151 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 02:21:36 ID:L4JgZ4j9
GJ!!!キモウトいいよキモウト。
しかし六人の彼女はすごいなーwww
実は全員ヤンデレだったりしてwwwww

152 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 02:36:37 ID:ivzt5M90
アルティメットヤンデリズムにGJ!


153 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 06:59:14 ID:0L+Bf/fc
>>151
いやぁ、ろくに争いもなく穏健に関係を続けてるんだからそれとは真逆だろw

154 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 09:34:43 ID:GMqhbfxN
全員が全員ご主人様の望む事を何より優先するタイプの性格ならありえるけど。

155 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 16:45:44 ID:APrSEPmV
投下します

156 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 16:48:19 ID:APrSEPmV
目が覚めると俺は自分の部屋の天井を見つめていた。
「…あれは…夢…だったのか…」
枕を触れば寝汗でぐっしょりと濡れていた。
服はいつの間にかパジャマに着替えられており、
制服はいつものようにきちんとハンガーに綺麗な状態で掛けられていた。
「あれ…俺は…昨日……菊池が…ぅっ!!?」
頭がずきりと痛む。喉がかすれている。関節が痛い。
ずきん…ずきん…ずきん…
この感覚に覚えがある。
記憶の欠落。
あの後俺はどうした…?思い出せ…思い出せ…思い出せ…!!
親父の書庫で本を片付けながら、つい読みふけってしまった俺。
汚れた台所には誰も居らず、焦燥感に駆られた俺。
予想通りの場所に佇む夏海。
そして壊れた人形…
そうだ…なにがおかしいことがあるんだ?壊れた人形はゴミ捨て場にあるべきなんだ。
なのに、俺は何かがおかしいと感じている。
そう、夏海は壊れた人形を捨てに来ただけじゃないか。
俺がそうしたように。
夏海もごみを捨てにきたんだ。

………………………………………?
いや、よそう。
もう、考えるのはやめよう。
夢だ。夢に違いない。ふぅ…まいったな…
そんなふうにベッドの上でうだうだしていると、微かに階段を駆け上がってくる音が聞こえる。
きっと、夏海だ。
「お兄ちゃん!?いつまで寝てるの?もぅ…アルバイトに遅れちゃうよ?
早くご飯食べて…って…お兄ちゃん?どうしたの…なんだか…顔色悪いよ?具合悪いの?」
心配そうに俺の顔を覗き込む夏海の顔。
そうだ、こいつがあんなことできるわけ無いじゃないか…
「あ…ああ…いや、ちょっと悪い夢を見たせいかな…」
「本当に大丈夫?アルバイト…お休みする?」
「いや、大丈夫。直ぐに降りるから。先に行っててくれ。」
「うん…でも、無理しないでね?あ、お母さん、さっき寝たところだから静かに下りてきてね?」
「ああ…すまないな夏海…あ、そうだ…ちょっと馬鹿なことを聞くけどいいか?」
「?なぁに?お兄ちゃん。」
「昨日…誰か家に遊びに来てたっけ?なんか昨日のことがよく思い出せなくって…」
夏海は本当に不思議そうな表情で、しかしはっきりと俺に言った。
「?昨日は誰も遊びになんて来てないよ?お兄ちゃん…もう、惚けるにはまだ早いよ♪」
そんなふうにあいつはくすくす笑いながら階段を静かに下りていった。
そうか…やっぱり俺の勘違いか…
ふぅ…とため息をつくと俺は素早く着替えて一階に下りていった。
夏海の作った朝食をかき込むと、弁当箱を引っつかんで家を飛び出した。
出掛けにちらりとゴミ捨て場を覗くとそこには何も残っていなかった。
「ったく…夢に決まってるだろ…しっかりしやがれ…」
後ろを振り返らず自転車に跨りバイト先まで全力で漕ぎ出す。
くだらない夢で遅れてしまった時間を取り戻すように。
流れる景色と額に触れる早朝の空気の冷たさが気持ちよかった。
また、今日も変わらない日常が続くはずだった。

学校で菊池が行方不明になっていることを聞くまでは…


157 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 16:51:58 ID:APrSEPmV
小泉八雲は考え込んでいた。
珍しく彼の周囲には彼の取り巻きの六人が揃っており、
皆楽しげに談笑していたのだが,彼は一人自分の世界で誰かと対話しているようだった。
そんな様子を見かねた一之瀬京子が恐る恐る口を開いた。
「あの…八雲様。何かお悩み事でしょうか…」
「ああ、少し妹のことでね…」
「香住様…のことですか。」
それだけで総て心得たと言ったように、
二階堂愛、三鷹梓、四谷楓、五代瑞樹、六道洋子はそれぞれに口火を切った。
「それで…八雲様はどのように考えておられるのですか?」
「香住様に諦めていただくか…藤岡様に告白していただくか…でしょうか…」
「ですが、藤岡様も香住様のことは憎からず想って居られるように見受けられましたが…」
「では、なぜ香住様の告白を袖になさったのでしょうか」
「藤岡様にはよく懐かれている妹君が居られます。おそらくそこに何かの原因が…」
「藤岡様は香住様よりも、その妹さんを愛しておられると?」
「いえ、その逆でしょう。その妹さん…夏海さんでしたわね。
お姿を幾度か拝見いたしましたがとても可愛らしい方でしたが…
ただ、私の調べたところによれば既に数人の殿方の告白をお断りされているそうです。」
「その理由が兄への偏愛だと?」
「確証はありませんが…ですが、同じクラスにいる私の妹からの情報によれば、
藤岡様への好意を示す言葉を口にした女子に対して釘を刺してきた…そうです。」
「釘?…要するに脅しですか?」
「仔細までは不明ですが、取らないで欲しい旨を告げられたそうですが、
どうもその際に夏海さんの眼が怖かった…というよりも、殺されると感じた…のだそうです。」
「殺される?それは穏やかではありませんわね。どうします?」
「普段の素行に関しては問題なく、寧ろ優等生といってよい方ですが…
どうも藤岡様のこととなると壊れておられる…そういった方なのですね?その夏海さんは…」
「ええ…ですから、藤岡様が香住様の告白をお断りになられたのは、その辺りのことを懸念してではないかと…」
「藤岡様では夏海さんを抑えられないのでしょうか?」
「普段から壊れている方ならいざ知らず、普通に接している限りではとても可愛い妹さんだそうですので…
邪険にもしにくいのでしょう。」
「それでは、私たちで夏海さんに対して何らかの措置を講じますか?」
「それこそ、藤岡様が黙っておられないでしょう。大事な妹さんであることに代わりはないのですから…」
「結論から言えば、夏海さんが藤岡様以外の方とお付き合いいただくことが最良の解決策ですが、
早瀬さんも袖になさったと聞いておりますし、それ以上の素材となると…」
「それは無理でしょう。そういった程度の方に靡くようであればここまで悩みはいたしません。
簡単に考えれば私たちに八雲様を諦めさせる手段と考えてもよいでしょうね。」

158 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 16:53:07 ID:APrSEPmV
ふぅ…と、八雲はため息をついた。
そうだ。夏海ちゃんはこの子達と同じ…いや、僕と同じく壊れた人間だ。
この子達や夏海ちゃんが諦めるとすれば…
それは僕や春樹の死か、或いは自身の死によってか…
理想であれば僕や春樹の手にかかって死にたいと思うのだろう。
僕だってそうなんだから…。
そんな彼女たちだからこそ、僕が
「夏海ちゃんを殺してくれないか?」
と頼めば躊躇うどころか喜んで殺しに行くだろう。
だが、それでは春樹が悲しんでしまう。
それは出来れば避けたいことだ。
なら僕はどういう結末を望む?
それは春樹と香住が幸せになることだ。
それ以外の結末は望めない。
春樹と香住が同時に幸せになるにはあの二人が付き合わなければならない。
僕が愛する春樹と、僕の魂の分身である香住が付き合うことで僕は満たされる。
僕が春樹と付き合っても、香住と付き合っても駄目だ…
香住には春樹の子供を産んでもらわなくてはならない。
僕には春樹の子供を産んであげることはできないのだから…
そうだ僕が幸せになるには春樹と香住が笑っていられる世界が必要なんだ。
春樹は香住が好き。香住も春樹が好き。
であれば、やはり邪魔なのは夏海ちゃんだけか…
誰がやる?僕か?彼女たちか?…いずれにせよ上手にやらないとね…
でないと、僕が春樹に殺されてしまうよ…
いや…まてよ?それも悪くないな…ふふ…僕が春樹に殺されるのか…
それもいいな…
その場面を思い描くだけで…

小泉八雲は勃起していた。


159 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 16:55:27 ID:APrSEPmV
投下完了です。
まだ、もうちょい続くのですが…
だんだんと自分でも本当にヤンデレ?
とゆーか、デレ少ない(見当たらない)と思うのですけど
一応、ヤン&デレのつもりです。

160 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/06/04(月) 18:16:32 ID:bjQ7XcoA
ちょwww八雲が一番やべぇwww

161 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 18:31:01 ID:ATn+BFnL
GJ!!ってか6人の彼女もみなヤンデレ会!
コワスでもwktk

162 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/06/04(月) 18:38:33 ID:U7aMV7Sp
>>158夜雲テラクレイジーwww

163 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 18:42:02 ID:tNy1ktF+
キモウトVSヤンデレw
どっちが勝つのかwktk

164 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 18:59:41 ID:L4JgZ4j9
GJ!!!151だが、宝くじに当たった気分だwwwww
しかし八雲タソもヤンデレとは恐れいりますた。
まさにヤンデレハーレム!!!!


165 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 20:15:16 ID:Y+5IN+YY
>>158
このSS、マトモな人間がいねぇ……!
GJ!

166 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 21:12:21 ID:6DIa0wjA
>165
凄いほめ言葉だwwww

167 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 21:12:21 ID:GMqhbfxN
唯一まともっぽい香澄ちゃんに期待w
果たして彼女は想いを遂げられるのか!

168 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 21:13:25 ID:GMqhbfxN
香住ちゃんだった……
誤変換申し訳ないっす。

169 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 22:46:32 ID:Q+MHL2lT
途中まで八雲が実は女でしたー、という淡い妄想をしていたが……
イヤ、これはこれでいいかもしれん……
つーかイメージ的に薔薇のマリアのアジアンだなぁ

170 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 23:23:58 ID:JbTkgrPr
またマイナーなのをたとえだすなww>>169
こんなところでその名を聞くとは

171 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 23:50:52 ID:OQQre61b
これはGJ!

>まだ、もうちょい続くのですが…

この話が「もうちょい」程度で収まるなんて想像できないw

172 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 23:52:21 ID:tJxXTVKa
早く続きこないかな、wktkが止まらない

173 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/04(月) 23:58:22 ID:APrSEPmV
投下します。

174 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 00:01:12 ID:APrSEPmV
ぶんっ…!と凶器を振り下ろすと、それは西瓜のように紅い中身を曝け出した。
ぶん…ぐちゅり…ぶん…ぐちゅり…
奇妙な音を立てながらそれは潰れていく。
潰れながらもその指先はまだ動く。
ぴくり…ぴくり…

ぎゅっ…
指先に力を更に込める。
ぐちゅり…ぐちゅり…
行き場を失った体液が内側から溢れ出す。
それはまだ微かに動いていた。
助けて欲しいと懇願するかのように。
何故死ななければならないのだと嘆くように。
しかし、同時にそれは喜んでいた。
まるで、それを待ち望んでいたかのように…
まるで、それを待ちわびていたように…
やがて、それの時間はゆっくりと止まっていく。
ゆっくりと…ゆっくりと…
まるで電池の切れかけた時計のように。
やがてそれは完全に動きを止めた。
くっくっく…あははははは…あははははははははははは
笑い声が響く。押さえようとしても内側からこみ上げてくる。
何故だろう。何故こんなにもおかしいのか。何故こんなにも楽しいのか。
手に伝わる肉が潰れる感触も。断末魔の叫びも。溢れる血の匂いも。
その表情も。その壊れた身体も。その潰れた眼球も…あはははははは!!

やがて、それが完全に死んだことを確認した後、
遊びつくした玩具を捨てるかのように、
それをゴミ捨て場に捨てに行ったのだ。

175 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 00:02:35 ID:APrSEPmV
小泉八雲、一之瀬京子、三鷹梓 六道洋子 はいつものように午後のお茶を楽しんでいた。
「それで…間違いありませんか?」
「ええ、二階堂さん、四谷さんに続いて五代さんも昨日から家には戻られていないそうです。」
お茶を優雅に口元に運ぶと、三鷹梓は言葉を続けた。
「菊池さんを含めると行方不明者はこれで4名ですね。」
「やはり…といいますか、夏海さんに返り討ちにあったと見るのが妥当でしょうか?」
「それであれば自業自得ですね。八雲様からの指示なく動いた、云わば抜け駆け…独断専行の結果ですから…」
一之瀬京子は八雲の顔色を窺うと、八雲はいつものようににっこりと微笑むだけだった。
「あの3人が死んだと断ずるにはまだ早いのではないですか?」
「あら貴女はあの3人がまだ生きていると考えているの?」
「ええ、私なら拷問の末に殺しますから」
クッキーを齧りながら、楽しそうに自分の趣味を語り始める六道洋子を横目に一之瀬京子が話を進める。
「あなたのいい趣味はさておき、本当に…夏海さんがあの3人を殺したのですか?」
「あの人以外の誰があの3人を殺しまふの?」
「私たちの誰か…という線はありませんの?」
「…八雲様とのルールを無視する度胸のある人がここに居ると?」
「確かに…ですが、あの子にあの3人を殺すことが出来たとはどうも考えにくいのです。」
「油断があったのではないですか?」
「その可能性は捨て切れませんが…では、どうします?」
「春樹さまに事が露見しないうちに、夏海さんを誘拐、監禁。出来る限り外傷を抑え、可能であれば洗脳。最悪、春樹様の傍を離れるように説得する…」
「…やはり、一人で事を起こすのは困難ですね。」
「ですが、これが最も八雲様の意向にそった方針なのでは?」
八雲は微笑みながら微かに
こくん
と頷いた。
「…では、いつ決行しますか?」
「善は急げと申します。今夜はいかがですか?」
「ええ、丁度今夜は曇りですわ。」
「獲物はどうしますか?」
「まずは誘拐ですからクロロフォルム、ガムテープ、ブラックジャック、スタンガン程度でよろしいのでは?」
「移送手段は?」
「車は私が用意いたします。」
「免許は?」
「そんなもの必要ありません。動けばよいのです。」
「あとは香住様、春樹様に事が露見しないことが重要ですけど…」
一之瀬京子が八雲に指示を仰ぐようにその言葉を待った。
「香住なら大丈夫だよ。あの子はあれ以来、春樹とは距離をとっているからね。
それに春樹なら今日はアルバイトのはずだ。だから、6時から10時までの間に終わらせれば露見しないだろうね。
よろしく頼むよ?春樹の為に…いや…僕の為にね…」
八雲の言葉に一之瀬京子、三鷹梓、六道洋子の顔がぱぁっと輝く。
「はい!必ず…必ず成功させてみせますから!」
そう、声をそろえて宣言すると、喜び勇んで部屋を出て行くのであった。

そんな彼女たちの様子をいつもと変わらない優しい表情で見送ると、
携帯電話を取り出し電話をかける。
RRRRR……RRRRR…
呼び出し音を待つ間…その口元が緩み、
うふふふ…
と笑みがこぼれる。待つ時間さえも今は楽しい時間だった。そして…
がちゃ…という音と共に電話が繋がった…


176 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 00:04:11 ID:APrSEPmV
とりあえず、投下完了。
一気に投下したいのは山々なのですが、もーちょい
見直ししてから投下します。
相変わらず、デレ少なくて申し訳ないのッス。

177 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/05(火) 00:22:33 ID:z5DhbTSq
お久しぶりです。13話を投下します。

178 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/05(火) 00:24:16 ID:z5DhbTSq
第十三話~無計画な2人~

華に二度目の告白をされた。
それだけならいい。女性には何度告白をされても嬉しい。
俺が気になっているのは、華の告白に込められた想いの強さだ。
華に初めて告白されたとき、正直言って嬉しかった。だが、あまり真剣には受け止めていなかった。
男を美化するあまりに行われる、ごくありふれた告白と変わりないと思っていた。
しかし、昨日の華の様子を見ていると、その考えは吹き飛んだ。

俺のことを昔から思っていた、俺が他の女と付き合っていたとき悔しかった、
俺が就職して離れていったときには寂しかった。
どう考えても、幼馴染としての好意とは違うものだった。
執着心、嫉妬、怒り。
持てる感情の全てをぶつけるような華の様子は、普段の冷静なあいつとは程遠いものだった。

華の気持ちに対して、どう応えるべきなのか。
俺は華に対して好意を持っているが、華を性的な対象としては見ていない。
そんなものは付き合っていくうちに変わっていくだろうが、問題はそこではない。
華を受け入れてしまっていいのか、というところが問題だ。

あの時、かなこさんが死んでしまってもかまわない、とまで華は言った。
華とかなこさんが向かい合ったとき、絶妙のタイミングで爆発が発生していなければ、
華とかなこさんはぶつかっただろう。
その結果がどうなるのかはわからない。ただ、無事では済まないということはわかる。
取り返しのつかない事態になっていた可能性もある。

そう思うと、華の気持ちにどうやって応えるか、迷うのだ。
気持ちに応えるより先に華の性格を矯正してやるべき気もする。
それとも、華の性格が歪んだのが俺のせいだというなら、気持ちに応えるべきなのか。
だが、それだけの理由で付き合うというのもおかしい。
そんな不真面目な気持ちで付き合うのは、華に失礼だ。

……ふう。
肩の力を抜いて、ため息をひとつ。
大仰な動きをすると、店長に何を言われるかわからない。
ただでさえ今日は遅刻して大目玉をくらっているというのに。

俺は今、アルバイト先のコンビニでレジ当番をしている。
菊川の屋敷から十本松の案内に従って自宅に帰って、最初に思いついたのは今日はアルバイトの日だということ。
昨晩はかなこさんに襲われたせいもあり、体はとてもだるかった。
それでも体に鞭を打って全速力で自転車をこいで来られたのは、店長の教育の賜物だろうか。

レジのカウンターに立って雑用をしながら、昨日のことを思い出す。
かなこさんとの情事、前世の絆、華の告白、爆発事件。
どれもこれもが日常とはかけ離れているものばかり。そして、全てが俺と無関係ではないということ。
俺自身がどう動くべきか、それすら決まっていない。


179 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/05(火) 00:25:59 ID:z5DhbTSq
午後4時。アルバイトを終えて、今は事務所の椅子に座っている。
今日は午前8時から12時までシフトが入っていたが、家に帰りついたのが11時だったため、
繰り下がって12時から午後4時までのシフトになった。
どうやら、香織が俺の代わりに入ってくれていたらしい。
本当に香織には世話になりっぱなしだ。後で何かお礼をするとしよう。

事務所のテレビをつけて、ニュース番組にチャンネルを合わせる。
予想通り、菊川邸で発生した爆発事件のことを報道していた。
今朝の午前7時ごろ、菊川邸にて二度の爆発が起こった。
犯人の名前や、犯行の動機などは不明。
死傷者の数は報じられていない。
二度の爆発以降、目立った破壊行為は見られない。
他の局にチャンネルを合わせてみても、内容は同じだった。
どこでも人的被害についての情報は一切流れていない。
せめて、かなこさんが無事かどうかだけでも知りたかったのだが。

俺が気になるのは、犯人の正体だ。一体誰が菊川家に爆弾をしかけたのか。
テレビでは菊川家当主を狙ったテロだ、恨みによる犯行だ、無差別テロだ、
と色々な可能性が議論されていたが、どれも的を射ていない。
被害者が公表されていないのが意見の混乱を煽っているのかもしれない。
せめて知り合い――かなこさんと十本松が無事でいてくれればいいのだが。

「あ」
今思い出した。十本松に無事に帰りついた、と連絡することを忘れていた。
アパートに帰り着いてから、すでに5時間が経っている。
いつまでに連絡しろとは言われていないが、早めに連絡した方が良いだろう。

「……連絡が遅れてすまん。……11時に帰り着いたぞ、と」
簡単な文章を打って、十本松宛のアドレスに送信する。
送信してからあまり時間を空けずに、メールが着信した。
十本松か?やけに早いな、もしかして連絡がくるまでじっと待っていたのだろうか。
携帯電話を見つめながらじっと待つ十本松……想像できるのがなんだか嫌だな。

メールを開いて送信者を確認する。送り主は十本松ではなく、華だった。
なんとも絶妙なタイミングで送ってくるものだ。
それに、華が俺にメールを送ってくるなんて珍しい。
アドレスを交換してから一度もメールを送ってこなかったのに。

本文には『おにいさん、アルバイトは終わりましたよね? 早く帰ってきてください』と書かれていた。
なんで華がアルバイトの終わる時間を知っているんだ?
アパートに帰ってきたらそれぞれ自分の部屋に入ったから、華は俺の部屋には入っていないはず。
カレンダーにはシフトの時間を書いているが、それを見なければわかるはずがないのに。
まさか部屋に入りこんだりは……さすがにしないか。


180 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/05(火) 00:27:41 ID:z5DhbTSq
店に出て缶コーヒーを買って、事務所に戻って、缶コーヒーを飲み干しても十本松から連絡はなかった。
無理もないか。なにせ十本松は菊川の屋敷に部屋を持っているんだし、かなこさんとも知り合いだ。
事情を聞いたり、聞き出されたりで忙しいんだろう。向こうからの連絡待ちだな。

缶コーヒーをゴミ箱に突っ込んで、さて帰ろうか、としたとき。
「雄志君。ちょっと待ってくれないかな」
後ろから肩を掴んで、俺を制止する人物がいた。
振り返る。腰に手を当てて、俺を見つめる香織がいた。
俺の経験に基づく推測によると、香織は不機嫌なようである。

