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513 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/30(木) 20:58:41 ID:kuWYdk1n もうすぐ夏も終わりそうなのでSS投稿します    「夏の終わりに見上げた空は」    「晃ちゃん、どうしたの?」  じわじわと鳴いているセミの声を聞きながら、僕は感傷に浸っていた。  「ちょっと物悲しくなってさ、もうこの夏を過ぎて少しすれば…お母さ んとはあえなくなると思うと悲しくなってさ…」       お母さん、と僕がそう呼んだ女性は僕の傍らに座っていた、彼女の風貌は …その呼び方がまったく似合わない位に若かった。そして服装もセーラー服 だった…更に言えば…彼女の足は足首の付け根部分からがなく、その体はぼんやりと透けていた。  「うん、そうね…本当はお母さんも晃ちゃんのそばにいいてあげたいけど…お母さん、ここから 動けないから…」  「うん、でもまだまだ日はあるし、これでお別れじゃあないんだからさ、きっと教員資格を取っ てこの学校に戻ってくるから…」  僕はそういってお母さんを励ました。そう言うとお母さんは涙腺もあるかどうか解らないっての に、ぼろぼろと涙を流し始めた。  「ごめんね晃ちゃん、お母さん…何も出来なくて…」   「いいんだよお母さん、こうやってそばにいてくれる事が一番幸せなんだ…」  なんと言ったらいいものか…僕のお母さん…日高 秋江さんは、僕の今通っているこの高校の、屋上 に現れる地縛霊としてその名をはせている存在なのだ…事情を説明すると、若くして(高校二年生で) 僕を生んだ母さんは、恩師にその事を報告すべく学校に挨拶に向った時にその恩師に(どうも母さんの 事が好きだったらしい)殺害され、屋上から突き落とされてそのまま自爆霊と化してしまったのだそうだ。  それ以来、お母さんはどこにも動けずに、この校舎の屋上でずっと日々を過ごしていた…屋上幽霊とし て有名になったお母さんのうわさは僕の耳にも届き…僕はこの学校に通う決意をした。中学校に入った時 点で父さんが死んで、祖父母に育てられた僕にとって、遠い昔に死んだお母さんに会える…なんて話は夢 物語に等しかったのだが…まあ、こうして僕はこの、死んだはずのお母さんに会えるというなんとも不思議 な屋上生活を手にいれたのだ。 514 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/30(木) 21:00:38 ID:kuWYdk1n 「夏の終わりに見上げた空は」②  「それじゃあね、またくるから」   「うん…またね、晃ちゃん」  それから数時間後、お母さんに手を振って僕は夕暮れの屋上を跡にした…普段は 放課後ぐらいしかこうもお母さんと話は出来ないのだが、夏休みの学校ならいつも より長い時間ここが開放されているので僕は喜んで屋上を利用させてもらっていた …まあ、普通の生徒はわざわざこんな場所に立ち寄ったりしないしね。  「でも…こんな生活も…」  今年になれば終わってしまう、後は受験が待っているのみだ。  「あ、晃!!こんなとこにいたのね!探してたんだから!!」  階段の踊り場で、僕は幼馴染の京子に声をかけられた。小学校の ころから腐れ縁の彼女は塾や予備校にかよっているはずなのに、暇 さえあれば剣道部の後輩の指導に当たるべく学校に通っている。  「まったくもー、先生がせっかくスイカ買ってきてくれたからさあ、分 けてあげようと思ってこっちは必死になってさがしてたってのに…ほら、行くよ」 「うん、しかしスイカか…お供えに持ってったらお母さん喜ぶかなあ」 「何…またその話、本当にアンタってマザコンねえ」  「いいだろ、僕は京子みたいに両親そろって暮らしてきたわけじゃあないんだ、 それにたとえ幽霊でも家族は大事なんだから」  「はいはい、まあ今はお母さんのことは忘れてスイカのことだけ考えてなさい」  そう言うと京子は僕の手を引っ張って、そのまま校舎から部活棟に向かって走り 出した…子供のころからデリカシーの足りない奴だが、これで結構行動力のない僕 を引っ張って言ってくれているのには感謝している…それにいくらか霊感もあるた めか、僕の話を信じてくれいる数少ない人間だったりもする。  