「ツイノソラ4話」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

ツイノソラ4話」(2012/05/05 (土) 13:06:55) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

444 名前:ツイノソラ4話 ◆wERQ.Uf7ik[sage] 投稿日:2012/05/05(土) 00:43:22 ID:CUtNslec [3/9]  ワンボックスカーの後部座席では、ケイがこちらにおしりを突き出した姿勢で膣から精液を垂れ流し、失神している。  全身を赤く染め、時々打たれたようにびくっと震える。  乾いた布で手早くケイの身体を拭き上げ、後始末をしてから僕も眠る。  二人一緒に眠るのは、いつ以来だろうか。  …  ……  ………  …………  目を覚ますと時計の針は午前八時を指そうとしていた。  僕の胸に顔を埋めるようにして眠るケイの髪を一つ撫で、締め切ったシャッターの方に視線を向けると、隙間から日光が 射し込むのが見えた。  少し、寝過ごしてしまった。 「ケイ、朝だよ。もう起きて……?」 「んん…」  いやいや、と首を振るケイは捨て置き、僕は着替えを済ませる。  シャッターを開け放ち、とりあえずこの車庫の中を物色する。  スペアタイヤがあったので、まずはそれを確保し、工具箱を失敬する。  工具箱の中にバールがあるのを確認し、僕はニヤリと笑う。あとは日中の探索でガソリンを確保できれば行動の幅は、グ ンと広がる。  しばらく車庫の中を物色し、一番嬉しい掘り出し物は乾電池とジッポーライターだった。  ジッポーはオイルを入れれば使えるし、乾電池に至っては懐中電灯、ランタン……用途は幅広い。  レイスの巣になっていたことで、かえって荒らされずに済んでいたようだった。  そこまでの探索を終えたところで、ケイがのそのそと起き出して来た。 「おはよっ! カナメ!」  全裸でやって来たケイは、ぐっと大きく伸びをする。  愛液と精液の混じった粘性の液体が、つうっと腿をつたう。  ケイは自然な流れでそれを指で掬い取り、口に入れた。 「カナメぇ……お腹すいた……」  それに合わせたように、僕のお腹も、くうっと鳴る。 「……だね」  車庫内の探索を終え、続いて食事の準備に移る。  干し肉や干物等の保存がきく食糧でなく、それ以外の食糧から片付けて行く。  僕らは何でも食べる。トラップを張って仕留めた小動物や野草、木の実、時にはケイが捕まえた昆虫だって食べる。  今朝は野草とキノコを入れたスープと炒り米で朝食を済ませた。  ケイは食事中も全裸のままで、時折股間から流れ出す液体を舐め取りながら、幸せそうな笑みを浮かべていた。 「カナメ……夕べは、すごかった……」 「そう……」  無駄にエロいケイは放って置いて、僕はせっせと食事を詰め込む。  ケイが車庫のワンボックスカーを見て、しみじみと言う。 「あれは、便利なものだっ……」 「知ってるよ」 「大事にしないとなっ!」 「言われなくても、そのつもり」  ケイが、うんうんと頷いた。  朝食を終えるとケイを促して着替えをさせる。  激しい運動の邪魔になる大きな胸にサラシを巻いてやり、続いてレイスの引っ掻きや噛みつきを防ぐため生地の厚い迷彩 服を上下に着させる。僕とお揃いのものだ。  今日の予定は探索だ。必要物資のありそうな場所は昨日の内に目星を付けてある。  護衛をするケイには近接戦闘の可能性がある為、手にはバンテージを巻き、その上に革製のグローブを付けるように命じ る。  「……ブラスナックルとブラックジャックは?」  ここで、鈍いケイも気付いたのか、声色が固くなった。  そう、今日はいつもやってるような探索じゃない。 「必要だよ」  僕は短く告げ、ケイの頬にキスをする。 「……?」  不思議そうに首を傾げるケイに頷いて見せる。  これから行くのは市街地だ。危険を承知で宝探しをするのは僕らだけじゃない。  進んで暗がりに入る必要もある。  第一世代の荒くれに絡まれる可能性もある。  僕らが行くのは市街地。  暗がりにはレイスが。