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590 名前:白髪女とちっさい女 第4話 ◆gnQKrmKMl.[sage] 投稿日:2012/06/09(土) 14:40:24 ID:4wO9i5Cc [4/10] 学園祭で何をするか決まってからの3週間はすぐに流れた。 結局の所卵かけご飯じゃなく丼屋をすることになってのだ。 それからは研究、研究と毎日学校から帰ると研究と言うなの料理に付き合わされた。それこそ遊ぶ時間がないほどに。 特にやる気があるのは禊で毎日僕を誘いに来た。 まず授業が終わるとすぐに僕の席に来て僕を捕まえる。 そのあとはスーパーに行って食材を購入し、僕の家に直行するのだ。 そしてそれからは料理に試行錯誤して、完成品がその日の晩ご飯になる。 食後は禊とゲームしたりして過ごすのだ。(禊はゲームしかしないのだが・・・) だから僕には遊びに行く時間なんてないのだ。 余りにも休みがないので 「何でこんなに熱心に誘いにくるんだ?」 と質問してみた。 「そんなの沢山売ってそのお金で新しいゲームを買うに決まってるだろ。そのために沢山修行しないとダメじゃないか。」 と言う禊に反論してみたりする。 「ちょっとは遊びにいかせてよ。禊は張り切りすぎだって。もう種類もかなりあるし、味もよくなったから準備は大丈夫だろ?」 そう言うと禊は腕を組んで考え込んだ。 考え込むこと数秒。 「まぁでも最近は根を詰めすぎたし、少しは休みが必要なのかもね。よし!!三日間の休みを与えてやろう。」 三日間の休みをもらえた。何でも言ってみるものだな。 この休みの三日間は何をしようかなと考えるが余りいい案が思いつかない。 何をするのか考えていると、メールの着信音がなった。 彩弓ちゃんからだった。 『お買い物に行着ませんか?お買い物!!もうそろそろ衣替えの季節ですよね?新しい服が欲しいなあー何て思ってるんですよ。』 ポチポチと返信の文を打つ。 『まあいいよ。暇だから付き合うよ。』 『だったら明日商店街の噴水の前で12時に待ち合わせで。』 『OK』 「メール?誰からだったの?」 禊がそんな事を聞いてくる。 禊は彩弓ちゃんの事を良くは思ってないから、誤魔化したほうが面倒くさく無いな。 そう思い誤魔化すことにした。 「聡太だよ、そ・う・た。」 「フ~ン。ほっしーって聡太とうち以外に友達居ないの?なんかいつもうち達としか遊んでないじゃない」 と意地悪い笑顔を浮かべながら聞いてきた。 この顔は少し意地悪なお姉さんを演じる時の禊の顔だ。 チビのくせに小憎たらしいい。 「い、いるよ。倉前くんとか・・・・あっ!あと、きっき清洲橋さんとか!!」 「必死すぎて逆に引いちゃうレベルだよ・・・」 禊は結構ガチで引いてるみたいだった。 少しイラっとしたが、なんとか誤魔化せたみたいだ。 まあアリバイ工作のために聡太に連絡をしておかないといけないな。 591 名前:白髪女とちっさい女 第4話 ◆gnQKrmKMl.[sage] 投稿日:2012/06/09(土) 14:40:58 ID:4wO9i5Cc [5/10] 私、新見禊は天川星司のことが好きだ。 別に私はテレビゲームは好きじゃなかった。 星司君が好きだから話題づくりのためにしているだけ。 でもしているうちに好きになってしまっていたのだが。 少しでも彼のそばにいたいから、その努力は惜しまない。 私には時々自分でも制御出来ない黒い、黒い感情があるのがわかる。 それは私の胸の中に住んでいて、彼が他の雌のと話していたり、話をしたりすると私の胸の中を暴れ回る。 学園祭のことだってもしかしたら星司君がゲーセンで会ったあの女の元に行くかもしれないので、引きはがすために毎日好きでもない料理に誘ったのだ。 もし彼が私に告白してきてくれたら0.2秒でOKの返事をだすだろう。 それよりも彼に私の想いを告白したい。したいしたいしたい。 でもそれは出来ない。 自分が臆病だとかそんなどこにでもある恋愛小説の1フレーズだったらどんなにいいことか。 おそらくだけど彼は私のことを嫌いじゃない。むしろ好きな方だと思う。 でも彼は私が想いを伝えても振り向いてはくれない。出るのは優しい拒絶の言葉なんだと思う。 それが彼の心の防衛術。 人には距離を置くと言う彼の考え方。 