「『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』第一章」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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913 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 20:44:23 ID:cdjB2.kI
ここはとある私立高校。時刻は下校時刻。
2階の廊下ではある男女がもめている。
「ちょっと。さっき葵(アオイ)ちゃんと何話してたの?」
「うるさいな。委員会の日程についてだよ。
来月から文化祭で忙しくなるからな」
「本当? 嘘ついてないよね? 悠君のこと信じていいんだよね?」
女の口調はまるで夫の浮気現場を押さえた妻のごとく。
美少女と呼ばれるほどの美しい容姿をしているが、
鋭い眼光は男性を負かしてしまいそうだった。
瞳には強い意志が宿っている。意中の男を独占したいと言う強い意思が。
(いい加減消えてくれよ。面倒な女め)
「本当だよ。俺が榊原さん(葵のこと)のことが好きになったとで
も思ってるのか? 俺にはおまえだけだよ。アイリ」
少年は内心とは正反対のことを口にするのだった。
志穂とは彼らのクラスメイトで文化祭実行委員だ。
クラスでは演劇をすることが内定してるので、その準備やら
練習やらに忙しくなってくる時期であった。
914 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 20:45:30 ID:cdjB2.kI
アイリと呼ばれたその少女は不満そうな顔で口を開く。
「はぁ~? 何ぃその浮気夫が妻にするような言い訳?
ふざけてるのかな? 全然心がこもってないんだけど?」
「いや、ふざけてないよ。俺はアイリのことが大好きさ」
「……」
なぜか黙ってしまうアイリ。
少年=悠二(ユウジ)は危険な予兆を感じていた。
適当な愛の言葉を並べて彼女のご機嫌を取ろうとしたのだが、
どうやら失敗したらしい。アイリは拳を握り締めたまま
うつむいており、どう見ても納得してるようには見えない。
その証拠に、
「本当は榊原さんが好きなくせに」
「え?」
「私、知ってるんだよ? あの人と影でコソコソメールしてるの」
「なっ!!」
悠二は動揺を隠せなかった。その隙を突いてアイリが彼の
カバンを奪い取り、携帯の画面を開く。
915 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 20:46:20 ID:cdjB2.kI
そこでメールboxやら着信履歴などを見られてしまったのだから
最悪だった。別にやましい内容はなく、友達以上恋人未満の
関係を維持してる悠二と榊原だったのだが、アイリにとっては
十分に許せない事態だった。
「私のこと好きって言ってるわりには、ずいぶん榊原さんと
親しいんだね。最近電話しても繋がらないことが多かったけど、
こういうことだったんだね」
「ばれたかwww サーセンw」
「サーセンじゃないよ……。やっぱり私のことバカにしてるね……。
相応の報いは受けてもらうよ」
全身から殺気を放つアイリがゆっくりと距離を縮めようとする。
悠二は冷や汗をかきながら後退しつつ、
なんとかこの事態から逃れようと策をめぐらす。
「おい待てよ!! ちょっと待ちなさい!!
ぶん殴る前に俺の言い分を聞きましょうね!?
俺にだって言いたいことがあるんだ!!」
「いいよ」
「え? 聞いてくれるん?」
「うん。ただし、くだらない言い訳をしても、
悠君が殴られるという結果は変わらないけどね」
アイリはぞくっとするような事を笑顔で言う。
916 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 20:47:40 ID:cdjB2.kI
(病的なゲス女め……。
こいつは人を傷つけることに全く抵抗がない……クソッ!!)
男は心の中で悪態をついてから、
「そもそも俺とお前は付き合ってません。だから俺は無実だ。
分かったか馬鹿女? そもそもおまえはいつもいつも
俺の都合なんて考えずだな……」
絶対の真実を口にするのだが、
「えっ……。悠ちゃん、それはおかしいよ」
アイリは意外そうな顔をして驚いた。
「え? 何? 俺今おかしなこと言った?」
悠二もつられて数学の時間に誤答してしまった生徒のように慌てる。
二人が付き合ってないのは本当のことだった。
このヤンデレっぽいアイリという少女は、
今年同じクラスになってからなにかと悠二を追い掛け回し、
独占しようとする鬼畜だった。
「悠君は現実を認めようとしないんだね。残念だよ。
しかもさりげなく私のこと馬鹿女って言ったね?
