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「天使のような悪魔たち 第7話」(2008/11/22 (土) 15:11:10) の最新版変更点
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151 : ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/21(金) 19:13:36 ID:yomVWorA
「ひ…ひぃぃっ!来るな、化け物!」
今わたしの眼前にいる男は、その屈強な体躯をまるで小動物のように震わせながらそう言った。失礼な物言いね?そっちからわたしを呼んだくせに。
わたしは一歩、また一歩と男に歩み寄る。
「やめろ!こっちにくるなぁ!」
男の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃ。なんて醜いのかしら。ねぇ…知ってる?
―――――――
人間の頭のなかから、恐怖以外の感覚と記憶を奪い取ったらどうなるか。
―――――――
そう、この世の全てのもの…たとえば、今そこを通りかかった仔猫ですら世にも恐ろしいモンスターのように感じるの。
―――――――
あら…だらしないわね。失禁なんかしちゃって。そんなにがたがた震えちゃって…寒いのかしら。
でもあなたが悪いのよ?わたしの大事な弟たちに手を出そうとするから…万死に値するわね。
せいぜいそこで戯れているがいいわ。"お仲間"がたくさんいてよ?
152 :天使のような悪魔たち 第7話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/21(金) 19:14:39 ID:yomVWorA
* * * * *
目覚まし時計の軽快な音が鳴り響く。俺はその音で目を覚まし、ベッドを降りる。
階段を降り、台所へ……ん? 幼女が二人………なんだ、姉ちゃんか。
「おはよう、兄貴!」
「おはよう飛鳥。」
「んぁ?ああ、おはよう。」
そういや昨日突然帰ってきたんだった。電話は壊れちまったし…突然ってのも仕方ない話か。連絡受けられなかったんだから。
「はいこれ、お弁当だよ。」
「ああ、さんきゅ。」
俺は明日香から弁当箱を受け取り、お礼とばかりに頭を撫でてやった。
「……………。」
うーん、今の明日香の表情をなんといったらいいのか……
そうだな、きっと鼻からジュースを飲ませても気づかないだろう、といえば通じるだろうか?とにかく、そんな感じだ。
「ほら二人とも、はやくごはん食べちゃいなさい。遅刻するわよ?」
姉ちゃんの一言ではっ、と目を覚ました明日香はあわてて食卓へとかけ、食べる体勢になった。俺もそれに続く。
今日の朝食は、どうやら姉ちゃんが作ったみたいだな。明日香の苦手な魚が並んでるということは、そういうことだろう。
明日香は、魚の鱗が嫌いなんだ。本人曰く、見ると鳥肌がたつとか。ちなみに今朝の焼き魚は皮がきれいに除去されている。
朝食を食べ終えた俺たちは制服へと着替え、それぞれの学校へと向かった。
また今日も下駄箱に弁当箱が…あれ?ない。―――――やったぞ!ついに解放されたんだ!
俺は歓喜のあまりバンザイしてしまった。まわりの奴らが訝しげに俺を見るが、そんなんどーだっていい。
が、そのとき後ろに人の気配、まさか………。俺は恐る恐る振り向いてみた。
「飛鳥くん、おはよう!(はぁと)」
俺の喜びは三秒で打ち砕かれた。なぜなら、朝この場でこいつとエンカウントした場合、まず間違いなく"告白コース"だからだ。
今までの87回中、だいたい半数くらいがそのパターンだった。そうなれば今日はもう授業のほうには戻れまい。…はぁ、また単位が……orz
「あのな結意、何度も言ってるが俺はだなぁ……」
「わかってるよ、朝ごはんとメニューかぶるのが許せないんだよね?だいじょうぶ、今日はアスパラベーコンだから。」
……あれ、会話が噛み合ってない。なんでアスパラの話になってるんだ?
いやそれより、なぜ今朝の我が家の朝食を知ってるような口ぶりを?むしろそっちのほうが問題だろう!
俺がそんなことを思考していると結意は自分のかばんから弁当箱を取り出した。女子のものにしては少々…いや、けっこう大きい。そしてそれを俺はほぼ毎日目にしている。
「はい、約束どおり作ってきたよ!いっぱい食べてね?てへっ☆」
11:3=3 へ?
……いかんいかん、わけがわからずついバ○ボンのパパみたいな表情をしてしまった。これでいいのd…よかねぇ!約束ってなんだ!?
まさか結意のやつ…脳内ではすでに俺と結婚でもしてるんじゃないだろうな?そりゃあ…これだけかわいけりゃあ俺だって断る理由ないし…変態でさえなければ!
「あのさぁ…約束って、なんだったっけ?」むだだろうが、一応訊いてみる。
「もぉ…忘れちゃったの?昨日飛鳥くん帰り道で『明日さ、弁当作ってくれないか?』って言ってたじゃない。だから作ってきたんだよ?いっぱい愛情こめて。えへへ」
―――――まったく心当たりがない。だめだ、こいつの妄想力は半端じゃない。これ以上こいつのそばにいたら何されるかわかったもんじゃねえ!というわけで
「俺は、逃げる!」
「ちょっ―――飛鳥くん!?どこ行くのよぉ!!」
153 :天使のような悪魔たち 第7話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/21(金) 19:15:59 ID:yomVWorA
* * * * *
あのあと俺は図書室に逃げ込んできた。結意のやつ…想像以上に足が速い。だが、もう追ってはこない。まずは一安心だ。
呼吸を整え、近くにあった椅子にかけようとしたそのとき、奥のほうからなにやら声がした。
確かあそこには図書委員の詰め所(?)があったはず…
「ん…はぁっ!ああっ!いいよぉ!もっと、もっときてぇ!」
――――― し こ ー て ー し ―――――
じゃなくて、いったいなんだってんだ!? なにこんなとこで仲睦まじくヤってんだ!? つか誰だ!?
と…とにかくだ!気づかれたらまるで覗き見してたみたいで後味悪い。よし、離れよう。
俺は踵を返し、出口へと向かった。
「ここにいたほうがいいぞ。」
ふいに、後ろから呼び止められた。俺はつい反射的に振り向いてしまった。
そこにいたのは…両耳にピアスを4個ずつ、合計8個も装着している、片隅で椅子に腰掛けて本を読んでいる男子生徒。
「あと20秒くらいであんたに身の危険が訪れる。具体的には、ここを出て廊下を曲がった瞬間に、だ。」
その男子生徒はいきなり予言めいたことを告げてきた。うーん…なんか、説得力あるような……ないような…やっぱあるような…。
とりあえず俺はその男の言ったとおりに残ることにした。そして俺は至極当然な質問を彼に投げかけた。
「ええと…とりあえず、君は誰なんだ?」
154 :天使のような悪魔たち 第7話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/21(金) 19:16:30 ID:yomVWorA
数十分後―――――
「あそこの部屋、騒がしかったろ?あいつらいつもそこでヤってるんだ。朝っぱから元気だよなぁ。見張りをやらされてる俺の身にもなってみろっての…ったく。」
「あ、ああ。迷惑な話だな。」
「だろ?でさ…」
彼―佐橋 歩という―はあれから俺に延々と愚痴をこぼしていた。そうとうたまってんな…鬱憤が。
詰め所にいたのは環 左京って女子と、その弟の右京っていう男子らしい。俗に言う近親相姦ってやつか、初めてみた。…あれ、なんか既視感が?
♪みーあげたーならーよぞらをきりさーいてーかーけー ピッ
「もしもし…ああ、光か。今図書室。……そう、また見張りだよ。…ああ。じゃ。」
ピッ
「…悪いな、約束があったんだ。もし暇なら、俺の代わりに見張りをしてくれないか?」
「―――――え?」
「ちなみに今外に出ればもれなくあんたにさっき言った身の危険がくる。」
……それって、新手の脅迫か!?
「いや…終わったみたいだ。なんでもない、忘れてくれ。じゃあな。」
そういうと佐橋はさっさと図書室を出て行ってしまった。と同時に一時間目の終わりを告げるチャイムが鳴る。
…俺も戻るか。なんかあの、あとの濁し方がすさまじく気になるが…まあいい、出よう。
そして一歩踏み出した。……いない。どうやら佐橋の予言は外れたみたいだ。これで安心して戻れる。
「み つ け た よ ?」
―――――背後から声。マイナス20度くらいの、ひんやりとした声だ。それだけなのに……なぜかとてつもなく怖い!ゆっくりと、振り向いてみる。
そこにいたのは、結意だった。とてもにこやかな笑顔だ…だけど、なんか背に般若背負ってる気がしてならない。小学生ならきっと恐怖のあまりガクブルしてしまうだろう。
「どぉして逃げるのかなぁ?せっかく作ってきたのに…ねぇ、これはなんなの?」
そういうと結意はいつの間にやら持っていたもう一つの弁当箱を俺に突きつけた。それは、けさ明日香が作ってくれたものだった。
「飛鳥くん…わたし、言ったよね?妹ちゃんと話しちゃだめだって。なのに…なにこのお弁当箱、あの女の匂いがぷんぷんするよ?どういうことなのかなぁ?
…ねぇ、答えてよ!?」
…俺の頭は混乱していた。さっきからこいつはわけのわからんことばっか連呼しやがって…。今まで遠まわしに…いや、ソフトに断り続けてきたがもう限界だ!
もういい…この際はっきりと言ってやる!
「…なんでお前にそんなこと言われなきゃなんないんだ!黙って聞いてりゃ調子に乗りやがって…そうだよ、俺はお前がだいっ嫌いだ!
いっつもいっつもストーカーまがいなことしやがって!そんな何入ってるかわかったもんじゃない弁当なんか食えるか、気持ち悪い!
金輪際俺に近づくな!もう顔も見たくねえ!わかったな!」
一気にまくし立てる。………結意はただ呆然としている。俺は返事を待たず、半ば逃げるようにその場をあとにした。
155 :天使のような悪魔たち 第7話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/21(金) 19:17:03 ID:yomVWorA
* * * * *
「うそ…だよね。だって、好きだって…愛してるって言ったじゃない。何度も何度も…えっちだってしたじゃない…。
ねえ、何がいけなかったの?私、なにか悪いことしちゃったんだよね。だから飛鳥くん怒ってるんだよね?
…やだよ。飛鳥くんに捨てられちゃうよ…。怖いよ。こんなのやだよ……捨てないでよぉ…。
わたし、なんでもするから…飛鳥くんのためならなんだってできるから…だから…
おねがい…わたしをひとりにしないでよぉ……」