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616 :ideal ◆zvQNG0FZvQ [sage] :2006/12/20(水) 00:06:30 ID:3ouRB9kS 数年後。 兄さんは中学三年に、私は五年生になった。 私と兄さんは今も元気だ。 「ただいま。」 家の中には誰も居ないけど私は挨拶をする。 生活の中の挨拶をしっかりしよう。 これは兄さんに言われたことだ。 私にとって兄さんは絶対。兄さんに言われて以来欠かしたことは無い、はず。 おかげで先生にも褒められたこともある。 兄さんじゃない人に褒められてもあんまり嬉しくないけど。 そんなことを考えながら時計を見ると、三時半。 兄さんが帰ってくるまであと1時間ほどだ。 私は机の引き出しをあけて小さな鍵を取り出した。 617 :ideal ◆zvQNG0FZvQ [sage] :2006/12/20(水) 00:08:02 ID:3ouRB9kS あれは半年くらい前のこと。 私は兄さんに鍵付きの日記をプレゼントした。というより押し付けた 「毎日じゃなくてもいいから日記はつけたほうがいいよ。 私もつけてるんだからさ、兄さんもやろうよ。」 そういうと、兄さんは少し笑って頷いてくれた。 鍵付きの日記なら兄さんは安心して本当のことを書くだろう。 でも、私は、買った時に付いてきた予備の鍵を、 兄さんにその存在を、伝えていない。 何故か? そんなことは簡単だ。 これは、私の、秘密兵器。 兄さんの本当の気持ちを、文章で表してくれる素晴らしいものだからだ。 618 :ideal ◆zvQNG0FZvQ [sage] :2006/12/20(水) 00:09:29 ID:3ouRB9kS もちろん、毎日事細かにチェックするなんてことはしない。 兄さんは私を愛しているのだし、私はそれ以上に兄さんを愛している。 互いに信頼し合っている。 だからこれを使った記憶があるのはまだ一回だけだ。 その一回は、兄さんと父が口論をした夜の何日か後。 私はあんな奴、親とも何とも思ってないが、兄さんはどうだろう。 それが気になって仕方が無くなった時の一回だ。 その時日記には、親に裏切られた悲しみが書きなぐってあった。 それから私は父を心底憎んだ。 兄さんを悲しませるような人間は死んだほうがいい。 619 :ideal ◆zvQNG0FZvQ [sage] :2006/12/20(水) 00:11:07 ID:3ouRB9kS それで今回が二回目の秘密兵器の登場だ。 昨日の日曜、明らかに兄さんは変だった。 まず午前中、私を家に残して兄さんは出掛けて行った。 せっかくの、休み、なのに、だ。 …こんなこと今まで無かったのに。 帰ってきてからも兄さんはどこかおかしかった。 何か、あったに違いない。 調べなくちゃいけない、兄さんの身に何があったのか。 ふと気が付くと鍵を見つめたまま思いの外時間が経っていた。 いけない、あと30分しかない。 私は、兄さんの机から日記を取り出し、鍵を差し込んだ。 カチリと小さな音が鳴り、表紙が開く。

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