「最近、雄志君は遅刻が多すぎるよ」
「すまん。今朝はいろいろあったんだ」
「いろいろって、何?」
「えっと……」
まさか昨晩俺の身に起こったことを言うわけにもいくまい。
とりあえず、事実をぼやかして伝えるとしよう。
「友達と一晩中飲んでたんだ。そのせいで起きたのが11時だったんだ」
「嘘っぽい」
勘づかれた?そこまで俺は顔にでやすい人間だったのか?
「雄志君に、ボク以外でそこまで仲のいい友達、いた?」
「……ああ、そういう意味か」
何気に失礼な発言だな。
俺に友達がいないみたいじゃないか。……あながち外れてもいないけど。

「もしかして、その相手って……華、ちゃん?」
「は?」
「華ちゃんじゃないの? 一緒に飲んでいた相手って」
「なぜそうなる。あいつはまだ未成年だぞ」
正論を言ったつもりだった。
が、香織は疑惑の眼差しを俺に向けたままである。
「お酒に酔った華ちゃんを、無理矢理どうにかしようとしたとか……」
「そんな犯罪行為に身を染めるほど俺は馬鹿じゃないぞ」
第一、華にそんな手が通用するはずがない。

「華ちゃん、可愛いから。雄志君が華ちゃんを選んだとか」
「……安心しろ。まだ選んではいないから」
言い聞かせるように静かな口調で言う。
香織は俺に好きだと言っていた。だから隣に住む華のことが気になっているんだろう。
俺自身、自分の気持ちに整理がつかない。いろいろありすぎて。
香織を選ぶか華を選ぶか……かなこさんの思いを受け入れるのか、迷っている。

香織は俺の言葉を聞いて、少しだけ表情を柔らかくした。
「あ、そ……そうなんだぁ、よかった……」
安堵した表情。香織が変わっていないことに、つい和んでしまう。
俺と香織の関係は、少しずつ変わっているのだろう。
変わって、変わって……最後にはどうなるのかはわからないけど、悪いことではない。
できるなら、良好な関係でいたいものだ。


181 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/05(火) 00:29:38 ID:z5DhbTSq
香織は自分のバッグを持つと、事務所から出て行こうとした。
「じゃあね、雄志君。……また」
俺は香織を見送ろうと思ったが、あることを思いついた。
「香織、今から予定があるか?」
「え? ううん、今日は特にないけど」
「じゃあ、どっか遊びに行かないか」
香織は俺を見つめながら、何回か瞬きをした。
そして。
「いいの!? じゃあ、今が、っら」
噛んだ。

香織は口を抑えながら後ろを向いた。
何度かうめき声を上げるとようやく回復したのか、俺に向き直って口を開いた。
「今から、付き合って欲しいお店があるんだ」
「いいぞ、どこだ?」
「あのね……」
耳に口を寄せて、香織が伝えた場所。
俺はそれを聞いて、自分の発言を後悔した。
誘う前に、せめて目的地だけでも設定しておけばよかった、と。

・ ・ ・

俺の住むアパートからバスに揺られて、50分ばかりして降りると、隣町の駅前に到着する。
駅前を歩く人々の人口密集度はなかなかのもので、それに比例して店舗も集まっている。
そのうちの一つの店舗。歩道を歩く人から見ればいかにもな喫茶店。
しかし、その実態は喫茶店ではない。実は甘味処である。
店のドアに張り付いているお店の名前は、この町ではところにより有名なもの。
あえて名前は伏せる。重要なのは名前ではない。

『カップル限定 40%OFF』と壁に貼られているチラシの方が重要なのだ。
言うまでもなく、熱々のカップル達が集う場所である。
そして、香織の手によって恋人でもないのにここに連れてこられた。
意図はわかる。恋人としてお店に入りましょう、ということだ。

自分の注文したショートケーキを食べ終え、コーヒーを飲みながら目の前の女を見る。
甘いものを食べられる嬉しさによるものか、俺と一緒にいるせいなのかはわからないが、
幸せそうな顔をしている。
女の前にはパフェやらモンブランやら、甘いものが大量に並んでいる。
その全てに少しずつ手をつけながら、女は言う。

「おいしーっ! やっぱりおごりで食べるのって素晴らしいね!」
普通の店――1人でも入れるところなど――であれば、香織が出している大声は迷惑だろう。
だが、ここは一種の異空間。まわりでもカップルが似たような声を出している。
テーブルによっては女の子だけの集団もあるが、女の子にとって甘いものは麻薬の一種なのか、
値段を気にせず食べているようだ。
対して俺は、香織の胃がいつになったら満たされるのか、と不安になっている。
香織に向かって奢るなんて、言うもんじゃないな。


182 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/05(火) 00:31:37 ID:z5DhbTSq
近くを通った店員にコーヒーのおかわりを注文する。
店員はかしこまりました、というと俺と香織を見て、微笑んだ。
予想どおり、恋人同士に見られているらしい。この店に男女で入ったらそう思われて当たり前だが。
店内にいる人間で、俺たちのような関係にあるカップルはいくらいるのだろう。
窓際に座っている中性的な顔をした男と、男の向かいに座る背の高い女などは姉弟なのではなかろうか。
が、女がフォークでケーキをくずし、ケーキを男の口に運ぶ様から鑑みるに、やはりカップルだ。
日本にはここまで甘い空間が存在していたのか。
そして俺は甘甘な空気に満ちた店で何をしているのだろう。

俺が思案に暮れていると、店員がコーヒーを持ってきてくれた。
息を何度か吹きかけて少しだけ飲む。甘い。
この店ではコーヒーは甘いのがデフォルトであるらしい。
コーヒーを注文して加糖したコーヒーが出てくるというのはいかがなものか。
そんな些細なことすら脳内議場で議論対象になるほど、今の俺はおかしい。

香織を見る。チーズケーキをフォークでつついていた。
ぼんやりと観察していると、香織が口を開いた。
「欲しいの? チーズケーキ」
「いいや。チーズケーキは好きだけど、欲しいわけじゃない」
「ふーん……」
香織は俺からチーズケーキへと視線を移した。
薄い黄色のスポンジを切り、フォークで突き刺す。
それは香織の口へと運ばれていくのだろうと思った。が。

「なんで、俺にそのフォークを向ける?」
「あーん」
「……いや、食べないぞ」
「あーーん」
こいつ、俺にいわゆる恋人的な行いをさせるつもりか?
冗談じゃない。そんな恥ずかしいことができるか。恋人でもあるまいし。

俺が口を頑なに閉ざしていると、香織の声が沈んできた。
「……あーん、してよぉ……」
涙目で見ないでくれ。突き出したフォークを小刻みに動かさないでくれ。
周りの人たちの視線が痛い。遠巻きに俺の行動を期待するのはやめてくれ。
香織の口から、小さな嗚咽が漏れた。途端、周りの空気が濃くなる。殺気さえ感じられる。
……くそう、覚えてろ、香織。

少しだけ身を乗り出して、軽く口を開ける。香織の顔がまぶしいほど輝いた。
「あーん」
という、香織の声と共にチーズケーキが口の中に運ばれた。
「美味しい? 雄志君」
半眼で香織を見つつ、頷く。
チーズケーキは美味しかった。だが、香織の行いが影響しているわけではない。
考えを口に出すことはこの場ではばかられるので口にしないが。


183 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/05(火) 00:33:52 ID:z5DhbTSq
まだ食べる、という香織を半ば引きずるかたちで店を後にする。
携帯電話で時刻を確認すると、すでに7時。1時間近くは甘味処に居たことになる。
40%引きとはいえ、香織の食べたケーキがあまりに多かったせいで俺の財布から紙幣は消えてしまった。
香織の体のどこにあれだけのエネルギーが収まるのだろう。……たぶん胸だな。
そういえば華は小食だった。だから胸が慎ましいサイズなのか。納得。

隣で歩く香織のふくらみを見ていると、手のひらで視界を覆われた。
「……えっち」
「誰が?」
「雄志君に決まってるでしょ! なんでボクの胸をじーっと見てるのさ!」
なんとなく。というのが答えだが、別の答えを返してみる。
「悪いか?」
「え? 悪くは、ないけど……じゃない! 悪いに決まってるじゃないか!」
「はいはい、もう見ませんよ」
香織から目をそらして、町並みに目を向ける。

7時を過ぎると日はすでに沈んでいて、空には月と星が浮かんでいた。
駅前に並ぶ店の前には看板がある。ネオンの紫、青、緑の色が看板を彩っていた。
周りを歩く人たちはまばらになったが、構成は変わっていない。
スーツを着たサラリーマンやOL、自分で選んだファッションに身を包んだ同年代の男女、
学校帰りの小中高校生、道路脇で客を待つタクシーの運転手。
人の流れに乗りながら歩き、駅前のロータリーでバスの時刻表を確認する。
アパートの近くへ行くバスの、最終時刻は……
「……6時、45分」
「だね」

明るい声でうなづく香織の声を聞きながら、俺はうなだれた。
自宅までの距離は、バスで移動して50分ほど。移動するための手段はバスしかない。
自宅近くには駅がないので電車は利用できない。
ヒッチハイクは上手くいくとは限らない。リスクも大きい。
となると、タクシーか?
「香織、いくら持ってる?」
「えっとね……4000円と小銭が少々」
「俺は帰りのバス代しか残ってない」
「……タクシーの料金、足りるかな?」
「わからん。でも香織の家にいくらか置いてあるだろ。家に着いてから払えば大丈夫だ」
「無いよ」
髪の毛を揺らしながら首を横に振る香織。こいつ、なんて言った?

「残りのお金は全部銀行に預けてあるから、部屋には置いてない」
「……ほう」
「雄志君は?」
「香織と同じ」
見つめあいながら、沈黙。そして、自分達の無計画さに、後悔。
料金がいくらかかるかわからないタクシーに乗って帰るか。潔くこの町で一晩過ごすのか。
心の中で、救いの手を差し伸べてくれる人が現れることを望んだ。
今時、そんな甘い話はないよな、と自覚しながら。


184 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/05(火) 00:35:13 ID:z5DhbTSq
13話は終了です。
次回もこんな感じかもしれませんが、しばらくお付き合いください。

185 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 01:04:59 ID:RYMVwZIl
すりこみ氏andことのはぐるま氏一番槍GJ!!
こんな良作品を連続で見られるなんて幸せ。
続き待ってますね~

186 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 01:06:27 ID:OsD9F3Js
wktkと書き込んでからすぐに投下が来て凄くびっくりしました
お二方ともGJです

187 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 10:34:49 ID:Di2ArLb8
なんだなんだこの投下ラッシュは
素晴らしいGJ!
>>176
男のヤンデレなんて見たくないと思っていたが八雲には負けたw
>>183
雄志が自爆している件w
wktk

188 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 17:46:44 ID:hHRYltAq
嫉妬スレでこんなん出てたけど。
既出?

ttp://nekomarudow.com/y/

189 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 18:06:26 ID:6JKCnYnI
>>188
既出

190 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 18:10:27 ID:hHRYltAq
スマソorz

191 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 21:31:47 ID:g4hPYe0L
4月1日ネタだと思ってたんだが…
本当に作る気なのか

192 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 21:36:08 ID:xpjDH9+s
ダンスしてるドット絵が可愛いなw

193 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 21:46:26 ID:6ihmgdxP
オマイラ!!これもガイ出ですか???
個人的に期待度大
ttp://www30.atwiki.jp/yandere

194 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 21:47:00 ID:hHRYltAq
>>191
aboutにある一番下のリンク先とか。
止マナイ雨ニ病ミナガラとか、最早立派なヤンデレゲー。
早く出ないものか。

195 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 21:50:12 ID:6ihmgdxP
なんというタイムリー・・・・

196 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 21:50:59 ID:T+qJr/yq
結婚か?

197 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 21:53:35 ID:MIYy+fR2
>>193
ガイシュツ。
そして、そこの分派も既にガイシュツ。

現在のヤンデレゲーは同人で一つ、VIPで二つが開発進行中。

198 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 21:54:01 ID:3ypHhpjX
>>193
絵が気に入った
病み状態の表情いいね

199 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 21:57:32 ID:6ihmgdxP
スマソorz

200 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 22:16:11 ID:fs0caWSf
>>183
香織ファンにはたまらない展開にwktk

201 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 23:53:32 ID:8za5MvVJ
ニコニコで見つけたものですが、既出だったらスマソ。

ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm243628


202 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/05(火) 23:58:29 ID:8za5MvVJ
sage忘れたorz

203 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/06/06(水) 00:33:52 ID:bMSIxW9D
何も言いません。ごめんなさい。投下します。





■■■■■■


祐人が首輪に繋がれて4日が過ぎた。時間は平穏極まりなく過ぎて行く。

「祐人」
「ああ真弓、愛してるよ」

姫野真弓がせがむような目をして見上げれば聖祐人は彼女の頭を撫でながら応じる。
それこそ機械的に、反射的に。だがあくまで手つきや声はやさしくまるで恋人のように。
真弓は満足そうに笑いながら甘えかかる。

真弓は、祐人がやっと素直になってくれたと思っている。

祐人は、助けが来るまで波風立てずに生きれば良いと思っている。

その2人を姫野亜弓は薄く笑いながら見ていた。



204 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/06/06(水) 00:34:48 ID:bMSIxW9D

「仲が良いのね…」

そう呟くと亜弓は自室に下がろうと席を立った。
祐人はまだ気付いていない。彼はこの異常な状況が早くに終わると思っている。
彼がまだ芯から変わらないで居られるのはいつかこの状態が終わると思っている
からだった。それまでは機械的に真弓に従う。終われば全て忘れて元に戻れば良い。
無駄に抵抗して痛い目に合うのは避けたい。

だが、彼はまだ気付いていない。真弓に好きだと告げるたびに上辺から少しずつ
変化していくことを。虚構だって何度も重ねれば少しは本物に見えてくることを。
祐人は理性の鈍い頭に自分自身で暗示をかけているようなものだった。真弓、愛してると。
時間をかけたり衝撃を与えれば上辺からの変化だって芯に届くことがある。もしそれに
気付いていれば名前を呼んで頭を撫でて好きだと告げて自分の中の何かを少しずつ
真弓に渡すことがどんなに危険かわかったろうに。

亜弓は少し憐れむような笑みを浮かべた。

「仲が良いのはいいことだと思うわ」

そのうち、何もかも普通になる。
今日も昨日と同じように寝て、明日も同じように起きるのだろう。
亜弓の読みではそろそろ真弓が焦れて次の手段に出る頃だ。
それと恐らく、外の世界も動くだろう。今日か明日か明後日か。


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205 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/06/06(水) 00:37:15 ID:bMSIxW9D
■■■■■■


首輪に繋がれてから5日が過ぎた。真弓は今は学校だ。今日は亜弓まで外出していた。
おそらく彼女が外出するのはこの何日間かで初めてだろう。

祐人はぼんやりと考えた。彼は相変わらず真面目に食事をとっていたので
テキパキと思考を組み立てることなど到底でくなかったのだが。

ああ、とふと思いつく。自分の今の姿勢が何かに似ていると記憶を転がしていたが
あれだ。何かの映画で見た拷問具の椅子だ。あまりに簡単な連想なのに
思いつかなかった自分に苦笑する。
背もたれに首輪、両手首両足首をも拘束されてる姿勢なんてそうは無いだろう。
むしろそのものズバリと言うべき合致なのに。思考力が鈍っているどころの騒ぎではない。
まるっきり無いじゃないか。

5日目だ。もうすぐこの生活も終わるはずだ。朝起きて、日によっては椅子や
ベッドに磔にされて真弓を送り出して亜弓と昼食をとって帰宅した真弓と会話して
時折頭を撫でて好きだと言う生活もあと少しで終わる。休日ですら登校という部分が
抜け落ちただけでほとんど変わらなかった。

早く時が過ぎて終わりが来るように祐人は祈った。


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206 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/06/06(水) 00:38:30 ID:bMSIxW9D
■■■■■■


「それでね、お姉ちゃん」
「真弓……学校の話はもういいから早く本題の相談を始めたら?」

祐人が家で椅子に繋がれている時、亜弓は真弓と向かいあって近所の喫茶店にいた。

「わざわざ私を外に呼び出したんだもの……学校の話がしたかったのでは無いでしょう?」

亜弓が微笑むと顔を赤らめてうつむいたまま真弓がポツリと言った。

「……祐人さ、なんで私に手を出さないんだろう。やっぱり私色気無いのかな?」
「真弓は体薄いから……腰も細いし。でも少女特有の色気みたいなものはあると
思うのだけど。手足が細い方が危うい感じがしてぐちゃぐちゃに犯したくなる
ものじゃない……?祐人くんがそういう好みかはわからないけれど……
でも胸もちゃんとあるし……」
「お姉ちゃん……よくそんなことためらいもせず言えるね」
「あらでもそうだと思うわ。肌も綺麗だし鎖骨の形綺麗だし……舐めたくなるもの」

「お願いですもうやめて下さい」

真弓は耳まで赤くなってうつむいて少し肩を震わせていた。

「真弓……可愛いわね」
「なんで久しぶりにたくさんしゃべると思ったらそんなことなのよ!」
「涙目になって……よくこれで祐人くんも耐えられるわね」
「褒めてどうするのよ」
「わからないわ。祐人くんだって手を出しかねてるだけかもしれないじゃない……」
「じゃあどうしたらいい?どうしたら先に進めるかな?」

顔を正面から見るのが恥ずかしいのか少し斜め下に視線を逸らしながら聞く。

「真弓から迫ってみたら?」
「女の子からなんて……出来ないよ」
「でもこのままだと真弓は我慢出来ないのでしょう……?
大切過ぎてかえって手が出せないのかもしれないわ」
「私から仕掛けるの……ありだと思う?」
「私は思うわ」

真弓は顔を赤くしたまま口の中で無理だよ、と呟いた。


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207 名前: ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/06/06(水) 00:40:10 ID:bMSIxW9D
投下は以上です。
本当にごめんなさい。一万と二千回謝っても足りませんね。
書きかけ放置だけはしない約束をします。

208 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 00:45:49 ID:EU6d8NTA
恋人作りだ! リアルタイムGJ!
真弓が祐人を……何て展開だ!wktkするしかないじゃないか!

謝るなんてとんでもない。これからも作者様のペースで頑張って下さい!

209 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 02:47:03 ID:RZHUXEsj
>>207
待っていた……お前のような作者が戻ってくることを……

祐人はすでにグロッキー。対して真弓はやる気まんまん(性的な意味で)。
逆レイプ、くるか?それとも薬物が出るのか?楽しみだ。

210 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 10:22:16 ID:CEzbNnHt
投下します

211 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 10:23:22 ID:CEzbNnHt
「ねぇ、春樹君。君の家に遊びにいってもいいかい?」
「…それはなんの冗談だ?」
「冗談?僕が君に冗談を言ったことがあるかい?」
「…いや…覚えがないな。」
気がつけば小泉八雲…いや、小泉八雲の姿をした香住が俺の家の前に立っていた。
「だろ?まぁ、この姿で居るのには訳があるんだけど…君にならわかるだろ?」
「…ああ」
「それじゃぁお邪魔するよ。あはは…なんだかドキドキするなぁ」
まるで本物の八雲がそこに居るように思えるほど、香住の立ち居振る舞いは八雲のそれとまったく同じだった。
「夏海ちゃんは今頃、駅前のスーパーで買い物だね。帰宅はおそらく5時半頃かな…」
香住は壁掛けの時計を見ながら独り言のように呟いた。時刻は4時8分を指していた。
「君の部屋に行くのがいいのかい?それともこの場所でも問題はないのかい?」
「部屋に行こう…」
「ん…なるほど…了解した。」
いつもと変わらないにこやかな笑みのまま、香住は俺の後ろをついてくる。
まるで本当にそこに八雲が居るような気分にさえなってくる。
「へぇ…思った以上に整理されていて綺麗な部屋だね…」
香住は遠慮なくベッドに腰をかけた。
俺はしかたなく、椅子を引っ張り、背もたれに身体を預けて香住と向かい合った。


212 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 10:26:17 ID:CEzbNnHt
「そんなことを言いに来たわけじゃないのだろ?今は…付き合えないと
…この家には近づくなといったはずだ!」
香住はようやく八雲の仮面を外し、柔らかい笑顔のまま
「はい、わかっております。私もまだ春樹さんと付き合えるとは思っておりません。」
そんな風ににっこりと微笑んだままベッドに寝転ぶ香住。
「ですから、今日は色々と確かめに参りました」
「何を…確かめに来たんだ?」
「藤岡冬彦…春樹さんのお父様ですが、5年前から行方不明。生きていれば45歳。
職業はサラリーマン…で間違いありませんか?」
「ああ…」
「冬彦という方は、見た目はよろしいのですけど、その中身に多少…難のあるお方で
…女癖がお兄様と同じく来る方は拒まない性格だったそうです。
その際に春樹さんがお出来になったそうです。」
「…それで……?」
「5年前に冬彦という方が行方不明になられたときはその女癖の悪さから、
新しい女と駆け落ちした…と考えられたそうで、現在に至っても行方不明…なのですが…」
香住は言葉を区切り、俺の顔を見つめて…
「私はそうは思わないのです。だって…春樹さん…」