私を怒らせないでってあれほど言ったのに……」
アイリの中では悠二とは将来を誓い合った仲ということに
なっている。脳内設定の婚約者である。
917 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 20:49:37 ID:cdjB2.kI
「いやいや、意味不明すぎて笑いたくなるレベルだぞ。
なんで俺を可哀想なモノを見るような目で見てくるの?」
「……これから悠ちゃんを私の家まで連行することにするね。
色々教育してあげる。そうすれば悠ちゃんだって
本当の愛に目覚めてくれると思う。大丈夫。痛くしないからね」
すでに会話になってない。切れたいのは悠二の方なのに、
アイリはさらに輪をかけて怒り心頭のご様子。
戸惑う悠二だが、考えるだけ無駄だと分かった。
「アイリよ。おまえの気持ちはよく分かった。
もう俺も自分の気持ちに嘘をつくのは疲れた。おまえには
俺の正直な気持ちを知って欲しいんだが、いいかな?」
「……え!?? 突然どうしたの?」
「落ち着いてくれアイリ。これから言うことは真剣に聞いて欲しい」
「う、うん……。悠ちゃん……」
悠二の男らしい声に驚愕するアイリ。
彼は熱っぽい視線を送りながらアイリの手を握っていた。
それはまるで、思いを秘めていた女性への告白のシーン。
悠ニは心を込めたメッセージを送る。
918 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 20:50:54 ID:cdjB2.kI
「おまえより榊原さんのほうが好みだ」
「………はい??」
訪れたのは、沈黙と言う名の拷問タイム。
アイリは買い物帰りに偶然にも死体現場を
見てしまった主婦のような面持ちで固まっている。
よほどショックだったのだろう。
だが悠二にとってはいい迷惑だ。
彼女が再起動すれば殴られるのは分かってる。
ここで先手を打つことにした。
なんと、制服のポケットから
痴漢撃退スプレーを取り出して噴射した。
「~~~~~~????」
アイリにとっては全く予期しない出来事だった。
取るに足らないと思っていた獲物に逆襲されたのだから。
「うぅ……げほ、げほ……」
アイリが煙たがっている間に逃走した悠二。
彼はアイリのことをゲス呼ばわりしていたが、
彼もまた人のことを言えない。少なくとも
痴漢撃退スプレーは女性に向けて放つモノではない。
919 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 20:52:38 ID:cdjB2.kI
「ぷぎゃあああああああああああ!! ぎゃははははははあ」
キモイ笑い声を発しながら階段を駆け下りる悠二。
やかましい女をからかってやったので気分は最高潮だった。
だが、それも長くは続かない。
背後から襟をつかまれることによって彼の疾走は止まった。
振り向いたら鬼と目が合ってしまって慌てた。
「さっきは驚いちゃったよ。覚悟は出来てるんだよね?」
アイリは愛のあるボディブローを放った。
至近距離から放たれた重みのある一撃だ。
重心に力を込め、回転を加えたアイリの拳が腹部にめり込む。
「……っ! piおなsbふぃdfs……!!」
少年は耐え切れず階段から転げ落ちてしまった。
痛いなんてモンじゃない。
痛みを通り越して快楽に昇華してしまいそうなほど。
(うーん。テレビで見るボクサー達は偉い。こんなに痛い技を
何発も喰らってるのに痛い顔一つしないなんて……)
転げ落ちた先は昇降口だ。
下校途中の生徒達が何事かと集まってきて
野次馬活動を始める。
悠二はうつ伏せに倒れた体勢で、釣り上げられた直後の
魚のようにピチピチ跳ねていた。情けないことこの上ないが、
痛みから逃れるためには仕方ない行為だった。
920 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 20:54:16 ID:cdjB2.kI
「悠ちゃん、地獄の痛みで苦しんでるところ悪いんだけど……」
よく訓練された魔女は悠二の襟をがっしりと掴んだ。
「ぜーんぶ悠ちゃんが悪いんだからね?
私を怒らせた人がどうなるかよく知ってるでしょ?
