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495 :わいやーどみにまむ1  ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/03(月) 01:13:14 ID:mo1fLUoX みにまむ1『たちどまったとき』 千歳とナギが、小学六年生くらいだったころのお話。 六月のこと。ナギと千歳は、ナギの部屋で二人遊んでいます。 まだこの時期のナギの部屋は、今と違い普通の整頓された部屋でした。 「なぁ、お前さ……」 「なんだ?」 千歳の呼びかけに、ナギは振り向きもせず答えました。 「さっきから卑怯じゃね」 「だから、なにがだ」 しらばっくれるナギ。千歳の怒りゲージが少しずつたまっていきます。 「いや、だからさ、さっきからナギナギ言い過ぎなんだよ!!」 「何を言っているんだ。ナギは私だ」 「違う、こっちの話!」 千歳は二人の前のテレビ画面を指差します。 「いや、ただの北斗の拳だろう」 「トキだよトキ! トキ使いすぎなんだよ! ナギナギうるせーって! まじ勝てないから!」 二人は、仲良く並んでゲームをしていました。 ゲーム画面には、ナギ操るストロングな病人にいたぶられる千歳の聖帝様のお姿が移っていました。 哀れなことです。ほとんど無理ゲーダイヤに等しいこの対戦をひっくり返すプレイヤー性能は千歳にはありませんでした。 ナギナギと小うるさく瞬間移動を繰り返す白い病人は柔の拳とは名ばかりの剛拳でまた、聖帝に有情破顔拳を繰り出しました。 テーレッテー。 フェイタル・ケー・オー。 496 :わいやーどみにまむ1  ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/03(月) 01:13:44 ID:mo1fLUoX 「鳳凰の夢は潰えたか……お師さん……」 感慨深くナギはつぶやきます。 「お前、マジ卑怯だっつの……」 「卑怯もクソもあるまい。大体、中野TRFのとある修羅はトキすらフルボッコだと聞く」 「そりゃ全一の話。俺は普通の人間。そしてこのゲームはお前の持ち物。接待プレイを覚えるか、もしくは強キャラの使用を控えるくらいしてくれないと」 「千歳、お前ともあろうものが、なにを甘えている」 「はぁ……?」 「トキの柔拳のパクリのような拳法を使うくせに。お前とリアルファイトしたらどうやっても正統派の拳法では勝てんぞ」 「清水拳のことか……?」 ――ありゃお前のために……。 そうは思いましたが、照れくさくて千歳にはとても言えませんでした。 「つまりだ、世の中には格の差なんてあって当たり前なんだ。平等じゃないのが当然なんだよ。いちいち下の基準に合わせていたら、世の中悪くなる一方だ」 ナギが得意げに言います。 「そりゃ屁理屈だろ」 むっとして千歳が言い返しました。 千歳は差別なんて大嫌いです。純粋な正義感から、ナギの理論に嫌悪を覚えたのです。 「そうか? なら、男と女のどうしようもない差はどうだ?」 ナギは千歳の怒りなどまるで無視して、続けます。 「男女平等などと、フェミニストは口にするがな。実際男と女じゃ生物としての性質が全く違う。男は力を使って社会を形成し、女や子供を護るようにできている。対して女は、子孫を育てるために出来ている」 「そりゃそうだけど……」 「つまり、社会的格差があると女は男に文句を言っているが、女はそもそも社会のなかで男に勝れるような構造をしていない。女って言うのはな、『生む機械』なんだよ。極端な表現をするがな」 497 :わいやーどみにまむ1  ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/03(月) 01:14:15 ID:mo1fLUoX 千歳は目を丸くしてナギを見ました。 こいつは本気なのだろうか、と。しかしナギの表情は巧妙に本心を隠すもの。よくわかりません。 「お前だって女だろ。そんな不平等じゃだめだって思わないのかよ」 「私には、盲目的な平等の狂信こそがむしろ危険に見える。『違い』があるから、それを埋めるために人は努力するんだ。だから、違いを認め、前に進まなければならない。なのに……」 ――完成された平和が目の前にあったとして、それが長く続いた先の未来、人はまだ平等を保てるのか? ナギはくっくっと笑いながら、そんな質問を千歳に投げかけます。 「答えは、『NO』だろう? 人は忘れる。目の前に完成されたものがあれば、そこで成長を止め、また間違いを犯す」 「……だったら、どうしたっていうんだよ」 「学ばなければならない。私は未来などというものは全く信じてはいないが、人はそれを信じるという。だから変わってゆき、忘れていく。ならばそのつど、学ばなければならない。それが――」 ナギはゲームのコントローラーを手放し、千歳に飛びかかりました。 