「あなたが冬彦さんを殺した……そうですよね?」

「……」
俺の沈黙を肯定と受け取ったのか、否定と受け取ったのかはわからない。
だが、そんなことはどうでもいいというように香住は淡々とした口調で言葉を続けた。


213 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 10:28:09 ID:CEzbNnHt
「冬彦さんのことをさらに調べると…ある特殊な性癖の持ち主だった可能性が浮かび上がるのです。それはペドフィリア(小児性愛)の可能性です。」
…香住が小児性愛なんて言葉を使うなんて意外だった…いや、八雲なら使いかねないか…
香住と八雲…こいつはどっちなんだ…いや…今はそんなことはどうでもいい…
「冬彦さんが小児性愛の代償行為として晶子さんと結婚なさったのであればある意味…理性的な行動と考えられなくもないのですけど
…私はある仮説…というよりも直感なのですけど…冬彦さんが晶子さんと結婚なさった決定的な理由
…それは夏海さんにあったのではないかと考えているのです。」
「…何故そう思う…」
「女の感…といいますか…春樹さんと夏海さんを観察してみると何となくそんな風に感じるのです…」
「……」
「夏海さんの中身は様々なコンプレックスの集合体…ファザコン・ブラコン・ユディットコンプレックスが混ざり合った歪んだ感情。
夏海さんは春樹さんのことを愛している。
でも、心のそこでは男というものに怯えている…
それはおそらく…春樹さんと冬彦さんの面影がだんだんと重なってきているからではないでしょうか…」
「……」
「だから、夏海さんは春樹さんのことを好きだとしても直接的に行動を…同じ布団を共にしながら春樹さんを誘惑できない
…いえ、誘えないのでしょうね。もし、そういう関係に至っていれば…今はつきあえない…あなたはそんな曖昧な言葉は言わないでしょ?」
「……」
「にも拘らず…夏海さんは春樹さんを取られることを極端に恐れている…まるで春樹さんが居なくなると冬彦さんが戻ってきてしまうかのように
…くすくす…
春樹さんにとっては生殺しの状態ですよね。
夏海さんは身体を許さない…
なのに、他の女が春樹さんに近づくことを許さないだなんて
…くすくす…
本当に酷い仕打ちですね。」
「……」


214 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 10:30:30 ID:CEzbNnHt
ベッドに仰向けに寝転がり天井を見上げたまま、
香住は突然思い出したかのように口を開いた。
「そういえば菊池裕子さん…行方不明だそうですね?彼女を殺したのは…どちらなんですか?」
「どちら…?」
「はい、夏海さんですか?それとも…春樹さんですか?」
「何故…そう思うんだ?」
「菊池さんは春樹さんに好意を持っておられたそうです。だから夏海さんがそれをもし、何らかの形で知ったとしたら…
…例えば、家に遊びに来た菊池さんの口から聞いたりしたら…菊池さんはただじゃすまないでしょうね…。」
「そうじゃない!何故…なんで俺に菊池を殺さなきゃならない理由があるんだよ!」
自分の声が部屋の中にこだまする。息が荒い…くそ…くそ…くそ…。
香住は微かに不思議そうな顔を見せると
「春樹さんが菊池さんを殺す理由ですか?そんなのは決まっているじゃないですか」
香住はにっこりと微笑みながら

「そうしないと夏海ちゃんが菊池さんを殺したことになっちゃうじゃないですか。」

と、まるでその場に居合わせたのだといわんばかりに…
まるで俺の心を見透かすように…
「ですから…私は春樹さんの言葉…『今は…』というのは夏海さんが生きている間は
ずっと…そう理解しています。」
そんなとんでもないことを、平然と俺に言いやがったのだ。


215 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 10:32:34 ID:CEzbNnHt
「じゃぁ…お前も…お前もあいつらみたいに夏海を殺そうとしているのか…」
「私がそんなことをするわけないじゃないですか…」
「じゃぁ…あいつらは一体なんだったんだよ…」
「一之瀬さんたちですか?…あの人達は兄を愛しておられた方ですから…
きっと間違われてしまったのではないでしょうか…いえ、兄はきっとわかっておられなかったのでしょう」
「…間違えた?わかっていなかった?」
「ええ…決して夏海さんに手を出してはいけないってわかっていなかったんです。
だからお亡くなりになられたのですよね?」
「………」
「兄が私に手を出す何人にも容赦しないのと同じように…
春樹さんは夏海さんに手を出す何人も許さない…
夏海さんに手を出す者は殺されて当然…いえ、寧ろ殺すべき害虫…
そう…壊れているのは夏海さんだけじゃない…
寧ろ、夏海さん以上に壊れているのは春樹さんです。そのことを兄も理解していなかったんです。」

「ですが、いかがでしたか?プレゼント…喜んでいただけましたでしょうか?」
「…なにがだ…」
「電話…致しましたでしょう?夏海さんを誘拐、拉致しようとする不届き者が居ると…」
「……」
「一之瀬さんたちは二階堂、四谷、五代の三名を殺したのが夏海さんだと思っていたようですから
…きっと油断なさったのではないでしょうか?あの方たちの心意気は素敵なのですけど…
殺すことに関しては初めてだったようですから…」
「香住……お前…」
「それで…一之瀬さんたちはいかがでしたか?お電話差し上げた通りの時刻にちゃんと見えられましたか?」
「…お前…なにを言ってやがるんだ…」
「私一人ではあの方達を処分することは出来ませんでした…ですから私に出来ることをしただけです。
いつ来るかわからないのでは…厄介だと思いまして…」


216 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 10:35:01 ID:CEzbNnHt
「八雲は……八雲はどうした…」
「兄ですか?…兄は私がきちんとおしおきしておきましたのでご安心ください。」
そういって、香住はベッドに膝を立て、ズボンのジッパーをゆっくりと開き…

そこから真っ赤な血に染まった男性器を取り出した。
その勃起した男性器はまるで香住の股間から生えているかのように雄雄しくそそり立っていた。
「兄からの伝言です。これを貴方に受け取って欲しい…のだそうです。」
そういって香住はそれをそのままゴミ箱に投げ捨てた。
「ゴミは…ゴミ箱に捨ててよろしかったですか?」
「ああ……」
「他のゴミは…どこに捨てられたのですか?」
「ゴミはゴミ捨て場に捨てているぞ…?」
「ゴミ捨て場…ですか…」
香住は怪訝そうな表情を浮かべて、俺の言葉をかみ締めているようだった。
「?…それ以外のどこに捨てるって言うんだ?」
俺の言葉を遮るように香住はベッドから立ち上がり、服装を直しはじめる。
「そろそろ夏海ちゃんが戻ってくる頃だね。僕はそろそろお暇するとしよう。
それじゃ、春樹…また明日学校で会おう。夏海ちゃんによろしく伝えておいてくれないか?」
それは八雲の笑顔なのか、香住の笑顔なのかわからないまま

「春樹が性欲を持て余すようであれば僕が処理してあげてもいいと…」

その紅い唇が動き中から紅い舌がみえる。
「僕は夏海ちゃんのことも嫌いじゃないんだ…だから春樹…僕は八雲なんだ…
君の親しい友人の小泉八雲だよ。だから君が望むのなら…いつだってこの身体を使うといいさ。
…君のことだからまさかとは思うが僕のことが好きで一途に貞操を守り通しているとかそういうことはないよね?
いや、もしかしてそうだったのかな?それなら春樹…早く言ってくれればいいのに。僕も春樹のことを…」

香住と八雲の姿が完全に一致する。違いなんて見当たらない。
いや、はじめからこいつは香住だったのか?その笑顔もその声も八雲のものだ。
じゃぁ、香住は…香住はどこに居る?
いや、こいつは八雲で香住なのか…いや、香住が八雲なのか…何故だ…何故だ…
世界がぐらりと歪む。どうしてこいつは…何故……何故……何故…
…何故……何故……何故……何故……何故……何故……何故…
こいつらはこんなにも狂っている?
何故俺に…何故俺なんだ…何故俺でなければならないんだ…どうして…何故…
八雲の声が聞こえる。静かな世界の中で八雲の声だけがはっきり聞こえる。
まるで俺の心を見透かしたかのように
「春樹…君は炎だ。そして僕らは飛んで火に入る夏の虫なんだよ…その身を焦がしてでもその明るさに惹かれてしまう
・・・いや、寧ろその身を焦がすために火の中に飛び込みたいと願ってしまう…これは理屈じゃない…本能といってもいい
…僕も君のその歪みに惹かれているんだよ?春樹…」

気がつけば部屋の中には誰も居ない。
全てが自分の妄想であって欲しいと思った。
だが、ゴミ箱の八雲だけが…それが夢でなかったことを教えてくれた。


217 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 10:37:17 ID:CEzbNnHt
投下完了っす。
多分、次で完結予定(?)
蛇足を足そうか足すまいか検討中ですが、とりあえずシンプルに
最終章で終わらせる予定です。

218 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 10:39:12 ID:LqnXwcw6
正常な人間が一人もいない!(褒め言葉)

219 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 10:47:18 ID:W5bf4Tir
最近の作品投下スピードは異常

220 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 12:18:18 ID:gu8B5w6S
>>207
恋人作りが帰ってキター!
祐人がじんわりと洗脳されていっているのが怖い
でも真弓がんばれw

>>217
まさか香住まで病んでいたとは
もうこうなったら誰か一人だけでもいいから幸せになってほしい

221 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:14:27 ID:cQRlnMcP
実験作を投下。
エロもなければ脈絡も続きも補完もありません。

222 名前:実験作[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:15:13 ID:cQRlnMcP
「あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」

少女の哄笑が響き渡る。其れは闇に、地に天に。
黒く、暗いその眼の鋭さを彩るのは墨汁交じりの朱の色殺意。
はや沈み掛けの黄昏すら届かぬ、薄汚れた狭い路地の中にて、対峙するは二つの影法師。
其の片割れは退治の為に、もう片割れは泰事の為に。
響くたった一人のオーケストラは前者の壊れた喉笛より撒き散らされる。
ああ、ああ! それは人間の、人間のみに許されたカプリチオ。
狂想の曲は独唱を終え、第二幕をバイオリンを加えて始めたいと願う強く尊く醜い人の意思は数多を捻じ伏せ唯一。
既に弓は彼女の手に。弓の名は“草刈鎌”。
うるはしき其の御手にて喉の肉の弦を掻き切り給えよ人の御子!
さすればひゅう、ひゅうなる音、そなたの打ち倒さんとする肉塊より漏れ出でん!

「あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!
よくここまで逃げられたね逃げられたね売女ぁああああああ!
あっはははははははは! でも終わりだよお、すぐに、すぐにわたしと××ちゃんの世界から消してあげる。堕としてあげる。潰してあげる。抉ってへし折って叩き割って引き裂いて磨り潰して焼き尽くして撒き散らして……あああああああああ!!
わたしのばか、ばか、ばか!
本当に神聖な××ちゃんの名前をこんな溝鼠の前で言うなんて穢しちゃう!
それもこれも全部あなたのせいだよ、失せろ、失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろ失せろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

夕闇に煌くは鎌の刃、沈む陽の紅に飽き足らぬ貪欲が求めしは何か?
熟れに熟れたトマトの赤? 否!
天空に輝く蠍の心臓の赤? 否、否!
紅玉の如き葡萄酒の赤? 否、否、否!

其は偽者にあらず、真実人の血。
晩餐にて取り繕うな娼婦の子、大工の継子! 我らが血潮は何者にも代えられぬ!
飛沫くは赤。漏れるは赤。
求めに従い銀弧は飛ぶよ、其の刀身を乙女を貫き血に濡らす為に!!

「死ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいねぇえええええええええええええええええええ!」

ああ、されどされど。されどされどされどされど!
悲しきかな哀しきかな人よ、人の力は人の御技によって御されるが定め。
其れは文字通り御す為の技なのだから。


「嗚呼、神よ感謝します。素晴らしい」
「………………っ!!」
振り下ろされたる死神の愛道具。
其れを容易く抜け、スケイプゴウトは己が裁定者を抱きしめる。
その硝子よりなお蒼い眼球に滲むは涙。其れは歓喜。
喚起するは万感の想い。
見ているのですか偉大なりしヴィーザル!
斯くして兄殺しの盲目者は己が咎の源、かつてヤドリギに貫かれしものに許されるということを!

「は、放せ……! 放せ放せ放せ放せ放せ放せ放せ放せ放せ放せ!」

「刃をお納めを。私はあなたの存在に非常に感激しているのですから……」
「……、何を言っているの。あなたが居なければ、あなたが奪おうとしなければ!!
うわあああああああああああ!!」


藻掻き藻掻くも万力はぴくりとも動かず。
宣教の真言は故に、否応無しに羊の耳に入り込む。

223 名前:実験作[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:15:55 ID:cQRlnMcP
「私はあなたから彼を奪うつもりなどないのですよ。
そもそも何故に彼を奪う必要などあるのですか。」
「決まっているよ、そうしないとわたしを見てくれないから!
ううん、そんなはずはない××ちゃんは何よりわたしをアイしてくれてるのそしてわたしもなによりアイしてるのだから他の人に××ちゃんのアイが行くのは許せないの一片たりともわたしに向けてくれるアイが減るのは許せないんだから!!」

歓喜の笑みは慈愛の笑みに。
……否、之は自己愛。故に慈愛などでは決して有り得なく。

「いと気高き私の同志にして先達よ。あなたは正しい」
「さっきからなに言ってるの……!だったら早く死んで、死んでよ!! さっさと死んで死んで死んで、」
「しかし、たった一つだけ勘違いしていることがあります」
「間違ってるはずない間違ってるはずないそれよりさっさと死んで死んで死んで、」
「彼の愛が有限だと考えること。それがあなた様の唯一の間違い……。
彼の愛は無限です。ですから、あなた様に向けられる愛が減ることなどありえません。
無限は割り切れない故に無限なのですから」
「うんそうだったらいいかもしれないけどでもそんな保証はないんだよだからさっさと死んで死んで死んで、」
「偉大なる彼の寵愛を何より早くより受けたる聖女たるあなた様が彼を信じなくてどうするのですか。
いいえ、あなた様が分かっていないはずがないでしょう。彼がそれほどまでに大きな存在かを」
「うんそれはそうだけど××ちゃんはすっごい人だけどそれは当然の事だしそれはともかくさっさと死んで死んで死んで、」
「なればこそです! 私が彼の本当の価値を、いいえ価値などという尺度に換算する愚かな私めが此処に至りようやく啓示された真実を生まれながらに知るあなた様ならお分かりかと……!」

「……何を?」

漸く詩の朗読より戻りたる聖女。浮かぶ表情は人形よりなお雄弁に無為を語る。
絶対者を崇められ、自身を讃えられることが彼女に何をもたらしたのか。
下賎の女に見出せしものは果たして殺意か同意か無視かそれとも。
ゆうらりと万力を緩め、陽炎の動きにて距離を取る下女。
―――――いずれにせよ、次の言葉にて全ては決す。


「嗚呼、何と寛大なのでしょうさすがあの方に選ばれた方!
ええ、故に私は提言します!
あなた様とこの私め、彼の素晴らしさを知る二人は同志であると!
否、私はあなた方二人の下につくものであると!
故に、あなた様が私を退ける必要はないと!
ええ、それだけ、それだけの事なのですよ!!」


「……ふーん。」

聖女の言葉に込められた思いは何か。
夜の帳は下りた。鎌に集うは星の光、蠍の赤い光。

襲う為か捨てる為か、それは、一瞬揺らめくように掲げられ――――――








「―――――――嗚呼。美しい。何もかもが美しい。
素晴らしいよ、僕の為にここまでしてくれるなんて。」

224 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:18:06 ID:cQRlnMcP
うーん、ほんとになに書きたかったんだろ。
鎌と体術のバトル書くつもりだったのに。

ちなみに鎌は有効な攻撃が突き刺すのと掻き切るくらいしかないので、見た目の割に殺傷力は低めだったりする。

225 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:21:38 ID:IkV3p4eC
う~ん…とりあえず、壊れた時に、あんまりそこまで
「あはははは」とか「くけけけ(ry」とか書かなくてもいいと思う。

226 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:37:16 ID:RZHUXEsj
前スレの最後辺りに書いてあった躁状態のヤンデレってやつか?

227 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:46:49 ID:H+fh5YUp
なんつうか文章が自己陶酔入ってる気がする。
もっと普通に読みやすい文章の方が良いと思われますが如何?

228 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/06(水) 22:53:34 ID:1P40Bg4z
まあ病む過程とかそっちのけと言うか、鬱々とした感じではないからなぁ。
いきなりテンション高杉て、ぶっちゃけ読んでて吹いた。

でも面白いと思うけどなぁ。
ヤンデレとしては今ひとつなのか。

最後の主人公のセリフは入れるなら次が良かった。
続くなら期待。

229 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/07(木) 01:02:43 ID:aR61cf4Q
誤字というか、幾つか用法の間違いがあるね。
あとは好みじゃないかな。

230 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/07(木) 01:43:29 ID:9Sd/pn/8
他人が読むことを考えていない自己陶酔な文章だな。
すまないが、チラシの裏に(ryって言いたくなる。

231 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/07(木) 02:02:55 ID:flFBTu7N
あはは(ryとか消えろ消え(ry無限だ神だとかボトムズかなんかか?

232 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/07(木) 22:19:58 ID:hvErkt/8
ハンターハンターのパームってこれでもかって言うほどのヤンデレだよな。

233 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/07(木) 22:51:37 ID:RsTTLffE
投下します。14話です。


234 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/07(木) 22:53:14 ID:RsTTLffE
第十四話~雄志の告白~

「1170円になります」
コンビニ店員の声を聞いて、千円札と100円玉を2枚レジに置く。
店員はそれを素早く手にとると、慣れた手つきでレジを打つ。
「30円のお返しになります。ありがとうございました」
レジ袋を手にとって、コンビニエンスストアの自動ドアを通り抜ける。
季節はまだ2月。昼間の格好で出歩くには少々寒い。

俺が1人でコンビニへやってきた理由。それは、今日の夕食と明日の朝食を買うためだ。
夕食と朝食だけで1170円も払うほど、俺はブルジョワジーではない。
ではなぜ1170円分の食料を買い込んだのか?もう1人の非ブルジョワジー人間のためだ。
天野香織の胃袋は、世間的によく囁かれるように甘いものは別腹、というものらしい。
俺は2食共カップラーメンだ。合計しても300円を越すことはない。
残り900円近くのパンや弁当は香織の分である。その差、3倍。

歩きながら考えてみる。
香織が活動する際に消費されるエネルギーは俺の3倍を越すのだろうか?
高校時代にリサーチしたところ、香織の身長は165cmだという。
ちなみに俺は就職していたころに受けた最後の健康診断で、171cmだった。
体格ならば俺のほうが大きい。よって香織の燃費の悪さは別の要因が絡んでいることになる。

男女の身体構造の違いによってエネルギーの消費量が異なる、というのはどうか。
女性が活動する際、男性よりもエネルギーを多く消費する。
なるほど、1番合点がいく仮説だ。しかし、納得のいかないところもある。
なぜ若い女性はあれほどダイエットに熱心なのか?
女性の内臓と筋肉のエネルギー消費量が男の数倍あるならば、女性がダイエットをする必要はないはずだ。
女性全員が男の数倍の食料を毎日摂取しているとも考えられるが、昔から知り合いである幼馴染の
食事量を考慮してみると、疑問点が残る。
以上を踏まえた結果、身体構造説は否定される。

……馬鹿なことを考えて退屈を紛らわすのはやめよう。答えはわかっている。
香織の食欲が人一倍旺盛である。これが答えだ。
そうでもなければ、2人合わせた所持金5720円からビジネスホテル代4500円を引いた結果残る、
1220円いっぱいに食料を買ってきてくれ、とは言わないだろう。
ホテル代を出してくれた香織の手前、俺に反対する権限はなかった。
そんなに食べたら太るぞ、と危うく口にしそうにはなったが。

ぼんやりと思考しながら歩いていると、ビジネスホテルに到着した。
壁に貼ってある料金表を見る。シングルルームに一泊して4500円。
高いのか安いのかはわからないが、2人で宿泊しても値段が据え置きだというのはお得だ。
贅沢は言えないが、できるならば2部屋あれば有り難かった。
今夜、俺は香織と同じ部屋で一晩を越さなければならないのだ。
仕切りでもなければ、落ち着いて寝られるものではない。


235 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/07(木) 22:57:39 ID:RsTTLffE
今夜俺たちが泊まる部屋は3階のエレベーターの近くの部屋、301号室である。
エレベーターから降りると、すぐそこにカードの自販機があった。一枚、千円。
このカードを使うと部屋のテレビである種の娯楽番組が見放題になるという、特殊なカードだ。
以前旅行をしているときはお世話になったものだ。だが、もう利用しようとは思わない。
なぜなら、翌日になると購入したことがとても馬鹿馬鹿しく感じられるから。
その寂しさたるや、1人で対戦型の戦術シミュレーションゲームをおこなったがごとし。
今夜は、いかなる理由があろうとも購入しないし、そもそも購入できない。
寂しさを味わう心配はしなくてもよさそうだ。

部屋をノックして、しばらく待つ。ドアの隙間から声がした。
「……残酷の」
「世界史」
合言葉を交わすと、ドアが開いて香織の姿が目に入った。
香織は俺の手からコンビニの袋をひったくると、数個のパンと弁当を取り出して奥へ向かった。
放置されたビニール袋の中にはカップラーメンが2つ。
さすが長年の付き合い。俺が何を買ってくるかよく分かっている。
俺は味噌ラーメンをとりだすと、包みを破り、沸かしておいたお湯を注いだ。
そして3分待つ。待つ時間は嫌いではない。食べる時間は大好きだが。

椅子に座って味噌ラーメンを食べながら、ベッドの上で食事する香織を見る。
手に持って集中して食べているのはチキン南蛮弁当だ。香織の好物らしい。
ときどき顔をしかめると、むせたように胸を叩く。
そのたびに手が胸に沈むが、あさっての方向を向いて意識しないことにする。
実は、俺は緊張しているのだ。香織と一晩を過ごすというこの状況に。

いくら親友相手とはいえ、俺の審美眼が麻痺することはない。
香織は可愛い。これは、中学時代から俺が思っていたことだ。
目は綺麗な形をしているし、肌にはしみひとつない。
香織のちょこまかした動きに合わせるように動く髪には茶色が軽く混じっていて、
柔らかい雰囲気をかもし出している。
さらにスタイルもいい。24歳になっても保たれている童顔と、出るところが出て引っ込むところが
引っ込んでいるスタイルの組み合わせは、人によってはたまらないものだろう。
俺自身、高校時代はときどき香織に見とれていた。
昔を思い出しながら香織を見ていると、容姿にほとんど変化が見られないことに改めて気づく。
うらやましいやつだ、と心の底から思う。

