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294 :サイエンティストの危険な研究 第六話:2011/11/01(火) 22:56:04 ID:U1juKE8k  次の日、俺はいつものように昼休みに観察をしていた。独自研究も早三日が経とうとしていた。今までの、既存のデータをまとめるだけの研究ではないため、俺にかかる負担はいつもよりでかい。  しかし、そんな負担すらも超える喜びがこの先に満ち溢れていると思うと、無意識にペンが進む。  というのがさっきまでの状態だ。しかし、俺のペンは今一寸たりとも動いてない。無意識すらも無視する信号、「魅入る」だ。  俺は瞬きをせずに現在の主な研究場所、兄の教室を見ている。そこでは、俺も予想していなかった出来事が起こっていた。 「いい加減にしなさいよ!お兄ちゃんにずっとベタベタしやがって!今すぐその汚い手をお兄ちゃんから離しなさいよ!」 「あなたこそいい加減にしなさい。少しは昭介の事も考えなさいよ。」 「お兄ちゃんと私は愛し合っているの!あんたなんかが入る隙なんか一つもないのよ!あんたこそ、あんたがお兄ちゃんにベタベタしてちょっとはお兄ちゃんの迷惑を考えなさいよ!お兄ちゃんは私に会いたくて会いたくて会いたくて会いたくて会いたくてしょうがないのに!」  まるでマシンガンのように怒鳴り散らす妹。もちろん事実なんかじゃない。  状況を説明すると、弁当を届けに来た妹がとうとう祐希に思いをぶつけた、といったところだ。昼休みが始まってから20分、ずっとこの調子だ。  当の兄は、二人の激しい争いをただ傍観してることしかできなかった。当然だ、この二人の間に入る隙間なんか一ミリも見当たらない。仮にあったとしても、その先に待っているのは、たとえ兄でも死のみだ。  結果、教室内は二人を中心に悪い空気が広まっていっている。誰にも止められないこの空気に、吐き気をもよおす人まで現れる始末だ。 「それに、あなた今お弁当を作ってあげてるらしいわね。でもなんで二人分しか作らないのかしら?」 「あんな奴にお弁当を作るなんて死んでもお断りよ!あんな奴お兄ちゃんの弟に産まれなきゃ良かったのよ!あいつさえ産まれなければ私とお兄ちゃんは一晩中愛し合えるのに!あいつなんか消えてなくなればいいのよ!お兄ちゃんは私のものよ!」  その言葉に祐希は・・・平然とした顔だ。変わったと言えば、口元が少し緩んでいる程度だ。 「そう、分かったわ。あなたがそこまで言うなら・・・ね。」  最後の「ね」が怖かった。いったい何を決意したのだろうか・・・。  言葉を終えた祐希は、何も言わずに席についた。 「お兄ちゃん~!ようやく二人になれるね~!スリスリ~!」  まるで他の親衛隊に見せつけるかのようにすりよる妹。兄は顔を歪ませ周りを見渡す。もはや兄を見るものは誰もいなかった。  兄弟としてもう見てられない。俺は早めに退散した。これはもはや観察をしている場合ではない。ここまでいったら、実際の妹の狂った映像を研究チームの解析班に見せてみよう。  ちなみに補足しよう。解析班とは、映像や音声データを実際に見て聞いて解析するエキスパート集団だ。妹の映像を見せれば、何か新しい発見があるかもしれない。そう考えていると、いつの間にか教室の前に来ていた。 295 :サイエンティストの危険な研究 第六話:2011/11/01(火) 23:02:05 ID:U1juKE8k  退屈な授業が終わり、ほっと一息つく。横目で、いなくなった木村梨子とその他の女子二人の机を見た。授業の途中、三人はそれぞれ別のタイミングで教室を出た。保健室に行くと言っていたが、向かったのは上の階。もちろん保健室は上にはない。ならば向かったのは一年生の教室になるだろう。そして、何をしにいったのかもわかる。  