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442 :同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] :2007/02/21(水) 01:29:10 ID:kniQ3gHP 「ふぁぁぁぁ… おはよー夏月(なつき)」 「おはよう、兄さん。今出来るから座って」 「んー」 リビングに入るなり、大きな欠伸をして朝の挨拶をわたしにしてくれたのは、 大好きな双子の片割れで兄の陽太(ようた)。 まだ半分閉じかけた目で、ふらふらと定位置に座る兄さんはホント可愛い。 朝が弱い兄さんのこんな姿を見られるのは、妹であるわたしの特権だ。 「ごめんねー、夏月ぃ… 朝ご飯の仕度、全部任せっきりで」 高校生になって一ヶ月、学校のある日は毎日聞いている兄さんの謝罪。 寝惚け気味の兄さんの前によそったご飯を置きながら、わたしは頬を膨らませて怒ってる顔をする。 「もう! 気にしてないって言ってるでしょ? 兄さんは朝弱いんだから、いいの!」 そうは言っても、優しい兄さんは気にするんだろうな。 「うーん… じゃあ、今日の夕飯は僕が作るからさ」 「え!? ホント!?」 「ホントにホント。帰りに買い物して帰ろ。それまでにリクエスト決めておいて」 「うん! ありがと、兄さん!」 「お礼言うのは僕の方だってば。  あ、夏月の美味しいご飯冷めちゃうよ、早く食べよう。いただきます!」 「いただきます」 嬉しい、嬉しい、嬉しい!! もぐもぐと美味しそうにわたしの作った朝ご飯を食べてくれる兄さんを見ながら、 わたしは幸せに浸っていた。 「「行ってきます」」 誰も居ないけど、ちゃんと出掛けには一緒に挨拶をしてから学校に向かう。 今、父さんも母さんもこの家には居ない。父さんの転勤に母さんも付いていったからだ。 父さんの転勤が急に決まったのは、試験に受かって高校が決まった頃だった。 高校の事もあり、わたしと兄さんはここに残りたいと主張した。 はじめは母さんも残る予定だったけど、父さんの生活能力の無さから、 結局母さんも付いて行く事になり、そして今この家には、わたしと兄さんだけが残って、 二人で暮している。 学校まで片道約20分。あまり乗り物が得意じゃないわたしと兄さんは、いつも徒歩。 そして半分ほど歩いた所で、いつもの声が降ってきた。 「はよ、清水兄妹」 「おはよう、東尉(とうい)」 「おはよう、東尉君」 いつもの通り、気怠そうに無愛想な挨拶をして合流してきたのは、 前園東尉(まえぞの とうい)君。 小学校からの友達で同級生、兄さんとは親友という間柄だ。そして、 「東尉、毎朝言ってるけどさ、清水兄妹ってまとめて挨拶するのやめてようね」 「こっちも毎朝言ってるけど、いいじゃねぇかよ。お前ら兄妹じゃねぇか」 「当然兄妹だけどさ、挨拶は一人一人にちゃんとしないと」 「めんどくせー」 「東尉の無精者ー」 「陽太は口煩いー」 ここまでが日課になっている、兄さんと東尉君の軽快な軽口。 443 :同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] :2007/02/21(水) 01:29:49 ID:kniQ3gHP 「あ、東尉、今日の帰り夏月と買い物して帰るから、荷物持ちにくる?」 「何で俺が荷物持ちしなきゃなんねぇんだ。  ラブラブ兄妹の邪魔はしませんので、お二人でどーぞ」 「東尉君、その口調、気持ち悪い」 「うっさい清水妹」 「それやめてってば。わたしには夏月っていう名前があるんですー」 「しょうがないよ夏月、東尉の頭じゃ憶えられないんだよ」 「お前らより俺の成績のが上だって事、忘れてねぇか?」 「「テスト前のノート、頼りにしてます!」」 「…はぁぁぁ、ちゃんと奢れよな」 こんな風に毎朝楽しく登校するのも、中学生の頃からずっと続いている。 