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803 名前:白髪女とちっさい女 第二話  ◆/wP4qp.wQQ[] 投稿日:2011/09/11(日) 06:17:32 ID:3N983kd6 [2/7] このゲーセンの隣は喫茶店だ。 名前は「フランク」と言って、マスターがフランクなひげを生やして居るからだそうで、ネーミングセンスのなさを感じさせる。 それがいいと僕は思うのだが後の二人には 「「何言ってんの?」」と声を合わせて言われる。 僕たちはゲーセンの帰りに時々寄って雑談したり、晩御飯を食べたりして利用しているのだ。 そこは学生割引を行っていて学生がたくさん集まる喫茶店で巷では噂になる位の人気店だ。 禊は多分そこに行って、僕を尋問するらしい。 禊がフランクの扉を開けて入ると 「いらっしゃいませ。」と聞いたことのないハスキーな声が聞こえきた。 あれ?マスターはもっと渋い声の持ち主のはずなのだがと声の持ち主を見て見ると目をギョッと見開いて固まって居るお姉さんがいた。 お姉さんの胸のプレートに下釜と書いてある。 禊を見て対応に困り、固まる店員さんはたまにいるが、ここまで露骨に驚く店員は初めてだ。 「うちは高校生だよー。」と目の前で禊がぷりぷりと怒っている。 それを聞いた店員さんはハッとなって 「すいません。二名様入ります。」とあからさまに明るく叫んだ。 店のカウンター席は空いているが、禊はテーブル席がいいらしく、下釜さんに 「うちらはテーブルでちゃーしばきたいんだよー。」 とどこで覚えてきたのかよくわからんことを言っている。 「お客様、今テーブルは空いていないので少しお待ち頂くことになりますが、宜しいでしょうか?」 「まぁ少し位ならいいかな?待つよー」と話を進める禊。 カウンターの方が顔を合わせないで済むので、カウンターが良かったのだが、今の僕は逆らえないので何も言えない。 待合の椅子に座っている間、僕たちは一言も話さない。 それが逆に居心地が悪い。嵐の前の静けさなのだろうか? 「お席が空きました。どうぞ。」 下釜さんに一番奥の席に連れて行かれる。 「注文が決まりま・・・」 「ミックスジュースとエスプレッソ。エスプレッソはかなり濃いめで。」 下釜さんの台詞を遮り、禊が勝手に注文をした。 禊はコーヒーが飲めないので、自動的に僕がエスプレッソになるだろう。 僕もミックスジュースの方がよかったのだが・・・。 下釜さんがオーダーを取って、奥の方に引っ込むと、禊が口を開いた。 「あの子は誰で、どういういきさつで知り合ったの?」 禊は僕の目をじっと見つめて行ってきた。 こう真剣な表情になった禊には嘘や誤魔化しは効かない。 僕は諦めて事実を話すことに決めた。 804 名前:白髪女とちっさい女 第二話  ◆/wP4qp.wQQ[] 投稿日:2011/09/11(日) 06:18:19 ID:3N983kd6 [3/7] 事の顛末を話終えた僕は禊がどう反応するかうかがていると、 「へぇー。そんなことがあったんだ。」 ミックスジュースを飲みながら呟いた。 「あぁ。」 と頷きながら、お冷やを口にする。 テーブルの上にあるエスプレッソの中身はもうすでに空っぽだった。 苦々しかった口の中に、冷たい水が気持ちよかった。 「いい?うちは意地悪でこんなことしてるわけじゃないんだよ。そこのところ分かってるの?」 「分かってます。」 無意識に敬語になってしまっている自分がなんだか腹立たしく感じる。 「うちは君のこと心配してるんだよ。心配なんだよ。また裏切られんんじゃないかって。」 「決して彼女は裏切った訳じゃないよ。僕が悪いんだ。僕が。」 「いや。あいつが悪いだよ!!」 バンとテーブルを叩いて禊は立ち上がった。 余りにも大きな声だったので周りのみんなが僕たちを見ている。 「ちょっと禊。」 僕がそう言うと禊は僕をじっと見つめたあと、顔を伏せた。 そう。あの時、守ってやれなかった僕が悪い。 禊は僕が裏切られたと思っているが、僕はそう思っていない。 「まあいいや。これからは彼女に近づかないことを約束してくれたら、許してあげるよ。」 そう言いながら小指を前に突き出してきた。 指きりの語源は、遊女が客に愛情の不変を誓う証として、小指を切断していたことに由来している。 