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151 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 22:42:40 ID:W8xw05QG
第2話投下します
なんか、折角アドバイス貰ったのにまた駄目になった気がする;;

152 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 22:44:16 ID:W8xw05QG
2

水無月 雪梨……

自分の友達作りも、雲海の紹介から輪に入り、雑談を少しした事で上手くいった。
さすがに友人が居るとはいえ、緊張はしたが別に大した事もなく直ぐに話に入れたので問題はなかった。
さすがに後押ししといて後は知らんぷりというのもどうかと言う理由から、視線だけで水無月さんを探す。
彼女は窓際に居た、
先程のどこか退屈そうな感じで窓の方を見ていた顔と違って、今は楽しそうに女子の中心で話していた。
良かったなと思う。
そんな事を思うのは単なる自己満足に過ぎないけれど、それでも良かったなと思う。


153 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 22:52:17 ID:W8xw05QG
今の心境を答えるとこうなる、やっぱりか、と。現在、教室では新学期でいう恒例の自己紹介が行われている。ネタに走る者、だんまりを通す者など、お約束というような人達ばかりだ。
だが、それでも教室内のテンションは高く、よくもまぁ、自己紹介でテンションをこんなに上げられるものだと関心する。

154 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 22:53:24 ID:W8xw05QG
だけどこれはこれで悪くないとも思う。
どうせなら僕もたまには普通に終わらせずに何か普通じゃない自己紹介をしようかな。
そう思っていると自分の番がきた、
「えっと、坂田 健二と言います。よく、ありそうでなさそう名前だねと言われます。
これから一年よろしく」
と、大した事も言わずに自己紹介を終えた。やろうと思っても実際に行動したら大概はこんなものだな、と思うと同時に、自分には冒険心があるのだろうか?と自問していた。
やはりないのだろうと結論を出した頃、水無月さんの番がきた。
「私の名前は水無月 雪梨と言います。ここへは引っ越してきました。現在は祖母と2人で住んでいます。皆さんどうかよろしくお願いします」
水無月さん引っ越してきたんだ…………
まぁ人には色々な事情とかがあるものだしな、勝手に自己完結しておこう。
そこで自己紹介は終わりかと思っていたが、水無月さんは急に回れ右………性格に言うと僕の方を向いて
「さっきはありがとう」と、お辞儀をしてきた。
さっき?………あぁ、少し後押しした事か。きちんとお礼を言うなんて律義だと思う、ただのお節介をしただけなのに。

155 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 22:58:48 ID:W8xw05QG
水無月さんは僕にお礼を言うと、今度こそ自己紹介を終えて席に着いた。
お礼を言われるのは気持ちのいい事だ。だが、さすがに自己紹介という場でお礼をされたら、当然お礼を言われた僕が皆に注視されるわけで、凄く恥ずかしい。しかし、水無月さんは彼女なりに僕にお礼が言いたかったんだという気持ちがあったのは事実だ。


156 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 22:59:22 ID:W8xw05QG
なので、彼女に何か言おうにも言えず、結果的に教室は?マークと共に僕を注視する人間が大半の状態だった。早く休み時間なんないかな?
ようやくHRが終わり、休み時間になった。
HR終了頃には注視される様な事は無くなって助かったけど、休み時間になったら今度は友人達から質問をされまくった。あんな美人に抜け駆けはいかんだろとか、こいつ………フラグを立てやがって………とかなんかも言われた。
「そう言う位なら君達が話掛ければいいじゃん。」
こう言うと友人Aはでもさ、と
「あんなに美人だと何か話掛けずらくないか?なんかさ……こう高嶺の花みたいな?」
なるほど、確かにそうだろう。あんなに美人だと気後れするのも頷ける。

157 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 23:01:00 ID:W8xw05QG
でも、だったら何で僕は普通に話掛けられたんだろう?
その問いに友人Bは言った、
「鈍いんだよ」
なんか腹立つな



帰る前に委員会を決める事になった。
しかも帰る前とは文字通りに帰る前で、放課後になる10分前にいきなり先生が決めると宣言しだした。
最初は皆がぶーぶー文句を垂れていたが、
先生の
「早く決めないと帰れないぞ?」
という有難いお言葉で気がつけば進行役が出来ていて、書記もいつのまにか配置され、黒板に委員会の名前をかなりの速度を持って書いている。先生は素晴らしい策士ですね………

158 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 23:02:15 ID:W8xw05QG
委員会だが、昔から僕は保健委員だったので保健委員に立候補した。幸運な事に立候補者は誰も居なかったのでとりあえず僕は保健委員に確定した。理由は特になかったりするがなんとなくポリシーを感じて、毎回保健委員に立候補してしまう。

159 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 23:03:31 ID:W8xw05QG
投下終了
ところどころでエラーが発生してその場で修正したからどこかに矛盾が出てるかも(^_^;)

160 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 23:05:56 ID:sfvSZxqM
リアルタイムGJ!!
どう病んでいくのか楽しみにしてます

161 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 23:21:38 ID:W8xw05QG
気付いたらうp忘れてた部分がorz
前回に引き続きすまない


驚いた事にその女子は水無月さんだった。他に立候補を誰もしなかったので晴れて僕と水無月さんが保健委員という事になった。何でだろうと思いはしたが、決まった人は早く帰れるので、水無月さんもそんな口だろうと深く考えず、帰宅する事にした。

162 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 23:44:33 ID:a936nynO
>>161
ちょwww
とりあえず落ち着け。
たぶん>>158の続きなんだろうがそれだけだと話がつながらないぞ、
水無月さんが立候補した描写が抜けてる。

投下する前に確認する癖をつけないとな

163 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 23:58:14 ID:W8xw05QG
おk
落ち着こう
次に投下するのが158と161のやつです

164 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 23:59:37 ID:W8xw05QG
委員会だが、昔から僕は保健委員だったので保健委員に立候補した。


165 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 00:02:20 ID:W8xw05QG
委員会だが、昔から僕は保健委員だったので保健委員に立候補した。幸運な事に立候補者は誰も居なかったのでとりあえず僕は保健委員に確定した。理由は特になかったりするがなんとなくポリシーを感じて、毎回保健委員に立候補してしまう。

166 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 00:12:42 ID:bceaqpzQ
僕が保健委員に確定したあと、女子が保健委員に立候補した。驚いた事にその女子は水無月さんだった。他に立候補を誰もしなかったので晴れて僕と水無月さんが保健委員という事になった。

167 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 00:14:09 ID:bceaqpzQ
何でだろうと思いはしたが、決まった人は早く帰れるので、水無月さんもそんな口だろうと深く考えず、帰宅する事にした。


168 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 00:15:53 ID:bceaqpzQ
確認の末ようやく終わりかな?
携帯からだとエラーと今まで投下さたやつの確認が取りにくく、無駄レスをしてしまうので次からはPCから送る事にしますorz

169 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 00:21:22 ID:GxbUY8jn
>>168乙
話は面白いんだが、投下がばらついたのが残念かな。
携帯なら納得だけど、まずメモ帳なりに書いてみて
それからコピペして投下すればよくなると思う。
このあたりの事は練習すればなんとかなるはず、ガンガレ

170 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 00:21:59 ID:QVJ2OCqG
とりあえず>>168乙

171 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 00:25:44 ID:bceaqpzQ
>>169
そうして投稿してるんだけど行がオーバーとかでたまにエラーが発生→切り取り修正→ミス→変に投下しちゃうorz

172 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 04:30:54 ID:kvpvgKNz
>>171
janeなどの専ブラの使用がおすすめ。
プレビューが見れるし、ラインやbyt数もチェックできるしコテハンの記憶も可能。
間違ってenter押して投稿ということも無くなる。

慣れない内は戸惑うかもしれないけど、文章投稿のためには、IEそのままよりもずっと便利。

173 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 10:19:16 ID:TW3suHoj
>>171
携帯にも専ブラはあるんだぜ。
大型AAだって投稿できるから便利、オススメ。
それとGJ! 早くも依存の兆候が出てきて(・∀・)イイね

174 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 18:21:12 ID:oE8k7Srg
遊戯王に宇宙規模のヤンデレが……!!

175 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 21:41:03 ID:bSIr2M+w
ネオス……!

176 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 21:53:42 ID:rdvxUzcX
男女関係なく思い人に近付く奴に嫉妬し抹殺
自分を好いてくれないなら世界なんていらない
歪んだ愛の価値観
まさにヤンデレの鏡

177 名前:名無しさん@ピンキー[age] 投稿日:2007/09/27(木) 03:19:05 ID:NOnV/gU1
>>174それは是非にお目にかかりたいな。


遊戯王が何かわからない俺には永遠に無理そうだが

178 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 07:03:41 ID:+exHFGoR
ユベルか

179 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 17:33:39 ID:jbjk43y6
三話投下のついでに
PCから投稿する事にしたので
行の統一
エラーのため変更した文の修正
レス短縮
間違い修正
のため、溶けない雪1~2話を投下しなおします



180 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 17:37:24 ID:jbjk43y6
「どうして私じゃ駄目なの?ねぇ、何で?どうして?教えてよ・・・・・・・・」
今僕の前に一人の女性がいる
夕方の学校の屋上で、目の前の女性は泣いていた。
いや、僕が泣かしたと言った方がいいだろう。
普通なら男が女を泣かせば大概は男は世間的に最低野郎になるのが普通。
しかし、今の状況の場合では違う
確かに僕が彼女を泣かせたのは事実だろう。でも僕は仕方ないと思う。



彼女に告白され、そして振ったのだから

1
彼女と初めて会った時は僕こと坂田 健二がめでたく高校に入学し、一年間自らの教室になる部屋に足を踏み入れた時だった。
教室に足を踏み入れた時、一人の女子に目がいった
彼女は窓際の席に座っていた。
この教室に在籍している生徒は37人、そのうちの20人が女子という事になっている。
なので、別に教室に入った瞬間に女子に目がいったとしても別に女子の方が人数が多いから別によくある事だし、別段大した事もなしに直ぐに視線を外すのが普通だろう。

それがなんとなしに目が入っただけという理由ならば

教室に足を踏み入れた時には彼女を含めて、14、5人程が視界に入った。
だが、彼女はその14、5人の一人に過ぎないのに即座に彼女に目がいった。
何故そうなったのかは、頭が彼女に目がいったと認識してから分かった
白、なのだ
肌もそうだが、視界に入る人間の事を忘れさせる程の美しく、長くて白い髪、それが彼女に目がいった理由なのだ。
まるで雪で作られたかのような純粋なる白き髪
正直、こんな何のへんてつもない場所に居るのは場違いだと思ったりした
そんな彼女に目が行って見つめる事数秒、
「よう健二、お前も同じクラスだったんだな、
まぁなにはともあれ・・・・・って何で入り口でつったってんだ?」
そう言いながら一人の男子が僕に近づいてきた。
はっと我に帰り、その一年前からの友人である雲海 良平に返事をした
「いや、なんでもないよ。少しボーッとしちゃってさ、まぁまたよろしくたのむわ」
そう言いながら黒板に書いてある席順を見て、
自分の席にとりあえず鞄を置く事にした。
よく考えれば初めて見るような人をまじまじと見つめるのはどうかという事に気付いて、
少し自己嫌悪に陥ったりした。


181 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 17:37:56 ID:jbjk43y6
さて、自分の席について2つ気付いた事がある。
まずは先ほど見つめてしまっていた女子が自分の席の左斜め上に座っている事、
そしてもう一つは、彼女の周りに人が居ないという事だった。
教室を見ると、入学したばかりという事もあり、皆は新しい友達作りに励んでいた。
いわばこの最初の友達作りをいかに上手くいくかによって、
これからの学校生活が左右されると言っても過言ではない。
そのため、
ほぼクラスの全員が教室のところどころに数人で集まって話ている。
だが彼女はその「ほぼ」に当てはまらなかった。
いや、彼女だけがと言うべきか
一人で何をするでもなく、
彼女は窓の方をどこか退屈そうに見ていた。
恐らく何もする事がないから空でも見てるのだろう。
改めて彼女を見ると髪だけじゃなく、
整った顔立ち、
落ち着いた雰囲気をもち、
瞳の色は、
白の髪に対して黒であった。
彼女について感想を言うなら恐らく100人中100人がこう言うだろう。
美人と、
彼女は美人だからこそ何で周りに誰も居ないのかが気になった。
こんなに美人なら普通は彼女から声を掛けなくても、
美人だねとでも言いながら声を掛けられるものだと思う。
でも、逆に美人すぎるからこそ声を掛けずらいというのもあるのかもしれない。
それでも彼女から声を掛ければ直ぐに打ち解けられる様に思える。

182 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 17:38:43 ID:jbjk43y6
ここまで考えて、
はた、と気付いた、自分が声を掛ければいいじゃないかと。
別に友達になれないにしてもこんな美人と話して損をするなんて事はあり得ないだろう。
丁度これから黒板横で輪を作ってる雲海のところに向かうので、
ついでに声を掛けるのもいいだろう。
僕は席を立ち、窓の方に向いている彼女の後ろから
「綺麗な髪だな、こんなに綺麗な髪は初めて見たよ」
と、言ったが後悔した。
いきなり挨拶もなしに、
背後から声を掛けて驚かない方がおかしい。
何より自分に言われてると気付かないで、
こっちに振り向かなかったらかなり虚しいじゃないかと、
しかしそんな考えは杞憂に終わり、
彼女はややあっけに取られていたが、こちらを向いてくれた。
「そう、ありがとう
そんな事言われたのは初めてだよ」
ん?初めてだったのか・・・・・・・・・
案外皆言わないものなのかな?
「そうなの?あまりの美しさに見惚れた位だよ」
思い返すとかなり恥ずかしい台詞だ
「あなたは冗談が上手いんですね」
しかし幸いな事に彼女は笑いながら流してくれた。
正直ありがたい。
「君は女子の方に声を掛けないの?かなりお節介だと思うけどさ」
そう言うと彼女は一瞬視線を自分の足元にやったあと
「声掛けたいけたいんだけどさ、
私って髪の色が普通じゃないじゃない?
だから声掛けるのが正直な話恐いんだよね。
君みたいに掛けてくるならそういう心配しなくてもいいんだろうけどさ」
なるほど、確かにそうだろう。
僕の場合は幸いにも友人が居るため、
そんな心配はいらないだろう
しかし、もし友人が居なかったと仮定するなら、
彼女程ではないにしろ声を掛けるのが恐く感じただろう。
たとえそれが美点になるとしても、
他の人とは違うという点を持っている彼女はさらに恐くなったりするのだろう。
「大丈夫だよ。
今日なんかは皆心をオープンにして友人を作ってるからね。
声を掛ければ大丈夫だから自信を持てばいいよ」
「・・・・・・・・・うん、そうだね。
ありがとう、頑張って声掛けてみるよ」
少し悩みながらも彼女はそう答えた。
性格も悪いみたいじゃなさそうだし、
きっと直ぐに友達が出来るだろう。
「じゃあ、頑張ってね」
そのままの流れで友人のとこに向かおうとして、
「あのさ、名前を聞いていいかな?」
まさか女子に名前を聞かれる日がくるとは・・・・・・
「坂田 健二だよ、君の名前は?」
「私は水無月 雪梨」例え、この後、HRでの王道、
自己紹介で聞く事になるのだとしても、
こんなに綺麗な人と名前の交換が出来るなど、
充分幸先の良い始まりじゃないだろうか?