みんな、兄さんと東尉君が親友だとは思えないと口を揃える。 兄さんとわたしは、茶色っぽい少しくせっ毛の髪がふわふわしてて目も大きく、子供っぽく見える。 対して東尉君はクオーターの所為か、髪も目も灰色っぽく顔つきも大人びいている。 その上身長だって180cmもあり、わたしより20cm近く、兄さんですら7cmも高いのだ。 更に無愛想で一匹狼、いつも穏やかな兄さんとは正反対。と、上げればキリが無い。 けれど兄さんと東尉君は、とっても仲が良い親友だ。 兄さんの親友だもの、無論わたしも東尉君とは仲が良い。 退屈な午前の授業中、今朝の兄さんの言葉を思い出しては頬が緩むのを止められない。 夕飯、何をリクエストしよう。 チャーハンがいいかなぁ… あ、冷ご飯がないからダメだ。 うーん… オムライス、ヤキソバもいいなぁ… 何て色々考えてるうちに、あっという間に午前の授業は全部終っていた。 お昼食べに行こう。と、席を立った所で、声を掛けられた。 「夏月! これからお昼だよね?」 「うん。どうかした、好乃(よしの)?」 声を掛けてきたのは、伊藤好乃(いとう よしの)。 同じクラスになって知り合った友達だ。 「ええっと… 夏月はお兄さんと前園君と食べてるんだよね?」 「うん、そうだけど?」 赤い顔をして、もじもじと言い淀んでいる好乃。もしかして… 「あ、あのさ、あたしも一緒に食べちゃダメかな?」 やっぱり。いつもの事に好乃には悟られない様、心の中で溜息を吐く。 「えと… とう、前園君ってちょっと気難しいっていうか、他の人連れてくと怒るの。  えぇと… だから、ごめんね」 「そっか、ごめんね夏月。変な事言っちゃって、じゃ!」 明るく言ってたけど、がっかりしてるだろう好乃の後姿に、もう一度ごめんと謝った。 これまで何度もあった遣り取りだった。 あまりの押しの強さに、渋々連れていったクラスメイト。 その時、東尉君は不機嫌な顔になると、その場から居なくなってしまった。 クラスメイトには遠回しに責められるし、後で東尉君からも怒られた。 飯が不味くなるから、誰も連れてくるな。そいつと食いたいんならここには来るな、と。 東尉君はその外見から、とてもモテる。 しかし恋愛、女の子には興味がないらしい。というか、他人に興味がない。 だからこういうのは煩わしくてしょうがないんだろう、と兄さんが言っていた。 それからは、東尉君狙いの子達からいくら頼まれても、断り続けている。 444 :同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] :2007/02/21(水) 01:30:26 ID:kniQ3gHP しかし折角高校に入って出来た友達である好乃の恋を応援してあげたい、そう思い 目の前でパンを齧る東尉君に、さり気なく尋ねてみる事にした。 「東尉君って、気になる子とかいる?」 「「………………」」 …あああああ、わたしの馬鹿! ストレート過ぎるよ! 兄さんと東尉君の手が止まって、凄い目でこっちを見て固まってる。 「えぇっと…」 どうしよう、変に誤解されちゃったら… 誤解って、何? されちゃったらって、誰に? よく解らない自分の気持ちに、内心首を傾げ考え込んでいると、 いち早くフリーズが解けた東尉君が口を開いて、考えは中断されてしまった。 「悪いけど、夏月。お前は対象外だ」 「って、ちがーう! わたしの事じゃなくて…!」 ああもうっ! さり気なく聞くつもりだったのに! これじゃあ、リサーチだってバレバレだよー。 それもこれも東尉君が真面目な顔で、馬鹿な事言うから… そこまで黙って聞いていた兄さんが、向日葵のような眩しい笑顔をわたしに向けるから、 その不意打ちに胸が大きく高鳴った。 「なーんだ、よかった~。夏月が東尉の事、好きなのかと思ったよ」 「え?」 