この学校では私が法律なの」
魔女の顔には少しだけ慈悲が浮かんでいる。
彼の襟を引っ張りながら外へと引きずり出そうとしていた。
一体どこへ連れて行くつもりなのかと周囲の生徒達が、
「ざわざわ…」 「ザワザワ…」
しながら見守っているが、
「みんなナニヲじろじろ見てるのかなぁ?」
アイリが睨みを効かせるだけで波のように去っていくのだった。
(ほんとクズね。あいつらは私に逆らう勇気すらないチキンたち。
私が怖いんだったら初めから野次馬なんかしなければいいのに)
「今日は久しぶりに私の家に招待してあげるよ」
「ア、アイリしゃまのうちにでしゅか」
「うん。早くいこ」
リムジンは玄関のすぐ隣で待機してる。
アイリがすぐ帰宅できるようになっているのだ。
921 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 20:55:05 ID:cdjB2.kI
彼女はお嬢様であり、いわゆるブルジョワ階級に属している。
資産家の親が、寄付金と証した多額の賄賂を学園に寄付しており、
彼女のたいていの蛮行は許される。先ほどの会話では
『私が法律なの』などと言っていたが、
実際にその通りなのだから皮肉だ。
学園長以下、あらゆる学園関係者は彼女と
その家系に服従しているといってもいい。
複数の稽古事の一環として格闘技にも精通しており、
空手や柔道を中心に心身を鍛えている。
「しかしお嬢様、本日はピアノのレッスンが控えておりますが…」
「いいよそんなの。めんどくさいし。 イライラしてるから早くして」
アイリは運転手を強引に説得し、少年を後部座席へ放り込む。
922 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 20:57:48 ID:cdjB2.kI
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アイリの家は広かった。正門の前でリムジンを降りて、
迷路のような庭を抜けて本邸へと歩いた二人。
玄関の前では一人の少女が出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
主人にお辞儀するメイド衣装の少女。
アイリ専属のメイドだ。年のころは十六。
線の細い顔立ちに切れ長の瞳。
アイリとは違うタイプの美人だ。
アイリはもう少し柔らかくて表情がころころ変わるが、
この少女は常に冷静な仮面を一つ被っている。
業務用の表情といえばそうなのだろうが、
彼女は意図的に感情を押し殺しているように見える。
実際は感情豊かなのだが。
(何度来てもバカでかい屋敷だ。道案内してくれる人がいなければ
庭で迷子になるほどだ。それにしてもこのメイド少女は…)
悠二は密かにメイドのことを観察していた。
えらく事務的に接してくれるこの少女のことが
最初は苦手だったが、何度もこの屋敷を訪れるようになってから
少しずつ印象が変わってきていた。
923 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 20:59:07 ID:cdjB2.kI
「体育で汗かいたから先に入浴してくるね。
はいカバン。あとで着替えとタオルを用意してね」
「かしこまりました、お嬢様」
アイリからカバンを受け取り、恭しくお辞儀するメイド。
一つ一つの動作が洗練されており、本当によく
教育されているのだなと感心する悠二。
「悠ちゃんは私の部屋に案内しといてくれる?
くれぐれも私の両親とは会わせない様にしてね」
「承知いたしました」
アイリは廊下の奥へと消えてしまい、二人きりになる。
初めてじゃないのに、なぜか緊張してしまう悠二。
「悠二様、お嬢様の部屋へお連れします」
そう言ってメイドが先導する。
クセのある黒髪を見ながら後についていった。
(リアルメイドさんはすごいねえ。
アキバとかにいる偽メイドとは全然違うわ)
シックなエプロンドレスなんてそうそう見れるものじゃない。
過剰な装飾など一切ない業務用の服。
ここはまるで別世界だ。現実世界から隔離された空間。
一時間前まで普通の学園生活を送っていたのに。
なぜ自分に相応しくない空間にいるのかと思うとバカらしくなった。
924 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 21:00:21 ID:cdjB2.kI
ただ黙って歩くのも気まずいと思ったので少女に話しかけてみた。
「……アイリの奴、客を招待したくせに自分は風呂入ってるんだから
勝手だよな。俺は奴の部屋で何してすごせばいいんだろうな?」
「よろしければ、悠二様も愛梨様と入浴されてはいかがですか?」
「な……?」
「ふ……。冗談ですよ」
「な、なんだよ驚かすなよ。思わずあのバカ女の裸を
想像しそうになちゃったじゃないか」
「愛梨様の裸に興味があるのですか?」
「そりゃあるよ。あいつは完全に人格が破綻しちまってるが、
顔だけは一流だからな。それにスタイルも悪くない。
奴の性格さえ知らなければどんな男だってとりこになるさ」
「まあ、そんなに悠二様に褒めてもらえるなんて、
アイリ様がうらやましいですわ」
「え? 別に褒めてないよ。むしろけなしてるんだけど?