それが一般的にも広まり、約束を守ると言うことに変化したらしい。 僕はこの間読んだ本にそんなことが書かれていたなぁ、とか思いながら小指を出すと 禊は小指をからめて、ニッコリと微笑み 「指きり拳万!!嘘ついたら針千本のーます。指切った!!」 と勢い良く指を離した。 その時、ふと僕は誰かに見られているような気がして左の方を見てみる。 店は混雑していて、誰が僕を見ているのかわからなかった。 でも確かに誰かが僕を見ていた。 「禊、誰かが僕たちの方を見てないかな?」 「別に誰かの視線は感じないなぁ。ほっしーの気のせいだよ。そんな事よりケーキ頼んでいい?」 僕の気のせいかな? 今も見られている気がするんだけど・・・ まぁ別にいいなと気にしないでおくことにしたが、店を出るまで奇妙な視線は僕から離れることはなかった。 805 名前:白髪女とちっさい女 第二話  ◆/wP4qp.wQQ[] 投稿日:2011/09/11(日) 06:18:48 ID:3N983kd6 [4/7] 結局、小一時間ほど喫茶店にいた僕たちは聡太のことを思い出して、急いで店を出た。 ゲームセンターに戻ると、僕たちがいつもする対戦ゲームの周りに沢山のギャラリーが出来ていた。 「おぉー。」とか「スゲー。」などの声が仕切りなしに聞こえてくる。 誰かが対戦しているのだろう。 対戦者はだれだろう? そう思い人垣をかき分けて割入る。 そこにはもの凄いスピードでボタンを叩いている聡太がいた。 画面を見てみると、仮面を被った怪盗のようなキャラと頭に輪っかのある天使の女の子が戦っていた。 僕は自分の目を疑った。 聡太がこの怪盗キャラを使うときは本気なのだ。 大会でもない野良試合でこんな本気になるということは、対戦相手はかなりの手練となる。 お互いがお互いの攻撃を絶妙にガードして相手を伺っているようだ。 ピリピリした空気が周りを包んでいて、少しゲーセンには似つかわない雰囲気が滲んでいる。 暫く牽制し合っていた二人だが、天使のキャラが一旦後ろに飛んで距離を開けて来た。 それが勝機と見たのか、聡太が追撃する。一発目の攻撃がはいれば、そこからは聡太の独壇場だった。 華麗なコンボがどんどん決まり相手の体力をガシガシと削っていく。 そのまま相手は何も出来ないままKOしてしまった。 このゲームは1/60フレームの判定で、それが聡太には分かるらしい。(本人談) 周りからは余りにも大きな歓声が沸き上がる。僕もついつい拍手をしてしまった。 ふーっと聡太が大袈裟に息を吐いて席を立った。 どうやら対戦者に挨拶に行くらしい。 聡太は僕に気づき、クッスと笑った。 その笑顔は普段聡太が見せない様な無邪気すぎる笑顔で、僕は少し驚いた。 僕も対戦者が気になったので、どんな人か見るために後ろに行くことにとする。 後ろに回って見ると、そこには白い少女の彩弓ちゃんがいた。 「君、かなりのやり手だな。」 と相手を賞賛しながら言う聡太はどこか嬉しそうだ。 こちらに気づいた彩弓ちゃんが 「いやいや、完敗でしたよ。」 「俺とあれだけ戦えるなんて全国でもそういないよ。」 「そうですか?そう言ってもらえると嬉しいです。」 そう言うと、彩弓ちゃんは僕に気づいたらしく、席を立って僕の方に来る。 「お兄さん、体調は大丈夫ですか?」 もう平気だよ。と返答しようとすると誰かが会話に入ってきた。 「全然へーきだよ。うちのほっしーが迷惑を掛けてゴメンね。」 「いえいえ。困った時はお互い様ですし気にしないでください。」 「そーですか。じゃあうちたちはもう行くのでさよなら。」 禊は僕と聡太の手を取って出口の方に向かって歩き出す。 僕は彼女に小さく手を振ってゲーセンを後にした。 806 名前:白髪女とちっさい女 第二話  ◆/wP4qp.wQQ[] 投稿日:2011/09/11(日) 06:19:23 ID:3N983kd6 [5/7] 今は帰り道で禊と一緒に帰っている。 聡太は住んでいるところが最寄り駅を挟んで反対なので、僕たちとは駅で別れてしまった。 僕と禊は同じマンションに住んでいて、天川家は4階、新見家は7階に住んでいる。 昔から家族ぐるみの付き合いで、親同士も仲がいい。 なのでお互いの家に小さい頃から行き行きしている。 それは高校生にもなった今でもそうでよく遊びに行く。 僕たちの住んでいるマンションは駅からは徒歩30分ぐらいで、商店街を抜けた所に位置している。 