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893 :ぽけもん 黒 脅威の怪我人食 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/08/26(火) 03:17:52 ID:yXHTQsMQ
「大丈夫ですか!? ゴールド!」
部屋に戻った僕の様子を見て、ポポは予想通りのリアクションをとった。
僕が治療を受けている間に香草さんから事情を説明されていたポポは、僕が怪我をしたという情報と僕がいつまでも戻らないという状況からかなりあらぬ妄想をしてしまい、心配になっていたのだろう。
僕は飛びつかれる前に、左足をかばって半歩下がる。
「大丈夫だよ、大した怪我じゃなかった」
作り笑いを浮かべながら、飛びついてきて僕の胸に顔をうずめているポポの頭を優しく撫でてやる。
「心配したです……」
ポポは嗚咽と共にそう言ったきり、僕の胸の中で大泣きしてしまった。
僕が苦笑いと共に香草さんを見ると、香草さんはやれやれ、といった様子で両の手のひらを天井に向け、顔を左右に振った。
ポポは数分すると泣き止んだが、しゃっくりはしばらく収まりそうもなさそうだ。
これじゃあ昼飯を食べにいけないな、と思っていると、僕の怪我を配慮してか、職員が部屋まで三人分の食事を運んできてくれた。
でもなにやら一食だけ妙にデロデロしたものが……。色は赤紫、それに緑の粒々が入っている。漂ってくる香りは酸系。そして時折湯気以外の気体を噴き出している。
「それは怪我人用の特別栄養食とのことなので、ゴールドさんがお食べ下さい」
職員に尋ねたら、そんな回答が返ってきた。
マジかよ……こんなの食べたら、たとえ怪我人ではなくなっても病人になってしまうそうだ。
うんざりした顔の僕を、香草さんは意地の悪い笑みを浮かべながら見ている。
……やっぱり彼女の言行はプライドの高さとかそんなものからくるものではなく、単に性格が悪いせいなんじゃないか、と思い直したくなる。
ポポは意味が理解できないのだろう、目をまん丸にして僕と香草さんを見ている。まあ野生ではこの程度の見た目のものは困惑するものの内に入らないか……。
「香草さん、ポポの食事、お願いします」
僕はこのデロデロと格闘するので精一杯だ。
「そんなの言われなくても分かってるわよ!」
おおっと、予想外の言葉だ。昨晩のこともあるのだろうが、これはいい傾向だ。
さて、これで僕は心置きなくこのデロデロと戦えるわけだ。……逃げたい。逃げることを第一義に置いている僕にとっては、これと戦うという選択肢は普通ありえない。
手を動かそうにも動かない。そしてそのまま対峙すること数分。
敵の隙を見出せない。一体どこから攻めたらいいのやら。
一方、香草さんは蔦を使って自分の食事とポポの食事を平行して進めていた。万能だな、蔦。攻撃に防御に移動に雑務と何でもできるじゃないか。
「あれ? ゴールド、手が止まってるわよ、手伝ってあげましょうか?」
香草さんは僕とデロデロの状況に気づき、悪魔じみた提案をしてきた。答えはもちろんノーだ。
「いや、だいじょう……」
「ほっといたら何も食べないでしょ! 自分で食べれないなら私が食べさせてあげるわよ!」
い、いや遠慮させていただきたい……というかなんで半目半笑いなのさ怖いよ! ああ! 蔦を伸ばさないで! そして僕に巻きつけないで!
そして口を強制的にこじ開けないで! 顔を上向きで固定しないで!
「はい、あーん!」
香草さんはそのデロデロを器用にスプーンですくって――ああ、なんかすごく糸引いてるよ! ――僕の口元まで運ぶ。
口調だけは語尾にハートマークでもついていそうな甘々なものだ。でもこの状況にあーん、なんて可愛らしい言葉はふさわしくない!