「でもいいの?お母さん、成仏とかさせなくて?ずうっとあのままじゃあ…」  「うん、僕もそう思ってるんだ…でもさ、もう少し、もう少しこうしていたいんだ… 多分お母さんもそう思ってる」  「…私は少し心配だな、晃がこのまま親孝行で人生を使っちゃいそうで…」  「うん…僕もいつかとは思ってるけど…」  京子はいつもそんな話をする、僕も取りあえずはそう答えるけど…それでも、未だ僕は その選択肢を選べないでいた。 515 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/30(木) 21:01:54 ID:kuWYdk1n 夏の終わりに見上げた空は」③  「…はあ、あきら…ふう…」  丑三つ時の人気のない校舎、その屋上で日高秋江はたった一人、晃に犯される事を想像しては自慰にふけっていた …丑三つ時はどうしても悶々とした気持ちになるのを止められないでいる自分に恥じながらも、その感情を押し殺せずにいた。  …いつからだろうか、晃の事を男としてみている自分に気づいたのは、父親にその姿が似始めてきてからだろうか…それとも、あの女のこと一緒に家路へ帰る姿を目撃してからだろうか…。  「あ…くっ…あああああ!!!」  幽霊が自慰する、そんな矛盾した行為を繰り返しつつも、秋江は晃に引かれていく自分を止められなかった。  「あきらあ…だいすきだよお…」  もう自分の気持ちには押さえが利かなかった、明日、いや今日にでも晃にこの気持ちを告白したかった。     「それじゃあ僕は帰るね、また明日…」  次の日、そういって階段に向かう晃に並んだ秋江は、晃の後姿を抱きしめた。  「うわあ!!どうしたのお母さん!?」  晃の背中にひんやりとした感触が迫る、実体はないにしろ幽霊独特の腐ったこんにゃくの ような手触りが感じられた。  「晃…行かないで…お母さん…もう駄目なの」  「え…うああ!!あ…」  晃は一瞬で体の自由が利かなくなった、金縛りという奴だろう…そしてそんな 晃の服を、秋江はまるで生きた人間のように脱がし始めた。あうあうとしか声の出 ない晃に秋江は接吻を繰り返した。  「愛してる…晃…愛してる…」「あう…あうう」   その日、晃と秋江は繋がった、何度も快楽をむさぼりあった、最早近親相姦の忌 避など快楽の前には敵ではなかった。 516 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/30(木) 21:03:46 ID:kuWYdk1n 夏の終わりに見上げた空は」④    「ねえ晃、最近だいぶ痩せてきてない?」  「……そう?」  京子は最近晃の変化に不安を感じていた、ここたった二日で晃の顔はめっきり痩せこけ、常 に幸せそうにしているのだ。  「まさか…ドラッグとかやってないでしょうね?」  「や、やってないよそんなもの!お母さんからもらったこの体はそんなものには…」  そしてまたお母さん、だ…一体あの二人には何があるのか…気になった京子は晃の様子を観察 するために、部室に顔を出さずにそのまま屋上で晃を観察することにして…その結果。  「うそ…」「うあ…あああああ!!」  見てしまった、晃の秘密を…アレでは痩せるわけだ、このままでは晃の体は大好きなお母さんに よって取り殺されてしまうだろう。  「晃…もう、お母さんとセックスするのはやめて…これ以上していたら、あなたは…牡丹灯篭みたいに…」  その後、京子は思い切って晃にそう告白した。  「…いいんだ、お母さんが望むならそれで…ぼくは…二人でいられれば」「駄目だよそんなの!!晃が死んだ ら私が悲しいよ!!」  「…親しい友人関係くらいなら、死んで数年もすれば忘れられるよ…」  駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だ、このままじゃ晃が連れて行かれてしまう。そう考えるのが早いか、京子は自分 のスカートを捲り上げた。  