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565 :実験的作品 [sage] :2007/06/25(月) 22:58:29 ID:0J8+YbRQ 投下します。 がちゃり ドアを開け、家の中に入るといい匂いが漂ってくる。 「ただいま。を!いい匂いだね。今日はカレーライスかぁ。」 とんとんとん 台所で玉葱を包丁で切っている千鶴さんの後姿が目に入る。 「あ、お帰り~♪」 いつもと変わらない微笑で俺に振り返ると、再び包丁をリズミカルに動かし始めた。 「もうすぐご飯できるから、テレビでも観て待っててね。」 微かに聞こえる鼻歌と、綺麗に片付けられ、掃除されている室内。 いつもと変わらない千鶴さんの様子に先ほどコーネリアさんから聞いた話が本当だったのかと思ってしまう。 よし、シミュレーションをしてみよう。 俺が千鶴さんだとして、いきなり「ごめんなさい」と謝る俺。 『なんのことですか?』と千鶴さん。まぁ、そうなるわな。 「前に千鶴さんが好きなようにしていいって誘ってくれたのに、何もできなくて。 それで、千鶴さんを怒らせちゃったんじゃないかと思って。」 『別に怒ってないですけど……でも、突然どうしてですか?』 「え、あ、いや。その」 『私……そのことで怒っていましたか?』 「いえ……怒っているようには見えませんが……」 『ですよね?じゃぁ、どうしてP君はそんなことを言い出したんですか?』 「えっと、その、あの……コーネリアさんが……」 『コーネリアさん?どうしてそこでコーネリアさんの名前が出てくるのかな?かな?』 ……駄目だ!自分で墓穴を掘るようなものじゃないか。これで千鶴さんが 『むすぅ……ぷん♪』 と、口も聞いてくれない状況になっていれば謝罪のしようもある。 (いや、そんな状況を期待しているわけじゃないけど) しかし、どう見ても普段通りの相手にいきなり謝ったら俺のほうが何かやましいことがあるみたいじゃないか。  ソファーに座りながらぼんやりと終わりの無い脳内シミュレーションを繰り返していると、突然QP三分間クッキングの着信音が室内に響く。 なんだ、上杉かと思いながら電話を手に取り、いつものように他愛も無い雑談。 「でだ、明日買い物に行こうぜ。ほら、前に言ってただろ?」 この場合の俺たちの買い物=所謂一つのオタク系店舗へ、そういう系統の物品を買いに行こうという合図なんだが……ちらりと台所の千鶴さんの様子を見る。 「ああ、了解。じゃぁ、いつものところでいいか?」 「おっけ、まぁ、また何かあったら連絡するわ。」 そういって電話を切る。そういえば、長いこと行ってなかったよなぁ。 千鶴さんと付き合うようになってから、オタク的な部分を押さえつけていた反動もあったのだろう。何故だか妙にうきうきしていた。 しかし、千鶴さんに面と向かってカミングアウトすることができなかった。 「上杉さんと何話してたの?」 「あ、いや、明日買い物に行こうぜって誘われてさ。」 やばっ!これで千鶴さんが『じゃぁ、私もついていっていい?』なんて言い出した日には落ち着いてエロゲや同人誌(えっちなのを含む)を検分できないじゃまいか。 「そうなんだ。私も明日はちょっと用事があるんだぁ。でも、夕方には終わると思うからどこかで待ち合わせて御飯食べようよ。」 「あ、そうなんだ。じゃぁ……」 566 :実験的作品 [sage] :2007/06/25(月) 22:59:17 ID:0J8+YbRQ 久しぶりに来るそこはある意味いつもと変わりなく、週末ということを差し引いても微妙な熱気と汗臭さに包まれていた。耳に聞こえる今流行の「曖昧3cm♪そりゃ……」がエンドレスで流れ、真剣な表情でエロマンガを検分する同類たち。 ……見事に割合が95対5だな…… 何の割合かってもちろん店内の男女比に決まっている。 