日の照る場所には、ケイが何より嫌う『人間』たちがいる。  自力で生きている以上、他者とのトラブルは避けられない。 445 名前:ツイノソラ4話 ◆wERQ.Uf7ik[sage] 投稿日:2012/05/05(土) 00:44:04 ID:CUtNslec [4/9]  ケイと共に車で街の中心部に向かう。  道中、路上に乗り捨てられている車を見て回り、ガソリンの残量がないか確認する。  同じことを考える奴はいくらでもいるようで、中々ガソリンを集めるのは難しいが、お目零しに預かった数台からガソリ ンを入手することができた。  ガソリンスタンドなんてものが機能しているのは一部の強力な自治体か、自衛軍のいるホッカイドウくらいのものだ。  僕がガソリンを抜いている間、ケイが周囲の警戒にあたる。 「ケイ、人間に気を付けるんだよ」 「……」  ケイが厳しい表情で頷く。  馬鹿で淫乱のケイが世界で一番嫌っているのは『人間』だ。  腕力こそずば抜けているものの、知能で劣るケイは『トーキョー』の集落では馬鹿にされ、ずっと差別され続けていた。  度重なる嫌がらせに、ある日、業を煮やしたケイは、六人相手に大立ち回りをやって退け、その内二人が命に関わるほど の重傷を負った。  殆ど追い出される形で集落を飛び出したケイが、途方に暮れている時に出会ったのが僕だ。  差別から孤立していたケイと、思想の違いから孤立していた僕。  第二世代として知能こそ高いが、体力や腕力ではオールドタイプより劣る僕と、第一世代の中でも傑出した運動能力を持 つケイ。ある意味、理想的な組み合わせの僕たちが行動を共にするのは自然な成り行きだったのかもしれない。  最初の内、無言で僕を見つめるだけのケイの視線は猜疑心に満ちていたものの、ホンの数日でその態度はがらりと変わっ た。 「カナメは……優しいなっ!」  別に特別なことをしたわけじゃない。ホンの数日、一緒に暮らしただけだ。  第一世代のケイは僕の三倍は食べる。これは、ケイが大食しているのではなく、第二世代の共通の特徴として、僕は極端 に食が細いのだ。  そんなケイに、僕は惜しみ無く食料を与えた。  腕力があり、おつむはからっきしの彼女は、僕にとっては理想的なパートナーと思えたからだ。  何でも自分で選びたい。誰の制止も受けたくない。自由に行動する僕をケイが守る。  僕がケイに求めたのは、ひたすら我が身の安全だった。その要望に応える彼女の期待に応えるのは、ある意味、僕の義務 とすら言える。  ケイが腹を空かせた時は食事を。寒がれば毛布を。寂しがれば愛情によく似たものを。鬱憤が溜まった時は快楽を与えて やった。  ただ予想外だったのは、ケイは僕が思っていたよりも、強く、馬鹿で、淫乱で、独占欲が強く、残忍だったことだ。  トーキョーを出て、ケイにどのような心理的変遷があったのかは分からない。  ケイは僕以外の『人間』を憎み、嫌うようになった。  午前中は乗り捨てられた車からガソリンを抜いて回る。  警戒状態のケイはストレスが溜まったのか、時折苛立たしげに舌打ちしたり、路上に唾を吐き捨てたりしていた。 「どうしたの、ケイ。苛ついて」 「……見られてるっ!」  言われて僕も周囲を見回すが人気はない。  隠れた場所から監視している。しかし場所の特定には至らない。それが原因でケイは苛立っているのだ。  目を剥いて喚き散らすケイは軽い興奮状態にある。 「いいかげんにしなよ」  ケイのしりたぶを捻り上げ、左右に揺すってやる。 「ぐうううっ……」  痛みを堪える声には、どこか甘い響きがある。ケイは確実にマゾの性癖を開花させつつあるようだ。 「集中するんだ。じゃなきゃ――死ぬよ?」 「!」  死ぬ、という言葉に反応して、ケイの鼻がひくっと動く。  ……ケイは、銃で腹を打たれたことがある。  同行していたのが第二世代の僕じゃなければ、ケイは死んでいただろう。  弾丸は腹膜で止まっていたが、麻酔なしの処置から来る激痛は、物覚えが悪い馬鹿のケイにも解るように強い教訓を垂れ た。  レイスなんかより、生きた『人間』の方が余程始末に負えない。 「脳みそ……撒き散らしてやるっ……!」  呟いたケイの瞳から光が消える。  