZsJos6 朝食を終えた後(例によって手錠をかけられ、先輩達の手で食べさせられた)、僕は先輩から学ランを渡され、エメリアさん達に着せてもらった。 自分で着ようとしたら、烈火の如く怒られた。本当に何なんだろうね。 そして、中一条家の高級車で、先輩と一緒に学校に向かう。エメリアさん、ソフィさんも一緒だ。 セーラー服姿の先輩は、屋敷を出る瞬間から、鬼気迫る表情で僕に抱き付いていた。 「せ、先輩。苦しいんですけど……」 車の中で先輩に言うと、いきなり3人から物凄く睨まれた。 「詩宝さん。“先輩”って何ですか?」 僕を抱く力を強めながら、先輩が詰問してくる。 しまった。僕は慌てて言い直した。 「ま、間違えました! 舞華さんです!」 「“さん”も要りません! 敬語も止めてください!」 先輩の要求に抗う術はない。僕は言われる通りにした。 「舞……華……」 「はい。詩宝さん……」 うっとりした表情で、先輩は答えた。 「私達のことも、呼び捨てにしてくださいね」 と、エメリアさんが言う。 「そ、それで、苦しいから、放してほしいんだけど……」 「駄目です」 一層がっちりと、僕をホールドする先輩。 雷が鳴っても、放してくれそうになかった。 規格外に大きな先輩の胸に、完全に顔が埋まった状態で、僕は考えていた。 学校で晃に会ったら、一体どうなるだろう。 こんなところを見られたらどうなるか、想像するだに恐ろしい。 僕は必死に、打開策を見い出そうとした。 人が脅威に直面した時の行動は、3つに分れるらしい。 すなわち、対決、服従、そして逃避。 どれを採用しようか。 対決→太陽が西から昇っても、先輩や晃に勝てる見込みがない。パス! 服従→先輩と晃の両方に服従するのは無理。パス! 逃避→非常に見込みは薄いが、うまくやれば、何とかなるかもしれない。採用! その逃避の方法にも、僕には腹案があった。 薬を盛られてのレイプではなく、本当に犯罪を起こし、少年院に入ってしまうことだ。 向こう10年くらい娑婆にいなければ、その間に先輩も晃も、僕を忘れるだろう。 希望的観測だけど。 後は、どんな犯罪を犯すかだ。善意の人に迷惑をかけなくて、かつ重度のもの。 ――やっぱり、あれしかないかな。 少し悩んだ挙句、僕は、首相官邸殴り込みという、一番無難な線を選んだ。 とは言え、素手ではインパクトに欠け、刑期が短めになってしまう恐れがある。 どうしても、刀や槍や飛び道具で武装して突入しないと駄目だろう。 そのためには一度、自宅に戻って装備を整える必要があった。 僕はおずおずと、先輩に尋ねてみる。 「あのう……」 「何ですか? 詩宝さん」 「1つ、お願いがあるんです、いや、あるんだけど……」 「何ですか?」 「一度、家に帰っていいかな? 取って来たいものがあって……」 「駄目!!」 一瞬で全否定された。 「ご自分が、重犯罪者だという自覚を持ってください!」 供述書の写しを僕に見せるエメリアさん。なんで200%拡大コピーなんですか。 「必要なものがあれば、私達で用意します!」 ソフィさんが、これまた柳眉を逆立てる。 非っ常にキビシー。 結局、それ以上どうすることもできず、校門の前に着いてしまった。 先輩に抱き締められたまま、車を降りて校舎に向かう。 エメリアさんとソフィさんは、車に乗ったまま帰って行った。帰りはまた迎えに来てくれるらしい。 それはともかく。 先輩に抱き付かれながら歩くと、周囲の視線が気になった。 さすがに、先輩をジロジロ見つめるような、特攻精神を持った人はいなかったけど。 「あの、もう少しだけ離れて……せめて腕を組むとか……」 「嫌です」 絶対的拒否に見舞われていると、突如、狂雷のような声で怒鳴られた。 「こらあっ!!」 男子の制服を着た晃が、怒髪天を突きながら、僕達を睨みつけていた。

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