まぁ、カップルで来ている奴っていうのもいないわけじゃないけど、見事にオタップルだし、あとは少し腐っていそうな女の姿がちらほらと見受けられた。  そう、所謂『東の秋葉原、西の日本橋』と並び証される場所のある店舗なのだ。 しかしと言うか、やっぱり千鶴さんとはここには来れないな。 色々な意味で。しかし、懐かしいなぁ……  たかだか半年きていないくらいで懐かしいと感じる俺ってどうよ?と思いながら適当に店内を物色。 なんでだろう、妙に楽しい。表紙を手に取り、裏表紙を眺め、内容を吟味する。ただ、それだけなのに楽しい。気がつけば5冊ほど既に購入決定。 彼女がいるのにエロ同人やエロマンガってどうなんだろうな。 これって別腹?浮気?いや、二次元は浮気にはならないだろ。でも、何故か後ろめたい。 その後ろめたさが何故か、余計に楽しくどきどきさせるんだよな。うんうん。 「ほどほどにしとけよな。」 そういったのは上杉だったが、そういう上杉の手には20冊ほど……ってお前買いすぎ! 「ばぁか、俺はお前と違って彼女がいねぇんだよ。で、これは頼まれ物なんだよ。」 よく見れば俺の購入したのはきっちり押さえてあるあたり、やっぱり趣味が似ているというかなんというか。 こいつも、見てくれと性格はいいんだから彼女くらい……って俺が言う台詞じゃないか。 俺だって千鶴さんでなければ彼女なんて作ってないだろうし、そもそも作れないってばよ。 「じゃぁ、いつものメイド喫茶にでも行くか?」 店を出て、程よく戦利品を獲得した俺は上杉にそう提案した。いつも……と、言うほど頻繁に行くわけではないけど、2回に1回くらいは行っているはずだからいつものでいいはずだ。 「いや、今日は普通の茶店でいいんじゃね?」 携帯電話を見ながら上杉はすたすたと駅の方へと歩いていく。なんだろう?微かな違和感。 上杉は無類のメイド好きなのに、メイド喫茶に行かないだなんて……病気か? そんな風には流石に聞けずに上杉の後を追いかける。まぁ、気分的にそんな日じゃないんだろう。このあと千鶴さんにもあるわけだしな。  その後、俺と上杉は適当に店舗を巡りながら、夕方には千鶴さんと……見慣れない女の子と御飯を食べることになった。 その女の子の名前は朝倉美波。大人しい感じの小柄な可愛い女の子で千鶴さんの職場の後輩……だそうだ。上杉はガチンガチンに緊張して固まっていたようだが、 美波ちゃんの趣味が上杉と同じカメラということで話が盛り上がり、それがきっかけとなったのかなんだか二人はいい雰囲気になっていた。  「ねぇ、今日は何を買ったの?」 お酒を飲んで程ほどに出来上がった千鶴さんは美波ちゃんの胸を揉みしだきながら、俺の紙袋をじぃっと見つめていた。 「えっとね…」 こんなこともあろうかと……こんなこともあろうかと! この時の為に買ったダミー(いや、あそぶけど)ゲームが2本、少しえっち風味の漫画を2冊(チャンピオン系)。あとPC関連の書籍を千鶴さんに見せる。 「やっぱりこういうのが好きなの?もぅ、しょうがないなぁ。」 ふぃぃぃぃぃっしゅっ!!!!! かかった!くっくっく、本命(見せられないもの)は既に駅のロッカーに退避済みよっ! と、まぁ、物は上杉ルートで回収する予定だったりするのだ。  ふと、上杉の様子を見ると美波ちゃんとなんだか和やかムードに。  上杉の奴、ちゃんと持って帰ってくれるんだろうな? 567 :実験的作品 [sage] :2007/06/25(月) 23:00:28 ID:0J8+YbRQ 「ごめん、俺、今日も用事があってさ。」 なかなか例の物を持ってこない上杉に電話をするとそんな回答が毎度のように返って来るようになっていた。 「おいおい……あれから何日が経っているんだよ。」 もう、あれから2週間が過ぎていた。そう、あの飲み会以降、俺は上杉と会っていない。 家にとりにいくにしても家にいない。理由を聞いても用事の一点張り…… 仕事が忙しいのか?