それを確信付ける物が、校庭に落ちていた教科書だ。その教科書には「1年6組35番藤崎翔子」と書かれていた。  とうとう親衛隊が、最大の敵である妹を潰しにかかったようだ。今までは兄がいた手前、なかなか行動に出れなかった親衛隊。しかし、さっきの抗争でリミッターが解除されたのだろう。  まぁさすがに親衛隊の前で「お兄ちゃんと愛し合っているの」はまずかっただろうな。  しかし、俺には好都合だ。この際妹がどうなろうが関係ない。俺にとっては研究資料がたくさんあればいい。  そんなことを考えている内に、家にたどり着いた。  軽く着替えてパソコンを起動する。 「・・・?」  ふとwebカメラの映像に目をやった。映像の中に、机の上で書き物をしている妹の姿があった。  しばらく見ていると、突然妹は持っていたペンを放り投げた。 「あは!ははは!はははははははははははははははははははははははははは!!!」  急に高笑いを始めた。その顔は、もはや狂気なんて言葉じゃ言い表せない域にまで達していた。  しばらく高笑いをしたのち、近くのトンカチを持って部屋を飛び出た。向かった先は予想できる。そして、その予想は見事に的中した。妹はトンカチを振りかぶって、兄の部屋の扉を思いっきりぶち抜いた! 「うわあぁ!!!」  派手な音と共に聞こえる兄の声。予想通り、兄の部屋を襲撃する妹。一方の兄は、まだ状況を把握できないでいる。当然だ、妹が急に自室のドアをぶち抜いて来るなんて理解できないだろう。  妹はそのままトンカチを放り投げ、ゆっくりと兄に歩み寄る。その表情は未だに狂気を宿していた。 「おい翔子!いったいどうしたんだ!?」 「お兄ちゃん・・・。これでやっと二人っきりだね・・・。」  雄を見る雌の目をした妹が、ゆっくりと兄に近づいていく。 「翔子・・・何を言っているんだよ!?いい加減にしないと!」 「もう誰にも邪魔されないよ・・・嬉しいよねぇ~嬉しいに決まってるよねぇ・・・だって、お兄ちゃんは私のこと大好きなんだもんね。私もお兄ちゃん大好きだよ~お兄ちゃんと二人っきりで嬉しいよ。」  何だこの妹は?これがあの妹とは思えない。確かに狂ってはいたが、ここまで狂ってたか?  まさか・・・今までの俺の研究のための仕込みがこの結果を生み出したのか?ちょっとだけ罪悪感はあるが、研究のためなのだからしょうがない、と自分の中で完結させておこう。  妹はそのまま兄に倒れ込む。兄はしっかりと妹を受け止めるが、それを妹は違った意味でとらえたようだ。 「えへへ~、やっと愛し合えるね。あんなクズみたいな女共なんかに邪魔なんかされないよ。」  クズみたいな女共、この言葉を聞いた途端、兄は妹を突き飛ばした。 「翔子・・・いい加減にしろ!!!」  妹は壁に背中を打ち付けた。その表情は一変、狂っていた表情がさらに狂い出した。人間はこんな表情をするのか、研究者として色々な話は聞いたことはあるが、全ては"想像つく"範囲での話だ。しかし、今の妹の表情を説明をしろと言われたらおそらく出来ない。  対して兄の顔は、今まで見たことがない、怒りの表情だった。兄は温厚で、普段は絶対に怒らない性格だ。それがここまで怒るとは、よほどさっきの言葉が気になったんだろう。 「翔子・・・祐希をクズ何て言うな!」  静かに怒る兄。感情的にならない兄らしい怒り方だ。もちろん迫力なんかないが、今の妹にとっては何よりもダメージを与える最善の方法だ。「お兄ちゃん・・・?私だよ?翔子だよ・・・?」  妹は何も見えていないのか、空を掴むように手を伸ばす。 296 :サイエンティストの危険な研究 第六話:2011/11/01(火) 23:02:57 ID:U1juKE8k 「お前は・・・俺の好きな人をクズって言ったんだ・・・!」 「好きな人・・・?私じゃないの?」 「俺は・・・祐希が好きなんだ!」  