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475 名前:死んでも愛してる(守護霊的な意味合いで) ◆Uw02HM2doE[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 02:21:13 ID:U5TZa/8o [2/7] 突然だが、皆さんは守護霊というものを信じるだろうか。 そもそも霊なんてこの世には存在しないと思っている人が大半なのではないだろうか。 かくゆう俺も、霊否定派の一人だったりした。この世に幽霊なんて、馬鹿馬鹿しい。 そう考えていた。少なくとも、アイツに出会うまでは―― 死んでも愛してる(守護霊的な意味合いで) 「やべっ、遅刻する!」 勢いよく家を飛び出した黒髪の少年は腕時計を確認しながら、通学路を全力疾走していた。 彼の走りに合わせて揺れるネクタイに入っている二本線が、地元の高校の二年生であることを示している。 『……もう、諦めて歩きましょ』 何処からともなく透き通った声が聞こえるが、少年の周りには誰もいない。 「ふざけんなっ!!誰のせいで毎日遅刻してると思ってんだ!!」 中性的な顔立ちの少年は誰もいない空間に向かって話し掛ける。 もし何も事情を知らない人がこの様子を見たら、この少年――高坂春(こうさかはる)のことを間違いなく変人だと思うに違いない。 『だって……春が苦しそうだったから』 「ありがとな……って、苦しくさせたのはお前だ!!」 また誰もいない空間にノリツッコミをしながら春は全力疾走を続ける。校門が春の目の前に迫った瞬間―― 『……また遅刻ね』 「ち、畜生……」 『気にすることないわ。春のせいじゃないもの』 「だからお前のせいだよ!!」 ホームルームを告げる鐘が校舎に響くのを、春は聞きながらとぼとぼと校門を通った。 476 名前:死んでも愛してる(守護霊的な意味合いで) ◆Uw02HM2doE[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 02:46:32 ID:U5TZa/8o [3/7] 代々、由緒正しい高坂寺院の一人息子には守護霊が付くとの言い伝えがあった。 書物を辿れば高坂一族の起源は鎌倉時代、それこそ鎌倉仏教が栄えた時代まで遡るらしい。 数々の胡散臭い巻物によれば、高坂家の当時の一人娘が流行り病で亡くなってしまい、それを大層悲しんだ領主様が彼女を神格化しようと色々な話を作ったという、何ともアホくさい話だ。 それら空言の中に、高坂家の一人息子には、いつまでも守ってくれるようにその鎌倉時代の幽霊が付いてくれる、なんていう話があった。 理由なんてない、どうせ亡き娘の為に創られた戯言なのだから。 つまり、ただの作り話でしかなかった――はずだった。 放課後の教室で春は黒板の掃除をする。"一人で教室清掃を行う"。 これが本日の春に課せられた罰だった。 「くっそ……」 『……もう帰ろうよ、春。私、待つの疲れた』 「そうだな……ってお前幽霊だろうが!?」 『……?』 「お前だよ、お前!小春!」 春が指差した先には首を傾げる少女が"居た"。 巫女服を着ており、肩まで掛かる黒髪に人形のような端正な顔立ち。 街中を歩いた途端、皆が振り返る。そんな美人だった。 『やっと名前で呼んでくれた』 「……っ」 春は無視して黒板の掃除を再開する。いくら幽霊だからといってもかなりの美少女だ。 そんな美少女に微笑まれたらにやけずにはいられない。春だって17歳の健全な男子だ。 美少女の笑顔にドキドキするのは当たり前だが、幽霊に別の意味でドキドキする自分を認めたくはない。 『春……?』 「掃除中だから話し掛けるな。独り言を言ってる、変な奴に思われるだろ」 『……分かったわ』 今年の4月。 春の17歳の誕生日に彼女、高坂小春(こうさかこはる)はいきなり彼の前に現れた。 自分は鎌倉時代に流行り病で死んだ後、奉られ守護霊として春を守る為に蘇った、と。 いきなり意味不明な説明をされた春だったが、家系図や高坂一族の歴史と彼女の言っていることが一致していること。 そして何より春以外には姿が見えないことから、今まで自分が否定してきた幽霊を自ら認めざるを得なくなった。 「はぁ……」 しかし、春は思う。何が守護霊だ、と。 自分を"小春"と呼んでくれと宣ったこの自称守護霊のせいでどれだけ春が被害を被っているのか。 春にしか見えないにも関わらず四六時中話し掛けきて、無視すると耳元で嫌味を言われ、勉強していると遊ぼうといって邪魔をしてくる。 