この商店街は昔からの老舗や今どきの小物店、美味しい食べ物屋もあるので賑わっているのだ。 だが何故かゲームセンターだけはなく高校の近くにある所に行かないといけない。 僕たちは商店街の中心である広場を家に向かって歩いている。 広場には噴水や椅子があり休憩するにはちょうどいい場所だ。 日が沈みかけていて、噴水の水がオレンジ色に少し染まりつつありとても綺麗に思えてしまう。 遊びに行った帰りなのか、数人の小学生が椅子に座って話をしていた。 「僕も少しはゲームしたかったんだけど・・・」 急に帰ると言い出した禊に不満をぶつけてみる。 僕の前をトコトコ歩いていた禊は立ち止まり、クルリとこちらを向いた。 禊に合わせて僕も立ち止まる。 「だったらご飯食べたら、うちの家で何かゲームする?」 明日は幸いにも土曜日で、何も予定はなかったはずだ。 更に今日の夜は暇だし、この提案は有り難いと素直に思い 「よし。ご飯食べたら、禊の家に行くよ。」 と言うと禊はニッコリと笑い、何事もなかった様に再びテクテクと歩きだした。 機嫌はすっかり直っているみたいだ。 禊を追って僕も歩きだす。 「なんのゲームしようか?」 「.ha○kだよ。」 「えっ、RPGするのかよ。」 「当たり前だよ。RPG好きだもん。」 「俺は何すればいいんだ?」 「ポ○モンとか?」 「なんでだよ!せめて一緒に出来る奴をやらせてくれよ。」 「じゃあ狩りに出よー。仕方のない奴だよ。」 やれやれと禊が首を横に振る。 端から見るとなんだか僕が悪いみたいになっていて、禊が妥協したみたいになっている。 そんな風にたわいのない話を10分位するとマンションに着いた。 この家はオートロックなので扉を開けるために鍵を鞄中から出す。 鍵で扉を開けてエレベーターに乗り込み、4階と7階のボタンを押す。 少し待つとチンとなってエレベーターが止まった。どうやら4階に着いたようだ。 「また後で」 「うん!!待ってるよ。」 禊にお別れをして、エレベーターから出る。 そして今日の晩ご飯はなんだろうと思いながら、自宅のドアをくぐった。 807 名前:白髪女とちっさい女 第二話  ◆/wP4qp.wQQ[] 投稿日:2011/09/11(日) 06:20:20 ID:3N983kd6 [6/7] 「ただいま。」 「お帰りなさい。」 キッチンの方から母さんの声聞こえてきた。 晩ご飯を作っているのだろう。 「今日のご飯はハンバーグよ。もうちょっとで出来るから、待ってて。」 僕は食器棚からガラスのコップを取り出し、冷蔵庫から冷えた牛乳を取り出す。 学校から帰ってきて飲む牛乳は最高だ。 「母さん、少し部屋で休むからご飯出来たら教えて。」 そう一言母さんに言い、部屋に入る。 ベットがあって向かいに勉強机が置いてある。 勉強机の横にテレビが置いてあり、その下にはテレビ台にはゲーム機が沢山置いてある。 本棚には文庫本とゲームソフトでいっぱいで、漫画が一冊も置いてない。 この部屋に来るたびにエロ本を探す禊のためにエロ本は買えない。 なのでベットの下には衣装ケースが入っている。 窓には青地に白い星マークのカーテンが付いている。 部屋の電気を消すと、その星マークが輝く。 それを見るたびに 「わぁー、ほっしーマジックだよー。ロマンチックだね。」 と禊のテンションが上がるのが見ていて面白い。 フーっと一息ついて、今日のことを振り返る。 やっぱりなんだかんだでかなり疲れた。 制服が皺になるのを気にせずにベットの上に寝転がる。 そしてゲーセンで出会った白い少女である彩弓ちゃんのことを思い出す。 僕はこう思う。 過去に犯した罪の罰はいつか受けなければならないだろう。 罪を償わずに堕落して生きることが一番辛い。 僕はどーしたら彼女に許してもらえるのだろう? 一時期はそればかり考えて、でも答えはなくて、意味の無い自問自答をしてばかりいた。 いっそ誰かが僕のこと責めてくれたら僕もこのように生きて来なかっただろう。 僕は一度ベットから机に乗っている写真をみる。 そこには5年前の僕と白い髪の少女が笑顔で写っている。 中学1年生の冬から僕の時間は止まったままだ。 ゆっくりと目を閉じる。 そのまま僕は深い眠りについてしまった。

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