あ゙ーん゙、そう、この状況にふさわしい言葉はあ゙ーん゙だ! ああ、当然香草さんはそんな僕の思考なんてガン無視だ!
そんなことを考えている間にもスプーンは僕の口の中に……ら、らめえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
「こ……こんなの初めて……」
人間の尊厳のようなものを破壊された僕は、床でビクンビクン跳ねながらよく意味の分からない台詞を口走る。
いや、何を言っているのかよく分からないが、これは初めてのものとしか言い表しようがない。
「何やってんのよ大げさね! むしろ食べさせてあげたんだから感謝しなさい!」
「じゃあ……香草さんも食べてみる?」
僕はむくりと上体を起こすと、上目遣いで恨めしげに香草さんを睨む。
894 :ぽけもん 黒 脅威の怪我人食 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/08/26(火) 03:18:53 ID:yXHTQsMQ
「何言ってんの、もう容器は空よ?」
香草さんは容器を見て余裕の表情を浮かべている。
「まだ僕の口の中に残ってるよ……」
そう、まだ僕はデロデロを飲み込んでいないのだ! ……いや、飲み込めていないだけだけど。
「は、早く飲み込みなさいよ! 汚いわね!」
それを聞いて香草さんは露骨に焦っている。
「口移ししてあげるよ……うふふふふ……」
「! ゴ、ゴールド、本気で言ってるの? 大丈夫?」
顔面を蒼白にし、ジリジリと後ずさる香草さんを部屋の隅に追い詰める。
「大丈夫? だって? 僕をこんなにしたのは香草さんじゃないか。責任、とってもらうよ?」
ああ、大丈夫じゃないとも。こんなもの皿一杯食わされて大丈夫な人間なんていたら見てみたいね。なぜかいつもより頭がよく冴えている。
今の僕なら何だって出来そうだ! 香草さんと普段の立場を逆転することぐらい訳ないね!
「よ、寄るなバカぁ!」
香草さんは涙目でそう抗議するが今の僕には届かない。フフフ、この至近距離じゃ一切の攻撃手段は行えないだろう。
せいぜい体当たりくらいだ。しかし体当たりなんてしたら僕の口の内容物が彼女に噴霧される。彼女もそれをよく理解していることだろう。
「あっ……」
逃げ場を失った彼女はポスンとベッドに倒れる。フハハハハハ、後は煮るなり焼くなり僕の自由だ!
「さあチコ、召し上がれ」
僕はそう言って口を半開きにして彼女に覆いかぶさろうとした瞬間。
ちゅーーーーっ。
眼前一杯にポポの顔が広がっている。
おかしい。僕は香草さんに口の内容物を口移ししようとしていたはずなのに、何故ポポに口の内容物を吸いだされているんだ?
いやいや、物理的にはおかしなことなんて何もない。僕が香草さんに覆いかぶさる寸前、ポポが脇から入ってきて僕の唇を奪ったっていうだけだ。
「何ですかコレ酷い味です!!」
ポポがむせながら狂乱し床をのた打ち回る音で、ようやく僕は静止から覚めた。
「ポ、ポポ、一体何やってんだよ!」
何やってんだよ、と言われるべきは間違いなく僕のほうなんだろうけど、今はそんな冷静な思考が出来ていないからそんなことを言われても困る。
「だって、ゴールドがずっと口に入れてたから、ごちそうだと思ったんです……」
ポポは顔を真っ赤にして涙目でそう訴えた。
僕は水をポットからコップに移してやり、ポポに飲ませてやる。
そして僕はポットから直に水を飲む。
「っぷはあ! 死ぬかと思った!」
口をこれだけゆすいでも、口中には異臭がこびりついている。本当に酷いものを食べた。
僕がうずくまって荒い呼吸をしていると、突然服を引っ張られた。振り向けば、香草さんが目に涙を浮かべてベッドの角に座っている。
どうやら蔓で引っ張られたようだ。しかしなぜか心なしか着衣も乱れているような。
「アンタ……一体何してくれんのよ……」
何故か香草さんは激しくお怒りのようだ。いや、これは怒りなんだろうか。突然物凄い眠気が襲ってきたから良く分からない。
なんかもういいや、寝よう。
そして僕はそのまま床に横になった。
ぐったりとしただるさで目が覚めた。
体を起こそうと思ったが、腹部に乗っている何かに邪魔された。
その何かとは香草さんの上体だった。ベッドの脇におかれた椅子からベッドのほうに倒れかかるように眠っている。つまり僕はベッドの上。
これはベッドに寝ている僕を介抱しているうちにそのまま寝てしまったって感じだよね、どう考えても。
おかしいな、なんでこんなことになってるんだ? 僕は早朝目を覚まし、そして……あの胸糞悪くなるような体験をした後部屋に帰って……
それで……何か明らかに毒物な昼食を香草さんに食べさせられて……その後の記憶がない。なんだ、つまりは全て夢だったんだろうか。
いやな夢を見たなー、と自分を誤魔化す。しかし、その淡い願望はふとももに巻かれた真新しい白い包帯によって否定された。
はあ、と落胆のため息を吐く。そうすると、僕は昼食を食べた後、そのまま寝て……いや、失神しまったのかな。
それで香草さんが僕の様子を心配して見ていた、ってのが一番辻褄が合うかな。何か違う気がするけど、そういうことにしておこう。
895 :ぽけもん 黒 脅威の怪我人食 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/08/26(火) 03:19:33 ID:yXHTQsMQ
はは、香草さんが起きたらお礼言わないとな。僕はそう思いながら枕元のポケギアに手を伸ばす。待ち受け画面のデジタル時計の表示は十六時半の辺りを指していた。
時間から鑑みるに、四時間程度寝ていたらしい。多分あのデロデロ、睡眠薬も入ってたな。じゃなきゃアレを食べさせられた後、気がつけばこの時間になっている説明がつかない。
確かに安静にさせるには寝させるのが一番いいけども、事前に一言くらい言ってくれてもよかったようなものなのに。
さて、これからどうしようか。起きようにも、香草さんを起こすのも悪いしな。そうだ、ポポはどうしているだろう。
僕はそう思って顔を左に向けた。
ポポが部屋の中央で蔦でぐるぐる巻きにされて逆さ吊りになっていた。
えええええええええええ。
えええええええええええええええええええええええ。
いや、待ってよ、意味がさっぱり分からない。
というかポポの顔に血が集まって赤く膨れている。これはかなり危ない段階なんじゃないだろうか。
こうしちゃいられない、と香草さんをどかして、ポケットから十得ナイフを取り出し、ナイフを立てると、ポポを支えながら蔦を切断した。
「大丈夫かポポ!」
血圧を適切にするために上体を持ち上げながらポポに話しかける。
「……ぅ……ぁ」
ポポは小さくうめき声をもらすのみだ。やはりかなり危ない状態にあったらしい。
「なによ一体……」
僕が頭をどけたからだろう、香草さんも目をすりつつ起き上がってきた。
「香草さん! なんでこんなことしたんだよ!」
僕は思わず香草さんに怒鳴る。普段なら怖くてとても出来ないが、ちゃんと怒ることができてよかった。
「こんなことって……悪い鳥にはしつけが必要でしょう?」
彼女はしれっと恐ろしいことを言っている。おかしい。僕の記憶が定かなら、ポポに対する香草さんの対応はマシになったはずなのに。
まあついさっきも飛んだようなまったくあてにならない記憶だけどさ。
「悪い鳥って……ポポが一体何をしたって言うんだよ!」
「何……ってゴールド、あなたそれ本気で言ってるの?」
香草さんの表情が急に訝しげなものに変わった。
「ああ、本気さ!」
本気で言ってるの? と聞かれればこう答えるしかない。
「あなた、あんなことしておいて、私に何をしたか覚えてないの? それとも別にあんなことは大したことの内に入らないってわけ?」
「あんなこと……って、シルバーとのポケモンバトルのこと? あれは確かに巻き込んで悪かったよ。でも、ポポは関係ないだろ?」
「……その後よ」
香草さんは呆れるように言った。その後? その後に何があったっていうんだ。
「その後? 巡査さんに説教されて、女医さんに治療してもらって、部屋に戻って、昼食を無理やり香草さんに食べさせられて、それで寝ただけだろう!?」
僕がそう言うと、彼女は落胆を露にした。
「……はあ。なによ、バカ。何も覚えてないのね。確かにあなたは正気のようには思えなかったけど、にしたって酷いわ、ホントに」
覚えてないのね。その予想外の言葉に、僕は動揺する。
「……僕が何かしたのか?」
「何か、なんてもんじゃないわ。とんでもないことよ。私を酷く辱めたわ」
「辱めた……だって!? まさか、僕がそんなこと……」
辱めた。その言葉で頭が真っ白になる。僕は本当に何も覚えていない。でも、もしそれが真実なら、僕は最低の人間じゃないか。
そう思う。ただ、同時に疑念も浮かぶ。
「あの鳥と一緒になってやったわ。だからあの鳥には罰を受けてもらったの」
「だったら僕だって罰を受けるべきだろ!」
僕がそう叫ぶと、香草さんはキョトンとして僕を見た。その発想はなかったようだ。
「……それもそうね」
「よし! ならば吊るせ! 死なない程度に!」
僕はそう言って体を大の字に開いた。記憶がないとはいえ、罪は罪。ならば償わなければ。
「何やってるの?」
「え、な、何って、逆さ吊りにしやすいようにって」
なんか冷静に言われると凄く恥ずかしい。一思いにやってほしい。
「罰は私が決めるわ」
「え、でもそれだと平等じゃな……」
「主犯と共犯で刑が違うのはあたりまえでしょ……」
「確かに……」
「でしょう。そうね……罰は……」
896 :ぽけもん 黒 脅威の怪我人食 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/08/26(火) 03:21:04 ID:yXHTQsMQ
と、香草さんが思案を始めたとき、ポポが目を覚ました。同時に飛び上がり、僕の後ろに隠れた。
「酷いです! どうしてあんなことしたですか!」
ポポは泣きながら香草さんを責める。
「どうして……って分からないわよ、そんなの」
香草さんは悪びれる様子なくそう返した。
……分からない?
「ちょっと待って香草さん、分からないってポポが僕と一緒に……その、悪いことをしたからなんじゃないの?」
僕は当然の疑問を香草さんにぶつける。香草さんは少し顔をしかめ、そのまま沈黙している。
……何か話が香草さんの都合のいいように曲げられている気がする。ここはポポにも話を聞いてみるべきだ。
「ポポ、僕が昼食をとってから今に到るまで、何があったか説明してくれないか?」
「せつめい?」
ああ、説明と言われても、ポポは事情が分からないか。
「どうやら僕、昼食食べてから記憶がなくて。それで、なんでこんなことになっているか分からないんだ」
「なんでって、だからアンタ達が私を酷く傷つけるようなことを……」
香草さんは慌てるように僕達の会話に割って入った。それに対してポポが反抗する。
「ポポは何もしてないですー! ただポポはゴールドと口移しで食べ物を食べただけです!」
……口移し? 僕が? ポポと?
口移しというのは、つまりマウストゥーマウスってことで、つまりそれは……。
待て待て待て待て、今本題はそこじゃない。それにポポはほら、妹というか娘というかなんというかほらアレだようん。セーフ? ノーカウント?