とっさのことで、千歳も反応が遅れます。 床に組み伏せられてしまいました。ナギは千歳よりも遥かに力があるので、振りほどくことはできません。 「――前に進む、ということ」 「お前……。離せよ」 「いやだ、と言ったら?」 「くっ……」 「何も出来ないだろう。なぜなら、この体勢では私は『絶対的強者』だからだ」 ナギはのしかかったまま、顔を近づけます。 「ナギっ、お前……あぅ!」 ぞくぞくっと、千歳の頭を刺激が駆け抜けました。 ナギが、千歳の首筋を舐めたのです。 「千歳、このまえ学校で性教育を受けたよな。覚えているか?」 「あ、ああ……」 「なら、いくら鈍いお前でももう分かるよな。私は『生む機械』とやらになってみようと思うんだ。これが私の、女としての『学び』だろう」 「――っ!?」 498 :わいやーどみにまむ1  ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/03(月) 01:14:45 ID:mo1fLUoX そのとき見たナギの表情は、小学生とは思えないほどに大人っぽく、艶やかで、そして……。 「怖い、か?」 がくがくと震える千歳。どう見ても普通の状態ではありませんでした。 そう――千歳は昔、姉から受けた仕打ちのことを思い出しているのでした。 その記憶が、今の千歳を縛り付ける鎖なのです。 ナギは、そんな事情つゆも知らずに千歳の上着を脱がし始めました。 「……」 「なんにも喋らないんだな。つまらない」 目がうつろになっている千歳を全く歯牙にもかけず、今度は自分の上着を脱ぎます。 ほとんど膨らんでいない胸があらわになりました。 「なに、ちょっとした子供の遊びだろう。ほら、性的な遊びと言うやつは、幼いうちはよくあるらしいからな」 そう言うと、馬乗りになったまま下にいる千歳のからだに、ぴったりと身体を重ね合わせました。 あらわになった上半身同士が触れ合います。 「ほら、聞こえるか、心臓の音が。これが、私の今の気持ちだ」 とくん。とくん。 確かにナギは今、ただの女の子でした。しっかりと生きて、そして学ぼうとしていました。 しかし、千歳は答えません。 ナギがぴったりとくっつけ合った身体をすこしずつ動かしてすり合わせても、反応がありませんでした。 「(ああ……気持ちいいな)」 互いの体温を感じあい、肉感から実在を確認しあう。ナギにはとてつもない快感でした。 「はぁ……はぁ……」 だんだん息が荒くなってくるナギ。 「(乳首、すれて……気持ち、いい……)」 だんだん強く、速く、激しく身体を擦り付け始めるナギ。 499 :わいやーどみにまむ1  ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/03(月) 01:15:16 ID:mo1fLUoX 千歳は、そんな光景にも反応せず、ただ虚ろな目で天井を眺めているだけです。 「はぁ……はぁ……ちとせぇ……好きなんだ、本当は……私は、ただの女だ……」 たぶん、こんなことしか出来ない。 ナギは、自分にあまり自信を持っていません。 だから、女としてこうして千歳に近づいています。 「でも、これしか出来ないから……お前には……」 独りよがりな自慰を続けるナギ。千歳の姿など目に入っていませんでした。 「……まりねぇ」 「――っ!?」 不意に、ぽつりと千歳がつぶやいたのに驚き、ナギは身体を止めました。 「万里姉……もう、やめて……」 虚ろな表情の千歳から、一筋の涙が流れ落ちます。 「ぁ――」 ナギは、ようやく気づきました。 千歳が今まで抵抗しなかった原因。 全て、理解してしまったのです。 「千歳……」 「万里姉……万里姉……」 呪文のようにつぶやく千歳。 「千歳……お前は……」 500 :わいやーどみにまむ1  ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/03(月) 01:15:46 ID:mo1fLUoX 千歳を家まで送っていったナギは、はれた頬を押さえながら家に帰っていました。 無気力になった千歳を送り届けると、妹の百歌はそれを見て「お兄ちゃんになにしたの!」とナギを殴ったのです。 異常に強い力でした。 ナギが素直に「すまない」と頭を下げていなければ、たぶん殺されていたでしょう。 すくなくとも、あのときの百歌の剣幕だと、そうなってもおかしくはありませんでした。 家につくと、心配そうな表情をした母、頼さんが迎えました。 「ナギ、もしかして、千歳君に……?」 「……私は、なんであんなことを……」 「……ナギ、あなたは、やっぱり私と同じなのね」 頼さんの暖かくて柔らかい手が、ナギの赤い髪を撫でました。 「ナギはね、大人になったの」 「大人に……?」 「発情期っていうのかな……。お母さんもね、昔そんなのがあって」 「発情……?」 