香織は弁当を残らず食べ終わると、両手を合わせた。
「ごちそうさま。……ああ、美味しかった」
目をつぶりながら喋る香織の頬は、嬉しそうにほころんでいた。
俺もカップラーメンを完食して、ゴミ箱に突っ込んだ。
香織はベッドから下りると、テレビのリモコンを掴んで、またベッドの上に座った。
その一連の動作をなんともなしに見ていたのだが、不意にここがどこであるのか思い出した。
ビジネスホテル。男も利用する場所である。
男が何もない場所で一晩すごすとき、一体何をするのか。
言うまでもなく、俺はわかっている。だというのに、なぜ気づかなかったのか。
テレビの電源を入れたとき、最初に映るものがなんであるかということに。


236 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/07(木) 22:59:19 ID:RsTTLffE
テレビの電源を入れる音が聞こえたときには、遅かった。
もしかしたら違うものが映るかも、という俺の期待にテレビは応えてくれなかった。
リモコンの信号に応えたテレビが、音を出す。女性の嬌声を。

「あ、あっあっあっあんっ、だ、めぇぇぇ」
テレビに映し出されたのは、予想通りエロ番組だった。
一瞬目に入った画像から推測するに、OLが会社でセックスをしているようだった。
すぐに目をそらし、うなだれて、ため息を吐く。
こんなものを見たら、香織は一体どんな反応を示すものやら。
首を倒したまま、ちらりと香織を見る。

「…………」
ベッドに座り、リモコンを持った手は伸ばしたまま、呆然とした顔でテレビを見ている。
まばたきをすることすら忘れたように、じっと前を向いている。
意外な反応である。てっきり顔を紅くしてテレビを消すかと思っていたのだが。
テレビから漏れる音は、男と女の体がぶつかりあうものだった。
時々水音が混じり、段々ペースが速くなっていく。
「あぁぁぁあ、く、るぅっ! いっちゃう、いっくう、い、っっくぅぅぅぅ!」
香織の目が大きく見開かれた。……と思った瞬間だった。

「……以上の理由から、私は法案成立には反対です」
テレビの画面が、男女の裸がぶつかり合うものからスーツを着た初老の男たちが意見を述べる
ニュース番組へと勝手に切り替わった。
今日ほどテレビの向こうにいるおっさんの声に安らぎを覚えることはない。
今だけ、感謝の言葉を述べるとしよう。たまには役に立つな。ありがとう。

香織はというと、あからさまに面白くなさそうな顔をしていた。
玩具を取り上げられたような子供の表情は見ていて面白いが、変でもある。
何を不満に思っているのだろうか。
「香織」
「ふひゃぁっ! ……あ、なに、雄志……くん」
「どうかしたのか? ぼーっとして」
「あ……ううん、何でもないよ」
「何でもないようには見えないんだがな。もしかして、お前……」
「え、えっ! ち、違うにょ、ボクはそんなつもりじゃ……」
「ああいうのを見るのは、初めてなのか?」

首をすさまじい勢いで振っていた香織は、俺の言葉を聞いて動きを止めた。
天井を見ながら何かを考える仕草をすると、無理矢理つくったように笑う。
「そ、そう! 実は見たことがなくって、それでびっくりして」
「まあ、女なら無理もないか」
「……うん、聞いたことがあるだけで、どんなものかは……」
そこで言葉を止めると、香織は俺の顔を見た。
そして、ちらりと視線を下に動かした。
「あんなもの、入るのかな……」
「あんなもの?」
「あ……なんでもない! ボク、お風呂に入ってくる!」
香織はベッドから飛び降りると、浴室へと飛び込んで、勢いよく扉を閉めた。


237 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/07(木) 23:01:06 ID:RsTTLffE
2人とも風呂から上がり、歯磨きを済ませたころには窓の外はすっかり暗くなっていた。
香織は部屋にあらかじめ用意されていた浴衣を着ていた。
せっかくだから着てみた、と言うのだが、見ているほうが寒くなる。 
風邪をひかないよう暖房を入れて、さて寝ようかと思ったのだが、ここで問題が発生した。

「実は俺、ベッドで寝ないとむちうちになるんだ」
「それは初耳。ボクが華ちゃんと一緒に雄志君の家に泊まったときはそんなこと言わなかったよね」
「ああ……実は違うんだ。枕が代わると俺は寝られなくって」
「中学と高校の修学旅行では爆睡してたよね」
手ごわい。どんな理由を並べても反論でねじ伏せてくる。
この部屋にあるベッドはひとつ。当然、ベッドの上で眠れるのは1人だけ。
香織は床では眠りたくないようである。それはそうだろう。俺だって同じだ。

「香織、俺は寝癖が悪いらしいんだ」
「……それで?」
「寝ている間にベッドをひっくり返すこともあるらしい。そうならないためにも、ここはひとつ……」
「しつこいよ、雄志君。ボクがホテル代を出したんだから、ボクがベッドで寝るの!」
「ぐっ……」
代金のことを言われては、どうしようもない。
しかし、こうなったのは俺のせいなのか?
俺が普段から金を持ち歩いていないわけではないのだ。
香織が俺の財布の中にいる千円札を全滅させるほどケーキをバカスカ食べたのが悪いのだ。
奢ると言ったのは俺だが、いくらなんでも遠慮というものをすべきだろう。

香織は俺がひるんだ隙に、ベッドに横になって布団を被った。
「雄志君は床に寝ること! 枕だけは恵んであげるから」
「……この暴食女」
「ん、何か言った? 廊下で寝るほうがいい?」
「わかったわかったわかりました! 寝ますよ、寝ますともさ」
仕方なく部屋に用意されていた予備のシーツを被って、床に寝転ぶ。
絨毯が敷かれているが、眠れるほどの弾力はない。
これなら俺の部屋にあるつぶれた敷布団のほうがマシである。

枕に頭を埋めて、目を閉じる。眠れ眠れ、と念じてもやはり眠くならない。
それは床の固さのせいではなく、部屋の電気が点いたままだからだ。
「おい、香織」
「ひぇっ! 待って、まだ準備が……」
「ベッドの横に蛍光灯のスイッチがあるから、消してくれ」
「……ああ、そうだね。電気が点いてたら、眠れないもんね」
香織の言葉とともに、部屋の電気が消えた。
「おやすみ、香織」
「おやすみなさい……雄志君」


238 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/07(木) 23:03:39 ID:RsTTLffE



「また、泣いてるのか? 香織」
「だって、もう雄志君と会えなくなる、なん、って……」
「あのなぁ、一緒の会社に就職できなくても、会うことはできるだろ?」
「でも……この町じゃなくて、ずっと遠くの町に引っ越しちゃうんでしょ。
そしたら、偶然会うことだってなくなっちゃうよ」
「たまに連絡をとりあえばいいだろ。電話してくれればちゃんと話すって」
「嘘だよ……就職しちゃったら、忙しくってボクのことなんか気にしなくなって……
同じ会社の女の子にかまうようになって、電話の相手もしてくれなくなるんだ……きっと」

高校からの帰り道、嗚咽を漏らす香織をなだめながら俺は歩いている。
数週間前、俺と香織は同じ企業の面接を受けた。
結果として俺は内定をもらったが、香織には薄っぺらい封筒が届いた。
香織と同じ会社に就職できたらいいな、と俺は思っていたが現実はやはり甘くない。

「ね、内定を蹴ったりは……しないよね、やっぱり」
「さすがにそれはできないな。他の会社は全滅だし」
「うん……あ、そうだ! ボクと一緒に暮らさない?」
「はあ?」
「雄志君が引っ越したところに、ボクも一緒に住むの。
ボク、家事はそれなりにできるし、アルバイトもする! だから……ね?」
「ね?じゃないだろう。まったく……そんなに嫌なのか? 俺と会えなくなるのが」
「……そんなの、当たり前でしょ。雄志君は違うの?」
「そりゃ、同意見ではあるけどな」
「だったら!」
「駄目といったら駄目だ」
「うぅぅ……」

香織が顔を覆って立ち止まり、再び泣きはじめた。
髪の毛が顔を隠していて、香織の顔は見えない。
けれど、地面に落ちていく涙は見える。どうしたものか、これは。
俺と会えなくなるのが嫌、俺と連絡を取れなくなるのが嫌。
……なら、連絡が取れればいいのか?

「香織、携帯電話貸してくれ」
「……ぅぇ? ケータイ……?」
「メールなら電話より気軽にできるし、いつでも見られるから。それならどうだ?」
「ボク、ケータイ持ってないんだ」
「なら、買えばいいだろ」
「今月、お金ない……」
「はあ……わかった。俺が買ってやるよ。新規で買えば安くつくし」
「…………いいの?」
「ああ」

このときに浮かべた香織の笑顔は、見ている俺が嬉しくなるほどに輝いていた。
次の日に2人で電気店へ行き、香織のために携帯電話を買った。
銀色の、1番安い携帯電話だったけど、香織はすごく喜んでくれた。


239 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/07(木) 23:06:07 ID:RsTTLffE



ふと目を覚ました俺は、まだ夢の中にいるのかと錯覚した。
香織のむせび泣く声が、静かな部屋に響いていたのだ。
体をベッドの方へ向ける。香織の姿は見えないが、泣き声はよく聞こえるようになった。
「ひっ……く、ひっく………う、ぅぇぇぇ……」
俺はまず、何かしてしまったのか、と自分を疑った。
今日一日を振り返ってみても、香織を泣かせてしまう理由は見当たらなかった。
まとわりつくシーツをどけて体を起こし、ベッドの上に肘を乗せて香織を見る。
布団は肩にかかっていて、寒そうには見えなかった。
部屋の空気に触れているのは頭と、両手。両手で何かを握っているように見える。
暗くてよく見えないが、目をこらすと形だけはわかった。
たった今見た夢の中で、香織に買ってあげた携帯電話だ。

「……あ…い、たいよ……会っ…話し、たい…………の、っく……に……
いなく、な……ぁないで……ボクと……いっしょに……いようよ……」
続けて、寝言で俺の名前を呼んだ。消えてしまいそうな声だったが、確かに呼んだ。
寝ている香織に喋りかけても、聞いてはくれないだろう。
香織の手を握る。ひんやりと冷たい。細すぎて、簡単に折れてしまいそうだ。
「ん……あったか…………だぁれ……」
香織の声が、少し覚めた。聞こえるか、聞こえないかぐらいの声で呼びかける。

「起きたか? 香織」
「ああ、うん……雄志君だぁ……あれ? なんでボクの手を握ってるの?」
「え、ああ、これはだな……」
つい香織の手を握ってしまったが、俺は何をするつもりだったのだろうか。
香織の目が俺を見ている気がする。とりあえず、話を逸らそう。
「その携帯電話って、俺が買ったやつか?」
「……これ? うん、そうだよ」
「もう4年以上経ってるのに、なんで替えないんだ?」
「……これじゃないと、駄目なんだ。他のケータイは持ちたくない」
「そっか」

短く答えて、それ以上は問い質さないことにする。
香織にも好みがあるのだろう。それに、物を大事にするのはいいことだ。
「ねえ、雄志君。理由は聞かないの?」
「理由があるのか?」
「理由がなくちゃ、同じケータイを使い続けたりはしないよ。
……理由はね、雄志君を身近に感じられるからなんだ。
雄志君を身近に感じたいから、ボクはずっと同じものを使ってるの」
「そうだったのか……」
香織がそこまで俺と会いたがっていたなんてな。
昔から何をやっているんだ俺は。香織を泣かせてばかりだ。


240 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/07(木) 23:08:34 ID:RsTTLffE
ベッドの脇にあるランプのスイッチを入れる。
控えめな明かりは、香織の顔と、ベッドを照らしてくれた。
目を細めて光の明るさに慣れてから、香織の様子を再確認する。
肩には布団が乗っていたが、足は布団の外に出されたままだ。
香織は浴衣を着ているので、自然と生足が目に入る。
白い足から、慌てて目をそらす。見とれてしまうところだった。
「どうかしたの?」
「いや……それより、さっきから足が出てるぞ。それじゃいくら暖房を効かせても同じだ」
「……ニブチン」
「誰がニブチンだって……、!?」

香織は布団を跳ね除けると、俺に全身を見せた。
さっきまで眠っていた香織が着ている浴衣は乱れていた。
浴衣の端から下着がのぞいていて、ふとももは丸見え、胸の谷間まで見える。
「ボク、やっぱり魅力が無いのかな」
「いや、そんなことはないぞ」
この場にいるのが俺以外の男なら、すぐに狼になっているだろう。
「じゃあ、どうして雄志君はボクを……抱いて、くれないの?」

予想外の言葉に心臓をつかまれて、揺さぶられたような気がした。
俺が、香織を、抱く?
「ごめん。今日、ケーキをたくさん食べたのは雄志君と一晩過ごしたかったからなんだ。
いっぱい食べてゆっくりして、最終バスの時間を過ぎるようにしたんだ。
お金が無ければ、2人でホテルに泊まることになるだろうって、そこまで計算して」
……全然、気づかなかった。
「一緒の部屋に泊まれば、もしかしたら雄志君がボクを抱いてくれるかな……って。
でも、やっぱりボクじゃ無理なんだね……雄志君をその気にさせるのは」
香織は手で顔を覆い、体を丸めた。そして、泣き始めた。
「ごめん、ごめんね……勝手なことしちゃって」
泣かないでくれ。俺は、お前を泣かせたり、悲しませたくないんだ。
「ただの友達には、そんなことできないよね……」
違う。俺にとって香織は親友で……。

親友?本当に、それだけなのか?
俺は香織のことを、ただの親友としてしか見ていなかったのか?
……違うな。香織を泣かせたくないと思う気持ちは、それだけじゃ説明がつかない。
俺は、他の友達よりも近くにいて、1番近くで香織の笑顔を見続けていた。
いつのまにか俺は、香織の笑顔をずっと見ていたくなっていた。
ああ、そうか……きっと、この気持ちは――ただの友達には湧かないものだ。
「香織、俺の話を聞いてくれ」
「いいよ、もう。慰めなんて……」
「好きだ。香織」

香織の嗚咽が乱れた。顔から手を離すと、涙に濡れた目で俺を見つめる。
「ぇ…………今、なんて……?」
何度も言わせるな。恥ずかしい。
「俺は、香織のことが好きだ。友達としてじゃなく……女として」


241 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/07(木) 23:10:21 ID:RsTTLffE
香織の目から流れる涙は止まっていたが、その代わりに目は大きく開いた。
口は半開き。顔はでたらめに赤色系を塗りたくったように赤い。
「す、すすすすす、好きって、今、ぁ……雄志君、言った……?」
「ああ、言った。はっきりとな」
まっすぐな香織の目から目を逸らしたくもある。だが、ここで逸らしたら真剣さが伝わらない。
対する香織は目を逸らさない俺の様子に、何かを感じ取ったようだ。
「好き……ボクのこと、好き……雄志君が、ボクのことを、好き……」
ベッドに顔を伏せ、自分が聞いた言葉を忘れないよう、反芻している。
香織は呟きを止めると、ベッドの上に正座した。

「香織はどうなんだ? 俺のことがまだ好きか?」
「はい! もちろん、当然、なにがあっても、好きなままです!」
「じゃあ……恋人になってくれるか?」
告白したんだから、あえて言うまでもない質問である。
しかし、俺と香織のような仲になるとお互い好きだと言い合っても、変化が薄い。
今までの関係とは違うとわからせるためには、聞く必要があるのだ。
「こ……恋人……雄志君と……」
「……」
「もちろん、OKです……こちらこそ、不束者ですが、よろしくお願いします」
ベッドの上で座礼をする香織。俺も同じように礼をした。
俺の中に常に存在していた、香織を泣かせたくないという思い。
その思いを抱く理由。それは、香織に対しての好意によるものだったのだ。

「……ふわぁぁぁ……へへへ」
香織はとろけた、ふにゃりとした表現が似合う顔で俺を見ている。幸せに浸っているようだ。
さて、このまま眠りについてもいいんだが……興奮して眠れそうにないな。
「香織」
「うん、なあに……?」
「抱いてもいいか?」

とろけた表情が一変、唇を横一文字にして固まった。
「抱くって、あの、テレビみたいに……?」
「まあ、そういうことだ」
香織の体を抱きしめて、ベッドに押し倒す。暖かいうえに、柔らかい。特に胸の辺りが。
「ま、待って……まだ、心の準備が……」
「安心しろ。やっていくうちに覚悟ができてくるから」
体の下にいる香織の顔を覗き込む。いったいどこまで紅くなるのだろう。試してみたくなってきた。
唇にキス、をするように見せかけて、頬にキスをする。触れた途端に柔らかくかたちを変えた。
続けて額、耳の下、顎の下にくちづける。一段と香織の顔が紅くなった。
最後に、唇にキスをする。
「んん…………ん……んんっ、……ぁ……………………ふぁ」
数秒唇を当てていると、香織の顔が横に向けられた。俺を避けたわけではなく、気絶してしまったようだ。
肩をゆすっても、頬を叩いても起きる気配はない。おあずけである。

香織を仰向けにして着衣の乱れを直し、布団をかける。俺は床に寝ることにした。
同じベッドで寝ていたら、ついイタズラしてしまいそうだったからだ。
……次の機会があったら、香織をあまりからかわないようにするとしよう。


242 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/07(木) 23:11:49 ID:RsTTLffE
・ ・ ・

電話の音で目が覚めた。携帯電話の着信音ではなく、室内に置いてある電話から音が出ていた。
かかってきたフロントからの電話によると、10時になる前に部屋を出てもらわないと追加料金がかかるらしい。
時刻は9時半。かなりギリギリである。
電話を切り、ベッドで寝息を立てたままの香織を起こす。
「起きろ、香織」
「ああ、ううん……おはよ、雄志君……、!!!」
香織は俺を見ると、ベッドを転がって、床に落っこちた。
「大丈夫か?」
「うん、なんとかね……って、駄目だよ! 朝から、その、し、しようだなんて……」
「何を根拠に言っているのかわからんが……そういうつもりじゃない」

いぶかしげな顔の香織に事情を説明する。
事情を聞くと、時間がないということにすぐ気づいて身支度を始めた。
「着替えるから、あっち向いてて!」
「見たら、駄目か?」
「いや、駄目じゃ……違う、駄目ったら駄目!」

香織が着替えを終えてから、荷物をまとめて部屋を出る。
ホテルのフロントに行き、鍵を返す。追加料金は請求されなかった。


243 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/07(木) 23:17:15 ID:RsTTLffE
近くの銀行でいくらかお金をおろし、バス代を確保する。
駅前に行くと、運よく自宅近くへ行くバスが停まっていた。
バスに乗る。結構広いバスだったが、他の乗客はいなかった。
俺が窓際に座ると、香織がくっつくようにして横に座った。
「変なこと、しないでね」
「するか、こんなところで」
バスが動き出した。眠くなりそうなほどにゆっくりと、国道へ向かって進んでいく。
窓の外を見たまま、手探りで香織の手を握る。
香織の手は一瞬躊躇したが、すぐに俺の手を握り締めた。
指の間に香織の指が絡まっていて、くすぐったかった。

バスが香織の自宅近くの信号で停車したタイミングで、話しかける。
「香織、明日は暇か?」
「うん。今日はバイトがあるけど、明日は入ってないし。……ねえ、どっか行かない?」
「俺もそのつもりだったんだ。それじゃあ明日、香織の家に行くよ」
「うーん……ううん、ボクから行くよ。いいでしょ?」
「ああ」
こだわる理由も無いので、うなずきを返す。
間を空けないうちに、香織の自宅前にバスは到着した。
バス停の前で手を振る香織を見ながら、バス代を用意する。
片道料金は720円。昨日あんなことがあったからか、これだけの金額でも大きく思えた。

5分ほどして次のバス停へ到着した。
バスから降りたとき、目の前に広がっていたのは懐かしい光景、俺が住むアパートの外観。
緩む頬をそのままに、アパート前の駐車場を歩きながら、2階にある自分の部屋を見る。
そのとき目に飛び込んできたものを見て、俺は一瞬歩みを止めた。
「……」
部屋の前に、華が立っていた。無表情のままで俺を見つめている。

部屋の前に立っている華の手が動いた。携帯電話を耳に当てている。
もしかしてと思っていると、ポケットに入れていた携帯電話が振動した。
ディスプレイには、華、と表示されている。

ごくり、と喉を鳴らしてから、電話に出る。
「……もしもし?」
「おにいさん、おかえりなさい。……ずっと、待ってたんですよ。ここで」
2階に立っている華が携帯電話を下ろすと、通話も同時に切れた。

そういえば、昨晩外泊するということを華に伝えていなかった。……間違いなく、怒っているな。
華に出会い頭で何を言われるか不安に思いながら、俺は2階の自室へ歩き出した。


244 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/07(木) 23:17:58 ID:KzGB2hXt
支援ズサー
 ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∧ ∧
⊂(゚Д゚⊂⌒^つ≡3

245 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/07(木) 23:19:09 ID:RsTTLffE
14話はこれで終了です。
なんとなく最終回っぽく感じられますが、まだまだ続きます。

246 名前: ◆Z.OmhTbrSo [sage] 投稿日:2007/06/07(木) 23:19:49 ID:RsTTLffE
>>244
支援、サンクス!

247 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/07(木) 23:21:33 ID:KzGB2hXt
遅かったorz
でもGJ
てか雄志が地雷踏みまくりワロタw

248 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 00:26:30 ID:H805gnal
こ、こここれから寝ようって時に何てもの見せてくれやがりますかッ!?



神よ、ありがとう。
GJ

249 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 04:14:12 ID:EMpIubaO
ん?今はコンビニで24時間お金が下ろせるよな
手数料はかかるけど宿代ほどじゃない

250 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 07:43:32 ID:BYfCOq1V
>>246
GJ!
でもああああああ
香織に告白してるう!
個人的にはまさかの展開だw

251 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 08:10:03 ID:52ndi9Iz
>>249
地方銀行は夜間おろせないところもあるよ

252 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 08:50:50 ID:BYfCOq1V
香織は気付いても黙ってる
雄志は鈍感だから(ry
とか思った

253 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 18:50:54 ID:EMpIubaO
>>251
でも大抵は9時までだろ?
バスがないのに気付いたのが7時すぎなら間に合ったんじゃないか?

