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457 :終わるその時に1/7 [sage] :2006/10/23(月) 00:59:52 ID:sfgs1s+c いつでもあなたは花を携えやってくる。 いつも通り、ひどい仏頂面。可愛いのだから笑っていればいいのに。 私がそう言うと、あなたは眉をぴくりとひそめて窓辺の花瓶に手を伸ばす。 何の言葉も交わすことなく、てきぱきとした手際の良さでカサカサに乾いた花を捨て 見舞いに持って来た花束をその花瓶へと移しかえる。 私が好きだといった白い花。 あなたは不器用だから、一度気に入ったと私が告げればそればかり買ってくる。 そのくせ不快そうな表情を湛えたままでいるあなたが滑稽で仕方無い。 ――いつもありがとう、嬉しいわ。 私は決まって最上級の笑顔を返す。 そうするのがあなたにとって一番不愉快だと分かっているから。 ――ああ、そう。 投げ捨てるようにあなたは言う。向けられた背が、私の事が嫌いなのだと雄弁に物語る。 458 :終わるその時に2/7 [sage] :2006/10/23(月) 01:00:34 ID:sfgs1s+c あなたは私を嫌いだと言った。この世で一番嫌いなのだと言った。 それは私も良く分かっている。 あなたが好きで大切で、世界の誰より愛していると簡単に言ってのける私。 そんな嘘じみた―私にとってはまごう事無き真実なのだけれど―セリフを 鵜呑みにしてしまうあなたを、素直に嬉しいとうなずけないあなたを、 そして自分もそうだと、私の事を愛してくれていると言葉に出来ないあなたを あなた自身が嫌っているのでしょう。 よく分かる。だからそれは構わない。 だから――…私はあなたの嫌う事を繰り返す。何度でも、何度でも。 何度だって愛の言葉を囁いて、あなたの顔をしかめさせてやりたいと思う。 加虐的な悦び。そうして苦悩と共に私の事を忘れられなくなればいい。 私が乾いて朽ちて消えてゆく前に。 459 :終わるその時に3/7 [sage] :2006/10/23(月) 01:01:32 ID:sfgs1s+c 寒々とした隔離病棟の3階。その行く末が見えている患者達には、看護師でさえ訪れない。 なのにあなたはこうやって、週に何度か私を見舞う。 大層不機嫌そうにむくれて、それでいて私の好きな花と 以前に私が勧めた文庫を持って私の個室を訪ねてくる。可愛い子。 ブラインドを薄く開けた窓から差し込む日の光を頼りに、一心不乱に本を読んでいる。 ――何故、来てくれるの? 前に訊いてみた事があった。それは私の加虐趣味の一環でもあったのだけれど。 本を抱えたあなたは少し驚いて、それから極めて冷静な風を装い答えてくれた。 ――ここは静かで、読書には最適だから。 その口調には昂りが隠しきれずに表れて、私はそれが可笑しいと思った。 今もそうやって読書のふりを続けているの? 私は知っているのよ、あなたが文庫のページを押さえながら私の様子を見ているの。 私に天使の羽が届かぬように。私に死神の鎌が届かぬように。 だけど、もうそろそろ限界が近い。 永らくベッドに横たわったまま冷え切った私の体は瓦解を始めようとしている。 これで最後。だから、私の最後の意地悪に付き合って。 願いを込めて私はあなたに目を遣る。見ているあなたなら気付くでしょう。 ――こっちに、来てくれる? 460 :終わるその時に4/7 [sage] :2006/10/23(月) 01:02:24 ID:sfgs1s+c しかめっ面を崩さぬままで、あなたは窓際のパイプ椅子を立ち 私のベッドの端に腰を下ろした。 ――何? 面持ちとは裏腹に、心配そうな響きを伴った声。 私のただならぬ雰囲気を察してくれたに違いない。 ――もっと、顔をよく見せて。