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32 :名無しさん@ピンキー [sage] :2007/08/09(木) 12:48:32 ID:/PW8D9Pi 「ねえねえ、名無し君」 「ん、なんだ」 「今日も、おうちに居てくれるの?」 「ああ」  俺の答えを聞くと、女は蕩けたような笑顔を浮かべ抱きついてきた。  この女は、俺のストーカーだ。  いや――ストーカーだった、というのが事実としては正しいだろう。  今では俺の恋人、もっと変わった言い方をすれば内縁の妻だ。  同じ屋根の下で暮らして、同じ釜の飯を食って、同じベッドで抱き合いながら眠る。  夫婦の実態など知らないから断言できないが、夫婦生活というのはこんなものだろう。  俺は今年の1月後半から、望んで女に監禁された。  監禁される前日まで、この女はずっと俺をストーキングしていた。  俺が住んでいた家に女がやってきた時点で、すでに俺はかなりおかしくなっていた。  それまでも大量の手紙、帰宅したとき勝手に用意されている夕食、携帯電話へのモーニングコールなど、 それ以外にもいろいろされてきた。  しかし俺は、それらに参って監禁されたわけではない。  俺はSSを書くのが好きだった。  仕事に行っている間も、ずっとSSのことばかり考えていた。  仕事に行かずにずっとパソコンの画面と向き合い、キーボードを叩き続けていたかった。  ある時、俺はその望みを叶える方法に気付いた。  ――この女に監禁されてしまえばいいのだ、と。  それ以来俺は家から一歩も外に出ず、SSを書くか、女と寝るか、ご飯を食べるか、という単純な生活を送っている。  最初は社会や友人への未練もあったが、今ではもう全て吹っ切れた。  SSを書いて居られれば、俺はそれで良かった。そのことに、気付いたから。  擦り寄ってきた女の体を抱き締める。  とても柔らかい。安らぐ。そして――暖かい。 「名無し君……」 「今から、いいか?」 「うん……いっぱい、して」 「ああ……」  ずっと、こうやって暮らしたい。 こんな妄想が浮かんだ俺はもう駄目かもわからんね。

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