254 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 21:34:43 ID:Jf82lKh3
一番病んでないヒロインを選ぶか、主人公よ
しかしそれは恐怖の双鬼から己も女も守らなければならぬ茨の道ぞ
と言ってみる俺ナッシュ!GJ!

255 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 21:37:02 ID:C8L4795n
VIPで三つ目のヤンデレ企画が立ち上がった。
前の二つに比ると、ぶっちゃけ、期待薄。

ttp://cabin.jp/koizumi/niji/index.html


256 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/08(金) 23:54:40 ID:0irr/duG
ヤンデレも記号化が進んできたような気がする。

257 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 00:06:06 ID:6febIchO
嫉妬 憎悪 殺害 異物混入 笑い声 トラウマ
白痴 オナニー ストーキング 自己完結 やたら地雷を踏む想人
妄想 未発達の社会性 偏愛 結界依存 残虐性 想人の偶像化
ヤンデレの記号って大体、こんな感じかな?

258 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 01:11:44 ID://yFGhgk
>>249>>251>>253
・香織は気付いていたが黙っていた。雄志は気付いていない
・辺境だったので近くにコンビニがない
・時代設定が昔だからコンビニでおろせない

さあ、好きなのを選べ

259 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 01:22:41 ID:dyNdB8BN
>>257
ここはヤンデレを愛でるって感じだが、vipの奴らは遊んでるって感じだな
あと、あんまりメジャーになりすぎると女共が介入してきてそのジャンルは滅ぶ

260 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 02:53:26 ID:KSdVdImA
>>259

そういや、すでにヤンデレ同盟とかあったんだよなぁ……orz

261 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 03:07:50 ID:7yE6sQBU
ヤンデレを理解するのはいいが、一度はヤンデレの魅力を体感しないとものは作れんと思う。

とは言え、このジャンルだけは女は立ちいれんと思うが。
男が病むゲーム作るのがせいぜい。

262 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 04:05:40 ID:BvkdJ7iD
>>259ツンデレみたいに女性週刊紙に取り上げられる日が来るのか。
病的なわがままの免罪符になりそうだ。

「あなたを愛し過ぎて、あたしヤンデレになっちゃった。」
「家事やって。ブランド物買って。合コンくらい行かせて。」
「愛の証し見せないと、あたし狂って殴っちゃうかも」



自分で書いてて胸糞悪くなってきたわい。

263 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 05:20:23 ID:ULsJ+OYe
>>262
それ、ヤンデレの意味を知らない人からすれば頭の弱いわがまま女にしか見えない。

ツンデレにしてもヤンデレにしても、二次元の美女・美少女がやるからウケるということをあの手の雑誌は理解していない。
いや、女に間違った行動を起こさせて自爆させるのが狙いなのかもしれないが。

264 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/06/09(土) 09:20:08 ID:Szxqy9dS
このての奴は基本的に二次元だから許される部分があるからなぁ
ツンデレ喫茶も明らかに勘違いしてるし

265 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 09:52:29 ID:gY8r5zwq
THE 地球防衛軍【さ、3だー!】

266 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 09:54:13 ID:gY8r5zwq
誤爆した……。

とりあえずヤンデレブームが起こらないことを祈る。

267 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 10:43:15 ID:dyNdB8BN
>>260
うわぁ、なんか凄く趣旨を間違えて活動してそうだな

268 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 10:44:40 ID:dyNdB8BN
ヤンデレ同盟より抜粋

□管理人の独断と偏見で、勝手にヤンデレ分析
▼移動動作が極端に遅い
▼そのわりに攻撃速度となると、異常なほど速い
▼身振り手振り、大げさに振舞う
▼声高らかに笑う
▼でも目が笑ってない
▼ごめんなさい、大好きなど、同じ言葉を連呼する
▼連呼しながら相手を殴ったり蹴ったり、果てには刺したりする
▼人の話を聞かないというか、聞けない
▼病めば病むほど本人は陶酔状態に、周りは不安を覚える
▼根は純粋…のはず

※当同盟は暴力行為を推奨するものではありません。

269 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 10:51:06 ID:st3k3113
>>268
なんだかなぁ……
なんでもかんでもヤンデレにするなって感じだ

270 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 11:01:35 ID:XODhjDxb
>>268
どうみてもアスペルガーにしか見えないw

てか、ここで定義しているヤンデレって、元々精神を病んでいる女が
男(女?)を愛すことであって、男(女?)を愛して病むのではないと思う。

271 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 11:12:02 ID:ksWXR62K
ヤンデレはこうだ!とか自慢げにやたら細々狭々定義しても寒いだけ。

272 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 12:33:47 ID:pXf8Jq5s
考えるんじゃない、感じるんだ

273 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 13:52:58 ID:ULsJ+OYe
>>268
こんな感じか?

夜の帳が落ち、アスファルトが黒く塗りつぶされて足元があやしく感じられる、深夜2時。
街灯の明かりはすでに消え、歩道を照らすものは月明かりのみ。
洋介は、自分が走っている場所がどこかもわからずに走り続けている。
洋介は自分の身に起こったことがまだ理解できていなかった。


夜、いつものように部屋でくつろぎながら恋人と会話をしていると、ナイフを持った女が部屋に入ってきた。
「見ぃつけた! 洋介君!」
闖入してきた女はまず、洋介の恋人に目をつけた。
恋人は目の前にやってきた女を睨み返した。
そして、女の凶刃を首筋に受けて、血を噴き出して倒れた。
恋人の近くに座っていた洋介は、血の雨が止まるまで、返り血を浴び続けた。
しばらくは、目の前で何が起こったのか理解できなかったのだ。

それもそのはず。洋介の目には、突然恋人の首に切り目が入り、突然血が噴き出したようにしか見えなかったのだ。
闖入してきた女の振るったナイフの軌道はおろか、初動さえも見て取れなかった。
「邪魔者は消えたよ、さあ、次は……」
大仰な仕草でナイフを空に向けて振るい、洋介の目の前にかざした。
「き・み・だ・よ」

ナイフの輝きを見て、洋介は目が覚めた。
女を足で蹴り飛ばし、洋介は家を飛び出した。
一度家の外で立ち止まり、女がでてくるのを待った。
女が出てきたのは、洋介の冷や汗がひくころだった。
緩慢な動作。右手にナイフを握り、だらりと両手を垂らしている。
一歩一歩、地面を確かめていくような歩き方は、非常にゆっくりとしたものだった。

女は洋介を視界に捉えると、声を上げて笑った。
「あはははははははははははははははははははははははははははははは
くけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ
ぎゃはははははははははははははははははははははははははははははは!」
洋介から見て、女の目は笑っているようには見えなかった。

家から全力で走り、ひたすら走りぬいた洋介は壁に手をついた。
止まっても、誰かが追ってくるような足音は聞こえてこない。
緊張感を解き、洋介は地面に座り込んだ。
その時、洋介の前に光が広がった。
夜の闇に慣れた瞳では、その光を直視することはできない。
目をつぶり、顔をそらしてしばらく待つと、光の気配が消えた。
洋介がゆっくりとまぶたを開いていくと、バイクに乗った人の姿を確認した。
目が慣れていくに従い、やってきた人が恋人を殺した女だということがわかった。
女はバイクに乗って、洋介のあとを追ってきていたのだ。


274 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 13:54:00 ID:ULsJ+OYe
女はゆっくりとした動きでありながらも、停滞を感じさせない動きでバイクから降りて洋介と向き合った。
右手に握られているのは、当然、恋人の命を奪ったナイフ。
月明かりをナイフが受け、そこだけが鮮明に、はっきりと見えた。
洋介は女に向かって、初めて怒声を浴びせた。
「なんなんだよ、お前! あいつを、なんで殺した!!!」
「洋介君、ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してね」
「てめえ、人の話を聞けよ! なんであいつを殺したんだ!」
「すぐに、私のものにしてあげる」
この女は話を聞いていない。洋介はそう思った。
ただひたすらに、自分の目的を完遂することしか考えない。
そのために邪魔をするものは、なんであろうと排除する。
草も、木も、犬も、猫も、鳥も、そして人間でさえも。

洋介の心に、言いようもない怒りがこみ上げた。
幼馴染の恋人。いつも自分の傍にいて支えてくれた恋人。
栄養が偏ると言って、洋介に食事を作ってくれた。
毎日のように河川敷を通ってふざけあいながら帰った。
初めて抱いたときには洋介の名前を呼びながら、抱きしめ返してくれた。
その命を、目の前にいる女はたやすく奪った。
恋人の命を、何でもないもの、どうでもいいものだと考えている。
あいつのことを何も知らないくせに。俺がどれほどあいつを思っていたのか知らないくせに!

洋介は拳を振り上げて、立ち止まる女に殴りかかった。
腰をひねり、腕、肩、背中の筋肉を総動員してパンチを放つ。
腕が伸びきったとき、衝撃が走ったのは、拳の先ではなく、頬。
女の放った拳が洋介の頬を完璧に捉えていた。
よろけながらも立ち続けようとする洋介は、女の蹴りを股間に受けた。
内臓が締め付けられる。息がつまり呼吸が出来ない。脳が圧迫される。
股間を押さえて倒れた洋介を蹴りながら、女は喋り続ける。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
本当はこんなことしたくないの。だって、私洋介君のことが好きなんだもの。
あ…………今私、好きって言った? 好きって言った? 好きって言った?
キャー、恥ずかしい! もう、こんなこと言わせないでよね! 洋介君の馬鹿!
でも……やっぱり好き! 大好き! 大好き! 大好き! 大好き!」

女は洋介の体をでたらめに蹴り続けた。
洋介の顔がブーツに踏みつけられ、鼻が折れ、涙が流れる。
みぞおちに蹴りを叩き込まれ、胃の中のものが逆流する。
骨のあちこちが軋むたび、脳が危険信号を放つ。
このままでは死ぬぞ、と。


275 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 13:56:39 ID:ULsJ+OYe
女の蹴りが止まったころには、洋介は痛みで声もあげられない状態になっていた。
涙が視界をぼやけさせ、吐瀉物が口に貼りついて、ぐちゃぐちゃの気分だった。
女は洋介を仰向けにすると、体の上に乗った。
両手を天に向けてかざしているようだったが、今の洋介には何も見えなかった。

「これで、洋介君の一番大事なものが手に入るよぉ。
いぇへへへへへへへへへへ。いひひひひひひひひひひひひひ。
ずっと、私が永久に愛し続けてあげるから、心配する必要はないよ。
あの女よりも、幸せにしてあげるから。だから、ちょっとだけ――」
女の手が、振り下ろされた。
「おやすみなさい」

夜の闇に、鮮血が舞った。
男の胸から噴き出す血は、女の顔を隅々まで濡らしていく。
大口を空けて笑う女の口に、血が入る。
女は血を味わった後、いまだ血を噴き出し続ける男の胸に口を当てた。
流れ出していく血を、女は飲み続けた。
渇いた喉を潤していくように、貪欲に吸い続ける。
この光景を見た人間は、女が狂っているとしか思わないだろう。
だが――女の目の輝きは、狂っている人間の物ではない。

子供のように、純粋に輝いていた。



いきなり>>268みたいなことをやられても、俺は萌えないな。
だって……デレがないやん!デレがなきゃヤンデレとはいわへん!



276 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 14:03:06 ID:4KSJbTJz
いきなりそのシーンはどうかと思うが

277 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 14:17:18 ID:iqMfc1Ip
座敷女を思い出した

278 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 14:21:33 ID:dxdKX5QY
普通の女が恋していく過程で狂っていくのにカタルシスを感じる

279 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 18:23:55 ID:9KN7HSMV
俺はエロスを感じる

280 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 19:46:21 ID:eLLWmt14
つい最近ヤンデレってのを知ったペーペーだけどこんな感じでいいの? 題材はアイマスの黒春香


プロデューサーさん・・・私・・・ずっとプロデューサーさんの事好きでした。気付いて・・・ませんでしたよね。
プロデューサーさんは私の事見てくれなくて・・・・・千早さんしか見てませんでしたよね? あははっ。いいんですよ、別に気にしてませんから。

でも、千早さん意外と怖がりなんですよ?私が包丁でケーキを切ってるだけなのにガタガタ震えて、突然大声で叫んだりして。
ヒドイですよね。そりゃあ私の作るお菓子はあんまり美味しくないかもしれないけど、不味くは無いと思いますよ。 だからあんまり騒いだら近所迷惑だから少し注意したんです。そしたらそのまま大人しくしてくれました。
千早さん、いつもは厳しいけど、ああ見えて本当は凄く心が弱い人なんです。すぐ何かあれば自分に甘えて・・・レッスンだって直ぐサボるんですよ。アイドルとして自覚が無いですよね。
私はどんな事があってもレッスンをサボるような事はしません。だって、どんなに辛い事があってもプロデューサーさんの顔を見れば嫌な事、全部忘れちゃいますから。




281 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 19:55:18 ID:eLLWmt14
・・・・って私の声、もう聞こえてないですよね。あはは、大丈夫ですよ。プロデューサーさん、私はもう一人でもアイドルやっていけますから。だから、そこで見てて下さいね。プロデューサーさん・・・・・・
アハハハハハハハハハハ!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!
こうですか?わかりません><

282 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 20:10:16 ID:8JlpcaSc
>>281
元ネタ知らないからなんとも言えんが、独り立ちするよりは
「これでやっと二人きり……私はプロデューサーがいないとダメなんです。さあまた二人だけでやっていきましょう?」
の方がいいような

283 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 21:16:35 ID:lYBfGBVD
だな、基本的にヤンデレは好いている相手は見捨てないイメージがあるから
むしろ絶対に離れさせない為にどんな手でも使うのがヤンデレだと思うんだ

284 名前:280[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 21:31:21 ID:eLLWmt14
>>282->>283

評価、アドバイスありがとうございます。うーん・・・ヤンデレ少女の中にも独り立ちするような芯の強い面があってもいいかな?と思って書いたんですがそれだと逆にマイナスになる事が分かりました。これからも頑張るッス(`・ω・´)

285 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 21:47:11 ID:YEI+4ZBW
まあ…ヤンデレは「弱いからこそ」狂うのだと思うぜ…

依存の果てとかな

286 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 22:12:35 ID:WfeSpeiO
変人の女性が恋をしたというパターンなら強い面があっても変じゃないと思うが
恋するあまり病んでしまったパターンだったら監禁とかはしても見捨てはしないと思うな

287 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 22:57:06 ID:hTSafdTI
>>284
いや、元ネタ的には君の解釈で正しいんじゃないかな?
といっても元ネタもノリで構成されてるところがあるから正しい解釈というのはないのかもしれないけど。
つまりは、あんまりヤンデレキャラではないということだよ。病みはしてるのかもしれない。

288 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 01:05:03 ID:QBq4uGgj
「相手への異常な執心により、常軌を逸した思考または行動を取る」ぐらいかな、俺が定義するとしたら。
ヤンデレはひとつの属性とされてるけど、まだ最小単位ってことはないだろう。


289 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 08:44:43 ID:eTE5kQkN
投下しまっす。

290 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 08:46:49 ID:eTE5kQkN
私は何の為に生きているのだろう…
ふと、自分自身のことであるのに他人事のように思えるときがある。
生きる目的…人は何の為に生きて、そして何を成して死ぬのだろうか…
私はその目的を遂げる為には手段を選ばなかった。ううん…それしか選べなかった…
でも手段を選ばなかった結果…大切な目的が遠くに感じるようになったら…
やはり、その手段は間違っていたのだろうか?
だけど、あの時選んだ選択肢の他に私に選べる道があった?
人生にもしも…はないってことを知ってる。だから私は自分の選択に後悔なんて無い。
後悔なんて微塵も無いはず…
でも、じゃぁどうして私はそんなことを考えてしまうんだろう…

「生中お代わりお願いね~♪」
空になったジョッキを振り回し、姿の見えない店員に向かって叫ぶと「はぁい、よろこんで♪」と、元気な返事が返ってくる。
そんな私の様子を呆れ顔で見つめているのは高校時代からの悪友、遠山景子だ。
「それで…君はまた…なんで地雷を踏むかな?」
「…地雷じゃないよぉ~…ん…敢えて言えば…運命?」
「あれを地雷と呼ばずしてなんと呼ぶのだ?君の脳細胞は学習能力がないのか?それとも懲りるという言葉が辞書から消えうせているのか?」
「前の…そりゃぁ失敗だったけどさぁ…でも、今度のは…ちょっと違うんだよぉ?」
同じような会話を前にもした覚えがある。それはさっき?それとも前回?
景子の主張は要約するとこうだった。
「君は男運が決定的に悪いんだ。」
確かに、前の夫との離婚の際には景子には世話になった。
いや、正確には景子のお陰で離婚できた…そのことはすごく感謝している。
前の夫は結婚当初は本当に優しい彼だった…でも、優しかった笑顔はたった半年で霧散し、
彼は仕事がうまく行かないのはお前のせいだ、
夏海が泣くのはお前のしつけがなっていないからだって…
何かことあるごとに私をなじり、殴り…そして犯した…。
その当時の私は自分自身の至らなさが彼を怒らせたんだ…もっと頑張らなきゃ
…そんな風に自分自身を責めていた。だって、そう考えないと
…あの優しかった彼が変わってしまった理由が思い浮かばなかった…そう思うことで救いを求めていたのかもしれない。
そんな私の様子を見かねて景子が力になってくれなかったのなら…今頃私はどうなっていたのだろうと今でも思う。
この街に住むことも、前の夫と別れることも…そしてあの人に出会うこともきっとなかった・・・
そう思うと景子にはどれだけ感謝しても、したりなかった。
「って景子・・・なにをやってるの?」
「いや?君が私をほったらかしにしてまた自分の世界に入っているものだからな。
どうせその新しい男のことでも考えていたんだろ?そんなわけで、退屈しのぎに君がどれくらい気づかないのか実験していたところだ。」
気がつけば景子は大きなカメラを片手に私の頭にネコミミのカチューシャを被せ、ぱちりぱちりと写真を撮っていた。
……我ながら…ど~してここまでされてて気がつかないかにゃぁ…
ぱちりという音とまぶしい光
「まぁ、また何かあったら相談するように…いいな?まぁ、落ち着いたら一度様子を見に家の方に遊びにいくからその時はよろしく」
しゅたっ!と右手で南無~のポーズを取る景子の姿はまるでお母さんみたいだった。


291 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 08:48:08 ID:eTE5kQkN
「えっ!晶子さん…結婚するの!?」
「そ~なんですよ♪だからフグタさん…お祝いくっださいね♪」
「いや、だから僕は福田(フクタ)だって…」
賑やかな店内にフグタさんの声が響き渡る。フグタさんはよく店に来てくれる常連さんで週に五日ぐらいのペースで通ってこられる。
今日もいつものように一人、開店時間から店に足を運んでくださった。
「晶子さん、今度美味しいものでも食べに行きませんか?」
「う~ん…ごめんなさい。また今度誘ってくださいね?」
「うん、じゃぁまた…今度誘うよ。」
そんな挨拶代わりのやり取りも今日で何回目だっけ?と指折り数えて…いち…にぃ…さん……たくさん?
フグタさんは何でも大きな会社の偉い人…らしいんだけど、全然偉ぶってないし、他のお客さんを連れてくるわけでもないし…
一度もスーツ姿を見たことはないし…とてもそんな風には見えないところはフグタさんの謎で面白いところだと思う。
「そっかぁ……それで…相手はどんな人なんですか?きっと…いい人なんでしょうね。それじゃぁ…晶子さん…お店辞めちゃうんですか・・・」
「いえ、まだ再来月まではお店に居ますよ?だからぁ…遠慮しないでお祝いくださいね♪」
いつのもようにまんだむのポーズで考え込むフグタさんは、ぼぉっと壁に掛かっている絵…
なんとか言う有名な画家の作品らしいけど私はあんまり好きじゃない…絵を見つめていた。
「あの…絵と高価なものはいらないですよ?」
「あ…そうなんですか……じゃぁ…晶子さんは…なにが欲しいですか?」
「ん…欲しいものですかぁ…」
幸せな毎日…不安の無い毎日…穏やかな日々…でも、プレゼントでもらえるようなものじゃないよね?…う~ん…う~ん…う~ん…」
「遠慮せずに言ってください。私でできることでしたら・・・」
「…欲しいもの…ですかぁ………今は思い浮かばないですね♪」
「…そうですか…それでは、私のほうでも何かいいものがないか考えておきますね。」
フグタさんはそういってグラスの中のウイスキーを飲み干した。

結果から言えば私はフグタさん…いえ福田さんに退店の時に大きな花束を貰った。
「晶子さん。お幸せに…」
祝福の言葉と、初めて貰うような真っ赤なバラの花束に感極まって瞳に涙が溜まる。
「はい、フグタさんも…お元気で」
できる限りの笑顔で微笑み、タクシーに乗り込み、もう一度フグタさんに手を振る。運転手さんに行き先を告げると、
フグタさんとの距離が少しずつ広がっていく。ネオンの光の中にその姿が見えなくなるとまた涙が溢れた。
「幸せに…か…」
今までの人生をふと振り返りながら、ふと花束に目を移すと小さなメッセージカードが添えられていることに気がつく。
「へぇ…」
ちょっと意外だった。あのフグタさんがこんな可愛いメッセージカードを私の為に選んでくれている姿を想像すると、
くすりと笑みが零れると同時に涙が溢れてきた。
「なにが書いてあるんだろう…」
私は可愛い封を丁寧に剥がした。


292 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 08:49:18 ID:eTE5kQkN
「じゃぁ、次はこれを着てくれるかい?」
彼はいやらしい笑みを浮かべながら私にその衣装を手渡した。
体操服にブルマー…部屋の中を見渡すと無数の制服…制服…制服…
私は俯きながらそれを受け取り…躊躇いながらも…ゆっくりと着替え始めた。

結婚後、私と夏海は冬彦さんの家に引っ越しすることになった。
それというのも、冬彦さんは郊外に大きな古いお屋敷…小さな蔵もあるような大きな家を持っており、そこに春樹君と二人で暮らしていると言っていたからだった。
「いやぁ…家が広いのはいいんだけどね?広すぎちゃって困ってたんだよ。ほら、掃除も行き届かないしね。」
タクシーにお金を払い、荷物を下ろすと大きな屋敷が目に入った。
「……おっきぃね…」
「うん…これ広いとかって…レベルじゃないよね…」
その夏見の言葉どおりに冬彦さんの家…いえ、私たちの家はとても大きかった。
しかし、その中身はといえば
「……きちゃないね…」
「うん…でも、これは…汚いって…レベルじゃないよね…」
家に一歩足を踏み入れると、黒いゴミ袋が無造作に積み上げられ、机の上にはインスタント食品の容器や菓子パンの袋、ジュースの缶やパック、
開けっぱなしのお菓子の袋…台所には洗いものが山のように積み上げられ、洗濯物はあちこちに散乱していた。
冬彦さんは器用に飛び石を歩くように物の置いてない床を選んで奥へと進んでいく。
「いやぁ、あっはっは。なにせ男所帯だからさぁ…」
そんな風に笑っていたが、時折その隙間を縫うように足元を黒い物体がかさかさと我が物顔で這い回っているんですけど…
とんとんとん…
ゆっくりと視界に入ってくる小さな足。
木製の階段をゆっくりと下りてくる影があった。
「おぅ、春樹か。ちょうどいいや、ほら、ちゃんと挨拶しろ。今日からお前のお母さんになる晶子さん
…は、前に会っていたっけ?まぁ、いいや。あとお前の妹になる夏海ちゃんだ。」
「おかあ…さん?…いもうと…?」
春樹くんは突然のことに呆然とした様子だった。あれ?…なんで驚いているんだろ…
そんな風に考えていると
「あれ?言ってなかったけ?父さんな…再婚したんだ。で…今日から一緒に住むことになったんだ。」
「…あの…冬彦さん?もしかして…春樹君に言ってなかったんですか?」
「ああ、うっかり…」
「うっかりじゃないですよ!ほら、春樹君だって驚いているじゃないですか!」
驚く春樹君の前にしゃがみ、目線を合わせて頭を撫でる。
「お…香亜…さん?」
「うん……でも、春樹君が私をお母さんって呼ぶのが嫌だったら…晶子さんでもいいからね?
でも…夏海とは仲良くしてあげてね?」
背中に隠れてもじもじしている夏海の手を引き、春樹君と引き合わせる。
「ほら…夏海?ご挨拶は?」
「……小西夏海です…」
「……藤岡春樹です…」
「夏海?今日からあなたも藤岡…なのよ?」
「……藤岡?」
「そう、あなたの名前は今日から藤岡夏海。私も…藤岡晶子になったのよ♪」
「藤岡…夏海…」
「とりあえず…よろしく」
「…あ…あの…」
そういって春樹君は手を差し出した。夏海は胸の前で手を組み戸惑っているようだった。
…しょうがないわねぇ…私は二人の手をとって握手をさせた。
「ほらっ、あ・く・しゅ♪二人とも仲良くしてね?」
顔を真っ赤にして俯く二人。でも、私は二人の小さな声が聞こえていた。
「…ぅん」「…ぅん」
二人の微笑ましい初々しさに思わず笑みがこぼれる。
…でも、まずはこの家をなんとかしなくちゃねぇ……かさかさと動き回るそれを横目みながらそう思った。


293 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 08:50:28 ID:eTE5kQkN
翌日から大掃除に明け暮れる毎日が始まった。
ゴミを片付けゴミ袋にまとめ、家の中からゴミを一掃していく。殺虫剤を振りまき、炊事場を磨き、洗濯機を回し、たまった洗い物を片付ける。
…これって…終わるのかしら?ゴキブリほいほい満員御礼の状態に思わずそんな独り言が漏れる。一匹見つけたら三十匹…って言うけど……ふぅ…とため息をつきながら丸めた新聞紙で闊歩するそれを叩き潰す。
「でも、最初の頃に比べると…少しはマシに…なったのかなぁ?」
頬に手を当て思わずため息が漏れる。あんな環境で育った春樹君は少しだけ…世間とずれているところがあった。ゴミを捨てるという習慣と…
「この虫を見てもなんとも思わないところよねぇ…」
冬彦さんはなんとも思わなかったのかしら…そんなことを思いながら、ふと微笑む。夏海は相変わらず泣き虫だったけど、春樹君は素直で面倒見のいいお兄ちゃんになってくれていたのだ。しかも、春樹君は私が教えたことを
「いいか?ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てなきゃいけないんだぞ?」
「?うん、わかりましたぁ♪」
夏海にちゃんと教えて…まぁ、内容はともかく、面倒を見てくれることが嬉しかった。
二人の仲のよさは私にとって微笑ましく、またこの家での生活を明るくしてくれていた。
冬彦さんは仕事の関係で忙しいらしく、家に帰ってくることは少なかった。でも、家に居る時には積極的に子供たち
…夏海とも遊んでくれるいい夫…だった様に思う。なにより、前の夫と違い私に暴力を振るうことはない。
景子が心配した悪癖…冬彦さんの女癖の悪さ…も結婚前の約束を守って治まっているように感じていた。
その代わりに私は彼の要求に全て応える。それが結婚前に彼と交わした約束だった。
「きっと君に似合うと思うんだ…」
そういって彼は私の手を引き、この小さな蔵に誘った。
薄暗い蔵の中には外面とは裏腹に、まるでテレビ局のような撮影機材と無数の制服と大量のビデオテープが所狭しと並べられていた。
ここだけ家とは違いきちんと整理整頓が行き届いた空間だった。
私は異様な匂いを感じ…すん…と鼻をならした。鼻腔に浸入してくる奇妙な匂い…男と女の汗の匂い…
ここで一体過去になにがあったのか…考えるまでもない。ここは冬彦さんの城だった。
ここに冬彦さんは連れ込み…ここで…
部屋の中央にはマットレスが無造作に置かれ、その上には白いシーツ。それを取り囲むようなライトとビデオカメラ…
冬彦さんは嬉しそうに鼻歌を歌いながら部屋の隅で衣類を物色していた。
「ど・れ・に・し・よ・ぉ・か・なぁ…ふふふ」
それが私と冬彦さんの夫婦生活の始まりだった。
結婚し始めた頃はそれこそ毎晩、子供たちが寝静まると蔵の中に誘われていた。
…そういうものなのかな…そういうものなんだ…
私は冬彦さんの趣味…嗜好を受け入れていた。
人に言えない部分。
人に明かせない…明かしにくい部分を冬彦さんは正直に打ち明けてくれたんだ。
受け入れよう。彼の望むことを受け入れよう…
恥ずかしさはもちろんあった。
でも、冬彦さんが誉めてくれるたびに私は満たされていた。

294 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 08:51:53 ID:eTE5kQkN
「…え?…なんで……なの…」
ゴミ捨て場で背中から包丁を生やして横たわっている冬彦さん。
そして、その傍らで荒い息を吐いている春樹君…そして蔵の中から聞こえる夏海の泣き声…
何?何?何…なにが…どうして…
心臓がばくばくと高鳴る。
何が…どうなって…
春樹君が…冬彦さんを…刺した…ころ…した…?
冬彦さんが…し…んだ…?しんだ?…嘘…嘘…嘘…嘘…
救急車!?…でも、なんて言えばいいの…春樹君が冬彦さんを刺したって…
それに、死んで…死んで…死んで…春樹君が…捕まる…
警察…!?でも、なんで…どうして…どうして…どうして…
…落ち着いて…落ち着いて…落ち着いて…落ち着いて…落ち着いて…
でも、なんで…どうして…なんで…どうして…
どうすれば…私はどうしたらいいの?
私にはわからなかった。
冬彦さんが死んでいることも受け入れられなかった。
目の前に横たわる冬彦さんを目の前にしてもそんな事実は受け入れられなかった。
春樹君が刺したなんて事実も受け入れられなかった。殺してない…殺してない…
春樹君がそんなことをするわけが無い…あんないい子がそんなことをするわけ無い…
夏海が蔵の中で泣いているわけが無い…そんなはずはない…だって…だって…
…夢…悪い夢…醒めて欲しいと願った・・・誰かに嘘だといって欲しかった。
こんなのは嘘だって…こんなのは嘘だって…こんなのは嘘だって…

295 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 08:52:53 ID:eTE5kQkN
「晶子さん…大丈夫ですか…?」
気がつけば目の前にはフグタさんが心配そうな顔をしている。
春樹君の姿も夏海の声も聞こえない。
…あれ?…なんでフグタさんがこんなところに居るんだろう……
あ…そうか…私がフグタさんに電話したんだ…

「あのぉ…フグタさん?お久しぶりです」
「あ…晶子さん!お…お久しぶりです。ですが、こんな夜更けに一体どうされたんですか?」
「あのぉ…私…人を殺しちゃったんです。」
「な…なにを…言っているんですか…あの…大丈夫ですか!」
「はぁい。大丈夫です。私がぁ…冬彦さんを…刺して…殺しちゃったんですよ?」
「と…とりあえず落ち着いてください。今どこです?直ぐに行きますから!」
「今ですか?今はぁ…家にいますよ?」
「そこから動かないでください!直ぐにいきますから!」
…なんかそんなことを電話した気がする……
手を見れば真っ赤な血の付着した包丁がしっかりと握られていた。
…あれ?・・・…あ、そっかぁ…私が冬彦さんを刺したんだ…何度も何度も…
「とりあえず…この包丁は処分しますので…こっちに渡していただけますか?」
いつの間にか目の前に居たフグタさんが包丁の刃先をつまみ、落ち着いた様子で私に話しかけていた。
…フグタさん…どうしてこんなに落ち着いているんだろ…
「はい、ゴミはゴミ捨て場に捨てておいてくださいね?」
「…ゴミ…ゴミですか?」
「はい、だってここ…ゴミ捨て場ですし…」
フグタさんは携帯電話をポケットから取り出して…何かを喋っていた。ぱちんと携帯電話を閉じポケットにしまうと。
「わかりました。それならゴミはきちんと回収業者が回収に来るそうなので…安心してください。」
「よかったぁ…ちゃんと引き取って貰えるんですか?」
「はい…ちゃんと責任もって処分させますので…ご安心ください。」
フグタさんの顔が頼もしかった…なんでだろう…何故だかほっとする。
「晶子さん…冬彦さんは…申し訳ないのですが女と失踪した…そういうことになりますので…」
…失踪…女と?…失踪……なんだ…死んだわけじゃなかったんだ…よかった…本当によかった
…生きてさえ居ればきっとまた会える。
あの人はきっと私のところに帰ってくる…あの人はきっと…帰ってくる…いつかきっと…
「そうですか…本当にしょうがない人ですね。もぅ♪」
微笑みながら、ふと服を見ると随分と汚れている…
「あらあら…どうしましょう…この服は…クリーニングに出さないと駄目かしら…」
「いえ…あの…晶子さん。それももう…処分した方がよろしいかと…」
「あ、そうですね。じゃぁ…お願いできますか?」
汚れた服を脱ぎ始めると、フグタさんがなんだか慌てた様子で背中を向けた。
…どうしたんだろ…ふっと、力が抜ける。どうしよ…お風呂に入って…今日はもう寝よう…
なんだか今日は…とっても…疲れた…
背中越しにフグタさんもタイミングよく
「晶子さんは…もう、今夜はお休みください。あとは私が責任をもってきちんとしておきますので」
その声に安心した。…よかった…フグタさんが居てくれて…
「はい、それではおやすみなさい。フグタさん♪」
軽く会釈し、家に戻る。熱いシャワーを浴びると疲れも一緒に洗い落とされていくようだった。
「冬彦さん…浮気しちゃったのかぁ…また景子にお説教されちゃうのかなぁ…」
そんなことを私は考えた。
それはとっても悲しいことのはずなのに…
なのに…何故だか私は安心していた。

大丈夫…いつか冬彦さんはきっと帰ってきてくれると…


296 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 08:56:15 ID:eTE5kQkN
投下完了。次回で完結…といいながら微妙に長くなったの
次回に続きます。
申し訳ないorz

297 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 10:08:58 ID:AYOJNC7t
>>296
GJ!
しかしこの話の結末はどうなるんだろうか
全く想像できない

298 名前: ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/06/11(月) 00:12:45 ID:EiMbBP8L
>>296
GJ!いえいえ素敵なヤンデレが拝めて幸せです

↓投下します

299 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/06/11(月) 00:15:04 ID:EiMbBP8L

磔にされた日は帰宅するなり真弓が上に乗ってきて1つずつ枷を解くというイベントが
待っているものだった。しかし今日は亜弓があっさり外して行った。
姫野真弓が聖佑人の上に馬乗りになって、必要以上に顔を近づけ吐息のかかるほど
近くで外して行く。何となく圧迫感のような恐怖感を覚える行為だったがなければ
無いで拍子抜けした思いだった。

「お帰りなさい」
「……ただいまっ」

祐人が真弓に声をかけるとはじかれたように振り返って、すぐに視線を逸らしてしまう。

「真弓?」

これもまた今日だけは亜弓が繋いだ手錠を佑人が引くと無言のままそっぽを向く。

「ご、ご飯にしよう」

真弓は明らかに挙動不審だった。


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300 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/06/11(月) 00:16:36 ID:EiMbBP8L
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「き……今日は別々にお風呂入りませんか」

夕食後に真弓がこう言い出すに当たってさすがの祐人も突っ込んだ。

「真弓今日変じゃないか?」
「そんなこと無いと思うよ!いつも通りだよ!!」
「そうか?」

問い返すとまた目をそらす。真弓は決して佑人の目を見ようとしなかった。

「真弓?」

佑人はそれでも顔を覗きこもうとして、肩のあたりに凍るような気配を覚えた。
振り返ると亜弓が微笑んでいる。

「……不毛な言い争いはもういいから……2人ともお風呂入ってきなさい……」
「おっお姉ちゃんっ私の話聞いて」
「今更何を恥ずかしがっているの……?」
「恥ずかしがってる訳じゃないよ!」

亜弓はなおも言い返そうとする真弓の耳に何か囁いた。
途端に真弓は赤い顔を更に真っ赤にして俯く。

「さあ入ってらっしゃい……」


■■■■■■


301 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/06/11(月) 00:18:41 ID:EiMbBP8L
■■■■■■


ちゃぷ……

湯を掬って手から零す。片手しか使えないから本当に児戯のようだ。佑人は
真弓がシャワーカーテンの向こうで体を洗っている間この意味の無い動作を
繰り返していた。風呂の間は2人とも良くしゃべるのだが今日は無言だ。
体を流す音がした。真弓が体を洗い終えたのだろう。彼女が体を洗い終えると
その日の風呂は終了。洗った後に彼女も湯に浸かった方がいいと佑人は言ったのだが、
真弓は恥ずかしいという全くもって今更な理由でそれを固辞していた。

佑人が出るか、と真弓に声をかけようとしたとき。

なんの前触れも無く2人を隔てていたシャワーカーテンが開いた。




302 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/06/11(月) 00:21:51 ID:EiMbBP8L

「………」

佑人は思わず見惚れてしまった。色白の薄い肩、綺麗に浮き出た鎖骨、控えめだが
形の良い胸、平坦な腹から細い腰。少女の裸体は透明に輝いて見えた。明るい茶の髪が
うなじに張り付いて妙に色っぽい。

「今日寒いから一回入る」

そうぶっきらぼうに目を伏せながら言い放つと真弓は浴槽に入ってきた。姫野家の
風呂は標準サイズなので2人入ると当然窮屈でたまらない。というよりは体が密着する。あくまで腕などの側面同士だが。

「……真弓?」
「たまにはいいじゃない」

真弓は顔を真っ赤にして半ば湯船に沈みながら答えた。
可愛い。正直に言えば可愛い。佑人は思わず頭を撫でようとして手を上げる。

カチャリと鎖が音を立てた。

一瞬迷う。俺はいつの間にかこの状態を許容している。最初は抵抗しないように
していただけの筈だったのが手錠や首輪を当然のものとして受け止め始めている。
これでいいのだろうか。この生活は本当に終わるのだろうか。

一瞬迷うが、すぐにそれを振り切る。大丈夫だ。必ず外から誰か俺を探し当てるだろう。
中途半端に上げた手を真弓の頭におろす。

「本当に今日はどうしたんだ?」

軽く撫でてやると頭を上げた驚いたような目をしている。少し顔を近付けて
問いかけるように覗きこんだ。

「佑人……」

真弓の薄い桜色の唇が名前を紡いで、そっと佑人のそれに触れた。


■■■■■■
■■■■■■



303 名前: ◆5PfWpKIZI. [sage] 投稿日:2007/06/11(月) 00:22:49 ID:EiMbBP8L
以上です。

304 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 00:35:11 ID:gjxWN9vA
GGGGJ!
真弓かわいいよ真弓ぃ!祐人は早く陥落されてしまえばいいんだこの野郎!

305 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 00:48:03 ID:cL0lbNSe
>>303
っしゃあああ!エロktkr!
しかし、監禁しておきながらいざするとなると恥ずかしがる真弓、イイ!

306 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:22:17 ID:cyMlVjZS
「・・・く・・・・・・くん。」
急に掌にかかる力が痛いほどに強くなった。そう、誰かに握られているように。
「・・・つもと・・・くん。・・・・くん。・・・・まつもとくん。」
誰かが、清涼感のある声で僕の名前を呼んでいる。
おぼろげながら聞こえていた声が次第に存在感のあるそれとして聞き取れるようになっていく。
その声はどこかで、いや、もっと身近なところで聞いたことのある声のようだ。
そして、重い瞼を緩慢な動きで見開くとすぐに味気ない天井のクリーム色が視界に入った。
自分が今、横たわっているのは雪白の整えられたベットの上であり、横にはテレビが載っている棚が置かれている。
今、僕がいるのはこの光景からは百人が百人、間違いなく病室というだろう。
何故こんなところに自分がいるのか、という疑問はすぐに浮かんだが、その回答は記憶回路の中に存在しない。

「松本君。目が覚めたのね。」
手を握っていたやや長身、黒髪の少女は、心からうれしそうな笑顔を浮かべつつ、静謐に言った。
「あなたは、三日間の間、ずっと、この病室で寝ていたのよ。」
「・・・・・。」
自分の頭はなぜこんなところにいるのか、という疑問が占めてしまっているため、急にそんな事を告げられても混乱するばかりで、返す言葉に窮した。
明晰な反応を得られなかったことが理由か、北方さんの笑顔が崩れ、事故の様子を回顧したためか、やや哀切さを含んだ憂いのある表情に変わった。


307 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:24:19 ID:cyMlVjZS
「覚えていないのかしら?あなた、土手から転がり落ちて、出血もひどかったのよ。それですぐに手術になって・・・。それで、あなたはこうして今、病室にいるの。」
「・・・・もしかして、私のこと、・・・覚えていないのかしら?」
そういった彼女は、より強い力で僕の手を握り締め、今にも泣き出してしまいそうな悲しげな表情で、漆黒の吸い込まれてしまいそうな瞳を潤ませて、見つめている。
当然、僕が彼女のことを覚えていないはずがない。
「北方さん、僕は北方さんのことを忘れているわけではありません。ただ、少し何が起こったのか良く分からないので、もう少し説明をしてもらえませんか?」


彼女の話を要約すると、僕は北方さんとサイクリングをしていた途中、訳あって自転車をお互いに交換し乗っていたところ、
僕が乗っていた北方さんの自転車が分解して、その結果僕は土手を8メートルほど転がり落ちて、その途中で四分五裂した自転車の部品と、
土手に身体を打ち、大きく身体を切り、出血がおびただしく、内臓にも損傷があったりしたためこの病院へ搬送され、すぐに緊急手術が開始された、という所だ。

話を聞いていると、北方さんは自分の責任でこうなってしまったのだと思い込んでしまっているようだった。
「・・・ごめんなさい、松本君。・・・私が自転車を換えなければ、あなたは無事だったのに・・・。」
僕はこの事故が北方さんのせいであるなんて、毛頭思っていない。
第一、自転車を交換したい、と言い出したのは僕なのだから、北方さんが悪いわけがないのだ。
「北方さんは、僕が言うままに自転車を交換しただけなんだから、北方さんが元凶だ、なんて思ってないですよ。」
「・・・・でも、あの自転車の欠陥に気づけなかったせいで、あなたが、私の・・・。」
そう言い掛けて、彼女は言うのを中断した。なぜ、中断したかは理解できなかった。しかし、彼女は本気で自分がこの事故の原因だと思っているのかもしれない。
もし、そうだとすれば、彼女を苦しめるだけのその誤解をといてあげたい。


308 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:26:06 ID:cyMlVjZS

それにしても、そんな目に遭っていながら生きていた僕自身のしぶとさには驚きだった。
体力がない、と自認していた僕が大出血や手術に耐えられるなどと思いもよらなかったのである。
何かのラノベで読んだ敵役の、まるでゴキブリのようにしぶとくあれ、などという件を咄嗟に思い出し、つい失笑を禁じえなかった。
なんというか、シュールなネタという奴は思い出したときはいつでも、思い出し笑いをしてしまうんですよ、これが。
状況認識が甘い、なんて父親から怒られることがあるが、こんな時にこんな馬鹿げたことを考えるとはまさにその通りだ。
でも、北方さんが曇った表情でそれを咎めてきたので、心配してくれたのにやはり失礼かと思って謝った。
それから、いろいろと僕が眠っていた間の話をしてもらった。
北方さんは淡々とその間に起きた出来事や、連絡事項を話し始めた。

僕の手術中に理沙が泣き崩れて、まるで抜け殻のようであったこと。北方さんは理沙を慰めたが何も口をきかなかったらしい。
僕の家族が心配してくれて、いろいろと面倒を見てくれるはずだったのが、父は出張で、母は運悪く僕が事故にあった翌日に死亡した、
近親の葬式の手伝いと参列のために両親ともに家をあけていること。
さらに理沙は自室に篭ったきり出てきていないこと。
また、あの子はよくできた子だから、おそらくこんなことになってしまったことが自分のせいだと責めているに違いない、と付け加えて言った。

