551 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/05/26(土) 12:19:13 ID:OltU+Q9A
「日ノ本くん、もうご飯食べたの?」
先輩は振り返った。
「そ、そうです。もう食べて、おなか一杯なんで、今日のところは・・・」
「トイレ往って来て」
「え?」
「トイレに往って、全部吐いて来て。おなかの中を空にすれば、充分食べられるでしょう?」
「そ、そんな・・・」
「なぁに?まさか“食べない”なんて云わないわよね?」
先輩が近づいてくる。
(どうしよう・・・。どうしよう・・・・)
「おはようございます」
「「!?」」
突然の声。
ちいさいのに、良く通る澄んだ声がした。
僕らは慌てて振り返る。
「朝歌ちゃん?」
「ひ、一ツ橋?」
僕らは驚く。
こんな場所で会うことの無い人物。
ちいさな後輩がそこにいた。
なんでここに?
僕の疑問を他所に。
「どうも」
一ツ橋はいつもの調子で感情の無い挨拶。
言葉もないまま。
僕と先輩は顔を見合わせた。

552 名前:無形 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2007/05/26(土) 12:21:03 ID:OltU+Q9A
投下ここまでです。
では、また

553 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 12:23:31 ID:YJ8cNPrc
爪~~

554 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 12:27:13 ID:WX8xEiZW
>>552
GJ!
綾緒怖いよ綾緒(;´Д`)ハァハァ
どう転んでも地獄になりそうな主人公うらやまし……いや、カワイソスw


555 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 14:56:36 ID:3K59P5rZ
さすがに主人公に同情したw
イヤ包丁で刺されるとかだってまさしく死ぬ程痛いんだろうけど
拷問はリアルに痛さが想像できる分主人公に同情できるわw


556 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 16:15:47 ID:0AcTYoI0
>>552
盗撮か…?盗撮なのか!
嘘だといってよバー(ry

557 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 17:29:11 ID:zTh7TY+t
>>552
日ノ本君……今まで君の事ヘタレとか言っていたけどゴメンね(´・ω・`)
こんな目にあわされていたら、そりゃ綾緒が怖くなるわw
遂に後輩が来ちゃってこれからどうなるのか次回が楽しみ過ぎでつ
火に油のような気もするけど先輩ガンガレ!

558 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 19:25:17 ID:ExTkJAZ4
流れを断ち切るようで悪いが、ヤンデレがたくさんでる作品には良心があるキャラが一人ぐらいいると良いと思うのは俺だけか?


559 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 20:11:35 ID:RjUUasya
>>552
GJすぎw
もうヤンデレお腹いっぱいだぜwww

560 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 20:45:40 ID:NkwawKEU
>>559
とらー!

561 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 21:40:10 ID:5a4nIDKp
一ツ橋ならなんとかしてくれるっ!
キモウトとキモアネから主人公を守るんだ!

562 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 23:50:46 ID:f0v1EcC1
仄暗くじめじめとした、陰気なオーラがあるのに加えて、鍵がついている地下室は人の寄り付かない場所のひとつ。
ホラー映画の舞台になるといっても過言じゃない。本来は家の倉庫になっているのだけれど、私はその一部を借りて、薬用植物を育てている。
また、薬品を作るときにもこの部屋は利用する。
この部屋に人が入ってくることはほぼないけれども、私はこの部屋の鍵を内側から掛けた。

一人泣いていることしかできない惨めな姿を誰にも見せたくなかったから―。

他の家族はともかく、お兄ちゃんならば私に対して優しくしてくれるから、
私がいないとなればまずこの部屋を探すだろう。
でも、私の大好きなお兄ちゃんでも、今の私は見せたくない。
否、お兄ちゃんだから見せたくない・・・。
帰ってきてから高ぶった感情を抑えきれずにいるため、持病の喘息の発作が出てしまっている。
ぜいぜいと肩で息をするのに混じって嗚咽している光景は我ながら惨めで、ただただ痛ましい・・・。
薄暗い部屋にぼうっと浮かび上がる蛍光塗料の塗られた時計の針は八時少し前を指している。
まだ、お兄ちゃんは帰ってくるかもしれない時刻だ。
もし、いつもの『用事』が雌猫につき合わされているということと同義であれば、だけどね。


私の座る椅子の付属の机にある写真立てのお兄ちゃんの写真に目がいった。
こんなときでもお兄ちゃんの事を考えるだけで不意に笑みがこぼれてくる。
と、同時に何故なのか分からないが再び涙腺を刺激し、
目にゴミが入ったわけでもないのにとめどなく涙が頬を伝う。
私はお兄ちゃんを横から取っていくようなデリカシーのない、
というよりは非常識な人の存在というものを考えなかった。
というのも、私はお兄ちゃんの周りの女子は皆、
お兄ちゃんの引き立て役としか見ていなかったし、現にそうだったから。
私を見捨てていくようなことをお兄ちゃんがする訳ないし、疑うなんて恥ずべきだ、なんていうのもちょっぴり。
でも、あの北方とか名乗った雌猫は違った。まさに不意打ちだった。
自分勝手な理屈に正論で返したにもかかわらず、さも私が悪いかのようにされてしまった。
まさに盗人猛々しい、そんな感じだった。
お兄ちゃんも私と帰ってくれなかった。でもそれは圧力が掛けられていたからで責めちゃいけない。
当然、相手に悪意があるのだから私だって座視しているわけにはいかない。

563 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 23:52:12 ID:f0v1EcC1
お兄ちゃんに圧力をかけて無理やり振り回す、なんてことが許されるわけがない。
そんな事をするのはあれが人じゃないから。あんなさも落ち着き払った嫌味な表情の下には、
醜い本性が隠されているのは明確。そんな雌猫は早く駆除して、しかるべき方法でお兄ちゃんからも解毒する。
それでおしまい。
ただそれだけのことなのだ。
あはは、なあんだ、すごく明快で簡単。
奇襲されたからといってそれで終わっちゃうわけじゃないんだから、今考えるのはあれの駆除法だけ。

でも、毒で駆除するにしても、時期というものがある。もう少し雌猫について情報を得なきゃいけないよね。
軽率な行動で猫さんを倒しても犬さんに連れて行かれちゃ、話の種にもなりはしない。
そこで私は寛大だから、動物でも少しくらいは猶予を与えてやることにした。
もちろん、その間に警告は発し続けてあげよう。
警告に応じたからといって、必ずしも助けてあげるとは言っていないけどね。
気づけば喘息の発作も幾分和らぎ、頬をとめどなく伝った生暖かい涙もひいていた。

ガラリと机の引き出しを開けるとそこには、去年私が栽培してた、ベラドンナの根がある。
ただの植物の根っこだなんて思わないでね。
実はこれから毒が造れるのだから。アトロピン―。正しく使えば薬、でも誤った使い方ならば毒にもなる。
雌猫の駆除には十分すぎるかなぁ?
上で人の声がする。おそらく、お兄ちゃんが帰ってきたのだろう。
それにもかかわらず、迎えにいかないなんてやっぱり失礼だ。失礼どころか妹としては不覚、である。
対策も決まったのだから、何もなかったかのように、私の最高の笑顔でお迎えしなきゃ、ね。


564 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 23:53:43 ID:f0v1EcC1
一階にのぼっていき、
「お兄ちゃん、お帰りなさい。」
と言ったはいいものの、お兄ちゃんは玄関にいなく、むしろ家の外にいるようだ。
玄関の扉を開けると、そこにはお兄ちゃんが立っていたのだが、それとお母さんと、面識のないスーツのおじさんとそれから、何よりも驚いたのはあの雌猫、全ての悪の権化がいたことである。
端に大きな黒塗りの車があったような気がするが、そこまで気が回らずにいる。
とっさに何が起こったのか理解できなかった。まさか、私を殺しに来たなんてこともないだろう。
「どうかしたのですか?」
率直な疑問を口をつついて出てきた。
「遅くなったので、あなたのお兄さんをお送りさせていただきました。」
「本当にわざわざありがとうございました。」
慇懃な態度でお母さんが頭を下げている。
「あれ、お兄ちゃん、自転車はどうしたのかな?自転車で学校に行くから必要だよね。」
「ああ、自転車も運んでもらえてさ。じゃ、どうもありがとうございました。」
クスリと例の悪意ある、虫唾を走らせる笑いを頬に浮かべながら、あの雌猫はそれに応じた。
「では、失礼しました。」
スーツの男はそう言って一礼すると、車にあの雌猫を馬鹿丁寧に乗せてどこなりへと、帰っていった。

565 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 23:56:02 ID:f0v1EcC1
「すごいわね、お抱えの運転手なんて、さすが資産家。」
車が去ってしまってからお母さんが驚きを隠し切れずにぽつりと言った。
お母さんはそれからいろいろとお兄ちゃんに、北方家についてや、
雌猫について話題を振っていたので、私としては不満だった。
それよりももっと不満だったのは、あの嫌味な笑いに含まれていた、
私に対する勝ち誇ったような態度である。
本当にあれを早く駆除しなきゃいけない、
ということをあの毒々しさによって改めて再認識させられる。

お兄ちゃんとお母さんの話を聞くところによれば、北方家は維新期に政府側
として戦った小大名の子孫らしく、廃藩置県以後に貿易と政略結婚で莫大な資産を築き上げたのがもともとらしい。
また、明治期以降は子供に女ばかり生まれて、女系の家だったそうだ。
そんなどうでもよいことが耳に入った。
お兄ちゃんが帰ってきたにもかかわらず私は不機嫌だったが、
とりあえずここは自分を抑えてチャンスを待とうと私は決めたので、
さっさと床につくことにした。起きるのが遅れて、お兄ちゃんのお昼ご飯が粗末になったらいけないから。



566 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 23:57:28 ID:f0v1EcC1
ピピピピという無機質な電子音が数回すると、いつものように起きるわけでもなく、耳障りな音を早く止めるために松本弘行は枕元にある目覚ましに手を伸ばしたが、視界をまばゆいばかりの光が覆った。
寝ぼけ眼でベットに面した窓を見ると、厚手の遮光カーテンは窓の両端に留めてあった。
そのせいで直射日光をもろに食らっていたので、この部屋はまだ梅雨にもなっていないというにもかかわらず、夏を先取りしたように蒸し暑い。熱いだけなら許せるが、最近はむしむしと蒸してくる日もある。
さらに+α、暖房が入ってたみたいだ。23℃だったが。
ありゃりゃ、やってしまいましたか・・・。あるときは冷房20℃で切タイマー無しで一晩中かけて、シベリア気分を満喫し、今日はここだけ時空転移して常夏の東南アジアですよ。

常夏のハワイやタヒチなら涼しくて許せようが、この蒸し暑さは東南アジアだ。
落ち着いてみるとこの寝衣も寝汗でびっしょりだ。
シベリアでも東南アジアでも風邪はデフォルトで引けそうな感じだ。
とにかく、窓を開け風を取り入れることにする。
もう、梅雨も近いから焼け石に水だか、そこで敢えてこうすることにしよう。

スイッチが入ってないコンピュータに制御されながら、ゆっくりとクローゼットの中から制服を取り出し、それを機械的に着ていく。一番上に着るブレザーのボタンを留めている途中、理沙が僕を起こしにきた。
「お兄ちゃん、朝だよ、早く起きてね。」
そういいながら、ドアを開ける。
「ああ、理沙、おはよう。」
とっさに欠伸が出てきたので、口を手で押さえながら間の抜けた声で言った。
ということで、今現在おきましたよ的オーラをもろに放ってしまっている、をいをい、じつに間抜けだな。
「あはは、お兄ちゃん、今、間抜けだって思ったよね?」
はい、残念ながら見透かされていました。いや、ポーカーフェイスは苦手なんだから仕方ない。
でも敢えて反論してみたくなった。
「わが妹よ、僕はこの良き日の清清しい健康的な朝の目覚めを満喫していたのだよ。」
と、ラノベに出てきたキャラクターならこういうのだろう、という感じで言い切ってみたい年頃なんですよ。
「いや、部屋が蒸してて、ぜんぜん清清しいとかじゃなくて・・・」
と言った理沙の視線がカーテンへ行き、エアコンのリモコンへと向けられる。
「まあ、一人で起きたんだから、お兄ちゃんは成長したんだよ、きっと。」
と今にも笑い出しそうなのを抑えてます、という感じでのたまわれた。
はいはい、一歩前進しましたよ、亀の一歩前進。

567 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 23:58:18 ID:f0v1EcC1
早起きしたので、朝食を流し込むように食べていたいつもとは大違いで、一口一口きちんと咀嚼しながら食べ進める。
今日の朝食は和食で魚なのでまさに早起きしていないと厳しい一品である。
ゆっくり朝食を堪能し、歯を丁寧に磨き終わった頃、見事なまでに見計らったようにインターフォンが鳴った。
ピーンポーン
朝の忙しい時間に誰だろう、といらだつ母がインターフォンに出ると、すぐにやや驚きを含んだ顔で僕に受話器を替わった。
しっかし、こんな時間に誰だろうか?
「どちら様ですか?」
「おはよう、ご機嫌いかがかしら?」
相手に感情を読み取らせないまでの澄明な声の響きだった。
「驚いたかしら?あなたのクラスメートの北方時雨よ?」
さらり、と同じ声のトーンで続ける。前までは彼女に気が引けてしまう、というかびくびくしている感じだったが、
何日か彼女と接するうちに随分と慣れてきたのか、平然と答えられた。
「ああ、北方さん。おはようございます。こんな時間にどうしたの?という感じですが、インターフォンでというのもなんですから、とりあえず家に入ったらどうですか?」
「いいえ、あなたを迎えに着ただけだから、気は使わなくていいわ。」
まぁ、実際のところ僕はもう学校へ行く支度ができているに等しかったのだが、まだ理沙が準備できていないので少しばかり待ってもらうことにした。

「お兄ちゃん、今の人、誰だった?」
すかさず理沙が聞いてきた。
「ああ、北方さんが迎えに来てくれたみたいだけど、理沙の準備ができるまで少し前で待ってて貰ってる。」
北方さん、という固有名詞が彼女の感情を少し逆なでしたようだが、曇らせた顔をすぐに元の笑顔に戻して言った。
「ううん、お兄ちゃん。お弁当の準備はできてるから、私のことは気にせずに、先に行っていいよ。でも、そのかわり今日の昼食、私、お兄ちゃんと一緒に食べれたらいいな、って思っているんだけど、お兄ちゃん・・・いい?」
「あ、うん。いいよ。じゃ、悪いけど僕は先に学校行ってるからね。」
「じゃ、気をつけてね、ロードレースはほどほどにね。」
いやにあっさりしているのが、少し気になったが、大した変化ではなかろう。

568 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/26(土) 23:59:35 ID:f0v1EcC1
玄関のドアを開けると、自転車の傍に立っているのは目が覚めるような美人。
その美人、北方さんは僕に向かって柔らかに微笑んだ。
僕ははっきり言うと、彼女のポーカーフェイスがわずかながら崩れた感じがするこの笑みが好きだったりする。
最初に口を開いたのは僕のほうだった。
「やあ、北方さん。おはよう。」
「二度目だけれど、おはよう、理沙さんはどうしたのかしら?」
「ああ、先に行ってていいといってたから、先に行くことにしようと思って。」
「あら、てっきり私、理沙さんに嫌われているのかと思ってしまって・・・いい妹さんね。」
そんな事を話しながら、自転車を学校に向かってこぎ始める。
しかし、素朴な疑問が一つ。
「あれ、北方さん、教えてないはずなのにどうして僕の家知ってるの?」
「昨日、松本君をあなたの家まで、私は家の者に送らせたでしょう、
そのときに松本君が教えてくれたルートを通ってきたから、知っていて当然ね。」
「ははは、そうだったっけ。」
適当に笑ったが、一度通っただけのルートを覚えられるというのは、なかなかすごいことだ。
いつもは疾風怒濤の勢いで通り抜ける閑静な住宅地や駅前をゆっくりと通り抜け、授業開始十五分前には学校に到着。
いや、なんという、計画的且つ健康的な朝だ。しかも北方さんは僕の家によっていない場合、遅くとも授業開始の五十分前、
すなわち八時十分には学校に到着しているらしい。
全く、どんな一日のスケジュールで動いているのか見てみたいものだ。
ぜひその情報機密をわが国の科学技術の発展のために、って、どうせ計画性と実行性のない三日坊主の僕には役に立ちませんよ。
「ああ、松本君。」
自転車置き場に自転車を停めながら、思い出したように言った。
「今週の週末、そうね、土曜日は休日だから、土手のほうへ、サイクリングにでも付き合ってくれるかしら?」
「梅雨になってしまうと、そうそう晴れることもないから、たまにはいいかしらと思って。」
唐突な申し出で、あまり考えられなかったが(もっとも、考えようとしなかったが)、二つ返事で承諾した。
というのも、昨日の北方さんのお父さんの話を聞いて彼女の力になりたいと思ったからだった。

569 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:01:00 ID:f0v1EcC1
その日は何の代わり映えのない、よく言えば平和な一日を過ごした。
昼休みに理沙と洋食系のお昼ご飯を食べて、いろいろとお互いのクラスについて話したり、なんだりして当たり障りなく過ぎていった。
北方さんは図書委員の仕事が大変らしく、昼休みと放課後の時間を取られてしまったようで、今日はあっさりと家へ帰ることになったので、
最大戦速で戦域離脱を果たし、ラノベ・アニメ・ネットの三本仕立ての大巨編の激務をこなすことができた。
いやはや、過去の自分を省みないのが漢と思っている僕は省みないのだが、こういう革命的生活が共産主義なテスト結果に繋がって、
先生にマークされるという結果に繋がっているわけですよ。
というわけで、激務で体力を消耗したのでさっさと寝ることにしますか。
この日の夜に階下の地下室に明かりが燈っていたことは、松本弘行には知るよしもなかった。


うららかな陽気の日々が何日か続き、北方さんは僕を毎朝迎えに来て、何度か彼女の家に招かれ、
理沙は昼食を準備してくれて、お昼休みに一緒に食べて、いつだったかの北方さんと理沙の火花散らすような紛擾はなく、
日めくりカレンダーを何枚か重ねて破ってしまったのではないか、という感じで時は過ぎ去っていった。
そして、今日は土曜日。北方さんとサイクリングする予定の日である。
理沙はその事を承知しており、最初は自分もその日に予定があったから、そっちに来てくれないか、
と粘っていたが、すぐに折れて、昼食を用意してくれることになった。
どうも理沙は北方さんのことが好きでないらしく、距離を取りたがっているように感じられたが、
それでもこんな兄のためにいろいろとしてくれる妹というのも、古今東西探しても珍しいものだろう。
僕が幸せ者であることを痛感させられます、はい。


570 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:02:20 ID:slnBDuWI
ピーンポーン
北方さんが来たようだ。
「松本君?出発の準備、できたかしら?」
「いや、まだ少し時間がかかるので、中で待っていてください。」
「じゃ、悪いけれど、そうさせて貰うわ。」
それでリビングでコーヒーを出して少しばかり待っていてもらうことにする。
「どうぞ、もしかしたらブラックコーヒー、ダメかもしれないと思ったけれど、大丈夫なら、どうぞ。」
そういって勧めた。
「ありがとう、いただくわ。」
言葉だけからは、いつもの清澄というかクールな声が機械的に想像されてしまうのだが、
ごく普通の体温のこもった暖かい印象の言葉が返ってきたので、驚きを隠せなかった。
「あら、私の顔に何かついているのかしら?」

その暖かさの分だけ、冷ややかな視線があることにそのとき、僕は気づかなかった。
それから十数分ほどして、理沙がピクニックに行くときのような装備をいくつか持ってきて、
出発する準備ができたことを教えてくれた。
やはり、これだけ用意してくれたのに、理沙を連れていかない事に気が引けたので、
理沙にも来るように勧めたのだが、遠慮がちにやんわりと断った。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。今日帰ってきたら、私の、理沙のわがまま一つだけ聞いてくれるかな?」
理沙はあまり僕にいろいろと要求することなどないのだが、珍しく何かおねだりするときは、
彼女の一人称は私、から理沙、に代わる。
今日はいろいろと準備して貰ったし、いつも僕のために弁当を作ってくれる理沙のわがままの一つや二つくらい、
聞いてあげてもいいんじゃないか、そう思ったのですぐに受け入れた。
「じゃあ、お兄ちゃんが帰ってくるまでに考えておくからね、楽しんできてね。」
にこにこと屈託のない愛らしい笑顔に自然とひきつけられそうであった。
しかし、その後に続いた、くれぐれも気をつけてね、という小さくつぶやくような言葉に僕は気づかなかった。



571 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:03:24 ID:f0v1EcC1
理沙から渡された荷物を自転車の大きな前かごに入れ、先に自転車を走らせていた北方さんの後に続く。
通学途中の住宅地や駅前を通り抜ける。
いつもはわき目も振らずに帰ってくることが多いのだが、時々外食するときに使う店の前も通っていった。
途中、登下校時に全速力で走っていく僕のことを知っているクラスメートの何人かに会って、
北方さんと一緒にいることを物珍しそうな目で見られ、またあるものは冷やかしてきたのだが、
北方さんに倣ってさらりと受け流してみた。
これには、北方さんもご満悦であったようで失笑していた。


そんな感じで、北方さんといろいろと話しながら、車輪を走らせていたが、これが結構疲れるものだ。
彼女の言う川べりの土手というのは、サイクリングロードとして整備されており、
桜の並木道があるところでもあった。
季節はもう遅いけれども、あそこで毎年のようにお花見をしに来る人が多いそうである。
もう梅雨が近くなっていたので、この土手周辺に見える人影もまばらで閑散としていたが、
周りに住宅地や無粋な工業地区もなく、田んぼや畑が広がるばかりで、ここがどこか非日常な、
それでいて新鮮さのある風景だった。



572 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:04:38 ID:slnBDuWI
追い風が吹いているせいと僕が疲れているからなのかも分からないが、北方さんは異常に自転車をこぐのが早かった。
ふはは、追い風なら僕にも吹いているはずなのに、不公平だ、不平等だ。
運動不足の僕には持久力がないからか、いやはや、さっぱり追いつくことができない。
途中、間が開いてしまって、何回か北方さんに待っててもらった。
「くすくすくす、疲れた?」
いたずらっぽい笑顔を向けて僕にそう聞いてきた。
いや、だから、疲れたとかそんなレベルじゃなくて、それを既に通り越してしまっている。
「見ての通り・・・、第一、何でそんなに自転車をこぐのが早いのかわからない。」
「なぜでしょう?」
いや、そんなにこりと質問されても、分かるわけがないってば、いや、何か彼女のことだ。
また、悪巧みでもしてこっちの自転車が遅くなるようにでも細工しているのだろうか?
未だに足が安定して地に着いていない感じで、いかにも考えていますという表情をして、
こめかみに人差し指を当てて考える人のポーズを取る。
「今、私が細工したとか、そんなこと考えたでしょう?」
おお、いかん。またしても見透かされていたようだ。思ったことが顔に出る体質、
というかここまでラノベの世界じゃないとありえないような把握のされ方をすると病気だよな。
しかし、この病気はいい加減、何とかならないのか、小一時間問い詰めたいところだ。
「ふふふ、あなたの私に対するイメージはどんなものなのかしらね?」
うわぁ、唐突に学校で見せるようなポーカーフェイスで聞いてきた。冗談で聞いていると分かっていても、
何か漠然とした、恐ろしいものがある。一種の白痴美に似たような美しさ、と最近では感じられるのだが、
いや恐ろしいもんは恐ろしい。


573 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:05:54 ID:slnBDuWI
「疲れたなら、ここで休憩でも取る?」
ふと見ると、今まで気づかなかったが、少し落ち着いてみると、ちょうどここに一里塚のように木が植えられて、
しかもあずまやまであるという、まさに休憩には絶好のポイントであることに気がついた。
しかしうまく謀った、もとい計算したような感じで、北方さんの如才のなさに恐れ入った。
「じゃ、そうしようか。」
「理沙さんが用意してくれた食事を食べるには少し早いから、これでもどうぞ。」
と言って、羊羹を一切れ、手渡してきた。
確かに腕時計をみると十時になったばかりだった。たしかにこれでは昼食には早すぎる。
羊羹は嫌いじゃないし、糖分は貴重なエネルギー源だしちょうどいいだろう。
「前に和菓子、好きじゃないって言っていたけれど、それ、私が作ったのだけれど・・・・食べてくれないかしら?」
そう、少しはにかんだように言ってきた。
一口、口にする。
和菓子が嫌いと言うことはないのだが、大概甘さがしつこくて、嫌になってしまうことが多い。
けれども、北方さんの作ってくれたものは非常に甘さを抑えた上で、素材自体の味を生かしているようだった。
外見も几帳面な北方さんが作っただけあって、端正に仕上げてあり、
手作りではそうそうお目にかかることのできない一品だろう。
だから、少しもためらうこともなく、自然と賛辞の言葉が出てきた。
「とても、美味しいよ。」
彼女の抜けるように白い肌が少しだけ紅潮して見えたのは、
きっと陽気のせいだけではないだろう。


574 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:07:08 ID:slnBDuWI
お茶とサンドイッチに舌鼓を打ちながら、休憩をしているときにさっきの質問をしてみることにした。
「北方さん、何であんなに自転車こぐのが早いの?」
「ふふ・・・・あれ、電動自転車よ。」
「へ、電動?電気ですか?」
「そうよ、じゃ自転車を取り替えてみる?随分、楽よ?」
なんという、そんな落ちでしたか・・・細身の彼女が疲れずいられるのも何か理由があると思ったが、いくらなんでもそれはないだろ・・・・。
「あー、ブルジョアに負けた!!!」
「くすくす、では労働者のあなたに命じます、はやく乗ってみたら?」
で、結局お互いの自転車をかえることになった。

いわゆる電動自転車というのが、こんなに楽なものだとは思わなかった。
さっきとは打って変わって、心に余裕がある状態であるから、土手から見える新緑の光景もまた一味違っていた。
対して、僕の自転車に乗っている北方さんは表情にこそ出さないが、結構きつそうな感じだ。
少し、ペースを下げて話をすることにポイントを置くことにした。
最初はこの前の中間試験で化学は点が取れた、とか英語が厳しかったとかの話をしていたが、彼女の両親の話になっていた。

575 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:07:21 ID:8pvXGbhz
支援

576 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:08:03 ID:8pvXGbhz
私怨

577 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:08:12 ID:slnBDuWI

「そういえば、松本君。うちの父がこの前、何か失礼なこと言わなかったかしら?」
「え、失礼って・・・普通に人のよさそうな人だと思ったけれども・・・。」
彼女のお父さんは娘に嫌われていると言っていた記憶がふと、蘇った。
北方さんはフッと短く冷笑してから、僕にどんなことを話してきたのかをもう一度聞いてきたので、
話された内容をいくつか話した。
「・・・父は私のことを娘などと考えてくれたことなどなかったくせに、今頃になって・・・。」
「あんまり、話さないほうが良かったみたいだね。機嫌を悪くしたなら謝るよ。」
「いいえ、あなたは悪くない。それより、続きを話して。」
「それから、北方さんのお母さん、もう既に他界されていることと、
僕に北方さんと親しくしてほしいということ。」
両者ともを自分の口で言うのははばかれる内容であったが、
聞かれたのであらかたの内容をしゃべってしまった。
「・・・・・。」
内容を聞いて、切れ長の目に一刹那、強い光が宿ったのに気づいた。
彼女の持っていた家族の集合写真にも母親がうつっていなかったが、
母親には随分ひどい目に遭わされた、そう聞いていたので嫌悪が表れたのであろう。

少ししてから、北方さんは口を開いた。
「私の母は本当はまだ、死んでいないの・・・。」
開口一番、僕が想像した答えとは別の答えが返ってきて驚きを隠せずにいた。
「私の母は・・・」

578 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:09:05 ID:slnBDuWI
そう北方さんが言いかけたとき、僕は土手の端のほうを走らせていた自分の自転車が急に鈍い音を立てたのに気がついた。
そして坂の傾斜に向かって、ぐらりと大きく傾いたような感覚がして―。
危ない―、そう直感で感じ取ったときには壊れていく自転車ごと土手を転がり落ちていた。
不思議と何とか自分で転がり落ちるのを止まろう、いや、止めようとできなかった。
何度か、体を打ちそのたびごとに痛みの感覚が薄れていく。
そのいくつかも体を地面に打ち付ける痛みだけでなく、何かもっと重くて硬い何かも体を打った。
慣れてきた?いや、痛みに慣れるというよりは寧ろ気絶する、そういったほうが正しかった。

さっきまで自分が乗っていた自転車が突然壊れ、自分の何よりも愛する人が体を自転車の一部や
地面に打ちながら土手を転がり落ちていくのを、北方時雨はなす術もなく立ち尽くして見ていることしかできなかった。
絹を裂くような叫び声と嗚咽が誰もいない川辺に響いた。

579 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:10:40 ID:8pvXGbhz
紫煙

580 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:12:03 ID:slnBDuWI
うわー、無駄に長くなってしまった、そんな感じの第五話です。
読んでくださった方ありがとうございます。
こんな感じですが話は続けるので、今後もよろしく。


581 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:12:17 ID:8pvXGbhz
支援

582 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:12:53 ID:zx1A7W1I
>>580
GJ!!

583 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 00:34:33 ID:GuWtP6KP
どーしてもケンゾーさんの髭面が浮かんでしょうがない、、、

584 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 01:38:19 ID:TEqhtzQj
>>583
よく分からないがとにかくソープへ行け

585 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 10:30:09 ID:B1XmPAna
>>580
おバカな主人公の松本君に似合わぬシリアスなピンチktkr
まあ彼なら大丈夫なような気がするがw
次回wktk

586 名前:向日葵になったら ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/05/27(日) 12:23:51 ID:nfd27eRQ
さつき姉が僕の住むアパートの一室にやってきて一晩が過ぎた、二日目。
今日は朝から雨が降っていた。
朝に目が覚めたときカーテンのすき間から空を見ると、青い色が見えなかった。
部屋の空気はわずかに湿っている気がした。
雨は強く降っているわけではなく、雨雲から命令されて嫌々降っているように思えた。
風は弱く、空を覆う灰色の雲は長く居座るつもりのようだった。
実際、(僕の勘よりはあてになる)天気予報も僕の感じたままのことを言っていた。

さつき姉は朝に弱い。
その事実を知ったのは僕がまだ小学校に通っていたころのことだ。
登校するときは僕がいつもさつき姉の家に行った。
おばさんに挨拶をしてから、さつき姉が家から出てくるまで待つ。
玄関を開けるときのさつき姉は、いつも目を瞑っていた。
僕の記憶の中に、さつき姉が朝から活発的になっている様子は存在しない。

いつもさつき姉はふらふら歩いた。僕はさつき姉に声をかけながら歩いた。
学校に着く数分前になるころさつき姉の意識はようやく覚醒しはじめ、隣を歩く
僕を確認すると手を握ろうとしてくる。
僕は手を握られないようにランドセルに手をかけたり、走って逃げたりする。
その繰り返しが、小学生のころの僕の日常だった。

さつき姉は相変わらず朝に弱いようだった。
時刻はすでに7時数分前をさしているから、僕の目ははっきりと覚めている。 
だというのに横になったままのさつき姉は身じろぎ1つしない。
昨晩さつき姉にからかわれた仕返しに起こしてやろうかとも思ったけど、
やめておくことにした。
特に理由はない。しいて言うならば、早く顔を洗いたかったからだろうか。

洗面所に行き、顔を濡らして髭を剃り、顔を水ですすぐ。
蛇口から流れてくる8月の水は、目を覚ましてくれるほど冷えてはいなかったけど、
変わりなく水としての役目を全うしてくれた。

さっぱりとした思考で考える。
今日は雨が降っているけど、さつき姉はどうするんだろう。
本でも読みながらじっとしてくれたら嬉しいんだけど。


587 名前:向日葵になったら ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/05/27(日) 12:25:18 ID:nfd27eRQ
焼いた食パンを台所で食べ終わった頃、さつき姉がやってきた。
「惣一、おはよ」
「おはよう」
「ね、今何時?」
台所には時計を置いていない。
全く必要がないというわけではなく、単に狭い部屋に数多くの時計は必要とされないからだ。
居間の壁にかけてある時計を見て、両手で指を8本立ててさつき姉に見せる。

「そっか。よかった、早起きして。今日はいろいろやりたいことがあるから」
さつき姉はそこまで言うと、洗面所で蛇口をひねった。
鏡に向かって顔を向けているが、2つのまぶたは閉じられたままだ。
あの様子ではまだ意識が覚醒していないと思われる。
僕は居間に敷かれたままの布団を畳むと、続いてテーブルを定位置に置いた。

買い物に行こうとさつき姉が言い出したのは、パンを食べ終えたあとだった。
実を言うとそれまでの間にさつき姉は一度倒れた。
僕が駆け寄ってさつき姉の体を抱き起こすと、小さな寝息が聞こえてきた。
寝ていた。大きく口を開けながら。
口は開けたままなのに、鼻で呼吸をしていた。
僕は肩から力を抜くと、さつき姉を仰向けにして頭の下に枕を敷いた。


さつき姉は僕の左で、雨に濡れたコンクリートの地面を踏みしめながら歩いている。
「もう! 惣一が起こしてくれなかったのが悪いんだからね!
今日は久しぶりに一緒にでかけようと思っていたのに!」
だったら早めに言っておいてほしかった。
さつき姉がしっかりと伝えてくれていれば僕は頬をつねってでも起こした。

いや、それぐらいでは起きないか。
さつき姉は一度眠ってしまうと、死んだように動かなくなるのだ。
以前さつき姉が夏休みの宿題を片付けるために徹夜をしたことがあった。
徹夜した次の日には、丸一日ベッドの上で眠りこけていた。
僕は、その時のことをよく覚えている。
なにせ、丸一日中僕の手を握ったまま眠っていたのだから。


588 名前:向日葵になったら ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/05/27(日) 12:27:12 ID:nfd27eRQ
アパートを出て、50分ほどバスに乗って、近くにあるコンビニで弁当を買い、
案内板を頼りにして海水浴場にやってきた。
さつき姉の予定では、今日は海水浴場にくるつもりだったらしい。
雨が降ったから予定を中止するかと思いきや、さつき姉はこうやって海を見に来ている。

さつき姉は傘を持ちながら、人の居ない砂浜を見下ろしている。
ため息をひとつ吐くと、まぶたを少し下ろして憂いの目をつくった。
「残念ね。せっかく惣一と一緒に海に来たのに、これじゃ面白さ半減よ」
「半減しただけ?」
「そ。水着を買って、泳ぎもしないのに海水浴場にやって来て着替えて、
貸し出されたパラソルの下でのんびりとして、というのをやってみたかったから」

疑問に思った。
ただ海にくるだけならいつでもできるだろうし、なにも今日である必要は無い。
ぼんやりするだけなら、僕は居てもいなくても同じじゃないか。
僕が思ったことを口にすると、さつき姉はうーん、と呻いた。
「違うのよ。惣一と来るっていうことに意味があるの」
「僕と?」
「うん。私が惣一の部屋に泊まっているうちにやっておきたかったから。
こんなところ、1人でくるものじゃないわよ。基本的にはね。
男の人はナンパをするために1人で来たとしてもおかしくないけど、
女の人が1人で海水浴場に来てぼんやりとしてたらなんだか変じゃない」

僕は目を動かして灰色の空を見たあと、さつき姉に対して頷いた。
頷いたのを見て、さつき姉は思い出したように声を出した。
「ねえ、もしかして惣一もナンパとか、したりするの?」
「なんでそう思うのさ」
「いいから質問に答えなさい」
さつき姉は少しだけ眉根を寄せた。
別に隠すようなことはないし、そもそも隠すものが無いので正直に答える。

「ナンパはしない」
「本当に?」
「しようと思ったことはあるよ。……ちょっと違うか。
僕の想像の中にいる僕が、ナンパしようかどうか考えたことがある」
「……よかった。駄目よ、ナンパなんかしちゃ。
遊びに行きたいんなら私を誘ったらいいわ。私はご飯は割り勘にする女だから。
今日みたいにね」

さつき姉は時刻を確認すると、屋根のあるベンチのところへ向かった。
僕もベンチに座り自分の弁当を取り出して、次にさつき姉の弁当を差し出した。
さつき姉の後ろにある雨の降る様子を見ていると、さつき姉に問いかけられた。
「想像の中の僕、とかいう言葉をよく使ったりするの?」
「普段は使わないよ。今日はさつき姉が二度寝した横で小説を読んでたから、
なんとなく言ってみたくなっただけ」
ふーん、と呻いてから、さつき姉は食事を再開した。


589 名前:向日葵になったら ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/05/27(日) 12:29:15 ID:nfd27eRQ
海水浴場から離れてバス停に向かう途中、お土産屋に立ち寄った。
遠く離れた街までやってきたから、家族や友達に買うためのお土産を選ぶのだろうと
僕は思ったのだが、さつき姉はどうやら違うことを目的にしているらしかった。
さつき姉はキーホルダーが大量に吊るしてある回転式ディスプレイを、何度も熱心に
回しながら難しい顔で睨み付けている。

お土産屋の中は人がいなくて閑散としていた。 
店内の広さは僕の部屋をひとまわり大きくしたくらいのもので、壁にまで商品が置かれていた。
外観はお土産屋の看板がなければ素通りしてしまうほどに地味で、あまり繁盛していない
のではないかと僕は思った。
今日は、雨が降っているせいで誰も店内に入ってこないどころか、路地を歩いている人すらいなかった。

「惣一、これ」
さつき姉の声に振り向くと、目の前に目玉が現れた。
形容しようもなく、目玉そのものだった。本物ではないが。
目の前にかざされた目玉のキーホルダーは直径が1cm少々の大きさでとても軽く、
銀色のリングには200円と書かれたシールが貼ってあった。

「それ、買いなさい」
「なんで? キーホルダーなら間に合ってるんだけど」
「いいから買いなさい」
同じやり取りを繰り返しても、さつき姉は強硬な姿勢を崩さない。
仕方なくレジに行って会計を済ませると、さつき姉も同じものを購入した。

さつき姉は右手で目玉のキーホルダーをぶら下げ僕に差しだし、左手のひらも差し出した。
「交換しましょ、このキーホルダー」
「……なんで? 同じものじゃないか」
「別々に買った、って点では別物でしょ。
私は惣一のものを持つから、惣一は私のを持ってちょうだい」

買わされた理由もわからないうえに、交換する意味も掴めない。
とはいえ、断る理由はない。
僕はキーホルダーをさつき姉に渡して、さつき姉のキーホルダーを受け取った。
「今日から私が居なくて寂しくなったときは、それを見て紛らわしなさい。
私も寂しくなったときは同じことをするから」

2人でお土産屋の外に出ると、空の色はたいして変わっていなかったものの、雨はまったく
降っていなかった。
バス停に着いて到着したバスに乗り、降りてから自宅に帰るまでの間、僕は右のポケットに
入った目玉のキーホルダーを適当にいじった。
何度触っても変わりなく、プラスチックの滑らかさしか感じられなかった。


590 名前:向日葵になったら ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2007/05/27(日) 12:31:06 ID:nfd27eRQ
部屋に戻ってきてから、僕は携帯電話を置きっぱなしにしていたことに気づいた。
着信を確認すると、大学の友人の1人から何度か電話がかかってきていた。
かかってきた番号に、折り返し電話をかける。
4コール目で繋がった。
『もしもし? 北河君?』
「うん」
『どうして出なかったの? どこかに行ってた?」
「まあ、ちょっと散歩にね」
『ふーーん』

部屋の時計で時刻を確認すると、長針は4時を差していた。
時刻を確認できるだけの間隔を空けて、友人の声が聞こえた。
『聞いてくれますか、北河君』
「それって、聞いてくれることを前提にしての質問だよね」
『実は私、山川は本日朝7時に目を覚ましたところ、隣に彼氏が寝ていないことに気づきました。
あれ? どこにいっちゃったの? と口には出さず彼氏を探して部屋を右往左往する私。
トイレ、浴室、冷蔵庫の中、ゴミ箱の中を覗き、首を傾げながらテーブルを見ると!』
「見ると?」
『合鍵は返しておく 俺たちはこれで終わりにしよう。 と書かれたメモを発見しました』

僕はほう、と言いそうになった自分を抑えて、次の言葉を待った。
『というわけで、明日の夏祭りアンド花火大会は北河君と行くことが決定されました。がちゃり』
「がちゃり、じゃないよ。なんで勝手にそんなことを決めてるんだ」
『いいから付き合いなさい! これは決定事項です!』
「……まあ、別にいいけどさ」
『よろしい。では明日の朝北河君の自宅へ迎えに行きます。シャワーを浴びて待っていてください』
友人の山川はこういう冗談をしれっと口にする。
性質の悪さが子供っぽくて面白いから、僕にとっては気の合う友人の1人だ。
「わかった。じゃ、明日会おう」
と言ってから、僕は通話を終了した。

携帯電話をテーブルの上に置いてから水でも飲もうか、と後ろを振り向くとさつき姉が
真後ろに立っていることに気づいた。
「惣一、今のは誰? ずいぶん楽しそうだったけど」
言葉の中に隠しきれない不満の色が混ざっている。やけに機嫌が悪そうだ。
「大学の友達」
「女の子でしょ? 女の子よね? 女の子なんでしょう?」
「う……ん。そうだけど」
なぜ言葉を繰り返したのはわからないが、喋るごとに目と眉がつりあがるさまから察するに、
さっきの電話の内容が面白くないものだったらしい。
山川の声はよく通るから、真後ろに立っているさつき姉にも聞こえていたはずだ。

さつき姉は不機嫌から微笑へと表情を変化させた。
「そうなんだぁ。女の子の友だちねぇ」
頷く動作を繰り返しながら、さつき姉は台所へ向かい夕食の準備を始めた。
包丁とまな板のぶつかる音が、昨日とは違い甲高く響いた。


591 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 12:32:39 ID:nfd27eRQ
次回へ続きます。


592 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 12:55:26 ID:Syk0eZLV
最近投下も多いし保管庫も順調で調子がいいな
職人様と保管庫管理人様GJです

593 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 13:27:40 ID:Bk2z3+GI
>>590
一服もった翌日とは思えないほのぼの展開にマターリ
でもさつき姉はまだ何かたくらんでそうでw

いつの間にか480KB越えてるな、次スレ立ててきます

594 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 13:30:18 ID:Bk2z3+GI
立ててきました

ヤンデレの小説を書こう!Part7
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1180240137/

595 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/27(日) 16:43:09 ID:aqP1ZS1J
>>594
ねぇ、どうしてみんなPart7のところにいっちゃうの・・・?
どうして私を一人にするの?なんでかな?どうしてかな?
あっ、そうか、そうだよ私わかっちゃった!

P a r t 7 が あ る か ら い け な い ん だ 。



596 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/28(月) 01:16:14 ID:D8neUUqs
ねえ、ど、どうしても行っちゃうの?
わかった・・止めないよ。行って欲しくないけど・・ でもきっと戻ってきてくれるもんね!
だから私、悲しくないよ。じゃあ、行ってらっしゃい。帰ってきたら、ずーっといっしょだからね!

じゃあいってらっしゃい!!
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1176605863/




あれ、どうしたの?行かないの?・・ふふ、やーっぱりあなたも一緒にいたかったんだね。
ダメだよ、クリックしても行けないってことは、ほら、もともとそういう運命だったんだよ。
だ・か・ら、ずーっと一緒。あなたは、私と一緒にいるの。

・・・行かせないんだからっ!!!

597 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/28(月) 12:26:20 ID:xh81Vut7
「電波的な彼女」(集英社スーパーダッシュ文庫)に登場する堕花雨はヤンデレっぽいな。
前世から主人公に仕える騎士とか言ったり、主人公のピンチには駆けつけたりするところはかなりイイ。



598 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/28(月) 15:56:33 ID:NVdWZOU6
>>596
いけねーwww

599 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/28(月) 16:26:55 ID:LHLyR6Ff
>>597
雨はヤンデレとは違うと思うんだ。むしろ美夜こそがヤンデレだと、私は主張したい。

600 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/28(月) 23:54:31 ID:XJTuBkHm
雨は主であるジュウ様が例えば他の女とくっついても
辛くても黙って我慢するからな、単に前世云々言っている電波美少女だ
美夜の方がよっぽどヤンデレだしw
昔レイプされたせいで心が壊れちゃって
ジュウ様が好きなのに素直に好きと言えないで、いい友達止まりでいて
んでジュウ様に好意を寄せていた委員長殺す時は歓喜していたからな
最終的にはジュウ様を殺してジュウ様との思い出を完結させて美化しようとして
んで殺す寸前にジュウ様助けにきた雨に対し
「……なんで、邪魔するの? せっかくジュウ君と二人きりで、いい感じに終わりそうだったのに、台無しじゃん」
で「邪魔なのよ、あんたは! 邪魔なの!」
あの切れ方はいつもジュウ様と一緒にいる雨に対しての嫉妬を感じたねw
そして雨に護身用のスタンガンまともに喰らっても怨念で立ち上がり、雨を殺そうとするあの姿はまさしく病んでいるw
んで結局雨を庇ったジュウ様をナイフで刺しちゃって、刺された痛みを無理矢理抑え込みながら微笑むジュウ様と流れる血を見て正気に戻って
「こ、こんなの違う、こんなの違う、ジュウ君、違うんだよこれは、これは違うの、これは、信じて、わたしは、わたしはね、本当は……」
まぁ全て言い切る前に雨にスタンガンで止め刺されたんですがw

しかし長いな、コレ。まぁ埋めネタだと思って流してくれたら幸いッス

601 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 06:47:16 ID:LZH3xKXm
知らない人のために補足。

美夜をレイープしたのはジュウ君ではありません。頭のおかしいサラリーマンです。

602 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/29(火) 09:15:19 ID:w9fXHkk5
まあ、なんだ。
あんまここで話す事じゃねえやな。
つうわけで興味をお持ちになった方はこちらへ。
エロパロ板
http://same.u.la/test/r.so/sakura03.bbspink.com/eroparo/1171037946/l10


603 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 11:01:05 ID:2QP3LuSo
容量まだあるからヤンデレ関連の雑談はこっちでいいのかな
埋めネタを待ちつつ

604 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 15:44:48 ID:HS3I2NJi
Part7建ってたんだな気づかなかった
でもなんで?

605 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 15:49:04 ID:tFW0wJgA
>>604
ナニイッテンダ オレタチニハ6スレちゃんガイルジャナイカ

606 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/30(水) 22:45:10 ID:hK5TBuj7
藤子Fの短編にでてくるロボットの話がヤンデレだと思った今日この頃。
主人公の少年にデレた結果
自分を女性化したり主人公の女友達に嫌がらせしたり最後には主人公に
「アナタノタメデス」
と自分で自分を騙す嘘をついて自己正当化したり……

まあ萌え要素は皆無の作品だが

607 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/31(木) 22:15:40 ID:FDvRUO+h
キモウトのドラミちゃんがミーちゃん(ドラの彼女)をドラ焼きの具にする急展開マダー?

608 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/31(木) 22:17:31 ID:wBFZiGSg
>>607
無理あるだろその展開wwwww

609 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/31(木) 22:46:12 ID:rpZeIlfO
では、ジャイ子が兄の似顔絵をスケッチブックに描きまくっていて
その事実をひた隠しにしている、というのはどうだろうか


610 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/31(木) 22:53:19 ID:DYK+MQP2
>>609
それだ! と言おうと思ったが貴様には死んでもらう

611 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/31(木) 22:59:12 ID:zOQut7Pn
自宅に来たのび太を帰したくない

靴を隠してしまえば帰れないわ
という行動に出た女の子がいたが彼女はヤンデレの素質ありだな

612 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/31(木) 23:13:08 ID:j2cdc+Z7
>>611
最終的には
そうだ、足を切ってしまえばいいじゃない!
となるわけだな。

613 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/31(木) 23:40:45 ID:FDvRUO+h
>>609
口には出せない妄想をスケッチブックに書くことでかろうじて兄への気持ちを抑えている妹。
そんな彼女の前に青いタヌキが現れる。
そいつは一冊のスケッチブックを取り出し言う。
「このスケッチブックに描かれた事は現実になる」と。
半信半疑の妹だが何とは無しに「兄に抱き締められている自分」の絵を描く。
次の日、兄の友人の骨川が無惨な死体となって発見された。
忘我にある兄は温もりを求めて妹の体を抱き締める。
妹は抗いがたいスケッチブックの魔力に取り付かれて行く…。

これじゃどっちかてーと喪黒福蔵の仕事だな。

614 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/05/31(木) 23:53:06 ID:rpZeIlfO
オマイの想像力に脱帽したw

615 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/01(金) 04:38:51 ID:DFNbtShq
牡丹燈籠とかヤンデレじゃね?
ネタが古いけど

616 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/03(日) 13:02:26 ID:AWqSsNM3
誰も覚えて無いだろうけど埋めがわりに前スレにおいてった奴の続き。
前スレのを読んで無くても多分意味わかると思うけど、まあ埋めネタと思ってくれ。






目が覚めた。

部屋の白い天井はいつもと変わらず少し薄汚れている。
何か素敵な夢を見ていた気がするのだけれど、上手く思い出せない。

ため息をついて私は起き上がった。また今日も振り向かないあの人と、
あの人の可愛いあの子のいる学校に行かなくちゃいけない。私が休んでもあの人は
気にしないだろう。寂しい、淋しい、私の予測。けれどきっとあの子は心配して
しまうだろう。悲しい、哀しい、優しい事実。2人で見舞いになど来られた日には、そんなのは堪らない。
そんなのは耐えられ無い。許したく無い。
重たい頭の霞を払うべく顔を洗って部屋に戻ってくると、急に今朝の夢を思い出した。

もしくは今朝の夢が私のベッドに腰かけていた。

白いタキシードの目の細い………きっとこういうのを優男って言うんだろう。
黒いシルクハットを組んだ足に載せている。

「もしかして悪魔さん?」
「覚えていていただけましたか」
「今思い出したのよ」



617 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/03(日) 13:04:21 ID:AWqSsNM3
私はこの異常な事態を全く異常だと受け止められていなかった。
昨日の月明かりの下で出会ったこの人。1人、ひとおり、独りの私の前ににあらわれた。

「本当にあの人を私のものにしてくれるの?」
「ええ。ただし条件がありますが」

悪魔さんは微笑みながら言った。

「あなたの声を一部いただきます」

私は笑って、嗤った。

「いいわ。声なんていくらでもあげる。けれどひとつ聞いてもいいかしら」
「なんですか」
「一部ってどういうこと?」

「それは学校へ行ってからのお楽しみです」

悪魔さんは立ち上がってこちらへ近付いてきた。

「契約成立ということで宜しいですか?」
「ええ。お願いするわ」

私は瞳を伏せた。悪魔さんがの細い指が顎を捉えて上を向かせ、唇をなぞって行く。

私の中の、なにかが溶け出して流れて行くのがわかった。

「契約完了です」

悪魔さんは微笑みながら言った。











うん、ここまでしか無いんだ。本当に済まない。

618 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/03(日) 13:19:54 ID:j3WZZpLi
>>617
すまないなんて言っても
続きを書くまで許してやらない

てことでGJ!

