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586 :もう何も信じない 第10話 ◆KG67S9WNlw [sage] :2008/09/30(火) 14:55:21 ID:UNxrftNU
佐橋 晶。
そう、それが君の妹さんの名前なんだね。
――――あれ?おかしいな。なんで僕、こんなに震えてるの?
わからない。わからないけど……
こわい。
どうして?僕は何に怯えてるの?
……怖いよ。
早朝―――
僕は、結局一晩中眠れなかった。隣には歩がいるけど、きっと寝たふりだ。
僕を心配してくれたんだね?……ありがとう。
「おはよう、歩。」
「……ああ。飯にしようか。」
「うん。」
僕は、歩に僕の不安が気取られないよう、努めていつもどおりの態度をとる。
―――歩が頭を撫でてきた。
「……どうしたの?」
「………おまじない、かな。」
だめだ。きっとばれてる。……歩に隠し事はできないんだよね。
朝食を終え、僕は歩に切り出す。
「今日、調べたいことがあるんだ。出かけていいかな?」
「…構わないが……1人で平気なのか?」
本当は、怖い。できるなら、歩と一分一秒も離れたくない。
でも、いつまでも逃げるわけには行かないんだよね?
「大丈夫だよ。」
587 :もう何も信じない 第10話 ◆KG67S9WNlw [sage] :2008/09/30(火) 14:56:37 ID:UNxrftNU
僕は、右京君と喫茶店で待ち合わせた。頼みたいことがあったんだ。
「……で、三神は佐橋の死んだ妹、晶について知りたいわけだな?」
「うん……歩は、妹さんのことは覚えていないから……」
「そのことなんだが……実は、佐橋にも同じことを頼まれてたんだ。」
「…え?」
「なんでも、『自分の過去に何があったかを知りたい。』って。」
「……で、調べられたのかい?」
「ああ。俺の知り合いには、そういうのを得意とする奴が何人かいるからな。」
「……君が何者なのか、はあえて聞かないでおくよ…。」
そういうのをって……ほんと、何者なんだろう?
「さて、本題に入る前に一つ確認したい。……三神、今回俺が知りえた情報は、
間違いなくお前たち2人の幸せを脅かすものだ。今なら、俺1人の胸の中にしまっておくことができる。
……お前は、佐橋との幸せと引き換えにしても、知りたいか?」
「……どういうこと?意味がわからないよ。歩の過去と、僕たちは関係ないはずだよ?」
「関係なくはないさ。お前だって、それがわかるから今こうして俺のところに来てるんだろう?
……実際は、おそらくお前が考えてるよりずっと深刻だけどな。」
――いったい、過去に何があったの?僕たちと関係があるって……わからないよ。
でも、僕は……
「……ごめん。やっぱり、いいよ。」
「……そうか、お前ならそう言うと思ってた。」
「僕は……ずるいのかな。」
「そんなことはないさ。大事なのは過去より今。いつだってそれは変わらない。」
「そう……だね。ありがとう。」
588 :もう何も信じない 第10話 ◆KG67S9WNlw [sage] :2008/09/30(火) 14:57:29 ID:UNxrftNU
右京君と別れた僕は、歩の家へと向かった。
僕は、いつだって歩との未来を選ぶ。その思いは変わらないはずだよ。
「ただいま。」
「おかえり。用事は済んだか?」
「うん。もう平気だよ。」
「そうか。」
そして僕は眠りにつく。歩のぬくもりを隣に感じながら。
―――逃げるなんて、許さない。光、あなたは知らなくちゃいけないのよ。―――
―――自分が、どんなに罪深いのかを。今、教えてあげる―――
僕は、夢を見た。
夢の中で、僕は人を殺してた。
血塗られた手に、握られたナイフ。
眼前には、横たわる死体が二つ。大人と―――女の子。
そして、いつか見た、子供のころの歩。何かを言っている。
「―――して!どうして父さんと光を殺した!どうしてだ!」
……? 光は僕だよ? 何を言ってるの、歩?
「答えろよ!晶!」
あきら………僕が……晶?
―――思い出した?―――
そうだ……思い出した。僕は……
僕が、晶だったんだ。