「ポポ、もう少し詳しく話してくれないかな」
僕は脳内を駆け巡る余計な思考から目を逸らし、平静を装ってポポに質問する。
「はいです! ゴールドはご飯を食べた後からなんだかおかしくなったです」
「おかしくなった?」
「いつものゴールドじゃなくなったです。それでチコに口の中のものを移そうとしたです」
「僕が!? 本当に!?」
信じられない。だってまるで記憶にない。それに僕はそんなことを思っても行動を起こす度胸なんて持っていない。確かにアレを無理やり食べさせられたショックはあったけど、そんな大胆な方法で反抗に出るなんて思えない。
「本当です! ポポはそれで、ゴールドはとってもおいしいものを食べてるんだと思ったんです。だからゴールドから口移しで食べさせてもらったです。……すごくまずかったです」
ポポはうつむいて舌を出した。
「そしたらゴールドは倒れて、それでポポ悪くないのにチコにいじめられたですー!」
ポポはそう言うと僕の背中に泣きついた。
香草さんは相変わらず沈黙だ。
「香草さん、これが真実なんだね?」
「……そうよ。でも! ゴールドが私に酷いことしようとしたのは事実じゃない!」
う、それを言われると痛い。ポポの話から判断しても、僕が大変なことをしでかす一歩手間までいったのは事実のようだし。……でも、辱めた、って表現は大げさなんじゃないかな。
「でも、ポポは何も悪くなかったじゃないか。僕はちゃんと罰を受けるから、ポポに謝りなさい」
僕はそう言って背中に張り付いているポポを剥がし、香草さんとむき合わせた。香草さんがポポにやったことには正当性がない。
どうして香草さんがあんなことをしたかは分からないけど、形式だけでも謝ってもらわないと、この先旅を続ける上でどんな支障が生じるか分からない。
香草さんは顔を時々上げて口を動かそうとし、しかし口を止めて顔を下げるという動作を数回繰り返した。ポポはそのたびにビクビクしている。
897 :ぽけもん 黒 脅威の怪我人食 ◆wzYAo8XQT. [sage] :2008/08/26(火) 03:22:02 ID:yXHTQsMQ
「……ぅ、ごめんなさい」
その繰り返しの後、ようやく香草さんはそう言った。当のポポはどうしていいのか分からないのだろう、目を所在無さげに漂わせている。
これ以上は望みすぎか。ようやく関係が改善してきたと思ったのに、また前に逆戻りか。そう考えると気が重くなる。そして、僕が受ける罰についても。
「罰は……今はいいわ」
香草さんのその言葉で、僕は口を大きく開いた。まさかあの我儘な香草さんが、何の復讐もなしに引き下がるなんて、考えてもいなかった。
香草さんは顔を上げて僕のそんな様子を確認する。すると表情を明るくし、いつもの様子で僕に言った。
「あくまで今は、って意味なんだからね! 絶対にこのことを忘れるんじゃないわよ!」
その様子はすっかりいつもの香草さんで、僕は脅されているような状況なのに、ほっとしてしまう。
「うん、覚えておくよ」
出来れば永遠に来ないで欲しいな。
とりあえず、これで一応は場が収まったと思ったので、僕は女医さんのところに、昼食に何を混ぜたか問いただしに行くことにした。香草さんとポポもついてくるそうだ。まあそうなると思ったけど。
僕が強い口調で意識の喪失と性格の一時的変化について問いただしたら、「ああ、そう。たまにあるのよ」と軽く流されてしまった。しょうがないから次からは普通の食事をとるように、と指示された。
僕はその回答に到底納得はいかなかったが、ポケモンセンターは全国的にネットワークでつながれているので、ブラックリストにでも入れられたら今後の旅がどうなるか分かったもんじゃないから、おとなしく引き下がった。香草さんが無言でいてくれてよかった。
日が暮れてなかったらきっと猛抗議していたことだろうな。
日が暮れてしまったから香草さんの感情の変化はよく分からないが、普通の食事をとるように、と言われた時に心なしか沈んだように見えたのは、僕の気のせいだったのだろうか。