問答無用の先制攻撃は余計なトラブルの原因にしかならないが、まあいい。そう思うことにする。そこまでの考えは、ケ イには高望みだ。  この終わりかけた世界で生きる以上、最善の道はあり得ない。  あるのは次善の道。それだけ。 446 名前:ツイノソラ4話 ◆wERQ.Uf7ik[sage] 投稿日:2012/05/05(土) 00:47:11 ID:CUtNslec [5/9]  ケイにバールを使わせ、門の鍵を破壊して家屋に侵入する。 「ケイは車の見張り」  僕が言うと、ケイは、ぎょっとして目を剥いた。 「あぶないっ! 何考えてんだっ!」  門には鍵がかかっていた。高い確率で、家の中にレイスは存在しない。荒らされてない可能性が高い。……人間がいる可 能性はあるが。 「一人は駄目だろっ、一人はっ!」 「ん、わかった。じゃあ、ケイが行ってきてよ」  レイスも人間も関係なく、ケイに『掃除』をさせる。メリットは、先ず安全を確保できること。デメリットは、中にいる のがまともな人間だった場合でも『掃除』されてしまうこと。  ケイは人間を必要以上に嫌うが、僕はそうじゃない。  まともな会話が可能な人間からは情報交換が可能だ。物資は貴重だが、情報ほどじゃない。……過去にケイを捨てようと した理由の一つでもある。 「あーっ、もうっ! ああ言えばこう言う!」  ケイが、ばらばらに切り揃えた髪をかき回す。……これもそのうち、きちんとカットしてやらなければならない。  僕は車の有用性を解き、個別での行動の必要性を解いた後、ケイに選択を迫った。  『掃除』をするか、『見張り』をするか。  僕が無理に決めれば、ケイは独断で行動に走る。だから、ケイに決めさせる。重要なことだ。  ケイはしばらく迷っていたが結局は、 「……見張りをする……」  という決断をした。  ……残念。『掃除』に行ってくれれば、今度こそ捨てられると思っていたのに。  そう、やはりあるのは次善の道……。 △▼△▼△▼△▼  家屋に侵入する。  不幸か幸運か、人間もレイスも存在しないようだった。  埃と黴の匂いがする廃屋で、僕は必要物資を回収して回る。  大戦以降も人が住んでいたのか、思ったより良質な品物を回収することができた。  浴室ではギフトの箱詰めになったままの石鹸を手に入れることができたし、キッチンでは塩素や中性洗剤を手に入れた。  これは大当たりかもしれない……。  その思惑の正しさを証明するかのように、家屋からは有用な物資が大量に見つかった。  衣服は大分傷んでいたが、ウエス(きれはし)にすれば、ふき取りなんかに使える。棚からはまだ食べられそうなフルー ツの缶詰を見つけた。  ケイの様子身を兼ね、それらの物資を次々と車に運び込んで行く。  三回程往復を繰り返し、取り切れない物資はまとめて押し入れの奥に隠す。  寝室で見つけた貴金属の類いも攫って行く。こんな時代だが需要はある。『メトロポリス』に住む一部の富裕層は装飾品 に目がない。持って置けば物々交換に使えるし、うまく行けば通貨を手に入れることが出来るかもしれない。  そこで、屋外から大きな物音と男たちの怒声が聞こえた。 447 名前:ツイノソラ4話 ◆wERQ.Uf7ik[sage] 投稿日:2012/05/05(土) 00:48:57 ID:CUtNslec [6/9]  ようやく来たか。  僕は慌てることなく、既に組み立てていたボウガンを手に取り二階へ向かう。  窓から見下ろすと、既に二人の男がケイに頭を割られて倒れていた。三人ほどがケイを取り囲み、残る二人が車ごと物資 を奪おうとしていた。  物資を奪おうとしている二人を優先して、ボウガンで狙いを定め、射殺する。 「ケイっ! 一人は殺すな!」  話がしたい。その思惑からの指示だが、僕が行かない限り、望み薄だろう。  襲撃者の人数がはっきりしない。そのため僕は慎重に階下に向かい、ケイの元を目指す。  玄関のところであたふたとして、家屋の中とケイを見比べている馬鹿を発見したので、物陰からボウガンの矢を見舞って やる。  第二世代の僕の駄目な所は、腕力行使による生け捕りができないということだ。  これまで何人くらい殺した? 