183 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 17:39:44 ID:jbjk43y6
2

水無月 雪梨・・・・・・

自分の友達作りも、
雲海の紹介から輪に入り、
雑談を少しした事で上手くいった。
さすがに友人が居るとはいえ、
緊張はしたが別に大した事もなく、
直ぐに話に入れたので問題はなかった。
さすがに後押ししといて後は知らんぷりというのもどうかと言う理由から、
視線だけで水無月さんを探す。
彼女は窓際に居た、
先程のどこか退屈そうな感じで窓の方を見ていた顔と違って、
今は楽しそうに女子の中心で話していた。
良かったなと思う。
そんな事を思うのは単なる自己満足に過ぎないけれど、
それでも良かったなと思う。



今の心境を答えるとこうなる、
やっぱりか、と。
現在、教室では新学期でいう恒例の自己紹介が行われている。
早口で何を言ってるか分からないまま自己紹介を終える者、
テンションの上がりすぎでその場の勢いでネタに走る者、
だんまりしたまま流れで何も言わないまま次の人に回される者、
自己紹介なのにいきなり初恋の話を暴露しはじめる者、
只の人間には興味がありません、とよく分からん事を言い始める女子、
となかなか騒がしい雰囲気で自己紹介が行われていた。
まぁ、よくもこんなに自己紹介で盛り上がれるものだね。
だけどこれはこれで悪くないとも思う。
どうせなら僕もたまには普通に終わらせずに何か普通じゃない自己紹介をしようかな?
そう思っていると自分の番がきた、
「えっと、坂田 健二と言います。
ありそうでなさそう名前だねとよく言われます。
これから一年よろしく」
と、大した事も言わずに自己紹介を終えた。
やろうと思っても実際に行動したら大概はこんなものだな、
と思うと同時に、
自分には冒険心があるのだろうか?と自問していた。
やはりないのだろうと結論を出した頃、
水無月さんの番がきた。


184 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 17:40:16 ID:jbjk43y6
「私の名前は水無月 雪梨と言います。
ここへは引っ越してきました。
現在は祖母と2人で住んでいます。
皆さんどうかよろしくお願いします」
水無月さん引っ越してきたんだ・・・・・・・
まぁ、人には色々な事情とかがあるものだしな、
勝手に自己完結しておこう。
そこで自己紹介は終わりかと思っていたが、
水無月さんは急に回れ右・・・・・・・性格に言うと僕の方を向いて
「さっきはありがとう」と、
お辞儀をしてきた。
さっき?・・・・・・・・・・あぁ、少し後押しした事か。
きちんとお礼を言うなんて律義だと思う
、ただのお節介をしただけなのに。
水無月さんは僕にお礼を言うと、
今度こそ自己紹介を終えて席に着いた。
お礼を言われるのは気持ちのいい事だが
、さすがに自己紹介という場でお礼をされたら、
当然お礼を言われた僕が皆に注視されるわけで、
凄く恥ずかしい。
しかし、水無月さんは彼女なりに僕にお礼が言いたかったんだ、
という気持ちがあったのは分かるので、
彼女に何か言おうにも言えず、
結果的に教室は?マークと共に僕を注視する人間が大半の状態で自己紹介が進められた。
早く休み時間になんないのかな?
ようやくHRが終わり、
休み時間になった。
HR終了頃には注視される様な事は無くなって助かったけど、
休み時間になったら今度は今日出来たばかりの友人達から、
質問をされまくった。
あんな美人に抜け駆けはいかんだろとか、
こいつ・・・・・・フラグを立てやがって・・・・・・・・とかなんかも言われた。
フラグって何?
「そう言う位なら、君達も話掛けてくればいいじゃん。」
こう言うと友人Aはでもさ、と
「あんなに美人だとさ、
何か話掛けずらくないか?
なんかさ・・・・・・こう、高嶺の花みたいな?」
なるほど、確かにそうだろう。
あんなに美人だと気後れするのも頷ける。
でも、だったら何で僕は普通に話掛けられたんだろう?
その問いに友人Bは言った、
「鈍いんだよ」
なんか腹立つな。


185 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 17:41:08 ID:jbjk43y6



帰る前に委員会を決める事になった。
しかも帰る前とは文字通りに帰る前で、
放課後になる10分前にいきなり先生が決めると宣言しだした。
最初は皆がぶーぶー文句を垂れていたが、
先生の
「早く決めないと帰れないぞ?」
という有難いお言葉で気がつけば進行役が出来ていて、
書記もいつのまにか配置され、
黒板に委員会の名前をかなりの速度を持って書いている。
先生は素晴らしい策士ですね・・・・・・・・
委員会だが、昔から僕は保健委員だったので保健委員に立候補した。
幸運な事に立候補者は誰も居なかったのでとりあえず僕は保健委員に確定した。
理由は特になかったりするが、
なんとなくポリシーを感じて、
毎回保健委員に立候補してしまう。
僕が保健委員に確定したあと、
女子が保健委員に立候補した。
驚いた事にその女子は水無月さんだった。
他に立候補を誰もしなかったので、晴れて僕と水無月さんが保健委員という事になった。
何でだろうと思いはしたが、
決まった人は早く帰れるので、
水無月さんもそんな口だろうと深く考えず、
僕は帰宅する事にした。
お腹すいたな・・・・・・・・・


186 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 17:42:02 ID:jbjk43y6
3

僕の家は高校からかなり近い。
なんてったって徒歩10分で家から高校に行ける程だ。
家から高校に向かうのに10分という事は、
帰りも当然10分で着いてしまうので、直ぐに家に帰る事が出来る。
幸いにも、通路には繁華街を突っ切るので寄り道にも不自由にはなく、
学生としては破格の立地条件である。
元々、僕はもう少し上の高校に入れたのだけれど、
その高校に通うのには40分を要す。
なので通学時間が4分の1の現在の高校に通っているというわけだ。
レベルが少しとはいえ、自分より低いので授業も普通にやれば問題も起きないだろうし
お腹が空いているので、今日は寄り道して帰る事にした。
寄り道する前に、必ず確認しなければいけない事がある。
それは、自分の財力・・・・・・・・・この場合は財布の中身の確認である。
以前、財布の中身を確認せずに飲食店に入り、
財布の中身を見たら、
売っている食べ物の最低金額が、
自分の手持ちの金額を上回っているという事態に陥り、
考えた挙句の果てに水だけ飲んで知らんぷりして店を出るという事をした。
あの時の店員や周りの客の目を自分は一生忘れる事はないだろう。
財布の中身・・・・・・・・・よし、それなりにあるな。
自分の財力を把握出来た所で、
そのまま蕎麦屋(今日は蕎麦の気分だった)に行こうとして、
「けんちゃーん」
それなりの距離からの声が僕の動きを止めた。
今までの人生の中で自分をそう呼ぶ人間は2人、
そのうちの1人はあり得ない事なので、
結果的に声の人物の姿を捉えなくても直ぐに誰かは分かった。
その人物―――田村 夏夢はこちらに向かってきている。
彼女とは5年位の付き合いで、
幼なじみとまではいかないものの、親友の間柄である。
髪は黒でショート、まぁよく居そうな活発な少女、
容姿は親友補正なしでも、美人に入るとは思う。
でも、活発なのでそんな風に感じにくかったりする。
ちなみに背はお世辞にも平均とは言えなく、背の事を言うといきなり殴られる。
中学時代はよく遊んだりしたものだけど、
高校が変わってからはそんな事もなくなるんだろうなと思っていたので、
高校初日から会えたのは正直驚いたりした。
しかし、小学生からの友達、それが親友となれば尚更、
驚きはあるが、喜びは大きかった。


187 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 17:42:41 ID:jbjk43y6
「やあ、久しぶりだね」
とりあえずは普通にお約束の挨拶をした。
「うん、久しぶり・・・・・・・・・・あれ?一週間前に遊ばなかった?」
確かにその通りである。
「まぁ、気にしない気にしない」
「むー・・・・・・・まぁいいや。ところで今からお昼かな?」
「そうだよ、今から蕎麦食べにいくとこ」
「じゃあさ、一緒していいかな?私も今からお昼だしさ」
別に断る理由はない。
「あぁ、いいよ。でも奢りはしないからな」
財布の中身は少なくはないが、奢る程には入ってない。
「期待してないから大丈夫だよ。
けんちゃんにそんな甲斐性があるなんて昔から思ってないし」
その通りだが、奢らさせる様な人に言われる謂われはない。
「少しは言葉遣いとかきちんとすればモテるだろうに……勿体無い」
この台詞を言うのは何度目だろうか?
「別に今のままでもモテてるから安心しなさい。」
「じゃあ、何で未だに彼氏の一人も出来てないの?モテてるってまさか女子からとか?」
「ちが・・・・・・・・女子からもよく告白されたわね・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・世の中は案外面白く出来ているものだ。
「彼氏が居ないのは単純に私が他に好きな人が居るだけだよ。
もし、仮に居なかったにしても、
容姿やちょっと接しただけの性格だけで告白してくる人はどのみち願い下げだけどね」
どうやらモテるというのも案外羨ましい光景でもないみたいだ。
「ふーん、案外大変そうだね、モテるのって。
まぁ僕には所詮無縁の話だね」
本当に、バレンタインデーに義理チョコを貰った事しかない僕には無縁の話だ。
「そうなんだよ、別に好きでもない人に告白されまくっても良いことなんて一個もないものよ。」
「そういえばさ」
「ん?」
危うく流しそうになったが、流すには惜しい台詞を聞いた。
「夏夢って好きな人居たのだか」
「まぁね、そりゃあ高校生になって好きな人の一人いないなんてレズ位なもんでしょ」
良い人に出会えなかったという事もあるが、今はスルーしよう。
「それでさ、それって誰?
高校で会った人?
それとも中学の時からの知り合い?
隠しキャラで皆が知らない幼馴染みとか?」
人は他人の恋愛事には、つくづく野次馬をするのが好きなようだ。
現に、僕がこんなに興味を示した事なんてここ3年位ない気がする。
「んー・・・・・・・・・・幼馴染みではないけど近い、中学からの付き合いではあるわね。」
「告白なんかはするのか?」
そう聞くと彼女はうーんと、数秒悩み、
「分かんない、でも出来れば向こうから告白してほしいな」
「分かんないって事は向こうも、
夏夢の事を好きだと言う事なのか?」
「多分そうだよと思うよ。それに、まだ進展なんかはないと思うけど、
一つだけ確かな事があるよ」
「確かな事?」
聞いた瞬間に背筋がきた。
何が来たのかは分からない。
だけど確かに何かがきた。


188 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 17:43:45 ID:jbjk43y6
「私はその人を絶対に手に入れるって事」
そう言い、夏夢は僕に笑っていた。
でも、いつもの笑顔などの類いでは決してない。
その笑みは・・・・・・・そう、初めて見るが狂喜の類いだ。
別にこれが狂喜だとか分かっていたわけではない。
只、本能的にそう思った。
結局、蕎麦屋に入ったはいいが、
メニューを見てるうちにうどんが食べたくなり、うどんを食べた。
その後、少し夏夢とウィンドウショッピングをし、夕方頃に各自帰路についた。








道で別れた後、しばらくして夏夢が振り返り、健二の背中を見ながら
「絶対に手に入れるからね………」
と呟いた。
その呟きを聞いた者は、誰も居ない。


189 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 17:46:47 ID:jbjk43y6
投下終了です

気付いた事、アドバイス等あるひとは
教えていただければ幸いです



3話昨日で終わらなかったorz

190 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 19:30:25 ID:l9FiCvUt
前回と比較して、格段に読みやすくなりました
続きに期待しています

191 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 19:39:08 ID:gfCBuX+D
これは早速いい病み具合で…GJ
読みやすさも申し分ないし、この先も期待しています

192 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 21:50:45 ID:TWcndlq8
GJGJ
最後の場面で急に視点が変わったのでちょっと戸惑ったけど
新しいヒロインは独占欲強そうで可愛いし
続きを楽しみに待ってます

193 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/28(金) 05:11:12 ID:mAHGPg1y
きもかわいくていいな

194 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/09/28(金) 06:12:59 ID:FGMYK50Z
「……あきら?」
階段を降りたその先、生徒昇降口を目前にした廊下に、赤い髪の女の子が立っていた。
薄く笑うその表情は、以前にも見た。背筋が冷たくなるような、あのときの微笑み。
あきらは何も言わずに、困惑する私たちを見上げている。彼女の眼は前髪に隠れていてよく見えない。見たくもない。
「何の用? 石橋さん」
玲が尋ねる。玲だけはなぜか冷静らしい。理子ものぞみも、動けないでいるというのに。
──何故、私は動けないのだろう。
「あなたに用はない」
あきらが答えた。その声は、暗い校舎によく響く。彼女の声を聞いたのは小学校以来だけど、少し大人びた気がする。
赤い髪が揺れた。あきらが階段を上ってきていたことに気付くのが一瞬遅れた。同じ段に一列に並ぶ四人の中から、私を目指して昇ってくる。
私に。
「…………!」
あきらの顔が近い。あと一段上れば顔がぶつかってしまうような位置で、あきらは足を止めた。
相変わらず前髪が邪魔をして、あきらの眼は見えない。
「な、なに?」
私が喉の奥から搾り出した言葉を覆うように、唇を塞がれた。
…………。

……私、キスされてるっ!?
しかも同性に!
唇が離される。混乱する私の耳元に、あきらが何事か囁いた。
「愛してるよ、きみこちゃん」

……私の聞き間違いデショウカ? デスよね? いや、そうに決まってる。同性に告白されるなんてそんな、漫画じゃあるまいし。
ファーストキスを奪い去られ、さらに爆弾発言を投下された私の頭は、白絵の具で塗りつぶされたように真っ白になっていた。
当のあきらは何もなかったように踵を返して階段を降り、そのまま生徒昇降口に行ってしまう。
ちょっと待てなんだこの状況。私の頭は、冷静さを求めていた。


195 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/09/28(金) 06:13:36 ID:FGMYK50Z
やってしまいました。
とうとう、私の想いを伝えることができたのです。
言葉にして初めて、私は私の気持ちに気付いたのです。私は、きみこちゃんを愛しています。
ああ、今日はなんていい日でしょう。今すぐ踊りだしてしまいたいくらいです。