別に星司君はゲイじゃなく健全な男子高校生である。(それでも見つけたエロ本は捨てているが) うちにはそこまでの拒絶はしないが、あの事件があった直後はそれはもう酷いものだった。 そう考えると昔彼のそばにいたあのクソ女が憎い。 彼に深いキズを付けて彼の心をバラバラにしたあの女が。 今もなお彼の心を縛りつけているクソ女が憎くて仕方がない。 あの女が原因で今も彼とは深い仲にはなれない。 友達以上恋人未満。 これが新見禊と天川星司の関係なのだ。 それでも所詮は昔の女だ。 時は心の特効薬とは昔の人は凄い言葉を残したものだ。 少しづつだけど彼の顔に笑顔が増えてきた。 このままいけば遅かれ早かれ、いつか自分の気持ちを星司君に伝えられる時が来ると思っていたのだが奴が現れた。 百瀬彩弓とかいうクソ雌が。これは女の勘だがきっとクソ雌は星司君のことを好きになる。 今は別になんとも思ってないだろうが、このまま彼と一緒にいたら好きになるだろう。 そんなのは絶対に許さない。許されるはずがない。 私よりも高い身長を持ち、私がどれだけ望んでも手に入れることができなかった白い髪を持っているアレが許せない。 私の髪が白かったらとどれだけ望んだことか。 来る日も来る日もあの雪のように白い白髪を望んだ。 でも結局、手に入らなかった。 だから白い髪を持つあの雌が憎い。 私は星司君の笑顔が好き、声が好き、髪が好き、優しさが好き、性格が好き、鼻が好き、目が好き、口が好き、意地悪が好き、 抜けたとこが好き、淋しがり屋なとこが好き、ファションセンスが好き すきスキすき好き好きスキすき好きすき好きスキ好きスキすきすきスキ好きすき好きすきスキ好きスキすき好き 愛してる愛してるあいしてるアイシテルあいしてるアイシテル愛してる愛してるアイシテル愛してるあいしてる すきスキすき好き好きスキすき好きすき好きスキ好きスキすきすきスキ好きすき好きすきスキ好きスキすき好き 愛してる愛してるあいしてるアイシテルあいしてるアイシテル愛してる愛してるアイシテル愛してるあいしてる。 頭のてっぺんからつま先までぜーんぶ愛してる。私のモノにしたい。 でも私が自分の小さな体にこんなにも沢山の気持ちを詰め込んでいても、私の気持ちは彼には届かないだろう。 私はただ、彼に、星司君に好きになって欲しいだけなのだ。 592 名前:白髪女とちっさい女 第4話 ◆gnQKrmKMl.[sage] 投稿日:2012/06/09(土) 14:41:30 ID:4wO9i5Cc [6/10] 「母さん、出かけてくるよ。」 僕は時間に余裕を持って家を出た。 遅刻するわけにはいかないからだ。 多分これはデートというやつなのだろう。 待ち合わせ場所に着くと、彩弓ちゃんは15分前にもかかわらずに待ち合わせ場所にいた。 女の子のファッションというものはよくわからないが、なんだかいつも着ている服よりも気合が入っているように見えたような気がした。 「早いね。待った?」 「いや、全然待ってないよ。私も今来た所ですよ。」 そんな社交辞令的なことをやってみる。 「これからどーする?ご飯?買い物?」 「そーですね。私はご飯を食べて来てないから何か食べたいかもしれないです!」 「だったら僕はハンバーガーが食べたいな。最近米ばっかりだったからパンがいいよ。」 「反対の反対で賛成です。」 「なんかテンションが異常に高いね。」 何はともあれ彩弓ちゃんは快諾したよううだった。 僕たちは最近出来た個人経営のハンバーガー屋に行くことにした。 そこのお店は某チェーン店のハンバーガー屋よりも少し値が張るが、味は格段に美味しく今をときめく若者に大人気なのだ。 お店に入って僕は照り焼きバーガーのセット、彩弓ちゃんは中にオムレツが入っているハンバーガーを頼んだ。 休日にしてはお店は混んでなくてすぐ出てきた。 それを持ってまた噴水の前まで行く。噴水広場で食べるのだ。 広場には色々な人が来ていて、とても賑わっていた。 そこでベンチに座りハンバーガーの包を剥く。 彩弓ちゃんが僕の隣でモシャモシャとハンバーガーを咀嚼している。 頬っぺたにケチャップが付いていて幼く見えた。 「お兄さん。これが食べたいんですか?」 僕の視線に気づいたのか、彩弓ちゃんが包をこちら側に向けてくる。 「はい、あ~ん。」 彩弓ちゃんの食べかけの場所・・・ こういうのに抵抗はないのかな?