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715 :彼女の異常な愛情 [sage] :2007/09/11(火) 04:13:19 ID:GIgzSs4/ ――この世界は狂ってる そう確信したのはいつだったか。まだ毛も生えてない頃だったかな。 もちろん、下の毛だぜ?HAHAHA……おっと、のっけからこんなこと言って驚かせちまったか? 引かないでくれよ?…悪い悪い、自己紹介もまだ済んでないっていうのにな。 まずは俺のことを知ってもらうか。 俺は九条了輔。現役高校生、ぴっちぴっちの青春真っ盛りさ! 趣味はエロゲの根っからのオタク。特に好きなエロゲはそれちるだ。いやぁ、それちるはいいねえ…リリンの生み出した文化の極みだよ…。 それちるのポイントはな…え?んなこと聞いてないって?ちっ、いいじゃねえか、全く。忍耐が足りないぜ、忍耐が。 そんなことはいいからとっとと話せって?わかったわかった。話してやるよ。俺がこの世界が狂ってるって思う原因をよ。 それはな…俺の幼馴染の矢村美代子が異常なほど俺を愛してるからだ。…ちょ、ちょっと待て、拳を治めろ。 何がただの惚気じゃないか?だ。いいか、これだけ聞くとそう思うかもしれんがあいつの愛は尋常じゃないんだよ。 それをわかってもらうために今から俺とあいつのエピソードを話してやるから。 だから、椅子を振り上げるな、お願いします。惚気じゃありませんから、いや、マジで。 まずは美代子のことを紹介してやるよ。お前も知っての通り、同じクラスの矢村美代子だ。ほら、さっき自己紹介してただろ? ちょっとダウナー系の、髪が黒い…そう、そいつ。美代子は顔はいい、頭もいい、運動神経もいい。これだけだとアイドル並だろ? 実際顔はそんじょそこらのアイドルには負けないだろうな。だけどだ、美代子の異常なところは性格だ。え?そんな風には見えないって? そりゃそうだろ。あいつ普段猫被ってるし。実際は腹黒でラブサケデリコなエキセントリックな性格なんだぞ。 くそ、あんな性格じゃなければ俺も好きになったのになぁ…。何変な顔してやがんだよ。まぁ、それはいいとしてだ。 俺が始めて美代子のことを異常だと思ったのはだな、小学2年生のときだったな。 そんとき、俺は飼育係をしてたんだ。昔は生き物係っていってたよな。 そういや、今いきもの○かりっていうアーティストが…はい、どうでもいいですよねー。んで、俺んとこのクラスはウサギを飼ってたわけだ。 ほら、あの白いまるまる太ったもふもふの。そうそう、それよ。そのうちのクラスで飼ってたウサギを俺は大層愛してたんだぜ。 担任から了輔君はいつも面倒見て偉いわねえ、なんて言われるくらいに溺愛してたわけだ。ってか、俺以外に世話する奴いねえんだもんよ。 皆サボりやがってさ。あ、美代子は違うぜ。あいつは保健係。あれ、保健係っていったっけ…?ま、それはいい。それである日事件が起こった。 それが俺の恐怖の毎日の始まりでもあったわけだが。 ある日の早朝、ウサギ小屋に向かってたんだよ。 何でかっていうと、他の生徒が登校しない間にウサギ小屋の掃除と飯やりやるためにだ。 これも俺一人。本当は生き物係全員でやらないといけないんだけどな。 その当時、ウサギ大好きだったからそんな苦じゃなかったからいいけど。 とにかく、俺は向かってたわけだ。んで、学校に着いてウサギ小屋に向かったのよ。 そんな大してかからずウサギ小屋が見えたね。でも、ちっとだけいつもと違った。 小屋の前に美代子がいたんだわ。最初見たときはそんな変な感じはしなかったね。 あれ?美代子ちゃん生き物係じゃないよね。何でここにいるんだろ。あっ!もしかしたらウサギ見に来たのかな。それだったら嬉しいなあ、みたいな感じ。 結局そんなのも打ち砕かれるわけですけどね。でも、近づくに連れて違和感がこう、むくむくーって出てくるのよ。 いつもの美代子と違うのよ。服装はもちろんなんだけど、雰囲気っていうかオーラっていうか。 今の俺ならわかるけどね。それを俺は覚醒モードと名づけた。 716 :彼女の異常な愛情 [sage] :2007/09/11(火) 04:16:45 ID:GIgzSs4/ そう、あいつはオーラ○トラーだったのだ!…はい、すんません。ふざけないからグーはやめて、せめてパーで。 決定打だったのはあいつがナイフを持っていたってこと。しかも血塗れのだぜ?ありえねえよ、お前どこの殺人鬼だよ、って感じだよな。 そりゃ違和感感じて当然だっていう話。当然俺はナイフに気づいた時点でガクブルの状態。その場から一歩も動けないわけ。声も出せなかった気がするね。 でも、美代子はこっちに気がついちまったわけ。俺泣きそうだったと思う。つか、ちょっと涙目だったかもしんね。しかも、あいつさ、その後なんて言ったと思う? 満面の笑みでさ、俺におはよう♪だぜ?信じられるか?どう考えても何かやらかしちゃいましたって感じの奴が血塗れのナイフを持って自分に話しかける恐怖が? プラス、これ以上ないって感じのスマイル。朝○に刺されそうになったキョ○の気持ちが俺にはわかる。うん、わかる。ちびらなかった昔の俺を褒めたい。 むしろ、褒めろ。キ○リー夫人とかマザー・○レサなんて目じゃないね、俺を褒めろ!…すまん、あまりの恐怖に取り乱した。 話を戻してだ。俺はなけなしの勇気を振り絞って、何をしてるの?って言ったんだ。俺偉い!でも俺馬鹿!今の俺ならできないな。子供の蛮勇ってやつ? 美代子の返答は、ウサギ殺してた♪って。今思うと、おいおい、ストレートすぎんだろ!○国でももっと上手に隠すよ!って感想。 当時の俺もどうやら同じ感想だったらしくてな、確か真っ青だった気がする。おっと、俺の蛮勇はまだ続くんだぜ?んで、なんで?って聞いた。 まぁ、当然だよな、気分でウサギ殺されてても困るし。さて、ここで問題です。この後美代子はなんて答えたでしょう。 正解者にはもれなく俺の物理的に熱い摂氏100℃のキッスを…あー、睨まないでくださいね、そこ。はいはい、わかったわかった。 正解はこのウサギが了輔君に好きだって言われたからだそうです。俺の記憶から抜粋しました。…な?ありえないだろ?俺がそんなこと言っただけだぜ? そんとき、事件の前日に美代子にウサギ見せて俺こいつのこと大好きなんだー。お前も俺のこと好きだよなー、とか言った記憶を鮮明に思い出したね。 思い出しちゃった俺が憎い。返答に困ったからさ、適当に、そうなんだ…、とか無難に返事したよ。な、なにをするだー!とかは言えなかった。 ウサギにゃ悪いが俺も命が惜しいんでね。俺は奇妙な冒険ができるタイプの人間じゃないもんでな。まぁ、あの後ウサギは丁重に葬ったので勘弁してほしいところ。 んで、返答した後はとりあえず、逃げた。かといって、全速力でダッシュして逃げたんじゃないぜ?ぼ、ぼく先に教室に行ってるね的な逃げだ。 俺の本能がここで全速力ダッシュしたら○ェイソンばりに追いかけられるのは明白だと警鐘を鳴らしてたんでね。結局、付いてこられて2人で教室行ったんだけど。 まぁ、後は先生に任せようと思ったわけ。そんとき俺はまだこの世界の異常に気づいてなかったんだわ。いくらなんでもウサギ殺しが罪に問われないわけないだろー、ってさ。 そりゃ殺したのは動物だけど殺しは殺しだし。罪っていうか先生に何でこんなことしたのか事情聴取と説教ぐらいはされるだろ、ってな。 しかも教室に入っても美代子の奴、血塗れのナイフ握ってたし。怖くてとてもじゃないが注意なんてできなかったけどな。っていうか、改めて身の危険を感じてた。 ナイフ持った奴と誰もいない教室で2人きり、って殺人事件が起こってもなんら不思議がねえよ。ダイイングメッセージはどうしよう…とか現実逃避してました。 んで、時間が経って他の生徒も来るわけだ。そのときを俺はどれだけ待っていたか。この異常な状態に、さあ、気づけ!さあ、先生に言って来い!と胸を高鳴らせてたわけよ。 しかし、期待は裏切られるもので…いや、期待っていうか異常っていうのかな…。 717 :彼女の異常な愛情 [sage] :2007/09/11(火) 04:19:12 ID:GIgzSs4/ 初めに美代子がナイフを握っているのに気づいた奴が放った第一声は、わあ、そのナイフかっこいいね!だったよ。 俺はあまりのことに奴(仮名・田中)の頭を疑ったね。田中、お前頭大丈夫か?と、それはそれは言いたかった。 怖くて言えなかったけど。お前はその歳にしてナイフフェチにでも目覚めているのかと。 それともお前の頭の中にはお花畑でも広がっているのか、と。困ったことに異常な事態に気づかなかったのは田中だけじゃなかった。 血塗れナイフを何の異常とも取らないのがクラス全員でしたよ。俺はあまりのことに笑った。 そりゃもう、竜宮○ナのようにな。何でこれが異常じゃないんだ。 お前らの家族は家で日常茶飯事的にバトルロワ○ヤルでもやっているのかと。…まぁ、それはいい。 こうなりゃ先生に頼ろう。先生なら大丈夫。俺は一縷の望みをかけて先生が来るのを待った。 …わかってはいたんだ、多分。先生も同じことだって。それでも…それでも希望を持ちたかったんだよ。 案の定、先生が言ったことは、こら、ナイフ学校に持ってきちゃダメでしょ、だけでしたよ。 血塗れに何のツッコミもねえ。もう笑うしかなかったね。 その後、ウサギのこと言ってみたけど、うふふ、可愛い嫉妬ね、とか。 は?あんたにはナイフぶっさすのが可愛いんかい!…それが俺の人生初のマジギレでした…。 そして俺の初恋が無残にハートブレイクした瞬間でもあったぜ…。 俺が世界の異常に気がつきはじめた日でもあるな。そんときはまだ世界に希望はあったんだけどなぁ。 まだ確信もなかったし…まぁ、それはいいよ、もう。 他にもな、美代子の異常なところは――っ!? やっべえ!美代子の奴がすんげえ勢いでこっちに向かってきてやがる!だが、会わなければどうということはない! 急いで逃げないと…ん?わかるのかって?…俺だってわかりたくなんてなかったよ。 でも、身を守るためにはこういう能力も必要になるわけだ。人間とは進化の生き物なんだよ、チミぃ。 おおーっと、やべ、こうしてる間にもどんどん近づいてやがるぜえ!俺行くわ!んじゃな! ――っと、お前、名前は?あ、ちょい待ち。思い出すからよ。えーっと…確か、林神里子…だよな? お、あってる?…よし、あってた。改めて、俺九条了輔!よっろしくな!話聞いてくれて嬉しかったぜ。サンキュ。 入学式からサボりなんてしたかねえけど、事情が事情だ。担任にはよろしく言っておいてくれ。 …おい、こら、クラスの連中そんなに見つめるな。こっちにはこっちの事情があるんだぜ。 仕方ないんだ。っと、頼むぜ、里子!んじゃ、また明日な! 718 :彼女の異常な愛情 [sage] :2007/09/11(火) 04:19:54 ID:GIgzSs4/ と言って彼は窓から飛び降りて行ってしまった。ここ2階なんだけどなぁ…あの元気があるところも実に了輔らしい。 ふふ、っと思い出し笑いをしてから胸ポケットから生徒手帳を取り出した。ただの生徒手帳ではない。 ここにはボクの大切な写真が収まっているのだ。開いて大事な写真を眺めた。 手帳にはボクの大事な大事な了輔の隠し撮りした写真を入れてある。一枚じゃないよ? ボクは彼のことを何でも知っておきたいと思っているから彼の部屋の壁に盗聴器も隠しカメラも仕掛けてある。 その中の秘蔵のベストショットを10枚ほど入れてある。いつだって了輔と離れていたくないんだ。中学校時代は辛かった。 同じ中学校じゃないから会えないし、彼もボクのことを知らない。 ああ、前世から恋人同士のボクと彼が愛し合えないなんてこんな不条理があってよいのだろうか。 ふふ、まぁ、彼のことを研究するには良かったと思うけどね。それに高校からはずっと一緒だ。 学校側に金を渡して了輔と同じクラスにしたのはやはり正解だったな。こういうとき金持ちの家というのは便利だ。 だが、あの糞豚まで一緒だったのは誤算だったな。違うクラスにしとけばよかったか。了輔に付き纏うあの糞豚め… いつもいつも了輔に引っ付きやがって…。おっと、いつの間にボクの傍にいたんだい矢村さん?ふふ、ボクに何か用かな? 「…貴女からは私と同じ匂いがするわ。…了輔君に近づかないで、貴女の臭い匂いがうつってしまったら困るから…」 「…ふふ、酷いなあ。いきなり。ボクは何もしてないよ?」 「…まぁ、いいわ。せいぜい頑張って私と了輔君の愛を燃え上がらせて頂戴…」 「…ふふ、矢村さんが何を言っているのかボクにはわからないよ」 「…………」 「…………」 『うわぁ、何だこの空気。…俺(私)このクラスでやっていけるかな…』

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