つかなにそれ、私は嫉妬してますアピールでもしてんの?」
「ええ。それはもう。愛梨お嬢様を刺し殺したいくらいに」
「きついジョークだなおい。あんなバカを刺したところで
犬も喰わない様なワイドショーのネタになるくらいだから
やめたほうがいいぞ」
「うふふ。それもそうですね」
925 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 21:01:33 ID:cdjB2.kI
悠二はアイリの気まぐれで強制的に家に来させられるのだが、
その度にアイリ専属のメイド少女のもてなしをうけるのだった。
訪れるのは多くて週二回程度だが、付き合ってもない女の子の
家に連れてこられるというのも変な話だ。
だが、悠二はここに来るのが嫌ではなかった。
メイドとは互いに冗談を言い合えるくらいには仲良くなってる。
今では彼女と会うのが楽しみの一つになっている。
アイリの部屋にたどり着つくと、
「お茶の用意をしてきますので」
少女=マリがお辞儀して立ち去るのだった。
部屋の墨にはグランドピアノがおいてあって完全防音仕様。
天蓋付きのベッドや高級オーディオ、
50型のプラズマTVなどもあるが、
それでもあり余るほどの広さを誇る部屋。
投下された巨大な資本の賜物である。
「はぁ~きょうも疲れたぜ」
ベッドに遠慮なく横になる悠二。
何度も訪れてる部屋だから気心知れてる。
退屈になったのでその辺のCDでもあさって
適当なクラシックでも流してたら、
綾乃が茶菓子を持って戻ってきた。
926 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 21:03:20 ID:cdjB2.kI
「わざわざすまないね。あのバカ女が戻ってくるまで
まだ時間があるだろうからさ……たまにはどうだい?」
ちなみに、今流れてる曲はパッヘルベルのカノンだった。
弦楽器の重奏音が凄まじい迫力を奏でる。高級アンプは
クラシックに最適になるようにチューンニングされているようだ。
「ですが私はこの後も仕事が…」
「そんなものは後回しだ」
綾乃の肩を少しだけ力を込めて抱き寄せる。
「おまえだって嫌じゃないだろ?」
「はい……」
慣れた様子で唇を重ねる。
最初は、『一つのエサを奪い合う二匹のオットセイ』
のように唇を突っつきあっていたが、やがて落ち着いていく。
抱きしめられたメイドがつま先立ちして
顔の高さを合わせる。ねっとりと唇を重ねて
互いの舌が絡ませる。それに伴って唾液が
口腔に流れ込んでくる。
「悠二様、それ以上は……!!」
「ああ、すまない」
927 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 21:09:40 ID:cdjB2.kI
※メイド少女の名前はマリだ!!! >>926 ×綾乃 ○マリ
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「悠二様、それ以上は……!!」
「ああ、すまない」
彼女の胸を触りそうになったところで静止する。
言うまでもなく、ここはアイリの部屋だ。
ここで本番などやろうものならただでは済まされない。
二人は秘密の関係を維持してるのだ。
「そ…それでは私は仕事に戻りますので。
まもなくお嬢様が戻られると思います」
「お、おう。久しぶりに一緒になれて嬉しかったよ」
赤くなった顔を手で隠しながら退出するメイド。
残された悠二も同様に赤面している。
お嬢に内緒で愛し合っていることの背徳感が
さらに気分を盛り上げてしまったのだ。
分かれるのが惜しいとは口にはしなかったが、
彼女と最後まで一緒にできたらどれだけ幸せだろうかと
悠二は考えた。自分の服に彼女の匂いがついていないか
確認しながら何気ない顔でアイリが戻ってくるのを待つ。
928 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 21:11:18 ID:cdjB2.kI
マリの父親はこの家の執事長だ。その娘の彼女も
父のコネでアイリ専属のメイドにさせてもらっている。
本来なら高校生の年齢のマリがなぜ就職しているのかというと、
学校が大嫌いだったからだ。高校には最初の二ヶ月しか通っていなく、
親と激論を交わした挙句、メイドとして生きる道を選んだ。
人に尽くすための作法なら幼少の頃から親に仕込まれていた。
常に上流階級の人々と接していたので、
有数の私立とはいえ学校で俗な生活をするのは肌に合わなかった。
マリは生真面目で細かい所まで気が利く娘だった。
アイリからは年が近いこともあり、気に入られていた。
影で悠二と怪しい関係になっているとも知らずに。
「おまたせ~ 悠ちゃん」
お嬢が戻ってきた。
「待たせちゃってゴメンねぇ。今日体育があったから
汗一杯かいちゃってさ。私があんまり汗臭かったから
悠ちゃんも困るモンね?」
彼女の発音は母音が間延びしていてやる気のなさそうな
イントネーションなのが特徴だ。