昨日受けた性教育には、そんなものありませんでした。 人間にはなくて、動物にあるもの。そう思っていました。 「そう。無いわね。『ホモ・サピエンス』にはね」 頼さんは、優しい目でナギを見つめます。 まるで、昔の自分を思い出し、重ねているようでした。 「いつか、全てを話してあげる。その時がきたら、全部……。だから、今は。千歳君には会わないほうがいいわ」 「母さん……。うん、わかった」 素直にこくりとうなずくきます。 「しばらく、学校はお休みしなさい。わかった?」 「うん……。わかった」 千歳に会えないのは残念でしたが、、ナギは母の言葉には逆らいません。 母も千歳も、同様に大切だったからです。 501 :わいやーどみにまむ1  ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/03(月) 01:16:17 ID:mo1fLUoX 「ふぅ……」 ぱたんと、ナギは自分の部屋の扉を閉めました。 「しかし、発情期とは。……私は、一体……。ん?」 部屋を見ると、千歳の上着がおいてありました。二枚着ていたうちの、一枚を着忘れて帰ったようです。 「忘れ物か……」 ――いや、私が着せるを忘れたんだ。過失は私にあるな。 自己嫌悪しながら、上着を拾い上げます。 「(……なんだ?)」 妙な違和感を感じます。 「(なんで……。なぜ私は、今)」 ――匂いをかいでみたい、なんて思った? 頭では、そう思っています。 しかし、その思考は既に行動にまで移されていました。 ナギは無意識のうちに、千歳の上着に顔を押し当て、大きく息を吸っていました。 「(なんだ……私は、なぜ……)」 そう戸惑う間に身体が勝手に動き始めます。 千歳の上着を顔に押し付けながら、千歳がさっき座っていた自分のベッドに倒れこみました。 「(おい、なにが……一体、どうして)」 わけもわからないままに、身体だけが暴走してナギはいつの間にか下着を取り去っていました。 千歳の上着を、まるで千歳自身のように抱きしめ、匂いを嗅ぎます。 「千歳の匂いだ……」 ここで初めて、思考と行動が一致しました。 502 :わいやーどみにまむ1  ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/03(月) 01:16:49 ID:mo1fLUoX ナギのさっきまでの戸惑いは千歳の匂いの認識と共に完全に崩れ去りました。 股の間に手を伸ばし、むき出しのそこに触れます。 「……ぁ……んっ」 くちゃ。と、液体が糸を引いて指に絡みつきました。 まるで小さな子供のようなその一本筋は、今は一人前の女のようにいやらしく湿っていたのです。 「どうして……こんなに」 思い返せば、千歳に身体を擦り付けたときには既に股間に疼きがあった気がしました。 なら――千歳とただ一緒にいただけで? ある種の恐怖と、それを超える背徳への興奮がナギを襲いました。 ナギは指でしばらく秘所をこすったあと、我慢ができなくなりました。 「……千歳、ごめん」 千歳の上着を、股に挟み込みました。 その上から指で秘所にこすりつけます。 千歳の匂いが染み付いていくようで、快感はもうどうしようもないほどに加速します。 「う……あぁ、ちとせ……ちとせぇ……」 だらしなくあけた口から漏れる言葉は、その全てが快楽への嬌声か、千歳を呼ぶ声でした。 「私は、生む機械なんだ……」 そういいながらも、更に指を速くします。 「あっ、あぁ……! ちとせ! もうっ……なんかくるっ!」 びくんとナギの身体が跳ね、ぞくぞくと快感が全身を貫きました。 「はぁあ……んぁ……ちとせ……私は……」 初めてのその感覚に、若干の戸惑いを覚えましたが、ナギはもう分かってしまっていたのでした。 「私は、最低だったんだな……」 503 :わいやーどみにまむ1  ◆.DrVLAlxBI [sage] :2008/11/03(月) 01:17:20 ID:mo1fLUoX 数日後。 自慰行為ばかりをして過ごした『発情期』も終わり、千歳と会ってみると、案外千歳はいつもどおりでした。 変わらない、優しい千歳でした。 しかし、このときからナギは変わってしまったのです。 部屋は、千歳が触れたもので埋まっていきました。 気づいたら、服を脱いで千歳の触れたもののコレクションの山の中で寝ていることが多くなりました。 千歳を思い、衝動的に自慰をしてしまうことが多くなりました。 だから、ナギは変わってしまったのです。 ――私は、千歳にふさわしくないんだな。 幸せな未来を捨ててしまったのでした。 ナギはこの日から、少しだけ立ち止まってしまったのです。 それは小さな一歩だと分かっているのに。 その一歩が、踏み出せなくなってしまったのです。

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