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名物桜で待ち合わせ 序章」(2011/09/06 (火) 21:20:43) の最新版変更点

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621 :名物桜で待ち合わせ 序章:2011/08/25(木) 00:37:33 ID:0OvYkyHI  季節は冬を過ぎ、各地で桜が咲き乱れていた。  桜が咲けばとあるイベントが開催され、たくさんの人たちが笑顔で酒を飲み交わす。  しかし、そんなイベントがある日の朝。一人の青年の顔は暗かった。 ―――――――――― 「新入社員の洗礼とは言え・・・辛いなぁ・・・。」  早朝の大きな桜の木の下で、青年は思わず呟いた。  彼の名は三田 一樹。地元の中流企業に就職した新入社員だ。  この企業は、春になると必ず地元の大きな公園で花見をすることになっている。一樹は上司の命令で、花見の場所取りを任されてしまったのだ。 「でもやっぱりここじゃないとな。」  一樹は桜の木を見上げた。この公園で一番大きく、一番綺麗な桜の木だ。この公園が「桜の木公園」と呼ばれている由来は、テレビなどでも数回取り上げられているこの大きな桜の木だろう。  一樹は桜を見上げるのをやめて、少しうつむいた。 「あいつ・・・どうしてるかな・・・。」  一樹は今でも忘れていない。この桜の木で交わした約束を・・・。 622 :名物桜で待ち合わせ 序章:2011/08/25(木) 00:38:11 ID:0OvYkyHI ―――――――――― 「やくそくするよ!おれ、おとなになったらゆうちゃんとけっこんする!」 「ほんとう!?ぜったいだよ!やくそくだよ!」  小学校の時に幼馴染み、秋本 優子と交わした、名物桜での約束だ。  中学校、高校、大学まで一緒だった二人だった。  しかし、一樹が結婚できる歳になった誕生日の日、一樹は故郷を離れてしまった・・・。 ――――――――――  この事を思い浮かべた瞬間、どうしようもない罪悪感が一樹を覆った。  約束を守らず、俺は故郷を離れた。なんの連絡もなしに・・・。 「愛想つかせたかな・・・。」  呟いた瞬間、自分を包む罪悪感が更に膨れ上がった。  故郷を離れはしたが、夢を追い続けることを諦め故郷に逃げ帰ってきた俺なんか、もう彼女には魅力的には映らないだろうな・・・。 「どうしたんだい?新人君!」  一樹の後ろから女性の声がした。振り向いた先にいたのは、黒いロングヘアーの女性だった。 「中川さん、どうして来たんですか?」  中川 愛は一樹の職場の先輩だ。仕事もでき、料理もうまく、スタイル抜群で面倒見のいい美人キャリアウーマンだ。 「どうしたもこうしたも、一樹君が心配だったから来てしまったよ。」  愛は一樹に近づいて頭を撫でた。 「子供扱いしないでくださいよ。僕はもう21ですよ?」 「私から見たらまだまだ子供だ。子供を教育して何が悪い?」  あやすように頭を撫でられる一樹。 「なんならおっぱい吸うか?母乳は出ないが」 「い!いやいやいやいや!結構です!」  首を横に激しく振る一樹。 「ハハハ!吸いたくなったら言ってくれ!いつでも待ってるぞ。」  笑いながら、敷いたブルーシートの上に座る愛。  まだドキドキしている心を落ち着かせようとする一樹。 ズキッ!  一瞬、全身に悪寒が走った。 623 :名物桜で待ち合わせ 序章:2011/08/25(木) 00:39:11 ID:0OvYkyHI  女性は背を木に預け、震える心を抑えようとしていた。  女性はただひたすらに待っていた。過去に約束を交わした人をこの場所で。  約束を交わした人は一度遠くに行ってしまったが、女性は何も慌てる様子はなかった。  何故ならば、彼女には確信があったのだ。  彼は必ず私の元に帰ってくる!世界の果てに行こうが、彼は私を求めて帰ってくる!彼と私は約束したのだ!永遠の愛を!  しかし、彼女の目の前にいた人は、私を待ってなどいなかった。 「何で?私は一樹の恋人・・・一樹の結婚相手・・・一樹の妻・・・一樹の運命の人・・・。」  一樹は私だけのものなのに・・・。何で一樹は私を待っていないの?  帰ってきたときだって私は空港まで迎えにいった。会社にだって毎日行ってる。電話だって毎日かけてる。メールもしてる。一樹がいなくなってから戻ってくるまで、他の男との関係を全て断ち切った。  まさか・・・私の尽くしている度合いが足りないのか?そうだ!そうに違いない!もっと自分は一樹を待っていたと言うことをアピールしなきゃ!  一樹も一樹だ!きっと私がアピールするのを待っているんだ!そしてアピールしてきた頃合いを見計らって告白してくれんだ!  そうと決まれば!と女性は一樹がいる反対側の方向に行こうとした。  あくまでも偶然を装ってだ・・・。 「何だ君?私の胸がそんなに見たいのか?」 「いや・・・自然と目が行くと言いますか・・・。」 「堂々と私に見せてと言えば見せるぞ?ほら。」 「うわぁ!服を脱ごうとしないでください!」 「君は純情だな。女性と関係を持っていないわけではなかろうに」 「いや・・・彼女はいましたが童貞です。」 いました?  一樹?私はここにいるよ?私はもう一樹と恋人じゃないの? 「なんだなんだ!そんなことなら言ってくれれば、私が女の体について身をもってわからせてあげるのに。」 「いえ・・・結構です。」  あの女!まさか一樹を口説いているな!一樹が困っているじゃないか!私の一樹をたぶらかしているのか!  一樹も一樹だ!あの女の悲しまないように彼女はいないと嘘をついたんだ!  あいつは一樹と私の間に飛び回っている害虫だ!そんな奴は私が 排除してやる!  彼女は名物桜を背に公園を出ていった。  道行く人は彼女の笑顔を見て、春のウキウキ感を感じてしまうだろう。  しかし、彼女が浮かべる笑顔に光の一筋すら輝いていなかった・・・。

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