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345 :ヴァレンタインB 1/3 [sage] :2007/02/06(火) 00:37:08 ID:c4sMuGyi 「お姉ちゃん。それは絶対危ないから止めた方がいいと思うよ」 「…いいのよ真弓…これであの人に私の思いが伝わるなら肩から切り落としたっていいわ」 「そりゃすごくいい考えだと思う。私もその案には大賛成だけど」 「あら珍しく気が合うのね」 「私はやらないけどね。でも世の中アプローチの方法は1つじゃないし。ストーキングとか  あのメールはちょっと周りくどくてどうかと思うけど今回は私もいいと思う」 「なら手伝ってよ」  家に帰って来るとお姉ちゃんが包丁を持って私を待っていた。6つ違いのこの姉は 生活能力がゼロに近い。機械系に異常に強くてハッキングや盗聴から追跡まであらゆることが 出来ること以外は本当に何も出来ない。現役高校生の妹としては莫大な遺産を残してくれた 大叔父だかに感謝するのみである。 「ねえ真弓…私はあんたの時は手伝ったじゃない」 「いや手伝いたい気持ちはものすごくあるんだけど…せめて指にしない?」 この人は手首を切り落としたら止血をしなければならないことが分かっているんだろうか。 それとも止血やその他の後処理は私や祐人がやるからいいと思っているのだろうか。 346 :ヴァレンタインB 2/3 [sage] :2007/02/06(火) 00:39:43 ID:c4sMuGyi 「だいたいさ、片手無くなったら誰がチョコ作るの?」 「え、多分自分で出来ると思うんだけど…」 「あのね、衛生面は全く無視なの!?傷口から化膿して腐って死ぬよ?もう…本当に  祐人が止めてくれて良かった。ありがとう祐人」  私は3年前から一緒に居てくれる恋人を振り返ってお礼を言った。たまたま今日彼を自由に しておいて良かった。もし部屋に繋いで行ったりしていたら今頃台所は地獄絵図だったろう。 「真弓がそれを望まないとわかっていたから」 祐人はそう言うと淹れてきた紅茶をおいて私に軽くキスをした。そんなことをされると もっと欲しくなる…けれど私は理性を総動員してお姉ちゃんに向き直った。この人に 死なれると未成年の私としては非常に危ない。 「……その祐人くんが今家に居るのは誰のおかげかなぁ真弓ちゃん」 「う…でもとにかく手首は危ないと思う!!」 「じゃあ調理は真弓に任せるから…」  ……極めて真剣な眼差しな所を見るとこれで最大限の譲歩のつもりだろうか。普段は 奥手なお姉ちゃんがこんなに積極的になっているのだから協力はしてあげたい。 347 :ヴァレンタインB 3/3 [sage] :2007/02/06(火) 00:40:50 ID:c4sMuGyi  困った私は祐人の方を振り返った。呑気に紅茶を飲んでいた彼は私の視線に気づくと 困ったように微笑んだ。  ……うん、祐人の笑顔を見るとなんか安心する。どちらにしてもお姉ちゃんがこれ以上 譲歩することは無さそうだし、なんとかするしか無い。 「祐人、止血できる?」 「切り傷ならともかく切断面はやったことないな。でもやるんだろう?」 「…うん、そうだね。私も切断はやったことない…でもやらなきゃいけないみたいだね」 「真弓なら大丈夫だよ。なんとかなるって」  そっと頭を撫でてくれた。祐人は本当に私のして欲しいことを的確にわかってくれる。 そんなのは当たり前のことだけどそれが嬉しい。 「話がまとまったみたいね」  私は腹を括ってお姉ちゃんから包丁を受け取った。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 348 :ヴァレンタインB その後 [sage] :2007/02/06(火) 00:41:43 ID:c4sMuGyi  高熱で動けないお姉ちゃんの代わりにチョコを渡してきた3日後。  家に帰ると空気が重くこごっていた。 「…お……お姉ちゃん?」 「あらお帰りなさい真弓」  お姉ちゃんは笑っていた。こんなに笑顔なのは見たことが無い。けれどその笑顔は 黒い感情のみで出来ていた。重い。冷や汗が出て来た。今日は祐人は部屋だ。私は精一杯 力を振り絞って声を出した。 「……どうか、したの?」 「あの人、食べてくれなかったみたいなの。私が身を削ったのに……  どうして食べてくれなかったのかしら。手首だけじゃ伝わらなかったのかしら。  愛してるのに…こんなに愛してるのに。なんで食べてくれないの…」 「……っ!」  お姉ちゃんがこちらを向いた。その瞳には何も写っていない。黒い暗いだけの瞳が 真っ直ぐ私を押し潰してくる。私は立っていられなくなってへたり込んだ。 「ねえ真弓…なぜかしら…私はこんなに彼を見守っているのに。愛してるって毎日  唱えているのになんで彼は私に気づかないの?なぜ愛してくれないの?伝え方が  足りないのかな…私はこんなに愛してるのに。ずっとあの人を見ていたのに。  愛してる愛してる愛してる。なのに…どうして?ねえ真弓、私わからなくなっちゃったの…  いったいどうしたらいいの?私はただあの人に愛されたいだけなのに…愛してるわ。  ずっとずっと見ていてあげるのに…」  お姉ちゃんはいつまでもしゃべり続けた。

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