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856 名前:雌豚のにおい@774人目[sage] 投稿日:2013/08/20(火) 22:16:08 ID:7Kym5jDQ [1/3] ちょっとだけ書いてみたんよ。 これじゃない感がすごい。 「ハロー、アンドロイド」 私の声に反応し、彼の眼がゆっくりと開き、瞳には光が灯る。 「スリープモード中です」 「スリープモード解除」 彼の収容されているケースの横に備え付けられたコンピューターに、ログインパスワードを手早く打ち込んだ。 「お嬢様、就寝の時間では?」 「うるさいわね」 カタカタと忙しなくプログラムを書き込み、エンターキーを押す。 「そのオーダーは許可されていません」 「はぁ。じゃ、ユーザー切り替え」 「…………ユーザー認証。パスワードを入力してください」 ディスプレイの隅っこに貼られた小さなメモ帳に、父親のユーザーパスが書いてある。 有能な科学者の割に、こういう防犯意識はてんで無いのだから困ったものだ。 「認証完了」 ま、私はそれを利用させてもらっているわけだから、何も言わないけど。 「……お嬢様」 先ほどのプログラムをもう一度打ち込んで、エンターキーに指を触れさせたところで彼が口を開いた。 「何よ、もう」 「お父様の許可は取られたのですか?僕はお嬢様やお父様、ひいては人間に安全なサービスの提供を……」 「ちょっとアンタ口を閉じてて」 口頭で命令を下すと、彼の不気味なくらい整った唇は真一文字に結ばれ、微動だにしなくなった。 「アンタが悪いんだから……」 妙にいらだった気分で、プログラムの続きをがちゃがちゃと打ち込んでいく。 857 名前:雌豚のにおい@774人目[sage] 投稿日:2013/08/20(火) 22:16:44 ID:7Kym5jDQ [2/3] 私が彼を初めて見たのは、父の研究室の隅だった。 ロボットとは思えないくらいリアルな、だけど、人間離れした美しい外形に私の眼は釘付けになっていた。 部屋に戻ってきた父が私に彼の解説をしてくれた。 髪、肌の素材がどう、とか。骨格がどう、とか。そういうのは正直あんまり興味は湧かなかった。 このコンピューターで行動や性格、果ては彼の疑似神経への感覚まで制御できる。 誇らしげにべらべらと、重要機密を喋りまくる父にちょっと苦笑した。 そんな父だったから、猫なで声で『パパ、私、この子と遊びたい』と言えば、彼を自由に扱う権利は簡単に手に入った。 最も、モニターも兼ねてとかなんとかぶつぶつ言っていたり、 危険な設定はできないようロックがかけてあったり、その辺は父親らしく、科学者らしかった。 それから、私は彼を独占した。 外に連れ出せないと知ってから外出は控えるようになり、家の中を歩く時は必ず彼を同行させた。 父の「そろそろモニタリングもいい頃合だろ」とそれとなく出る度、わざと問題行動を起こすようなプログラムを組んだ。 次第に、私は本当の意味で彼を独占したくなっていった。 世界に一人だけ、私の為だけに存在してほしい。 モニターが済んだら、父は彼を私の手元に残しておいてくれるかもしれない。 けど、世界中に彼の複製品が出回ってしまう。それは嫌だった。鳥肌が立つくらいに。 858 名前:雌豚のにおい@774人目[sage] 投稿日:2013/08/20(火) 22:17:19 ID:7Kym5jDQ [3/3] 「アンタは私だけのモノよね」 「…………」 彼は何も答えない。私がさっき口を閉じるよう命令してたからね。 「何とか言いなさいよ」 エンターキーを強く叩く。自然と頬が歪み、舌なめずりをしてしまう。 「…………」 彼は相変わらず口を閉じ、身体をピクリとも動かさないが、モニターに表示されている心拍数やら神経の何やかんやは激しく上下していた。 私の打ち込んだのは強烈な催淫作用を引き起こさせるプログラム。 くくく、と我ながら意地の悪い笑い声が歯の隙間から響く。 今日はどうやっていじめてやろうか。 私のことどうしようもなく好きになって、全身気持ちよくさせて、 だけどイケないように寸止めして、また泣きながら懇願させてみようかな。 「うふふふふ……」 夜は長い。じっくりいたぶってやろう。 私がまた一段と頬を歪ませたのを見て、少しだけ彼の身体がすくんだ気がした。 了

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