「慎太郎の受難第1話」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「慎太郎の受難第1話」(2008/07/29 (火) 22:21:42) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
558 :慎太郎の受難 ◆lPjs68q5PU [sage] :2007/02/10(土) 17:03:40 ID:x7y5aExW
「しんちゃ~ん!」
どこからともなくハスキーボイスが聞こえる。
またかよ・・・・と思いながらも振り向くとやはりいた。
小牧奈津子。
「何のようだ」
「用がないのに呼んじゃいけない?」
「駄目だ。今忙しいから。」
「全然そうは見えないけど?」
くっ・・・たしかに今は暇だが・・・。ああいえばこういう。可愛くないやつだ。
「忙しくなくたって駄目だ。」
「いいじゃない、夫婦なんだし。」
始まった。
「いつ俺たちが夫婦になったと?」
「時期なんて関係ないっていったでしょう?大切なのは夫婦であるということよ」
「俺はまだ夫婦になった覚えはないぞ。」
「もう、しんちゃんったらツンデレなんだから♪まだだなんて♪」
「デレてない。断じてデレてないぞ。」
「もう!ツンツンしなくて良いの、だって私たちは・・・」
「夫婦だからって言うのは、なしだ。」
「あら、分かってるじゃない♪」
はぁ。これがいわゆる電波っ子てやつか?
こんな会話をしていると、隣にいた松本恵がいつものように茶々を入れてくる。
「はいはい、そこ、夫婦漫才は終わった?」
「夫婦じゃないって!」
これは俺。
「漫才じゃないって!」
これ奈津子。
神様、どうして奈津子と俺を引き合わせたのですか?
559 :慎太郎の受難第一話2/4 ◆lPjs68q5PU [sage] :2007/02/10(土) 17:05:12 ID:x7y5aExW
奈津子と出会ったのは高校に入学した4月のことだった。
中学の頃からやってきたので高校に入っても吹奏楽部に入ろうと決めていた俺は、
早速部室に行った。
先輩に連れられ、自分の楽器のパートが練習する部屋に行く間、
俺は久しぶりに楽器が吹けるということで頭はいっぱいだった。
「ここで練習してるの。」
部屋に着くとそこには先客がいた。先輩だろうか?と思った。
なかなか可愛い。髪は黒。肩にかかるぐらいの長さ。
後に分かることだが、奈津子だった。第一印象、可愛い。
しかしこの日は何もしゃべらずに終わった。
そして部活動編成の日、うちの学校は全員何かしらの部活に入らなくてはならず、
そのための編成が行われる日。
新入生初顔合わせの日。
そこで初めて自分の楽器の新入生が誰か始めて分かった時の驚きは、
今もはっきり覚えている。何せ先輩だと思っていた、あの可愛い子が
同級生だと分かったからだ。
テンションあがるあがる。
ちなみにもう一人の松本恵のほうもなかなかの美人だ。
その・・・胸も・・・はぁ。
この日俺は、俺の高校生活薔薇色だ~
なんて馬鹿なことを思っていた。正直馬鹿だった。
しゃべってみればハスキーボイスだった奈津子。
顔よし。声よし。最高じゃないか。
なんて思いながら練習をしたことははっきり覚えている
初の練習の後の俺の顔はとてつもなく明るかったらしい。
当たり前だ。自分の好きな楽器がふけて、可愛い子にも囲まれる。
どこに暗い要素があるかと。
しかし、事態は急変する。
奈津子が本性を出したというか・・・。
ともかく急変だった。
560 :慎太郎の受難第一話3/4 ◆lPjs68q5PU [sage] :2007/02/10(土) 17:06:16 ID:x7y5aExW
出会ってしばらくの間は、何の変哲もない会話をしていた。
中学のときのこと、楽器のこと、高校のこと・・・。
しかし、5月に入り、奈津子の態度が突然変わった。
まず、今まで慎太郎君だった呼び名が突如として「しんちゃん」になった。
そしていつの間にか奈津子の頭の中では
俺たちが夫婦になっていた。
「ねぇしんちゃん」
「なんだその呼び名は。いままでそんな風に呼んでたか?」
「いやね、夫婦なんだから君付けはおかしいかな、と思って。」
「いや、夫婦でも君付けのところは若い夫婦ではあってな・・・
っていつから俺たちが夫婦になったんだ!?」
「いつからだっていいでしょ。大切なのは時期じゃなくて夫婦であるということよ。」
「断る!第一、俺はまだ15だぞ。法的に無理。」
「あら、あたしも15よ」
「なら・・・」
「3年ぐらい待つわ。余裕よ。」
「あのなぁ」
「それにこんな可愛い子が嫁になるなんてうれしいと思わない。」
「自分で自分を可愛いというか。」
「本当のこといってるだけよ。しんちゃんだって可愛いと思うでしょ」
第一印象で確かにそう思ったが・・・くそ、反論できない。
「それに夫婦だって言い続ければ、ほかの女も寄ってこないし(ボソッ」
「ん、なんか言ったか?」
「ううん、なんでもないよ。じゃ、また明日ね。」
この日から俺は奈津子に付きまとわれることになった。
帰りにこのことを中学からの友達の鈴木(♂)に相談すると、
「妬けるね」
といつものにやけ顔で言い放った。
「お前に渡そうか?お前なら顔もいいし・・・」
「断る。」
妬けるんじゃなかったのかよ。俺は友にも見放されるのか?
561 :慎太郎の受難第一話4/4 ◆lPjs68q5PU [sage] :2007/02/10(土) 17:07:31 ID:x7y5aExW
こうして冒頭のような日常が続いてるというわけだ。
正直言うと今俺は困っている。
好きな女が別にいる。しかし奈津子が離れてくれない。
けじめつけるためにも奈津子に言わなくてはならなかった。
しかし、俺はまだ言えてない。なぜか。
奈津子は俺がほかの女(それがたとえ恵でも)と会話していると
殺気というかすごいオーラを出す。
一度はサバイバルナイフをチラッと見せてきた。
女の子と話した後に、
「ねぇヒ素がいい?それとも青酸カリ?」
と聞かれたこともある。まるで、
「お風呂にする、それともご飯?」
と訊いてるかののりで・・・
「冗談だよ。」
とは言っていたが。
こんなこともあって、好きな子がいることを奈津子に言えないでいる。
言ったら何されるかわかったものじゃない。
まだ俺は死ぬような年齢じゃないしな。
それにいずれ俺にも飽きてくれるだろうと思っていた。
正直俺はそんな良い男ではないしな。鈴木と比べると月とすっぽんだ。
そう、苦しいのは今だけ。頑張れ俺!
ところで最近その鈴木から俺が奈津子と会話しているとき
すごい目で見られるのだが・・・
うらやましいならそういえばいいのに。いつでも譲ってやるのにな。
あいつそんなおくてだったかなぁ、
そんなことを考えながら今日も一日が過ぎっていった。
そんな夜、一本の電話がかかってきた。
運命の歯車が回り始めた。