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824 名前:妹はキスを迫る[sage saga] 投稿日:2015/03/05(木) 21:24:29 ID:v5zEQmKA [2/4] 「キスして」  夕暮れに照らされた居間の中、ソファに寝そべった妹は阿呆らしいことを呟いた。  連日の猛暑で頭がイカレタのだろう。聞こえなかったふりをして無視する。 「お兄ちゃん、無視はひどいんじゃないかな」 「無視してやってるんだ。ありがたく思え」  真摯に受け止めた場合、妹は精神科行きだ。 「いいじゃん、してよキス。減るもんじゃあるまいし」 「俺の社会的信用が減る」 「減る程無いじゃん」  痛いところを突かれた。 「とにかく妄言を吐くのは止めろ」  近親相姦なんて魅力のないもの、する気はない。  こんな生意気な妹と関係を持つくらいなら、玉砕覚悟で幼馴染に告白する。 「……わかった」 「よし」 「お兄ちゃんはツンデレだということが」 「氏ね」    落ちてあった洗濯ばさみを投げつける。  妹はそれをあっさりとキャッチした。  無駄に反射神経がいい奴だ。 「ナイスキャッチ」 「自分で言うな」 「ナイスツッコミ。あ、お兄ちゃん。喉が乾かない?」 「急に話が変わったな」 「ジュース飲みたくなったんだから仕方ないじゃん。で、お兄ちゃんも飲む?」 「……飲む」  確かに喉が渇いていた。  主に妹のせいで。 「ラジャー」  変な挨拶をして、当の本人はキッチンに向かった。  だらしない服装が嫌でも目に入る。  付き合うなら、清楚な娘がいいと改めて思った。 「おまたせー」 「ああ」     妹からコップが手渡された。  中には白い清涼飲料水、この季節の必需品だ。  体が失った水分を取り戻そうと勝手に動く。  気づいたときには飲み干していた。 825 名前:妹はキスを迫る[sage saga] 投稿日:2015/03/05(木) 21:25:48 ID:v5zEQmKA [3/4] 「いい飲みっぷりだね、キスして」 「どさくさに紛れて言うな」  油断も隙もない奴だ。 「いい加減にキスしてよ」 「いい加減にキレるぞ」 「そこまで拒絶しなくてもいいじゃん」 「するに決まって『叔母さんとは』……お前」  妹は、数枚の写真を持ちながらにやりと笑った。  「キス以上のことをしたくせに」 「お前、いつの間にそれを撮ったんだ!」 「さあ、いつだろうねー」  写真を取り上げるため、立ち上がろうとする。  しかし――。 「くっ!?」  体に力が入らない。 「無駄だよ、ジュースにたっぷりと薬を入れたから」 「どこでそんなもん手に入れた!!」 「教えてあげない。それより、取引をしようよ」 「取引だと」 「うん」  脅迫犯は、怪しげな微笑で告げた。 「私とキスをしたらこの写真はお兄ちゃんにあげる」 「……それに従わなかったら」 「お父さんとお母さんに写真を見せる」 「……」  こんなもの取引じゃない。  答えは一つに決まっている。 「わかった。勝手にしろ」 「わーい」  人生最悪のキスを俺はした。 「はい、写真」  薬の効き目が薄れた頃、約束の品はあっさりと返された。 「良かったよ、お兄ちゃん」 「黙れ」  写真は全部で十枚。  言い訳のしようがない姿が移されている。 「あ、それとお兄ちゃん」 「……なんだ」  正直、こいつとは二度と口を聞きたくなかった。  それでも、返事をしてしまうのは妹からだろう。  むかつく話だ。 「写真はまだまだあるから」 「なっ!?」 「これからもよろしくね」  次はキス以上だね、嬉しそうに妹は言った。

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