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323 :名無しさん@ピンキー [sage] :2006/08/08(火) 00:48:50 ID:QzuSxDAU
>>322
暇だったらから書いてみたお>ヤンデレラ
腰に回された手は柔らかく、とても優しい。毎日のように床に這いつくばっているシンデレラには、とても遠いものだった。そうして、目の前で微笑む王子の顔は美しい。すっきり通った鼻筋、きらりと透き通る青い目、ふわりと揺れる金髪。あぁ、なんて素敵な王子さま!
ゆらゆらと踊りながらシンデレラは、堪らない幸福に包まれていた。王子さま、ねぇ王子さま、わたしは床を舐めながらあなたをいつも思っていたの。
(わたしだけの王子さま、)
(誰よりもあなただけを愛しい)
「ねぇ、王子さま…」
シンデレラの顔がとろりと溶けていくのを、王子は見てしまった。恍惚に濡れた瞳。蜜を煮詰めたような声。紅潮した頬。清楚で純粋そうなシンデレラが、そういう表情をするのは酷く欲情を誘う。背徳の、うつくしさ。
「私のことを、愛していただけますか?」
324 :名無しさん@ピンキー [sage] :2006/08/08(火) 00:51:10 ID:QzuSxDAU
「――勿論だよ」
気が付いたら答えていた。ふわりと、シンデレラは笑った。これ以上ないほど溶けて崩れた幸福の中を、シンデレラは泳ぐ。この人の腕の中、今ここで死にたいと思った。あぁでも、まだだめ…。まだ、死んではいけない。
(この人をほんとうに手に入れるまで)
「嬉しい」
控え目に、けれどしっかりシンデレラは王子に抱きついた。王子はそれに応えて、シンデレラをきつく抱き締める。その流れはあまりに滑らかで、ただ、幸せだった。
「私のことだけを」
じんわりと染み込むように、王子の耳元で囁いた。背徳と淫靡を溶かして、欲情を誘う甘い声。ぞくりと王子の背中を走ったのは、間違いなく本物、だ。
「愛してくださるのなら」
――ゴーン、
鐘の音が響く。12時を告げる、それは魔法の解ける死刑宣告にも似た。
けれどもシンデレラは笑っていた。笑って王子の腕から抜ける。あまりにも美しく自然に笑うので、王子は腕を伸ばすことも忘れてしまった。
「私を見付けて」
(あなたの愛で)
動きを止めてしまった王子を尻目に、シンデレラは駆け出した。その姿が見えなくなってからようやく、王子は我に返る。シンデレラが走っていった階段を見下ろせば、綺麗なガラスの靴だけがひとつ、きらりと光っていた。
323 :名無しさん@ピンキー [sage] :2006/08/08(火) 00:48:50 ID:QzuSxDAU
腰に回された手は柔らかく、とても優しい。毎日のように床に這いつくばっているシンデレラには、とても遠いものだった。そうして、目の前で微笑む王子の顔は美しい。すっきり通った鼻筋、きらりと透き通る青い目、ふわりと揺れる金髪。あぁ、なんて素敵な王子さま!
ゆらゆらと踊りながらシンデレラは、堪らない幸福に包まれていた。王子さま、ねぇ王子さま、わたしは床を舐めながらあなたをいつも思っていたの。
(わたしだけの王子さま、)
(誰よりもあなただけを愛しい)
「ねぇ、王子さま…」
シンデレラの顔がとろりと溶けていくのを、王子は見てしまった。恍惚に濡れた瞳。蜜を煮詰めたような声。紅潮した頬。清楚で純粋そうなシンデレラが、そういう表情をするのは酷く欲情を誘う。背徳の、うつくしさ。
「私のことを、愛していただけますか?」
324 :名無しさん@ピンキー [sage] :2006/08/08(火) 00:51:10 ID:QzuSxDAU
「――勿論だよ」
気が付いたら答えていた。ふわりと、シンデレラは笑った。これ以上ないほど溶けて崩れた幸福の中を、シンデレラは泳ぐ。この人の腕の中、今ここで死にたいと思った。あぁでも、まだだめ…。まだ、死んではいけない。
(この人をほんとうに手に入れるまで)
「嬉しい」
控え目に、けれどしっかりシンデレラは王子に抱きついた。王子はそれに応えて、シンデレラをきつく抱き締める。その流れはあまりに滑らかで、ただ、幸せだった。
「私のことだけを」
じんわりと染み込むように、王子の耳元で囁いた。背徳と淫靡を溶かして、欲情を誘う甘い声。ぞくりと王子の背中を走ったのは、間違いなく本物、だ。
「愛してくださるのなら」
――ゴーン、
鐘の音が響く。12時を告げる、それは魔法の解ける死刑宣告にも似た。
けれどもシンデレラは笑っていた。笑って王子の腕から抜ける。あまりにも美しく自然に笑うので、王子は腕を伸ばすことも忘れてしまった。
「私を見付けて」
(あなたの愛で)
動きを止めてしまった王子を尻目に、シンデレラは駆け出した。その姿が見えなくなってからようやく、王子は我に返る。シンデレラが走っていった階段を見下ろせば、綺麗なガラスの靴だけがひとつ、きらりと光っていた。