数えたことはないが、ケイより多いのは確かだ。  駐車してある路上では、ケイが既に二人を倒し、半ば戦意を喪失して後込みする様子を見せている二〇代半ば程の男に向 かって鉄パイプを構え、威嚇しているところだった。  ――間に合った。 「殺すっ! 殺すっ! 脳みそ、ぶち撒けろっ!」  対峙する男は、年齢から察するに旧世代の人間……『オールドタイプ』だろう。若干、第一世代の可能性があるが、それ はないと思う。 「やっ、やめっ! 分かった! 俺たちが悪かった! 降参する!」  そんなことを叫びながらも、男は手にしたナイフを放そうとはしない。 「ケイ、腕をへし折ってナイフを奪うんだ」  一瞬、僕に視線を走らせた後、ケイが鉄パイプを振るう。  男はそれに殆ど反応できず、折れ曲がった腕を抱えて悲鳴を上げた。……やはり、オールドタイプの人間だ。第一世代な らこう簡単には行かない。  興奮したケイが、とどめを刺してしまう前に割って入り、転がるナイフを蹴っ飛ばす。 「どけ、カナメッ!」  退くもんか。ケイ以外の生きた人間と会話するのは久しぶりだ。この機会を逃す訳には行かなかった。 448 名前:ツイノソラ4話 ◆wERQ.Uf7ik[sage] 投稿日:2012/05/05(土) 00:49:30 ID:CUtNslec [7/9]  指の骨を七本ほど折った所で、彼は正直者になった。  最初、仲間が後三人残っているとほざいていたが、結局は仲間はもういないと白状した。  更に、彼らのアジトの場所と構成員の情報を聞き出した頃には、彼の関節が倍以上に増えてしまっていたのは、僕にとっ ても彼にとっても悲しいことだった。  ケイは喜々としてオールドタイプの彼を痛め付け、僕は同じ質問を何度も繰り返した。  拷問をしている間、誰も助けに来なかった事からして、ここに彼の味方は、もういないというのは本当のことのようだっ た。  二時間程の尋問の後、ケイにとどめを刺すよう指示した時、彼が、ほっとしたように安堵の表情を浮かべたのが酷く印象 的だった。  罪悪感はない。一歩間違えば、僕は同じ目に、ケイはそれ以上に酷い目に遭っていただろうことは間違いないだろうから 。 「さよなら」  僕が告げて、ケイが鉄パイプを振り落ろす。  時刻が昼を過ぎていたことから、この日の探索を断念する。どうせ、急ぐ旅じゃない。それに僕は虚弱な第二世代だ。少 し疲れてしまった。 「カナメ、これからどうする?」 「そうだね……今日はもう、ゆっくりしようか……」  頑張ったケイを座らせ、返り血に汚れた顔を拭ってやる。  ケイは深く溜め息を吐き、それからゆっくりと、緊張を解いた。 「カナメは優しい……わかってる……」 「……」  それはどうだろう。  僕は答えることはせず、ケイに柔らかな笑みで答えるのだった。 △▼△▼△▼△▼  北に向かって二時間ほど車を走らせる。  僕の知識が確かなら、ここはニイガタで、そろそろニホンカイに出るはずだった。  知性と理性に優れる第二世代の最も高い死亡原因は――自殺。  高い知能と理性の行き着く先は、未来への絶望と生の放棄なのだ。  僕も時々は考える。  生きていてどうなる?  海は濁り、汚染された雨の降るこの世界が、いつまで持ちこたえられるというのだ。  自衛軍?  馬鹿馬鹿しい。奴らが『レイス』を研究して、どれだけのことが分かった? 第一、第二世代が、なぜ存在する? それ に答えられないのが、奴らの限界じゃないか。  子孫……? どうせ死ぬ。そんなことに何の意味が―― 「――海だっ!」  ケイのその声に、はっとして強く頭を振る。  ――考えるな!  朗らかに笑うケイに笑みを返しながら、濁った海と曇った空とを見比べる。 「終わる世界……か」  負けてやらない。精一杯の意地を張り、僕は―― 「潮の匂い……カナメっ、一緒に遊ばないかっ!?」  窓から身を乗り出して言うケイの様子に、思わず吹き出してしまう。  余計な力が肩から、すうっと抜けて行く。 「それもいいね」  僕は――僕らは、確かに今日を生きている。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: