151 名前: ◆6PgigpU576 [sage] 投稿日:2007/03/29(木) 01:44:17 ID:PjZaIhi7

以上です。ようやく終りました…
色々反省点だらけでしたが、次に生かしていければと思っています。
お付き合い、ありがとうございました。
保管庫管理人さん、いつもありがとうございます。

152 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/29(木) 02:29:36 ID:dQaKiL+h
>「加奈ッ!!お帰り!」
ここ見てとあるエロゲーを思い出した。

153 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/29(木) 08:12:25 ID:+pjERbC8
>>151完結乙でした
このスレでは少ない普通のHAPPYEND、二人が幸せになれてよかったです
でも東尉が最後影薄くてちょっとカワイソスw
次の作品もwktkして待ってます

154 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/29(木) 10:30:10 ID:yVywkz9R
イイハナシダッタナー 乙です。
狂うタイプではなく、精神的に廃人化するヤンデレは珍しいかも。

155 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/29(木) 11:25:44 ID:ZiHX2F8R
>>151完結乙です。
お兄ちゃんGJです。
ヤンデレても受け止めてくれる人がいれば幸せですね。

156 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/29(木) 13:01:24 ID:oP0fIjir
>>151乙です。
正ヒロインではない好乃の方が狂気的なヤンデレだったっていうのは珍しいパターンで。
ヤンデレに標的にされる恐ろしさがわかる作品でした。
好乃と東尉のその後も気になる…てか、東尉がヤンデレ化しそうな気がしている俺ガイル

157 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/29(木) 13:31:32 ID:3S2RiwCG
>>151
ついに完結キタ!
というか早くも次回作?

ところで。
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1175095081/l50

前も似たようなな記事があった気がするが、中国では男のために詐欺をはたらくのが流行りなのかね?

158 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/29(木) 23:18:01 ID:ajsdAiMn
>>157
むしろ詐欺を働くのが流(ry

159 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 03:04:49 ID:AUlC+QOZ
なあ、陽太が自分を狂人だって言ってるけどなんでだ?
オレには陽太は好きな娘を守り通した勇者にしか見えんのだが。

160 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 03:22:58 ID:HeXAXwNr
>>159俺は
単純に相手が「妹」であること
or
前作読むと射蔵はかなりのヤンデレ思考だから、
その考えを肯定する自分も「同類=ヤンデレ」ということ
どっちかじゃないかな、と思っている
まあこの辺りは読み手個人々々があれこれ想像して楽しめばいいんじゃないかな

161 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 19:50:22 ID:VkcjW4hz
>>84
使って書いたんだがうpしていいか?
初SSでしかも勢いだけで書いたからはじめのほう載せて評判が悪かったら止めるが

162 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 19:55:11 ID:KjrwoCJ8
Come ooooooooooonnnnnnnnnnnn!!!!!!!!!!!!

163 名前:題名未定[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 19:57:50 ID:VkcjW4hz


「誠一さん・・・」
そう呟くと愛しい男の写真に目を落とした。

神坂真奈美は新興住宅地に住む主婦である。
もう30の声が聞こえてくるが見た目はまだ20代前半といったところだ。
そんな主婦が一人で新築の一軒家に住んでいる。

‐かつて夫が買った家。‐

「誠一さん・・・まだ帰ってこないのかな・・・?」
もう一度そう呟くと一人静かに台所へと向かった。

第1章

それは2年前のことだった。

「あなた~!!」
周りの奇異の視線を気にすることなく大声で叫びながら
まるで10代の少女のような快活さで真奈美は走ってくる。

「やれやれ・・・」
誠一はその様子を見ながら苦笑いを浮かべ
「まるで主人に駆け寄ってくる子犬だな」
と真奈美に聞こえない程の小声で一人呟いていた。

ドンという軽い衝撃とともに抱きついてきた真奈美の体を受け止める。
すると真奈美は顔を上げ少し恨めしげな視線を誠一に送りつつ
「誠一さん・・・今、犬みたいだとか思ってなかった?」
と問いかけてきた。
「いゃ~?そんなことないよ?」
そ知らぬ表情で流すが内心は『もしや妻はニュー○イプか!?』
とかなり慌てていた。


164 名前:題名未定[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 20:00:26 ID:VkcjW4hz
「まぁいいや!おなかすいた~ご飯食べにいこ!」
とやや頬を膨らませながらもタクシーを拾った。
車内に乗り込むとガイドブックを片手に片言の英語で
運転手に行き先を告げると真奈美はうれしそうに
「去年とは違うお店にしたんだ」
と言いつつ手を絡めてきた。

真奈美と誠一が結婚して1年経つ。
その間誠一は新規の事業を任され新婚だというのに
ろくに家を省みることが出来なかった。
だが妻はそんな夫をかいがいしく支え続けた。
なんとか仕事が一段落しやっと長期の休暇がとれ
今まで構ってやれなかった妻に対する罪滅ぼしよろしく2度目の新婚旅行にやってきていたのだ。
行き先は去年と同じタイ・バンコクだ。
『どこでもいいんだぞ?』
と誠一は言ったが真奈美は
『去年まわれなかった所も見たい』
と2度目のバンコク訪問となったのだ。

食事を終えホテルに戻り人心地ついていると突然真奈美は
「夜景を見に行こう!」
と言い出した。
「もう夜は出歩かないほうがいいよ。ここは日本とは違って治安が良いわけじゃないから」
と誠一がたしなめるが駄々っ子のように頬を膨らませ
「いや~いくの~せいいちさんとよるのおさんぽするの~」
と言って聞かない。こうなってしまったら誠一は真奈美に勝てない。
『まぁ元々真奈美の為の旅行だしな・・・俺がついてれば問題ないだろ』
と結局妻とともに夜の街を散歩することにした。

ホテルを出てしばらく二人で手をつなぎながらぶらぶらと散歩していると
いつの間にか見慣れない路地に入り込んでしまっていた。
誠一は
『まいったなぁ・・・迷ったか?』
と立ち止まり大通りに戻ろうと妻の手を引き踵を返すと
そこには先ほどは居なかった男たちが自分と妻を取り囲んでいた。
手にはナイフが握られている。
リーダー格らしい男が
「MONEY!MONEY!」
と言っているところをみるとどうやら追いはぎのようだ。
とりあえず財布の中にあった現金を差し出すべく男に近づこうとする
その時ぎゅっと手を握られた。見ると妻が震えている。
「大丈夫・・・俺が守る・・・あいつらも金さえ渡せば危害は加えないだろ」
といつもの口調で語り掛け男たちのほうへ向かっていった。


165 名前:題名未定[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 20:02:17 ID:VkcjW4hz
リーダー格の男に金を渡しその場を離れようとするといきなり周りの男たちが
飛び掛ってきた。逃げようともがくが気づけば全員で誠一を押さえつけようとしていた。
真奈美は一瞬目の前で何が起こったか理解できずにいた。
『最初から逃がしてくれる気は無かったか!』
と誠一は一瞬後悔するがそんなことよりも先に妻を逃がさなければならないと
放心している真奈美に向かい
「何してる!!!早く逃げろ!!!」
と叫ぶ。
が真奈美は消え入りそうな声で
「ぇ・・・でも・・・」
と、まだ放心状態のままだ。
「はやくホテルに戻って警察を!!」
との叫びでようやく我に帰った真奈美は路地を抜け大通りを駆けぬけた
ホテルへ戻ると「警察を!!!はやく!!!はやく!!!」と
泣き叫ぶ。ボーイが慌てて駆け寄ってくるが
日本語が出来ないらしく困惑の表情を浮かべフロントのマネージャーを見る
マネージャーも慌ててフロントから真奈美に駆け寄り片言の日本語で
「どうしましたか?なにかあったのですか。」
と優しく問いかけた。
それを聞き少し落ち着いた真奈美は
「せいいちさんが・・・ろじで・・・しらないおとこたちにかこまれて・・・」
と訴えた。

そこから先のことは真奈美は夢の中の出来事のように感じていた。
その後警察が現場に到着し発見したものは冷たくなった一人の日本人旅行者だった。

大使館の職員が来た。現地の警察が事情を聞きに来た。帰国しマスコミが来た。
その全てが夢の中の出来事
テレビをつければ誠一が写っている。
<・・・死・・・た神坂誠一さんは・・・現地では警察が犯人の行方・・・未だ何の手・・・も・・・いない・・・です。>
『・・・このひとはなにをいっているのかな?』
ぼーっとテレビを見ていた真奈美はニュースキャスターの話している内容が理解できずにいた。
『せいいちさんはもうすぐかえってくるのに』
薄く笑いを浮かべつつ真奈美はそう呟いていた。


あの日から真奈美は全てが壊れてしまった。
自分があの夜夫を連れ出さなければという自責の念が心を蝕んでいき
ついに誠一が死んだことすら認められなくなっていた。

それから真奈美は2年間帰るはずの無い夫を待ち続けた。
なぜか預金通帳には多額の金が保険会社から振り込まれていて生活は苦労をしなかったが
その保険会社から
『このたびは御主人様大変ご愁傷様です。保険に関しましては今回の事案では全額支払われますので・・・』
と言ってきて訳が分からなかった。

第1章終

166 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 20:06:29 ID:VkcjW4hz
オナヌー的勢いで書いた。
推敲も適当だ。反省はしている。

エロ描写も書いたがまだもう少し先になる。

まだ読みたいなら続きうpするが正直言って自信ない。
駄目ならもう少し練り直して出直す。

167 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 20:32:22 ID:aF5Q5RI3
>>166
説明不足な部分は特に見当たらない。話の展開も把握しやすい。
細かい描写は回想シーンであればこれぐらいの量で充分だ。と俺は思う。

数日に分けて投下するなら、次回からトリップとタイトルをつけてもらえたら嬉しい。

練り直したいならば後日投下しなおしてもいいが、俺のリビドーと股間のブツが冷めないうちに頼む。

168 名前: ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/30(金) 20:43:17 ID:VkcjW4hz
>>167
了解
とりあえず続き投下する。
てか一昨日8章くらいまで書いたんだがタイトルが思い浮かばなくて今日まで投下してなかった。

なんかいいタイトルないか?

169 名前:題名未定 ◆IwjmeSx3m6 [sage] 投稿日:2007/03/30(金) 20:46:06 ID:VkcjW4hz
第2章

「まだかな・・・」

台所で夕食を作りつつ一人呟いていると突然玄関のチャイムが来訪者を告げた。
エプロンで手をぬぐいつつ玄関に駆け寄り誰何の声をだすと
<すいませーん。隣に越してきたものなんですがご挨拶に伺いましたー>
と帰ってきた。声を聞き真奈美は息を呑んだ。
その声はこの2年間待ち続けた声に間違いなかったからだ。
慌てて玄関を開けようとするが何かおかしいことに気づく。
『ぇ・・・?隣に越してきた・・・?』
自分たちは新婚でもちろん夫婦仲も円満別居なんて考えたことも無い
それなのに何故隣に超す必要があるのか?
そもそも何故こんなに他人行儀なのか?もしかして別人?
そんな疑問が数瞬頭をめぐったが
『とにかくドアを開けてみよう』
というところで思考が落ちつきゆっくり玄関を開けた。

第2章終

170 名前:題名未定 ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/30(金) 20:47:37 ID:VkcjW4hz
第3章 Side健一

「あぢー・・・もう駄目だわ・・・俺死ぬ」
そう真紀に呟くと俺は少しでも冷たい場所を求めてフローリングの床を這いずり回った。
「・・・」
何も言わずに何か哀れなものを見るような目つきで俺を見る真紀
「そんな目つきで視姦されると俺濡れちゃう!」

・・・ごふ

いきなり鳩尾に蹴りが飛んできた。
プロレスでいうサッカーボールキックだ。
あ・・・頭にも・・・あ・・・もう・・・だめ・・・
そのまま俺は深い闇の中へ落ちていった。

目を覚ますとそこは知らない部屋だった・・・
いや・・・違う・・・そういえば今日この家に引っ越してきて・・・
あれ?俺なんで寝てるんだ?まだ引越しの荷も解ききってないのに
たしか真紀と一緒に来て・・・掃除をしていて・・・暑さに負けてフローリングを這っていたはずだ。
真紀はどこだと探すと部屋の隅で扇風機に向かって「あ”~~~」なんてやってる。
「おーい、真紀さーん。俺なんで寝てたんだ?」
我ながら間の抜けた質問をしてみると真紀は扇風機に向かったまま
「じら”な”-い、あ”づざに脳でも”や”ら”れ”だんじゃないー?」
と返ってきた。
「????」
どうも腑に落ちないがとりあえず目の前のダンボールの山をなんとかしなければならない。
「真紀さーん手伝えー。・・・・てか手伝ってください。ほんとすいませんごめんなさい調子乗ってました。」
ギロリと一睨みされ狼におびえる羊のようにぷるぷる震えながら手伝いを頼む。
うん!我ながらいい情けなさだ!
そんな俺白坂健一が斉藤真紀と知り合ったのは3年前だ
同じ大学に通う真紀とはゼミが一緒でそこで出会った。
『うひょ!セミロング!しかも清純派肉体(悪く言えば幼児体系)!てか巫女服着てほしー!』
などと初対面の時とりとめも無い妄想をしていたことは今でもいえない。
普通に高校に通い普通に大学に入学した普通の俺がこんな可愛い女の子と知り合いになれる
この時ほど俺はこの大学に入学できたことを感謝した時は無かった。
それからはちょくちょく一緒に飯を食ったり午前の講座が無い日はゲーセン行ったりと
夢に描いたようなキャンパスライフを送っていた。

そういう普通を絵にしたような俺が少しだけ普通でなくなった日が来た。
趣味でやっていた株取引である日どこぞの証券会社が数千億単位の誤発注を出したのだ。
しっかりその尻馬に乗った俺は一夜にして数億の金を手にした。
だが喜んだのも束の間だった。
それから先はあまり思い出したくない。
お決まりな事にやたら親戚・親友・同級生が増えた。
どこから嗅ぎ付けたのか分からないが中には幼稚園の同級生なんて名乗る奴も居た。

そんなこともあってか俺はすっかり人間不信になり
密かに恋心を抱いている真紀にまで心にも無いことを言っていた。
「どうせ俺の金目当てなんだろ?!」
「金がなくなれば水が引くみたいにいなくなるくせに!」

171 名前:題名未定 ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/30(金) 20:48:48 ID:VkcjW4hz

そう言い放った俺の頬に突然鈍い衝撃が走る

見ると真紀が綺麗な右フックを入れてきたのだ。
そのまま反動で次は左フック・・・右・左・右・・・
『え?デンプシー?え?え?』
痛みと目の前の可憐な少女が振るう某ボクシング漫画主人公の技に頭を混乱させていた。
猛ラッシュが止み何が起きたのか確かめようと頭を上げると
真紀が泣いていた。俺はさらに混乱していると真紀は
「・・・そう、思われてたんだ、さよなら、もう、はなしかけない」
とだけ告げその場を立ち去ろうとしてる。
それを聞きもう混乱ってレベルじゃなくカオスの状態となった俺は
その手を取り体を引き寄せなぜか口付けをしていた。

次の瞬間体を押され引き離された俺は何故か
「好きだ!付き合ってくれ!」
と愛の告白をした。
自分でも何故この場で告白なんてしたのか未だに分からない
当然場の空気が妙な空気になる。

俺はなんとなく居心地が悪くて
「し・しんけんだぞ!結構マジな告白だ!さっきは心にも無いことを言った!
反省している。付き合ってください!」
ともう一度告白した。
すると真紀は小さくクスクスと笑い出した。が、すぐに真剣な表情になり
「私も・・・健一のこと好きだよ・・・だから・・・さっきの言葉は傷ついた。」
と返してきた。
それを聞き俺は大地に向かって頭をこすり付けた。
「ごめんなさい!」
こすり付けるというか大地に向かって頭突きをしていた。
例えていうなら大地オンヘッドな状態で文字通り全身全霊を使って謝罪の意を伝えた。
それを見た真紀はまた小さく笑い
「もう2度と人を傷つけたりしない?」
と聞き俺は
「もう2度としません!!」
と誓った。

それから俺は少しずつだが人間不信が治っていった。
もちろんそれは真紀の力があったからこそだ。
金のほとんどを福祉施設へ寄付すると周りの自称親戚等もあっという間に去っていったが
俺は再び人間不信に陥ることはなかった。
残った金を使い家を買って一人暮らしをすることを薦めてくれたのも真紀だった。
「環境を変えてリセットするのもいいかもしれないよ」
と言ってこの物件を紹介してくれた。
それから実家を出てこの家に引っ越してきたのだ。

荷解きも一段落し俺は真紀にちょっと気になっていたことを聞いてみた。
「なぁ・・・越してきていまさら何なんだが」
「ん?何?」

172 名前:題名未定 ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/30(金) 20:51:26 ID:VkcjW4hz
「どうして一軒家なんだ?学生なら普通良くてマンションとかじゃね?」
俺のここに引っ越してくる前からの疑問に
「そりゃ・・・もし健一が結婚とかして子供ができて、いざ一軒家を買おうって時に肝心のお金がなくなってるかもしれないじゃない。先行投資よ。先行投資。」
と返してきた。
「俺としては真紀とだったらどこでもいいんだけど・・・」
「馬鹿言ってないで早く片付けるよ!ご近所さんへの挨拶回りもしなくちゃいけないんだし!」
と軽く流されてしまう。それを聞き
『ウツダシノウ』
とへこんでいると
「私の子供は庭付き一戸建ての中で育てたいしね・・・」
と小さく呟く。

脳内にたちまちお花畑が浮かんできた。
『AHAHAHAHAHAHAHA』

第3章終

173 名前:題名未定 ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/30(金) 20:52:50 ID:VkcjW4hz
スマソ
>>169はトリをミスった。


174 名前:題名未定 ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/30(金) 20:56:06 ID:VkcjW4hz
第4章 Side真紀

健一がまた馬鹿なことを考えてる。
私の呟きを聞いた健一が幸せそうに蕩けている。
『かわいい・・・』
素直にそう思う。
まったくこいつは馬鹿である。しかも結構エロい
だがそれ以上に純真で繊細だ。

初めて知り合った時同じのゼミのお調子者といった程度の認識だった。
だがたまに二人で遊んでみたりして健一は周りが思っている以上に純真で
繊細だということに気づいてきた。
それがはっきり分かったのは健一が株で相当な大金を稼いだと聞いたときだった。
それまでいつも笑っていたのに急に無表情になっていった。
たまに一緒に遊んでも異様に口数が少ない。
『あれ?こいつこんなに静かだったかな?』
いつも必要以上に明るい奴が急に周りを拒絶していった。
心配になり
「なんかあったの?」
と聞いても別に・・・と酷くつっけんどんに返される。
いい加減頭にきた私は
「ちょっと何なの?!いい加減にして?私なんか言った!?」
と怒鳴り声をあげていた。
すると向こうも負けじと怒鳴り声で
「どうせ心配してくるのは俺の金目当てなんだろ?!」
「金がなくなれば水が引くみたいにいなくなるくせに!」
と叫んでいる。それを聞き私は

あたまがまっしろになった。

なぜだかほほにつめたいものがつたっていくのをかんじた。

てをつめがくいこむほどにぎりしめている。

『わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない
・・・わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない
・・・わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない
・・・わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない・・・わたしのことをしんじてくれない・・・』

気が付いたら健一のことを無茶苦茶に殴っていた。
手から血が流れている。
健一の血なのか私の血なのかすらわからない。
私は泣きながら健一のことを殴っていた。
刹那、我に返ると血まみれの健一が下を向いていた。
訳が分からず本心とは逆の言葉が口から飛び出す。
「・・・そう、思われてたんだ、さよなら、もう、はなしかけない」
とだけ呟いきその場から一時でも早く逃げようとした。
その時、強い力で腕を握られ体を引き寄せられる。
次の瞬間唇に何か当たった。


175 名前:題名未定 ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/30(金) 20:58:26 ID:VkcjW4hz
何が起きたか理解できず必死にもがいて健一の体を押し返した。
するといきなり

「好きだ!付き合ってくれ!」

今度こそ本当に何が起きたのかまったく理解できなかった。
時が止まったように感じた。
カレが次の言葉をつむぐのを待っていると少しばつが悪そうに
「し・しんけんだぞ!結構マジな告白だ!さっきは心にも無いことを言った!
反省している。付き合ってください!」
その少し間の抜けた様子に思わず笑いがこみ上げてきた。
それを見てカレはポカンとしている。
その様子を見てこちらも気を取り直し
「私も・・・健一のこと好きだよ・・・だから・・・さっきの言葉は傷ついた。」
と本当の気持ちを伝えた。
するといきなりカレは物凄い勢いで土下座をし始め必死に謝ってきた
そんな姿に無性に愛しさを覚えまた笑いがこみ上げてくる。

私の中にあったさっきまでの絶望が嘘みたいに晴れていった
『健一はあんなに酷いことをした私のことを信じてくれている』
そう思うと体の芯のほうからゾクッとしたものがこみ上げてくる。

それから私は健一を全てのゴミから守ってきた。
余計なものを引き寄せる金は施設に寄付させた。
それでも寄ってくるゴミから健一を守る為残った金で家を買うよう薦めた。
もちろん私と健一の愛の巣にする為に。

だから正直さっき健一が私と一緒に居るならどこでも良いと言ってくれた時は飛び上がって喜びたかった。
心のそこからうれしかった。
もうすぐ健一と一緒に暮らせる。
もうすぐ健一と同じ時を過ごせる。
もうすぐ健一の全てが私のものになる。

だけどそうはやる心を押し殺す為わざと冷たくあしらってみる。
そんな私を見てしょげる健一が可愛くてしょうがない。
もう少しいじめてみたい気もするが少しフォローを入れてあげた。
今度は蕩けそうな顔で何かを思い浮かべている。
その姿も可愛くてしょうがない
『だめだ・・・このまま押し倒しちゃいたい・・・』
そう私の中の何かが訴えるのを必死でなだめ引越しの続きをすることにした。

第4章終

176 名前:題名未定 ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/30(金) 21:02:57 ID:VkcjW4hz
とりあえず本日の投下終了。
投下するために改めて見直すとやはり粗が目立つorz

もし続けてもいいなら残りの部分推敲して今度続きうpする。
エロは次回の投下で出るかもしれない。

177 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 21:12:48 ID:MPfOfMe3
173 名前:優しい名無しさん[sage] 投稿日:2007/03/27(火) 14:31:52 ID:CM3TXBj3
知り合う前から足や内臓が悪かった人との遠距離恋愛に耐えられず、東京から大阪まで追いかけて
行って同棲をはじめた自分。
「彼は足が悪いのだから」とか「体調が悪い彼を丈夫な私支えてあげなければ」と頼まれてもいない
のに、自分が夜の仕事に働きに出て足りない分は自分の預金を崩して生活費を出してた。
相手の足が悪くても仕事が出来る様に企業したいという夢をかなえてあげようと思っていたのだけれ
ど、結局は私がヒモにして囲ってた状態。
同棲6年目で色々あって別れて実家に戻っていたのに、別れてからも生活費を送ったり就職祝いを
送ったりしていたのだけれど、ある日ぷっつりと連絡が途絶えた。

約1年後、交通事故で下半身不随の上、心臓に疾患の残る障害者になったと連絡をうける。その
上、大阪から東京に転勤になったと知る。
で、今は彼と結婚して専業主婦になり介護をしながら過ごす日々。

共依存という言葉を最近知りました。
はっきり言って、今は最高に幸せです。相方の仕事に行くときも送り迎えをしてるので、ほぼ行動を
管理できている状態。
ヘルパーさんは頼まないで、すべて私が介護をしています。
自分の親には「まだ若いのだから、別の人生を考えろ」と言われていますが、自分はこれで良いの
ではないかと思っています。


178 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 22:01:36 ID:C884M9nX
( ̄□ ̄;)!!

