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15 :ある男の独白:2012/10/17(水) 00:27:08 ID:bAcKDreQ [2/6] ―最近、お酒の楽しみ方が分かった気がする。 僕は夜空に散らばる星達を見ながら酔いつぶれていくのが好きだった。 「今晩は今日も寒いですね、佐藤さん」 僕はまた足を彼女の前で止めてしまう この暗がりでも栄える彼女の容姿に今でもたじろいてしまう。 今時の茶色に染められた髪型、そして香りづいた女の匂い… 僕は思う、きっとその整えられた美貌ならもっといい男の一人や二人手玉に取れる、それぐらい彼女は実に女だった 16 :ある男の独白:2012/10/17(水) 00:41:34 ID:bAcKDreQ [3/6] 多分、こうゆう考え方をする者を皆知っていると思う。 そう、僕は―所謂世捨て人と言われる人種。 此方をハニカミながら挨拶をしてきた彼女の名字は山田さんと言うらしい。何故、疑問系なのかと聞かれたら僕にとって他人は動くブリキと同じだから答える。 「―こんな遅くまでお仕事ご苦労様です、山田さん」挨拶をしてきたので挨拶で返す、それが当然の常識だろう? ただ、僕の日常で増えた事といえばこの挨拶だけ。 だから僕は挨拶を終えたらその千鳥足で家に帰っていく。 ―ああ、やっぱり空はいつも変わりなく綺麗であり続ける 17 :ある男の独白:2012/10/17(水) 01:09:15 ID:bAcKDreQ [4/6] ―今日も彼と挨拶を交わした。 彼の容姿はお世辞にも清潔とは程遠い。 よれよれのワイシャツと履き古した黒のパンツ、そして極めつけはそのボサボサの髪と長ったらしい無精髭。 それでも私は彼に恋焦がれ、この三秒と満たないこの瞬間に堪らなく、幸福に満たされる。 ―彼と最初に出会ったのはこの小汚ない電柱。 今でも、頭が足りない蛾達がひたすら光を求めて体を傷つけている。 「―そんなとこで寝ていると、冷えますよ?」 初めはこの人も私の体目当てだと思った。 何故ならこの日は人生で一番最悪で、彼氏も上司もまとわりつく蛾の様に私を見ていたから。 「これ、少ないけど120円あとコレ…」 そういって酔いでおぼつかない手のひらにお金とよれたコートを被せた。 私自身、単純だと思うがこの彼の行動に胸を高鳴らせた。 それまで私の知る今流行りの雑誌や歌手などに現を抜かす人達と違って見えたから… 「あ、あの…」 感謝を伝え様土儀間気ながら声を掛けようとすると彼はまるで無かったかの様にその場を離れた 「―ふふっ」 いけない、また彼との出会いに惚けていたみたいだ。 彼の魅力を語り尽くせるとは思えないが、今のままではいけない…私は決意の意志を込めて唇を引き締めた。 18 :ある男の独白:2012/10/17(水) 01:28:21 ID:bAcKDreQ 乾いた酔いのなかで、床に転がり込む。 ―暗がりの部屋の中、この一本の煙草に惚ける僕はまるで蛾と同じだな。 自身の皮肉に思わず笑みが零れる、何時からだろう社会に生きる人達達が蟻の様に思えたのは? 誤解が無いように言うが僕は別に鬱ではない。 ただ、皮肉の味に酔っているだけ。 「―ぅ」煙を眺めながら彼女について考える。 多分、彼女は自分に興味を持っている。でなければこんな夜遅くに出会ったりはしないだろう…。 床に突き刺さった包丁に目をやる、僕の軽い頭ではそれ以上の事は考えられない…寝そべって獣の様に目を閉じる。 ―そろそろ羽を休めようか。僕は深い息を吸い込む。 19 :ある男の独白:2012/10/17(水) 02:02:57 ID:bAcKDreQ [5/6] 「好きです、付き合って下さい」 ―今日は挨拶の代わりに告白をされた。 景色が濁った気がする。「…すいません、僕は貴女の事をそういう目で見ていないので。」 返事には返事で返す、それが決まりだろ? 答えを告げて僕は立ち去った。一人ぼっちの彼女を残して。 今日は、歩きではなく早足で家に向かう。 …本当、今日は何もかも違うな。また僕は口元を歪めた ――嘘。 思考は否定で動き始めた。 何が行けなかったのか分からない…嫌いなら始めから挨拶を交わさないはず。 嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘…うそ ようやく私は自分が顔を歪めている事に気付く。 そうか彼は自分を卑下しているだけなんだ。そうに違いない。 ―そうならそうと言ってくれたらいいのに。 ならこの告白は間違えただけだ。もう一度やり直そう。 私は一つの明白すぎる答えを見つけ、彼の家に向かう。…場所は知っている、当然だ。今までも情報がいかに大切か知っていたから… 参ったな…やっぱり告白された。分かっていた事が現実になっただけだ、だからあらかじめ用意してあった答えでかえしただけだ。 今日はいつもと何もかもが違いすぎる…置き貯めしてあったビールを冷蔵庫から取り出す。 軽い思考でよぎったのはもうあの道を通らない事、僕は何よりも嫌うのは変化。何故なら新しいという感覚がイマイチ好きになれないから 取り敢えず、重い瞼をしずかに閉じる。 20 :ある男の独白:2012/10/17(水) 02:29:28 ID:bAcKDreQ [6/6] 「佐藤さん起きて下さい、もう一度答えを聞きたいんです」 目を開けるとハニカむ山田さんの顔があった。 「…山田さん…?どうして?」 一瞬、頭が回るでも直ぐに何時もの気だるさが頭を支配する 「佐藤さん、私どうしても分からないんです。どうしてお付き合いしてくれないんですか?」 「それは先程言ったように…」 体が引っ張られる感覚が思わず口先を阻める。 「―これは山田さんが?」 重い頭で周囲を見渡すと腕が固定されていた…多分、足のほうも固定されているのだろう 「佐藤さん、答えて下さいどうしてお付き合いしてくれないんですか?」まるでブリキの様に先程と変わらない口調と笑みで彼女は唇を歪めていた。 「もしかして容姿を気にしているんですか?別に私は佐藤さんの容姿なんて気にしていませんよ?」 無邪気に吐露する彼女を見てやっと僕は気付く。―この人はきっと優しさに飢えている。 「―分かりました。ではお付き合い致しますから、煙草を取って頂けませんか?」 彼女は僕の返事を聞くと甘えに味を占めた子供の様に僕に従う。 ―ただ、一つ日課が増えただけだ。煙に目を配りながら自分の答えに納得する。 彼女は優しさに飢えている、だからきっと僕より親切な人に出会ったら彼女はきっと僕にもう目も向けないだろう… また重い瞼を閉じる中で彼女の笑みと喉に張り付く煙草を覚えた

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