「ほら見て晃…さっきのみてわたしこんなになっちゃったんだよ…もうなかまでぐしょぐしょなんだよ…その 位あきらが好きなんだよ、だからいかないで…だいすきだから、おねがいだからおいていかないで…」  そう言って、京子は晃を押し倒した。  「…ごめん、京子…」  しかし男女のウエィトの差は明白だった、晃は一気に京子を引き剥がすと、そのまま家路に帰った。  「う…あああああああああああああああ!!!!!!」  京子は叫んだ、力一杯叫んだ、晃を取られた、ずっと大好きだった晃を取られた…京子の胸の中にはそんな思い で一杯だった。いままで子犬のように自分を追いかけていた晃が自分を拒否したのだ…そして自分から死を選んだのだ。  「………なら、もう、とりかえすしかないよね」  泣き声を止めて、京子はポツリと呟いた。 517 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/30(木) 21:05:22 ID:kuWYdk1n 夏の終わりに見上げた空は」⑤  その晩も、秋江は屋上で一人自慰にふけっていた、明日も晃は自分の下へ来てくれるという事を考えるだけで気分が高ぶって いた…晃は最近ひどくやせ細っている、もしかしたらもうすぐこちら側に来てくれるのかもしれない…そう考えると生きている晃 の事を心配するよりも、もはやずっと一緒にいられるという期待のほうが大きくなっていた。  ギイイ…そんなことを考えていると、ふいに階段側のドアが開いた…もしかして晃がここへたずねに来てくれたのだろうか?。  「あきら…あきらなの?」  そういって秋江がドアに近づくと…バババババババ!!!そんなモーター音が当たりに響いた。  「きゃ!!…ああああああああ!!!」   秋江は叫んだ、ドアから飛んできた何かによって、体…というか霊体を打ち抜かれたのだ、まるで生前のように秋江の肩に痛み が走った、キッとドアをにらむ秋江、その先には電動ガンと日本刀を構える…空ろな目をした京子が立っていた。  「今晩は晃のお母さん…そしてさようなら…あはははははは」  ババババババ!!片手に構えられた京子の電動ガンからBB弾の弾幕が放たれた!至近距離で 放たれたBB弾には不動明王の印字が彫られている、これを食らっては並大抵の幽霊はお陀仏だ。  「はあ!!」  秋江は瞬間的に身をそらした、BB弾も高速でない分与けることは不可能ではない。  「…避けるんだ…悪霊の癖に…晃を殺そうとしてるくせに…うああああああ!!!」  京子は電動ガンを投げ捨てると日本刀で秋江に切りかかった、もちろんただの日本刀ではない、 対幽霊用の儀式は施してあるようだ。  「幽霊に癖に!親子の癖に!死んでるくせに!!あああああああ!あきらをとるなあああああああ!!!!」  ブオン!ブオン!鋭い剣先が中を切る、秋江はかろうじてその攻撃を避けるが、とうとう壁際に追い込まれた。 普通の幽霊なら壁ぬけしたりして逃げ切れるのだろうが、地縛霊の秋江には無理な話だった。  「ふふふ、もう終わりですねお母さん…消えろろおおおおおお!!!」  「……はああ!!」  刺突一線で京子が迫った瞬間、秋江は空に飛んだ、空間で逃げられないのなら空に飛べばいいだけなのだ、い くら京子でも追いかけてはこれないだろう。  「甘ああああい!!!これで終わりだああああああ!!!」  京子は懐からスリングナイフを取り出して空中にはなった、しかし一瞬目をそらしたのが悪かったのか、ナイフ の先に秋江はいなかった。焦る京子、敵は一体どこにいるのか…。  「ここだよ、ここ」  「もらったあああああ!!!」  秋江は京子の眼前に迫っていた、しかし京子はあわてない、ポケットからハンドガン型のエアガンを取り出すと クイックドロウを秋江に決めた…秋江の胸がBB弾によって打ちぬかれる、崩れ落ちる秋江…その体は砂のように崩れ落ちた。  「あははははははは、勝った!勝ったああああ!!!」「誰に?」   京子の笑顔は一瞬で凍りついた、今しがた倒したはずの秋江の声が…体の奥から響き始めたのだ。  518 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/30(木) 21:07:18 ID:kuWYdk1n 夏の終わりに見上げた空は」⑥  「な…何をしようって言うの!?離れなさいよ!!」  「無理よ、だってあなたの魂と同調しちゃったもの…それにもう霊体がないから離れるのは無理ね」  「な…なんでアンタなんかと!!」  「晃が好きだからよ、私も貴方も同じように晃が好きだからその気持ちに同調できたの…京子ちゃん だったわね」  「気安く呼ばないでよ!この悪霊!!…あんたがいるから晃は!!!」  「そうなのよね…このまま言ったら晃は死んでしまう、そうする気持ちは私にもよく解るわ…今され 許してくれとは言わないわ…でも…晃をあんな目に合わせてしまって本当にごめんなさい」  「なら…晃を帰してよ!そして消え去ってよ!!」  「いいわよ、そのお願い、聞いてあげる…」  そう言うなり、京子の頭に秋江の声が響く事はなくなった…勝った、京子がそう思った瞬間、京子 の頭部に激痛が走った。  「ひ!ああああああああああ!!!!!痛い!痛いいいいいい!!!」  「…思ったのよ、こんなに二人とも晃がすきなんだから…それならいっそ、二人で意識を融合させ ちゃおうって…」  「あああああ!!!!いやあああああああああ!!!」  「大丈夫、痛みもすぐやむし…貴方の意識もしっかり残るから…」  「ぎああああああああああああああああ!!!!!あああー!!!」  …京子の甲高い悲鳴が校舎に響き渡った。  次の日の朝、秋江に会うために死ぬ覚悟を決めて、校舎に向かった晃の前に…京子が現れた。  「おはよう、晃…」  その笑顔と、名前の呼び方と、何より雰囲気で…晃は全てを悟った。  「お母…さん?」  ぱあん!にっこりと微笑んだ京子は晃にビンタをした。  「…一応私がいるってことも忘れないようにね!私はあたしで、秋江さんでもあるんだから」  「…ふぁい」  晃がそう答えると、京子はその体を抱きしめた。  「もう放さないからね…晃…あはははははは」   晃はその京子の声が、秋江の声と二重にかぶっているように聞こえた。  晃は思った、死ぬより恐ろしい事は普通にあるのかもしれない、と。     FIN
513 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/30(木) 20:58:41 ID:kuWYdk1n    「夏の終わりに見上げた空は」    「晃ちゃん、どうしたの?」  じわじわと鳴いているセミの声を聞きながら、僕は感傷に浸っていた。  「ちょっと物悲しくなってさ、もうこの夏を過ぎて少しすれば…お母さ んとはあえなくなると思うと悲しくなってさ…」       お母さん、と僕がそう呼んだ女性は僕の傍らに座っていた、彼女の風貌は …その呼び方がまったく似合わない位に若かった。そして服装もセーラー服 だった…更に言えば…彼女の足は足首の付け根部分からがなく、その体はぼんやりと透けていた。  「うん、そうね…本当はお母さんも晃ちゃんのそばにいいてあげたいけど…お母さん、ここから 動けないから…」  「うん、でもまだまだ日はあるし、これでお別れじゃあないんだからさ、きっと教員資格を取っ てこの学校に戻ってくるから…」  僕はそういってお母さんを励ました。そう言うとお母さんは涙腺もあるかどうか解らないっての に、ぼろぼろと涙を流し始めた。  「ごめんね晃ちゃん、お母さん…何も出来なくて…」   「いいんだよお母さん、こうやってそばにいてくれる事が一番幸せなんだ…」  なんと言ったらいいものか…僕のお母さん…日高 秋江さんは、僕の今通っているこの高校の、屋上 に現れる地縛霊としてその名をはせている存在なのだ…事情を説明すると、若くして(高校二年生で) 僕を生んだ母さんは、恩師にその事を報告すべく学校に挨拶に向った時にその恩師に(どうも母さんの 事が好きだったらしい)殺害され、屋上から突き落とされてそのまま自爆霊と化してしまったのだそうだ。  それ以来、お母さんはどこにも動けずに、この校舎の屋上でずっと日々を過ごしていた…屋上幽霊とし て有名になったお母さんのうわさは僕の耳にも届き…僕はこの学校に通う決意をした。中学校に入った時 点で父さんが死んで、祖父母に育てられた僕にとって、遠い昔に死んだお母さんに会える…なんて話は夢 物語に等しかったのだが…まあ、こうして僕はこの、死んだはずのお母さんに会えるというなんとも不思議 な屋上生活を手にいれたのだ。 514 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/30(木) 21:00:38 ID:kuWYdk1n 「夏の終わりに見上げた空は」②  「それじゃあね、またくるから」   「うん…またね、晃ちゃん」  それから数時間後、お母さんに手を振って僕は夕暮れの屋上を跡にした…普段は 放課後ぐらいしかこうもお母さんと話は出来ないのだが、夏休みの学校ならいつも より長い時間ここが開放されているので僕は喜んで屋上を利用させてもらっていた …まあ、普通の生徒はわざわざこんな場所に立ち寄ったりしないしね。  「でも…こんな生活も…」  今年になれば終わってしまう、後は受験が待っているのみだ。  「あ、晃!!こんなとこにいたのね!探してたんだから!!」  階段の踊り場で、僕は幼馴染の京子に声をかけられた。小学校の ころから腐れ縁の彼女は塾や予備校にかよっているはずなのに、暇 さえあれば剣道部の後輩の指導に当たるべく学校に通っている。  「まったくもー、先生がせっかくスイカ買ってきてくれたからさあ、分 けてあげようと思ってこっちは必死になってさがしてたってのに…ほら、行くよ」 「うん、しかしスイカか…お供えに持ってったらお母さん喜ぶかなあ」 「何…またその話、本当にアンタってマザコンねえ」  「いいだろ、僕は京子みたいに両親そろって暮らしてきたわけじゃあないんだ、 それにたとえ幽霊でも家族は大事なんだから」  「はいはい、まあ今はお母さんのことは忘れてスイカのことだけ考えてなさい」  そう言うと京子は僕の手を引っ張って、そのまま校舎から部活棟に向かって走り 出した…子供のころからデリカシーの足りない奴だが、これで結構行動力のない僕 を引っ張って言ってくれているのには感謝している…それにいくらか霊感もあるた めか、僕の話を信じてくれいる数少ない人間だったりもする。  「でもいいの?お母さん、成仏とかさせなくて?ずうっとあのままじゃあ…」  「うん、僕もそう思ってるんだ…でもさ、もう少し、もう少しこうしていたいんだ… 多分お母さんもそう思ってる」  「…私は少し心配だな、晃がこのまま親孝行で人生を使っちゃいそうで…」  「うん…僕もいつかとは思ってるけど…」  京子はいつもそんな話をする、僕も取りあえずはそう答えるけど…それでも、未だ僕は その選択肢を選べないでいた。 515 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/30(木) 21:01:54 ID:kuWYdk1n 夏の終わりに見上げた空は」③  「…はあ、あきら…ふう…」  丑三つ時の人気のない校舎、その屋上で日高秋江はたった一人、晃に犯される事を想像しては自慰にふけっていた …丑三つ時はどうしても悶々とした気持ちになるのを止められないでいる自分に恥じながらも、その感情を押し殺せずにいた。  …いつからだろうか、晃の事を男としてみている自分に気づいたのは、父親にその姿が似始めてきてからだろうか…それとも、あの女のこと一緒に家路へ帰る姿を目撃してからだろうか…。  「あ…くっ…あああああ!!!」  幽霊が自慰する、そんな矛盾した行為を繰り返しつつも、秋江は晃に引かれていく自分を止められなかった。  「あきらあ…だいすきだよお…」  もう自分の気持ちには押さえが利かなかった、明日、いや今日にでも晃にこの気持ちを告白したかった。     「それじゃあ僕は帰るね、また明日…」  次の日、そういって階段に向かう晃に並んだ秋江は、晃の後姿を抱きしめた。  「うわあ!!どうしたのお母さん!?」  晃の背中にひんやりとした感触が迫る、実体はないにしろ幽霊独特の腐ったこんにゃくの ような手触りが感じられた。  「晃…行かないで…お母さん…もう駄目なの」  「え…うああ!!あ…」  晃は一瞬で体の自由が利かなくなった、金縛りという奴だろう…そしてそんな 晃の服を、秋江はまるで生きた人間のように脱がし始めた。