私に 私は自分の声が思ったより震えている事に、そう話しながら驚いた。 あなたは無言で私の顔を覗き込む。私はどんな風に写っているのだろう。 病床に疲れきった末期患者の貌をしているのだろうか。 私はあなたに笑ってみせる。今なら最高に儚く微笑える筈だ。 ――何で。 きつく結んだあなたの口元が、堪え切れない激情に歪む。 ――何でそうやって笑うの。お姉ちゃんはいつもそう。 ――いつだってそうやってあたしに微笑んで、優しくして、そうして最後に離れていくんだわ。 ――だから嫌いなの。いつもあたしを玩具にして。面白がって。卑怯だ。この卑怯者! 吐き出しながらあなたは私に縋りつく。双眸から涙を零して私を叩く、叩く。 弱った体には些か堪えるが、その痛みは幸福と同義だ。 ああ、愛しいあなた。私の可愛い妹。 私の為に泣き崩れるその頭をそっと撫でると、石鹸のいい匂いがした。 461 :終わるその時に5/7 [sage] :2006/10/23(月) 01:03:22 ID:sfgs1s+c ――お姉ちゃ…ん? 私は妹の頬を抱き、未だ止めどなく溢れ続ける涙を唇で拭った。 ひとの体はこんなに温かなものだったかと私は思う。 ――許して、ね 返事を待たずに私は唇をそのまま妹のそれに重ねた。 突然の事で妹は目を白黒させている。 驚いて弛緩した口の隙間から、舌をねじ込んで口内を舐る。 何が起こったか分からないままの妹は、ただ私の良い様になっていた。 互いの唾液が絡まり合う水音。合わさった口の端から甘く漏れる吐息。 何と温かいのだろう。 ふと唇を離して私は妹の顔を見る。 整った顔立ちは恥辱に歪み、凛とした眼差しは未だ濡れていた。 妹は我に返って唇をごしごしと拭った。 ――なんで、こんなこと、するの…! 私は答えない。その代わりに笑った。 あなたを愛しているからよ。 病床の私の上にへたり込む妹の、シャツのボタンは思いの外脆かった。 462 :終わるその時に6/7 [sage] :2006/10/23(月) 01:04:21 ID:sfgs1s+c 必死に振り回される妹の腕をかいくぐってブラジャーのホックを外すと、 形の良い乳房が露わになった。 ――嫌、嫌。お姉ちゃん。止めて、離してよ…! 双丘の膨らみに触れて、撫でて、その度に妹の体がびくりと跳ねる。 その初々しい仕草が可笑しくて、私は堪えるのに精一杯になる。 ――慣れてないのね。男の子とは寝た事無いの? 胸の先端を舌で転がして弄ぶ。固く強張っていくのが感じられた。 ――そ、そんなの…無い、…っ!あぁっ、んっ…やぁ…! 最後の方は嬌声に取って代わっていた。妹の喘ぐ声が耳に心地良い。 もっと聞かせて。私は首をもたげた欲望に身を任せ、妹の体に舌を這わせていった。 スカートを弄り、下着を剥ぎ取る。 柔らかな茂みに囲まれた秘部はもうぐちゃぐちゃに濡れて卑猥だ。 ――じゃあ、私がはじめてね。 私が浮かべたきっと残虐な笑みに、妹は畏れを示した。 ――っ!! やめて、おねえちゃん。もう、いやぁ…っ! 妹の中は酷く暖かくて、私はこのまま溺れて果てたいと願った。 463 :終わるその時に7/7 [sage] :2006/10/23(月) 01:05:34 ID:sfgs1s+c ああ、私の可愛いあなた。 最期まで傷付けてごめんなさい。 嘘もついたわ。本当は許して欲しいなんて思ってない。 ただ私の為に泣いてくれればそれでいいから。 私を時折思い出しては恨んで、憎んでくれさえすれば、それで私は満足するの。 さようなら、愛しい人。 こんな稚拙な方法でしか愛せなくて、ごめんなさい。 私の意識はそこで途切れる。                          (了)

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