そう思ってその場所にかぶりつく。 フンワリとしたオムレツの中に入っているベーコンが香ばしいく美味だった。 「お兄さんのも下さい」 彩弓ちゃんが口を開けたので持っていたハンバーガーを突っ込んでやる。 モシャモシャと咀嚼した後 「間接キスですね?」 とニッコリして言われた時に飲んでいたコーラを吹いてしまった。 僕の吐いたコーラが目の前の鳩にかかってバサバサと飛んでいってしまった。 593 名前:白髪女とちっさい女 第4話 ◆gnQKrmKMl.[sage] 投稿日:2012/06/09(土) 14:42:10 ID:4wO9i5Cc [7/10] 昼食を食べたあと、本日の目的である服選びをすることになった。 僕は改めて、彩弓ちゃんの服装を観察してみる。 紺色のホットパンツに上は白黒のボーダーのフードだった。 靴はブーツで膝の高さぐらいまで足をおおっている。 そして頭にはチェックのハンチングだった。 頭に帽子を被っている理由が僕にはわかる。 「お兄さんは私の服装どう思いますか?」 「ボーイッシュだと思うな。もうちょっと女の子らしくてもいいんじゃないかな?」 「私、そう言う女の子女の子した服装が苦手なんですよね。ヒラヒラだとか、ゆるゆるだとかはちょと。」 本当に嫌そうな子をしながら言っているので本当に嫌いなのだろう。 「へー。ならどんな服装が好きなのさ?」 「ゴッシクロリータ系とか森ガール系とか姫系とかあと・・・」 「思っくそひらひら系でゆるゆる系じゃん!!」 「あたし~。さいき~ん。け~たいとか~、ちょ~デッコってるんですけど~。みたいな~。」 もみ上げの部分を指でクルクルしながら少し間延びした声で言う。 「それはギャル系だよ」 「夢見る少女じゃいられない、じゃーん」 「今度はダークロックだね。」 エアーギターでじゃーんという彩弓ちゃんは少し可愛かった。 「お兄さんツッコミが上手いです。ボケるのが楽しいじゃないですか!!」 「今日はやけにテンション高いね。」 「うれしーんですよ!!こうやって休日に誰かと遊ぶの。」 「学校の友達とかとは遊ばないの?」 友達があんまりいない僕が聞くのもはばかれるが聞いてみた。 一応言っておくけど、居ないんじゃないよ。あんまり居ないだけなんだから。 学校の友達・・・その言葉を聞いた瞬間彩弓ちゃんは少しだけ悲しそうな顔をしたが、すぐに取り繕って話題を変えた。 「それはそうと私はスカートがね、すーごーく嫌いなの。男の子に生まれたかったなー。でも最近は女の子に生まれて良かったと思ってるんです。」 多分触れられたくのない話題だったのだろう。かなり強引な話の転換だったが、僕は乗ってやることにした。 誰にだって聞かれたくない話ぐらいある。各有、僕だってそうだ。 「なんで?最近女の子としていいことあった?」 そう聞いた瞬間、彩弓ちゃんの顔付きが変わった。 周りの音が消える。僕と彩弓ちゃんだけが時間に取り残されているように感じた。 彩弓の顔は凄く艶っぽくなっていて、元々大人びていた雰囲気が更に大人びていた。 ドキドキと鼓動の音が聞こえてき来る。 一歩、また一歩と彩弓ちゃんが近づいて来るが僕は蛇に睨まれたカエルのように一歩も動けない。 僕との間が10センチぐらいの所で止まり、自分の唇に右手の人差し指を当てた。 うるさい子供にシッーとやる時のポーズだ。 何をするんだ?と身構えた瞬間、その人差し指をゆっくりと僕の唇に持ってきてピッと付けて 「秘密です。」 と妖艶に笑った。 「かっか、からかうなよ。」 搾り出した声は震えていた。多分顔が真っ赤になっていただろう。火が吹くほど顔が熱い。 「からかってなんかないですよ。秘密とは言いましたけど、理由は多分わかりますよ、近いうちにでも。」 そう言うと彩弓はお店の中へと走って消えって行った。 594 名前:白髪女とちっさい女 第4話 ◆gnQKrmKMl.[sage] 投稿日:2012/06/09(土) 14:42:40 ID:4wO9i5Cc [8/10] 「ふー疲れた!!」 思いっきり伸びをする。 なんで女の買い物に付き合うのってこんなに疲れるんだろうか? 別に買いもしないものをタラタラと観たりする。 目的のものだけ買ってしまえばいいのにと毎回思う。 まさか禊よりも長いなんて思わなかった。 「ありがとうございます。長い時間付き合ってくれて。」 