そして、両親も理沙もこの病室には何度か訪れて荷物を持ってきてくれたようだが、その間、僕の世話をしてくれたのは北方さんであったようだ。
確かにずっと眠っていたわりには僕の寝巻きは清潔で、荷物も几帳面な彼女らしくまとめられている・・・
って、そんな重要なことを僕は気づかなかったのか。

309 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:26:58 ID:cyMlVjZS
・・・なんという鈍感・・・なんという恩知らず・・・。
身の回りに心配かけるだけかけておいて、周りの人が何をしてくれたか気づかないとは、我ながら恥ずかしいものだった。
第一、今回も自転車が壊れると予兆がありながら、それに気づけなかったから、こんなひどいことになったはずだ。
もしこんな鈍感さのままだったら、どっかであっけなく死ぬかもしれない。
しかし、僕は自分が鈍感だと知ったところでそれを直せる自信がない。

生まれつき、気の利く何事にも敏感な人がいるが、ああいうのとは対極にあるようだ。
まぁ、要するに馬鹿は死んでも直らないと言うように、鈍感は死んでも直らない、のかもしれない。
でも馬鹿な事を考えられるようだから、僕もすぐにいつもどおりの僕に戻れる、そんな根拠のない考えを抱いた。
やはり愚かな考えだろうが、僕にはネガティヴな思考よりこういったほうが似つかわしい。
そんな場違いなまでにのんきな考えを僕のそれとは比にならない、北方さんの洞察力は察したらしく、
時折見せてくれるくすくす、という微笑を垣間見ることができた。

310 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:28:08 ID:cyMlVjZS
慰めが功を奏してか、明るく振舞っていた北方さんだったが、何か言いたいことがあるような感じがしたのが気になったが、
彼女が切り出さない以上、こちらが詮索しても詮無いことだと思ったので、特に突っ込まないでおいた。
それから、北方さんが病院食は食べるに忍びないという理由から作ってきてくれた夕食を二人でとり、
彼女の家に遊びに行ったときと同じようにいろいろと話をして過ごした。

学校関連の話では、田並先生が心配して駆けつけてくれたことが意外だった。
また、病室から出て来れないことから、気分転換にと花を買って持ってきてくれたらしく、
花瓶にその優美な花が飾られていた。
特に強烈な印象はなく、落ち着いていて香りも良い花で、いつも面倒なことが嫌いで、
不精な担任、というイメージからは考えられないハイセンスさだと、北方さんも感心していた。

311 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:29:49 ID:cyMlVjZS
他の生徒は僕が事故で怪我したと聞いても、奴は死ぬわけがないから大丈夫、などと公然とのたまった猛者がいたそうだ。
こいつめ、後の事を考えずに何を言っているのか?シベリアに送られてしまえ、人でなしめ。
まあ、学校に復帰したら少し遊んでやれば気が済む程度だが。

そんなこんなであっという間に時は過ぎていき、既に外は暗くなりつつあった。
とすれば当然、面会時間ももう少しで終わりになるだろう。
母が持ってきた荷物の一つでもある、目覚まし時計を見て確かな時間を確認すると、もう七時に近い時刻であった。
そろそろ家に帰るようにしてはどうか、と北方さんに勧めた。

「・・・どうかしたの?時計なんか見て。」
「え、ああ、うん。もうかなり遅いから、そろそろ帰ったほうがいいんじゃないかな、と思ってさ。」
「・・・そうね。」

312 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:31:36 ID:cyMlVjZS
普通、そんなに考えるところでもないにも関わらず、帰るか帰らないかの返答にわずかながら間を取ったことが変に気になった。
何を考えたのか分からないが、さっきは詮索しなかったが、やはりまだ黙っていることで言いたいことがいくつかあるのかもしれない。
その証拠に返事したにもかかわらず、彼女自身の荷物が多くて荷物を片付けなければならないわけでもないのに、
僕の病床の傍の椅子から立ち上がろうとすらしていない。
「北方さん、どうかしたの?やっぱり無理をしたから疲れているんだよ。早く、家に帰って休んだほうが身体にいいと思うよ。」

しかし、その問いに対する返答はなく、暫く遠い目で、何かを考えているようなそぶりを見せた後、
やおら立ち上がると、病室の扉の傍へ行き、なんとドアの鍵をかけてしまったのです。
そして、暗くなってしまった外でこうこうと光が燈っているこの病室で、北方さんは感情を読むことができない、
固有のポーカーフェイスを浮かべて、歩み寄ってきました。

この彼女特有のポーカーフェイスは学校でももはや、お馴染みのものと言えるかもしれないけれど、
今までの彼女のそれとは比にならず、言葉では表現しきれないほどの怖さがあった。
ゆっくりと歩み寄っているのにもかかわらず、かえってその威圧感は強く感じられ、
金縛りにあったようにというべきか、腰が抜けてしまってか、動くことができずにいた。

313 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:34:08 ID:cyMlVjZS

体と体がぶつかるくらいの所にまで彼女が来るまでに、
理由は明確ではないが僕は体中から冷や汗を流し、恐怖に駆られていた。
さっきまでいた位置と変わらないくらいの距離に彼女はいるだけなのに、
急にそれが異物感や恐怖感となって伝わり、身の毛をよだたせる。

「き、き、北方さん、急に、いったい、どうしたの?」
やっと紡ぎだした言葉は自分でも呆れ返るほどに、
どもった高い声で恥ずかしいものだったが、そんな事を言っている場合でない。
その質問には答えずに、その冷徹な双眸を僕の瞳に向けるだけであった。
そういえば、こんな恐怖感を何度か抱いたことがあったが、
そのどの回でも彼女はここまで近くに来ていないし、鋭いまでの視線を向けていたこともなかったと思う。

314 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:35:24 ID:cyMlVjZS
「・・・本当に、北方さん、どうかしたの?」
そんな再三再四の質問には取り合わずにポーカーフェイスを崩さないまま、僕に唐突に質問した。
「この事故の真実について知るつもりはないかしら?」
この事件の真実?いったい何のことであろうか。僕には当然のことながら、
そんなことは見当のつかないことではあったため、すぐさま鸚鵡(おうむ)返しにしてしまった。
「そう、文字通りの、真実。嫌ならば、話さないけれど・・・。」

冷静な声でさらりと告げたが、非常に意味深長な発言であった。
もしかすると、さっきから話そうかどうか考えていたことはこれのことなのかもしれない。
仮にそうだとすれば、ここで彼女の話を聞くことは良い選択だともいえる。
しかし、真実ということは現在、僕が認識している事故の経緯は虚偽であるということに他ならない。
ならば、いったい何故、虚偽の認識を僕に持たせる必要があったのか、それが理解できない。
しかし、意を決して彼女の話を聞くことにした。


315 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:37:12 ID:cyMlVjZS
「・・・そうね、どこから話そうかしら・・・。」
彼女は僕から視線を逸らさずに、もう一度、淡々と事故の経緯を語り始めそれを終えると、
自転車の異常が原因になったことから、自転車の状態を分析させたことを話した。
あの自転車は北方さんが彼女の家を出発前に確認したので壊れているはずがないのにも関わらず、
人の手でボルトが緩められていたり、ブレーキが時限式で利かなくなったり、
といった明らかに人為的な悪意ある工作が仕掛けられていた痕跡があるらしい。

「・・・ということは、誰かが僕たちの命を狙っていたということ?」
「ええ、極論で言えば、そうなるわね。」
「でも、いったい誰がそんな事を・・・。」
しかし、その質問には北方さんは明快には答えなかった。彼女の態度から言って、彼女は心当たりがあるのだろう。
僕には主な心当たりがなかったが、彼女の自転車に細工がされていたとするならば、
僕ではなく、彼女だけを当初は狙っていた可能性も当然出てくる。

誰かがそんな悪意を彼女に対して抱いたと仮定すると、
彼女の話では事前に北方邸で彼女は自転車のコンディションを確認してきたのだから、
その後に僕の家に一度停めて、北方さんは家に上がって少しの間、休憩した間にしか、その自転車に細工はできない。

そうすると、おのずと細工をした人間は絞られてくる。
・・・はずだが、あの間に誰かが自宅に訪れた様子もない。
となると、内部犯しか考えられないが、両親はあの時まだ寝室で寝ていたし、
理沙だって僕たちの行く支度をしてくれていた。そうすると、誰かが特別怪しい、と断言することができない。
いったい誰を疑えばよいのだろうか?

316 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:39:34 ID:cyMlVjZS
北方さんにとって、僕の考えていることなどは洞察することなど簡単なようで、
腕を組みながら考えている僕に彼女の分析の結果の『答え』を冷厳な裁判官の判決のように告げた。
「理沙さんが、細工をしていたとしか考えられないわ。」
しかし、到底その内容は信じられるものではなかった。
「いや、それはない。理沙は北方さんも知ってのとおり、僕たちのサイクリングの準備をしていたのだから、
不可能だろう。」
ほぼ即答だった。やや粘着質なところがあるが、兄想いの優しく賢い理沙が人を傷つけるような馬鹿げた真似をするはずがないからだ。
「・・・そう。」
そう静かに言うと、五枚程度にまとめられた分析結果の冊子を取り出し、自転車の破損部分の写真と分析が記されているところを僕に読ませた。

『・・・・自転車に残された痕跡などから、犯人が大人ほどの力の持ち主の仕業ではないと考えられる。
わずかではあったが、確実にねじが緩められていたために、
うまく時限式に近い形で分解させることに成功したと考えられる・・・。
これらのことから、被害者の身近にいる、女子ないし子供程度の力の持ち主が確信犯として、
自転車の所有者・北方時雨さんに何らかの危害を加えるためにこの細工を施したと思われる・・・。』

この結果は恐るべきものであった。
こんな分析が正しいという確証はどこにもないじゃないか、と叫んで目の前の事実を否定してしまいたかった。
しかし、自分でもそんなことが無意味であること位分かっている。それだけに悲しいのだ。
誰も望んでいないのに、涙が堤を破るようにして、あふれ出てきてとまらない。
北方さんの前なのにも関わらず、恥も外聞もなく涙を流すことができた。
なぜ、理沙が急に、そんな事を・・・。本当に理由が分からない。

317 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:40:26 ID:cyMlVjZS
「・・・やっぱり、こんな話、しないほうが良かったわね。ごめんなさい。」
北方さんが僕の取り乱した姿を見て、申し訳なさそうに言った。しかし、そんな彼女の声は僕には届くわけもなく。
ただただ、理沙が何故こんなことをしたのか、また、予兆を察知できなかったことを悔いた。
今回は怪我したのは僕だから、まだ良かったようなものだが、他人が怪我をする事を考えただけでも恐ろしい。
さっきは肯定したが、やはり僕の天性の鈍感さは災いにしかならないのだ。到底肯定すべきものではないのだ。
「どうして・・・どうして、僕はこうなるのを止められなかったんだろう・・・。」
何の意図があっても、理沙が行ったことは誤り、ひいては犯罪以外の何物でもない。
でも、あの理沙がこんなことを行うのを止められなかった、自分にも同等の責任があるともいえる。

それは、身近にいる兄としての責任を欠いためでもある。
今頃になって、最近の理沙とのかかわり方が走馬灯のように思い出されてきた。
僕は明らかに、今までのあの子への接し方に比べて、おざなりな対応をしていたように感じられる。
もしかしたら、あの子と同じ視線で話すように心がけていれば、こんなことはならなかったのかもしれない。
少なくとも、予兆だけでも察知できていただろう。

・・・どうして・・・彼女のことを考えてあげられなかったのだろう・・・
・・・・・何故、予兆を察知できなかったのだろう・・・
結局、僕は兄としてふがいなく、失格だったから、こんなことになってしまったんだ・・・。
・・・こんなはずじゃ・・・・僕は・・・・


318 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:42:05 ID:cyMlVjZS
松本君はうわ言のようにそんな事を繰り返し続けていました。
きっと、今の松本君はやり場のない、虚ろさと怒りを抱えているのでしょう。
信頼していた妹が暴走してしまい、それを止められなかった、それを断腸の思いでいるのは重々承知しています。
ただでさえ、うわ言で聞き取りにくかった声は一層小さくなり、しかも震えだして聞き取りにくくなってきました。

「・・・・松本君。あなたは何も悪くないのよ・・・それに・・・・これはどうにもならなかったこと。だから、自分を責めないで・・・。」
そう、悪いのはあなたじゃない。松本君。
本当に悪いのは、勝手に勘違いを繰り返して、私を狙った挙句、あなたをそんな半死半生の目に遭わせたあの寄生虫なのだから。
日々、松本君を友人のなかった私に相談しなければならないほどにまで、追い詰めるだけでは飽き足らず、結果的に自分の兄を
傷つけて、それなのに、こうして松本君が悲しんでいるときには自宅でのうのうと過ごしていて、自分の罪に気づかずに、謝罪すら
しない。

これは人間のする事ではない。やはり、あれは害物、松本君を苦しめるだけの駆除されるべき寄生虫なのだ。
私はあれを絶対に許さない。

319 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:43:12 ID:cyMlVjZS
それにしても、松本君が可哀想だ。
私が毎晩寝る前に見ている、写真の彼は明るい笑顔の松本君だ。
私の彼を慕う心の中にいる彼もまた笑顔だ。
学校でも私に見せてくれる表情は非常に豊かなものではあるが、決してこんなに悲しい顔などしていない。
その笑顔一つが、言葉一つ交わしていなかった時でも、いかに重要な糧であったことか―。
それをあの害物は一瞬にして奪ったのだ。
本当に松本君は可哀想で可哀想でならない。

「・・・理沙・・・・どうして・・・・」
「・・・・・・」
その時、私は無意識のうちに立ち上がり、彼の涙にぬれた顔を胸元に抱き寄せた。
そんな姿はもう見ていられなかったから。
私は慰め、勇気付けられてきたのに、彼に何もできないのは悲しすぎたから。
「かわいそうな・・・松本君・・・」
私はできる限り強く、松本君を強く抱きしめた。
あんな寄生虫のために心を痛める必要はないから。早く立ち直って欲しいから。
それに、彼の傍には、負の影響しか与えない害物だけじゃなく、私が居てあげられるのだから。

320 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:45:06 ID:cyMlVjZS

「・・・もう、涙を流さないで・・・あなたには、私が居てあげるから・・・。」
一つ一つやっとのことで紡ぎだしたように、震えた小さな声で彼は聞き返しました。
「・・・・どうして・・・・どうして北方さんは・・・何もできない・・・・僕のことなんかを・・・」
「・・・それは、あなたの事が好きだから。いいえ、愛しているから。」
疑うことなく、私はそう心から思ったことをはっきり言いました。

未だに流れる涙を押しとどめることができない、松本君の充血した瞳をひたすらに見つめ続けて言った。
「そう、あなたの事を本当に愛しているのは私。あなたの痛みは全て私が代わってあげたい。
あなたの喜びは全て、私にとっても喜ぶべき事よ。そして、あなたの望みは私の望むところ。」
「それから、もう自分を卑下しないで・・・。あなたは気づかなかったかもしれないけれど、
あなたは立派に皆の役に立ってるわ、現に私はあなたに救われた。だから私もあなたのことを慰めてあげたい。」
そして、驚きを隠せずにいる松本君に鼻と鼻がぶつかるほどにまで、顔を近づけ、唇を重ねた。

今まではどれだけ想像の中の事でしかなかったことが、現実としてそこにある。
柔らかな唇の感触と彼の確かなぬくもり。
松本君も最初は少し驚いていたが、拒否することなく、寧ろ受け入れてくれている。
「・・・・北方さん・・・ありがとう。僕も北方さんを愛していると思う・・・」
そう言うと、松本君も涙を流すことをやめ、積極的に私を求めてきてくれた。
こんなときに不謹慎とは思いながらも、松本君と結ばれる喜びが自然と泉の水のように湧き上がってきた。
それから私は身体を痛めている松本君に注意を払いつつも、私たちは文字通り一心に肌を重ね合わせた。

321 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:47:54 ID:cyMlVjZS
地下の薄暗い一室―。
試験管やビーカー、そして様々な試薬の入った薬瓶といった化学の実験室にあるような種々の実験器具が、
所狭しと置かれている薄暗い部屋。
何度となく涙を流したことが伺える、疲れ果てた表情でこの部屋の主である、松本理沙は薬品を混合させながら、
ヘッドフォンを耳にあてる。
本来、細心の注意を払うべき薬品の精製や実験において、ヘッドフォンを耳につけるというのは邪道ではあったが、
そのヘッドフォンから聞こえてくるであろう、兄である弘行の温もりを何よりも彼女は欲していた。
彼女は、手術後に兄の部屋になるであろう部屋を先に洗い出し、盗聴器を複数個仕掛けておいたのである。
だから、目が覚めていない昏睡状態であっても、その部屋のわずかな音ですら聞こえてくるのだ。
その節々に兄の温もりを見つけようと彼女はしているのだ。

しかし、その願いは残酷でナイフのように鋭利な逐一、聞こえてくる事実によってずたずたに切り苛まれてしまった。
聞こえてきたあえぎ声は紛れもなく、あの憎むべき雌猫のもので、体中の力が抜け、めまいがするのが感じられた。
こんな事実は嘘に決まっているに違いない、あの雌猫がお兄ちゃんを襲っているに違いないのだと思いました。
そして、自分の愛する兄を救うために病院へ駆けつけようと思いましたが、
その考えもヘッドフォンから聞こえてくる事実によって脆くも否定されてしまった。
「あ、あんっ……ふあっ……松本くん、激しい……!」
「……じゃあ、ゆっくりする……?」
「意地悪……」
自分だけの兄が強要されたわけではなく、自ら望んで、自分以外の誰か、
しかもよりによってあの雌猫と睦みあっているという事実を知り、魂の抜けた抜け殻のように、力なくその場にへなへなと座り込んでしまった。

322 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 01:49:24 ID:cyMlVjZS
第七話ここまでです。
酔っていたので、誤字脱字はいつもより多いかもしれないです。すみません。

323 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:02:57 ID:KB9hD5g0
最終話投下しまっす。

324 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:04:09 ID:KB9hD5g0
「あ、いらっしゃい♪」
いつもの時間にドアが開くいつもの光景、いつもの挨拶。
静かな店内に流れる音の中、フクダさんの姿が見える。
背広を預かりハンガーに吊るしている間に、フクダさんはいつものカウンター席に腰をかけていた。
「いつものでいいですか?」
「はい、いつもので…」
手早く氷とボトルを用意し、グラスに氷を割り入れウイスキーを注ぐ。
とくとく…とく…
コースターの上にグラスを静かに置くとフクダさんと眼が合った。
「今日はお一人なんですね。」
「ええ、今日は……」
チーズを切りながら言葉を交わす。
そういえば、ゆっくりフクダさんとお話しするのは久しぶりかもしれない。
ふと、そんなことを思った。


325 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:05:16 ID:KB9hD5g0
「…で?…なんだって?」
「だからぁ……冬彦さん…女の人と…逃げちゃった…えへ♪」
「…だぁかぁらぁ…あれほど地雷だと忠告しといただろうがぁ!!」
景子は珍しく語気を荒げて怒っているように見えた。
いつもの居酒屋で私と景子は結婚後初めて会うことになった。誘ったのは私。
「あ、生中お代わりお願いね~♪」
「人の話を聞け!」
「聞いてるよぉ…だから景子に相談してるんだよ?」
「…まぁ、いいさ・・・それで?相談内容はなんだ?離婚の手続きか?それとも逃げた冬彦を探し出すのか?」
「ううん…きっとね?冬彦さん…戻ってきてくれると思うんだぁ…だってあそこが冬彦さんの家なんだし…」
「ほぉ…なんだ?離婚する気はないのか?」
「うん…春樹君のこともあるし…」
「ふぅん…」
ぐびり…
とビールを飲む景子。なんだろう?…珍しくなにか考え込んでいる様子だった。
「で?…じゃぁ、相談ってなんなんだ?」
「それは…」
私は自分の就職活動の苦労話を率直に打ち明けた。
冬彦さんがいなくなって、昔の貯金を少しずつ削って生活していること。
もともとある程度の貯金はあったのだけど、このままではいずれ虎の子貯金にまで手をつけなきゃいけないこと。
お金を稼ぎたい…でも、お昼の仕事だけだと子供二人を養う金額は稼げず、また水商売をしようと考えていること。
以前、勤めていたお店に相談することも考えたけど、通勤に時間が掛かりすぎること。
この近くで探したのだけど、なかなか採用してもらえないこと。
「そうだね。この近辺だと…今は難しいだろうね。」
「うん…もう私もそんなに若くないし……そんなに仕事を選べないこともわかってるの。
…でも変なお店は…できたら…いやかなぁ…って」
「……まぁ、心当たりがないわけじゃないけど…」
「ほんと!?お願いっ!景子!一生のお願い!」
「……君の一生は一体何回あるんだ?」