619 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 00:11:02 ID:nQXPpt1R
最近妹がおかしい。
なにをしているかわからないが、俺の部屋にときどき忍び込んでいるようだ。
帰ってきてから部屋の中を荒らされていないか確認しても、何もなくなっていない。
しかし、何かしていることは間違いないはずだ。

妹は昔から、俺に対してきつく当たる。
いわゆるツンデレという奴だ。
比率は俺の大好きなツン9割、デレ1割……ではない。
ツンが99%、デレが1%というところだ。
妹が俺を兄として扱ってくれるのは、親戚が集まる正月ぐらいのものだ。
それ以外はごみのような扱いだ。

以前、妹の後ろに立ったことがある。
決して、何かしようとしたわけではない。断じてない。
だというのに、振り返りざまに回し蹴りを放たれたのは何故だろう。
そのときに見えた妹のスカートの中は白だった。
俺としては青と白のストライプであったら嬉しかった。

今日のスカートの中は黒だった。
俺がそのことを知っているのはなぜか?
答えはひとつしかないだろう。今日はとび蹴りだったのだ。

今日も1人でBBSPINKのヤンデレスレを覗いてみることにする。 
ちなみに俺は18歳だから問題ない。
まあ、去年から覗いているから関係ないけどな。

さて、今日の書き込みは……


620 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 00:12:00 ID:nQXPpt1R

666 名前: 私のお兄ちゃん [sage] 投稿日: 2007/05/XX(日) 20:32:58 ID:B1XmPAna

「だめえ、お兄ちゃぁん!」
「なんだよ、お前から誘ってきたんだろ」
私は今、お兄ちゃんに襲われている。
お兄ちゃんが突然、私を部屋に呼んだかと思ったら、ベッドに押し倒したのだ。

「誘ってなんか、いないよぉ……」
「嘘つけよ、いつもあんなやらしい下着履いて、俺に見せびらかして……
お前、本当はこうしてほしかったんだろ?」
お兄ちゃんが私のスカートをめくって、太腿を撫でた。
太腿をこねて、つまんで、容赦なくなぶる。
私はすでに動けない状態になっている。

だって……本当はこうして欲しかったから。
いつも黒とか赤の勝負下着を履いているのは、いつお兄ちゃんに襲われてもいいように。
お兄ちゃんを怒らせるためにいつも私は冷たく当たっている。
本当は、本当は自分の体で迫りたいけど……恥ずかしいから、無理。
「や、やあぁ! そこ、だめぇ!」
「へえ、今日の下着は黒か。どこでこんなの買ったんだよ」
「そんなの、言えないよ!」
「言えよ、ほら」

お兄ちゃんが、ショーツの上から私の入り口を指で弄った。
耐えなくちゃ、耐えないと……興奮して、出てきちゃう。
でも、すぐに理性の壁は決壊した。
「あっ、だめ……乳首、だめぇ!」
「へえ、綺麗なピンク色してるな。今まで男に触らせたことないんだろ」
「あ、あぁぁ……んんっ」

お兄ちゃんが私の乳首を咥えて、下で転がした。
耐えようとしても、私の理性は働かない。
こんな優しい愛撫には、耐えられない。
もう、だめ――――っ!

「ん――――っ!」

耐え切れず、私は秘部から愛液を出してしまった。
恥ずかしさで、失神してしまいそう。
私が、毎日お兄ちゃんを想ってオナニーをしてることとか……淫乱なところとか、ばれちゃう。
お兄ちゃんは私の乳首から唇を離すと、ショーツを脱がした。
そして……。


621 名前:埋めネタ[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 00:13:03 ID:nQXPpt1R
……これは、いいな。
俺に妹属性はないが、なんとなく興奮する。
よし、期待レスでもするか。


667 名前: 名無しさん@ピンキー [sage] 投稿日: 2007/05/XX(日) 23:58:08 ID:B1XmPAna

wktkwktk


……あれ?IDが同じ?なんで……?
俺が書き込んだ?いや、俺は長文を書くなんてできないぞ。
仮に酔って書いたとしても、5行ぐらいで終わるはずだ。
だとしたら、俺以外の、この家に住んでいる人間がやったということか?
この部屋に出入りする人間というと、俺と妹と――――

「お兄ちゃん……とうとう見ちゃったんだね」
妹の声が、耳のすぐ近くで聞こえた。
まさか、この文章は――!
「おやすみ、おにいちゃん。明日は学校に行かなくていいからね。
ううん、明日も、あさっても、その次の日も、ずっとずっと……あははっはははははは!」


埋め!

622 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 01:44:43 ID:6XQkOeeY
こ、これは・・・


623 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 03:21:08 ID:xcXryOKx
鬱っぽい感じのヤンじゃなくて、躁病っぽいハイテンションなヤンが見てみたい。

624 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 20:20:07 ID:6DIa0wjA
実験

「見つけた! この人だっ!」
「えっ?」

通勤途中、電車の中で俺はいきなり女子高生に腕を掴まれた。
まさかこの俺に痴漢の冤罪がかかろうとは思わなかった……。
まてまてまて、俺は片手にかばん、片手はつり革だぞ!
周りの乗客が一斉に俺に視線をよこす。

女子高生はつり革を持った俺の右腕に絡みき、頭を摺り寄せてくる。
「にゅふふー。」 とか言いながら絡むのはやめていただきたい。

「そいつ、痴漢なのか?」

声のした方――後ろを振り向くと、ガタイのいい学生が俺を睨んでいる。
待てよ、どう見ても痴漢じゃねーだろ!
そいつはポキポキと拳を鳴らしながら、俺に近づいてくる。
ダメだこいつ、絶対に「電車男」を見てる!

逃げようにも、つり革を掴んだままの状態じゃ転倒することは必至だ。
八方塞がりとは、この事だな。 俺は諦めて目を閉じ、歯を食いしばった。
ふと、右手の荷重が無くなった。……何もこない。

625 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 20:33:32 ID:6DIa0wjA
ドン!という大きな音が鳴る。

……俺は恐る恐る目を開けてみた。さっきの学生が
電車の隅に寝転がっている。そして、拳を天にかざした女子高生。

何、これ?

「もう大丈夫だよ、ダ→リンv」

何が?

626 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 20:51:49 ID:6DIa0wjA
俺はこっそりと電車から降りたところを押し倒された。
「どこ行くの? v」

そりゃあ、きみの居ない所へ。 それに語尾にハートをつけるな。
「あ、もしかしてテレてるんだ v かわいいv v」

「いつまでも電車の扉の前で寝転がってたら踏み殺されそうなんだが。」
「あ、ごめんね――いたっ。 さっきので手首をひねっちゃったみたい……。」

よく見ると小柄な子だ。 150cmも無いような印象を受ける。
そんな子が大男をK・Oしたのだから怪我くらいはするだろうな。
仕方が無いので医務室に連れて行くことにした。

627 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 20:52:39 ID:6DIa0wjA
難しい。

628 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 20:59:51 ID:nQXPpt1R
>>627
正直な感想を述べよう。

武闘派ヤンデレ、イイ!ダーリン!

629 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 21:15:16 ID:6DIa0wjA
埋め完了

630 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 21:18:14 ID:iEXfw0h2
や、やめろ・・・くるなっ!
うわああああああああああああああああああああああ・・・・・・・・・


埋め

631 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 21:22:02 ID:6DIa0wjA
逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない
逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない
逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない
逃がさない逃がさない逃がさない逃がさない

わかってくれた?

632 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 21:30:05 ID:nQXPpt1R
ヤンデレスレは!

633 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 21:31:44 ID:fmSJSNco
エロエロよ~!

最終更新:2009年01月13日 13:48