「ねぇ、ちょっと」
浮かれてスキップしかけた私に、誰かが声をかけました。
振り向くとそこには、きみこちゃんを分厚い本で叩いた、眼鏡をかけた他人がいました。
「何の用?」
私は精一杯の敵意を込めて尋ねます。しかし、その他人は表情も変えずにこう言うのです。
「明日の放課後、美術室に来てくれないかな?」
「いやだ」
きっぱりとそう言って、私は害された気分を落ち着けようと胸を抑えました。
心音が骨と筋肉を伝わって、私の頭の中で何重にも響きます。
「即答か……。うん、面白い」
眼鏡をかけた他人の呟きが聞こえましたが、私は無視することにしました。

胸と喉が酷く痛みます。
家に帰るまでの記憶がありません。
無言の父と母の横を通り過ぎようとして、私はふと気付きました。
彼らを、父と母を、私はもう他人とは思わなくなっています。
何故でしょう。何も言わない彼らをじぃっと見ても、理由はわかりませんでした。
害された気分は、彼らを見ていて少しだけ癒されました。
相変わらず、彼らから愛は感じないのに。

196 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/09/28(金) 06:14:09 ID:FGMYK50Z
「ごめん、あたし先に帰る」
玲がそう言って昇降口から出て行くのを見送りながら、私は先ほどからずっと呆けていた。
理子とのぞみがさっきから携帯電話をいじっている。多分さっきのことを広めているのだろう。止めたかったけど、止める気力が起きなかった。
女が女に告白されるなんて話題性抜群。あきら、あんたどこまで話題性を集める気? 話題性を七つ集めても願いは叶わないぞ?
いけない、冷静な思考ができてない。いつからドラゴンボールになった。
今日はさっさと帰ってさっさと寝よう。そうしよう。

次の日、私は学年中の友人たちから追究されることになった。
「あの石橋さんからコクられたって本当!?」
「うん、そうみたい……。今でも信じられんわ」
「希美子ぉ、あんたそういう趣味あったの?」
「ねーよ!」
「ねぇ、キスまでされたんだよね? どんなだった!?」
「聞かないで! 頼むから聞かないで!」
「実はあたし、あなたのことが……」
「冗談でもやめなさい! 私にそういう趣味はない!」
とまぁ、こんな感じである。この間に溜まった私の疲れ具合は、察して欲しい。
朝、授業の合間、昼休みと、空いた時間があれば彼女たちは嬉しそうに楽しそうに私のところにやってくる。中にはちらりちらりと男子の姿も見えた。
放課後になっても人溜まりは絶えなかったが、段々その人溜まりに隙間が出来始めていた。さすがに一日も経てば飽きるか。
「大変だね希美子」
のぞみが他人事のように言う。まぁ、彼女にとっては他人事だろうが。
「のぞみ、あんた部活は?」
「サボリーん。ここで希美子見てるほうが楽しいもん」
「私はバラエティ番組か」
サボると美術部顧問の長門先生が怒るぞ、と心の中で呟いておく(ちなみに言うと、長門先生のフルネームは長門啓介、男性である)。

ふと、人だかりに空間が出来ていることに気がついた。自然に空いたのではなく、みんなが意識的に空けている。
その空間の中心に赤いものが見えて、私はため息をついた。ああ、元凶が来た。
「きみこちゃん」
あきらが、例の薄い笑いを浮かべていた。
ざわざわとした女子たちの会話が、いつの間にかひそひそとした小声になっている。
「……何の用よ」
「昨日のこと」
あきらが微笑む。その表情を見るたびに私の背筋が冷たくなっていく。
「私、きみこちゃんのこと、好き」
そしてとびっきりの笑顔で、そう言った。
「ああそう。私は好きでもなんでもないわ。同性愛者じゃないし」
「そっか。でも、それでいいよ。きみこちゃんが私のこと嫌いならそれでいい。私がきみこちゃんのこと愛してるから」
……てっきり逆恨みするのかと思ったら、逆に「それでいい」と即答されてしまった。その反応は逆に困るのだけれど。

197 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/09/28(金) 06:14:53 ID:FGMYK50Z
私の想いを伝えるのは二度目です。
きみこちゃんはなんだか困った顔をしています。その顔も、なんだか可愛らしい。
胸が熱くなってきます。きみこちゃんのことを想うと、痛みは熱に変わると気付いたのは、昨日のことでした。
「じゃあね、きみこちゃん。またね」
少し名残惜しいですが、私は帰ることにしました。
……これ以上、他人たちに囲まれていたら、私はこの殺意を抑えることができません。
背を向けて、樹立する他人たちの群れをかき分けようとしました。
「あ……! ちょっ……」
きみこちゃんが引きとめたような気がして、私は振り返りました。
「……やっぱり、なんでもない」
なんでもないようですので、私は他人たちの群れをかき分け始めました。
しかしなんなのでしょうか、この蝿のような他人たちは。
私の進んでいる道を遮り、何事かを鼻の下にある穴から吐き出します。その雑音は音声が大きく、私には聞き取れません。
「邪魔。どいて」
私がそう言うと、他人たちは道を遮るのをやめました。雑音は消えません。
熱かった胸に残るのは痛み。その痛みは喉まで這い上がってきます。
この痛みが頭まで来たら、私は。
私は。
私は?
どうなるというのでしょう。

ふと、目の前に誰かいるのに気付きました。
昨日の、きみこちゃんを本で叩いた他人。何故あの他人が?
「いや、本当にありがとう。前々から貴女のこと、モデルにしたかったんだ」
ここは美術室のようです。ああ、思い出しました。帰ろうとしたところで、そこにいる他人に誘われたのです。
『私の描く絵のモデルになってくれないか』
何故私は承諾したのか、憶えていません。ただ、酷く頭が痛みます。
私は椅子に座らされ、そこにいる他人は絵を描く道具の準備をしています。
「今日はもう他の部員も帰ったし、長門先生は今日は出張なの。今だけはあたし専用の部屋よ」
私とそこの他人以外、美術室には誰もいません。私たちを見下ろすのはモナリザのコピーです。カールクリノラースくんは何も言いません。
「それじゃ、脱いで」
…………。
「人を描くときには裸体が一番なのよ。だからほら、脱いで。もちろんお礼はするからさ」
言われた通り、私は制服を脱ぎました。まだ初春の風は、少し寒いです。
「ああ、下着も脱いでね。靴下も」
言われた通り、下着も靴下も脱ぎ捨てます。
「へえ……普通の人は大抵躊躇するのに。まぁいいや、それじゃあ座って」
そして私は再び椅子に座らされました。
一糸も纏わぬ姿を、他人に晒して。
何故でしょう、胸と喉、頭の痛みが増していきます。
そこにいる他人は鉛筆を持って、白いカンバスに線を引いていきます。その姿を見ていると、私の心が痛むのです。


198 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/09/28(金) 06:16:04 ID:FGMYK50Z
羊と悪魔、続きです。ようやくデレ分が出た気がします。

199 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/28(金) 12:13:54 ID:+Zee9dLy
>>189
GJ
一話二話より格段に良くなってます(文章の体裁を除外しても)
気付いたのは風景描写をもう少し入れても良いかな、て事です。
流れは良いのでこのまま頑張って下さいね。

あ、あと一話二話は推敲して新しくなってますが、
肉付けを増やしたせいで、勢いが無くなってるかな、と。
推敲する際、足すのは楽ですが、削るのは案外難しいです。
そこに留意すると気持ちの良い文章になると思います。

200 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/28(金) 14:15:53 ID:1dVTnTh+
>>198
可愛い、けどなにか不思議な雰囲気。
一癖ありそうな子も出てきてどうなるのか

201 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/29(土) 01:21:44 ID:ZaO75JIC
>>198
GJ!!
続きが気になる

202 名前:名無しさん@ピンキー[age] 投稿日:2007/09/30(日) 07:12:36 ID:LYhiV/CL
保守

203 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 22:00:28 ID:LEyxcZKH
6レスほどお借りします。

204 名前:最果てへ向かって(1/6)[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 22:01:04 ID:LEyxcZKH
「発射180秒前。79、78、77……」
カウントダウンの無線交信が聞こえる。今、僕が居るのは外宇宙探査船の操縦室だ。
3分後、僕と彼女は二人、宇宙という漆黒の大海原への大航海に出るのだ。
同時多発的に打ち上げられる第二次外宇宙探査隊。
その最初の打ち上げを直前に控え、地上との無線交信も緊張感に満ちている。
無論、僕もそれは例外ではない。心臓がドクンドクンと大きな音を立てて動いているのが感じられる。
「120秒前。19、18、17……」
……数年前に派遣された第一次探査隊は全滅した。その理由は公表されていない。
原因究明を待つべきだという意見が大半を占めていたが、結局二度目の探査が行われる事になった。
「失脚を恐れた官僚の仕業」「第一次隊は無事で、これは予算を稼ぐの嘘」なんて噂もあった。
僕にはその真偽はわからない。知る必要もない。重要なのはこの任務を成功させられるか否かなんだ。
「90秒前、89、88、87……」
カウントダウンの合成音声はただただ冷淡に発射までの時を告げる。
目線を感じて顔を横に向けると、そこにはバイザー越しに彼女の柔らかな笑顔があった。
――大丈夫、上手くいくよ
そう語りかける様な視線が僕に向いている。ただそれだけで、僕の緊張が若干和らいだ気がした。

205 名前:最果てへ向かって(2/6)[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 22:01:45 ID:LEyxcZKH
思えば僕は彼女にずっと支えられてきた。
第一次探査隊が全滅したというニュースを聞いた時、愕然とする僕を励ましてくれたのは彼女だった。
第二次探査隊の募集に真っ先に参加しようと言い出したのも彼女だった。
周囲の大反対にも粘り強く説得を重ね、前後して僕たちを襲ったストーカー騒ぎにも負けずに。
最後の方は僕よりもむしろ彼女の方が熱心だった気さえしてくる。
候補に選ばれてからの厳しい訓練に、挫けそうになった僕を叱咤激励してくれたのも彼女だ。
「ちょっと、こんなところであきらめる気? 冗談じゃない。今までの努力はどうなるの? 夢の実現は? 」
その厳しい声に何度助けられた事か。だから僕は彼女に全幅の信頼を寄せている。
彼女とならどんな事態でも乗り越えていける。そんな万能感が僕にはあった。

「発射60秒前。59、58、57……」
とうとう発射まで一分を切った。僕たちは発射前の最終チェックに追われている。
何重にも張り巡らされた管理コンピュータシステム。その全てが万全の状態を表すグリーンを示していた。
僕たちに出来るのはここまで。あとは何かに祈る事ぐらいしか出来ない。
「発射10秒前。9、8、7、メインエンジン点火」
エンジンに火が入る。周囲に響き渡る轟音。緊張の一瞬。ここまで来たらもう引き返せない。
コンピュータを、地上スタッフを、技術者達を。そして何より傍らに居る彼女を、信じるしかない。
今まで幾多の困難を乗り越えてきた僕たちなら、大丈夫だと。
「……4、3、2、1、0。リフトオフ! 」

――この計画の第一段階にして最大の難関、地上からの打ち上げは無事成功した

206 名前:最果てへ向かって(3/6)[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 22:02:26 ID:LEyxcZKH
「コンピュータ、手動チェック、そのどちらも問題有りません。現在……」
彼女は地上基地との交信に追われている。計器パネルに目を走らせる度に短い黒髪がふわりと動く。
その重力から解き放たれた姿を見てああ、今僕は宇宙に居るんだなという事を再認識する。
と、彼女の顔が僕の方を向く。その視線は作業を止めている僕を咎めるものだ。
僕は急いでコンピュータに向きなおると、再び次の行程への準備に取り組み始めた。

この探査船は、従来までの問題点を解決した最新鋭の超光速宇宙船だ。
完全循環型のシステムは乗組員3人までのほぼ半永久的な生命維持を保障する。
巡航速度の問題を外部と内部で時間の流れを変化させるという魔法のような方法で解決した。
これは同時に乗組員の寿命による探査期間の制約も緩和する。
だがその代償として一切の無線交信が不可能になってしまう。次の交信は機内時間で一週間後だ。
その間に地球ではどれだけの時が流れているのだろうか。
社会情勢の変化によっては、知り合いが皆死んでいるという事さえ有り得るのだ。そう考えると心細くなる。
「……では準備が出来次第、巡航フェーズへと移行します。交信終了」
そして、もしかしたら最後になるかもしれない地球との交信が、終わった。

「遂に、ここまできたんだね。」
感慨深げな声に振り返ると、そこにあったのは若干苦笑い気味の笑顔だった。
「まさか本当に君とここにこれるなんて、思ってもみなかったよ。」
そう。とうとう幼い頃からの夢が現実となったのだ。
努力だけではこの場所に立つ事は出来なかった。その裏には数多くの幸運があったに違いないのだ。
僕は彼女に笑顔を返すと、画面上で返事を待つコンピュータにエンターキーで回答した。

そして、船は巡航モードに移行する。


207 名前:最果てへ向かって(4/6)[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 22:03:12 ID:LEyxcZKH
シートベルトを外し、機体後方へと直線的に移動する。訓練したとはいえ無重力下での移動にはまだ不慣れだ。
分厚いドアを潜り抜けると、そこにあるのは暖色系の照明に彩られた居住スペースだ。
さらにその奥にある寝室に入り、重い防護服から着替えながらこれから一週間何をして過ごすかを考える。
病的なまでの自動化のおかげで、巡航に入ると僕たちはする事が無くなる。端的に言えば退屈だ。
もし外を見渡そうとしても、光の速度を超えているのでそこにあるのは只の漆黒だ。
ただ自分たちの健康に気を使い、なるべく怪我の無い様に生活するだけの日々。
その退屈を紛らわせる為、コンピュータ内に本や映画、音楽等のデータが大量に詰め込まれているくらいだ。
……その中に18歳未満お断りな物も含まれている事には驚いたが。

その時、ドアが開く音がした。顔を下に向けたまま私服姿の彼女が僕に向かって飛んでくる。
彼女は無重力下での行動には不向きなスカートを履いていて、そして……
「ふふっ」
彼女は笑っていた。最初は含み笑いだった声が徐々に大きくなりそして、
「あはっ、あははっ! あははははははは!!」
遂には哄笑へと変わった。気が狂ったかのような笑いを続けながら僕の方に突っ込んでくる。
戸惑いに固まる僕に彼女はかまわず抱きついてきて、そして……口付けた。
いきなり舌をねじ込むディープキス。情熱的に絡んでくる彼女の舌。腰に手を回されているから離れる事も出来ない。
慣性の法則に従って運動し続けた身体が壁に接触したところでようやく彼女は唇を離した。
僕らの口から零れた唾液の橋は、すぐに丸くなって換気口の方へと吸い込まれていった。
興奮と混乱で頭が真っ白な僕は彼女の、かつて見た事のない妖艶な笑みを見つめる事しか出来なかった。