326 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:07:41 ID:KB9hD5g0
…そんな経緯でこのお店のママを引き受けることになったのだ。
場所は市内の歓楽街の中心地。そのオーナーは意外なことに景子だった。
「いやね?知り合いのお姉さんが引退して田舎に帰るというのでこのお店を買わないか?
と持ちかけられていたんだよ。まぁ、大赤字にならない程度にやってくれたらいいから。」
お店の内装は以前のお店のまま…ダークブラウンの壁に敷設された棚には無数のレコードやCDがずらりと並び、
スポットライトの僅かな明かりがお店の中を幻想的に照らしている…
そんな落ち着いた大人の隠れ家のような素敵なお店だった。
「前のママがね…ジャズが好きで始めたお店なんだ。それを辞めるにあたり大切なレコードも進呈してくれたんだよ。
そんな訳だからできたらこれはそのままにしておいて欲しいけどいいかな?」
それが景子の出した唯一の条件だった。給料は稼いだ分だけ貰っていいよ?と言ってくれたものの
一等地でのお店の立ち上げはもちろん、ママの経験だってない私にはどうしていいのかさっぱりわからなかった。
景子が仕入れや会計なんかに関しては力を貸してくれたものの、当初はお客さんの数もまばらで…大赤字にはなんとかならなかったものの
「本当にこれでやっていけるのかなぁ…」
そんな不安な毎日だったように思う。疲労もピークに達していた頃かもしれない。
その当時の私は多分…不安そうな表情を子供たちにも見せていたのかもしれない。
春樹君が学校を辞めて働く…そんなことを私に言ってきた時期でもあったから…
その時の事を思い出すと今でも心臓が止まりそうになる。
春樹くんを必死で説得し、なんとか思い留まってもらえた時の安堵感は同時に焦燥感だったように思える。
確かに春樹君と夏海が進んで家事の手伝いをしてくれるようになったことは嬉しいと同時に悲しかった。
本当ならもっと友達と遊んで、自分の時間を楽しみたいはずの子供たちに苦労をかけている…
冬彦さんがいないせいで…私のせいであの子達に苦労をかけている…
でも、その時の自分には仕事と家庭を両立させるだけの余力は残っていなかったんだと思う。
その時私にできたことはあの子達の前では笑うこと…
余計な心配をこれ以上かけないこと…
それだけしかその当時の私にはできなかった。


327 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:08:50 ID:KB9hD5g0
そんな毎日が変わり始めたのは一本の電話からだった。それはフグタさんからの電話だった。
「お久しぶりです。何か変わったこととかはありませんか?一応、家のほうは定期的には見回らせていただいているんですが…特に今のところ異常は…ないようです。」
「あ…そうなんですか?ありがとうございます。変わったことですか?…あの実は…」
このお店でママをやっているんです。そんな風にお伝えしたその日にフグタさんは大きな胡蝶蘭を幾つも持ってお店にお祝いに来てくれた。
「いい店ですね…とても落ち着いていて…」
そんな風に誉めてくれたように思う。私の手柄じゃなかったけどやっぱりお店を誉めてもらえると嬉しかった。
そしてその日はいつものように、フグタさん以外のお客さんの姿は見えず、ゆっくりと久しぶりにお話ができたように思う。
お店をやめてからのこと。冬彦さんがいなくなるまでのこと…何故だかフグタさんには素直に話すことができた。
フグタさんは言葉数少なかったけど真剣に私の話を聞いてくれていた。
「なんだか…私ばっかり喋っちゃって…ごめんなさい…」
気がついたときには日付が変わっていた。人とゆっくり話すのも…しかも男の人とこんなに長時間話すだなんて…本当に久しぶりだった。
「いえ、今日は本当に楽しかったです。また来ます…必ず…」
そういって店先で見送ったフグタさんは、それからは必ず誰かを連れてお店に来てくれるようになった。
連れて来られる方の業種も職種も様々で、主に会社の役員や役職者、文化人、芸能人などが多く…
フグタさんとどういった関係なんだろ?と思って聞いてみると
「仕事の関係です。」
とフグタさんが笑って答えるのが決まりになっていた。
フグタさんの連れてきてくれたお客さんは、今度は別のお客さんを連れて来られ、
そして、そのお客さんがまた別の方を連れて来てくれていた。
…そんな風にお店は少しずつ軌道に乗り、昔のように誰も来ない日のほうが珍しくなっていた。


328 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:10:24 ID:KB9hD5g0
だから、フグタさんが一人で来られるのもお店に他に誰もいないことも、
あの時以来だなぁ…そんな風に思い出に浸っていた。
「久しぶりですね…こうやってフクダさんと二人きりでお話しするのって…」
フクダさんは驚いたような顔のまま、何故か固まっていた。
「フクダ…さん?」
「あ…いえ、あの…少し驚いてしまって…初めてきちんと福田って呼んでくれたので…」
「そう…でしたか?」
…そういえば何故なんだろう?…来られるお客さんが
「フクダさんにまたよろしくお伝えください。」
判を押したようにそう言われ続けたからだろうか?…なんだろう?そういえば…
私はいつからこの人のことをフクダさんと呼んでいたのだろう…
…何かが心に引っかかる…なんだろう…
「あの…」
「なんでしょう…?」
「どうして…こんな私に…私にこんなにも良くしてくれるんですか?」
フクダさんはごくりとウイスキーを飲み干し、俯いたまま動かなかった。
「あの…すみません…変なこと聞いちゃって…ごめんなさい…」
すると急にフクダさんは顔を上げ…そして真剣な表情で口を開いた。
「貴女の笑顔が…見たいだけなんです…」


329 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:11:38 ID:KB9hD5g0
出勤前に、いつものようにぶらりと本屋に立ち寄り、いつものように本を買う。
ジャンルは何故かいつも少女漫画だった。
ハッピーエンドな話がいいな…
そう願うもののヒロインに悲劇が訪れたら読むのをやめてしまう私は…
いつまでたってもハッピーエンドにはたどり着けなかった。
「どうしてなのかなぁ…」
少女漫画のヒロインたちが本当にみんな最期には幸せになっているのかさえ、確かめられなかった。
店員さんに「これはハッピーエンドですよ?」と勧められて購入したものでさえ、最後まで読んだものは一冊も無かった。
ハッピーエンドのはずなのに必ず訪れる不幸。
不幸なしにハッピーエンドを迎えるお話は本当にないのだろうか?
それとも…不幸が無ければハッピーエンドにはたどり着けないの?
それとも…お話だから?
ううん?最後には報われなきゃ嘘だ。だって、こんなに不幸なんだから…
でも、本当に幸せになれるの?
私のように…幸せになって終わった次の瞬間…
どうしようもないほどの絶望に襲われるのだと知っていたら。
彼女たちはその道を選ぶだろうか?
でも、不幸だったらハッピーエンドにたどり着くことが本当にできるのだろうか…
いつの日か…幸せだって本当に心のそこから笑える日が来るのだろうか…



330 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:14:25 ID:KB9hD5g0
日に日に冬彦さんの姿と重なっていく春樹君。
日に日に私の姿と重なっていく夏海…
同じベッドで眠る二人の姿が私と冬彦さんの姿に重なっていく。
私の居場所は本当にここにあるのだろうか…
冬彦さんは…いつ帰ってくるのだろうか…本当に帰ってくるのだろうか…
いえ、もしかしてもう…帰ってきているの?
毎日、家に帰宅する時はいつもゴミ捨て場を眺めてしまう。
最期に冬彦さんを看た場所。どうして私は冬彦さんと喧嘩をしてしまったのだろう?
冬彦さんが怖がって逃げだすのも仕方がないと思う。
悪いのは私。
包丁で刺したりしたら誰だって逃げ出すと思う。
怖いと思う。
だから冬彦さんは他の女に逃げてしまったんだ。
冬彦さんは悪くない。悪いのは私…
でも、どうすれば冬彦さんは許してくれるのだろう…
それとも…もう…私のことは許してくれないの?もう…許せないのかなぁ


331 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:15:47 ID:KB9hD5g0
ある日、気がつくとゴミ捨て場には死体が転がっている。
冬彦さんじゃない女の死体が糸の切れた人形のように転がっていた。。
制服…春樹さんの学校の制服…女の子が死んでいる。
死体…この死体は…だれ?誰なんだろう…どうしてこんなところに…?
どうしてこんなところで死んでいるんだろう…私が殺した?
どうして?…どうして?
…もしかして…冬彦さんと逃げた女?
そっか…だから私…殺しちゃったんだ…そっか…そっかぁ…
じゃぁ…冬彦さんは…戻ってきてくれたのかなぁ…
家の中に…冬彦さんいるの?
帰ってきて…くれたの?
私は急いで携帯電話を取り出す。
「フクダさん…冬彦さんと逃げた女を見つけたんです」
「そんな…それで…どうしたんですか!?」
「殺しちゃいました。だって……気がついたら死んでいるんですよ?」
「とりあえず…そこから動かないでください!」
「はぁい♪」
私はその場で待った。どうしてだろう。フクダさんの言葉は素直に聞ける。
フクダさんだけは…信用できる。フクダさんはいつだって力になってくれる。
フクダさんが動くなと言うんだから動かないほうがいい…きっと動かない方がいい…
30分ほどでフクダさんと回収業者の方が来られて手際よくゴミ捨て場を片付けてくれた。
「これで…冬彦さん戻ってくるのでしょうか?」
期待の眼差しでフクダさんを見つめる。フクダさんは言いにくそうに
「いえ…どうやら冬彦さんは…別の女のところにいるらしいんです…」
そっかぁ…そうなんだ…この人は冬彦さんに捨てられちゃった人だったんだ。
捨てられて…ゴミになっちゃった人だったんだ。
なんだか可愛そうだった。必要が無くなって捨てられたその人が可愛そうだった。
でも、やっぱり冬彦さんはその人には満足できなかったんだと思う。
だから、きっと帰ってくる。
最後には必ず…
冬彦さんは私のところに帰ってくるんだと…
強く願った。


332 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:16:56 ID:KB9hD5g0
…気がつけば目の前には3体の死体。
ゴミ捨て場にまるでゴミのように打ち捨てられていた。
また、同じ春樹さんと同じ学校の制服
…冬彦さん…やっぱり若い女の子が好きなんだ…
だから私から…逃げちゃったのかなぁ…


また、3体の死体。
同じような死体。
春樹さんの学校の制服
…冬彦さん…もしかして学校に…いるのかな…





333 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:18:24 ID:KB9hD5g0
初めて仕事を休んだ…
学校に冬彦さんがいるかもしれない
…そう思うと…いてもたってもいられなかった。
学校が終わる頃…学校近くの喫茶店で冬彦さんの姿を探した。
永遠とも思える時間…氷が全て解け落ちた瞬間
…私は信じられないものを見てしまった。
冬彦さんと…そしてその隣で楽しそうに微笑んでいる私。
腕を組んでいる。冬彦さんに甘えている私。
その私は今の私じゃなかった。
冬彦さんが好きそうな…
いえ、冬彦さんが今愛しているのは…あの若い私なんだ…
あれ?…どうしてなんだろう…

ハッピーエンドじゃない?

私と冬彦さんが幸せそうに歩いている。
不幸なんて微塵も見当たらない。

そっか…そうだよね。あはは…バカみたい…

違ったんだ…あの子達じゃなかったんだ…
冬彦さんはちゃんと…私のところに帰ってくれていたんだ。
ずっと昔から…私の傍にいてくれたんだ…
でも、それはこんな年老いた私じゃなくて…
ずっと若くて綺麗な私のところに…帰っていたんだ…
じゃぁ…私は誰なんだろう…
どうして私は…私は…冬彦さんの隣にいないんだろう…
私は…だれ?…私は…誰なんだろう?
あの冬彦さんと幸せそうに歩いているのが私なら…
私は私であってはいけないんだよね…
じゃぁ…私は…私の名前は……


334 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:19:27 ID:KB9hD5g0
「大丈夫ですか!?晶子さん!晶子さん!」
気がつくと目の前にはフクダさんが心配そうな顔をして私を見つめていた。
…ここは…どこだろう…
「あの…ここは…」
「失礼かと思いましたが…私の車の中です。
知人が喫茶店で具合を悪そうにされている晶子さんを見かけまして…
それで私が…すみません。余計なことをしまして。」
「いえ…いつもすみません。なんだか恥ずかしい姿ばかり見せてしまって…」
晶子…それが私の名前?…でも…喫茶店……ずきりと頭が痛い。
なんだろう…なにか頭が痛い。だって…冬彦さんの傍にいるのは私…
じゃぁ、冬彦さんの傍にいない私は誰なんだろう…
車のミラーに映る私の姿を見つめると、私じゃない私が虚ろな瞳で私自身を見つめていた。
「ねぇ…フクダさん…私…とっくに冬彦さんの傍にいたんです…
なのに、そのことに気がつかなくって…
冬彦さん…やっぱり私のことが好きだったんですよ。
だって、ずっとずっとずっとずっとずぅっと…私の傍に…
私の一番近くにいてくれて…私のこと守ってくれてたんです。
なのに、私はそんなことにも気がつけなくって…
…奥さん失格ですよね。
だから冬彦さんは…私じゃない私の傍に…
もう、こんな私のことは…見てくれないのかな…
こんな私に…生きている価値なんってあるのかなぁ…」
涙が瞳から溢れる。冬彦さんの傍にいない私には価値はない。あの死体たちと同じように価値はない。
いらない…いらないから捨てるんだよね。
でも、冬彦さんは私を選んでくれたんだよね?でも、その私は私じゃない…
そんな思考を遮るようにフクダさんは私の身体を強く抱きしめていた。強く…とても強い力で…。
そして耳元で囁くように
「冬彦さんは…晶子さんのことを今も大切に想って…いるはずです」
「なんで…どうして…」
「冬彦さんは…まだあの晶子さんを抱いていないそうです。」
「どうして…ねぇどうして…あの人に抱いてもらえないの!?」
「あの晶子さんは…冬彦さんを拒んでいるらしいんです…」
そんな…酷い…
…なんで私は冬彦さんを受け入れてあげないんだろう…
あんなに冬彦さんのことを愛していながら受け入れないなんて…
違う…あれは私じゃない
…私じゃない…私なら冬彦さんを拒んだりしない。
冬彦さんを受け入れたい…冬彦さんの望むことならどんなことだってしてあげたい。
なのに…その私は拒んでいる…
「もしかして…偽者なの?」
突然、脳裏に閃く一つの可能性を口にする、
「…おそらくは…」
「そっか…冬彦さん…また騙されちゃったんですね。本当に仕方ない人ですね。」
そうだったんだ…そうだったんだ…よかった…よかった…あの私は偽者だったんだ…
安堵とともに危機感がつのる。冬彦さんが騙されているなら…助けてあげなきゃ…
そんな私の心を見透かしたように
「…その件に関しては…私に任せてもらえないですか?」
「フクダさんに…ですか?」
「ええ…いくら偽者とは言っても晶子さんの分身には違いありません。
その方を殺したら…」
「冬彦さんが悲しむ…ですね。わかりました。
それじゃぁ…その件はフクダさんにお願いしてもよろしいですか?」

「ええ…お任せください。」


335 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:21:25 ID:KB9hD5g0
その言葉通り…翌日、冬彦さんの傍にいた私は姿を消していた。
冬彦さんは慌てていた。慌てて必死に私の姿を探していた。
電話でも慌てている様子だったのがわかった。
嬉しかった…そっかぁ…冬彦さんは私がいなくなったら…
こんな風に探してくれるんだ。
「母さん!夏海が…夏海がいないんだよ!」
かぁ…さん?冬彦さんは私のことを母さんって呼んでたのかな?
…でも、子供たちの前では…そんな風に呼んでくれていたよね。
うん…確かそうだったよね♪
夏海?…そういえば…夏海…は…どこに行ったのかなぁ
…小さくて可愛らしい夏海…もしかして誘拐…されたの!?
「私も心当たりを探してみるけど…アナタの方には心当たりはないの?」
あなた…なんて久しぶりに使う気がする…懐かしい…
冬彦さんは電話口でもわかるぐらいにはっと…何かに気がついた様子だった。
「なんでもない…母さんも心当たりを探して」
そっか…冬彦さんには心当たりがあるんだ…
じゃぁ…冬彦さんに任せておけば…大丈夫よね。

家に帰ると1体の死体…男?女?…
でも、もうそんなことはどうでも良かった?
「フクダさん?ゴミ…また増えているみたいなんです…
回収業者の方によろしくお伝えしていただけますか?」
「な…!?また…それは…」
「お願いしますね♪」
かちっと…電源を切る。
わかる。家の中にはあの人がいる。
もう、あの悪い私はいない。
私なら大丈夫だよ?もう、怒っていない。ううん…大丈夫。
私は全て許すよ?世界中があなたの敵になっても…
私だけはあなたのことを愛しているから。
あなたが私を裏切っても、私はあなたを裏切らないから…

その夜…私は冬彦さんに抱かれた。
泣いている冬彦さんを受け止めた。
私も涙が溢れた。
やっと逢えた。
やっと触れることができた。
やっと抱いて貰えた。
やっと…冬彦さんが私のところに…
本当に私のところに帰ってきてくれた…
私たちは何度もお互いを貪った。
逢えなかった時間を埋めるかのようにお互いを貪った。
ごめんなさい。
刺してごめんなさい。
殺してしまってごめんなさい。
心の中で私は何度も冬彦さんに謝った。
謝りながら何度も絶頂に達していた。
子宮の中に冬彦さんの迸りを感じるたびに
頭の奥が真っ白になる。

私は幸せを感じていた。
冬彦さんに選ばれた喜びと…
女としての悦びを…


336 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:24:02 ID:KB9hD5g0
気がつけば病院の中…白い天井…夢…?
幸せな夢を見ていた。まるで少女漫画のような幸せな夢を見ていた。
嫌なこともあった…不幸な出来事もあった…だけど最後にはハッピーエンド…
そんな幸せな夢を見ていた。
「母さん…大丈夫かい?」
私の顔を心配そうに覗き込んでくれるあの人の顔。
よかった…夢じゃない。ちゃんと私の傍にいてくれる…
「うん…少し怖い夢を見ちゃった…あなたがいなくなっちゃう夢…」
「僕は…いなくなったりしないよ…」
「うん♪」
大きくなったお腹を擦りながら、眩しい彼の笑顔に笑顔で応える。
「そうだ…母さん…その子の名前…もう決めたの?」
「うん…ゆっくり考えられる時間もあったし…
あなたもきっと…気に入ってくれると想うの……」

ずっと心のどこかに残っていた名前を口にする。
彼はきっと喜んでくれる。
いい名前だね…
って誉めてくれることを期待しながらその名前を口にした。



「夏の海と書いてなつみ…いい名前だと思わない?」


337 名前:すりこみ[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:32:08 ID:KB9hD5g0
「すりこみ」は以上で完結です。
文章の拙さももちろんのことながら、消化不良が多すぎると自分自身
反省しまくってます。どーにもこーにも推敲が足りません。orz…
最後になりますが、最後まで読んでいただいたお暇な方々に多大な感謝を…

ヤンデレって難しいねぇ…

338 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:53:07 ID:wMjlfHtj
ちょ、ダブルで投下て何だw
幸せすぎてコメントに困るぞ。
まあ取り合えず一言だけ言わせて貰う。

> 「あ、あんっ……ふあっ……松本くん、激しい……!」
> 「……じゃあ、ゆっくりする……?」
> 「意地悪……」

重症なんだから自重しろよ松本弘行。

……いいぞ、もっとやれ!

339 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 02:55:38 ID:RyWvS73v
投下ラッシュktkr! GJ!

>>322
北方さん派の俺としては嬉しい展開だが
でも理沙ガンガレ!
きっとまだ病みが足りないのさ

>>337
完結乙でした
って、うわあああああああああ! 母親エンドか! 他の皆全員死亡!?
これだけのキャラが揃ったんだからこの話は長編で読んでみたい
キャラごとの個別の話とか

340 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 03:10:09 ID:8FI0s4c2
>>337
GJ!
母親もまた病んでいたとは・・・
予想の斜め上を行かれた・・・

341 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 03:11:29 ID:lLvgt4FT
>>337個人的な意見なんだが、病んでる登場人物が多過ぎて物語が散漫になってるように感じた。
え?フクダさん何者?とか、へ?八雲兄妹死んだの?とか…
GJとか萌えとかより「?」が胸に残った。
俺は他の住人より読解力が足りないんだろうか…

完結乙でした。

342 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 16:15:24 ID:Y1LZWdlh
>>341
オレの拙い想像力を総動員した結果

夏海を殺害して春樹を食っちゃった、でFAかと

343 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 16:19:08 ID:Y1LZWdlh
すまん。少し読み間違えていたな
おそらく八雲兄弟と八雲の恋人たちも全員死んだんだろうけど
それを今まで脇役とすら呼べなかった存在感の母親が処分してしまったせいで
うまくオチがついていないように感じる

母親が一人勝ちするのはまだいいとしても八雲一派や夏海視点での終焉描写が欲しいところだ

344 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 16:56:41 ID:1vAe7IU+
視点変えた補完は読みたいな
あと、八雲兄妹中心の番外編とか
これだけ狂っていた二人とこのままサヨナラは惜しい。

345 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 19:27:36 ID:29Bspr9/
ふと閃いたんですが、ヤンデレカップルを眺める第三者の視点のSSってのはアリですか?
以下プロット。

主人公の両親はヤンデレ行為の末強引に結ばれた姉弟だった。
ふたりは法的に結婚はしていないものの2児の親として(ヤンデレ的に)幸せな家庭を築いていた。
そんな家庭を普通の物として見ていた主人公は社会(学校)に出て少しずつ違和感を覚えていたが
あるとき彼の弟がヤンデレ女に惚れられてしまいその相談を受けていると…

「兄さん、彼女のしていることは異常だよ。でも父さんや母さんも同じ事をしているし」
「しっかりしろ弟よ。そうだ言いたくないけど父さんや母さんは異常なんだ。
だから僕たちは反面教師として真っ当な…げっ!彼女さん!?」
「お義兄さん、私と弟クンの仲を引き裂くんですかー!?(のこぎり上段構え」
「「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!!」」

346 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 19:29:40 ID:jM/lXpQM
ドタバタギャグやないか。

347 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 22:01:43 ID:Cg6uTtrl
ドタバタギャグええやないか。

348 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 22:42:29 ID:ao8IthR4
今更なんだが『戯言遣いsaraの戯言部屋』の「病んだ心を持つ少年」もかなりのヤンデレだよな。
あそこ更新遅いし、基本最強系だし、文法おかしかったりで癖は強いんだが、何故かこのSSだけは大好きなんだよな。
更新再開すれば直ぐにでも読みにいくんだが……

流れぶった切る話でスマソ。
ここに投下してる職人さんたち愛してる。


349 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 22:42:35 ID:gjxWN9vA
第三者視点じゃなくて、親子二代のヤンデレじゃない?

350 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/06/11(月) 23:08:46 ID:pWekyl/k
きみあるナトセルートで、ナトセは夢とレン以外の家族を殺してしまうのでは!!
と考えた俺は間違えなく病んでる…

 

最終更新:2009年01月13日 13:55