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299 :恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] :2007/06/11(月) 00:15:04 ID:EiMbBP8L  磔にされた日は帰宅するなり真弓が上に乗ってきて1つずつ枷を解くというイベントが 待っているものだった。しかし今日は亜弓があっさり外して行った。  姫野真弓が聖佑人の上に馬乗りになって、必要以上に顔を近づけ吐息のかかるほど 近くで外して行く。何となく圧迫感のような恐怖感を覚える行為だったがなければ 無いで拍子抜けした思いだった。 「お帰りなさい」 「……ただいまっ」  祐人が真弓に声をかけるとはじかれたように振り返って、すぐに視線を逸らしてしまう。 「真弓?」  これもまた今日だけは亜弓が繋いだ手錠を佑人が引くと無言のままそっぽを向く。 「ご、ご飯にしよう」  真弓は明らかに挙動不審だった。 ■■■■■■ 300 :恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] :2007/06/11(月) 00:16:36 ID:EiMbBP8L ■■■■■■ 「き……今日は別々にお風呂入りませんか」  夕食後に真弓がこう言い出すに当たってさすがの祐人も突っ込んだ。 「真弓今日変じゃないか?」 「そんなこと無いと思うよ!いつも通りだよ!!」 「そうか?」  問い返すとまた目をそらす。真弓は決して佑人の目を見ようとしなかった。 「真弓?」  佑人はそれでも顔を覗きこもうとして、肩のあたりに凍るような気配を覚えた。  振り返ると亜弓が微笑んでいる。 「……不毛な言い争いはもういいから……2人ともお風呂入ってきなさい……」 「おっお姉ちゃんっ私の話聞いて」 「今更何を恥ずかしがっているの……?」 「恥ずかしがってる訳じゃないよ!」  亜弓はなおも言い返そうとする真弓の耳に何か囁いた。  途端に真弓は赤い顔を更に真っ赤にして俯く。 「さあ入ってらっしゃい……」 ■■■■■■ 301 :恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] :2007/06/11(月) 00:18:41 ID:EiMbBP8L ■■■■■■ ちゃぷ……  湯を掬って手から零す。片手しか使えないから本当に児戯のようだ。佑人は 真弓がシャワーカーテンの向こうで体を洗っている間この意味の無い動作を 繰り返していた。風呂の間は2人とも良くしゃべるのだが今日は無言だ。  体を流す音がした。真弓が体を洗い終えたのだろう。彼女が体を洗い終えると その日の風呂は終了。洗った後に彼女も湯に浸かった方がいいと佑人は言ったのだが、 真弓は恥ずかしいという全くもって今更な理由でそれを固辞していた。  佑人が出るか、と真弓に声をかけようとしたとき。  なんの前触れも無く2人を隔てていたシャワーカーテンが開いた。 302 :恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] :2007/06/11(月) 00:21:51 ID:EiMbBP8L 「………」  佑人は思わず見惚れてしまった。色白の薄い肩、綺麗に浮き出た鎖骨、控えめだが 形の良い胸、平坦な腹から細い腰。少女の裸体は透明に輝いて見えた。明るい茶の髪が うなじに張り付いて妙に色っぽい。 「今日寒いから一回入る」  そうぶっきらぼうに目を伏せながら言い放つと真弓は浴槽に入ってきた。姫野家の 風呂は標準サイズなので2人入ると当然窮屈でたまらない。というよりは体が密着する。あくまで腕などの側面同士だが。 「……真弓?」 「たまにはいいじゃない」  真弓は顔を真っ赤にして半ば湯船に沈みながら答えた。  可愛い。正直に言えば可愛い。佑人は思わず頭を撫でようとして手を上げる。  カチャリと鎖が音を立てた。  一瞬迷う。俺はいつの間にかこの状態を許容している。最初は抵抗しないように していただけの筈だったのが手錠や首輪を当然のものとして受け止め始めている。 これでいいのだろうか。この生活は本当に終わるのだろうか。  一瞬迷うが、すぐにそれを振り切る。大丈夫だ。必ず外から誰か俺を探し当てるだろう。  中途半端に上げた手を真弓の頭におろす。 「本当に今日はどうしたんだ?」  軽く撫でてやると頭を上げた驚いたような目をしている。少し顔を近付けて 問いかけるように覗きこんだ。 「佑人……」  真弓の薄い桜色の唇が名前を紡いで、そっと佑人のそれに触れた。 ■■■■■■ ■■■■■■

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