あうあうとしか声の出 ない晃に秋江は接吻を繰り返した。  「愛してる…晃…愛してる…」「あう…あうう」   その日、晃と秋江は繋がった、何度も快楽をむさぼりあった、最早近親相姦の忌 避など快楽の前には敵ではなかった。 516 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/30(木) 21:03:46 ID:kuWYdk1n 夏の終わりに見上げた空は」④    「ねえ晃、最近だいぶ痩せてきてない?」  「……そう?」  京子は最近晃の変化に不安を感じていた、ここたった二日で晃の顔はめっきり痩せこけ、常 に幸せそうにしているのだ。  「まさか…ドラッグとかやってないでしょうね?」  「や、やってないよそんなもの!お母さんからもらったこの体はそんなものには…」  そしてまたお母さん、だ…一体あの二人には何があるのか…気になった京子は晃の様子を観察 するために、部室に顔を出さずにそのまま屋上で晃を観察することにして…その結果。  「うそ…」「うあ…あああああ!!」  見てしまった、晃の秘密を…アレでは痩せるわけだ、このままでは晃の体は大好きなお母さんに よって取り殺されてしまうだろう。  「晃…もう、お母さんとセックスするのはやめて…これ以上していたら、あなたは…牡丹灯篭みたいに…」  その後、京子は思い切って晃にそう告白した。  「…いいんだ、お母さんが望むならそれで…ぼくは…二人でいられれば」「駄目だよそんなの!!晃が死んだ ら私が悲しいよ!!」  「…親しい友人関係くらいなら、死んで数年もすれば忘れられるよ…」  駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だ、このままじゃ晃が連れて行かれてしまう。そう考えるのが早いか、京子は自分 のスカートを捲り上げた。  「ほら見て晃…さっきのみてわたしこんなになっちゃったんだよ…もうなかまでぐしょぐしょなんだよ…その 位あきらが好きなんだよ、だからいかないで…だいすきだから、おねがいだからおいていかないで…」  そう言って、京子は晃を押し倒した。  「…ごめん、京子…」  しかし男女のウエィトの差は明白だった、晃は一気に京子を引き剥がすと、そのまま家路に帰った。  「う…あああああああああああああああ!!!!!!」  京子は叫んだ、力一杯叫んだ、晃を取られた、ずっと大好きだった晃を取られた…京子の胸の中にはそんな思い で一杯だった。いままで子犬のように自分を追いかけていた晃が自分を拒否したのだ…そして自分から死を選んだのだ。  「………なら、もう、とりかえすしかないよね」  泣き声を止めて、京子はポツリと呟いた。 517 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/30(木) 21:05:22 ID:kuWYdk1n 夏の終わりに見上げた空は」⑤  その晩も、秋江は屋上で一人自慰にふけっていた、明日も晃は自分の下へ来てくれるという事を考えるだけで気分が高ぶって いた…晃は最近ひどくやせ細っている、もしかしたらもうすぐこちら側に来てくれるのかもしれない…そう考えると生きている晃 の事を心配するよりも、もはやずっと一緒にいられるという期待のほうが大きくなっていた。  ギイイ…そんなことを考えていると、ふいに階段側のドアが開いた…もしかして晃がここへたずねに来てくれたのだろうか?。  「あきら…あきらなの?」  そういって秋江がドアに近づくと…バババババババ!!!そんなモーター音が当たりに響いた。  「きゃ!!…ああああああああ!!!」   秋江は叫んだ、ドアから飛んできた何かによって、体…というか霊体を打ち抜かれたのだ、まるで生前のように秋江の肩に痛み が走った、キッとドアをにらむ秋江、その先には電動ガンと日本刀を構える…空ろな目をした京子が立っていた。  「今晩は晃のお母さん…そしてさようなら…あはははははは」  ババババババ!!片手に構えられた京子の電動ガンからBB弾の弾幕が放たれた!至近距離で 放たれたBB弾には不動明王の印字が彫られている、これを食らっては並大抵の幽霊はお陀仏だ。  「はあ!!」  秋江は瞬間的に身をそらした、BB弾も高速でない分与けることは不可能ではない。  「…避けるんだ…悪霊の癖に…晃を殺そうとしてるくせに…うああああああ!!!」  京子は電動ガンを投げ捨てると日本刀で秋江に切りかかった、もちろんただの日本刀ではない、 対幽霊用の儀式は施してあるようだ。  「幽霊に癖に!親子の癖に!死んでるくせに!!あああああああ!あきらをとるなあああああああ!!!!」  ブオン!ブオン!鋭い剣先が中を切る、秋江はかろうじてその攻撃を避けるが、とうとう壁際に追い込まれた。 普通の幽霊なら壁ぬけしたりして逃げ切れるのだろうが、地縛霊の秋江には無理な話だった。  「ふふふ、もう終わりですねお母さん…消えろろおおおおおお!!!」  「……はああ!!」  刺突一線で京子が迫った瞬間、秋江は空に飛んだ、空間で逃げられないのなら空に飛べばいいだけなのだ、い くら京子でも追いかけてはこれないだろう。  「甘ああああい!!!これで終わりだああああああ!!!」  京子は懐からスリングナイフを取り出して空中にはなった、しかし一瞬目をそらしたのが悪かったのか、ナイフ の先に秋江はいなかった。焦る京子、敵は一体どこにいるのか…。  「ここだよ、ここ」  「もらったあああああ!!!」  秋江は京子の眼前に迫っていた、しかし京子はあわてない、ポケットからハンドガン型のエアガンを取り出すと クイックドロウを秋江に決めた…秋江の胸がBB弾によって打ちぬかれる、崩れ落ちる秋江…その体は砂のように崩れ落ちた。  「あははははははは、勝った!勝ったああああ!!!」「誰に?」   京子の笑顔は一瞬で凍りついた、今しがた倒したはずの秋江の声が…体の奥から響き始めたのだ。  518 :リッサ ◆v0Z8Q0837k [sage ] :2007/08/30(木) 21:07:18 ID:kuWYdk1n 夏の終わりに見上げた空は」⑥  「な…何をしようって言うの!?離れなさいよ!!」  「無理よ、だってあなたの魂と同調しちゃったもの…それにもう霊体がないから離れるのは無理ね」  「な…なんでアンタなんかと!!」  「晃が好きだからよ、私も貴方も同じように晃が好きだからその気持ちに同調できたの…京子ちゃん だったわね」  「気安く呼ばないでよ!この悪霊!!…あんたがいるから晃は!!!」  「そうなのよね…このまま言ったら晃は死んでしまう、そうする気持ちは私にもよく解るわ…今され 許してくれとは言わないわ…でも…晃をあんな目に合わせてしまって本当にごめんなさい」  「なら…晃を帰してよ!そして消え去ってよ!!」  「いいわよ、そのお願い、聞いてあげる…」  そう言うなり、京子の頭に秋江の声が響く事はなくなった…勝った、京子がそう思った瞬間、京子 の頭部に激痛が走った。  「ひ!ああああああああああ!!!!!痛い!痛いいいいいい!!!」  「…思ったのよ、こんなに二人とも晃がすきなんだから…それならいっそ、二人で意識を融合させ ちゃおうって…」  「あああああ!!!!いやあああああああああ!!!」  「大丈夫、痛みもすぐやむし…貴方の意識もしっかり残るから…」  「ぎああああああああああああああああ!!!!!あああー!!!」  …京子の甲高い悲鳴が校舎に響き渡った。  次の日の朝、秋江に会うために死ぬ覚悟を決めて、校舎に向かった晃の前に…京子が現れた。  「おはよう、晃…」  その笑顔と、名前の呼び方と、何より雰囲気で…晃は全てを悟った。  「お母…さん?」  ぱあん!にっこりと微笑んだ京子は晃にビンタをした。  「…一応私がいるってことも忘れないようにね!私はあたしで、秋江さんでもあるんだから」  「…ふぁい」  晃がそう答えると、京子はその体を抱きしめた。  「もう放さないからね…晃…あはははははは」   晃はその京子の声が、秋江の声と二重にかぶっているように聞こえた。  晃は思った、死ぬより恐ろしい事は普通にあるのかもしれない、と。     FIN

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