「なんで俺が困るの?」
「んふふ。知ってるくせに。なんで悠ちゃんを
私のうちに招待したと思ってるの?」
929 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 21:12:35 ID:cdjB2.kI
そう言いながらベッドに座ってる悠二に近づいていく。
アイリはバスローブしか身にまとってない。
湯上り特有の色っぽさを全身から発しており、
「久しぶりにキスから初めよっか?」
こうして至近距離まで接近すると彼女の胸元へ
視線がいってしまう。健康的な白い肌の中でも
一際目立つその豊満な胸に。
あの谷間に顔を埋めたくなってしまう。
本当はこの女がどれだけ嫌いなのだとしても。
「ん……ん……おいしいよ……悠ちゃんの味だぁ……」
目を閉じてしっかりと愛しい人の口腔を味わうアイリ。
初めにディープキスから始める辺り、
すでに彼女の中でも準備が整っている証拠だ。
アイリの身体が火照っているのは湯上りのせいだけではない。
いつのまにかローブがはだけ、一糸まとわぬ姿となってしまっている。
「いいぞアイリ……」
アイリの唾液は少しだけ甘くてせつない味がした。
学園のアイドルと称されるほどの女の子が惜しげもなく
美しい裸体をさらけ出してくれることにうれしさすら感じた。
930 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 21:14:35 ID:cdjB2.kI
乾ききってない髪からリンスの匂いが漂って気分を高揚させる。
学園で見せるヤンデレ的なアイリは大嫌いなのに、
どうしてか身体を交わらせると許してしまいたくなるのだった。
オスとしての本能。繋がりたいという欲求。
高校生という年齢を考えれば無理もない。
こういった身体の関係に恋愛的な考えは不要なのだ。
少なくとも男性の視点から考えれば。
「アイリはどんだけ興奮してんだよ?
アソコをこんなに濡らすなんて変態だな」
愛液が溢れ出てる肉壁の中に悠二の指が侵入していた。
少し出し入れするだけでねちっこい水分が跳ねるような
卑猥な音が響いてしまう。それに呼応するかのごとく
アイリの朱色の唇からもせつなげな喘ぎ声が聞こえてくる。
「あん……いいよぉ……もっと触って……あっ……あうっ……」
少し手で触っただけでもだらしない顔をしておねだりをするアイリ。
彼を思って一人で寂しい夜を過ごしたのは一度や二度ではなかった。
今は彼に背中から抱きしめられており、その体温を
身近に感じることが出来る。ゴツゴツした男の手の感触が、
彼の言葉が少しづつ自分の理性を狂わせていくのを感じていた。
931 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 21:16:16 ID:cdjB2.kI
「もう我慢の限界だ。いれるぞ?」
「うん。早く来て」
さらに快楽の頂点を目指すため、ベッドに仰向けに寝かせた
彼女の足を開かせて挿入した。一定のリズムでピストン運動を開始する。
「あっ……ああ……もっと強くしていいよ……」
「はっ……はっ……」
「そ……そうだよ……その調子……」
流しっぱなしにしていたパッヘルベルの名曲集は、すでに
再生を終えてしまっている。まるでオーディオが空気を呼んで
二人だけの世界を想像してくれたかのようだ。
汗でしっとりと濡れていく両者の若い身体。
こうして繋がっている間は学校であった嫌なことも
全て忘れることが出来る。十代ゆえに押さえ切れない
性の衝動も、年頃ゆえの色々な悩みも全て吹き飛ばせる。
「あうぅう……悠ちゃんのが私の奥まで入ってるぅ……」
「はは……おまえはやってる最中までアホっぽい話しするんだな」
「はぅう……も、もう限界だよ……イっちゃうよぉお……」
「そうか、ならもっと強く突いてやるよ」
「んああああ!! きゃあああああ!!」
932 :『いかにして彼らは鬼畜へと変貌したのか』:2011/10/06(木) 21:18:10 ID:cdjB2.kI
腰を浮かせた彼女の身体が暴れ始める。
汗で少し湿った髪の毛が揺れ、今までよりも
大きな声で騒ぎ始める。
ここで手を抜いちゃ駄目だと判断した悠二が、
可能な限り膣の奥まで何度も何度も突いてやった。
まもなくして彼女が達してから彼もそれに続いた。
「はぁ……はぁ……どうだった?」
「うん。きもちよかった……」
事後の余韻に浸りながら、二人でベッドに横たわる。
こうしていると愛しあうと夫婦にも見えてしまう二人なのだが、
実際はこんな単純な関係ではない。
悠二は性的にはアイリのことを愛していても、彼女の
内面までは好きになれなかった。それどころか嫌悪していた。
アイリとしてはたとえ身体を捧げても悠二に好かれたい、
彼を自分に振り向かせたいと思っていたのだが、
実はこの作戦は表面上成功しているだけだ。
実際に悠二からどう思われていているのか、
これから痛いほど思い知らされることになっていくのだった。
物語の第一章は、これにて終了する。