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576 :もう何も信じない 第9.5話 ◆KG67S9WNlw [sage] :2008/09/29(月) 22:15:14 ID:yK5+LjJN 珍しく、あいつから電話があった。 なんでも、調べてほしいことがあるそうだ。 あいつは…佐橋は何か思い詰めたような声色をしていた。 でも、なんでだ? 佐橋は、自分の父親と、妹のことを知りたいだけだろう?何をそんなに恐れる? 俺は、環 右京。 実家は資産家で、しかし俺たちはそれを隠して暮らしている。 "俺たち"というのは、俺と、姉さんのことだ。 佐橋は、俺の初めての友人だった。中学でも、実家のことを隠していたが、 あることがきっかけでそれを知られて以降、まわりのやつらの俺を見る目が変わった。 そのせいで、俺は誰にも気を許せなかった。ただ唯一、姉さんだけが俺をかばってくれた。 実家を出て、必要最低限の仕送りを受け、二人だけで暮らそうと言ってくれた。 姉さんは、俺のためならなんでも捨てる覚悟だった。 せめて、大好きなバイクだけは持っていこう、と言うのが精一杯だったよ。 俺の身の上話はここらへんでやめにしよう。 要するになにが言いたいかっていうと、俺は唯一の友人のためなら何も惜しまないということ。 かつて忌み嫌った環家の財力を以てしても、調べてやろうじゃないか、我が友よ。 プルルルルル………ピッ 「……父さん?お願いがあるんだ。」 577 :もう何も信じない 第9.5話 ◆KG67S9WNlw [sage] :2008/09/29(月) 22:16:38 ID:yK5+LjJN 朝になった――― 俺はあらゆる手段をもって、可能な限り調べ尽くした。 環家御用達の情報屋も当たったし、警察内部のデータもその筋のやつに調べさせた。 たかだか一般人のデータだ。そこまで調べるのは難しくはなかったらしい。 急ぎでやってもらったため、割り増し料金は取られたが構いはしない。 結果、俺は知ることができた。とんでもない事実を。 ………これを、佐橋に告げていいんだろうか? もし知れば、あいつは間違いなく終わる。いや、全てを終わらせてしまいかねない。 だが、いずれ知ってしまうかもしれない。 ―――だめだ、言えない…。俺には、無理だ。あの二人の幸せをぶち壊す権利は俺にはない。 どうすればいい? ――――電話だ。 ……っ、三神……? 「……頼みたいことがあるんだ。会ってくれないかい?」 察しはつく。きっと三神も、佐橋と同じことを俺に頼むつもりだろう。 でも、俺はどうすればいい? 誰か、教えてくれよ…。 言えるわけない……"三神 光"は死んでいた、なんて…。

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