208 名前:最果てへ向かって(5/6)[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 22:04:01 ID:LEyxcZKH
「あははははっ! これでやっと夢が叶ったんだ!! ここまで長かったね。うん、本当に長かった。」
途方もない違和感が僕を襲う。目の前の彼女がまるで別人のように感じられた。
「ねぇ。君とわたしの夢って、実はちょっと違うんだ。知ってた? 」
何の事だ? 現にさっき夢が叶ったって言ってたじゃないか。
「わたしの夢はね……君と二人っきりで過ごすこと。ううん、そうじゃないね。君をわたしのものにすること。」
その言葉に頭が回転を再開する。確かにここは二人きりだ。邪魔が入る余地などありはしない。
でもまさか、募集の後押しをしたり、訓練中励ましてくれたのは、全部その為だとでもいうのか……!?
「そうだよ。最初は君を何処かに監禁してしまおうと思ったんだけど、その維持を考えると現実的じゃないなって思って。
ここなら絶対に変な害虫も付かないし、何より政府公認だもんね。ぜーんぶそのためにがんばったんだよ?
あのクソ教官の拷問みたいな訓練にも、セクハラ上司の厭味にも負けずにね。褒めてほしいくらいだよ」
彼女が絶対しないような言葉遣いが、快活な性格の裏に隠された黒い感情が、僕の衝撃を大きくする。

「ねぇ、何で第一次隊が全滅したのか教えてあげようか? 」
何故彼女はその理由を知っている? そう思いつつも好奇心には勝てずに首肯を返す。
「技術的には何の問題も無かったの。彼らはね、簡単に言えば孤独に押しつぶされちゃったんだ。
どんなに厳しい訓練を重ねた屈強な精神でも、報われないかもしれない任務に絶望してしまったのね」
そうだったのか……。納得すると同時に、自分もそうなってしまうのでは、という恐怖がこみ上げてくる。
「でもね、わたしたちは大丈夫。絶対に絶望なんてしない。だってここに居るのは君とわたしの二人なんだもの」
何故そう言い切れるんだ? 第一次隊だって二人ペアでの行動だったはずだ。
「偉い学者さんたちが考え付いたの。強い依存関係にある男女なら、これを乗り越えられるってね。
特に女の側が奉仕的で、独占欲強くて、周囲を傷つけることにためらわない性格が最適なんだってさ。
ストーカー騒ぎのこと覚えてる? あれはね、わたしたちに適性があるかを判断する試験官だったの。
わたし、その人達にお墨付きもらっちゃった。だからわたしたちはここにくることが出来たの。他の探査船の人達もそう。
皮肉だよね。地上では病的だって言われるような人間のほうが宇宙での生活に適してるなんて。」

209 名前:最果てへ向かって(6/6)[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 22:04:54 ID:LEyxcZKH
一気にしゃべりきった彼女はもう一度僕に口付けてくる。それは甘美で、捕らえたものを決して逃さない魔法。
腰に回していた手がズボン越しにさっきから興奮しっぱなしのソレに触れる。
情熱的に絡み合う舌が、布越しのもどかしい刺激が、僕の精神を侵していく。
永遠のようなキスが終わると、彼女は微笑みながらポケットから何かを取り出した。それは白い錠剤の詰まった小瓶だった。
「ねえ、コレ何だかわかる? コレはね、最先端の不妊薬なの。後遺障害も副作用もなしのパーフェクトなおクスリ。
でも政府のお偉いさんがこんな物は倫理に反するって大反対して結局一般に発表されなかったんだ。勿体無い話だよねぇ」
それはそうだ。そんな薬があったらみんなナマでヤり放題だ。宗教色を強めるあの国がそれを認めるとは思えない。
「でもその分こういう任務には最適なの。だから船内に特製の合成プラントまで作ってあるの。
きみの子供を産めないのは残念だけどここで子育てするのは大変だからね。人が住める星が見つかるまで我慢しなきゃ。
でも、その分妊娠なんて心配しないで思いっきりナカに出しちゃっていいんだよ。
わたしも君のアソコからせーえきがびゅくっ、びゅくっ、って出てくるのを感じたいの」
彼女の口から出てくるとは思いもしなかった卑猥な言葉。その一つ一つが、僕を昂ぶらせていく。
「だからね…………しよ?」
その一言で、僕の理性はいとも簡単に崩れ去った。今度は僕の方から口付ける。
彼女は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに蕩けた笑顔でキスに夢中になった。
そして僕たちの顔の間に三回目の橋が渡って切れた時に、彼女は飛び切りの笑顔で僕に囁く。

「これからは、ずっと一緒だね」

――そしてこの日から、僕たちの、僕たちだけの世界が、始まったんだ。

210 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 22:05:54 ID:LEyxcZKH
以上で投稿終了です。
ヤンデレスレ初投稿ですが、書いてるうちにヤンデレっぽさがなくなってしまいました。
まとめサイトの偉人たちの偉大さを改めて実感した次第です。
また、SFに明るくないため突っ込み放題な設定なのは仕様です。ご容赦ください。

211 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 22:07:22 ID:fmX99DrT
リアルタイムGJ!!!!!!!!!!

目的を手に入れるために宇宙まで…スケールでかいぜ…

212 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 22:15:48 ID:3HWh3CNj
初リアルタイムキター

213 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/09/30(日) 22:27:20 ID:u/wZuLrg
コレはすばらしいな
あなたが神か!

214 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/09/30(日) 23:37:39 ID:FAG11Wmm
投下乙
凄く読みやすく、また良い感じでまとまっていると感じました

215 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 00:54:16 ID:bzCcwMZg
>>210
GJ
スケールがデカイ!

216 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 02:43:39 ID:R4v8n7PE
鬼畜王の「宙へ……」エンドをおもいだしてしまった
こういう閉じられた二人の世界っていうのは大好きだ、GJ。



217 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 18:42:35 ID:lnCyGbRC
溶けない雪4投下していきます。


218 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 18:44:51 ID:lnCyGbRC
4

朝、8時頃に目を覚ました。
普通の学生の場合ならここで遅刻だと朝から騒ぐ時間帯なのだろうが、
自分にはさほど問題無い時間だ。
顔を洗い、服を着替えて、朝食を食べ、歯を磨き家を出た。
今日は曇りなので傘を持っていこうとも思ったが、
結局、降らなかった場合は邪魔になるので持っていくのをやめた。
学校に着いた時間は8時23分。
ちなみに、学校は8時30分からだ。
遅刻はしてないとはいえ、もう直ぐで授業が始まる時間なので、
教室には既に大体の生徒が揃っている。
「おはよう」
席に着くと水無月さんに挨拶をされた。
驚かなかった、と言えば嘘になる。
多少話しただけで女子と挨拶しあうような間柄になるとは思ってなかったからだ。
でも昨日の自己紹介の事を思い出すと、きっとこんな子なのだろう。
「あぁ、おはよう」
少しだけ遅れたが、こちらも返事を返す。
席に鞄を置き、昨日同様、黒板の横で輪になっている雲海達の所に行く。
「やぁ、ニブチン君」
いきなり友人Aに変な呼び方をされた。
ニブチンと言われても直ぐには分からなかったが、
少し考えると昨日の事を引っ張ってきたのに気付いた。
まだ会って2日目で友人からあだ名で呼ばれるのは、
上手く行っている事の現れなのだろうが、あだ名があだ名なので複雑な心境だ。
「やあ、皆おはよう」
とりあえず複雑なのでスルーした。
「おはよー」
既に挨拶をした友人A以外から返事の挨拶がきた。
「スルーですか・・・・・・・・・」
「残念ながら、僕はあまりリアクションを取りずらいのにはスルーするのだよ」
実際に、前フリ無しでいきなり変なあだ名で呼ばれてもリアクションに困るだけだ。
数分程、雑談をしていると、教師が来たので席に着いた。
来るのが早く感じたが、7分しか時間がなかったので早いのは当たり前である。
2日目からいきなり授業に入ったので、
なんかいやだなーとか思ったが、まだ授業は初日で、
雑談ばかりで授業と呼べるものは全くなかったので問題はなかった。
正直、授業をしないまま昼休みに突入した。
教科書を鞄に入れると、雲海と他数名がこちらにやってきた。
「遂にきたな」
「うん、遂にきたね」
いきなり主語がない言葉を雲海に掛けられたが、
何の事か分かっていたので会話は成り立った。
「念のため、それなりに持ってきたな?」
「うん、持ってきた」
また主語がないが、前述した通り、何の事かちゃんと分かっている。
「では………………食堂に行こうか」


219 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 18:47:19 ID:lnCyGbRC
そう、食堂である。
実は昨日、この高校には食堂があるので、
グループ内の皆で行こうと話していたのである。
別に、日常化すればどうでもよくなくなるとは思うが、
初めて行くとなると話は変わってくる。
ちなみにそれなりに持ってきたか?とは財布の中身の事である。
値段が分からないので、念のために多めに持ってこようという事になっていた。
いくら位か調べてこようか?と聞いたが、
無粋な真似をするんじゃねぇ!と何故か怒鳴られた。
そんなわけで、友人達で食堂に向かった。
多少迷った。
食堂に着いた瞬間、あれ?と思った。
食堂というのは漫画とか小説みたいにかなり混雑している、
というイメージがあったのだが、他の食堂はどうなのかは置いといて、
ここの食堂は大して混雑していなかった。人はそれなりに居るが、
それでも席はそれなりに空いているし、
券売機の前に人が列を成しているというわけでもなかった。
友人達も同じ事を考えていたようで、呆気にとられていた。
所詮は作り話か・・・・・・・・・・・食堂としても、
入ってきた人の勝手な思い込みで、
まじかよみたいな顔をされるなんてたまったもんじゃないだろう。
食堂の入り口にいつまでも立ち尽くしていたら良い迷惑だ。
僕が皆に促し、取り敢えずは券売機で券を買う事にした。
人が混雑してないのは値段が少し高いからじゃないか?と少し焦っていたが、
別に高くはなく、そこらの食堂より値段が少し安い位だ。
ほっとするのと同時に今度は不味いんじゃないか?という懸念が湧いてきた。
ここは安全性を考え、カレーにした。
値段も400とよく見る値段だし、カレーなら滅多に変な作りじゃないかぎり、
普通に食えるレベルだろう。やはり僕には冒険心がないのだろうか?
他の友人達も券を買った。僕と同じで無難にカレーにするもの。
俺は敢えてカレーより高い、カツカレーで行くぜといってカツカレーにするもの、
ここはA定食だな、と冒険するもの等。
ここに券は揃った。
券を出し、食べ物を受け取り、各々が席に座った。
それにしても僕含め、皆テンション上がってるな。
「じゃあ………食べましょうか」
雲海の食事の定番挨拶で、皆が食べ始めた。さて、味はどうなのだろう・・・・・・・


「・・・・・・・・・・美味い」
不意打ちだった。そう、美味いのだ。
さすがにちゃんとしたレストランとかに及ぶレベルとは言い難いが、
充分に美味いと言えるレベルだ。
カレーだから美味いのかもしれないと、他の面々を見たが、
皆うまくね?と口々に言いながら食べている所を見ると、
カレーだからというわけではないみたいだ。


220 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 18:50:05 ID:lnCyGbRC
想定外の味に、スプーンは進み、直ぐに完食した。
値段といい、味といい申し分ないが、では何で、人の数が微妙なのだろうか?
食堂とは案外こんなものなのだろうか。
午後の授業は不覚にも、眠くなってしまったので、
睡魔に抵抗などせずに、大人しく寝る事にした。
どうせ授業じゃないだおうししね。
5、6限を寝てすごし、さぁ、帰るかとなった時に、
「放課後は委員会があるので、属する者は全員、
指定の教室に向かうように。
サボるのは構わないが内申にかなり響くとだけ、アドバイスをしとくぞ」
先生からの連絡があった。
確か昨日も、同じ連絡をしていたような気がする。
僕は保健委員なので・・・・・・・やっぱりというか保健室か。
鞄を持ち、保健室に向かおうとしたところで、肩を叩かれた。
誰かと思い、振り向くとそこには水無月さんが居た。
あぁ、そういえば彼女も僕と同じ保健委員だったっけ。
「私達は保健室だね。早く行こう」
僕と水無月さんで保健室に向かう。
保健室は校舎の1階、僕達の教室が3階なので、その分歩く必要がある。
当然なのかもしれないが、歩いている間、会話等ない。
元々、初対面の人に話を掛けられないのがきっかけで、話をした人なのだ。

今更感があるが、何で水無月さんも保健委員になったのだろう。
男子で知り合いは僕しかいないからとかなのかな?
まぁ、やはりなんとなく、とかの確率の方が高い気もする。
どうせ会話もないまま、気まずい雰囲気なのだから聞いてみよう。
「あのさ、何で水無月さんは保健委員になったのかな?」
「え?」
いきなり話掛けたので、驚いたからなのだろう、質問に対する返答は返ってこなかった。
「僕が決まってから立候補したからさ。何でなのかな?って、思ってさ。
保健委員に始めからなりたかったんなら、
最初から立候補したと思うし、やっぱりなんとなくとか?」
前ふりなしのその質問に、水無月さんは
「んー・・・・・・・・・まぁ簡単に言うと興味が湧いた、ってだけだよ」
「興味?」
はて、興味を持つ様な事なんかあったかな?
「興味って、何が?」
「坂田くんに興味が湧いたのよ」
僕!?
「興味が湧くような事僕したっけ?」
「それは人によって違うのだろうけど、
私にとっては興味が湧く事を、坂田くんはしたわね」
「僕の、どこが水無月さんの興味を引かせたんだい?」
「私に話掛けた事だよ」
声を掛けたから?
「えっと・・・・・・・・・・水無月さんに僕が話掛けただけで?」
「そうだよ。」
そんなものなのだろうか?
水無月さん程に美人なら声を掛けられる事なんて普通だと思うのだけど。
深く考えようとしたが、既に保健室の前に着いていた。
薬臭い室内、授業中になると何故か使用率が上がるベッド、
グラウンドが一望出来る窓。現在、保健室に居る。
図書室や、放送室、普通の教室等は、小学校から中学校、
中学校から高校に変わる度に部屋ががらりと変わるものだが、
保健室になると大した違いは生まれてこないのは何故なのだろうか?
保健室で委員会が開かれてはいるが、保健室はなにぶん道具等が多いので、
人数分の椅子を並べる事が出来ないので委員全員が地べたで開かれている。
でも何で先生だけは椅子に座っているんだろうね?


221 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 18:52:21 ID:lnCyGbRC



別に立候補はしたが、積極的に保健委員の仕事はするわけでなく、
また、どうせやる事と言っても、今までと大差はないと思うので、
委員会での話は聞きながしていた。聞きながしながら、
僕は先程の水無月さんとの会話を思い出していた。
水無月さんは保健委員に入った事を、僕に興味を持ったからだと答えた。
それも、興味が湧いた理由が、話掛けられたから。
何でそんな理由で?本当に分からない。
何故そんな事で興味が湧くのかが、
やはり、人の考えてる事を当てるなんて僕には土台無理な話だったか。
この委員会が終わったら詳しい事を水無月さんに聞いてみる事にしよう。

最後に、独身の女性の先生のよくあるような台詞で委員会が終わった。
解散と共に直ぐに教室を出て、帰宅やら部活に向かう人達の中、
「水無月さん、ちょっといいかな?」
「ええ、いいですよ」
思えば、最初に声を掛けて直ぐにちゃんとした返事が返ってきたのは初めてだな。
まぁそれは置いといて、
「さっきから水無月さんの言っていた事を考えていたんだけどさ、
やっぱり僕の考えじゃ何も分かる事なんてなかったんだよね。
だから聞きたいんだけど、何で話掛けらたからなのかな?」
自分で言っといてなんだけど、さすがにしつこい気がする。
傍目には、美人に興味が湧いたと言われて、浮ついたやつに見えるだろう。
別に僕が浮ついているわけではないが。
「ごく、普通に声を掛けてきたから・・・・・・」
「え?普通?」
声を掛けるのに普通とかがあるのだろうか?


222 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 18:54:05 ID:lnCyGbRC
「なんというか、何も考えないで、声を掛けてきた男の人は初めてだったんだよ。
確かに、町を歩いてると声なんかよく知らない人に掛けられるし、
中学でもそうだった。
そんな男の人達は決まって、私に少なからず下心を抱いていたり、
私の容姿に興味本位だったの。でも、あなたは違う。
声を掛けたのも、私がクラスで浮き気味だったからだったし、
別に私と親しくなりたいという感じでもなかった。
だから私は坂田くんに興味が湧いたの。
初めて、私の容姿や、
興味なんて関係なしにはなしてきた坂田くんに」
言われてみれば、そうなるのかもしれない。
美人と話が出来る事を若干喜びもしたが、別に水無月さんが、
クラスに馴染んでいなかったら、多分話掛けるなんて考えもしなかっただろうし、
髪の事もただの感想、名前の交換で喜びはしたが、
それ以上親しくなろうなんて思いもしなかった。
現に朝、挨拶をされて僕は驚いた。
確かにそうなる。
初めて自分への接し方が違う人に会えば、興味が湧くのも分かる気がする。
それだけでわざわざ委員会を同じにする必要があるのかとも思うが、そこらへんは人によるだろう。
何はともあれ、これで理由は分かった。
「あぁ、なるほど。そういう事か」
「えぇ、そういう事です」
しかし、何でかと考えている間は思わなかったが、
今考えると、興味を持たれたと言われても複雑だ。
自分から話の出所をふったのだが。
「ええっと・・・・・・・・・では聞きたい事は聞けたのでこれで」
結局、どう言えばいいか分からず、帰る事にした
「あ、ちょっと待って」
「はい?」
「あの・・・・・・・・そういうわけだからメアドを教えてほしいんだけど?」
そういうわけってどういうわけなんだろう?でも、これといって否定する必要もない
「あぁ、いいよ」
こうして、水無月さんとメアドの交換をした。
「それじゃあ、これで」
「えぇ、また明日」
水無月さんとは、高校から出る門から、帰路が違うみたいなので、
玄関を出てから直ぐに別れた。
まさか、水無月さんとメアドの交換をするとは思いもよらなかったが、
感想を言うと嬉しかったりした。それなりの年頃の男子なら、
女子とメアドの交換が出来て、嫌な気分になる人間などあまり居ないだろう。


223 名前:溶けない雪[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 18:57:41 ID:lnCyGbRC


不意に、水無月さんの言っていた興味が湧いた、と言う言葉を思い出した。
「興味が湧いた・・・・・・・・か」
誰にでも言うでもなく、呟いた。
声を掛けられたから湧いたと彼女は答えた。
今思うと、自分でも不思議だ。
自分から女子に声を掛けるなんて、今までで言ったら、夏夢位なものだった。
では、何で自分は声を掛けたのだろう。
気まぐれ?
気まぐれとは違う気がする。
ではやはり美人だから?
そういうわけでもない。
優しいから?
今まで他人に、優しいねなんて言われる位に、他人に貢献した事などない。
では何で?
分からない・・・・・・・・
彼女は声を掛けた僕に興味が湧いたと答えた。
それと同じで、僕も、その時の自分に興味を持った。
何で、声を掛けたのだろう?













224 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 19:06:27 ID:lnCyGbRC
投下終了です。
前回アドバイスくれた方ありです。
・・・・・・・・・

やはり、食堂長すぎかな?;;


225 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 19:07:39 ID:T4aZJ2Iz
GJ

226 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 19:39:35 ID:nxcsNoBt
>>224
GJ。
素直クールな水無月さんかわいいよ、
病んだらどうなっちゃうのか楽しみだ。

あと、細かい所だけど
・・・・・・・・・←これは
……←に統一した方が良いと思うんだぜ、読みやすいし

227 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2007/10/01(月) 22:38:29 ID:e/GGWVda
>>218
GJ
次回にも期待してる

228 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/02(火) 09:33:55 ID:atdvD9jm
>>224
GJ
この食堂の謎が物語の核に……!!

なったりはしないよな

229 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/03(水) 01:23:42 ID:gLQyS+qT
ダメ男と依存症少女のプロットもどき

ダメ男は学校の成績は下の方から数えて3番目の成績であり
性格も他力本願で物事はすぐに諦めてしまう。学園の誰から見ても
史上最凶の駄目男。

依存症の少女は生徒会副会長であり、成績優秀で性格が良くて
皆から慕われている。学園の清純派アイドルとしてファンクラブを
結成してしまう程の美貌の持ち主。ついでにどこぞの大企業の
社長の娘なのでお金持ち

その二人が一体何がどういう経緯で付き合ったかは不明。

依存少女はダメ男の事をあんなダメな人を支えられるのは私だけ
あの人はいつも私を必要としてくれている
と依存している交際関係が続いていたが

一方、ダメ男は依存少女を彼女にしたことを後悔していた
優秀すぎる彼女に劣等感を抱いており、お金持ちである
ため、デートはいつも彼女が奢っていた。

プライドの高いダメ男はとことん自尊心を傷つけられて、
依存系少女と付き合うのが辛くなってきた。

ダメな自分を振り返り、もう一度だけ二人の関係を見つめ直した。

何もかも依存系少女に頼り切っていた自分を恥じて、
依存系少女から、自立することを決めた。

真面目に頑張って、依存系少女と釣り合うような男に俺はなる。
そう堅い決心をして、別れ話を持ち出した。

依存系少女は今まで自分に頼りきっていたダメ男が
自立するために別れると。

その言葉に精神的にショックを受けた。
私を必要しない=自分はもういらない。
そう、全て否定されて

彼女はどんどんと病んでゆくのであった・・・・・。
--------------------------------------------

まあ、元ネタは空鍋の楓ですかね。

ある人のために尽くして尽くして尽くすんだけど
家を出ると宣言した時のような壊れ方がイイW
依存症の女の子はきっとヤンデレ化しやすいと思いました

というわけで誰か書いてー

230 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/03(水) 02:07:45 ID:VfGnuCPA
ダメ男だけどプライド高いって難しくないか?

231 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/03(水) 05:58:06 ID:j8qKKCky
俺やるときはやる人間だし~
的な?


232 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/03(水) 10:37:47 ID:Ce5SVxZs
なんか男の言動で荒れそう
読んで不愉快にならないように描写するのって難しいよね


233 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/03(水) 18:15:31 ID:jYIO1bWX
>>229
周りから見ると釣り合い取れてない「美人だけどツンデレな女」と「野獣だけど真面目で優しい男」のカップル。
二人は親の決めたお見合いの席で知り合った。

しかし周りから男と女は釣り合いが取れてない、他にふさわしいやつがいるなど陰口を叩かれはじめ、
ツンデレな彼女に男がそのことをそれとなく聞いてみてもとあいまいな返事しかしない。
所詮親の決めた出会い、女もほんとは自分が嫌なんじゃないか。ただ一方的に自分が女を好きなだけなんじゃないか。
男は疑心に駆られ始め、悩み始める。

ある日、男は女がとても自分では敵いそうにない別の男と親しげに話しているところを目撃してしまう。
それを見た男はやっぱり今の自分じゃ彼女には釣り合わない、だからもっとがんばって彼女につりあう男になろう、それから今度は親の力を借りず、
もう一度自分からアプローチしようと決心して彼女に別れ話を持ち出し、親や向こうの親にもそのことを話す。
親や周りもなんとなくこうなる事を予想していたので男のことを応援することにする。

しかし女の素直になれない性格ゆえか実は女のほうが男にベタボレだったことに周りも男全く気づいておらず、
別れ話をしたその日から女の行動がおかしなり始める・・
とかでもいいんじゃないかな。

まあオチは同じなんだけどさ。


234 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/03(水) 19:02:16 ID:kg1JtJ3Y
>>233
それだ!!

235 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/03(水) 20:00:34 ID:Y6DVkMMb
修羅場スレのノン・トロッポとか似てるな

236 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/03(水) 20:12:49 ID:JphFSEk+
>>235
ノン・トロッポってどんな話なんだ

237 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/03(水) 20:41:01 ID:o4+X+xDx
ニコニコで遊戯王GXを見て細かい事はどうでもよくなった俺が来ましたよ

238 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/03(水) 20:50:12 ID:A4+xyHFQ
あれは凄いね

239 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/03(水) 20:58:57 ID:o4+X+xDx
ヤンデレで検索した
まあ確かにユベルはいいヤンデレだったんだ
人間捨ててまで惚れた相手を守り抜くとかあまりにも深すぎる愛の持ち主だし
なんだかんだ言ってハッピーエンドに終われたし

…何あの何でもありな世界

240 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/03(水) 21:22:57 ID:A4+xyHFQ
何でもありてアニメ自体そんなものだからねぇ、グレンラガンとか
スレ違スマソ

ユベルかわいいよユベル  まあホモだけどな

241 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/03(水) 21:28:24 ID:o4+X+xDx
ユベルは肉体改造の結果ふたなりになったから問題ないさ

242 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/04(木) 00:14:57 ID:61LhdOx2
確かに>>229や>>233は修羅場スレのノン・トロッポに結構似てるから
そっちを読んでみれば参考になるかも。

幼い頃の事故で片足が不自由な少年と
その事故を起こした自責の念からか過剰に少年の世話を焼く一つ年上の幼馴染の話。
文武両道で人望もある美少女が、友達もいなく片足が不自由な事以外は平凡な少年にベッタリな事に
学校中の多くの男子生徒が羨望と妬みの眼差しを向けている。
この事を重荷に感じる主人公が、似たような境遇のある一人の少女と友達?になった事をきっかけに
依存していた幼馴染からひとり立ちしようと決意する。
で、年上の幼馴染が段々・・・みたいな内容

残念なのは良い感じで伏線を張り終わって
本格的に修羅場スレ的な展開になっていきそうな所で未完の状態になってる事。

243 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/04(木) 01:15:22 ID:DSu+Vy9I
>>242
ノントロはよかったよなぁ。惜しいよね。
こういう切ない想いのすれ違いみたいなのっていいね。あんまこういう作品見かけないけど。
書いてみようかなぁ・・・


244 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/04(木) 06:43:02 ID:lIEU99Ln
あれは主人公が片足が不自由になった理由がおぼろげながら明らかになりつつあったところで
続きが来ないっていうなんて生殺し状態なのがな…

245 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/04(木) 10:50:40 ID:EJv5s1oB
いい加減スレ違いだからあっちでやってくれ。


※あの作者さん、連載中断した時に「体調崩したから投下は途切れがちになるかも」と言っていたから。
俺はノントロは読んでなかったからどーでもいいんだが、本人の安否は心配だ。

246 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/04(木) 11:00:15 ID:EJv5s1oB
スマン、心配で思い出したんだが保管庫も更新止まってるんだよな。
管理人さん何かあったのかな。

247 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/04(木) 15:43:48 ID:s40vwdza
近況なり出してくれると安心なんだけどねえ。
まあ復活したら協力できるように、ログ保存して待ってればいいかと。

248 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/04(木) 23:04:48 ID:k/gE1k/x
テレビの消えた日の七海はヤンデレだよな?

249 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 00:39:49 ID:8ck79HaF
今日一日の疲れを風呂とベッドで癒す。
あきらのことをどうするかは明日考えよう。そうして私は眠りについた。

だから私は、知らなかった。
あきらが同性愛者なんてものじゃあなかったということを。
そして、あきらの異常性を。
それを知るのも明日だというのに私は。

翌日、私は珍しく早起きをして、朝早く登校した。
通学路の途中で理子とのぞみを見つけ、玲が家に帰っていないことを知った。
もしかしたらあの生粋の絵描きさん、まだ美術室にいたりして。そんな冗談を笑いながら、美術室に向かう。
冗談は現実になり、私たちは笑えなくなった。
玲は美術室にいた。ずっと、いた。

首から流れ落ちる血。光のない眼。力を失った腕と脚。
赤黒い海に横たわる少女。
かすかに、肉が腐る臭いがした。

その日学校は、休校になった。

250 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 00:40:23 ID:8ck79HaF
記憶が曖昧です。
昨日、私は美術室で何があったのかを憶えていません。
カールクリノラースくんは何も言ってくれません。
私は学校を休むことに決めました。休む口実を考えながら学校に電話をかけます。
……出ません。たまたま誰もいなかったのでしょうか。そう信じて受話器を置いた途端、電話が鳴り出しました。
「はい、石橋です」
『あ、もしもし。春日です。あきらさんいますか?』
「あの……私があきらですが」
春日。どんな人物でしたでしょうか。私の記憶の中にありません。そういえば連絡網の石橋という名前の隣に、春日という名前があった気がします。
『ああ、あきらさん? 丁度よかったぁ。あのね、連絡網。なんかしばらく休校するらしいです』
休校? 学校が? ……何があったのでしょうか。
『あのね、殺人事件があったみたいなの。他のクラスの……アケモリレイって子が、美術室で殺されてたって』
一瞬、目の前がぐにゃり、と歪んだ気がしました。
『だから、学校はしばらくお休みだってさ。これ次にまわしてね……つってもみんな野次馬気分で学校に残ってるけど』

ああ、そうでした。他人たちは皆登校しているのです。こんな時間にまだ家にいるのは学校が近くにある家の人だけでしょう。
「春日さんの家は、学校の近くにあるんですか?」
『ああ、あたしは風邪でお休みしてんの。……人殺しなんて、あたしの身近で起こるなんて思わなかったよ』
私もです、と思いましたが、口には出したくありません。
『あのさ、こんな話題の後で空気読んでないみたいなカンジなんだけどさ、ちょっといいかな?』
「なんですか?」
『女にコクったってホントな』
通話を切って、連絡網を取り出します。次の家は古塚と書かれています。
『はいもしもし』
いつの間にか私は電話番号を入力していました。
「石橋と申します。古塚さん──古塚一志さんのお宅ですか?」
『はい、そうですけど……一志ならもう学校ですよ』
「その学校からの連絡網です。学校で殺人事件が起きたそうなので、学校はしばらく休校するそうです」
『え? え、いや、え?』
「それでは」
通話を切りました。必要最低限のことは伝えたので、大丈夫でしょう。
イタズラだと思われたかもしれません。しかしすぐにイタズラではなかったと思い知るでしょう。
私はテレビをつけました。笑顔と化粧を貼り付けた他人が口から雑音を吐き出しています。テレビを消しました。
部屋に戻ることにします。朝食は食べていませんが、平気です。
暗い部屋で、裸になって、あの冷たい感覚を求めることにします。
骨の髄まで。冷凍庫の中のように。

251 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 00:40:56 ID:8ck79HaF
何があったのか思い出せない。私は何をしたんだっけ。
ああ、そうだ。
死体があって。
長門先生が来て。警察の人が来て。
パトカーに入れられて。警察署に連れてこられて。
いろいろ聞かれて。いろいろ答えて。
家まで送ってもらって。
いつの間にか夜中で。
一人になりたくて。散歩に出かけたんだ。

夜の公園は、とても静かで、暗い。しんと静まり返った花壇は雑草だらけで、誰も手入れをしていないらしい。
花壇の傍でふんぞりかえってるベンチに座る。そういえば、学校の制服のままだった。
顔を上げると、そこに玲の顔がある気がして、私はうつむく。そうしていると、目の前に玲の顔が浮かぶ。
目をつむる。それでも玲の顔は浮かぶ。耳を塞ぐ。玲が呼んでいる気がする。いやだ。
一人になりたかった。なのに今は、一人が怖い。
一人ぼっちの私は、この暗がりに押し潰されそうで。

「きみこちゃん?」

声がした。
顔をあげると、玲の顔の代わりに、あきらの顔があった。
「あきら……っ」
「大丈夫?」
こっちの気も知らないで、あきらは心の底から心配そうな顔をしてやがる。
そんな顔しないでよ。頼りたくなっちゃうから。
「あんた、こんなところで何してんの?」
「さんぽ。家がすぐそこなの」
あきらが微笑んだ。その微笑みは、何故だか暖かくなる。あの冷たくなる笑い方はしないのだろうか。
「私も散歩よ」
「そっか」
私も笑って、あきらもそれを返した。

252 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 00:41:49 ID:8ck79HaF
隣に座っていいでしょうかときみこちゃんに尋ねたら、きみこちゃんはいいよと言ってくれました。感激です。
「……いや、なんか近い」
きみこちゃんの隣に座ったら、きみこちゃんが何か嫌そうな顔をしました。
きみこちゃんに触れ合えるくらい近い『隣』なのですけど、私は何か過ちをおかしてしまったのでしょうか。
「まぁ、いいわ」
きみこちゃんは困ったように笑って、顔を自分の足元に向けてしまいました。
私はそんなきみこちゃんを、見ていることしかできません。
この暗闇の中で、きみこちゃんと二人きり。何故でしょう、胸が引き裂かれそうなくらい、熱い。
「知ってるでしょ? 殺人事件」
ぽつりと、きみこちゃんが唇を開きました。
「死んだ朱森玲って、私の友達だったんだ。あんたも会ったでしょ、眼鏡かけてた子よ」
眼鏡をかけた。何故か、頭が痛みます。
「会ってから一、二ヶ月程度だけどさ……私は玲のこと、友達だと思ってた」
友達。あの眼鏡をかけた塵が、友達? あんな淫乱売女な他人が、友達?
「その友達が、死んでたの。首から血を流して、首にっ、首に、…………」
だめ。
きみこちゃんは、あんな塵のために涙を流してはだめです。
違う。あんな塵が、友達であるはずがない。そうです、あんなのは、殺さなければいけないのです。
殺さなければ。

『本当さ、石橋さんってスタイルいいね』『…………』
『こんな綺麗な身体してて……勿体無いよ』『…………』
『顔も、胸も、ウェストもカンペキ……』『…………』
『もちろん希美子もね。あなたも希美子も、本当に綺麗よ』『…………』
『ねぇ。あたしと石橋さんて気があうと思わない?』『…………?』
『実は私もね、女のコがスキなんだ』『…………』
『……ねぇ、一緒に希美子を襲っちゃわない?』『…………!』
『場所も時間も、もう完璧なの。道具もあるのよ』『…………』
『石橋さんさえよければ、だけど……一緒に、希美子を犯さない?』『…………っ!』
『あぁん……どんな声を聞かせてくれるのかしら、希美子は』
『穢すな』
『え?』
『きみこちゃんを穢すな』
ドッ────
鈍い音と鋭い感触。赤い赤い、汚濁まみれの赤い花。

そう、あんな塵は死んだほうがいい。きみこちゃんを穢すなんて、そんなこと許さない。赦しは、しない。

253 名前:羊と悪魔[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 00:46:40 ID:8ck79HaF
はいどうも、羊と悪魔の続きです。
ついに事件が起きてしまったようです。
殺されたのは眼鏡がトレードマークの玲。実はレズだったようです。
あとはラストスパート一直線のはず。

254 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 01:35:06 ID:6qgM3N8n
>>253
GJ!!
なんか興奮してきた
続きが待ち遠しい

255 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 01:52:33 ID:Fe03hxK+
いつからでしょう。
父が母に愚痴を度々こぼすようになったのは―。
父が知らない女の人に怒鳴られているのを見たのは―。
父のやつれた表情を見るようになったのは―。
誕生日、決まって連れて行ってくれたレストランへも行かなくなったのは―。
幼心に偉大なものとして、絶対視していた父の背中を見ることができなくなったのは―。
何もかも取り戻せなくなってしまったのは―。

それ以来、私には父の記憶は一切無い。
父の記憶というと幼い頃の数年しかない。
父は母と娘である私が居ながらも、私たちと同居していなかった。
ただ、私たちの家を訪れるときには決まって、父はケーキを買ってくるのだった。
そのケーキの甘さが妙に鮮烈に残っている。
当時は、父が母と同居するものだという感覚はなく、父が来るたびに、はしゃぎまわっていた。
今からすれば、父の表情は曇っていて、無理に作り出した笑顔が痛々しかったような気がする。
けれど、私はそんな事お構いなしに両親をあちこちへ連れまわした。
そして、日が暮れる頃に帰っていく父を見送って、今度はいつ来るの?などと無邪気に尋ねたものだった。
当時は、それでもまだ良いほうだった。
父と私そして母との決別の日までは―。

父には妻と呼ぶべき人が母のほかにも居たのだ。
そのもう一方の妻が私の母から父を遠ざけのだ。
その妻というのが厄介な人だったらしく、自分の目的の為には夫を怪我させることも厭わなかったのだという。
ふと、目を閉じると陰影のある表情だけでなく、必ずどこかに絆創膏や包帯をしていた父の姿が瞼の裏に映し出される。
その傷を見るたびに母は哀しげな表情をして、自分のところには来ないよう言っていた。
そのことで何度か母に疑問を抱き、それを口にした。
しかし、母は口を真一文字に引き、こみ上げてくる何かをこらえた表情で、こういうものなのだ、と納得させようとした。
寧ろ、それは自分自身に言い聞かせていたのかもしれない。

父と母の接点が完全にたたれてしまった後、私が小学生になる前だから、二年と経たずに、母は急逝した。
親戚の人間があたりをはばかるようなヒソヒソ声で、自動車事故でショック死だったと話していた。
しかし、私はそれが真実ではない事を知っている。
ある冬の寒い日のもうとっぷりと日が暮れた頃、母は直感的に何かを感じ取った。
そして、私はどこかに隠れているように母に促され、クローゼットの中にしまわれている布団の間に身を潜めさせられた。
何故こんなことをするのか、母に聞いたがそれに答える前に、母はクローゼットの戸を閉めた。
それからすぐだった。
わずかに開いた隙間から漏れこんでくるように見えた居間の光景が屠殺場に変わったのは―。
そこで母を葬った悪魔は包丁を母の右胸に突き立てた後、四肢をずたずたに刺していった。
母の顔が苦痛に歪んでいくのが見えた。
しかし、母は抵抗せず、断末魔の叫びすらあげず、なされるがままにしていた。
それに対して悪魔はそのつややかな黒髪に返り血を浴び、微笑みながら訳のわからないことを呟きながら、母を何度も何度も刺していた。
どんなにその拷問が苦しかったことか、私には想像することもできない。
しかし、母の身に降りかかった悪夢を魂が抜けてしまったようになった私は何もできずに眺め続けていた。
暫くして、満面の笑みを浮かべた母は、五六人の人を私たちの家へ招きいれ、しぶきにしぶいて血痕の染み付いた壁紙やら畳やらを全て変えさせていた。
そして、自身は悪魔とは思えないような真っ白なワンピースに着替え、髪についた血を穢れたものであるかのように丹念に洗い流していた。
それから、そのハゲタカ共は母のまだ温かい骸を持ち去っていった。
恐ろしさのあまり、連中が去った後もクローゼットのなかで私はずっと震えていた。
そして、母が死んだと叔父から知らされたのは次の日の朝のことだった。

256 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 01:54:33 ID:Fe03hxK+
それからすぐに、死体を焼き場に送り、私の身の回りの整理を母の兄である叔父がすぐさま始めた。
それから、叔父が私を引き取ることになった。
この頃から、私は叔父の姓である「村越」を使い出した。
叔父夫婦には長い間子供が生まれなかったらしく、私は実の娘のように育てられた。
おそらく、おおむね幸せといえるものかもしれない。
けれど、私は気づいていた。
母が死んだのを境に貧乏で借家住まいだったはずの叔父が一戸建てを購入し、金遣いも派手になっていたことに。
中学生ともなれば、少しは世の中の事がわかってくるものです。
私が成長すると共に薄れていくように感じられた叔父夫婦の私への愛情は成長ゆえの事ではなかった。
叔父夫婦に引き取られて五年も超える頃ともなれば、父の残した財産とおそらく、あの黒い悪魔から叔父夫婦に渡った金もそこをつき始める頃だったのでしょう。
それに気づきだして以来、それまで無償の愛として受け入れてきた叔父夫婦の行動一つも禍々しいもののように見えたのです。
父も母も小学生になる前に失うという狂った記憶が不信の感情に転化して心根に根ざしてはいました。
しかし、私は叔父夫婦にはその不信の目を向けることがそれまでには無かった。

それだけに、私は人間そのものを信用しなくなり、と、同時に幼く無力だった私から愛する父を母を、奪い去った女を母と同じように、寧ろそれ以上に苦しめて殺すことを願うようになった。
復讐心と疑心暗鬼とが私の心を違和感無いほどに支配していた頃、私は幼い頃の記憶を頼りに一心不乱に情報をかき集めていた。
その復讐のみが私の生きる理由となりつつあったでしょうか。
去年の冬、私はとうとうその母を殺した犯人と父の現在、そしてその正妻である犯人との間に娘が居ること、といった決定的な情報を手に入れた。
その悪魔が住んでいたのは奇遇にも皮肉にも、私が住んでいる町と同じだったのです。
しかし、彼女は発狂して家から隔離されているということも知りました。
発狂する前に、母に向けた微笑みと同じ悪魔の微笑みを浮かべて、苦痛と哀願に顔を歪ませる敵を何度も何度も、刺してしまいたかった。
なぜなら発狂してしまえば、苦痛も罪悪も、悔恨の念も何もかも起こりえないのだから―。
私はその敵の娘の情報も手に入れていることを思い出した。
幸運にも私の親戚がもともと住んでいた家の近くに住んでいたので、そこへ行くことを考えた。
どうせ、叔父夫婦も私の事を早く厄介払いしたいような様子も見え隠れしていたのでこちらもそれは望むところだった。

敵の娘を殺した後、その母の命も奪う。

そう私は決心しました。
もとより、血塗られた道を歩むことは覚悟していたのでそのときに特別何かの感情が沸きあがることもなく―。
ただ、完璧に、一分の瑕疵なく、復讐を成し遂げなければならないという蒼い炎を心に点しただけだった。

そして、私は今年の春にその敵の娘が通っている学校に首尾よく潜入することができた。
ここでの生活はそれなりに楽しめるほうだった。
親戚からすれば厄介者が家に来たということで、風当たりは厳しく相変わらず家庭では心安らぐことは無かった。
最初は情報収集のために近づいた人々が思った以上に私に好意的に接してくれて―。
兄がそれなりに敵の娘と接触を持っているという情報を得て、松本理沙と私は知り合った。
なぜか、彼女だけは私の心の闇を察したかのように、いろいろと気を遣ってくれた。
必要な事意外、話すことが無かった私に彼女は話してくれて、私もそれにだんだんと引き込まれて、やがていわゆる親友、とでも呼べる間柄になった。
私と理沙はさまざまな事で話し合った。
理沙は幼い時分から重い喘息の持病に苦しんできたという。
だから、それだけに苦しい思いをしてきた人の目がわかる、のだと。
彼女と触れ合っている間、私は当初の目的を忘れている事ができた。


257 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 01:55:17 ID:Fe03hxK+
そのお金で雇った探偵が一月に二回渡してくれる報告書にもまるで目を通さないようになった。
私にもまだこんな人間的な面が残っていたのだと正直驚きました。
だからといって、それを拒絶する気になれなかったのです。
ぬるま湯につかっているような生活が妙に心地よくて。
しかし、五月の終わりごろから理沙は次第におかしくなっていった。
度々うんざりするほどの美化がなされて話されていた兄が例の敵の娘に奪われようとしている、という一件が理由でした。
それまでは、何度かおかしいよね、程度のさほど刺激的でないレベルで話をされていたので、特に気にも留めなかった。
当時はまだ、理沙を情報屋のひとりとしかみなしていなかった節もあったから、さほど親身ではなく、適当に聞き流していた。
けれど、その理沙の変化は私に目を見開かせることを促進したのです。
つまるところ私にとっては敵を討つという良い方向へ向かい始めていました。
そして、私は理沙に協力して、いろいろとあの敵の娘を追い詰める為に奔走しました。
ここで私は雇っていた探偵から来た情報を利用したのはいうまでも無い。
理沙は協力的且つ情報私に始終驚いていたが、あまり深く考えず私を利用することに決めたようでした。
私としてはあの敵の娘を殺した後、その母も殺さなければならない予定であるから、理沙に娘の件は引っかぶってもらい、すぐさま長野へ向かう、という計算があったのでそれはそれで好都合な事。
結果的に利害が一致した私たちは協力して様々な工作を行った。
理沙が兄である弘行と交わっていた、という情報も意図的にあの敵に流した。
かみそりの刃を下駄箱に仕掛けたり、椅子の捻子を緩めておいて、座ると椅子が崩れるようにしたり、そんな感じで。
あの敵のクラスメイトがあの女を苛めるように差し向けたりもした。
もっとも煽動をしていたのは私というより、理沙のほうだったが。
これだけの事をやったのだから、あっさり自殺してくれるのでは、などと淡い期待を抱いていたりもしました。
しかし、そんなこともなく、逆に弘行と敵が結ばれてしまった。
当然、自殺されてしまったら私としては不満足の極みには違いないのでしょうが。
しかし、それもこれも昨日までの話だ。
数分後に、理沙から連絡があれば、私も手はずどおり北方邸に向かい、拷問に参加する。
それで、一件目は終了。二件目へ移行する。

夏の風が私の体をかするように通り過ぎていく。
うっすらと汗ばんだ皮膚に当たる汗が少し冷たい。
人を殺す前の興奮が故なのか、夏の蒸し暑さの故なのか汗ばんでいた。
下着が皮膚につくような感覚が不愉快で嫌になる。
そんな時、右ポケットに入った携帯電話の受話器を耳に当てる。

258 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 01:57:17 ID:Fe03hxK+
その内容に私は耳を疑い、二三、確認してから、夜の漆黒を切り裂いていくように走っていく。
それにしても、衝撃の展開だった。
あの敵を守る為に、自らナイフをもって突っ込んできた妹の前に立ちふさがるとは―。
第一、打ち合わせではクロロホルムを二人に嗅がせ、北方は北方邸の離れにある隠し地下室で拷問死させる。
それが、いきなり襲い掛かることで、崩れてしまった。
理沙は逃げた北方を追っているという。
なんという蛮勇であろうか。兄も、妹もまた然り。
それにしても理解できないのは弘行の行動でしょう。
蛮勇を振りかざす事など決して美徳ではない。
そして、勇敢でもない。
そこまでして、あの生きるに値しない奴を守ろうとする理由がわからない。
まあ、弘行は出血はやや多いようだが、急所に刺さったわけではないから、別にたいしたことは無い。
せいぜい、あの敵を殺す際に利用するだけだ。
愛するものをずたずたにされていく様子を見せた上で、ほどほどに死なないような拷問を加え続ける上で彼は重要なスパイスになることだろう。

街灯も薄暗い、町の中でも外れのほうに血濡れのナイフが突き刺さっていた彼は横たわっていた。
理沙が決行するといっていた公園からはいくらか離れている。
そこに居た彼は息も絶え絶えであった。
理沙から多いとは聞いていたが、思った以上に出欠量が多いようである。
開いた傷口に右手を当て、出血を押し止めるような仕草をして、もう片方の左手はアスファルトの上にあった。
苦痛に歪む口元が非常に痛々しい。
そして、怜悧な月光が朱に染まったアスファルトを照らし、赤黒い液体をいやがおうにも引き立てた。
身を張って誰かが助けようとした代償が生々しくも、血だまりでもがき、臓腑を血に溺れさせていることなのだ。
それは凄惨にしてどこか神聖な光景。
少なくとも、先程の蛮勇という言葉は撤回するには十分なものでしょう。
もっとも、眼前の腹違いの兄に対する同情は微塵も生まれはしなかったには変わりなかったのですが。
理沙は常々、この兄の事を愛しているといっていたのを覚えている。
しかし、こんな状態の兄を見捨てていくということは、所詮彼女にとってその程度のものであるということです。
発言と行動が裏腹などといくらでもある。
けれども、人を殺してでも守りたい、と思うならあの女を取り逃がしてもこの哀れな兄を救うべきではなかろうか。

259 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 01:59:31 ID:Fe03hxK+
もっとも、眼前の腹違いの兄に対する同情は微塵も生まれはしなかったには変わりなかったのですが。

という、一文を省いてください。すみません、ミスしました。

260 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:00:30 ID:Fe03hxK+
「ううう……」
うめき声がする。私の存在に気がついたのだろう。
別段、身を隠すつもりなど無かったので、そしていずれにせよこの兄は北方邸に運ぶことになっている。
だから、敢えてこちらから声をかける。
「松本弘行さん?」
「た、助けてくれ……ごほぉっ」
苦しみ耐える表情で哀願する。
しかし、その言葉も咳と共に血を吐き出した事によって遮られてしまう。
「無理に話さないでください。大丈夫ですよ、助かりますから。」
所詮は他人事である私にとってこんな確証の無い事を言ったとしても良心は痛めることはない。
しかし、こちらとしては北方邸に連れて行くことが目的であるため、ここで出血多量で死なれてしまっては都合が悪い。
だから、話して出血されては困るので警告も発した。けれども、それを聞き入れないようです。
「た、助けて……くれ、しぐれ、をた、す、け、て……ごほっごほっ、し…ぐ……」
だから、すぐにまたしても血が押さえる手の間から染み出てきて、真っ赤に染まった口をさらに血で洗うことになった。
しかし、私はさっきから助けてくれ、という言葉は『自分の命』の命乞いをしているものとばかり思っていた。
けれど、この男は自分の命を捨てるつもりのようだ。
その代償としてあの女を救う為に。

何と状況認識能力に欠ける人なのでしょうか。
何と愚かな人間なのでしょうか。
何とおめでたい人間でしょうか。

あの女が私の母が置かれた状況と同じく、土壇場にありながら、ここまで誰かに守ってもらえているという不公平さや怒りのようなものを感じた。
しかし、その怒りを通り越して、呆れてしまった。
右ポケットの携帯電話を取り出すと、10桁の番号を打ち込んだ。
3桁ではなく、10桁にしたのは、私には時間が限られているからである。
警察を相手にすることで、復讐を完遂できないという間抜けな話を作ってしまうことになるのは嫌ですよね。
「もしもし、誰かに刺されたと思われる人がいるんですが……」

261 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:01:33 ID:Fe03hxK+
夜の闇の中、私は走った。
むしろ逃げていた。
私の家に無事にたどり着き、そして来るべき反撃の機会に備える為に。
それは、例えるならば、鬼ごっこのようなものだ。
それは、無言の中で繰り広げられる残酷な殺し合い。
青白い月の光があざ笑うように私たちに降り注ぐ。
当然、『待て』と言って私も相手も止まる訳が無い。
そして、後ろからやってくる追っ手は武器を手に私を殺さんと息巻いている。
自分の兄を刺しておきながら、しっかりと敵の私を討とうとしているのだ。
けれども、私とて防戦一方という訳ではない。
虎視眈々と反撃のチャンスを狙っているのだ。
驚いたことに、私の中で眠っていたはずの醜い憎悪という感情が再び目を醒ましてしまったようだ。
それは、至極当然。

目の前で弘行さんが刺されたのだから―。

私の生きる意味を無残にも壊されてしまっては、私とて彼女の事を許すわけにはいかない。
許す、許さないの範疇ではなく、今日までのありとあらゆる攻撃に対する報復として、愛するものを奪われた者の気持ちを解らせる為に、あの雌猫を殺す。
それで、私ごときの身代わりになってしまった哀れな彼へのはなむけになれば、彼を見捨てて逃げてきたことへの贖罪になるというのなら、今の私にはこれに替わる僥倖は無いだろう。
今のうちに、いくらでも追い詰めるものの心地よさを味わっているがいい。
彼女にもすぐに諦念の夜が訪れるのだから。


262 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:02:37 ID:Fe03hxK+
もう、私の家まで目と鼻の先だ。
その安心から一刹那の間、油断が生まれた。
後ろから、空を切る音がした。
そして、咄嗟に身をかわす。
振り返りざまに、閃きを発する白刃が見え、戦慄する。
雌猫が所持しているナイフが一本だとは誰も言っていないのだ。
振り下ろされるナイフを間一髪のところでよけきる。
家まであと少しのところだというのにも拘らず、こんなところで捕捉され戦わなければならない自分の運命を呪ったが、
そんな事を考える余裕を雌猫が繰り出してくる第二撃に備えることに費やした。
左右ランダムに振り下ろされ、皆一様にこちらに向けられてくるナイフを全てかわす。
理沙の体が小さく、力も弱いことが幸いしたようだ。
雌猫は振り上げ下ろされたナイフを逆手に持ち替えると、真正面の私に向けた。
そして、ナイフを握る手に力が篭る。
そのまま、私に向かって刺し貫くだけだろう。
相手の手首をすぐさま掴み、虚空に向かって振り上げ、ナイフを奪い取ろうとする。
雌猫も私の目的を理解しているらしく、乱暴に左右にナイフを持つ両腕を振り動かした。
抵抗の激しさはとても病弱な雌猫であるとは決して思えない。
けれど、腕を動かすことに集中していたが、その内面とは不似合いなまでに華奢な脚には意識が十分にいきわたっていなかった。
必死にもがく雌猫の左脛を思い切り蹴りとばす。
途端、雌猫は体勢を崩し、あっけなくも左に背中から傾いてしまう。
即座に私は両の腕に握られていたナイフを荒々しく奪い取る。
そして、雌猫はその場にしりもちをつくような形になってしまった。
芋虫のように雌猫は後ずさりし、顔を恐怖に歪ませた。

完全なる形勢逆転である。

武器を取り、地形効果を十二分に活かせる私の家で死闘を繰り広げる心積もりでいたのだが、王手積みである。
もはや、武器を取りに行く必要すらない。
ここで、止めを刺すことができる。
そう、それで良いのだ。それでこそ、弘行さんの犠牲が意味を持つのだ。
この害物を駆除すること―。
私が一番最初に考えた方法だった。けれども、あの時以来、一度もその方針を採ろうとはしなかった。
この方法が市場手っ取り早かったのにも拘らず、何故しなかったのか今になってみれば疑問である。
私は血に穢れておらず、寒々しいまでの清澄な金属光沢を持つナイフを月の光にかざすように振り上げる。


誰もが、ある一転を除いた、この状況を目にしたならば、完全に北方時雨の圧倒的優勢であると判断するだろう。
時雨は理沙のナイフを奪い取られた後の右腕が右ポケットに入っていることに気づかなかった。
気づいていたとしても、あまりにも無頓着に過ぎたようだ。
唯一ついえることは、松本理沙はこんな絶望的逆境にいたっても、冷静であった、ということであろう。
そして、理沙の中で流れる時間は決して止まることは無かった。
時雨がナイフを理沙の首元につき立て、頚動脈を切断しようとした刹那、完全に理沙は動きを読みきっていたかのように、悠々と身をかわしながら、立ち上がる。
そして、アスファルトの上に座り込んでいたのは理沙ではなく、時雨の方であった。
時雨は首を左腕で押さえて苦しんでいた。


263 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:04:18 ID:Fe03hxK+
そう。理沙は右ポケットに入っていたクロロホルムを時雨にかけたのである。
散布した後に転がった薬瓶の転がる音が空しく虚空に響いた。
時雨はまさか、理沙から渾身の反撃を食らうとは予測しておらず、諸に瀬戸黒の髪と白磁のような肌とにかかってしまった。
理沙は左ポケットから気化したクロロホルムを吸ってしまわないように、化学の実験のときにいつも使っているマスクで口を覆う。
と、同時に双眸を時雨を見下ろすように向ける。
そして、そこまで保たれていた静寂を破った。
「あはははははは、北方先輩。いや、被告人。ここまでですよ。被告人は王手積みなんですよ!」
「私のお兄ちゃんを汚したからこんな事になるんです。」
「さぁ、先輩、最後くらい潔くしたらどうですか!」
しかし、時雨は勧告に従うこともなく僅かではあったが笑ってすらいた。
時雨は右手に未だに持っていたナイフを道路脇の人家に向かって投げた。
時雨は理沙には自分を殺すための武器がもう無い、そう判断していた為、自分が相手を刺し貫くより、逆の場合が高い唯一の武器を投げ捨てたのである。
それは、賢明な判断であっただろう。

しかし、そんな事は灯篭が鎌を振り上げたに過ぎないことだった。
理沙は畳を縫うそれのような大きさの針を手にしていた。
そこには、かつて彼女が生成したアトロピンが塗られていた。
針の反射するギラギラとした光が理沙の殺意の程をあらわしているようだった。
もはや、万事休すであると思われた。

「させません。」
そこで聞こえた声は時雨にとって聞き覚えのあるものだった。
けれど、それと同時に背中に強い衝撃を感じ、意識をどこか遠くに飛ばされたため、それが誰のものであるかを確認することはできなかった。
「うふふふ、スタンガンの電気ショックをまともに食らったら、動けなくなるのは当然、よね。」
そう嗤う声は、時雨にとって救世主だとすら思われたその声の主は、村越智子のものだった。
傍で唖然として突っ立っている理沙に声をかける。
「ねえ、理沙。どうしてお兄さんを路上で刺すことになったり、この女を計画通り、動けなくして北方邸まで連れて行かなかったの?」
「……お兄ちゃんを盾にして逃げたから殺したくなったけど、それが駄目なの?」
憮然とした表情で智子に返答する。
「まあ、気持ちもわからないわけじゃないけれど、ここで殺すより、計画通り苦しめて殺したらどうなの?」
「………。」
「まぁ、いいから理沙は両足を持って。私は両腕を持って運んでいくから。」
そういうと、気絶してぶらりと垂らしている時雨の両腕を持つ。
理沙もしぶしぶ、これに従い乱暴に持ち上げて、もう100メートルと無いであろう北方邸へと運んでいく。


264 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:05:35 ID:Fe03hxK+
十数分後、彼女らは北方邸の地下の牢獄のような一室にいた。
そして、そこに北方時雨も横たえさせた。
それから、眠ったままの時雨を古ぼけた椅子に座らせ、縄で拘束し、殺害に必要なアイテムを準備する。
しかし、その準備の間、ずっと理沙の表情は怒りの篭った表情だった。
地下室ゆえの湿度の高さやかび臭い匂い、そしてほの暗い負の環境が理沙を不機嫌にしているわけではなかった。
敵に止めを刺そうとするのを智子に止められた事によるものだった。
と、同時に理沙は湧き上がる罪悪感から、何度となく弘行の病院搬送を指示した隣の共犯者にその安否を尋ねた。
智子としては、無計画に兄を刺しておきながら、何の応急処置も施さず、その安否を女々しく聞いてくる理沙を軽蔑し、辟易していたが適当に理沙に相槌をうつことにした。
というのも、智子としては殺さなければならないターゲットはあくまでも二人であったからである。

