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304 :初めから:2011/11/02(水) 14:56:33 ID:F6XqJE6k 「アーニャちゃん聞いて!私凄い男の子に会ったよ!」 結構な大声で白髪頭が私に突っ込んで来た。 激突の寸前、伯父に教えられた通り後ろに半歩下がり衝撃を減らす。 今更だが、なぜ伯父はこんな技能を覚えていたのだろう? ただの会社員のはずだが… 「でねっ!凄いんだよ!同い年くらいなのに、一目で私の病気当てたんだよ!」 「確かにすごいね」 聞いてもいないのに、次々と言葉が出てくる。本当にお喋りなんだから… 白髪頭――菜々美は私の数少ない友人だ。栄光ある孤立を貫く私とは違い この子はその容姿から、クラスでは浮いている。 「その子どんな子だったの?」 聞けば、中々社交的な子供らしく初対面の菜々美に物怖じせずに 話しかけ、菜々美の気難しい祖父母とすぐ打ち解けたそうだ。 この年齢でアルビノなんて言葉を知っていたりと興味深い… 「あっ!そういえば名前聞くの忘れた!」 「そう…残念ね」 彼女の故郷は以前まで私が住んでいた町――つまりあの男の子の可能性がある。 しかし、名前が分からなければ調べようもない。 心底残念だ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ここ成城学園は、結城 葵――以前の私が中等部まで過ごしていた学校だ。 またこの学園で過ごす事になるとは、因果というものは不思議だ。 「アーニャちゃん?今日どこ行くー?」 一年生当時、私を外人扱いして近づいて来ないクラスの連中を見て、決心。 かの大英帝国よろしくこちらから孤立することを決めた。故に栄光ある孤立だ。 決して、人付き合いが苦手とかそんなことはない。 「ちゃん付けはやめて。まるで子供みたい」 子供でしょー!と、怒る菜々美を見て思わず吹き出す。 菜々美は本当にいい子だ。容姿の問題さえなければ、人当りの良さからすぐにでも クラス一の人気者になれるだろう。 それに、どうゆう訳か彼女を見ていると伯父を思い出す。 目元や鼻、人好きする性格、考えてみると共通項が多い。 305 :初めから:2011/11/02(水) 14:57:02 ID:F6XqJE6k 「はい!静かに!今日は皆さんに残念なお知らせがあります」 バンッ!と先生が教卓を叩く。とたん静かになる教室。 先生に手招きされ、教室の隅に居た子が前に出る。 「明日、如月 咲ちゃんはご両親の都合で転校することになりました。」 彼女――如月 咲は、私と同じく自分から孤立しているような変わった子だ。 髪は肩まで届き、前髪は綺麗に切り揃えている。顔立ちは可愛いと言うより 綺麗といった子だ。 「それじゃ、咲ちゃんみんなに別れの挨拶を」 「………」 「あ、あの~」 彼女はひたすら黙ってる。何か懲りでもあるのか、単に喋りたくないだけか。 恥ずかしがっている様でもない。どちらにしろ妙なプレッシャーをまき散らすのはやめて欲しい。 先生も困っているようだし。 「……ありがとうございました」 結局その一言を言うのに十分ほど掛かった。 「咲ちゃん転校するんだね~」 「お仲間が減って悲しい?菜々美?」 どうゆう意味!?と怒り出す菜々美――流石に伯父のような上手い切返しは期待できない。 咲の事を考え直す。あの子には妙な親近感を感じる。まるで、伯父に関する 考察を得ていない――以前の私を見ているようだ。 「まさかね…」 一瞬ありえない考えが浮かんだ―― 306 :初めから:2011/11/02(水) 14:57:36 ID:F6XqJE6k 「――で、あるからして諸君は今から多感な時期に入る」 校長の長い朝礼に、眠気を誘われつつ思い出す。 結局、あの時少女の名前まで聞くことは出来なかった。 あの日少女の迎えに来ていた祖父母を見て、彼女が俺の娘 だと確信を持つことは出来たが、人の話を聞かずに駆けて行った 少女に、名前を聞くタイミングを逸してしまった。 「重秀…俺だって眠いんだ。せめて眼だけは瞑るな…」 いかにも眠たそうな担任が注意してくれた。眠っていた訳ではないのだが、 そう見えてしまってはいけない。世の中他者から見た印象というのは大事だ。 「そう見える」だけで実際は違っていても、与える印象や評価は人によって違う。 注意しよう… 「成城学園か…」 あの子の詳しい事情を知るには、成城への進学を考えるべきだが… 小学校6年の冬――あの日から3年経っていた ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ふん!どんなもんよ!」 どや?とばかりにこちらを振り向き、自慢げな顔で無い胸を張るさやか。 一緒に動くツインテールが俺の頬を叩く。相変わらず邪魔な尻尾だ… いつかスキを見て切り落としてやろうか… 「最高得点…確かにすごい――俺の次にな!」 言うや否やさやかの持つ銃型のコントローラを奪取。すぐさまコインを投入し コントローラーを画面に向ける。アーケードのガンシューティングをやるのは 随分久しぶりだが、この程度の難易度なら問題ない。 307 :初めから:2011/11/02(水) 14:58:57 ID:F6XqJE6k 「な、なんて出鱈目!?流れるような速さでゾンビが死んでいく!?」 傍でやけに高いテンションで俺のプレイを実況するさやか。 変な所でノリが良いから困る。 そんな事を考えていたらいつの間にかさやか の記録を更新。――俺の勝利だ。 「どうだ?すご…」「やったー!最高点だ!」 「……」 このゲームセンターの記録は常に更新されている。凜子のリザルト画面には 一位の文字。 「凜子に負けた…だと?」 「あれ何やってんだ?お前ら?」 「翔太!あんた待ってたに決まってんでしょ!」 落ち込む俺を放っておいて翔太に食って掛かるさやか――少しは俺を慰めろ。 しかしやっと目的の奴が来た。今日はこの男のためにみんな集まってきたのだ。 俺は鞄から包装された包みを翔太に差し出す。 姿勢を正し、強気な、それでいてわずかに恥ずかしそうな声で―― 「誕生日プレゼント。た、ただの余り物なんだからね!勘違いしないでよね!」 何故か、さやかにぶたれた。 その後、翔太の誕生会を理由にゲーセン、カラオケ、映画鑑賞と次々と遊びつくした。 さやかをおちょくり、翔太をからかい、凜子を家に送り帰宅する。 その帰り道――あの子の言っていたことをまとめる。この町の病院で生まれ、その日に 父が他界。そして、あの祖父母。間違いなく彼女は俺の娘だろう。 だが引っ掛かる点が一つ… 「自殺…か」 美代子の自殺には衝撃を受けた。あいつは非常に理性的な女だ。 娘一人を残して逝くような、そんな奴じゃないはずだが… 「分からん…」 静かな女だった。最初の内は一言も喋らず全くの無言。そんな彼女にいろんな話を聞かせて いるうちに、彼女のほうから徐々にではあるが喋りはじめた。その時の光景は思い出せば今でも 目に浮かぶ。 だが、美代子が死んでしまっては、もはや解決出来ない疑問だ。 「…いかんな、思い出してしまう…」 必死に嗚咽をこらえるも、目から涙が溢れ出てくる―― この人生で大泣きするのは生まれた時以来になりそうだった。 それから1年後、中学に進学してすぐの事だった―― 「やったぞ!悠乃!重秀!昇進が決まった!東京に転勤だ!」

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