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511 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10:31:08 ID:Eysd06wo
***
狸は布団で横になり、唸っていた。
まだ背中のやけどが痛むのだろうか、狸は寝返りをうつたびに少し叫んで飛び起き、
いつものように自分の不運を嘆いていた。
すると、扉が軽く鳴る。狸は重い腰を上げ、のそのそと扉に近づく。
開けると、にこにこと笑っている兎の姿がいる。
狸は肩を落とし、物憂げな表情をしてゆっくりと口を開く。
「兎さん、今日は一体なんの用事だよお……」
兎は懐に抱えている壷を見せる。
中には粘り気のある液体が入っている。
「いえいえ、狸さん、こないだはとても不幸な目に会いましたね。
まだ傷も癒えていないかと思ったので、知り合いの薬師に、
やけどに効く薬を分けて頂いたのですよ」
狸は少し溜息をつき、弱弱しく言葉を返す。
512 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10:33:13 ID:Eysd06wo
「その薬というのも、唐辛子が入っていたりして、肌がひりひりとなったりするのだろう……
あるいは、法外な値段を吹っかけたりするのだろう……」
兎は表情を崩さずに笑いながら返す。
「あらあら、狸さん、私はそこまで性悪ではありませんよ。
ちゃんとした塗り薬ですし、お金もいりませんよ。
それに狸さんは身包みを剥がせるほど豊かでもないでしょう?」
狸は疑うような目をしていたが、兎が急かして中へと強引に入る。
狸も半分は諦めた様子で、穴倉の中へと案内し、一枚の座布団を差し出した。
兎はその上に行儀良く正座をする。狸は背中を見せる。
背中は毛が無くただれており、怪我の痛々しさを伝えている。
兎は塗り薬を指で救うと、手のひらを使って背中全体へと伸ばしていく。
狸は塗られると何やら肩の力が抜けるような気持ちよさを覚えたが、
段々と体が火照り始め、気持ちが高ぶりはじめた。
特に女性と肌を合わせたこともない狸のことであるからして、
この状況に対して耐性の無い狸が、
扇情的な気分になるのも仕方がないことだった。
513 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10:33:59 ID:Eysd06wo
また、かわいらしい兎がこのように肌へと薬を塗っていくと考えることが、
何処か狸の妄想をかきたててしまうのだろうか。
狸の下半身が段々と反応をし始め、自分自身をますます困惑させてしまう。
流石にこのような情けない姿を見せないためにも狸は目をつぶり、
落ち着かせようとした。
暫くすると、手の動きが止まったのか、液体の粘るようなぬるぬるした感触が消えた。
もう、塗り終わったから、安心できるかなと思う。
しかし、今度は何か背中に圧し掛かかられているように感じる。
目を開けると、首の前で、兎が手を交差している。
狸が後ろを振り返ると、直ぐ傍に兎の顔が見える。
白い肌の頬をほんのりと赤らめ、うっとりしたような目付きで狸を見ている。
しかし狸には正直それが気持ち悪いとしか思わなかったし、
狸をより一層困惑させる原因となっていた。
それは考えれば当然のことで、兎にあれほどまで虐められてきたのだから、
このようにされたとしても、素直に従うほどの度胸も甲斐性も狸にはないだろう。
だが、狸の気持ちとは裏腹に、狸は兎の身体を求めてしまいそうになっている。
514 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10:34:22 ID:Eysd06wo
いったい、俺はどうしてしまったのだろうか、と狸は思う。
兎は身を乗り出し、狸の肩に顔を出し、耳元で誘うような甘い声でささやく。
「ねえ……狸さん……本当にあの娘のことが好きなのですね?」
弱弱しく息があたり、呼吸の音が聞こえる。
狸は顔を真っ赤にしてうつむく。
「いいいいやそそそそのおれはああああのこのことがすきで」
緊張しているのか、このような状況に慣れていないのか、