と思えば、どうもそんな様子ではない。 「すまんなぁ……なんだったら郵送するぜ?」 「上杉……お前彼女でもできたのか?」 「………………!?」 冗談のつもりだった……えっ、マジで?誰?まさか……、 「この間の美波ちゃんか?」 「いや、まだ彼女ってわけじゃないけどさぁ……チャンスなんだよ。俺にとって多分最初で最後のチャンスなんだ。頼む……俺を男にしてくれっ!」 携帯電話を切り天井を見上げる。そうかぁ、あいつ……美波ちゃんと仲良くやっているのかぁ。上杉と美波ちゃんが並んで歩いている姿が脳裏に浮かぶ。 カメラの話で盛り上がっていたってことは、やっぱり撮影旅行とか行くのかねぇ。でも、上杉って女の子と話すのって苦手じゃなかったっけ。 よく、美波ちゃんをデートに誘えたもんだなぁ。いや、美波ちゃんが誘った?でも、美波ちゃんってそういう印象の子じゃなかったよなぁ。 いやいや、俺が女の子の心情を洞察するなんて100年早いか。そうでなくても、千鶴さんが何を考えているのかさえわからんのだしなぁ。 などと、考えているとチャイムと共に鍵をあける音が聞こえ、 俺が千鶴さんだなと思うのと同時にドアを開けて千鶴さんが家の中に入ってきた。 その手には野菜や牛乳などがたくさん詰まったスーパーの袋が見える。今日の夕飯はなんだろうなぁ、などと思う俺に千鶴さんが話しかけてきた。 「ただいま。今から御飯作るね。」 いつものにこやかな様子に俺も思わず微笑んでしまう。 「お疲れさん。俺も何か手伝おうか?」 ソファーから起き上がり、台所に入り食材を冷蔵庫にしまいこむ。 「ありがと。あ、そうだ。今週末予定ある?」 「いや、ないけど……どこか出かける?」 上杉に会って例の物を受け取る計画も丁度破綻したところだしね。 「じゃぁ、日曜日に連れて行って欲しい場所があるんだけどそこでいいかな?」 そういって千鶴さんはいつもと変わらない微笑を浮かべたのだった。 ☆続きます
565 :実験的作品 [sage] :2007/06/25(月) 22:58:29 ID:0J8+YbRQ がちゃり ドアを開け、家の中に入るといい匂いが漂ってくる。 「ただいま。を!いい匂いだね。今日はカレーライスかぁ。」 とんとんとん 台所で玉葱を包丁で切っている千鶴さんの後姿が目に入る。 「あ、お帰り~♪」 いつもと変わらない微笑で俺に振り返ると、再び包丁をリズミカルに動かし始めた。 「もうすぐご飯できるから、テレビでも観て待っててね。」 微かに聞こえる鼻歌と、綺麗に片付けられ、掃除されている室内。 いつもと変わらない千鶴さんの様子に先ほどコーネリアさんから聞いた話が本当だったのかと思ってしまう。 よし、シミュレーションをしてみよう。 俺が千鶴さんだとして、いきなり「ごめんなさい」と謝る俺。 『なんのことですか?』と千鶴さん。まぁ、そうなるわな。 「前に千鶴さんが好きなようにしていいって誘ってくれたのに、何もできなくて。 それで、千鶴さんを怒らせちゃったんじゃないかと思って。」 『別に怒ってないですけど……でも、突然どうしてですか?』 「え、あ、いや。その」 『私……そのことで怒っていましたか?』 「いえ……怒っているようには見えませんが……」 『ですよね?じゃぁ、どうしてP君はそんなことを言い出したんですか?』 「えっと、その、あの……コーネリアさんが……」 『コーネリアさん?どうしてそこでコーネリアさんの名前が出てくるのかな?かな?』 ……駄目だ!自分で墓穴を掘るようなものじゃないか。これで千鶴さんが 『むすぅ……ぷん♪』 と、口も聞いてくれない状況になっていれば謝罪のしようもある。 (いや、そんな状況を期待しているわけじゃないけど) しかし、どう見ても普段通りの相手にいきなり謝ったら俺のほうが何かやましいことがあるみたいじゃないか。  