もう辺りは薄暗くなりつつあった。 「全然いいいよ」 ここで疲れを見せれば男の株が下がるというものだろう。 「それとあのー・・もう一つお願いしてもいいですか?」 少し遠慮がちにに聞いてくる。 「ここまで来たらとことん付き合うよ。なんだ?」 「ひかりケ丘の学園祭を一緒に回ってもらえませんか?」 ここで少し考えてみる。 僕は学園祭で店を出すから店番があるし、なんだか彩弓ちゃんと一緒に歩いているところを禊に見られてはいけないような気がする。 でも彩弓ちゃんと一緒にいるのは楽しい。どーしたものか。 ウンウン考えていると彩弓ちゃんがショボーンとしてきた。 「そーですよね。私なんかと一緒にいても楽しくないし、この髪の毛のせいで一緒に歩いているとジロジロ見られて見世物になっている気分になりますよね? 私気づいてたんですよ。お兄さんが周りの目線に気づいてるのに気づいていないふりを知てるって。周りの目線も何かって。 今日だって暇の中の暇だったから付き合ってくれただけで、コンビニにちょっと買い物に行く方が優先されるべきですよね。 わかってます。今日の出来事は一時の夢だったなんてことは。それに・・・」 「そ、そんなことは思ってないよ!!」 そのままほっとくとずっと自虐が続きそうなので無理やり話に割り込む。 「僕は視線なんて気にしてないし、彩弓ちゃんと居て楽しいよ!!すっごく癒されるし、妹がいたらこんな感じかなって思うんだ。」 「だったら、学園祭を一緒に回ってくれますか?」 そんな風に上目遣いで、目に涙を貯めながら言われたら断れない。 ここで断ったら人間として何か大切なものを失う気がしたので 「もちろんOKさ!!」 と快諾してしまった。 すると彩弓ちゃんは急にニッコリして 「買い物と約束のお礼です。」 と言って、チュッと僕の頬にキスをしてきた。 一瞬何をされたか分からずボーッとしていたが、何をされたか理解できると急に顔が熱くなってきた。 彩弓ちゃんはダダっと小走りで僕から距離を取り、クルリと振り向いた。 「さっきも言った通りそれはお礼です。学園祭楽しみにしていますよ。もし約束を破ったら・・・しますから。それじゃあ!!」 約束を破ったらの後の声が小さくて聞こえなかったが、もう走っていってしまったので聞くに聞けなかった。 最後のキスは想定外だった。思い出すだけでも恥ずかしい。 なんだか年下の女の子に振り回される男の気持ちが分かった様な気がした一日だった。 595 名前:白髪女とちっさい女 第4話 ◆gnQKrmKMl.[sage] 投稿日:2012/06/09(土) 14:43:17 ID:4wO9i5Cc [9/10] 俺たちは百瀬と星司のやり取りを物陰から見ていた、隣にいる彼女の顔は影になっていてどんな表情か分からない。 肩が震えている。今にでも飛び出して行きそうな雰囲気がピリピリと感じる。 確かにアリバイ工作を頼まれたが、俺はお前の為を思って彼女に情報をリークした。 俺は彼女の協力者だ。でも一番に考えているのは親友だ。 「どーだった?」 と飛び出すのを抑える意味で聞いてみると 「幸せそうに笑っているあいつが気に食わない!!殺したい。どうして?ねぇ?どうして?どうしてなの?なんで?なんでなの? あいつは敵だ。あいつに騙されているんだ!!そーだあいつが弱みを握ったんだ。また誑かしたんだ。そーやって何人も何人も。許さない許さない。」 そーだった。雰囲気や顔に似合わずかなりの激情家だった。 「落ち着いて。クールダウン、クールダウン。今出ていったら計画が台無しなるだろ。まだまだ先は長いんだから。」 肩をポンポンとタップして落ち着かせる。 「ふん、どーせ結果は分かりきってんだから。」 「君は誰のために動いてるかもう一度ちゃんと考える方がいいと思うよ。」 諭す様に言う。この計画に乗った時点で俺たちは共犯者なのだから。 「大丈夫わかってるわよ。」 本当に大丈夫なのか? 不安にならずにはいられない。 言ったそばから路地裏の居た猫を威嚇してるし・・・。 「何か起こるなら学園祭だから、学園祭の準備を今からするから帰るぞ。」 まだ猫を威嚇しているが襟をつかんでズルズル引張ていく。 このまま学園祭か・・・ 不安しか無い。 そして運命の学園祭が始まる。

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