狸はしどろもどろになっている。
上手く舌も回らず、身体も震わせていた。
兎は狸の頬に手の平をあてて、ゆっくりと兎のほうへ向かせる。
兎の顔がゆっくりと近づき、唇同士が触れ合う。そして、舌と舌が絡み合う。
何も音のしない静寂の部屋で二匹の唾液が絡む音だけが響く。
狸は、蒸気が吹き出んとばかりになっていた。
唇を離すと糸を引き、呼吸に合わせて、二人の肩が上下する。
「おおおおい、うさぎさんおれおれをからかうのはやめてくれよお」
515 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10:35:27 ID:Eysd06wo
狸は兎を突き放し、壁に寄る。
兎は少し首を傾け、潤んだ瞳をぱちくりとさせている。
「何一つからかっていませんよ。
寧ろ狸さん、貴方こそ、女性がこのようにしているのですから、
もう少し構っていただけないと恥をかかせることになりますよ」
そのように喋りながら、兎は距離を詰めて行く。既に兎は上着を脱いでいた。
何時の間に、と狸は思う。
ゆらゆらと揺らめく蝋燭の光に照らされて、兎の膨らんだ乳房に影が出来ている。
その姿は淫靡に感じられ、ますます狸には直視が出来なかった
「はははははじとはいっても、おれはおれはむすめにはじめてをささげるつもりで」
兎は狸の下着へするりと手を滑らせる。
十分に硬くなった男根の頭部分から少し粘り気のある液体の感触が、
兎の手のひらから伝わる。
その液体を伸ばすように手で撫で回す。
516 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10:36:21 ID:Eysd06wo
「ふふふ……狸さん……
私ならばともかく、他の雌に貴方の"始めて"を捧げるだなんて、
本当に純情なんですね……本当は誰にも捧げられたないのに……
私はそんな狸さんが好きで好きで仕方がないんです……
でも、それが私ではないのが許せないんですけどね……」
そっと狸の首筋に手を添え撫でる。
狸の背筋が凍る。
それは別種の怖さであった。
狸はそれほど女性経験もないので、ちゃんとした言葉に出来ないが、
それでも伝わってくる冷ややかな怖さ。
虐めるときに見せるような怖さではなく、もっと違う、何かどろどろとした怖さを、狸は感じた。
「ああ……うさぎさん……うさぎさん……こんなことはだめだ、だめだよう」
狸は身が硬くなってしまい抵抗すること出来なかった。
兎の撫で回す感触にただただ震えるだけであった。
「何が駄目なのですか?本当はこのようなことを望んでいたのではないですか?」
狸の耳元で囁き、そして耳を甘噛みし、そのまま耳の周りを舐めまわす。
耳を這う舌の音がいっそう狸の欲望を駆り立てる。
兎は狸の物を握り、優しく動かす。兎はまた続ける。
517 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10:36:51 ID:Eysd06wo
「狸さんは私の気持ちに気が付いてくれることを信じていましたよ……
でも、そんなことは無かったわけです……
むしろ貴方は自分に優しくしてくれた人にだまされてほいほいとついていったわけです……」
狸は身を震わせ、唇を噛んでいる。兎は手の動きを早くする。
「最初のうちは貴方に虐め倒し、私を見るたびに震え上がり、
従わざるを得ないところまで追い込もうと思いましたが、やめました。
むしろ貴方に、あの小娘なんかには到底思い浮かばないような快楽を身体に教え、
私だけしか抱けなくしようと思ったのです……
あんな小娘なんかに、あんな小娘なんかに、貴方を寄越してやるものですか……」
狸は兎の腕に力なく手を置く。
最後の抵抗。
狸は目をきゅっと閉じ、身体を震わせた。
兎は手の中に暖かく粘り気のある液体が強く当たる感触を覚えた。
きっと射精したのだろう。
518 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10:37:16 ID:Eysd06wo
兎は手のひらを見つめ、舌で救いあげるようにして舐める。
射精したせいか、狸はぼんやりとその姿を見つめている。
一体、目の前の兎は、いつも見る兎なのだろうか?
