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594 :月と花束 [sage] :2008/08/12(火) 00:21:00 ID:l7YwKRkg
月が笑ってる。
私は花束を抱えて歩く。
ごめんね愛しい人。昼間は寂しい思いをさせて。
でも仕方なかったの。
私はあの子を嫌いになれないし、
私はあなたを諦められないから、
こうするしかなかったの。
墓碑の前に花束を置いた。今日は色とりどりのガーベラの花。
赤、黄、橙、桃、茶、こぼれるような色たち。
「今日はカラフルにしたの」
私はあなたに話しかける。
静かな虚空に言葉が浮かぶ。
暗い空気が振動する。黒い大気が共鳴する。
「あなたの笑顔を思い出してたら、すごく楽しい気持ちになったから」
にっこり微笑んで空を見上げた。
月は静かに白く輝いている。
595 :月と花束 [sage] :2008/08/12(火) 00:23:48 ID:l7YwKRkg
「あの子は羨ましいわ。月より白い肌をしていて」
今日見た陶器のような肌を思い出す。
指先で触れても白い肌。
本当に陶器であるかのような頬に触れた時に刺さってきた視線。
全てをそのまま停止させ、そのまま死をもたらせるかのような視線を受けて私は中学生のように頬を染める。
脊髄を這い上がってくる快感と幸福。
「あの子の視線は本当に美しいのよ。どう?羨ましい?」
墓碑に手を触れた。
あの子の頬より冷たく硬い石の墓碑。
「違うわよね」
だってあなたは私を好きなのだから。
指を滑らせて深く笑う。
にっこり、にぃいっ
指先からあなたの愛が伝わってくる。
諦めなくて良かった。
今こうやってあなたは私だけのものだもの。
596 :月と花束 [sage] :2008/08/12(火) 00:28:32 ID:l7YwKRkg
「愛してるわ。あなたは私で私はあなた」
暖かい血と、弾力のある肉と、全て私のもの。
刃先があなたに入った時の快感と幸福は忘れ得ない。
「愛してるわ。あなたもあの子も。私のものよ」
言葉は夜空に高く舞い上がり月に届く。
私は月光を指に絡めてあなたとあの子を手にしている喜びを噛み締めた。