ソファーに座りながらぼんやりと終わりの無い脳内シミュレーションを繰り返していると、突然QP三分間クッキングの着信音が室内に響く。 なんだ、上杉かと思いながら電話を手に取り、いつものように他愛も無い雑談。 「でだ、明日買い物に行こうぜ。ほら、前に言ってただろ?」 この場合の俺たちの買い物=所謂一つのオタク系店舗へ、そういう系統の物品を買いに行こうという合図なんだが……ちらりと台所の千鶴さんの様子を見る。 「ああ、了解。じゃぁ、いつものところでいいか?」 「おっけ、まぁ、また何かあったら連絡するわ。」 そういって電話を切る。そういえば、長いこと行ってなかったよなぁ。 千鶴さんと付き合うようになってから、オタク的な部分を押さえつけていた反動もあったのだろう。何故だか妙にうきうきしていた。 しかし、千鶴さんに面と向かってカミングアウトすることができなかった。 「上杉さんと何話してたの?」 「あ、いや、明日買い物に行こうぜって誘われてさ。」 やばっ!これで千鶴さんが『じゃぁ、私もついていっていい?』なんて言い出した日には落ち着いてエロゲや同人誌(えっちなのを含む)を検分できないじゃまいか。 「そうなんだ。私も明日はちょっと用事があるんだぁ。でも、夕方には終わると思うからどこかで待ち合わせて御飯食べようよ。」 「あ、そうなんだ。じゃぁ……」 566 :実験的作品 [sage] :2007/06/25(月) 22:59:17 ID:0J8+YbRQ 久しぶりに来るそこはある意味いつもと変わりなく、週末ということを差し引いても微妙な熱気と汗臭さに包まれていた。耳に聞こえる今流行の「曖昧3cm♪そりゃ……」がエンドレスで流れ、真剣な表情でエロマンガを検分する同類たち。 ……見事に割合が95対5だな…… 何の割合かってもちろん店内の男女比に決まっている。 まぁ、カップルで来ている奴っていうのもいないわけじゃないけど、見事にオタップルだし、あとは少し腐っていそうな女の姿がちらほらと見受けられた。  そう、所謂『東の秋葉原、西の日本橋』と並び証される場所のある店舗なのだ。 しかしと言うか、やっぱり千鶴さんとはここには来れないな。 色々な意味で。しかし、懐かしいなぁ……  たかだか半年きていないくらいで懐かしいと感じる俺ってどうよ?と思いながら適当に店内を物色。 なんでだろう、妙に楽しい。表紙を手に取り、裏表紙を眺め、内容を吟味する。ただ、それだけなのに楽しい。気がつけば5冊ほど既に購入決定。 彼女がいるのにエロ同人やエロマンガってどうなんだろうな。 これって別腹?浮気?いや、二次元は浮気にはならないだろ。でも、何故か後ろめたい。 その後ろめたさが何故か、余計に楽しくどきどきさせるんだよな。うんうん。 「ほどほどにしとけよな。」 そういったのは上杉だったが、そういう上杉の手には20冊ほど……ってお前買いすぎ! 「ばぁか、俺はお前と違って彼女がいねぇんだよ。で、これは頼まれ物なんだよ。」 よく見れば俺の購入したのはきっちり押さえてあるあたり、やっぱり趣味が似ているというかなんというか。 こいつも、見てくれと性格はいいんだから彼女くらい……って俺が言う台詞じゃないか。 俺だって千鶴さんでなければ彼女なんて作ってないだろうし、そもそも作れないってばよ。 「じゃぁ、いつものメイド喫茶にでも行くか?」 店を出て、程よく戦利品を獲得した俺は上杉にそう提案した。いつも……と、言うほど頻繁に行くわけではないけど、2回に1回くらいは行っているはずだからいつものでいいはずだ。 「いや、今日は普通の茶店でいいんじゃね?」 携帯電話を見ながら上杉はすたすたと駅の方へと歩いていく。なんだろう?微かな違和感。 上杉は無類のメイド好きなのに、メイド喫茶に行かないだなんて……病気か? そんな風には流石に聞けずに上杉の後を追いかける。まぁ、気分的にそんな日じゃないんだろう。このあと千鶴さんにもあるわけだしな。  