そのくせ容姿が抜群に良いから一緒にいると中々集中出来ないし、挙げ句の果てには最近、巫女服を脱いで『……抱いて?』とか言ってくる始末である。 おそらくこの前見た月9ドラマのラブシーンに影響されているのだが、そのせいで今朝も……諸事情により準備が出来ず、遅刻した。 更には俺が女子を話をすると『止めて』とか『そいつは高坂一族の敵よ』とかを耳元で呟いて邪魔してくる。 おかげでこの半年、春に出来た女子の友達は―― 「また遅刻したの、高坂君!?」 「あ、三好」 『……!』 「"あ、三好"じゃないわよ!毎回遅刻して!」 茶髪のポニーテールが良く似合う、隣のクラスの三好沙織(みよしさおり)だけだった。 一年生の時に仲が良かった彼女は、隣のクラスにも関わらず何かと春を助けてくれている。 「あはは……」 「もう……後はゴミ出しだけでしょ?……半分持つわよ」 若干顔を赤らめて三好はゴミ袋を半分持つ。何故顔を赤らめるのか、疑問に思いながらも春は沙織の申し出を有り難く承けた。 「ありがとう!いつも悪いな、三好」 「高坂君が億劫なのは今に始まったことじゃないしね」 「あはは……本当、ありがとな」 「べ、別に好きでやってるだけだから……」 夕焼けに染まった教室で仲睦まじく話す二人を、小春はじっと見つめていた。 「…………」 怒るわけでもなく、会話を邪魔するわけでもない。 三好を品定めするようにただ、見ていた。 477 名前:死んでも愛してる(守護霊的な意味合いで) ◆Uw02HM2doE[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 02:47:18 ID:U5TZa/8o [4/7] 「そういえばさ」 『何、春?抱いてくれるの?嬉しいわ』 「うん……って違うわ!」 結局、そのまま三好と下校した春は彼女と途中まで帰っていた。 三好は電車通学なので駅まで彼女を送った後、一人で暗くなった帰り道を歩く。 横には小春が寄り添っているが、勿論春以外には見えるはずもない。 「小春はさ、俺と三好が話してる時は何故か邪魔しないよな」 『……なんのこと?』 「なんのことって……」 『私は一度だって春の会話を邪魔したことはないわ』 「ただし男に限る、だろうが!」 ビシッと指差す春を小春は不思議そうに見ていた。 『…………?』 「お前のことだよ!」 小春のいる方を指差しながらもう一度突っ込みを入れる春。 この半年間、小春のマイペースぶりに何度翻弄されたことか。 二度と振り回されまいと誓うが、それが守られたことは一度もない。 「……まあ、良いや。邪魔しないなら良いし」 『……春』 「ん?」 『春は……あの三好とかいう女が、好き?』 「なっ――」 『好きなの?』 いきなりの質問に面食らっている春を、小春はじっと見つめる。 心の奥まで見透かされそうな瞳に、春は思わず目を逸らした。 「……べ、別に好きでも嫌いでもないけど」 『……そう』 春の答えに満足したのか、それとも興味がなくなったのか。 小春はそれ以上何も聞いては来なかった。 何故、小春はそんな質問をするのだろう。得体の知れない不安が、春の頭をよぎる。 「……何考えてんだ、俺は」 『どうしたの、春?私を』 「抱かんわ!」 首を軽く振りながら春はそんな不安も一緒に振り払った。小春は幽霊だ。 今は纏わり付いているが、そのうち成仏するだろう。だからそれまで彼女の我が儘に付き合ってやればいい。 すっかり暗くなった空を見ながら、春はそう思った。 478 名前:死んでも愛してる(守護霊的な意味合いで) ◆Uw02HM2doE[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 02:48:00 ID:U5TZa/8o [5/7] 「はぁ……」 ヘアゴムを取って三好はベットに倒れ込む。今日の出来事を思い返して、枕に顔を埋める。 「……また、駄目だった」 後一歩が踏み出せない。いつからだろう。気が付けば自然と彼を目で追っていた。 話していて、もっと話したいと思った。それが特別な感情だと気付いたのは最近のことだ。 彼が、高坂春が他の女子と話していると、何故かイライラしてしまう。 友達に相談して「それは恋だよ沙織!」と言われるまで、恥ずかしながら気が付かなかった。 というか今でも三好自身、まだ半信半疑ではある。 「なんで言えないかなぁ……」 今日だってチャンスは何度もあった。春とは中の良い友達。 なら"遊び"に誘うくらい簡単なはず。なのにその一歩を、三好は踏み出せずにいた。 