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178 名前:依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE[sage] 投稿日:2011/10/26(水) 23:55:50 ID:bE1u59/c [2/4] 非日常のドアは、常に開かれている。 現在、家のリビングでキサラギが泣きながらメシを食っている。 「お、おいしいです……」 などと抜かしているが、キサラギが食っているメシは、本当は俺のもので、キサラギのために作ったものではない。 朝、玄関を開けるとそこでキサラギが泣いていた。 全身を嗚咽に震わせ、力の限り泣いていた。 ご近所の目が痛かった。 キサラギがここにいるのはそういう理由からであって、特にメシを食わせたかったわけではない。 さて、俺はいつ、キサラギの変態ボタンを押してしまったのだろう。 キサラギに出会ったのは、丁度一年程前のことだ。 受験を控えたキサラギは、駅前の本屋で万引きをやらかして捕まっていた。 めっちゃ目が泳いでいた。 受験前の大事な時期だ。報告が学校に行けばどうなるだろう。推して知るべし。 まあ、今後のキサラギの人生の値段はこの時決まったようなものだ。 税込みで530円位だろう。それっぽっちでキサラギは人生棒に振るかもしれない。 人類皆に等しく厳しく冷たい俺だが、さすがにそれは酷かろうと思った。 それで本屋のオヤジの注意を引く。 キサラギ逃亡。 変態誕生の流れだ。 キサラギの前でふてくされているもう一人の変態であるが、キサラギの存在が非常に気に入らないようだ。 それはそうだろう。あまり数が多くては、変態の稀少価値がなくなってしまう。 未夢は眦を吊り上げ、これ以上ないくらいの憎悪を込めてキサラギを睨み付けている。 変態対変態。その対戦には寒気が走りこそすれ、特に興味は湧かない。 「それでキサラギ、お前はなんで泣いていたんだ?」 キサラギは大きく鼻を啜って、箸の動きを止めた。 鼻水と涙でグシャグシャになった顔が痛々しい。それでも食うんだから大した根性だ。 「ぅべっ、リューヤ先輩…捨てられる…げへっ…思って…」 口の中のものをなんとかしろ。 「俺はキサラギと付き合っていない。その表現はおかしいぞ」 「ぅべっ…」 キサラギがご飯を吐き出して泣き始めた。なんと汚い。 さて、どうしたもんか。一人でも手を焼く変態が二人に増えてはたまらん。 「リスカ女だけ…じゅるい、です…」 「知らん!そんなこと!」 できることなら、二人とも消えてもらいたい。 「ウチもぉ…リスカしたら…飼ってくれますかぁ…?」 「飼わん」 「ぅべっ…!」 いかん。 179 名前:依存型ヤンデレの恐怖 ◆a5x/bmmruE[sage] 投稿日:2011/10/26(水) 23:57:48 ID:bE1u59/c [3/4] キサラギのヤツ、とうとう嘔吐した。 俺は慌ててキサラギを横にする。 その後は吐瀉物の処理に取りかかる。 泣きながら食うからだ!変態のすることは本当に迷惑だ! 「ぐずっ、リューヤ先輩…やっぱり、優しい、です…」 ふざけるな。 俺の家だ。そのままにしておけないだろうが。 「ごぇっ!」 未夢のヤツが連れゲロした! もうやだぁ… 「ごぇんなしゃあい…」 「ぅべっ…」 未夢の嘔吐を見て更に戻すキサラギ。 辺り一面はもう地獄絵図だ。 もう殺せよ……。 事態を収拾し、やや酸っぱい匂いの漂うリビングで、俺は深い溜め息をついた。 「キサラギ、落ち着いたら帰れよ」 「…イヤです。ウチも…そのつもりで来ましたから…」 「そのつもり?何のことだ?」 「…ウチも、飼ってくれますかぁ…?」 まだ言うか。 「…別に未夢は飼ってるわけじゃない」 「なんで、そんな嘘つくんですかぁ…ウチも…先輩の服着たい…雨の日…」 あれか。 雨の日に未夢が欲求不満から顔を赤くしてたあれか。 つまり、キサラギの変態的言動はジェラシーによるものか。 待て。何故それが飼うという言葉に繋がる。 やはりこいつは… 「変態」 「はい…」 「変態!」 「はい…」 こいつ、本物だ…どうしよう…。 キサラギのサイドテールの髪の毛が、再び湧き出した嗚咽で揺れている。 俺はキサラギの髪を拭ってやる。 「リューヤ先輩…優しい…好き…」 それが大きなミステイク。ゲロが付いていただけなのに。 しかし、どうする?未夢ですら持て余す俺がキサラギをどうにかできると思えない。 キサラギは遊びでない空手をやっている。段位は知らないが、いくつかの大会でトロフィーを貰っている。 十分、俺を殺せる。 OK!新しい変態の誕生だ!! 「わかった…」 自分のものとは思えないような嗄れた声が出た。 「本当ですか!?ウチ、ウチ……!」 大丈夫か、俺?大変なこと言ったぜ? キサラギの目に、じわっと歓喜の涙が盛り上がる。 「これで…ウチもようやく…」 ようやく、なんだろう。分かりたくない。 「先輩の…ペットに…」 「……」 うっとりとするキサラギ。 疲れた…。 もう、百年も千年も眠りたい。 最後に…おめでとう、キサラギ。 新しい変態…。

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