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186 :溶けない雪 [sage] :2007/09/27(木) 17:42:02 ID:jbjk43y6 3 僕の家は高校からかなり近い。 なんてったって徒歩10分で家から高校に行ける程だ。 家から高校に向かうのに10分という事は、 帰りも当然10分で着いてしまうので、直ぐに家に帰る事が出来る。 幸いにも、通路には繁華街を突っ切るので寄り道にも不自由にはなく、 学生としては破格の立地条件である。 元々、僕はもう少し上の高校に入れたのだけれど、 その高校に通うのには40分を要す。 なので通学時間が4分の1の現在の高校に通っているというわけだ。 レベルが少しとはいえ、自分より低いので授業も普通にやれば問題も起きないだろうし お腹が空いているので、今日は寄り道して帰る事にした。 寄り道する前に、必ず確認しなければいけない事がある。 それは、自分の財力・・・・・・・・・この場合は財布の中身の確認である。 以前、財布の中身を確認せずに飲食店に入り、 財布の中身を見たら、 売っている食べ物の最低金額が、 自分の手持ちの金額を上回っているという事態に陥り、 考えた挙句の果てに水だけ飲んで知らんぷりして店を出るという事をした。 あの時の店員や周りの客の目を自分は一生忘れる事はないだろう。 財布の中身・・・・・・・・・よし、それなりにあるな。 自分の財力を把握出来た所で、 そのまま蕎麦屋(今日は蕎麦の気分だった)に行こうとして、 「けんちゃーん」 それなりの距離からの声が僕の動きを止めた。 今までの人生の中で自分をそう呼ぶ人間は2人、 そのうちの1人はあり得ない事なので、 結果的に声の人物の姿を捉えなくても直ぐに誰かは分かった。 その人物―――田村 夏夢はこちらに向かってきている。 彼女とは5年位の付き合いで、 幼なじみとまではいかないものの、親友の間柄である。 髪は黒でショート、まぁよく居そうな活発な少女、 容姿は親友補正なしでも、美人に入るとは思う。 でも、活発なのでそんな風に感じにくかったりする。 ちなみに背はお世辞にも平均とは言えなく、背の事を言うといきなり殴られる。 中学時代はよく遊んだりしたものだけど、 高校が変わってからはそんな事もなくなるんだろうなと思っていたので、 高校初日から会えたのは正直驚いたりした。 しかし、小学生からの友達、それが親友となれば尚更、 驚きはあるが、喜びは大きかった。 187 :溶けない雪 [sage] :2007/09/27(木) 17:42:41 ID:jbjk43y6 「やあ、久しぶりだね」 とりあえずは普通にお約束の挨拶をした。 「うん、久しぶり・・・・・・・・・・あれ?一週間前に遊ばなかった?」 確かにその通りである。 「まぁ、気にしない気にしない」 「むー・・・・・・・まぁいいや。ところで今からお昼かな?」 「そうだよ、今から蕎麦食べにいくとこ」 「じゃあさ、一緒していいかな?私も今からお昼だしさ」 別に断る理由はない。 「あぁ、いいよ。でも奢りはしないからな」 財布の中身は少なくはないが、奢る程には入ってない。 「期待してないから大丈夫だよ。 けんちゃんにそんな甲斐性があるなんて昔から思ってないし」 その通りだが、奢らさせる様な人に言われる謂われはない。 「少しは言葉遣いとかきちんとすればモテるだろうに……勿体無い」 この台詞を言うのは何度目だろうか? 「別に今のままでもモテてるから安心しなさい。」 「じゃあ、何で未だに彼氏の一人も出来てないの?モテてるってまさか女子からとか?」 「ちが・・・・・・・・女子からもよく告白されたわね・・・・」 ・・・・・・・・・・・・・・・・世の中は案外面白く出来ているものだ。 「彼氏が居ないのは単純に私が他に好きな人が居るだけだよ。 もし、仮に居なかったにしても、 容姿やちょっと接しただけの性格だけで告白してくる人はどのみち願い下げだけどね」 どうやらモテるというのも案外羨ましい光景でもないみたいだ。 「ふーん、案外大変そうだね、モテるのって。 まぁ僕には所詮無縁の話だね」 本当に、バレンタインデーに義理チョコを貰った事しかない僕には無縁の話だ。 「そうなんだよ、別に好きでもない人に告白されまくっても良いことなんて一個もないものよ。」 「そういえばさ」 「ん?」 危うく流しそうになったが、流すには惜しい台詞を聞いた。 「夏夢って好きな人居たのだか」 「まぁね、そりゃあ高校生になって好きな人の一人いないなんてレズ位なもんでしょ」 良い人に出会えなかったという事もあるが、今はスルーしよう。 「それでさ、それって誰? 高校で会った人? それとも中学の時からの知り合い? 隠しキャラで皆が知らない幼馴染みとか?」 人は他人の恋愛事には、つくづく野次馬をするのが好きなようだ。 現に、僕がこんなに興味を示した事なんてここ3年位ない気がする。 「んー・・・・・・・・・・幼馴染みではないけど近い、中学からの付き合いではあるわね。」 「告白なんかはするのか?」 そう聞くと彼女はうーんと、数秒悩み、 「分かんない、でも出来れば向こうから告白してほしいな」 「分かんないって事は向こうも、 夏夢の事を好きだと言う事なのか?」 「多分そうだよと思うよ。それに、まだ進展なんかはないと思うけど、 一つだけ確かな事があるよ」 「確かな事?」 聞いた瞬間に背筋がきた。 何が来たのかは分からない。 だけど確かに何かがきた。 188 :溶けない雪 [sage] :2007/09/27(木) 17:43:45 ID:jbjk43y6 「私はその人を絶対に手に入れるって事」 そう言い、夏夢は僕に笑っていた。 でも、いつもの笑顔などの類いでは決してない。 その笑みは・・・・・・・そう、初めて見るが狂喜の類いだ。 別にこれが狂喜だとか分かっていたわけではない。 只、本能的にそう思った。 結局、蕎麦屋に入ったはいいが、 メニューを見てるうちにうどんが食べたくなり、うどんを食べた。 その後、少し夏夢とウィンドウショッピングをし、夕方頃に各自帰路についた。 道で別れた後、しばらくして夏夢が振り返り、健二の背中を見ながら 「絶対に手に入れるからね………」 と呟いた。 その呟きを聞いた者は、誰も居ない。

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