「うぅ~」 足をバタバタされながらもどかしさに悶える。春はどう思っているのか。 ただの友達としか思っていないのか。三好の頭はそんなことで一杯だった。 だから―― 『……やっぱり理解出来ない』 「…………えっ」 『何で貴女なんかが、兄様……いえ春の目に留まるのか』 目の前に急に顕れた存在にすぐには気が付かなかった。 "それ"は無表情で三好を見下ろす。まるで下劣なものでも見るかのように。 あまりに突然の出来事に三好が反応出来ずにいると、巫女服を来た少女はゆっくりと三好の頭に手を置いた。 『何故、私が死んだか知ってる?』 「……………っ!?」 その時初めて、三好は自分自身が指一本動かせなくなっていることに気が付いた。 まるで金縛りにでもあってるかのように、喋ることすら出来ない。 『私にはね、"能力"があったの。触れた相手に乗り移れる、そんな力』 何も出来ない三好に少女は静かに語りかける。 『でもね、皆が私を畏れたの。父様も、村の皆も私の能力を……祟りだと言ったわ』 「…………」 『でもね、あの人だけは違った。私が大好きで兄様と慕っていた彼だけは、私を認めてくれていた』 三好は考える。一体この少女は自分にこんな話をして、どうするつもりなんだろうか。 少女の眼はまるで全てを吸い込んでしまうように真っ黒だった。 兄様?能力?全く意味が分からないが、このままでは恐ろしいことをされてしまうような気がした。 『だから、私が父様に殺されて、兄様も私を守ろうとして一緒に殺された時……誓ったの』 「……………っ!!」 急に三好の頭に激痛が走る。脳みそごと記憶をぐちゃぐちゃにされるような感覚。 身体は全く動かない中で、感覚だけはやたら鋭くなっている。 目の前にある少女の顔は相変わらず無表情で、何も写さぬ瞳は三好を見ているかさえ怪しかった。 『来世では必ず結ばれようって……まさか高坂家の長男として産まれてくるとは思わなかったけど』 クスッと笑い、少女は初めて表情らしい表情を見せる。 ただ、三好にとってはそれすら不気味だった。 『だからね、私がこの時代に霊として蘇ったのは、運命なの。兄様と瓜二つな……生まれ変わりの春と結ばれるのは……運命なのよ』 「…………っっ!!?」 あまりの激痛に三好は悶えようとするが、身体はぴくりともしない。 意識も段々朦朧とし、少女の声だけが脳に響く。 『……大丈夫。もう終わるわ。貴女の身体、"しばらく"借りるわね』 少女の冷たい微笑みが、三好が意識を失う前に見た最後の光景だった。 479 名前:死んでも愛してる(守護霊的な意味合いで) ◆Uw02HM2doE[sage] 投稿日:2013/04/29(月) 02:48:32 ID:U5TZa/8o [6/7] 「わぁ!大きい!」 「ちょ、あんまりはしゃぐなよな!」 ポニーテールを揺らしてはしゃぐ三好を、春は慌てて追い掛ける。 超巨大テーマパークということもあり、目を離せばすぐに見失ってしまいそうだ。 「早く早く!私、こういうの初めてなんだから!」 「今時ここ来たことない奴なんて――」 「いいから早くっ!」 「うおっ!?わ、分かった分かった!」 三好に手を握られ春は思わず緊張してしまう。 最近、三好は積極的に春との距離を縮めていた。 今日のデートも三好から誘ったものだ。 春自身も三好のことは前から気になっていたので、正直まんざらでもないのだが。 「ほら!ショーに間に合わないよ!」 「よし、急ぐか!」 ぐっと手を握られて春はどきまぎする。 三好ってこんなに積極的だったっけ――そんなことも考えたが、事実積極的なので、これが本当の彼女なのだろう。 普段なら小春が邪魔して来そうな光景だが、ここ最近小春は姿を見せなくなっていた。 もしかしたら成仏してしまったのかもしれない。少し寂しい気もしたが―― 「あ、春!始まるよ!」 隣ではしゃいでいる三好を見ているとそれは些細なことのような気がした。 「……ね、春」 「何だ?」 「私のこと、好き?」 「……えっ!?」 「私は、春のこと好きだよ」 突然の告白に驚く春を三好はじっと見つめる。 全てを見透かしそうな目線に、思わず春は眼を逸らしてしまう。 ――何処かで感じたことのある目線。 「春……?」 「……お、俺も好きだよ三好のこと――」 言い終わらない内に三好は春にキスをする。 突然のことの連続で頭がパンクしそうな春に三好は―― 「嬉しい……。私、春好みの女の子に"なれる"よ。だから遠慮なく、"飽きた"ら言ってね?」 笑顔で囁いた。

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