その後、俺と上杉は適当に店舗を巡りながら、夕方には千鶴さんと……見慣れない女の子と御飯を食べることになった。 その女の子の名前は朝倉美波。大人しい感じの小柄な可愛い女の子で千鶴さんの職場の後輩……だそうだ。上杉はガチンガチンに緊張して固まっていたようだが、 美波ちゃんの趣味が上杉と同じカメラということで話が盛り上がり、それがきっかけとなったのかなんだか二人はいい雰囲気になっていた。  「ねぇ、今日は何を買ったの?」 お酒を飲んで程ほどに出来上がった千鶴さんは美波ちゃんの胸を揉みしだきながら、俺の紙袋をじぃっと見つめていた。 「えっとね…」 こんなこともあろうかと……こんなこともあろうかと! この時の為に買ったダミー(いや、あそぶけど)ゲームが2本、少しえっち風味の漫画を2冊(チャンピオン系)。あとPC関連の書籍を千鶴さんに見せる。 「やっぱりこういうのが好きなの?もぅ、しょうがないなぁ。」 ふぃぃぃぃぃっしゅっ!!!!! かかった!くっくっく、本命(見せられないもの)は既に駅のロッカーに退避済みよっ! と、まぁ、物は上杉ルートで回収する予定だったりするのだ。  ふと、上杉の様子を見ると美波ちゃんとなんだか和やかムードに。  上杉の奴、ちゃんと持って帰ってくれるんだろうな? 567 :実験的作品 [sage] :2007/06/25(月) 23:00:28 ID:0J8+YbRQ 「ごめん、俺、今日も用事があってさ。」 なかなか例の物を持ってこない上杉に電話をするとそんな回答が毎度のように返って来るようになっていた。 「おいおい……あれから何日が経っているんだよ。」 もう、あれから2週間が過ぎていた。そう、あの飲み会以降、俺は上杉と会っていない。 家にとりにいくにしても家にいない。理由を聞いても用事の一点張り…… 仕事が忙しいのか?と思えば、どうもそんな様子ではない。 「すまんなぁ……なんだったら郵送するぜ?」 「上杉……お前彼女でもできたのか?」 「………………!?」 冗談のつもりだった……えっ、マジで?誰?まさか……、 「この間の美波ちゃんか?」 「いや、まだ彼女ってわけじゃないけどさぁ……チャンスなんだよ。俺にとって多分最初で最後のチャンスなんだ。頼む……俺を男にしてくれっ!」 携帯電話を切り天井を見上げる。そうかぁ、あいつ……美波ちゃんと仲良くやっているのかぁ。上杉と美波ちゃんが並んで歩いている姿が脳裏に浮かぶ。 カメラの話で盛り上がっていたってことは、やっぱり撮影旅行とか行くのかねぇ。でも、上杉って女の子と話すのって苦手じゃなかったっけ。 よく、美波ちゃんをデートに誘えたもんだなぁ。いや、美波ちゃんが誘った?でも、美波ちゃんってそういう印象の子じゃなかったよなぁ。 いやいや、俺が女の子の心情を洞察するなんて100年早いか。そうでなくても、千鶴さんが何を考えているのかさえわからんのだしなぁ。 などと、考えているとチャイムと共に鍵をあける音が聞こえ、 俺が千鶴さんだなと思うのと同時にドアを開けて千鶴さんが家の中に入ってきた。 その手には野菜や牛乳などがたくさん詰まったスーパーの袋が見える。今日の夕飯はなんだろうなぁ、などと思う俺に千鶴さんが話しかけてきた。 「ただいま。今から御飯作るね。」 いつものにこやかな様子に俺も思わず微笑んでしまう。 「お疲れさん。俺も何か手伝おうか?」 ソファーから起き上がり、台所に入り食材を冷蔵庫にしまいこむ。 「ありがと。あ、そうだ。今週末予定ある?」 「いや、ないけど……どこか出かける?」 上杉に会って例の物を受け取る計画も丁度破綻したところだしね。 「じゃぁ、日曜日に連れて行って欲しい場所があるんだけどそこでいいかな?」 そういって千鶴さんはいつもと変わらない微笑を浮かべたのだった。

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