179 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 22:01:59 ID:46sKetTH
もしかしてこれは、>>84の小説化ですか?ワクテカ

ということは、この二人の仲は男を亡き夫の代用としか見ない未亡人に引き裂かれるのか。ヒドス

180 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 22:39:59 ID:aF5Q5RI3
>>176
エロシーンを出すまで、俺はぐっじょぶなんて言わないんだからな!
つ 乙

しかし、これは修羅場のヨカーンを感じる。
未亡人の一人舞台にはならなさそうだな。wktk



以下は個人的に思ったこと。※スルー推奨

第二章について
>というところで思考が落ち着き~
の表現がよかった。

第三章について
冒頭で真紀がいきなり登場したことにちょっと違和感を覚えた。
「恋人の真紀が目の前にいて~」みたいな、簡単な説明があると良かったかもしれない。
時間軸が現代から三年前にとぶとき、息継ぎみたいなものがほしかった。

第四章について
真紀に萌えた。

タイトルについて
「未亡人~夫は隣に住んでいます~」とか。……いやすまん。忘れてくれ。スレの皆に聞いた方がいい。

以上。


181 名前:無形 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/03/30(金) 23:03:28 ID:hQz4Jvy2
新参です。
短編を書いてみたのでスレ汚しさせていただきます。

182 名前:帰り道 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/03/30(金) 23:04:54 ID:hQz4Jvy2

「彼女が出来たんだ」

学校からの帰り道。僕は裕未(ゆみ)にそう告げた。
「え・・・・・・・」
ずっと傍にいた幼馴染は、虚を突かれたように――呆けた顔をした。
「B組の七霧(なぎり)さん。裕未も知ってるだろう?」
「・・・・・恭(きょう)・・・・くん・・・・・・?」
呆けた様な貌のまま、裕未は僕に振り返った。
「一年のときから・・・・ずっと好きだったんだ。で、ほら、オレってヘタレだろ?
だからさ、想いを伝えるのに・・・・こんなに時間掛かっちまってさ。でも、覚悟を決めて
告白したんだ。そしたら、オレなんかを受け入れてくれてさ」
思い出すと、顔が熱くなる。
はにかみながら、頷いてくれた七霧さんの笑顔。
「自分でもまだ信じらんねーよ。あんなに可愛い子がオレなんかと、な」
思わずにやけてしまう。
「でさ。お前とも付き合い長いし、一番の親友だからな。最初に云っておこうと思ったんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
裕未は何も答えない。
ゆらゆらと、瞳孔が蠢いていた。
「裕未?」
「・・・・・恭、くん・・・・」
ゆらゆらと。
見たことのない貌で。
幼馴染は僕の前に立った。
「いくらなんでも・・・その、じょ、うだん、は、・・・・ないんじゃないかな・・・?」
「え?いや、冗談なんかじゃねーよ」
「恭くんは優しいけど、たまに意地悪とか、悪戯するよね?私、そう云うの今まで気にして
なかったけど・・・・これは酷すぎるよ」
「いや、だから、」
「駄目だよ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ゆ、裕未・・・」
大きな声だった。腹の底から搾り出すような感情の発露。
「恭くん、そんな冗談は駄目!!!絶対に駄目!!!!!駄目なの!!!!!」
裕未の細い手が僕を掴んだ、信じられないくらい力強く。
「いっ・・・・・つ・・・」
思わず声を上げた。
「ねえ!?なんでそんな意地悪するの!?裕未なにか悪いことした!!!!!???
そんな冗談云っちゃだめなんだよ!!!???」
「お、落ち着けよ・・・!」
僕は裕未を振り払った。

183 名前:帰り道 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/03/30(金) 23:07:00 ID:hQz4Jvy2
「確かにオレは悪戯とかするけどよ、これはそんなんじゃねーって。
オレはホントに七霧さんを好きで、付き合うことになったんだ」
「どうして・・・!?どうしてまだそんな冗談言うの!?駄目だよ!
だめ、ダメ、駄目、駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目
駄目なんだからぁ!!!!!!」
裕未が叫んだ。鬼のような形相で。
僕は何も云えない。
どうして冗談だと思うのか?
なんでここまで怒るのか?
疑問はあったが、質するのは躊躇われた。
否――単純に、今の裕未が恐ろしかったのだ。
「ねえ、恭くん」
笑った。
口元だけ。
「もう一度だけ聞くね?」
一歩。
僕に近づく。
「七霧・・・・・さんと付き合うって、嘘、だよね・・・・?」
怖かった。頷いてしまうほうが楽かと思えるほど。
けれど、ここで頷くわけにはいかなかった。七霧さんを裏切りたくなかったからだ。
「――――本当だ」
「・・・・あ」
裕未の動きが止まった。
「あ、は、」
途端――
「あはははははははははははははははっははははははははあはははあはっははははっはは
ははははははははははははははははははははっははははははあはっははははっはははは」
声を上げて幼馴染が笑う。
「そう!そうなんだ!そういうことなんだ!わかった!わかったよ恭くん!!!
“つけこまれた”んでしょ?そうだよ。そうに決まってるよね?恭くん優しいもん。
あの女に騙されてるんだね?」
「お前・・・なに云って・・・・・・」
「大丈夫。大丈夫だよ!恭くんは裕未が護ってあげるから!!!あの薄汚い女から、
絶対に助けてあげるから!!」
「裕未、なに云ってるんだよ!?オレは騙されてなんて、」




「   黙         れ           よ  」




「・・・・・・・っ」
息を呑んだ。
裕未が、こんな言葉を口にしたことはなかったはずだ。
裕未は笑顔。
すごく眩しい、向日葵のような笑顔をつくる。
「恭くん。すぐになんとかするからね?」
僕はなにも云えなかった。

翌日―――七霧さんは、事故死した

184 名前:無形 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/03/30(金) 23:07:56 ID:hQz4Jvy2
以上です。
スレ汚し失礼致しました。

185 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 23:12:41 ID:m2iMjMy6
スレ汚しかどうかは住民が判断する。
だがこのSSはスレ汚しにならない。
GJ!!

186 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 23:33:05 ID:/jxDVPYF
すばらしい出来!次も宜しく

187 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 23:44:00 ID:JqhnYeNb
>>176 >>184
GJです
需要があるない、スレ汚しとか、そういうのは誘い受けっぽいからやめた方がいいよ
>>1読んでその注意を守ればいいんだから

188 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/30(金) 23:59:09 ID:z29mPxWy
>>176>>184
ちょwwwこれは素晴らしいwww!!!
投下はいつでも大賛成です!

189 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/31(土) 00:04:09 ID:z3Y8zWm7
>>184
ええい、生殺しか!そんなところで切られたらそれからどうなったか気になるじゃないか!
続きをカムオオオオオォォォォォォオン!

190 名前: ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 00:30:05 ID:nMJNDJ0F
続き投下

とりあえず今書き上げてる分を手直した。
タイトルは>>180を参考にしてみた。
エロ有


191 名前:夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 00:35:54 ID:nMJNDJ0F
第5章 Side健一

あらかた荷物を片付け終えたあと真紀は俺に
「さてと、そろそろご近所にあいさつ回り行かなくちゃね。」
と促す。
正直まだ真紀と一緒にいたかった俺は
「えぇ・・・後でよくない?それより今は俺たちの愛を語r」
と抵抗を試みるが
「何言ってんのこういう住宅地じゃご近所付き合いは大切なの!早く支度して!」
「うぃまだむ・・・」
と撤退するしかなかったのである。

真紀にせかされノロノロ動き出すと
まずはお向かい次に左隣最後に右隣・・・
『まぁ学生だしこんなもんで良いだろ・・・』
と挨拶する家とその順番を決め向かいの家へと向かった。
そこは老夫婦が二人だけで住んでいた。何事も無く普通に挨拶を済ませ
次の家へと向かう。こちらは中年のサラリーマン家庭といったところか、
対応に出てきた女性は50を少し過ぎたあたりの所謂よくいるおばちゃんである。
犬を一匹飼い高校生の娘と中学生の息子がいるらしい。絵に書いたような普通の家庭であった。
そこで社交辞令程度の挨拶と取り留めの無い世間話を済ませるともう時刻は夕刻を過ぎている。
『少しのんびりしすぎたか?』
と若干早足で右隣の家へ向かう。

「神坂さんか」
表札を見るとどうやら夫婦二人暮しのようだ。

チャイムを鳴らすと「どなたですか~?」
と誰何の声が返ってきた。とりあえず先ほどと同じように
「すいませーん。隣に越してきたものなんですがご挨拶に伺いましたー」
と答える。
しばらく待つと玄関が開き中からエプロン姿の美女が現れた。

第5章終

192 名前:夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 00:42:47 ID:nMJNDJ0F
第6章

ドアを開けると真奈美はしばらくその場から動けなかった。
急に世界が色づいてくる。
2年前から止まったままだった真奈美の中の時間が動き出す。
目の前に2年前と変わらない夫の・・・誠一の姿があった。

「せ・・・せい・・いち・・・さん?」

そう呟くと
頭の中が真っ白になり真奈美は目の前の男性に飛びついていた。
「せいいちさぁぁぁぁぁん!!」
抱きつきながらその名を叫ぶ。

一方健一の方はと言えばいきなり知らない名前を呼び、泣きながら自分のことを抱きしめてくる美女を見て真奈美とはまったく違う理由で頭の中が真っ白になっていた。
『え?ええぇぇぇ???』
と、何が今、起きているのか脳が理解できる範疇を軽く超えている。
素数を数えてみて落ち着こうともしたが無駄だった。
だがこのままで良いわけでもない。とりあえず真奈美を引き離すと
「えぇと神坂さん・・・?ちょっと・・・ええと・・・」
とこれから紡ぐべき言葉を捜す。が、その言葉が見つかるより早く
「なんで他人行儀なの?誠一さん?」
と真奈美のほうが返してきた。その言葉でさらに混乱し言うべき台詞が見つからない。
それを見て真奈美は
「アハハ変な誠一さーん。それよりご飯出来てるよ♪今日は誠一さんの好きなすき焼き作ったんだ。」
と嬉しそうにはしゃいだ。

真奈美はあの日以来毎晩すき焼きを作り続けていた。
まるでそうしていれば誠一が帰ってくるとでも言うように。

真奈美はさらに言葉を続ける。
「ずっと出張だったんでしょ?寂しかったんだから!でもいいのちゃんと帰ってきてくれたしね♪
それにみんなが変なこと言うんだよ?もう誠一さんが死んじゃったとか。誠一さんはちゃんと帰ってきたのにね♪」
一息にまくし立てると、今度は固まっている健一を家内に押し入れようとする。
その動きでようやく止まっていた健一の脳も活動を始めた。
「いやいやいやいや!俺はそのセイイチさん?じゃないですから!俺は今日、隣に越してきた白坂健一という者です!」
とかなり慌てて真奈美の動きを止めようとする。だが真奈美は何を言っているのか分からないといった表情で健一のことを見返すばかりだ。
「とにかくコレ引越しのご挨拶です!つまらないものですが!じゃ!」
と強引に粗品のタオルを渡すと回れ右をし、走って自分の家に入っていった。

その場に残された真奈美はしばらくポカンとしていたが、手に握られたタオルの感触で我を取り戻すと
「せい・・・いち・・さ・・ん?・・・せいいちさん・・・せいいちさぁぁぁんっっ!!!!!!!!」
と泣き叫んでいた。

第6章終

193 名前:夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 00:44:22 ID:nMJNDJ0F
第7章

「あ”~変な人だった・・・」
一人呟きながら健一は家へと戻っていった。
家に着くと真紀が夕食に出前の引越し蕎麦を注文しているところだ。
「おかえりー」
と、真紀が振り返ると健一の様子がおかしいことに気づいた。
「どうしたの?」
と問いかけるが
「いや・・・なんか変なお隣さんだった。それより真紀さん、蕎麦もう頼んだ?出し巻き玉子焼きも追加で頼んどいてね」
と健一は言葉を濁す。その様子に真紀は少し違和感を抱きつつも蕎麦屋に追加注文をしていた。

蕎麦が来るまで残りの荷物の整理をしていると
ふと真紀の鼻腔に嗅ぎなれない香水の香りが入ってくる。
それは健一の体から発せられた香りだった。

『女物・・・?なんで健一の体から女物の香水が?』

「・・・ねぇ・・・健一・・・挨拶に回ってただけだよね・・・?」
いつもより数段低く冷たい声が自分に向けられていることに健一は戸惑いつつも
「んぁ?そうだよ?」
と少し上ずった声で返す。
「なら・・・なんでゴミの匂いが付いてるの・・・?」

『ゴミ???俺ゴミ臭いか???』
と、健一は自分の服を嗅いでみるが特に臭いわけでもない。
強いて言うなら先ほど行った隣家の美女がつけていた香水の移り香がする程度だ。
「えぇ?真紀さんの気のせいじゃない?ちゃんと毎日風呂も入っているしNE♪」
と冗談めかして返すが相変わらず真紀の声は冷たく低い
「嘘つき・・・ゴミの匂いがプンプンするよ・・・どこでそんなゴミに会ったの?」
健一は真紀が何を言っているのか訳がわからなかったが
「えぇ?そんなに言うんならシャワーでも浴びてくるよ。真紀さんも一緒に入る?」
と再び冗談めかして答える。

194 名前:夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 00:45:02 ID:nMJNDJ0F

『普段ならここでリバーにいいブローが入る』
と腹筋を固めこれから来る衝撃に耐えようと身構えるが、いつもと違い今日はいつまでもその衝撃が健一を襲うことは無かった。
『あれ?今日はボディーじゃないのか?』
少し気が抜け真紀のほうを見ると、さっきまでの雰囲気が嘘のように顔を赤らめつつ下を向き小さく≪うん≫と呟いた。
『こ・・・これは・・・もしや・・・!!!苦節3年!やっと・・・やっとOREのJIDAIが来たのではないか!!!』
と心中で猛烈にガッツポーズを決めつつ、クールにいこうと
「じ・じ・じじゃあ、さ・さ・さきにはいっててていりゅから」
完全に動揺した口調でバスルームへ向かった。

第7章終

195 名前:夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 00:45:41 ID:nMJNDJ0F
第8章

シャワーを浴びこれから入ってくるであろう真紀を待つ
すると自然と股間に血流がまわってくる。
「落ち着けマイサン!もうすぐ君の役目はやってくる!」
となだめていると突然ドアが開いた。

振り返るとそこには一糸まとわぬ姿の真紀がいた。
「真紀・・・さん・・・」
美しかった。今までも女性の裸は見たことはあった。が、これほどの美しい裸体を見るのは初めてだ。
「綺麗だ・・・」
素直な感想が口から飛び出す。それを聞いた真紀は顔を真っ赤にして俯いている。
そんな真紀を健一はエスコートするように腰に手を回し、体を引き寄せ軽く唇を合わせた。
「ぅぁ・・・」
と真紀が小さく呻くと唇を離しもう一度
「綺麗だ」
と呟きもう一度唇を合わせ次は舌を真紀の口内に侵入させた。
クチュクチュと音を出しながら口内を貪る。いつの間にか真紀の舌も健一の舌と絡み合っている。

「もぅ・・・なんか・・・きそぉ・・・」
一旦口付けをやめると真紀が切なそうな目で見つめつつ、健一に囁きかけた。
それを見て興奮した健一は少し乱暴に真紀のまだ小ぶりな胸へと指をかける。
「アァっ!」
まるで電流でも走ったような衝撃に真紀は欲情した声をあげる。
その反応に手ごたえを感じた健一はそのまま顔を落とし舌を真紀の乳首へと這わせていた。

「ッン・・・もう・・・イキそッ・・・アァアアァ!!」

真紀はキスと胸だけで軽くイってしまった。
真紀とて経験が無いわけではなかったが、こんなに気持ちのいい愛撫は初めてだった。
少し時間が経ち落ち着いた真紀は
「今度は・・・私がやってあげるね?」
そう言って健一の股間に手を伸ばすとそこはもう天を突く勢いで猛っている。
「あつい・・・健一のここ凄く熱くなってる・・・」
耳元で囁きそのまま頭を腰の辺りに持っていき健一の肉棒を口にほおばった。
ちゅぱちゅぱとイヤラシイ音を立てながら喉の奥まで肉棒を迎え入れる。
その姿と与えられる快楽で健一の欲望は一気にたかまり
「やばい・・・も・・・出そう」
と声を上げる。それを聞いた真紀は一気に根元まで咥え欲望の汁を一滴も逃すまいと吸いたてた。
その強烈過ぎる衝撃に耐え切れず
「うぁっ!」
と小さく呻くと健一は真紀の食道まで犯す勢いで射精した。

196 名前:夫が隣に住んでいます ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 00:47:12 ID:nMJNDJ0F
「いっぱい出たね・・・」
微笑みながら健一を見あげる真紀の口元からは一筋の白くにごった液体が垂れている。
それを見て出したばかりだというのに健一の肉棒は再び天を仰いでいた。
「もう・・・こんなに出したばっかりなのに・・・」
と言いながら立ち上がり真紀は手で肉棒をさすってくる。
「今度は・・・こっちで・・・ね?」
手に握られたその肉棒を自分の秘所にあてがい立位のまま繋がった。
「んあぁぁぁ!!」
繋がった瞬間真紀は背を仰け反らせて健一の背中に手を回す。
健一も真紀の背中に手を回し倒れないよう支える。
そしてそのまま腰を動かし始めた。


腰が動くたびにバスルームに嬌声が響く。
「もっとぉぉもっときてぇ!」
「アッ奥まできてるっなんかっあたってる!!!」
もう何度真紀の中に射したか分からない。
あれから2時間は経とうとしているがその間ずっと真紀と健一は繋がったままだ。
「だしてぇぇぇぇ!!中に!あかちゃんの元いっぱいいれてぇぇぇ!!」
と真紀が声を上げると再び膣内に射精した。

「も・・・もうそろそろあがろっか・・?」
流石に体力と精力の限界を迎えていた健一は、イッた直後の気だるい感覚に包まれている真紀にそう伺いを立てる。
やや不満そうな顔をした真紀だが流石に疲れきった表情の健一を見てしぶしぶ納得した。
「まだ足りないけど・・・いいよ。あとでまたやろ♪」
健一を絶望させる台詞とともにバスルームの扉に手をかける。

だがその動きが一瞬止まり健一を振り返った。そしてまた冷たく低い声で
「もう、ゴミなんかに関わっちゃ駄目よ・・・健一はずっと私が守ってあげる・・・」
と告げた。

第8章終

197 名前: ◆WBRXcNtpf. [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 00:50:44 ID:nMJNDJ0F
しゅーりょー

今書き上げている分はここまで。

なんかエロ描写が薄い
次はもっとこってりしたのを書く

198 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 00:57:31 ID:UbkAri17
>>197
GJ! すき焼き…切ないです