妹の顔が無表情になる。そして俺はマジで驚いた。まさか兄が祐希を好きになるとは思わなかった。  確かにそんな感じが無いとは言い切れなかった。小さい頃から特にあの二人は仲が良かった。あの時、俺と友里は二人は結ばれるものだと思っていた。  しかし突然現れた伏兵、妹と言う存在が全ての歯車を一斉に狂わせたのだ。 「もういい・・・お前と話が通じないんだな・・・。今すぐこの部屋から出ていけ!」 「嫌だよ!お兄ちゃん大好きだよ!あんな奴に洗脳されちゃったんだよね?私が覚まさせてあげるから!」 「・・・もういい、俺が出ていく。」  兄は妹を再び突き飛ばし、早足で部屋を出ていった。残った妹は何もできずにただいるだけの置物のようになってしまった。  金曜日の朝、兄は家を出たきり帰ってこなかった。そして、妹は昨日の時から一切動いてない。  とりあえず学校に行く準備をする。研究の最後の締めの仕込みをしなければならない。 「よし・・・最後の締めだ。」  決意を秘め、学校に向かった。  昼休みに教室に来た俺は、昨日の抗争以上の驚きを覚えた。 「は~い!あ~ん!」  昨日、妹の相手を立派につとめあげた祐希が、間抜けに口を大きく開けている兄にご飯を食べさせてる。二人の空気は明らかに周りとは違っていた。明らかに周囲から浮いている存在、言うなれば「バカップル」だ。  まさか兄は祐希に告白したのか?というか、そうじゃないとこれは説明がつかない。 「そうだ!ねぇ祐希、明日俺の家で勉強しない?」 「え!?行っていいの!?」  聞こえてきた会話、それを聞いた瞬間、俺は心臓が高鳴った!  最後の締め、それには祐希の存在が絶対不可欠だった。それが、偶然でこうも都合よく転がるものだろうか!考えてみれば、今まで俺は多少の仕込みで予想以上の成果を上げてきた。それはまさしく、俺の方にいいように転がっていった。そして最後の締め、サイエンティスト藤崎亮介の集大成とも言える最後の段階までもが俺に味方した。これはまさしく、俺に研究を完遂してほしいという天からの声なんだ!  小さくガッツポーズをしたのち、俺は揚々と自分の教室に戻った。待ってろ世界・・・待ってろ女共!  家に着いた俺はパソコンをすぐさま起動させ、チャットを開いた。 リョウ:皆さん、明日は僕の研究の最終段階を迎えます。そこで皆様とチームの解析班に見ていただきたいのです。 マルキ:おぉ!リョウさん待ってました! 村田:解析班って要請できましたっけ? マルキ:確かできたはずですよ? リョウ:では明日のお昼頃、チャットへ正午には入っていてください。 スーケ:思ったんですがリョウさんの研究テーマって何なんですか? 村田:明日までのお楽しみでよくないか? マルキ:それもそうですね。あ、ちなみに僕はもうデータは送りました。 スーケ:ちなみにいくらぐらいで?  この後はいつものメンバーでいつも通りの会話をしてその日は終わった。 「・・・・・・・・・・・・・・・寝よう。」  明日は決戦だ。まだちょっと寝るには早いが、大事をとって寝ることにしよう。  俺はさっさと布団を被って、頭に寝るよう指令を送る。しかし、何故だか眠れない・・・。 「・・・。」  緊張で眠れないのならわかる。しかし、緊張などしていないのに眠れない。頭に流れるのは、今までになかった考えだった。 「俺の身に・・・何かが起こる。」  流れる考えが口から飛び出た。そして声は全身に流れ、変な汗となって俺を悩ませる。  危険が伴うのはわかる。しかし、最善の注意を払ってきたから大丈夫なんだ。と必死に言い聞かせるが、不安が最後まで拭いきれなかった。  結局俺が寝たのは、それから三時間後だった。  そして決戦当日・・・。

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