あの意地悪で虐めてくるあの兎なのだろうか?狸は動かない頭で考えていた。
しかしその考えも次なる快楽の刺激が、それを阻害した。
兎がひくひくと動く肉棒に兎は腰を降ろしていた。
「確かに私の料理は下手だと思いますが、
あれは本当に貴方だけに食べさせるために作ったものですよ。
あの料理には私の"愛"が入っていたのですから……
ねえ、狸さん、何が望みですか?娘の体ですか?
自慢じゃないですが、私はあの娘よりもよほど良い体をしていると思いますよ……
自惚れなしに、ですよ……
それに娘よりも一緒にいられますしね……
私と一緒にいたほうがいいんです……絶対に……」
519 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10:37:52 ID:Eysd06wo
兎は腰をなまめかしく動かす。
狸はされるがままだった。
何も考えることも出来ず、ただ力無く兎を見るだけだった。
そのように腰をこすり付けられることで、狸は射精感を再び覚え始めた。
「駄目ですよ、狸さん……
先ほど背中に塗った薬は、"愛液"によって、その効果が増えるんです……
しかも若くて美しい娘の愛液ほど効果があるのです……
さらにいうならば、その"愛液"が"精液"と混ざることで、
効果が活性化され、治りがよくなるのです」
狸にはもうそれが本当かどうかを考えるほどの気力はなかった。
兎はそのまま、自らの穴へと棒を招きよせ、そのまま繋がった。
520 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10:41:18 ID:Eysd06wo
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狸が目を覚ますと、既に兎の姿はいなくなっていた。背中の痛みは既に引いていた。
狸はぼんやりと顔をこすりながら、自分でも変な夢を見たものだなあ、と思った。
ふと、狸が机の上を見ると、そこには達筆な字で
『他の用事があります、ごめんなさい』
と書かれた手紙と、毒々しい色の芋の煮っ転がしが皿に添えられていた。
狸はふと台所を見ると、乱闘か何かの跡のように悲惨な状態になっていた。
狸は台所を掃除することと、目の前の小皿に添えられた料理のことを考えると、
段々と頭が痛くなってきた。
521 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10:43:25 ID:Eysd06wo
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兎は少し離れた草むらで佇んでいた。
暫くすると、狐の行商が鈴を鳴らしながら歩いてきた。
兎は手を振って呼び止める。
狐は媚びるような笑いをして近づいてくる。
「おじょうちゃん、こないだはありがとね、どうだい、効いたかい?
あの媚薬っつーやつは?肌にひとぬりすればたちどころに体が火照り、
快楽だけにしか身動きできなくなるという奴は」
手を揉みながらまくし立てる狐。兎は呆れた顔をして言う。
「全く、あいかわらず口が減らないのね」
狐はへへへ、と舌を出した。
522 :恋の病はカチカチ山をも焦がす ◆iIgdqhjO26 [sage] :2008/02/14(木) 10:44:39 ID:Eysd06wo
「これも商売のうちですからね、で今日は何にしましょう?
この穴開き包丁は切れ味抜群でどれだけ切っても野菜が包丁にへばりつかないわけで
お手入れも簡単とこれぞ主婦の見方というわけで」
「いえ、そんなものはいりません。
"私は別に物理的に殺したいわけではない"のですから」
狐は殺す、という言葉を聞いて、その兎の表情を改めて見つめた。
確かに口元は笑っている。
しかし目は笑ってはいなかった。
狐も数年行商をやっているから、それほど勘が無いわけでもない。
この目をした女性はたいてい似たような商品を要求する。
狐の手のひらから汗が滲み出る。それは……
「一口舐めただけで段々と体が衰弱し、
何時しか死においやってしまうような毒薬が欲しいのです」
沈黙が流れる。
荒涼とした草むらに風がざわつき始める。
狐は天を仰いだ。きっと嵐が来る。どろどろとした嵐が。