間が空きましたが投下します


否命はパソコンの電源を入れると、真っ先にインターネットエクスプローラーを起動
させる。否命がホームページとして使用しているYahoo!JAPANのサイトが開くと、否
命はまるで憑りつかれたようにあるキーワードを入力した。
検索結果が出ると、否命はマウスのホーイルを廻してページを下に移動させていく。
検索結果のページには紫色の太文字がチラホラ見えていた。否命は既に何度か、この
キーワードで引っ掛かったHPを覗いているのだ。
否命は何ページか移動すると紫色の太文字クリックし、リンク先のHPに飛ぶ。そこ
のページにも所々、否命がクリックした跡が残されていた。
否命はそうやって、しばらくネットサーフィンしていたが、やがてマウスを止めると
モニタから背を向ける形で、椅子の上で少し尻を浮かした体育座りをした。当然、否命
からモニタは見られなくなる。すると否命は丁度、自分の足の間からモニタが見える位
置まで自身の背を曲げた。否命の背は綺麗な円形の曲線を描いている。それは恐らく十
人中十人が「折れてしまうのではないか?」と思うほどに…。
否、それは常人なら確実に背骨を折っているであろう光景であった。否命の背の柔ら
かさは、明らかに常軌のそれを逸している。
そして否命の身体で常軌を逸しているのは背だけではない。それこそは、否命が親戚
に厭われた理由であった。
否命はスカートを捲りパンツを脱ぐと、やおら股間に顔を埋め




股間から天を突くように生えている12㎝ほどの肉の棒を、己の口に咥えしゃぶり始めた。

パソコンのモニタにはスクール水着を着た少女のあられもない嬌態が映っていた。
否命はそれを見ながら一心不乱に本来、女にはついているはずのない「マラ」を口で
慰め続けた。


199 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 00:58:14 ID:UbkAri17
―将軍様ハ齢十三ニシテ 塚原ト伝ヨリ秘奥一之太刀ヲ伝授サレ候
塚原ト伝 将軍様ヲ指シテ 曰ク 体ノ柔ラカナ事 タコノ如シ
背ヲ曲ゲレバ顔 股ニ着キ 自身ノ逸物ヲ咥エル事モ 可ナリト
コノ儀 真実トハ 到底思イ難ク―
北畠具教「天文剣術記」

あるところに、「梓」という名の姉さんと、「否命」という名の妹がいました。二人の
お母さんとお父さんはいませんでしたが、二人はとても幸せでした。
姉さんは本当に妹思いです。
二人の年齢は16才も離れていたので、姉さんはまるでお母さんのように妹の面倒を
見ました。妹はいつも姉さんが傍にいてくれたため、両親がいなくても寂しいと思った
ことは一度もありませんでした。
姉さんは本当に妹思いです。
妹がまだ赤ちゃんの時は、おしめを嫌な顔一つせずに取り替えてくれました。
妹が保育園に行くときは、手をとって連れて行ってあげます。そして妹が保育園から
帰る時も、迎えに来て手をとって家まで一緒に歩いてくれます。
妹が風邪を引いた時は「大学」をサボってつきっきりで看病してくれました。公園や
野原で遊ぶときは迷子にならないようにしてくれます。
妹が転んで泣いた時も、姉さんが直ぐに泣き止ませてくれます。まず、傷口をハンカ
チで拭いて、それから妹をソッと抱きしめ、頭を撫でてくれるのです。
姉さんはなんでも知っていて、なんでもしてくれます。妹は「姉さんに出来ないこと
なんてないに違いない」…そう、思っています。だから妹は姉さんの云う事には素直に
なんでも聞きました。
妹は姉さんが大好きです。それでも、妹は時々、姉さんから離れて一人になりたい時がありました。
妹はなにかにつけて、姉さんに「それは駄目」「さぁ」「ほら、こうやって…」「こうし
なさい」だのと云われるのに飽きたのです。
ある日曜の昼下がり、姉さんが昼飯を作っている隙に妹はこっそりと家を抜け出し、
野原へ行きました。妹は一人になれたのが嬉しくて、普段は姉さんから「服を汚すから
駄目よ」と言われている泥んこ遊びをして遊びました。妹は前々からずっと泥遊びをし
たいと思っていたのです。
広い野原に一人きり…、直ぐに妹は泥だらけになりました。でも、妹は泥遊びを止め
る事はありません。何故なら野原には姉さんがいないからです。「これは駄目!」と妹を
注意する姉さんがいないからです。妹は楽しくなって服が汚れるのもかまわず泥遊びを
続けました。
しばらくすると、姉さんの妹を呼ぶ声が聞こえてきました。
「否命!否命!!ねぇ、返事して!」
ほうら、姉さんが妹の事を呼んでいます。
でも、妹は黙っていました。泥んこ遊びを止めて、野原の茂みにジッと身を潜めてい
ました。姉さんの声は近くなったり、遠くなったりします。でも妹は黙っていました。
声が段々と遠くなっていきます。妹はそこで突然、自分が空腹であることに気がつき
ました。自然と妹の脳裏に、姉さんが昼飯を作っていた姿が浮かびます。
それから姉さんがいつも食後に出してくれるおいしい宇治茶の事が…、その後にいつ
も姉さんが読んでくれる本の事が…、それから野原に連れてって、一緒に遊んでくれる
姉さんの事が…そして姉さんの口癖「否命、それは駄目よ」が妹の脳裏に浮かびました。
そのいつも傍にいてくれる姉さんは、今は妹の隣にいません。姉さんは、妹のこの泥
まみれになっている姿を見たらなんていうでしょうか?
それを思うと、妹は急に心細くなって膝を抱え野原に蹲ってしまいました。
飛蝗が足元でピョンっと跳ねます。風がヒューと通り過ぎていきます。妹の手につい
た泥が乾燥して砂になっていきます。でも、妹はただジッとしていました。


200 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 00:59:04 ID:UbkAri17
姉さんの呼び声がまた近くなってきました。
「否命!!否命!否命ェ、お願いだから返事をしてぇ…」
姉さんの声はドンドンか細くなっていきます。
しまいに姉さんは地面に座り込み泣き出してしまいました。
姉さんは中々、泣き止みません。まるで転んでしまった時の妹のように…、姉さんは
ウェ~ン、ウェ~ンと泣き続けました。
妹はいつも姉さんが自分が転んだ時には、優しく抱きしめて、頭を撫でてくれたのを
思い出しました。すると、不思議と妹の心細い気持は何処へ行ってしまいました。
妹は立ち上がりました。そして、姉さんの前に歩いていきます。しかし、姉さんはあ
まりにも激しく泣いていたので、妹のそんな姿も目に映りません。
妹は姉さんの前に立ち、肩に手を…



置こうとして………妹は色を失いました。

自然と妹の身体に震えが走ります。背筋がツゥーと冷たくなります。妹はまるで凍り
付いてしまったように、動くことが出来なくなってしまいました。妹はただ呆然と姉さ
んの前に立ちすくんでいます。

妹はある日、姉さんに連れられてお寺に行った事がありました。そこで妹は住職から
恐ろしい「否天(アスラ)」の木像を見せられました。否天とは三面六臂の姿をし、この
世を呪って天を睨んでいる恐ろしい魔羅(悪魔)です。妹はそれを見た時、恐怖のあま
り思わず泣いてしまいました。
住職はこの否天は釈迦如来の慈悲によって、魔羅から仏世の守護神になったのだよ…
と妹に説明しましたが、それでも妹は恐怖に身体を震わせつづけました。妹は恐かった
のです。その否天のまるでこの世の全てに絶望し、憎んでいるかの如き瞳が…。



泣いている姉さんはそれと全く同じ瞳をしていました。

妹の歯がガチガチなります、顔が真っ青になります。自分は何かとんでもない間違い
を犯したのではないか…そんな思いが妹の恐怖をますます煽りました。妹の震えは止ま
りません…。妹の歯がガチガチなります。
姉さんがその妹の歯がガチガチなる音に気がついて、顔を上げました。

その瞳はいつもの優しい姉さんのものでした。

そして次の瞬間、姉さんは妹の事をギューッと抱きしめていました。妹も、さっきの
姉さんの瞳はきっと見間違い…っと思って、姉さんの暖かい温もりに身を委ねました。
「否命!!嗚呼、否命!!!心配したのよ!?ねぇ何処に行ってたの!?否命が無事で
本当に良かったわ!!本当に、本当によ!!!」
姉さんの喜びようは大変なものでした。
「否命、心配したのよ!?いったいどうしたの…嗚呼!!泥遊びがしたかったのね!?
いいわ…これからは…、その代わり絶対に私から離れないでね!!お願い、他のなにを
してもいいから、これからは…ねぇ否命、お姉ちゃんと約束して!!」
姉さんは、そういって妹に小指を差し出してきます。いえ、正確には姉さんは妹に指
を「突きつけて」います。果たして妹には、その指を「取らない」と言う選択権が与え
られているでしょうか?


201 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 00:59:59 ID:UbkAri17
「否命、お願い!お姉ちゃんと約束して!!もう、私から離れないって約束して!ねぇ
否命…もう私の元から離れていかないで!!」
姉さんの妹を抱きしめる力が段々と強くなっていきます。
「否命!否命!!もう私から離れないでッ!!約束よ!!」
妹はなんだか恐くなってきました。姉さんの爪が妹の首筋に食い込みます。妹の首か
ら血が滴り落ちました。それでも姉さんは妹を抱きしめる事を止めません。
妹の眼前には姉さんの小指が突きつけられています…。
「………」
妹は恐る恐る姉さんの小指を取りました。すると姉さんは万力の如き力で妹の小指と
自身の小指を絡め、ニッコリ笑っていいました。
「約束よ、否命。もう、絶対に私から離れないでね…絶対によ!!」
妹は首をコクッと動かして頷きました。なんだか急に口が動かなくなってしまったの
です。ですが、それを見ると姉さんは再び優しげな瞳を浮かべて言いました。
「さぁ否命、お家に帰りましょう。今日は否命の大好きなカレーなのよ」
妹はその日、不思議な事に大好きなカレーが出されたというのに、それがどういう味
をしていたのかサッパリ分かりませんでした。
妹が三歳と八ヶ月の時のことです。

妹が四歳を迎えた頃、妹は恐い夢を見るようになりました。
その夢の中には、決まっていつも恐い摩羅(まら-悪魔-)が出てきます。白装束を
身に纏い、真っ黒く長い髪を乱し、顔に角を生やした恐ろしい摩羅です。
その摩羅の瞳に射すくめられると、妹は恐くて身体が動かなくなってしまいました。
恐ろしくて妹は目をあけることも出来ません。すると摩羅は妹の身体を、白装束から伸
びてきた幽鬼のような手で撫で回すのです。
妹はその冷たい手の感触に背筋がゾッとしましたが、あまりにも摩羅が恐いのでただ
ジッと目を瞑って気持ち悪さに耐えていました。
摩羅はそうやって一通り妹の身体に手を這わすと、パジャマのズボンを脱がして、今
度は舌を出して妹の足を唾でベトベト汚していきます。
摩羅はその後、必ず妹のパンツを脱がします。そして摩羅は、妹のコカンにダランと
ぶら下がっている「マラ」を口に含みとジュボジュボと音を立てて、唾を垂れ流しなが
ら、なんとも美味しそうにしゃぶるのです。
妹はその時、不思議な感覚に襲われます。むず痒いような、くすぐったいような、熱
いような、寒いような…そんな感覚が妹のマラを中心に広がっていくのです。

恐い夢を見た朝は、妹は必ず倦怠感を覚えました。なんとなく身体に力が入らないの
です。夢の事を思い出すと妹は思わず、身体をギュッと縮めてしまいます。
そんな妹の様子を見て姉さんが、
「否命、どうしたの?」
と、聞いてきたので妹は恐い夢を見る事を話しました。
最初こそ姉さんはニヤニヤしながら、妹の恐い夢の話を聞いていましたが、段々と姉
さんの顔は強張っていきます。目は吊り上り、口元は歪になっていきました。
しまいには姉さんの顔は凄まじい憤怒の色に覆われてしまいました。
「否命、その話は本当なの!!」
姉さんは妹をガクガク揺すり、血走った目で、唾を撒き散らしながら妹に迫ります。
その姿は否天のそれとまったく同じでした。妹は魔羅以上に姉さんの様態が恐くて思わず、
「嘘だよ…」
っと、言ってしまいました。なんだか「本当だよ」と姉さんに答えたら、もっと恐ろ
しい事になるような気がしたのです。
しかし、それを聞いても姉さんの顔は元には戻りませんでした。姉さんは大学に行く
のも忘れて、妹を連れてホームセンターに行きました。
そこで姉さんは色々なものを買いました。
窓が開かないようにする装置や…ドアが開いたらブザーが鳴る機械や…ダミーの監視
カメラ等です。
姉さんは家に帰り、それらを残らず仕掛けました。仕掛け終わった姉さんはもう恐い
顔をしていません。姉さんはもう一度、仕掛けた装置を見直すと、
「これなら大丈夫ね」
と、満足そうに言いました。妹も姉さんのその顔を見ていると、なんだか大丈夫そう
に思えてきます。


202 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 01:00:43 ID:UbkAri17
でも、全然大丈夫じゃありませんでした。
妹はその後も、たびたび恐い夢を見ました。夢の中に出てくるのは、やはりあの白装
束を着た摩羅です。そして最後は、必ず妹のマラ(陰茎)を美味しそうにしゃぶりました。
妹は姉さんに相談しよう…と思いましたが、出来ませんでした。妹は姉さんのあの時
の血走った眼を思い出すと何も言えなくなってしまうのです。妹は一人で摩羅の恐怖に
怯え続けました。
妹の恐怖は身体の異常という形で現れました。妹はどうしたわけか、ご飯をみても、
おやつのケーキを見ても、大好きなカレーを前にしても、全然食欲が湧かないのです。
妹は見る間に痩せこけていきました。姉さんは、何か困ったことがあったらなんでも
相談して…と言いましたが、妹は勿論相談できるわけありませんでした。
妹はますます痩せていきます。

見かねた姉さんは、ある日、妹をお寺に連れて行き、そこの住職に妹を預けました。
姉さんは神仏など信じていませんでしたが、それでも何か起こる事を期待したのです。
住職は怯えている妹を居間に通すと優しく、妹に「何か悩みがあるのですか?」と、
尋ねました。妹はしばらく俯いていましたが、住職が「秘密は守りますよ。遠慮なさら
ずに貴方の悩みを打ち明けてください」と言いましたので、妹はホッとして言いました。
「ジュウショクさん、魔羅って、どうやってタイジするの?」
それを聞くと、住職はその優しげな顔を僅かに歪めました。しかし、直ぐに優しい顔
に戻って「貴方の身体のことは梓さんから聞いていますよ」と言い、それから住職は、
「貴方はマラを去勢したいのですか?」と妹に尋ねました。
「キョセイ?」
「私は修行のため、マラを小刀で切り落としました」
「そうしたら、もう魔羅は出てこないの…?」
「はい、切り落としたのですから」
それを聞くと妹の顔がパーッと明るくなりました。
その後、住職は顔を明るくした妹に去勢は子供が一人で出来るものではないよ…と、
注意しましたが、恐い夢の解決策を見つけて有頂天になっていた妹には聞こえません。
私達が見上げている天のその上に、更に八つの天があります。その最上の天を有頂天
といいますから、有頂天になっている妹がもう何も聞こえなくなるのは当たり前のこと
でした。
妹の脳裏に浮かぶのは、魔羅をキョセイ(退治)した自分の勇ましい姿です。


203 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 01:02:26 ID:UbkAri17
その夜、摩羅が妹の前に現れた時、枕の下にコッソリ手を入れました。妹の指先にヒ
ンヤリしたものがあたります。それは妹が寝る前に隠しておいた包丁です。これがあれ
ば自分は摩羅をキョセイすることが出来る…、妹は枕の下の包丁の柄をギュッと握りま
した。
しかし、摩羅は妹の倍は大きい身体をしています。それに力もとても強そうです。も
し魔羅と取っ組み合いになったり、キョセイしそこねた場合は、逆に妹のほうが摩羅に
殺されてしまうかもしれません。
ですから、妹はチャンスを狙いました。
一撃で確実に摩羅をキョセイするチャンスです。
摩羅はいつものように妹の身体に指や舌を這わせていきます。しかし、この時点では
まだ駄目です。今、ここで妹が枕から包丁を取りだせば摩羅はそれに気付いてしまうで
しょう。そうすれば摩羅は妹に対して何をするか分かりません。ですから、妹は摩羅の
おぞましい感触にジッと耐えていました。
そして、妹の狙っていたチャンスがやってきました。魔羅は妹の身体に指を這わせる
のを止めると、いつも通りに妹のズボンとパンツを脱がしマラをしゃぶり始めました。
摩羅の髪は長いので、摩羅が妹のマラをしゃぶるために顔を舌に向けると、髪がダラ
ンと垂れ下がり摩羅の視界を塞いでしまうのです。これなら、妹が枕の下から包丁を出
しても摩羅が気付くはずはありません。
妹は包丁を枕からそっと取り出しました。そして包丁を高く掲げると、それを摩羅の
首に渾身の力を込めて振り下ろしました。
(ヤッ!!)
包丁と摩羅の首がゴンっと鈍い音を立ててぶつかります。


しかし、それだけでした。四歳の少女の細腕で、摩羅の首が断ち切れるはずはありま
せん。包丁は摩羅の首に確かに命中しましたが、その反動で包丁は妹の手から離れ、何
処かに飛んでいってしまいました。
摩羅の首と胴体は未だに繋がっています。妹の包丁は、摩羅の首に食い込みもしませ
んでした。妹の顔に死相が浮かびます。
すると、摩羅はそんな妹の怯えきった顔を見ると、嬉しそうに口元を歪ませて笑いだしたではありませんか!
「~~~~~~~~~~~~~~~!!」
摩羅は妹を見据えながら、ケタケタと可笑しそうに乾いた笑い声をあげています。
妹はあまりに恐くてお漏らしをしてしまいました。妹のマラから黄色い小便が、勢い
よく流れ出ました。
妹の布団に黄色いシミが広がります。すると、摩羅はそのシミに口をつけて小便を吸
い始めました。
妹は呆然としながらそれを見るより他はありません。妹は自分が摩羅に殺されてしま
う事を半ば確信しました。シミを吸い終わった摩羅は妹をニヤニヤしながら、眺めてい
ます。


っと、その時――――唐突に摩羅の首筋からツゥーっと何かが垂れ落ちてきました。
それは摩羅の白装束に赤い赤いシミを広げていきます。


204 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 01:03:13 ID:UbkAri17
「えっ?」
その間の抜けた摩羅の声が合図であったかのように、摩羅の首から血が噴水のように
噴出してきました。何処か冗談みたいな光景です。
妹の布団に赤い染みがドンドン、ドンドン広がっていきます。
「ぁっ・・・・・・・嗚呼アアアアアア!!」
摩羅は悲鳴を上げ、血を撒き散らしながら妹の部屋から転がるように逃げていきました。
(やった!!)
妹はそこで目が覚めました。
しかし、何処か、何かが変です。
まず妹の下半身は裸でした。布団には黄色いシミが確かにあります。妹のマラには得
たいの知れない粘液がこびりついています。
そして、赤いシミが妹の部屋を真っ赤に染め上げていました。
赤いシミは妹の部屋から廊下へと繋がっています。妹は部屋に落ちていた包丁を握り
しめながら、恐る恐る廊下の赤いシミを辿りました。
「ァッ・・・ァァァァ」
何処からともなく、そんなモータの駆動音のような呻き声が聞こえてきます。赤いシ
ミを辿るにつれ呻き声は段々と強くなっていきました。
妹の包丁を握る手に力が入ります。
やがて、赤いシミは姉さんの部屋の前で止まりました。呻き声もその中から聞こえて
くるようです。
(姉さんが危ない!)
妹は自らの危険も省みずに姉さんの部屋のドアを開けました。
「否命…、こんな時間にどうしたの?眠れないの?」
姉さんは突然、真夜中に部屋に入ってきた妹を見て怪訝そうな顔をしていいました。
般若の面を被り、髪を解いて、白装束を着て、首から血を噴出させながら…。



それから三時間後、姉さんは運ばれた病院で輸血が間に合わず、出血多量で息を引き
取りました。
妹が四歳と二ヶ月のことです。


205 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 01:04:05 ID:UbkAri17
妹は親戚の家に引き取られました。
しかし、妹は新しい家に馴染めないこともあって、直ぐにホームシックを起こしてし
まいました。
妹は姉さんが恋しくてたまりませんでした。
いつも自分の傍にいてくれた姉さん…、泣いている自分をあやしてくれた姉さん…、
本を読んでくれた姉さん…、妹は失って初めて姉さんの本当の大切さに気付きました。
しかし、現実はもうどうしようもありません。妹は親戚の家の子として生きていくし
かないのです。妹もそのことを幼心に分かっていました。でも、分かっているから割り
切れるか…と言われると、それは違います。
妹はどうしても割り切れませんでした。ですから、妹はどうしても新しい家を、自分
の家と感じることが出来ません。割り切らなくちゃ…と、思うのですが、そう思えば思
うほど新しい家に馴染めなくなってしまうのです。
そんなある日、妹は、ふと「姉さん」が自分のマラをしゃぶっていたのを思い出しま
した。それからあの時の不思議な感触を…。
すると妹のマラは二倍ほどの大きさに膨張し、まるで天を付くように立ち上がり、ビ
ンビンに硬くなりました。
再び、妹のマラにあのむず痒いような感覚が広がります。そして妹の身体に、そのマ
ラを触りたいような、擦りたいような…マラに何かしらの刺激を与えたい衝動が湧き上
がってきました。
妹は、その衝動にしばらく戸惑っていましたが、やがて姉さんがそうしたように、妹
もマラを口に含みました。
「お姉ちゃん…」
そして、妹は思わず涙を流しました。
そこには、もう決して感じられないと思っていた姉さんの「温もり」があります。姉
さんの温もりはマラを通じて妹の身体全体に広がっていきました。
背筋が痛くなってきましたが、それでも妹はマラを口に含むのを止めません。妹は、
まるで姉さんに抱きしめられているような安らぎを、全身で感じていたのです。
妹は嬉しくて、嬉しくて、涙をひたすらに流し続けました。
遠くに行ってしまったと思っていた姉さんが、実はこんなに近くにいるんだ…、妹は
なんだか可笑しなって笑ってしまいました。マラを口に含んだまま、フフフ…と心底幸
せそうに笑い声を上げました。
そして、妹はこの新しい家で生きていく決心をしました。
確かに、この家は自分の家ではありません。姉さんに買ってもらったヌイグルミも、
赤いシミのついた布団も、自分の成長を姉さんが刻んでくれた柱もありません。
だけど、それがなんだというのでしょう?
もう、妹は何処にいっても姉さんと一緒なのです。もう、妹は姉さんと離れることは
ないのです。そしてこの家にも姉さんは確かに存在していました。
もう、妹は寂しくなんかありません。妹はこうすることでいつでも、姉さんを感じる
ことが出来るのですから。
妹はこの新しい家で、きっと幸せにいきていけるに違いありません。


しかし、マラを口に含んでいるのを親戚に見つかった妹は…その三日後、再び自分の
家へと追いやられてしまいましたとさ…。



206 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 01:04:49 ID:UbkAri17
------------------------------------------------------------------------------


「ふぅ」
一仕事終えた否命は、顔を上げると手を組んで「ん~」と呻き声を上げながら、背筋
を上に伸ばした。そのまま、上体を左右に倒していく。否命のこの体勢は激しく背筋に
負担をかけてしまうので、念入りにストレッチを行わないと、背筋を痛めてしまうのだ。
っと、その時、
「二分二十四秒。早漏なのね…、貴方って」
なんの前触れなく、唐突に否命の背後から声がかかった。
「~~~~~~~~~!!」
思わず悲鳴を上げかけてしまうほどビックリして後ろを振り向いた否命の視線の先に
は…普通にソファーでくつろいでお茶を飲んでいる例の財布を盗んだ少女の姿があった。
自分は確かに鍵もかけたし、防犯ブザーの電源もいれたはず…なのに…なんで?と固ま
る否命に少女はニッコリと微笑みながら言った。
「自己紹介が遅れたわね。私の名前は来栖凛(くるす りん)。宜しくね、灘神影流・脱
骨術の使い手さん」


207 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 01:05:42 ID:UbkAri17
投下終了です

208 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/31(土) 01:12:58 ID:nMJNDJ0F
GJ

209 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/31(土) 01:51:43 ID:z3Y8zWm7
>>197
健一がすごく、ものすごく、残暑厳しい夏に冷たいカフェオレを飲んでいる人を羨ましいって思うぐらいに、羨ましい。
誰か俺を亡くなったダンナさんと勘違いしてくれる人がいないだろうか。……いないよなぁ。


以下、個人的な感想。※スルー推奨
説明不足な部分が少なくなってる。あとは細かい描写なんかを入れるともっと内容が濃くなる。
重要な一言・アクションの前や、緊迫感のあるシーンでは地の文を多く入れるといいってじいやが言っていた。
そして、それを見極めるのは職人の道を行き文を司る者だっておばあちゃんが言っていた。

先日から色々言ってすまんかった。この辺にしときますわ。


>>207
俺にレズ萌えは無いというのに、なんというキモアネか……
しかし、ふたなり注意報が以前から発令されてたのは否命が両性具有者だったからか。
つか、体柔らかいな。否命っち。

210 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/03/31(土) 05:52:42 ID:oJy4J/ZK
おはようございます。
更紗置いときますね。
http://imepita.jp/20070331/211260

211 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/31(土) 06:11:41 ID:iCCqFoB1
これなんて投下ラッシュ?

とにかく全てにGJを

212 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/31(土) 13:41:23 ID:i5ax/Si3
ttp://www30.atwiki.jp/yandere/pages/1.html

vipをうろついてたら、こういうの見つけた。
キャラ設定見てて思わずニヨニヨしそうになった。

213 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/31(土) 23:13:12 ID:Zd+5VeT1
ところで、ヤンデレって、
心を病んでしまった「ヒロイン」であって「ヒーロー(男)」は含まないのでしょうか…?
主人公(男)が病む話も面白いような気がしますし、それでしたら衆道も書けるので創作の
幅が広がるかと…。

214 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/31(土) 23:16:36 ID:oJy4J/ZK
需要があればそれもまたありじゃね?
俺はヤンデレBLなんか断じて認めないが

215 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/31(土) 23:46:34 ID:B2TxszwP
個人的に男のヤンデレは萌えない

216 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/03/31(土) 23:58:10 ID:z3Y8zWm7
女性視点で語られる物語ならば、アリかな。

俺もBLはだめだわ。

217 名前:51 ◆dD8jXK7lpE [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 00:18:15 ID:cYfvBBu7
ちょっと長いですが投下します

218 名前:51 ◆dD8jXK7lpE [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 00:23:29 ID:cYfvBBu7
鬼葬譚 第二章 『篭女の社』

よんばんめのおはなし
==============================
人間の価値は、その人間の死をどれほどの人間が悼むかで
計る事ができるとは、一体誰の言葉だったろうか。
父の葬儀はしめやかに、だが多くの人に悼まれながら過ぎて行った。
父が良く相談に乗っていた方々、氏子の方々、それに…
良く神社に遊びに来ていた子供達までも、葬列に並んでいた。
そういう意味で言うならば、父の価値はきっと高かったのだろう。

――唯一の肉親であった、あたしにとっても。


父は、殺されていた。

心臓を刃物で一突き。それが致命傷だったらしい。
手荷物から金銭類がなくなっているため、恐らくは小金目当ての
賊の仕業だろうとの話だった。

何故。どうして。

父が、何かしたというのだろうか。
こんな理不尽な最後を父が迎えなければならない理由が
どこにあったというのだろうか。
葬儀の日以来、あたしの脳裏をめぐるのは答えのない
その問いだけ。


219 名前:51 ◆dD8jXK7lpE [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 00:24:27 ID:cYfvBBu7
そしてその日も…あたしは、何をするでもなく社の縁側で
ぼうと空を見上げていた。
空はからからに晴れ、もう夏の陽気を降り注いでいる。
けれど、その陽気ですらあたしの心に掛かった澱みを
掃う事は出来ない。
頭をめぐる『何故』、という問いかけ。
…いや、それはもう問いかけですらなく、あたしの心を縛りつけ、
深い闇の中に沈める『呪詛』にも似ていた。

だからだろうか、あたしは目の前に人影があることにすら
気がついていなかった。

「…よう」
「…」
「…おい」
「…」
「おい…紗代!」
「え…?」

あたしを呼ぶ声に気がついて、ようやっと顔を上げる。
逆光に遮られ、影になった男の顔。

「儀…介」

ぼぅと、熱病に浮かされたかのようにその男の名を呼ぶ。


「…なにかよう? ごめん、いま少し疲れてるから…」

あたしは儀介にそれだけ言うと、室内に戻ろうと
立ち上がる。今は、とにかく一人でいたかった。

220 名前:51 ◆dD8jXK7lpE [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 00:25:10 ID:cYfvBBu7
…だが。

「待てよ…!」

儀介はそんなあたしの手を掴み、あたしを引き止める。
…ああ、そういえば父が死んだあの日も、こんな感じで
儀介に無理やり呼び出されたのだっけ。
あたしは、何故か急にそんなことを思い出した。
…もっとも、今はそれもどうでもいい事か。

「…ごめん、疲れてるの…放して」

あたしは、儀介の顔も見ずにその手を振り払おうとする。
だが、儀介は手を放さない。それどころか、より強くぎゅうと
あたしの手を握り返した。
あたしは何も言わずに手を振り払おうとさらに力を入れる。
それでも、儀介はあたしの手を握る力を弱めようとはしない。

「…放して、お願いだから」

儀介のほうを振り向き、あたしは懇願するように言う。
…儀介は、そんなあたしを真っ向からじいと見据えた。
あの日…あたしに向けたあの視線そのままに。
あたしはそんな儀介の視線に居た堪れなくなり、逃げ出す
ように走り出そうとする。
だがそんなあたしを逃がすまいとするかのように、儀介は
ぐいとあたしの手を強く引き返した。
逃げようとすれば逃げようとするだけ、儀介の手の力は強くなる。


221 名前:51 ◆dD8jXK7lpE [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 00:26:22 ID:cYfvBBu7

なんなのよ…!

だんだんとあたしはそんな儀介に苛立ちを覚えはじめていた。
一人でいたいのに、そっとしておいて欲しいのに…ッ!

「…いい加減に放してよ! なんなの?! 一人にして欲しいのよ!」

幾度かそんな事を繰り返すうちに、とうとうあたしの癇癪が炸裂する。
そんなあたしに、一瞬儀介は驚いたような顔をし、だがすぐにむっと
した顔になると、あたしを睨んだ。

「あのな! そんな落ち込んだ姿見せられてな、はい、わかりました
なんて帰れると思うのかよ?! 人が心配してるってのに…」

なんて…勝手な。
儀介の勝手な言葉に、あたしの頭にかぁっと血が上る。

「判らないくせに!あたしの気持ちなんかわからないくせに!」
「わからねえよ! 何も言わないで、一人で塞ぎ込んでちゃさぁ!」

腹が立つ。
こいつなんかに、こんな奴に何が判るって言うんだ。

「じゃあ、教えてよ! 答えてよ!
どうしてお父さんは殺されなきゃいけなかったのよ?!」

気が付けば、あたしは儀介に向かって激昂していた。

222 名前:51 ◆dD8jXK7lpE [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 00:27:12 ID:cYfvBBu7
「お父さんが何かした!?
お父さん、殺されなきゃいけないくらい悪い事したのかなぁ?!
お父さんのどこに殺されなきゃいけない理由があったのかなぁ?!」

興奮した頭は、冷静な判断をさせてはくれない。
あたしは儀介に向かって叫び続ける。
叫ぶあたしの目じりがどんどんと熱を持っていく。

「教えてよ…どうして…お父さん…おとうさんがぁ…
う…うぇっ…ぐっ…うぇぇぇ…」

最後の言葉を紡ぐ前に、零れ出した、涙。
堪えきれない感情の高ぶりに、あたしはもはや泣く事しか出来なかった。

「ふぇ…ぐ…おとーさん…ひぐ…おとぉさぁん…うぇっ…」

嗚咽が、涙が、止まらない。
あたしは、まるで幼い頃のように泣きじゃくり続けた。
…そんな時だった。
ふわりっ、と温かい感覚が私を包む。

「…?」

涙に濡れた顔をあげる。
そこには…あたしを優しく抱きとめる儀介の姿があった。

223 名前:51 ◆dD8jXK7lpE [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 00:28:02 ID:cYfvBBu7
「…辛かったよな。苦しかったよな。昔からお前、父親っ子だったし…な」

儀介の声。先ほどまで感じていた嫌悪感は、もうない。

「お前…本当は結構泣き虫なんだからさ…少しは、泣いちまえよ。
恥ずかしいなら、胸の一つや二つ、貸してやるからさ」

儀介…。
胸が詰まる。先ほどの涙とは、違う涙がこみ上げてくる。

「俺、頼りねえかもしれないし、親父さんみたいに頭がいいわけでもないけど…。
…俺じゃ、駄目かな。俺じゃ、親父さんの代わりには、なれないかな?」

儀介の顔を見る事が出来ない。
だからあたしは、顔を儀介の胸にうずめた。

「…俺と、結ばれてくれないか。
辛い事も、悲しいことも、半分ずつならきっと耐えられると思うんだ」

儀介のその言葉に、あたしはただ、泣く事しか出来なかった。

==============================

と、ここまで。
なんか…長いですな

224 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 00:47:08 ID:0sydcjTA
泣かせるじゃあないか

225 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 00:53:01 ID:o4AwaBLq
続きwktk

226 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 01:24:26 ID:FRyGPpEg
依存ヤンデレの気配がする…!

227 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 01:53:40 ID:UppdIXDd
>>伊南屋 氏
GJ!
書いておいてなんだけれど、これそのまま鈍器とした方が使い勝手が良さそう

>>212 氏
素敵なゲームだ……完成したら是非やってみたい

投下します

228 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 01:54:25 ID:UppdIXDd

夜までにやっておくことがあった。

神無士乃に監禁された影響か、体の節々が酷く痛い。できることなら約束の夜まで寝ていた
かったけれど――如月更紗のあの様子を考えれば休んでいるわけにもいかなかった。
いい加減、あの女に翻弄されているだけのこの状況はマズい。
こちらからも動かなくてはならない。主導権を握られっぱなしというのは、あまり僕の性に
はあわない。振り回されるだけだと、いつか放り投げられることを経験で知っている。そうで
なくとも、如月更紗があんなにあっさりと人間を殺す存在だった以上、それなりの対処は――
人殺し。
神無士乃の死。

「――――」

止めよう、それを考えるのは。
姉さんが死んだときに比べれば、衝撃も怒りも少ない。無い、とすらいっていいほどだ。け
れど、幼馴染である神無士乃が死んだということは――そしてそれ以上に、如月更紗が人を殺
したという事実が――僕の心を揺らしていた。
考えるのは、後回しだ。
今は――動かないと。
立ち止まる暇は、もうない。行く付く所まで、来てしまったのだから。

「さしあたっては……風呂入るか」

汗がしみこみすぎて色が変わったシャツを脱ぎ捨ててシャワーを浴びる。久し振りに浴びる
水は心地良くてたまらない。温度をいつもよりも上げて、頭が煮えるような熱湯をあびる。体
が熱くなったところで、冷水に切り替える。高温と冷水。交互に、交互に繰り返して浴びてい
るうちに意識が醒めてくる。
頭からシャワーを浴びながら考える。如月更紗の言うことを信じるならば、今夜全ての決着
がつく。少なくとも、決着の場が用意されることになる。
選ばなくてはならない。
姉さんの復讐を優先するのか。
如月更紗を、優先するのか。
今答を出す必要はない。夜までに出せばいい。たとえ出さなくても――きっと、選ばざるを
得なくなる。
二つのことを同時にできるほど、器用でないのは自分がよく知っている。

「あー……」

考えたくなかった。何も考えないままに、ただ復讐鬼でいられればよかった。悩むことなく、
姉さんの仇を討てる存在であればよかった。
数日前までは、そうだったはずだ。
そうでないとしたら――良くも悪くも、あの女の存在が、心の奥にまで根を張ったからだ。

「……最悪だ」

何が最悪なのか分からないままに、そう呟いてシャワーを止めた。



229 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 01:56:42 ID:UppdIXDd

ぬれた体をバスタオルで綺麗にふき取る。手足に妙なアザができていた。円状に出来たソレ
が何なのか考え、長時間手錠をされていたせいで欝血しているのだと気付いた。さすがにあま
りいい気はしないが、包帯やリストバンドで隠したら逆に怪しまれるのでそのままにしておく。
手首のアザはリストカットみたいで、姉さんのことを否応無く思い出してしまう。

「あのリストカットって……これで斬ったのか……?」

制服の上に置いてある魔術単剣の刃は妖しく耀いている。姉さんの血を吸ったとしても不思
議はない。それこそが『魔術』なのではないかと勘繰ってしまう。
魔術も魔法も信じないけれど、
姉さんは――そういうのが実在すると、信じていたのだろうか?
少し考えて見るが、結論はでなかった。姉さんにとってはきっと、どっちでもよかったに違
いない。寄りかかる対象であるのならば。

「…………」

制服に袖を通す。黒白で染められたの制服を着ていると、まるで喪服に身を包んでいる気が
してくる。ある意味、喪服で間違いはないのかもしれない。
いや――
僕の中で姉さんが死んでいない以上、喪に服しているとはいえないか。

「――さて」

着替え終わったのを姿見で確認し、通学鞄に魔術単剣を放り込む。教科書を入れていないの
でいつもよりは軽いはずのなのに、ずっしりと重く感じるのは――それが人殺しの武器だから
だろう。
ふと、思う。
如月更紗のあの鋏は、一体どれほど重いのだろうかと。
考えても仕方のないことだった。僕は頭を振りかぶり、思考を切り替える。
今日は月曜日。この時間なら、ちょうど一限目が始まったくらいだ。人のいない通学路はさ
ぞかし気持ちがいいだろう。
呼び出された時間は夜だが、その前に、学校へ行く必要があった。
――如月更紗の住所を知るために。
僕は鞄をつかみ、玄関から出る。扉を閉める前に、振り返って家の中へと声をかける。

「行ってきます、姉さん」

玄関の向こうで、姉さんは優しく微笑んで手を振っていた。行ってらっしゃい、とその口が
動いている。
その笑みを見ながら、僕は、心の中でそっと付け加える。


――もしかしたら、もう戻ってこないかもしれないけれど。



230 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 01:58:29 ID:UppdIXDd

如月更紗の住所を手に入れること自体は容易かった。問題は、偶然如月更紗とはちあわせし
ないこと。下手に姿を見られれば、勘の良さそうな如月更紗は僕がしようとしていることに気
付きかねない。
幸いにも学校は授業中で、如月更紗どころか他の生徒とも会わなかった。
学校の中では真面目な生徒を装っていたから、職員室に入ることも珍しくない。コツはゆっ
くりと歩くこと、真顔を崩さないこと。いかにも『先生に頼まれました』という顔をしていれ
ば、他の教師は無関心に受け流してくれる。担任が授業をしているのを確認し、授業中で人の
いない職員室に入って如月更紗の住所を調べ上げる。
学校を挟んだ反対側だった。 

「……意外と分かりづらいな」

学校でメモしてきた住所をもとに家を調べる。『地図』ではなく『住所』でしかないので、
そこらで番地を見ながら探すしかないのが辛いところだった。仮にも学校をサボっている身な
ので――何よりも鞄の中には言い逃れのできない凶器が入っているので――警察に頼るわけに
もいかなかった。
番地を一つ一つ確認していきながら如月更紗の家を探す。この辺りは高級住宅街なのだろう
か、奇妙なほどに静かだった。どこの通りも同じに見えて、正直迷ってしまいそうになる。
昼間の街が、こうも静かだとは思わなかった。
まるで――街が死に絶えたみたいに。

「そんなSF作品あったよな……タイトル忘れたけど」

掲示板があったので住所を確認する。大まかにはあっているが、道を一本間違えていたらし
い。歩いてきた道を引き返し、左へと折れて直進する。
向かう先は――如月更紗の家だ。
学校があるこの時間、恐らく如月更紗はいないだろう。家族がいるかどうかは、分からない。
そもそも、行って何がしたいわけでもない。
『何か』を知りたいだけだ。
一方的に僕へと関わってきた、『如月更紗』について、何かを知りたかったのだ。どんな些
細なことでもいい、家族構成や何やら、そんなことでもいい。
全てが終わる前に――如月更紗のことを、知りたいのだ。
だから、僕は今彼女の家へと向かっている。不法侵入も辞さぬ覚悟だった。最悪の場合、如
月更紗本人が学校にいかずに家にいるという可能性もあるが――その場合は直接話をするだけ
だ。十二時間ほど予定が早まったに過ぎない。
突き当たりで左に曲がり、すぐに右に折れる。番地は確実に如月更紗のところへと近づいて
いる。
そこの角を曲がれば、如月更紗の家がある。

「――――」

覚悟を決めて、
曲がった。


そこに――家はなかった。



231 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 02:02:22 ID:UppdIXDd
「なんだ――これ」

驚愕で、口が塞がらない。
何もないわけではない。建物があるにはあるが――少なくともソレが『家』には見えなかった。
廃屋、では生易しすぎる。
廃墟、では生ぬるい。
幽霊屋敷、でもない。あばら家、とも違う。
無理に表現を探すのならば――『終わっている』。
この家は、どうしようもないほどに、終わっている。
そう云うのが相応しい姿をしていた。高級住宅街らしく、かつては西洋風のモダンな家だっ
たのだろうが、今ではその名残しか残っていない。三階までの窓ガラスは全てわれていて、割
れたガラスが地面に散らばっている。鉄門は斜めに歪んでいて、押しても引いても飽きそうに
ない。壁の塗装はところどころが剥がれていて、その上を蔦が走っている。泥棒ですら脚を踏
み入れるのを躊躇ってしまいそうな、かつて家だったモノがそこにあった。
もう一度メモで住所を確認する。間違いなく、この家が、如月更紗の家だった。
人の気配は――何もない。
ここだけ、世界が終わってしまっているかのように、静かだった。

「住んでる……のか、ここに?」

言ってみるも、自信がない。此処に人間が『住む』ことが出来るだなんて、想像すらできなかった。
住所の間違い――それが、一番ありそうな線に思えた。
けれど。
如月更紗ならばともかく。
マッド・ハンターなら、此処にいてもおかしくはないと、そう思った。
それが決め手だった。覚悟を決めるには、十分な理由になった。
唾を飲み込み。
覚悟を決めて。

僕は――如月更紗の家へと、踏み込んだ。

見た目どおりに開かない門を無理矢理に乗り越えて玄関へと向かう。玄関扉に鍵は掛かって
いなかった。ぎぎ、と重い音を開けて、扉が開く。中は思ったよりも暗くはない――当然のよ
うに電気はついていないけれど、窓が割れているせいで無制限に光が入ってくる。
靴を脱ぐか脱ぐまいか悩んで、結局脱がずにあがることにした。フローリングの上には土や
ガラスが散らばっていて、裸足で歩いたらまず間違いなく怪我をする。足跡が残るのが気にな
るが――まず気付かれない自信はある。
入ってすぐに、二階へと続く階段があった。

「…………」

明らかに上に何かがありそうだったけれど、とりあえず下から見て回ることにする。
単純に――上には、いきたくなかったのかもしれない。ホラー・ムービーで死亡フラグをた
てるような気配が、上にはあったからだ。
家の配置というのはどこも同じなのか、一階には家族共用のスペースが広がっている。トイ
レ、風呂場、脱衣所、居間。どこにでもありそうなその部屋は、やはりどれも荒れている。荒
れているのだが――

「なんか――変だ」

荒れ方に、妙に作為的なものを感じる。外を見たときには、今にも崩れてしまいそうな印象
があったが、中はそうでもない。歩いていて床が軋むこともない。壁をよく見れば、老朽化ど
ころか建築されて十年とたっていないようにも見えた。
意図的に『廃墟』へと仕立て上げたような――そんな印象があった。
その印象は、台所に脚を踏み込むと同時に強まることになった。
ヴゥゥウウン、と。
蝿が飛ぶような――耳鳴りの音が、断続的に響いてた。その音で気付く。この家に、電気が
通っていることに。
冷蔵庫が、動いているのだ。

232 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 02:03:46 ID:UppdIXDd

「…………」

台所の隅に置かれた大型の冷蔵庫。一人暮らし用のではない。ホームタイプの、身長ほども
ありそうな巨大な冷蔵庫だ。かくれんぼにでも使えば、子供どころか大人さえも入ってしまえ
そうな冷蔵庫。
それが――動いている。
ヴゥゥゥン、と、低く唸りをあげている。

「…………」

開ける必要はない。別に、冷蔵庫を開ける必要なんて、少しもない。
ないというのに。
どうして――冷蔵庫を開けたくないと、強く思うのだろう。
開ける必要がない以上、そんな心配はしなくてもいいのに。考える意味なんてないのに――
あの冷蔵庫を開けて、中を見ることだけは絶対にしたくないと思うのは、何故なんだろう。
直感か。
本能か。
それとも――想像力か。
例えば。
如月更紗にだっているはずの『家族』のこととか。平日の昼間だというのにいない母親だと
か。こんな家の有様を見て彼女の父親は何も言わないのだろうか、とか。そんなことが、頭の
中で渦巻いている。
それこそホラー・ムービーだ。あれは何だったか、冷蔵庫の中に、ずらりと肉が並んでいた
のは――

「……バカバカしい」

そんなことが――あるはずがない。
それこそ、想像力の暴走だ。
僕は思い切って、唸りを上げ続ける冷蔵庫に手をかけ、
開けた。
中には――

「…………」

ペットボトルが入っていた。

ミネラルウォーターのペットボトルが数本と、なぜか冷やしてあるカロリーメイト。ワイン
が一本に、ビスケットの缶が一つ。
閑散としすぎているものの、極普通の冷蔵庫だった。

「……はは」

乾いた笑いが、意図せずに口から漏れてくる。
そうだよ――これが普通なんだ。廃墟モドキの家に、そんなに食材がびっしり入ってるわけ
もない。出し忘れたものが残っている、その程度の有様だ。
気負っただけ、損した気分だ。
意識して笑い続けながら、僕は冷蔵庫を閉めて、ついでとばかりに冷凍庫の扉も開けてみた
。中に何が入っているのか気になったのだ。
開けた冷凍庫の中には、


生首が入っていた。




233 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 02:04:38 ID:UppdIXDd

「――――」

氷付けにされた、どことなく如月更紗の面影がある中年女性の生首が――じっと僕を見てい
た。
生首を、目があった。
――神無士乃と、同じように。

「ぐ……が、ああぁぁ!」

堪え切れなかった。
込みあがる吐き気を堪えきれずに、僕は床へと倒れこんだ。はきたい。はきたいのに、喉か
らは何も出てこない。吐き気に衝き動かされるように喉を掻き毟りたくなる。必死で喉を押さ
え、そのせいで呼吸が苦しくなる。
思い出してしまった。
生首と目があったせいで、神無士乃の死に様を、思い出してしまった。
そして――
想像してしまったのだ。
生首に、如月更紗の面影があったせいで。

如月更紗の死に様を、考えてしまったのだ。

この吐き気は、そのせいなのだろうか。死にたくなるような吐き気を必死で押さえ込む。こ
こで吐いてしまうわけにはいかない。そんな『証拠』を残していくわけにもいかない。
水を呑みたかったが、水道が通っている保証はなかったし――冷凍庫を見た後では、冷蔵庫
に入っているミネラルウォーターを呑む気にはなれなかった。
見ないように気をつけて冷凍庫の扉を閉める。噴出してきた冷気が途絶えるだけで、だいぶ
楽になった気がした。
よろよろと、壁に手をつき、台所を後にする。
ともかく――これで、はっきりした。
この家は、異常だ。
如月更紗は、僕と出会う以前から――異常なのだ。
狂気倶楽部に相応しく。
僕が想像するよりも、ずっと、異端だったのだ。

「…………」

首を斬られていた死体――たぶん、如月更紗の母親なのだろう――も、やはり『鋏』で斬ら
れたのだろうか。
自分の母親を――自分の手で。
殺したのだろうか、彼女は。

「…………」

分からない。それこそ、本人に問わなければ分からないことだ。
よろめく体に鞭を打って歩く。まだ二階が残っている。本当に何かがありそうなのは、二階
なのだ。冷凍庫に入っていたモノよりも酷くはないと思うが――正直、この先何がでてきても
驚かない自信はあった。
手すりに全体重を預けながら、二階への階段を一段一段昇っていく。足取りが重い。脚が鉛
よりも重く感じる。
何も見なかったことにして、帰りたいと思う自分がいる。
それ以上に――全てを知りたいと思う自分がいる。
せめぎあいを続けながらも、階段を昇りきり、正面にある扉の前に立つ。
此処だ、という直感があった。
扉の奥に――全てがある。
覚悟を、決めなおす必要はなかった。ノブに手をかけ、ひと息に開ける。
扉の向こうには――


234 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 02:06:05 ID:UppdIXDd

――極普通の、少女の部屋があった。

「…………普通、だな」

普通だった。
荒れていない。荒れ果てた家の中で、その部屋だけが守られていたかのように荒れていない
。窓にはレースのカーテンがかかっていて、二段ベッドは天井からつるされたヴェールのよう
なもので覆い隠されている。大き目のクローゼットが部屋の両端で存在を主張し、床には赤い
カーペットがしかれていた。広い部屋は少女趣味な小物で満ちていて――正に、女の子の部屋
だった。
死体が転がってもいないし、血痕が残ってもいない。
ここで誰かが住んでいるといわれても、違和感はないだろう。

「靴は……脱いだ方がいいよな、これ」

荒れ果てた廊下とは違い、この部屋に靴で入ったら間違いなく証拠が残る。自分でも滑稽だ
とは思いながらも、家に入るときのように、扉の前で靴をそろえて室内へとあがる。カーペッ
トはよく手入れされているのか、踏み心地がよかった。
確信する。
如月更紗は――ここで育ったのだと。
この部屋が、如月更紗の中身なのだと。
ようやく、此処まで来た。
問題は――

「これから……どうしよう」

来たのはいいが、具体的に何をするかなど考えていなかった。来れば何かあるだろう、程度
にしか考えていなかったのだ。確かに冷凍庫には『何か』があったが――それは如月更紗の行
為の残りかすだ。
彼女の内面が知りたいのだと、僕は今更ながらに気付く。

「定番なら日記とか……」

確かに日記があるなら、如月更紗を理解するのには役に立つだろう。
そう思い、部屋の中央におかれた机へと向かう。日記があるとしたら、机の引き出しの中が
一番ありそうだと思ったからだ。
その推理は、半分正解で、半分間違っていた。

「…………」

目的のものはあった。ただし、引き出しの中にではなく、机の上に無造作に置かれていた。
そして、それは日記ではなかった。
それは――本だ。
市販にされているような本ではなく、自分で折り、ホッチキスで止めた――学校の文芸部
が発行するような、お手製の本が置いてあった。
表題には、くせのある丸字で、こう書かれている。


『ハンプティとダンプティ』


――如月更紗が、創ったのだろうか。
逸る心を押し殺し、僕は、震える指で表紙を捲った――



235 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 02:10:22 ID:UppdIXDd
以上で終了です

236 名前:慎 ◆tXhMrjO4ms [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 02:45:17 ID:ooM7V4jl
>>235
怖いです・・・・・・・・GJ
ハンプティ、ここで出てくるんですね。なるほど。
さて諸事情により取りを変えましたあしからず。

237 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 03:12:23 ID:If0BQs9a
男ヤンデレか・・・難しいな
ヘタしたら単なるストーカーになるし、いやむしろそれがいいか。

男は幼少時から臆病な性格だった。
何をするにしても決断が鈍る、他人の視線を感じるだけで逃げてしまう。
その性格のせいで男が引き籠もりになるのは当然の結果だった。
しかしある日、男の家にセールスウーマンがやって来た。
最初は避けていたが、毎回訪問してくるセールスウーマンに次第に興味を持ち始める。
やがて男はセールスウーマンの全てを手に入れようと考える。
男はセールスウーマンの、名前、年齢、住所、電話番号などを自力で調べ、
深夜にセールスウーマンのマンションに訪問する。
男の妄執とも言える欲望を、セールスウーマンの体にぶつける。
そして男はセールスウーマンの全てを手に入れる・・・。

238 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 03:56:26 ID:HTSRzVfw
投下します。長めです。さらに、謎が多いです。

第八話~二つの告白~

中庭にある時計に目をやって、現時刻を確認する。
午後1時5分過ぎ。
ろくに弁当に手をつけていないというのに、従妹やお嬢様や変人と会話したり、
全員がその場から立ち去ったりしているうちに、正午から一時間も経過してしまっていた。
実にもったいない。
一時間もあれば、ご飯を食べ終わって、その後で軽く昼寝するぐらいの時間はとれる。
以前、会社に勤めていたころの俺にとっては至福の時間だった。

――今は違う。
今では弁当の味を褒めたら華が顔を紅くしたり、かなこさんがなぜか箸をつきつけてきて、
それに対して華が険悪になって、十本松が変な本を渡す、という良くも悪くも味わい深い時間になっている。
そんな出来事が会社での昼休み時間に起こったりしたら、上司に何を言われるかわかったものではない。
今の俺が就職していなくて良かった。……いや、良くは無いか。

(……改めて、いただきます。っと)
テーブルの上に置かれている、特大の大きさを誇る弁当箱を左手で持ち上げて、箸をつける。
五目ご飯を箸で挟んで、食べる――というよりは削り落として、食べる。
(やっぱり美味いな、これ)
箸が進む。これなら毎日食べてもいいぐらいだ。
華が昔、俺の自宅でチャーハンを作ろうとして調理油をドバドバと注いで、
それをコンロにこぼしてしまって、それに驚いた華が手元を狂わせてフライパンをひっくり返して、
コンロがチャーハンまみれになった時の光景を思い浮かべ、時の移り変わりを実感しながら、
しばらくの間だけ舌鼓を打った。

・ ・ ・

食べ終わるころには既に時計の針は長針と短針の組み合わせが1時50分を差していた。
(さすがに、食いすぎたな……)
やはり一人で食うには多すぎた。
中身の七割を胃の中におさめた時点で「もういいよ」と脳がぼやき、
九分目で味が分からなくなり、最後の一口を飲み込んだときには達成感さえ覚えた。
無理に食べるぐらいなら持って帰ればいいのだが、「出されたものを残したくない」という変なプライドが
邪魔をして、俺の行動を「五目ご飯の完食」という結果へと導いた。
ときどき、横隔膜が波を起こして喉と胃を締め付ける。
しゃっくりが止まらない。
――――動けん。
仕方が無い。ここで満足に動けるようになるまで休むことにしよう。
テーブルに突っ伏して、左の頬をくっつける。
そのまま寝てしまおうかと思ったが――あるものが目にとまって、寝るのをためらった。

テーブル上、俺の顔の右に一冊の本が置かれている。
十本松が「面白い」という理由で薦めてきた、青い色をした背表紙の、薄い本だ。

……あやしい。疑う余地も、確認する必要もないほど、あからさまにあやしい。 
十本松が薦めてきた本、というだけでもあやしいのに、
奴が男装している理由のヒントが隠されていると聞くと、忌まわしいものにすら思えてくる。
(――それでも、気にはなるな)
なぜ十本松が男装しているのか。なぜあそこまで変わっているのか。
なぜかなこさんを婚約者と呼ぶのか。その理由が隠されていると思うと、好奇心がわいてきた。


239 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 03:56:59 ID:HTSRzVfw

左手にすっぽり収まる大きさの本を広げる。
1ページ目は、何故か黒いでたらめな線で塗りつぶされていて読むことができなかった。
2ページ目を開く。白紙だった。
3ページ目。縦書きの文字がずらりと並んでいた。
本のあらすじは、だいたいこんな感じだった。


あるところに、一本の刀と強い復讐心を持ち合わせた男がいた。
男には心から愛する女がいたが、忍び寄る魔の手からその女を守りきることができなかった。

復讐を誓った男は遠く離れた地で恋人の仇を見つけた。
恋人を殺した男には、娘がいた。その娘を手篭めにして、仇に近づき、ようやく男は復讐を果たす。

刀を捨て、昔住んでいたところへひさしぶりに帰ると、昔の女が男を待っていた。
男はその女のもとへと駆け寄ろうとするが、父を殺された娘があとを追ってきていた。

男は、かつて自身が持っていた刀に胸を貫かれ、復讐を遂げた娘の前で絶命した。


本に記されている物語はそこで終わっていた。
最後のページをめくっても、あとがきどころか著者名すらなかった。

結局、ヒントを掴むどころか、むしろ混乱しただけだった。
――十本松が登場人物の誰かの真似をしているとでもいうのだろうか?
しかし、復讐者の男も、殺されてしまう仇役の男も十本松にあてはまるとは思えない。
もしそうだったとしたら十本松は殺されてしまう。
自分から殺される役を買ってでるほどあいつも馬鹿ではないはずだ。
一体この本にどんな意味が隠されてるんだ?


三度ばかり読み返したところで、本を畳んでテーブルに置く。
(んーーーー~~~………)
腕を組んで考えても、やっぱり何も浮かんでこない。
もしかして、ヒントは隠されていないとか?
十本松にからかわれたか?
……だよな。やっぱりそうとしか――――


240 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 03:57:50 ID:HTSRzVfw

『チャーチャーチャーチャー チャーチャチャーチャチャ チャチャチャ チャチャチャ・・・・・・』

「んむ?」
ポケットに入れていた携帯電話が着信音を鳴らしながら振動した。
手早く携帯電話を開いて、通話ボタンを押す。

「もしもし」
『あんたいまどこほっつき歩いてるのよ!!!』

右の鼓膜を突き破って、反対側の耳から飛び出してきそうな声が携帯電話から飛び出した。
バイト先の、女店長の声だった。
「……店長。いきなり大声出さないでくださいよ。なんだって言うんですか」
『とっとと来なさい! もう四時半になってんだから!!』
ヒステリックな声でそう言ってから、受話器が壊れたのではないか、
と疑うほどの派手な音を立てて電話を切られた。

――もう四時半になっている、だって?
中庭にあるこじんまりした時計台を見ると、短針が四時の方向を、長針が七時の方向を指していた。
午後の、4時35分だった。

「う、うそだろおおおぉぉっ?!」

・ ・ ・  

自分の足で全力疾走をして、バイト先のコンビニに到着したら、香織がレジに立っていた。
「いらっしゃいませ――って! 遅いよ雄志君! 店長、カンカンに怒ってるよ!」
「悪い! すぐにレジに出るから!」

そのときは運良く店内に客がいなかったので、小走りで事務所に向かってドアに手をかけた。
ノブをひねってドアを押し開けると、眉を吊り上げてひくひくと動かしている店長が立ちはだかっていた。
「すいません店長! 時計を見るのを忘れてました!」
店長に向かって一も二もなく、素早く、深く頭を下げる。
「……つまり、理由は無し。言い訳も無し、ということ?」
「はい!」
ここで本当のことを言わないと後が怖い。
俺はごまかすのだけは昔から苦手で、勘の鋭い人にはすぐにばれるからだ。
そして店長は、(俺の知る限りで)これ以上優れた勘を持つ人はいない、と断言できるほどの人物だ。
よって、言い訳はしない。

「……頭を上げなさい」
低い声が頭上から聞こえてきて、心臓が一回だけ大きく収縮した。
その声から察するに、店長は今怒りの炎を心の中で燃やしているはずだ。
頭を上げたら店長の鬼の形相が目に飛び込んできて、その次は鉄拳が飛んでくるはずだ。
顔を殴られることはないだろう。
これからレジに立つ店員の顔を腫らす真似はさすがにしないはずだ。
――女性の力じゃたいして痛くも無いだろう。平気さ。

楽観的にそこまで考えて頭を上げた時、目に飛び込んできたものは、
予想通りに右手を固く握り、右腕を腰に構えている、鬼の形相をした店長の姿だった――


241 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 03:58:29 ID:HTSRzVfw
・ ・ ・

バイトが終了した、夜の八時過ぎ。

コンビニの外に出たら、香織がベンチに座って俺を待っていた。
「お疲れ様」
「ああ、ほんとにな……」
大学からコンビニまでの道のりを全力で駆け抜けて、
コンビニに到着して、怒り狂った店長のボディブローを受けて、
それから四時間のバイトを終えた今の俺は疲れ果てていた。

まだボディブローを受けたときの衝撃が腹と、脳の深い部分に残っている。
店長があそこまでいいものを持っているとは夢にも思わなかった。
なぜあの時、本気で腹筋を固めて歯を食いしばらなかったのかと後悔しきりだ。
数時間前の俺に会うことができたら何度も、しつこく、うざったく思われるぐらいに注意してやりたい。
これからは遅刻しないようにしよう。――絶対に。

香織が右に移動して、左側にスペースを作った。
ため息をつきながら、香織の左に腰を下ろす。
「ねぇ。どうして遅刻したの?」
「……寝坊だよ。昼寝してたから時間を忘れてたんだ」
本当のところは言わないでおく。 
いくら香織が相手でも「本を読んでいたらいつの間にか四時を過ぎていた」とは言えない。

「あはは…そうなんだ。今度から、気をつけてね……」
「どうかしたのか? 元気が無いぞ」
香織の声には、いつもの覇気がなかった。
アスファルトの地面を見つめて俯いたまま、顔をあげようとしない。
両手は膝の間で組まれている。
ときどき、人差し指と親指を開いたり閉じたりした。

「……いつもは遅れないからさ。…………不安になったんだ」
ぽつり、と小さく香織が呟いた。
左膝、右膝の順に足を浮かせて俺との距離を詰めてきた。
顔を上げて、弱弱しくなっている瞳で俺の目を真っ直ぐに見据える。
「もし雄志君がいなくなって、このままボクの前から消えちゃったら……って。
そう思ったら、なんだか怖くなっちゃって……」
そこまで言うと、俺の右手を両手で掴んだ。
香織の両腕の、肘から先が震えている。
俺の右手を支えにして、ようやくその場に留まっていられるような頼りなさを感じられた。
「そんなの、嫌だよ。
寂しすぎるよ……。いなくなっちゃ、いやだよ……」


242 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 03:59:08 ID:HTSRzVfw

香織の目が涙を溜めはじめた。
整った眉の左右それぞれが垂れ下がっている。
唇は薄く開いていて、小さく振動している。
何度か鼻がすん、すん、と小さな音を鳴らした。
最後に見たのがいつだったか思い出せない程、久しぶりに見る香織の泣き顔だった。
「っく……ぅ……」
下を向き、必死に泣き声を口から外に漏らさないようこらえている。
香織の両手が、右手を柔らかく圧迫してきた。
それから、手の上に一滴の雫が落ちてきた時点で俺はようやく動くことができた。

「……とりあえず、ほれ」
ジーンズのポケットからハンカチを取り出し、香織に差し出す。
香織はハンカチを受け取って何度か目の下を拭った後、俺にそれを返す。
「…………ありがと」
「ああ」
短く返事をしてから、ハンカチをポケットにしまう。

「雄志君は、」
香織がひっく、と小さな嗚咽を挟んで、一拍置いてから言葉を続ける。
「ボクが高校卒業してからもずっとキミと連絡を取り合っていたか、わかる?」
「学校の友達の中で、一番仲が良かったから。だろ」
「もちろんそれもあるよ。でもそれだけじゃない。
キミと離れ離れになるのがいやだったんだ。
ずっと――あの時点では六年間の付き合いだったかな。
それでもボクにとっては一番長くて、一番大事な、失くしたくない関係だったんだよ」
「一番長い? 家族は……?」
『家族』と俺が言った途端、びくり、と香織の肩が揺れた。

香織は、合わせていた目を反らし、すっかり日が沈んで星が出ている空を見上げた。
俺もつられるように夜空を見上げる。
雲ひとつなくて、月が良く見えた。
「お母さんは、ボクが物心つく前からいなかった。
離婚したのか、死んじゃったのかはわからない。顔も思い出せないよ」
「親父さんは?」
遠くを見つめたまま、香織に問いかける。

「お父さんは、ボクが高校二年生のときに、死んじゃった」


243 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 03:59:54 ID:HTSRzVfw
死んだ。

それはおそらく、直喩でも隠喩でもなく、そのままの意味で言っているのだとわかった。
香織の声があまりにあっけない、あっさりとしたしゃべり方だったからだ。
そして、その声に悲しみの色が一切含まれていなかったことが気になって、
香織の父親が死んでいたという衝撃的な事実はその時の俺の頭からは消えてしまっていた。

「悲しくはないよ。
お父さんは仕事で忙しくてあまり家にいなかったから、思い出は無いし。
ボクを養うために必死になって働いていたのか、って思ったこともあるけど、
貧しい生活をしていたわけじゃなかった。――むしろ裕福な方だった」
香織はそう言うと一旦言葉を区切った。

「年齢・かける・一万円。それがボクの毎月のお小遣いだった。
10歳なら10万円、11歳なら11万円、12歳なら……って感じ。
どう考えてももらいすぎだよね? でも、それが毎月繰り返された。
家の大きさも、小さい頃は普通だと思っていたけど、成長していくにつれて、
その家が相当な値段をかけて作られたことがわかっていった」
香織は一回、鼻で息を吸った。
そして、今度は沈んだ声で喋りだした。

「でも、ボクはちっとも面白くなかった。
小学生の頃は、誰が言ったのか知らないけれど『お高くとまったお嬢様』みたいに言われてて、
友達なんかいなかった。近づいてくるのは、お金欲しさに近づいてくるいじめっ子だけ。
お金なんかいらない。友達が欲しいって、毎日、学校がある日もない日もそう思ってた」
そう言うと、俺の方を振り向いた。
香織はもう泣いてはいなかった。
ただ、その時の彼女の目が縋るような色をしていて、俺は思わず抱きしめたくなってしまった。
――思っただけで、実行はしていないが。

「中学校に入学したら、何か変わるかもしれない。
そんな願いとか、希望とかを胸に秘めて入学した中学校には、雄志君がいた。
入学初日のこと、ボクは今でもはっきりと覚えてる」
「……俺も覚えてる」
「雄志君がボクの顔を観察してて……ボクがそれに気づいて雄志君に話しかけて……
そのとき、ボクは初めて『この人とは友達になれる』って思った。
そして、その通りに友達になれた。親友になれた。――とっても嬉しかった」
独白を続ける香織の瞳からは、涙がこぼれていなかった。

「気づいたら、ボクは雄志君から離れられなくなってた。
それを初めて自覚したのは、高校の進学先を決めるときだったけど。
雄志君がどの高校に進むのか調べて、
その高校がボクの成績じゃ受からないレベルだって気づいて慌てて勉強したりして」
「……どおりであの頃、付き合いが悪かったわけだ」
「高校二年生の今頃の時期かな。お父さんが死んじゃって。
ボクはそれから、雄志君以外に心を許せる人がいなくなっちゃった。
親戚の人たちはお金の話しかしない人ばっかりだったし、
友達は雄志君を通して関係がある人だけだった」

悲しい告白だった。
――あの頃の俺はそんなこと、気づいてもいなかった。
それだけじゃない。
香織の家庭の事情を聞いたのも、これが初めてだった。
10年以上友人の関係でいたのに、俺は香織のことをほとんど知らなかったのだ。


244 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 04:02:02 ID:HTSRzVfw

「高校を卒業してから、雄志君と離れ離れになるかもしれないって思ったときは焦ったよ。
ボクも同じ会社を受けたんだけど、採用されなかったし。
しかも雄志君はボクの知らないところに引っ越しちゃうし。
メールが今の時代にあること、ものすごく感謝してるよ。連絡がいつでもとれるんだから。
……もし雄志君と連絡がとれなくなってたらボク、今頃どうなってたのかな」
そう言って香織は微笑んだ。悪い想像をごまかすように。

「ね、お願いがあるんだ。――ボクとずっと、仲良くして。
せめて、こうやって話をできるように、連絡をとりあえるように。
実は……昨日の夜、華ちゃんが言っていたように、ボクも雄志君のことが好きなんだ」
「……やっぱり、聞いてたか」
香織は俺の言葉には答えなかった。
そのかわりに、独白のような告白を続けた。
「今すぐに答えて欲しいわけじゃない。
雄志君が華ちゃんを選んでも、ボクを選んでも、他の誰かを選んでもいい。
どんな結果になっても、今みたいに仲良くしてほしい。
それが――ボクのお願いです」
そこで香織の告白はとまった。
俺に向かって頭を下げている。
まるで、今の自分にはそうすることしかできない、というような実直さだった。

俺からも、香織に言いたいことがあった。
――今の関係を変容させてしまうものではないけれど。
「俺は香織に感謝してる。
こう言っちゃなんだけど、俺が心を許せる人間は香織だけなんだ。
それなりに仲のいい奴はいるけど、香織ほど気が合う奴はいない。
会社に勤めていたときだって、香織以上に仲良くなった人間はいない」
「……?」
「いつか誰かを選ぶときが来たとしても、俺はずっと香織と仲良くする。
ご先祖さまに誓うよ」
右手の小指を軽くまげて、香織の前に差し出して、自分の顔を笑みの形に変える。
よくこんなことが口から飛び出すもんだ、と自覚する。
でも、今はこうしたい気分だった。

俺の小指と、顔を交互に見て、それから香織は右手の小指を絡めてきた。
細くて、小さい感触と、熱が俺の右手に伝わった。
右手の小指を弱い力で、しかししっかりと握り締められた。
「雄志君ってさ、ご先祖さまだけに誓いをたてるよね。昔から」
「会ったことがあるのはじいちゃんとばあちゃんだけだけどな。
それでも、会ったことのない存在に誓いをたてるよりはマシだ」

「あははっ……ありがと。嬉しいよ。
じゃ…………『ゆーびきり げーんまん うーそついたら』、……ついたら、ついたら……えーと」
「…………どした?」
目だけを動かして俺の目を見たり、空を見上げたり、繋いだ手を見たりしている。
『嘘ついたら』の次の言葉を何にするかを考えているようだ。
嫌な予感がする。――って今日は嫌な予感、覚えまくりだな。

「『うーそついたら むーりやーりいうこときーかす』! 指切った!」
その言葉を元気良く言い終わると小指を素早く離した。
『無理矢理言うこと聞かす』?
――これって、解釈次第ではどうとでもとれるぞ。
「なあ、今のって……」
「もし約束を破ったら、無理矢理でも仲良くしてもらうからね! そのつもりで!」
「なんだそりゃ……」

それだけ聞いても、どんなことされるかわかったものではないな。
指切りなんかするんじゃなかった。――とも思うけど、香織が元気を取り戻したし、よしとするか。

245 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 04:02:52 ID:HTSRzVfw
嬉しそうな顔をした香織は、ベンチから腰を浮かせるとぴょんっ、と前にジャンプした。
そして俺の方を振り向くと、また笑顔を浮かべた。
「それじゃ、バイバイ雄志君! またね!」
「ああ、またなーー!」
香織が大きく手を振ってから、駐輪場の方へと走って行った。

(こういうの、傍から見ると変だろうな)
周りに人の気配は無いが、少しだけ恥ずかしい。
だというのに、胸が暖かい。自然と頬が緩む。
――目からじんわり、汗がでてきた。
上下のまぶたを結んで離す、ということを数回繰り返すと目から出てきた汗は引いていった。

駐輪場の方向からバイクのエンジン音が聞こえてきた。
続いて何度か空ぶかしの音がして、排気音がコンビニから遠ざかっていった。


携帯電話で時刻を確認すると、8時40分だった。
少しばかりゆっくりしすぎたようだ。
今から戻れば、9時を過ぎた頃にアパートの自宅に到着するだろう。
「さて、帰るとするか」
小さく呟いて、ベンチから立ち上がる。
「うむ。帰るとしようか」

唐突に、右側から、聞き覚えのある声をかけられた。
右を向くと、髪をオールバックにして、紺色のスーツを着た人間が立っていた。
月光とコンビニの外灯がその男――ではなく、女を照らしていた。
そいつは左手を右肘に、右手を顎に当てたまま真っ直ぐに立っていた。
「……またお前か。十本松あすか」
「そうだ。君の言うとおり、また私だよ。
――しかしここで疑問が沸いて来るんだ」
相変わらず――数時間しか経っていないから当たり前だが――の口調だった。

「『また』というが、君が先刻遭遇した十本松あすかと、ここにいる十本松あすかは、
細胞のレベルにおいて変化を起こしている。そして今も細胞分裂を繰り返し、その分細胞が減っている。
だというのに、まったくの同一人物であるなどと言えるのかな?
来年の卒業論文にしたいから、君の論理を参考にしたい。ぜひとも聞かせていただきたい」
「……お前が俺のことを知っている。
俺はお前のことを知っている。
お前は相変わらず言っていることが滅茶苦茶だ。相変わらず男装をしている。
お前以外にそんなことをする奴はいない。だからお前は十本松あすかだ。……これで満足か?」
「ふむ。他者の認知と自己の行動によってこそ、同一人物であると証明できる。ということか。
なかなか面白い意見だ。参考にしよう。家に帰ってノートに記すまで覚えていたらね」
「……参考にするつもり、まったくなさそうだな」

まじめに返答した俺が馬鹿だった。
この女は頭がおかしいうえに、人の話など聞いていない。
それは昼のやりとりで分かっていたつもりだが、どうしても返事をしてしまう。
――俺も変人なのかもしれないな。


246 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 04:03:42 ID:HTSRzVfw
立って会話をするのもどうかと思ったので、再度ベンチに座りなおす。
十本松はさっきまで香織が座っていた場所、俺の右側に腰を下ろした。
「まず聞きたい。なんでお前がここにいるんだ」
「あまりにいい夜空だったものでね。つい散歩にでかけてしまったのだよ。
こんな夜にはきっと恥ずかしい男が恥ずかしいことを言いつつ、恥ずかしいことをしながら、
恥ずかしい部分を見せびらかしているのではないかと思ってね」
「……もっと簡潔に『散歩に出かけていた』とだけ言ってくれ」
――恥ずかしい部分を見せたりはしていないが、自分の行動が恥ずかしくなるだろう。

「ところで、さっき香織と面白い話をしていたね。
父親が死んだ、とかなんとか」
と十本松が言った。
俺はその言葉に引っかかるものを感じた。
「お前、立ち聞きしてたのか? あと、なんでお前が香織の名前を知ってるんだ?」
「うむ。一つずつ答えるとしよう。
立ち聞きをしていたのか? ――最初から立ち聞きしていたとも。
おっと、聞いていたことを咎めるのは無しだよ。
コンビニの前に寂しげに置かれているベンチに座りながらあんな話をしているのが悪い」
……反論できない。
やはり、ああいう会話は人目につきにくいところでやるべきだったか。
頭を抱えたい気分だ。自分のうかつさに腹がたつ。

「もうひとつ。
なぜ私が香織の名前を知っているのか? ――昔会ったことがあるからさ」
「な、に……?」
――どういうことだ?
俺の周りにいる四人が、あらかじめ何らかの関係を持っている?
香織と華は、昔から喧嘩しあう仲で。
華とかなこさんは、大学の後輩・先輩で。
かなこさんと十本松が、婚約者(?)同士で。
十本松と香織は、昔会ったことがあって。
そして、俺はその全員と知り合っている。
これは、偶然なのか――?

「二回程かな。香織に会った回数は。
一度目は私の父の葬式の席。
二度目は香織の父の葬式の席。
ま、私が覚えているだけで香織は覚えていないだろうけどね。
だからこそ、さきほど香織がいるときに気配を消して陰に隠れて、顔を出さなかったわけだが」
「父の葬式って…………お前、親父さんを……?」
俺がそう言うと、十本松は腕を組み、顎を上に向けた。
数秒間星を見た後、いきなりではなく、ゆっくりと目を瞑った。
その仕草にどんな意味があるのかはわからなかったが――なんとなく、想像がついた。

「素晴らしい、至上、最高、男の中の男。
いろんな形容詞がこの世には存在するが、父をあらわす的確なものは無い。
愛にどんな形容詞をつけても陳腐にしかならないようにね。
そして、私は父を愛していた。説明しようもなく、形容しようもなくね」
そこまで言い終わると、ようやく首を下ろした。
十本松の視線の先には、車道があった。
それは目に見える限りにおいてどこまでも伸びていて、同時に十本松の目も遠くへ向けられていた。


247 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 04:04:21 ID:HTSRzVfw
「娘が父に向ける想いではなく、女が男に向けるものであったと、私は今でも思う。
父を愛したこと、一片たりとも悔いてはいないよ。
父と手を繋いでいるとき、間違いなく私の心は父と繋がっていて、
同時に空気の上をふわふわと浮かんでいるような浮遊感と開放感を得られたのだから」
「…………」
「君の言うとおり、私は変人さ。
12回誕生日を迎えただけの子供だったというのに、かつては実の父に対して肉欲を抱いていたのだから」
俺はそういった意味で変人と言っているわけではない。
――と思ったが、そんな野暮なことは言えなかった。
十本松が初めて本当のことを打ち明けている、と感じたからだ。

「ふっ――」
十本松は鼻で笑うと、首を振った。
やれやれ、といった様子で。
俺にではなく、自分自身に向けて。
その仕草は、どこか諦観しているようにも見えた。

「話が反れたね。なんの話をしていたのかな?
……ああ、香織の父親のことについてだったね」
ああ、と俺は頷いた。
「香織の父が亡くなったのは7年前の、彼の誕生日の日だった。
十階建てのビルから落下して、体を強く打ち、死亡した。
自殺か他殺かの決着は未だについていない。
ビルから飛び降りたのか、突き落とされたのか、それを見た者がいないからだ。
ちょうど今頃だったかな。ちょっとしたニュースにもなったものだよ。
なにせ、菊川家と少なからず関係している人間だったからね」
――なんだって?
「待てよ。ということは、香織とかなこさんは……」
「君の予想通り、推測どおり。知り合いだよ。
もっとも、深い仲ではないようだが。顔を合わせたらば、きっと分かるのではないかな」

俺は眉間をつまんで、目を瞑って頭を働かせて、意識を深い闇の中に沈めた。
黙考する。
――野球のベースで考えてみるか。
香織、華、かなこさん、十本松。
その四人を野球のベースに、ひとりずつ配置する。
最初に挙げた順番に並べていけば、四つのベースは関係の線で結ばれる。
しかし、そうするとあと二本の線が作り出されることになる。
向かい合ったベースである、香織とかなこさん、華と十本松。
つまり、この四つのベースはどんなやり方でも結びつけることはできるし、
同時に結び付けられないベースは存在しないことになる。

「四人全員が、少なからず関係を持っているってことか……」
「そういうことさ。実に面白いね。
しかも全員が雄志君と知り合いだなんて、もはや君の策謀に引っかかったとしか思えないよ。
もし、全員を手篭めにするつもりだったとしても、私とかなこは開放してくれ。
君の謀、もしくは棒よりも、かなこの房のほうがいいからね」

十本松の電波な台詞より、俺はこの奇妙な四角形のことが気になっていた。
四人が皆、俺の知り合いだった。
じゃあ……俺は四人にとっては、何者なんだ?
ただの知り合いなのか?
それとも、別の何かだとでも言うのか……?


248 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 04:05:16 ID:HTSRzVfw
「はぁっ!!!」
「うおっ?!」
俺の思考を遮るかのように、十本松の口からかけ声が飛び出した。
十本松は左手首にはめた時計を見ている。
つられて、俺もその時計を見る。
銀色のシンプルな時計だった。
短針と長針が黒く、秒針だけが仲間はずれのように銀色だった。

「9時20分……ゆっくりと談笑を楽しむ時間は無いな」
十本松はベンチから立ち上がり、上着の内ポケットに右手をつっこんだ。
また文庫本でも飛び出すかと思ったが、手を取り出したとき、そこには紙切れが握られていた。
その紙切れには、見たことのない文字が印刷されていて、読むことができなかった。
「なんだ、それ?」
「招待状さ。これを渡すのがここに来た目的だったことを失念していたよ。
というわけで、これを最優先で受け取りたまえ! さあ!」
びしっ、と指ではなく、招待状で俺の顔を差してきた。
無言で受け取ると、その紙がただの薄っぺらいものではなく、厚紙でできていることがわかった。

「なんの招待状だよ。悪いが、お前の誕生日だって言うなら行かないぞ」
「安心したまえ。菊川家のパーティだよ。
菊川家当主の誕生日がささやかに、しかし局所的に華やかにとり行われる。
具体的に言えば、最高級のワインや銘酒、超一流シェフの料理が振舞われる」
「なんだと……!?」
これは罠か?
そんな美味しい、いやおいしい場所に俺を誘うなど、現実的にありえない。
メジャーリーガーのストレートに素人の振ったバットが触れてホームランになるぐらい、ありえない。

「かなこからのお誘いだよ。そうでなければ、君がその招待状に触れることは、
アメリカ空軍の演習中に戦闘機のコクピット同士が触れ合って、
さらにパイロット同士の唇が触れ合って愛が生まれるぐらいの低確率でしか起こりえない」
「……よくわからんが、本当に行ってもいいんだな? スーツでも着てくれば大丈夫か?」
「うむ。できればタキシードで来てくれればいいが、スーツでもかまわないだろう。
ただ、上流階級の椅子にふんぞりかえっている連中がくるパーティだからそれなりの覚悟をしてきてくれ。
ちなみにそれ一枚で五人まで同時に参加することができる。
お誘い合わせの上、菊川の屋敷まで来てくれたまえ」

そう言うと、十本松は俺に背を向けてコンビニ前を通る車道へ向けて歩き出した。
歩道の上で手をあげると、そこにいいタイミングでタクシーが走りこんできて、音を鳴らさずに停車した。
タクシーの後部座席に乗り込む前に、十本松は俺の方を振り返ってこう言った。
「あの本を、読んだかい?」
「青い本のことか? 何回か、読んだけどさ。……あれのどこがヒントだっていうんだよ。
お前があの本に毒されたとかいうオチはナシだぞ」

「そうか……気づかないか。今はそれでいいさ。だがいつかは気づくことになる。
そうしたら――――――きっと、君はあまりの歓喜、もしくは恐怖にその身を震わせるよ。
ふるふるブルブルがくがくガタガタがちがち、といった様子でね」
笑みを浮かべずにそう言い残すと、十本松はタクシーの後部座席に乗り込んだ。
見計らって、タクシーのドアがばたん、と音を立てて閉まった。

タクシーは右のウインカーをオレンジに点滅させながら走り出した。
その橙が消えると真っ直ぐ走り出し、赤いテールランプを光らせたまま、夜の闇に染められた空間へと向かっていった。


「あ……そういえば、かなこさんの家って、どこだっけ……」

他にも、招待状に書かれた文字が読めないとか、スーツをどこにしまったのかとか、
何時に菊川家の屋敷に行けばいいのかとか、参加するにあたっての問題点を箇条書きにして頭の中に並べていくうちに、
十本松が乗っているはずのタクシーのテールランプは見えなくなっていた。

249 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 04:05:50 ID:HTSRzVfw
投下終了になります。

250 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 10:42:46 ID:FsHwXHEa
昨夜は投下ラッシュだったのか
全ての神々に感謝を(-人-)

>>223
( ;∀;)イイハナシダナ-
……と、普通ならここでHAPPY ENDで終わる所だが
そうならないのがこのスレw 病みの伏線はバッチリだ! wktk

>>235
好きな子のことは何でも知りたくなってしまうもの、
そんな冬継君の恋心(?)が更紗のハードさにズタボロにされそうでw
カンガレ冬継! 相手がヤンデレならそれ以上に狂ってしまえばいいんだ!

>>249
香織の依存っぷりに萌えました(*´Д`)ハァハァ
告白もしちゃって、もう後には引けなくなりそうw

 

251 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 12:04:52 ID:CQmHZV6F
更紗の病みは尋常じゃなさそうですねえ
さすがは狂気倶楽部の最古参、というべきか
更紗派としては嬉しいですがw

香織は雄志にちょっとでも突き放されたら一気に病んでしまいそうな脆さがでてきましたね。
そういうシーンがこの先あるのでしょうか?wktk

252 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 17:42:18 ID:fV+7qToG
十本松あすかの父親を香織の父親が殺害し、香織の父親をあすかが殺害した。

と読めた。
仮に今後の展開がこの通りだったとしたら、事実を知った香織は壊れるでしょうね…。

253 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 18:10:08 ID:rphe6b+j
>>207
フタナリレズ属性ありの私としては生唾ものの展開…。
早漏な否命に悶えつつ、続きをwktkしてます。
>>227
前回の長いデレからの急降下ヤンを考えると、
背筋が気持ちよく冷えていくのを感じますw
>>235
突然の生首には正直油断してしまいました…。
さすが更紗の家、気を緩められないなと思ったりしました。
>>249
物凄い複雑に入り乱れてきましたね。
種明かしの時がかなり楽しみです。

では、上書き第10話後編、B-3ルート投下します。

254 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 18:10:53 ID:rphe6b+j
「”すぐに”済む『用事』だから…」
加奈が俯いたまま、覚束ない足取りのせいで揺れる体で扉の前へと向かっている。
発せられた言葉からは一言一言を噛み締めるように相手の脳裏に焼き付けようとする
強い意志が感じ取れ、同時に根拠のない説得力が俺に安心感を齎した。
だから、俺は加奈の発した言葉から僅かに滲み出ている、延々と続くエレベーターに
乗っているような心の隅に滞在して不安を煽る不快感を払拭する為に振り向いた。
そして”加奈の『背中』”を見た瞬間、何かが弾けた。
「ひゃっ!? ま、誠人くん?」
俺は自分より一回りは小さい加奈の背中目掛けて無我夢中で飛び込んだ。
加奈が驚いているのも厭わず、俺は自分の頭を加奈の背中に擦り付けた。
動物の独占欲の象徴とも取れる行動、『マーキング』のように、何度も何度も。
目で加奈の背中を見、耳で擦り付ける度に漏れている加奈の呻き声を聞き、鼻で加奈
だけの匂いを嗅ぐ、自分でも呆れる程厭らしい行為を繰り返す。
全ては、加奈の姿を見た事によって広がった寂寥感を根絶する為。
そして………
「…頼む…。”行かないでくれ”…」
加奈自身を、俺の手元から手放したくないが故の行動である。

さっき見た加奈の背中の事を思い出すと、体の芯から凍えるような寒気を感じる。
その背中は、俺を安心させるように強気だった口調に反し、壊れ物のように脆そうで
弱々しかった。
小さ過ぎるそれを見た時理解した、”加奈はまだ『無理』しているんだ”と。
理由は分からないが、”俺の為に”思いつめているのは火を見るより明らかだった。
数時間前の『誓い』をまるで無視するかのような行動に、俺は一つの不安を感じた。
”加奈が遠くに行ってしまう”という、立証しようのないしかし確信に近い推測。
想いそのものを加奈が拒絶してきているなら、悲しむのは俺だけだから構わない。
だが、加奈の俺の事を労わるような口ぶりからしてそれはありえない。
”想いは繋がっている”、その上で加奈は俺の為に”一人で”頑張ろうとしている。
それは俺があってはならないと思っていた『状況』と全く同じなのだ。
相手の事を全て理解していると仮定した上で相手の為に行動し、理解し切れていない
部分から『亀裂』が生じてしまう危なっかしい関係。
そんな自己満足の為だけに存在しているような関係に甘んじるのは駄目なんだ。
勿論加奈が自己満足なんて歪んだ欲望の為に行動しているとは微塵も思っていない。
加奈は俺の事を想ってくれている、だがそこが問題なのだ。
俺の事を”想うあまり”、自分の身を省みない行過ぎた行動を取りかねない。
その延長線上でもし加奈の身に何かあったら、俺は絶対に自分を許せない。
何より、加奈が傷付く事だけは何としても避けなければならない『絶対』なのだ。 
その為ならば、見栄やプライド等の、持っていても関係維持に何ら役に立つ事のない
下らないものは喜んで捨ててやる。
格好悪かろうが構わない、杞憂だろうと罵られようと構わない、”俺たちの為”だ。

「置いてかないでくれよ………頼むから…加奈ァ………」
こんな子供染みた甘ったれた言葉も、恥ずかし気もなく平気で口から漏れてしまう。
改めて今の言葉を脳内で繰り返してみると、語感までが甘えた感じになっている。
いつから自分はこんなヘタレになってしまったのかと嘆きつつ依然と頭を擦り付ける
のを止めず、抱き締める力をより一層強くする。
そうする度に僅かに揺れる黒髪から、”加奈だけの匂い”が漂う。
絶対に口では説明出来ない、俺だけが知る幼い外見とは対照的な妖艶な香り。
俺の心を焦らすように、煽るようにほんの少しだけ流れる夢想世界にうっとりしそう
になっていると、突如体に衝撃が奔る。
刹那………
「ごめんね…誠人くん………ごめんね…」
俺の腕を振り払った加奈が体を反転させ、今度は逆に抱きついてきた。
いきなりの行動に戸惑いながら、加奈を見下ろす。
そこには「ごめんね」という単純な言葉に『生』を吹き込むようにしっかり発音し、
自分より大きい筈の俺に子供をあやすように優しく囁く加奈の姿があった。
加奈に、愛しの相手に擁護されているような感覚に包まれる。
その心地良い一時を永遠の物にしたい意思の表れなのか、俺は加奈を抱き締め返す。
お互いの力で繋がっていると言う実感が、俺の中の不安を完全に風化させていった。

255 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 18:12:10 ID:rphe6b+j
「加奈…何かあったんだよな?」
もう心の僅かな隙を狙い均衡を崩そうとする悪魔が巣食う事もない。
そんな奇妙な確信を得た俺は、自分の想いを『確認』という形で示す事にした。
「………」
抱き締める力を緩めた加奈が、居所を探すように視線を動かしている。
その挙動不審な様は、先程の俺の中途半端な確信を確固たるものへと変えた。
「教えて欲しい。駄目か…?」
数時間前の『誓い』をどんなに無様な格好であろうと遂行してやるという『意志』、
そして先程の『確信』が前提にあったからこそ、俺は恐れずストレートに訊けた。
『覚悟』があるからもう心を揺さぶられる事はない、だから失う物もないんだ。
俺も抱き締める力を緩め、加奈の肩を掴みながら腕の長さ分距離を取り見つめ合う。
強制的に俺と視線を交錯する事を余儀なくされた加奈は、ばつが悪そうに視線だけを
下に向ける。
その行為に多少なり焦燥感を感じながら、肩を掴む力を強くしていく。
その力と、俺の今の想いの大きさは比例しているんだと暗示したいが故に。
「…目を背けないでくれ…!」
勿論、想いは口で伝えなければ意味を為さない事は十分過ぎる程痛感させられた。
だから、俺は呆れる程実直に今の想いを、一言一句違わずに加奈に伝えた。
そんな俺の言葉に感化されたのか、再び視線を合わせてくる。
互いの想いを伝え合う『経路』、それが俺と加奈の合わさる目線上と重なっていく。
それでも、もう”目で会話している”なんて甘い妄想に取り憑かれる事はない。
自らの意志の固さを再認識しつつ流れる数秒の後、加奈は微かに笑みを見せてきた。
いつかのような無理な作り笑いでもない、何かに取り憑かれたような狂気染みた笑顔
でもない、俺が加奈と出会ってからずっと愛してきた幼さ残る笑み。
その柔らかい表情を見て、ふと加奈と付き合い始める前の事が思い出された。
思えばあの時は、お互い想いを心には秘めても決して口には出さない、『幼馴染』と
いう関係を守り抜いていた。
だから、気兼ねなく話せていた気がする。
そんな時の笑顔が今の加奈の笑顔とぴったり一致したような気がしてならなかった。
自身以外の存在を全てなしにして、純粋に己が一番輝ける俺にとっての最高の笑顔。
そんな笑顔を見て、俺は心の底から湧きあがって来る『懐かしさ』を覚えた。
『懐かしさ』を感じるという事は、長い間それを見ていなかったという証拠だ。
きっと俺がいたから、俺を意識するあまり加奈は無意識の内に心の底から笑う事すら
出来なくなっていたのかもしれない。
そしてその原因は俺にある事に罪悪感を感じたが、今更いちいち悔やむ事はない。
そんな事をしている暇があるなら、一刻も早く加奈を笑わせてやるべきなのだ。
『誓い』という名の『決意』を新たにする俺をよそに、加奈はゆっくりとした足取り
で俺から離れ、俺が部屋に入った時にいた場所…敷布団の上に移動した。
そして無駄のない小さな動作で俺の『携帯電話』を拾い上げるのを、静かに見守る。
『携帯電話』………、置いてある場所が移動していた位にしか気に留めなかったが、
それに一体何の意味があるのだろうか…?
困惑する俺に、加奈はゆっくりとその中身を突きつけてくる事で『答え』を示した。

『From 島村由紀
Sub  (無題)

誠人くん、あなたは何で”あんな”子が好きなんですか?』

そのメールを見て、『納得』と共に激しい『憤怒』が体中を駆け巡っっていった。
折角前者が理解を前提とした爽快感を与えてくれたというのに、後者の感情のせいで
相殺、もしくはそれ以上の激情が俺の頭の中に奔ってしまった。
加奈の不気味な行動の真意は読めた、要はこのメールが気に食わなかったのだ。
島村は今日俺の事を好きだと言った。
その事とこのメールの内容を繋げると、島村が俺たちの仲を壊そうとしているという
結論に十分に至る事が可能だ。
だから、加奈はそれを憎悪に変えて”何か”をしようとしたのだろう。
その”何か”の正体は、今俺が感じている起伏の激しい感情が教えてくれている。
純然たる………『殺意』。
失礼な推測だが、”加奈は島村を殺そうとした”のではないかと、俺は思った。

256 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 18:13:03 ID:rphe6b+j
勿論、それが真実だったのか、俺の空想に過ぎないのかは定かではない。
可能性は五分五分だが、だからといってそれを確かめようとは思わない。
加奈がもうその行動に対する意欲を失っているのだから、確かめる必要もない。
しかし正確には、確かめようとしないのではなく、確かめたくないだけなのである。
俺は島村から送られてきたメールを見て、はっきりと『殺意』を覚えた。
今日島村がはっきりと加奈を侮辱する発言をした時思わず「殺す」と言ってしまった
時並の、沸々と湧き上がる、それでいて波の激しい感情。
今もそれを感じているが行動を起こさないのは加奈が意志を手放したからに過ぎず、
もしも今も加奈が島村に対して殺意を抱いていたら、果たして俺はその感情を抑止して
やれたか、否定してやれたか、正直言って自信が全くないのだ。
同じ欲を持った者同士と言う『共通点』を『絆』と意図的に錯覚して、それに便乗し
流されるままに加奈が纏っている狂気に呑み込まれていたのではないかと思ったのだ。
加奈を狂気から助けてやるという目的を達成出来ないまま、結局お互いに甘い現状を
抜け出す事が出来ないままに、真の『絆』の居場所を見失っていたのではないか。
その光景を想像すると身震いしてしまう。
自分たちが正しい『幸福』を手に入れられなかったのに気付かないまま歪んだ妄想の
中で一生沈んでいく、そんな無限地獄、俺は死んでも御免だ。
そんな最低で甘い終幕を『上書き』するかの如く、俺は加奈の手から携帯電話を奪い
取り、そのメールを滑らかな手つきでボタンを弄る。

―――『メールを削除しますか』

そして携帯に表示されたその文章を加奈に見せながら、俺は微笑んだ。
「”二人で”決めよう…? ”俺はする”。加奈は?」
それは、『誓い』を最も体言化しているであろう、俺の中での『最善』。
そんな俺のボタンに触れている指に、温かい感触が伝わってくる。
見ればそこには加奈の細くてしなやかな指が、同化を求めるように添えられている。
「”あたしもする”」
たった一言そう言っただけの加奈は、しかし相反する程充実した笑顔を向けてくる。
俺が何年も待ち望んでいて、遠回りばかりして視界に広がりすらしなかった理想物語
が、ついに終着点に辿り着いて完結したんだという実感を加奈と共有する。
こんなに近くにあった、ちょっと機転を利かせれば簡単に見つけられたであろう道。
複雑過ぎる迷路の端っこに横たわっている一直線の『正解』を思わせる。
加奈と見つめ合いつつ口で交わした言葉を手繰り寄せながら、俺と加奈は”二人で”
そのボタンを押した。

―――『削除しました』

「終わった…」
安心感から漏れた言葉、しかしこれは明らかに間違っている。
まだ終わっていない、終わらしてはいけない、終わらせられる訳がない。
まだ”やり残した事”がある、それが決着するまでは先に進む事は出来ない。
手始めに俺は加奈と向き合い、言葉の大切さを噛み締めながら一つの要求をする。
「加奈、約束してくれ。もう二度と、誰も傷付けようとしないって」
「え?」
俺の言葉を受けて、加奈は心なしかキョトンとしてしまった。
無理もないかと、心の中で気休めに苦笑してみるが、やはり罪悪感は拭い切れない。
これが俺の出した、加奈を狂気から助け出す為の『手段』であり『答え』だ。
この言葉は加奈の中に巣食う狂気を認める事に繋がってしまうが、俺だけでなく加奈
も納得する為には、加奈自身にも滞在する『狂気』を認めてもらわなくてはならない。
『誓い』を守りつつ加奈を助ける為の方法として、俺はこれしか思いつかなかった。
加奈を一時的に傷付けてしまうかもしれない、それでもこれは避けて通れない道。
これを約束してもらわなくては、また独断での行動に奔ってしまうかもしれない。
危ない種は早々に摘んでおかなければならない。
沈む俺の心中を察してか、加奈はその深くて暗い闇に灯を灯すように笑顔で答えた。
「約束するよ。もう誰も傷付けないよ…!」
その答えに俺は安心しながら、距離を詰め加奈の頬に軽いキスをした。
これは明日への誓いの証、真っ赤になって蒸気している加奈の頬を撫でながら思う。
”明日で全てを終わらせてやる”。


257 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 18:14:03 ID:rphe6b+j


「お早うございます。そちらから呼び出しておいて遅刻というのは頂けませんね」
「痛いとこ突くな…。俺の寝覚めは最悪なんだよ」
暑中真っ只中だが朝はやはり肌寒いななんて事を体と心で感じ取りながら、目の前で
クスクス笑う島村を見て、俺は因縁の体育館裏の中で俄然やる気を奮い立たせた。

昨日加奈にあの約束をさせた後、今度は加奈が一つの『約束』を要求してきた。
その『約束』は俺が”やり残した事”として、やらなければならないなと心に決めて
いた事だったから、俺はすぐさま快く了承した。
その『約束』の後、俺は島村にメールをした。
そして翌日の早朝、あの体育館裏で待ち合わせをする約束を取り付けたのだ。

―――『体育館裏』。
一昨日、女子トイレから出てきたところを見られて、無理矢理連れ込んだ場所。
初めて人に、それも女に踏まれるという屈辱的体験をし、同時に島村由紀という人物
の存在が俺の中で色濃いものになるきっかけとなった場所。
加奈が敵意を向け、カッターを取り出した狂気が渦巻く忌々しい場所。
思えばこの静かで穏やかな空間は、俺と俺を取り巻く人間をかき回し続けてきた。
神の悪戯なんだと現実逃避すらしたくなった、『非日常』の連続だった二日間。
その時に起こった事象にに幾度も翻弄され、大切な人をも失いかけてしまった。
これからその因縁に決着をつける、その因縁の連鎖を作り出してきたこの場所で。

「それで、『話』とは一体何ですか?」
先手を取ってきた島村の発言に怯む事もなく、俺は唇を噛み締める。
そう、迷いを振り払う為に、躊躇いを捨て去る為に、血が滲むまで噛み続ける。
そして余裕を絵に描いたような島村の態度をよそに、俺は一歩左にずれる。
俺という壁がなくなった事により、その後ろから隠していた加奈の姿が露になる。
この突然の演出に驚くかと思ったが、意外にも島村の顔色が変わる事がなかった。
「あら、加奈さんもご一緒されていたんですか。仲の宜しい事で」
相変わらず笑顔は崩さないまま、島村は多少皮肉めいたような口ぶりで言い放った。
島村のその言葉を受け流す加奈、ここで俺が加奈にさせた『約束』が効いている。
誰も傷付けないというあの『約束』、していなければ今頃また加奈と島村の無意味な
口論を繰り広げて、下手をすればまた加奈は逆上して奇行に走っていただろう。
自分のした事の正当性を改めて確認しながら、俺は島村を見据える。
「島村、今日言いたい事は『一つ』だ」
俺は加奈を庇うように右手を横に伸ばしながら、島村を真剣な眼差しで見つめる。
催促するように”俺だけ”を嘗め回すような視線で凝視してくる島村。
その行為を感じ、昨日島村が言ってきた「俺の事が好き」という発言が本当なんだな
と今更な事を思いつつ、左手を自分の胸に当てる。
大丈夫だ、とひたすら自分に言い聞かせる。
そして口早に、陳腐だが絶対に捻じ曲げる事の出来ない『真実』の言葉を紡ぐ。
「”俺が好きなのは『加奈』だ”。だから、お前とは付き合えない」

そう………加奈が俺に要求してきた『約束』とは、”島村との絶縁”だった。
『絶縁』というと少々大袈裟に聞こえるが、要は”付き合えない”という意志を明確
に示し、島村の俺への想いを諦めさせてくれ、という事だ。
これは俺自身やらなければならないと実感していた必須事項だ。
島村が俺に好意を以って接してくる限り、俺にとっても加奈にとっても平穏と心から
感じ取れる時間は訪れる事はないと思う。
この二日間で十分に理解している、島村の行動原理は俺を振り向かせる事にある。
単純な一つの理由であり、理屈が決して割り込めない思考での行動だから、島村由紀
の行動は全く読めない。
それは紛れもなく、俺と加奈の関係維持にとって最大の『脅威』と言って良い。
だから、その危険な芽は速めに摘んでおかなければならない。
それに、島村は加奈以外で初めて俺に好意を示してくれた女の子だ。
そういった意味で一人の男として『けじめ』をつけなければならないと思ったのだ。
加奈と付き合う為には、中途半端な関係は全て清算しなければならない。
それが最愛の加奈への愛情表現であり、加奈と付き合う上で”あるべき様”を教えて
くれた島村由紀という一人の女の子への、最大の礼儀なのだ。

258 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 18:15:42 ID:rphe6b+j
俺の発言の後、島村は一瞬目を大きくして驚いた表情を見せてきて、すぐに俯いた。
何の返答もない為に広がる沈黙、場所が場所なだけにその負の雰囲気は不気味に俺を
包む空気に順応し、そのカクテルが織り成す不気味さに俺は耐え切れなかった。
「………島村?」
ここで下手に出ては不味い気がしたが、自分の忍耐力のなさに呆れながら訊ねた。
そんな俺の呼び掛けへの答えは『即答』という形でしっかりと返ってきた。
「誠人くん、何か『勘違い』していませんか?」
「『勘違い』…だと?」
突然の心当たりのない問い掛けに、俺は思わず口篭ってしまった。
慌てながら『答え』を探している俺の様子を、島村は見下すように楽しんでいる。
島村の本性を垣間見たあの時と似た『空気』が、鼻を通して全身に行き渡っていく。
…”不味い”、直感がそう告げている。
この直感は、矛盾しているが島村にされた体験を基にしての根拠ある推測に近い。
だからより一層俺の心をかき乱している…島村のペースに呑まれているという実感を
全身全霊で感じてしまっているから。
それに連動して心臓が収縮しているような息苦しさが体を支配しているのを感じた。
「やはり分かっていませんね。私自身の事あまり理解されていないようで悲しいです」
悲しんでいるようには到底思えない明るさを保ったままの声調で島村は攻めてくる。
今の言葉が引き金になって、体中からどっと冷汗が噴出すのを肌で感じ取った。
駄目だ、このままではどんどん島村の術中に嵌っていくようでならない。
だから俺は『逃避』に限りなく近い行為、『無視』で応戦する事にした。
何を言ってもボロが出そうな気がしてならない今の俺にとっては最も有効な策だ。
島村の緩んだ目元をひたすら凝視している事数秒、島村の口が静かに開いた。
「これは『略奪愛』なんですよ。文字通り『略奪』させて頂くんですから、その前提と
してお二人が付き合いなさるというのは至極当然の事。どうぞ私が『略奪』し終わる
までの間は、正直嫌ですがお二人だけの時間をお楽しみ下さい。邪魔しますがね…」
悠然と、何の障害もなく、真っ直ぐ島村は俺と目線を合わせようとしてくる。

―――『略奪愛』…なるほど。
そういう可能性は全くと言って良いほど考えていなかった。
島村は俺と加奈の関係を”容認した上で”、その仲に割って入ろうとしているのか。
俺が好きなのは加奈だけど、不謹慎ながら可愛いと思ってしまった。
そこまでして俺と付き合いたい、そんな娘の想いを無碍にするなんて俺は出来ない。
加奈への気持ちが揺らぐ訳はないんだし、島村が”それでいい”と言っているなら、
島村が諦めるまで今まで通りの関係であるというのもいいんじゃないか。
島村は飽きればそれで終わりだし、何だ、最善の策じゃないか!―――

多分今までの俺なら、島村が俺たちの関係を容認しているという『逃げ道』を利用し
そんな最低な事を平気で考えていたのかもしれない。
だが、”加奈と”『約束』を交わした今の俺には、する事は一つだと分かっている。
「島村………」
「本当はすぐに付き合いたいんですが、物事には順序があり…」
「島村ッ!!!」
人の話を聞こうとしない島村に、落ち着いた静寂をかき消すかのように一喝する。
突然の大声に、さすがの島村も驚きを隠しきれないかのか目を丸くしている。
「心臓に悪いですねぇ。どうされましたか、誠人くん?」
すぐに呼吸を整えた島村は、再びポーカーフェイスを作り直す。
これからこの余裕そうな表情を崩さなければならないのかもしれない事を考えると、
かなり胸が痛むが、『逃げ』ではなくこれは間違いなく島村の為の行為だ。
”分からせてやらなければ”、俺は加奈のみならず島村まで傷付けてしまう。
加奈に”誰も傷付けるな”と言っておいて俺が実行してしまっては示しがつかない。
どうせ傷付かなければならないのなら、傷が深くない内が良いに決まっている。
多少良心が軋むのを感じるのは、俺だけだ。
それは今まで”はっきりさせられなかった”俺の優柔不断さへの報いなのだと思う。
だから、俺は受け止めなければならない。
「『勘違い』しているのは、お前だ。島村」
「はい?」
間の抜けた声を発した島村、初めて隙が出来たなと思いつつ、俺は続ける。
「お前が俺を好きでい続けるなら、俺はお前と『友達』としても付き合いはしない」

259 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 18:16:36 ID:rphe6b+j
言ってしまった…だが後悔はしていない。
こうしなければならなかったのだ、そう自分に必死に言い聞かせる。
そうしなければ俺自身良心の呵責で、心が潰れてしまう気がしたから。
「それはつまり………”好きになるのも止めろ”って事ですか? ”まさか”ですよ。
そんな酷い事誠人くんが言う訳ないですよね? これでも恋する女の子なんですから
そんな一途な想いを否定なんて出来ませんよね? あ、もしかして私が本気で愛して
ないとか思ってます? そんな事滅相もありませんよ。私は誠人くんを一番に愛して
いる自信、いえ確信がありますしそれにですね…」
「それ以上言うな!」
「ひえ」という情けない声を発しながら、島村は肩をビクリと震わした。
その震えはそのまま体全体に広がっていき、顔も歪んでいくのが分かる。
もう先程までの余裕は微塵も感じられない、壊れそうな表情を浮かべている。
予想通りの反応、しかしこうするしかなかった。
俺が島村を好きになる事は死んでもありえない、俺の一番はいつだって加奈だけだ。
だからそれを知らずに、『可能性』があると思い込みいつまでも俺に固着していたら
島村は絶対に後悔する。
叶わない想いだと知る由もなく、永遠に『俺』という呪縛から抜け出せなくなる。
大袈裟だが、最善の策である事は明白だ。
”島村が俺への想いをこれ以上募らせない内に思い知らせてやる”、それしか無知な
俺には島村を助けてやる策を思いつかなかった。
「…”どうしても”なんですか? 私じゃ駄目なんですか? 何で加奈さんじゃなきゃ
いけないんですか…?」
眼鏡越しの潤んだ瞳が、俺を手放さんとするように粘着質に絡んでくる。
だが、今ここで情を移したら全てが水泡に帰してしまい、また島村を傷付ける。
心を鬼にするしか、ないんだ………。
「俺には、”加奈しかいないんだ”」
…終わらした。
絶望に打ちのめされ、目を見開かせ、口をパクパク動かしている島村を見て思った。
俺と加奈の曖昧な関係を、そして”島村の恋”を俺が強制的に終わらせた。
やはり罪悪感を感じる、それでも俺は島村に優しくしてはいけない。
好きな人以外への好意は周りの者を傷付けはしても、癒すなんて事はありえない。
もしかしたらこれよりももっといい方法があったのかもしれない。
それでも俺のした事は間違っていない。
俺を見たまま固まっている島村を見ながら、想いを断ち切ろうとする。
…刹那、島村が俺から視線を外し下を向いたと同時に、静かに言った。
「…分かりました………”私では”駄目なんですね…」
分かってくれて良かった、そう俺が思う暇もなく島村は何故か眼鏡を静かに外した。
そして次の瞬間………
『ガシャッ』
実際起こった事の割には結構小さい音が響いた。
その音が耳に入ってからしばらく、俺は何が起こったのか理解出来なかった。
それが島村お得意の、”理解不能の行動”だからだったと思う。
「島村!? お前何してんだよ! お前の眼鏡だろ!?」
思わず叫んでしまう、叫ばなければ頭の中が疑問符で溢れかえってしまう。
島村がした行動…眼鏡を外したと思ったらいきなり足元に放り投げ、そして躊躇なく
踏み潰してしまうという行動の真意が全く読めない事で、俺はかなり動揺している。
困惑し生唾を飲み込む俺をよそに、島村は初めて眼鏡を外した状態で俺を見てくる。
長い前髪でよく見えないが、微かに妖しく光っているような気がした。
「だって、もういりませんもん。誠人くんは眼鏡を掛けた女の子は嫌いなんですよね?
…”加奈さんは”眼鏡を掛けていませんもんね…ハハハ………」


260 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro [sage] 投稿日:2007/04/01(日) 18:17:21 ID:rphe6b+j
投下終了です。

261 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 19:03:37 ID:fV+7qToG
島村さん………。



GJ!!!

頑張って略奪してください!!

262 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 19:10:11 ID:0sydcjTA
島村さん、メガネは己を表し、顔の一部、一人の個性なんだ!!君からメガネをとってしまったら何も残らないぞ!!
メガネに乱暴する奴は許さないぞ!!



とメガネスキーであり、メガネをかけている俺が言ってみる。

いや、GJなことに変わりはない。なぜなら彼女は己を捨てたからだ!

263 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 19:32:38 ID:quRtnBOJ
まあコンタクトか手術したほうがいいぜ、リアルならな

264 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 20:02:21 ID:MQ105Nsf
ピンキーストリートでヤンデレ風の女の子を作ってみた。
デジカメ持ってないので携帯のカメラだけど…
ttp://vista.crap.jp/img/vi7542502620.jpg

首曲げてフライパン持たせて瞳のハイライト消しただけだけど。orz

脳内妄想では主人公の幼馴染で、主人公が家に遊びに来たときに
「○○くんの面倒は私が一生見てあげるね♪」と言って
背後からフライパン→拉致監禁のコンボ。

265 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 20:18:15 ID:YW3UWV13
GJでした!
島村の理論はアレですね、かなりイイ感じに病んでて好きなのですがね
島村と加奈の一番の違いが一緒に過ごしてきた時間、過去である以上、島村の勝ち目は無いよなー
と、加奈スキーの俺が言ってみる

266 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 22:19:58 ID:qW/EeRIi
加奈「ウヒョヒョ、これで島村のアピールは全て終了!誠人君の宣告により島村のライフ(精神力)は0!やったー、これで私達を邪魔する者はいなくなった、ヒャーハッハッハー」
島村「何勘違いしてやがる・・・まだ俺のバトルフェイズ(略奪愛)は終了してないぜ!」

すいませんゴメンナサイ嘘です

267 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 22:20:42 ID:FsHwXHEa
>>260
加奈が落ち着いちゃったと思ったら島村さんが本格的に覚醒ktkr!
でも意外と島村さんも人気高いんだな。
ってかそんな俺も島村さん派だがw

>>264
>背後からフライパン→拉致監禁のコンボ。
それなんていたり先輩?
といいつつGJ!

268 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 23:08:42 ID:sLZ1tdTz
島村「誠人君を略奪するまで、ずっと私のターン!」




ごめんなさいごめんなさいごめry

269 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/01(日) 23:35:13 ID:WR2kTa9Z
まさに無限ループ

270 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 02:15:02 ID:y7iYMzhd
>>264
首を傾げてるとこがカワイイね
すごいなー

271 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM [sage] 投稿日:2007/04/02(月) 04:28:20 ID:QI9zv4Ww
暇だったから(といっちゃなんだが)絵にしてみた。
http://imepita.jp/20070402/159530

272 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 09:02:10 ID:ofj9TQfL
ダメだよ島村さん!眼鏡外すなんて、鞘捨てた佐々木小次郎じゃないか!

>>263
貴様は全宇宙の眼鏡っ娘スキーを敵にまわす気か?

273 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 10:06:31 ID:pIEgAs/T
>>272
メガネいいっていえばいいんだけどみつあみといっしょだと萎えないか?

274 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 10:29:36 ID:LgvvlkvA
メガネは賛辞のほうがいい

275 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 10:30:59 ID:pa62wC43
くせっ毛ワカメみたいな髪型だったらなえる

276 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 11:29:08 ID:ofj9TQfL
>>273
しかし三つ編みで緑色で巨乳な看護師なら萌えるだろ、少なくともここの住人ならなぁー!HAHAHA!

277 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 11:30:26 ID:pa62wC43
それトラウマ

278 名前:264[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 12:28:02 ID:skEz3jD2
>>271
ぉぉぉ!ありがとうございます!
かわいいよフライパン少女かわいいよ…

ところでフライパン少女のSSを書こうとして名前が付いていないことに気が付く。
ほのぼの純愛みたいに男君と女さんでは味気ないので名前募集。以下スペック。

近所の共学校に通う17歳。主人公の幼馴染で小中高と一緒。
趣味は料理。大き目のお魚もお肉も三枚おろしにでもブロックにでも捌ける腕。
宝物は誕生日に主人公に買ってもらったフライパン(構えてるこれ)。
「将来料理研究家になりたいので試食して♪」と言いながら、一人暮らししている
主人公の食事を毎日作ってくれている。
食費は毎月主人公から貰っているが、結婚・出産費用に積み立てている。

279 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 13:34:55 ID:VPuTJgIA
>>278
料理ということで味香(みか)

うん、「一発変換できない」んだ。済まない。

280 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 13:38:11 ID:ied5OfWv

本読んでたらたまたま出てきた。適当でスマソ

281 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 14:46:38 ID:Sn3oVAK6
富良野衣羽

ところで、男女の性の概念に基づいたヤンデレってどうよ?

ある少年が男を好きになるが、男はホモじゃないから拒否。
少年は再び告白するために女性化(性転換にあらず)するものの玉砕。
そこでどんどん狂っていく。

ある少女は男として育てられてきた。そんな少女は男の親友に惚れた。
そして自らの秘密と愛を告白するが、男として付き合ってたために拒絶される。
そして、次第に狂ってゆく。

282 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 16:11:02 ID:qZ5ub/An
前者の少年はもともとが性同一性障害者だったのか、それとも性同一性障害ではない
男性同性愛者だったのかによって女性化するということの意味が変ってくるな
しかしよほどうまく進めないと単にキモい話か下手するとギャグになってしまいそう

後者は秘密まで告白したんだったら、単に女が男に振られたってことにならんか?
幼なじみとかが「友達としか思えない」って振られるのとそんなに変らない気がする

283 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 17:36:20 ID:6FpCIcin
>>281
その話は少年が準にゃんっぽい男だったらめちゃくちゃ読みたいな。
ショタっつーか女装男が絡む話って某修羅場スレにも少ないし。

俺ほんと変態だな・・・


284 名前:264[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 18:15:55 ID:skEz3jD2
フライパン少女のSS投下します。
例によってタイトル未定。ついでに募集とか?w

途中URLが入りますが挿絵です。
「このろだでは見れない」という人は他に使い勝手のいいろだを教えてください。
見れない人が多ければそちらにも再アップします。

285 名前:1/4[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 18:16:36 ID:skEz3jD2
キーンコーンカーンコーン…

昼休みを告げるチャイムが鳴りようやく授業が終わる。
クラスのみんなは学食や購買に行ったりお弁当を取り出し始めてる。
俺は今日は学食の安いご飯でも購買のパンでもなく…

「お弁当一緒に食べよ?」
「いつも悪いな味香」

机をくっつけて鞄からお弁当を取り出したのは幼馴染の彩 味香(いろどり みか)だ。
一人暮らしの俺にほぼ毎日料理を作ってくれている。
将来料理研究家になりたいらしく料理の腕は確かでこのお弁当もとっても美味しいだろう。

「今日のおかずはリクエストにお応えしてハンバーグでーす」
「おおお、いつ見ても美味しそうだな」
「違うよ『美味しそう』じゃなくて『美味しい』の!」
「あははは、それじゃあいただきまーす」
「めしあがれ」

周りからは愛妻弁当だと冷やかされつつお弁当を味わう。
うん、確かに『美味しそう』じゃなくて『美味しい』だな。
そして食べながら他愛のない話しをする。最近出た音楽の話、マンガの話し、新発売の
お菓子の話し、そして今晩のおかずの話し。

「夕ご飯はなに食べたい?」
「ん~、なんでもいいや」
「もう…作る方にとってはそれが一番困るの。
そうだ放課後一緒にスーパーに食材買いに行こうよ、ね? 決定♪」
「わかったわかった。
ごちそうさま。さてと、ちょっと用事があるんで行ってくる」
「お粗末さまでした」

そう言って弁当箱を畳むと教室を出る。用事というのは手芸部の引越し作業だ。
俺自身は帰宅部だが友人に手芸部員の彼女持ちのやつがいて、そいつが新しい部室へ
引っ越す作業に駆り出されるので手伝ってくれと言ってきたわけだ。
作業も運ぶ物はダンボールに既に入れてあるのでそれを運んで旧部室を掃除するだけ。

「それじゃあこの箱をお願いします。
新しい部室は…説明し辛いので一緒に行きましょう」
「よっと。…このペースだとお昼では終わらないかな?」
「一応今日の放課後も作業の予定なんですよ」
「放課後も? あー、悪いけど放課後はちょっと用事があってさ」
「あら残念。…ああ、ここですよ、新しい部室は」

その後旧部室と新部室を何度か往復して移動作業は終了。
そして掃除をしていると予鈴が鳴り掃除道具を片付けていたら部長さんに呼び止められた。

「今日はありがとうございました」
「おつかれさま。そうだ、放課後の作業なんですけど…」
「…そうですかわかりました。あとは掃除だけですので大丈夫ですよ。
そうだこれお礼のクッキーです。食べてくださいね」

クッキーを貰い教室に戻り授業が始まる。
眠い授業だがなんとかガマンしているうちに放課後になった…

286 名前:2/4[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 18:18:00 ID:skEz3jD2
「ふぅ、終わった終わった」
「あとは私と買い物して帰るだけだね」
「『帰ったら味香の料理を食べる』はやらなくていいのか?」
「だ、だめだよ、美味しいのを作るからちゃんと食べてよ!」

そんな会話をしながら近所のスーパーに寄る。
昼はハンバーグだったので夜は魚料理を食べようと思って鮮魚コーナーに向かっていると、
ふとお菓子コーナーが目に入った。

「お菓子食べたいの? クッキーとかなら私が焼くよ」
「いや、クッキーなら持ってるから良いよ。それより焼き魚と煮魚どっちにしようか…」
「…ねぇ、ちょっと待って」
「どうした? 魚のフライの方が良いのか?」
「そうじゃないよ。なんでクッキーを持ってるの?」

味香は急に足を止めて聞いてきた。その顔は俯いていて表情が読み取れない。
…心なしか周りの温度が下がったような気がする。
いや、単に周りに冷蔵棚があるから寒く感じるだけだろう。

「俺がクッキーを持ってるのがそんなに変か?」
「だって市販品のクッキーはあまり好きじゃないでしょ?
いつもは甘いものはチョコやシュークリーム、和菓子なら羊羹とかを買うじゃない。
それにクッキーを食べたいときは私に言うのに、前回作ったのはもう二週間以上前だよ?」
「あー、その…貰ったんだ。
昼休みにちょっと友人のツテで手芸部の手伝いをしたんだけど、手芸部の女の子に…」
「女の子から貰ったの?」

心なしか更に周りの温度が下がったような気がする。
いや、単に近くに冷凍棚があるから寒く感じるだけだろう。

「あ、ああ、でもこれは手伝ったお礼なだけだから…」
「女の子からクッキーを貰った女の子からクッキーを貰った女の子からクッキーを………」

味香は俯いてブツブツと呟いている。
いったいどうしたって言うんだよ…

「そ、そうだ。久しぶりに味香のクッキーが食べたいな」
「クッキーを…え? わ、私の作ったクッキーが食べたいの?」
「そ、そうそう、食べたい食べたい、すっげえ食べたい!」
「わかった、それじゃあ材料取ってくるから先に鮮魚コーナー行っててね」

急に明るくなった味香はカートを押しながらお菓子コーナーに向かって行った。
ふと周りの温度が戻ってきたような気がする。
…ここはインスタント食品のコーナーで冷蔵棚も冷凍棚も遠いんだけどな。

287 名前:3/4[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 18:19:11 ID:skEz3jD2
スーパーからの帰り道、味香は何故かご機嫌だ。
買い物袋を俺が持つ代わりに持っている俺たちの鞄を振り回しそうな勢いだ。

「焼き魚も煮魚もフライも美味しいの作るから楽しみにしててね」
「結局全部か」
「平気よ、私の料理は美味しいからいくらだって食べられるよ」
「って食べるのは俺か? まぁ、余ったらフライならお弁当に転用できるしな」

そうしているうちに味香の家に着く。
今日は味香しか居ないらしいので台所に買い物袋を置いたあと自分の鞄を持ってリビングの
ソファに座ってTVをつけると、ふと持っていた鞄が味香の鞄だったことに気付いた。
学校指定の男女共用鞄だったから間違え…


ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!


突然台所から凄い音がし始めた!
魚料理にしろクッキーを焼くにしろ、味香はいったいなにをしてるんだ!?
TVも消さず台所へ向かうが音はまだ続いている!

ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!

「味香っ! いったいどうしたんだ!?」

台所に入ると背中越しに味香がフライパンを持っているのがわかる。
もしかしてあのフライパンでなにかを叩いていたのか? いったいなにを…


ttp://vista.jeez.jp/img/vi7550484596.jpg


視線の先には、俺が昼休みに貰ったクッキーの包みがあった。


そして振り向いた味香の瞳は狂気を宿していた


ttp://vista.crap.jp/img/vi7550490444.jpg

288 名前:4/4[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 18:20:04 ID:skEz3jD2
「あははは、こ、ここここの、クッキーは、クッキークッキークッキーは…食べちゃダメ。
あはははははははははははははははははははは、クッキーが食べたければ私が焼くからね?
クッキーじゃなくても古今東西どんなお料理お菓子でも作るのは、わ・た・し♪
だからもうお菓子とか貰っちゃダメだよ? 私と約束ね、約束約束約束約束ヤクソク………
え? なんなのかなその顔は? どうしてあとずさるの? 嬉しいでしょ? 嬉しくないの?
私の! 私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の私の料理だけを食べるの!!
あなたの専属シェフに、ううん、お嫁さんになってあげる。
ほら見て、誕生日に買ってくれたこのフライパン私の宝物なの。
毎月食費として貰っているお金も結婚出産資金に積み立ててるの。
好きなの。愛してるの。
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き
好き愛してる愛してる好き好き好き好き好き好き好き好き愛してる愛してる好き好き好き
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き
好き好き好き好き好き愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる好き好き好き
愛してる愛してる好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き愛してる愛してる好き好き好き
好き好き愛してる愛してる愛してる好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き愛してる
好き好き好き好き好き好き好き愛してる愛してる好き好き好き好き愛してる愛してる好き
愛してる愛してる好き好き好き好き愛してる愛してる好き好き好き好き好き好き好き好き
あはははははははははあははあはははははははははははははあははははははははははあは
ははははあはははあはははははあははははあはははははあははははははははあははははは
ははあはははははははははあははははははははははははははあはははあはははははははは
ははははあはははははははあははあははははははははあはははははははははあははははは」


ttp://vista.jeez.jp/img/vi7550494363.jpg

目の前が真っ暗になって意識を失う寸前に、俺の目に写っていたのはフライパンを持って
濁った瞳でワラッテイル味香だった。

289 名前:264[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 18:22:35 ID:skEz3jD2
投下終了。
名前は>>279さんと>>280さんの案をミックス。ありがとうございました。

やっといてなんですが挿絵二枚目、エクソシストで似たようなシーンがあったような…

290 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 19:31:53 ID:/Xw03ukI
>>289GJ!

291 名前:280[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 21:27:44 ID:ied5OfWv
>>289 GJ!
まさか俺の案も入れてもらえるなんて、感動です!

292 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/02(月) 22:35:31 ID:Sn3oVAK6
フライパンGJ!本人を殴ると思いきやまさかクッキーをかwww

>>282
ならば、男と幼馴染と男友達とはどうだ?
幼馴染は男友達が実は女だと気付かず、いつの間にか奪われてたとか、
男友達に幼馴染が惚れたが、それは振られた男の彼女の座を狙う男友達(女)の罠とか。

293 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/03(火) 10:03:01 ID:PPqSZg36
>>289
GJ!!
でもなぜか画像見れない(´A`)

294 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/03(火) 14:40:41 ID:w5w+UrXk
なぁ、みんな!
ツンデレ喫茶があるんだからきっとこれからはヤンデレ喫茶もメジャーになり、テレビに進出………………………………無理か。
きっと警察沙汰になるもんな

295 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/03(火) 15:02:22 ID:dQSk7oyh
ヤンデレ喫茶か……
毛髪入りとか睡眠薬入りのメニューがありそうだな

296 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/03(火) 15:17:11 ID:UshWYBTj
前にもそんなネタあったなぁ
確か十回その店に通ったとかでサービスという名の拉致監禁。とか

297 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/03(火) 15:44:28 ID:w5w+UrXk
>>296 前にもあったんだ。俺比較的新参者だから知らなかった。

俺の妄想の中では






・ 「いらっしゃいませ!こちらの席へどうぞ!」
「ご注文はお決まりでしょうか?
〇〇〇〇が一つですね。
……………………私以外のウェイトレスに話しかけないでね?あんな体の70%が水分のかわりに汚物や虫でできてる奴としゃべったら料理がまずくなっちゃうよ?」


・ 店員がこれだと食欲うせるわぁー
妄想に付き合ってくれてありがとうな

298 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/03(火) 16:05:22 ID:Qy+5Nn+V
つ 保管庫の3スレ小ネタ集

299 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/03(火) 16:15:20 ID:PPqSZg36
>>297
いんやスーパーネタだったと思う

300 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/04/03(火) 16:48:48 ID:GHbug5mL
無理無理w
ヤンデレ喫茶みたいなのができたら、ツンデレ喫茶みたく勘違いした所になりそう。
ただ基地外の店員さんがいるだけの喫茶店になっちゃうよwww

 

最終更新:2009年01月13日 10:40