ええええ!? よかったって、兄さん、どういう事!? まさか、それって、嫉妬、してくれ…… その瞬間、鼓動が早くなって、顔が熱くなった。 何これ? 嬉しい! 嬉しい! 嬉しい! 嬉しすぎるっ!! 「東尉が義弟になるのなんて、信じらんないからね」 「バカ。話が飛び過ぎだ。第一、俺と夏月がなん、て太陽が西から昇ってもありえない」 ………何だ。喜んで損した……… 喜んで?? わたし、何考えてるの…? まさか… もしかして… わたし、兄さんが……… 「夏月?」 「え!?」 考え込んで黙ってしまったわたしを、心配そうに覗き込んだ兄さんの顔が近くて、 納まった動悸がまた激しくなるのが解る。 「急に黙り込んじゃってどうかした? もしかして、ホントに東尉の事…」 「違う! わたしはっ…!!」 !! 何を言おうとしてるの? わたしは、わたしが好きなのは… ああ…! どうしよう、気付いてしまった! わたし、兄さんが、好きなんだ!! 445 :同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 [sage] :2007/02/21(水) 01:31:01 ID:kniQ3gHP 自覚した想いに呆然と対処出来ないわたしを、兄さんが訝しげに見ているけど、 今は何も言えない。 「ま、夏月もブラコンだからなー。それに怖ーい兄貴も目を光らせてるし?」 そんな微妙な空気を察してくれたのか、揶揄い口調で東尉君が茶々を入れてくれた。 直様兄さんも、東尉君の気遣いに乗る。 「とーぜん! 僕の目の黒いうちは、夏月に悪い虫は近づかせません!」 「流石、シスコン兄貴!」 「うっさい!」 軽口だと解っていても、想いを自覚したわたしには、兄さんのその言葉は嬉しすぎて、 この想いが簡単に諦められるものではないと、思い知らされる。 しかし午後の授業中、悩みに悩んだわたしは、急に馬鹿馬鹿しくなった。 元々、兄さんの事は大好きだ。 今更、そう今更なんだ。自覚したから何だというのだろう。 自覚する前と、自覚した今。何が違う? 何も違わない。 兄さんが好き。ただ、それだけ。 「夏月ー、帰ろう?」 「え、あ、兄さん! ちょっと待って!」 いけない、もう授業終ってたよ。 慌てて帰り支度をしながら、クラスが違う兄さんがこうして迎えに来てくれるという、 いつもの事でも、今のわたしには嬉しくて堪らない。 まるで、恋人同士みたい!…なんて。 よし! 帰り支度完璧! 急がなくっちゃ! 「あ、夏月!」 あ、好乃。急いでいても、ちゃんと挨拶はしなくちゃね。 「じゃあね、好乃! また明日ー!」 「え? あ、夏月、あのっ!」 好乃が何か言いかけてたようだけど、兄さんが待っていてくれるという甘い誘惑には、 勝てる筈も勝つつもりも無く、悪いけれど明日聞くね、と内心で謝って兄さんの元に駆けていった。 「お待たせ、兄さん!」 廊下で待っていた兄さんの前に着くと、やっぱり荷物持ちは嫌だと言っていた東尉君の姿は無かった。 「うん、待った待った! と、いう事でデザート係は夏月ね」 「うん! いいよ~!」 「え? 何か機嫌いい?」 当然だよ! 兄さんへの想いを自覚して、一緒に買い物に行って、一緒の家に帰って、 ご飯を作って… 兄さんをずっと独占出来るんだよ!? ご機嫌に決まってるよ! 「うん、だからデザートは、わたしが作ってあげる! リクエストもOKだよ!」 そのまま兄さんの手を取って、早く行こうと急かし、二人でメニューを考えながら、 スーパーまで楽しく戯れ合いながら向かった。 だから、浮かれていたわたしは気付かなかった。 わたしがどんな顔をしていたのかも。 それを好乃が見ていたという事も。 そしてその好乃の表情が、どんなものだったかも―――― -続-

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