数分後、やすやすと彼女らの準備は完了した。
けれど、それはナイフで何度も刺すという時雨自身が想定していそうな殺し方ではなく、特殊な殺し方であった。
目に目隠しをして、視界を奪い、拘束することによってからだの自由を奪い、正常な思考が働かないような不快な環境に入れる。
その上で、人間の血液がどの程度失われる事によって、死に至るのか、ということを時雨に話しておく。
そして、時雨の足か腕に適宜、強い衝撃を与え、そこに温水を少しずつかけて、血液が出ているという暗示をかけ、やがて致死量の血液が出きったのだ、と告げることによって狂乱の末、ショック死させることができるという。
いかに物理的苦痛を与えるか、ではなく、精神的苦痛を与え、最後の最後まで怯え、狂乱させることができるか、それを追求したのだ。
と、同時に殺人であることを見極めさせるのを遅くすることができる、という意図から、智子にとって都合が良かった。
それで、時雨は目隠しをされ、身体を芋虫ほどにも動かすことができないように、胴体と四肢を椅子と縛り付けられたのだ。
いまや、お膳立ても完了した。
後は時雨が目を醒ますのを待つばかりであった。

「ねえ、智子。いつになったら、こいつ、目を覚ますの?」
「電撃もそんなに大きかったわけじゃないから、もうすぐだと思うけれど。」
そんな会話をして手ぐすね引いて共通の敵である北方時雨が目を醒ますのを待っていたが、
彼女が目を醒ましたのはそのすぐ後だった。



265 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:06:40 ID:Fe03hxK+

誰か女の子が話す声が聞こえてくる。
頭にもやがかかったような感じがし、視界も真っ暗で本来見えるべき光景も何も見えない。
徐々に体の節々の痛みが温かみを持った生の感覚として感じられてくる。
そして、身体を意のままに動かそうとするけれども、理由がわからないが何故か動けない。
身体を動かすたびに足や腕の部分的箇所に痛みを感じた。
視界が真っ暗のまま、自分を拘束したであろう女の声が聞こえる。
「北方先輩、お目覚めですか?」
その声が紛れもなく、松本理沙のものであることを悟り、それまで僅かながらあった冷静さが霧消した。
無駄だと心のどこかではわかっていながら、抵抗をする。
足や腕に力を込めて動かそうともがいている姿を見て、ことのほか気に召したのか理沙と智子は哄笑した。
「あはははっ!先輩、そんなに怯えちゃって。心配しなくていいですよ。別に先輩を誰かに強姦させるとかしませんから。ただ、死刑を執行するだけですよ。」
「先輩はお兄ちゃんを強姦したけれども、かといって、私はそんなこと恥ずべきことしませんよー。」
続けて言う理沙の声に凶器染みたものを感じる。
と、同時に何も抵抗することができない自分に苛立ちを感じた。
「もっとも、北方さんとしたい、なんて考える物好きはいないと思いますが。」
清澄というよりは怜悧冷徹と形容したほうが正しい突き放すような声が聞こえる。

それが誰のものであるかはわからない。
しかし、すぐに相手も自分の存在を理解させる為に声色を変えた。
そしてそれが、自分が逆スパイとして利用しようとした村越智子のものであることがすぐにわかった。
偽の情報を流したというあたりから、時雨は疑いを抱いていたが、まさにその予想通りとなってしまったのだ。
そして、手順どおり理沙と智子は三回も三分の一の血液が体外に出ることで死に至ることを話して聞かせ、処刑が始まった。

突如足に電撃を受けたような衝撃を感じた。
そして、すぐに感じられる生暖かい血液が独特の粘性を持って、少しずつ肌を伝って落ちていく。
私は一分も勝ち目は残っていないことを十分に理解しながらも、じたばたと四肢を動かそうとする。
「あはははっ、そんなに体をじたばたさせてたら、あっという間に血液が出て死んでしまいますよ?」
心なしか、足を伝う血液の量が多くなってきたように感じられる。
流れ出る血液、そして迫り来る死に私は恐怖感を抱いた。
ここから、逃げだしたい。
死にたくない。

けれど、どうして?
生きていても、ずっと苦しんできただけだった。
これからやっと幸せになれると思っていたのに、弘行さんが死んでしまって、もう先が何も見えないのに。
僅かだったけれど、弘行さんと過ごした日々は楽しかった。
あんなに生きることが楽しい、幸せであるとは思わなかった。
弘行さんは私にもまだ幸運な未来が待っているといっていた。
だから、それを守りたいのだ、と彼は言ってくれた。
だから、私は生きようと努力した。
けれど、それはこうして叶わない夢となってしまった。

もはやどもることなく、ナイフのような鋭利さをその言葉に含ませて村越智子は私に告げる。
「松本弘行は死んだ」と。
これほどまでに私の事を思ってくれた彼の最後の願いを私は聞くこともできなかったのだ。
「弘行さん…ごめんなさい。」
涙が流れる血液の勢いなど比にならないほどに流れ出る。
余裕を見せていた理沙が泣く声が狭い部屋に響き、何かを拾い上げる音がした。
「お前のせいで!お兄ちゃんがッ!」
「どんなときも私を大切にしてくれた、お兄ちゃんがッ!」
「それから、お兄ちゃんの名前を呼ぶな!お兄ちゃんをまだ穢すつもりなのか!雌猫がッ!」
理沙はそう言いながら私を四回ほど部屋にあった角材で殴った。
別のところからも出血を感じる。その分だけ、死期が近くなることだろう。
痛みは確かに感覚として感じるが、弘行さんを見殺しにした私には丁度良い罰だったのかもしれない。
けれど、弘行さんとの事はたとえ死んだとしても絶対に忘れたくない。
それに、弘行さんに迷惑はかけてしまったけれど、謝るよりも感謝したいと思う。

266 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:08:42 ID:Fe03hxK+
「もう、四分の一位、血液が出ちゃったみたいだよ。」
そういう理沙の声が聞こえる。
「……。」
何も反応しない私に怒りを感じたのか、理沙は罵声を浴びせながら、先程の角材で後頭部を殴ってきた。
精一杯、冷静に振舞おうとしているが、結局は流れ出る血液と同じように湧き上がり続ける恐怖は拭い去ることができない。
現に私はこれまでに無いくらい、震えている。
さっきから震え続けていることを罵倒する二人の声も聞こえてくる。
確かに怖いけれど、信じていれば、きっとどこかで弘行さんと会えるかもしれない。
そして、もっと、幸せな出会い方で―。
後頭部を殴られたショックか、血液が喪失していく為か薄れゆく意識の中でそんな事を願った。

「あーあ、もう、三分の一、血液が出ちゃったみたいだよ。」
理沙は言った。
すると、今まで震えて恐怖に襲われていることが誰の目にも明らかであった彼女の動きが止まった。
生暖かい大量の液体をゆっくりと流し続けていた智子は液体の入った容器をその場に置き、心臓の鼓動を確かめる。
確かに止まった事を確認すると、理沙に目で合図する。
智子は殺害の原因がわかりにくくできたことに満足した表情で、いろいろな殺害の器具を片付け始める。
理沙も片づけを始める。
兄が死んだことを受けて、とめどなく流れ出る涙を押し止めることすらせずに。
たいした量も無い器具を二人で片付けるのはあっという間だった。

これで全てが終わりであったはずだった。
しかし、理沙は不愉快であった。
精神的苦痛を与えて死なせたはずの時雨が殺害した自分よりはるかに落ち着いており、あまつさえどこか笑みを浮かべている表情が気に障ったのだ。
理沙はその部屋にあった刃渡りが長く肉厚のナイフを何度も何度も事切れた時雨の骸に突き立てた。
「あはははは、何でお前は笑っているんだ。苦しんで死んだはずなのに!あの世でお兄ちゃんに会えないようにずたずたにしてやるッ!」
「私、お兄ちゃんが好きだったのに!こんな雌猫ごときに掠め取られて!許せない!許せない!」

智子はそれにすぐに気がついた。と、同時に計画を何度となく狂わせた理沙への怒りが抑えられなくなっていた。
第一、智子にとって復讐はまだすんだわけではなかったのだ。
自分の母を殺した本命が残っているのに、時間稼ぎの工作を台無しにされてしまったのだ。
そこで、智子は咄嗟に理沙に罪を全て着せることにした。
智子は後ろから理沙の腕を掴むと、そのナイフを理沙の心の臓に向かって突き立てた。
多量の血が渋き、地下室の薄汚れた壁にかかる。
智子は返り血を浴びて朱に染まった上着を脱ぎ、殺害器具の入っていた大袋の中に一緒に入れる。
そして、村越智子は北方邸を後にした。

267 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:10:03 ID:Fe03hxK+
夕方の茜色の光が物悲しく感じられる。
晩秋の日光は照っている時間も短く、光の強さも随分弱い。
冬の到来を告げているかのようにどこか陰鬱である。
動かない足の代わりに車輪を繰って、庭の池沿いにぐるりと回って、家の庭に100年近く生えているという大銀杏の前に来る。
ひゅう、ひゅう、と乾いた音を立てた風が時折吹いて、枝を叩く。
そのたびに、はらり、はらり、としわだらけの葉を散らしていく。

丁度、こんな陽気の日に私は病院を退院した。
指を折って、それから過ぎた年月を数える。
そうか、もう、あれから8年も経ったのか―。

私が、そして彼が殺されたはずのあの日―。
幸運にも、出入りしているお手伝いさんがやってきた。
そして、開け放たれた地下室の扉を不審に思い、中に入ってみたら私が倒れているのを発見したという。
その段階で私は、死亡していたわけではなく、仮死状態にあったという。
お手伝いさんは病院へ通報し、すぐさま応急処置が取られたので、私は一命を取りとめた。
ただ、心臓が止まっていた時間が少し長かったのが理由か、後頭部や頭を殴られた事が原因か、
良くはわからないが両足を自分で動かすことができなくなってしまった。
だから、それ以来、私はこうして移動するにも車椅子に頼らざるを得なかったのだ。

私が目を覚ました日、最も気になったのは自分の体がどうとか理沙や智子がどうなったか、ということではなく、弘行さんがどうなったか、というただ一点だった。
私は看護婦さんに何度となく、弘行さんの状況を尋ねてみたが、なかなか教えてくれなかった。
すぐに彼が生きていることはわかったが、私と同じ病院に搬送されたのにも関わらず、彼の居場所を掴むことができなかった。
入院してから、数週間をただ弘行さんの事ばかりを考えながら、けれども無為に過ごし続けたが、全快した父がある日、私の元に見舞いに来た。
その時に私は父から様々な話を聞き、話し合った。


268 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:11:43 ID:Fe03hxK+
村越智子という子は私の母と結婚する前に、付き合っていた女性とできた子供であること。
その智子が母の優衣と松本理沙を殺害し、警官に逮捕されそうになった際に、理沙から奪った薬で二名を殺害したこと。
そして、その智子の母親は私の母である優衣に殺されたこと。
それを理由として、理沙の私に対する憎悪を利用して、今回の復讐劇を成功させたこと。
母の私への虐待とその事とをずっと悔やみ続けていた、ということ。
最後に、父がもうそう長くないこととこれからの事について―。

父は私と弘行さんの仲を認め、これからの事について、いろいろと私に忠告をした。
それは今思い出せば、さながら、遺言のような感じであった。
一つ一つ話を聞いていくうちに父が私に憎悪や負の感情など決して抱いていない事がわかった。
いつだったか、弘行さんが私に父のとの関係についていろいろと話をされたことがあった。
内心、詳細を弘行さんが知らないのだから、という気持ちもあり素直に取ることができなかったが、この時にようやく父と和解できたような気がする。
そして、父はその年の末に急死してしまった。
一通り、話しておくべきことを私に話した後、父は弘行さんの居場所をこっそりと教えてくれた。

すぐに、私は車椅子を動かして、弘行さんの元へと向かった。
彼はその時異常なまでに消沈し、さながら魂の抜け殻のようであった。
表情は無表情でもはやその変え方すら忘れ去ってしまったかのような感じであった。
そう、私の弘行さんに会う前とあまりにもそっくりな状況だった。
彼は私の姿を確認すると、一瞬だけ頬を緩ませてくれたが、すぐに車椅子の存在に気がつき、再び申し訳なさそうな表情に戻ってしまった。
それから、何度となく私は彼の元を訪れた。
けれども、なかなか前の彼のように戻ってくれなかった。
それから二ヶ月程度で私たちは退院し、何事も無かったかのように、学生生活を送ることになった。
いじめは惨劇の壮絶さを車椅子に乗った私と性格が変わってしまったように見えた弘行さんとを目の当たりにしてすぐさま消えうせてしまった。
私は彼を家まで迎えに行き、私の作ったお弁当を一緒に食べ、とりとめもない話をする。
それはいたって普通の、今までどおりの生活に戻ったはずだった。
私は積極的にあれやこれやと弘行さんの気が晴れるように努力したが、彼の陰影は消えることが無かった。
そして、ついにある日、自殺未遂を起こした。
幸いにも実際に決行する前に私が発見し、思いとどまらせることができた。
その時の彼はあのまさに私が自殺をしようとした際にあまりにもそっくりであったのに驚きを隠せなかった。
おそらく、優しすぎる彼のことであろう、理沙を死なせてしまい、守ろうとした私まで半身不随になってしまったのに、
自分が五体満足に生き残ってしまった事に罪悪感を感じているのかもしれない。
けれど、そんなことは露ほども気づかないふりを私はした。
その後の必死の説得と時間の経過によって、弘行さんは学年が替わるころには立ち直ってくれた。

269 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:12:31 ID:Fe03hxK+
私と彼は数年で年齢的に結婚が認められる年になり、すぐに結婚した。
私にとって、ようやく訪れた本当の意味での幸せだった。
それから大学へ進学し、私は車椅子ゆえに苦労を強いられたが、ずっと彼に助けられ続けた。
そして、弘行さんは卒業後、今は専務が社長となっている父の会社に入社し、我武者羅に働いている。

彼は車椅子の私を見ると時にどこか悲しそうな申し訳なさそうな表情をしたが、そんな時は彼を強く抱きしめてあげる。
あなたは悪くないのだと。
私の傍にいるという約束をこれほどまでにきちんと守ってくれているではないか、と。
私は彼とずっと一緒に居て、幸せを享受する為ならば、自分の両足の犠牲、程度厭わない。
そのためならば、私は何だってしただろう。
ずっと、写真の中の彼だけを支えにしていた昔から考えれば、その程度のものを代償にして、得ることができた事は、ありがたく感じるくらいだ。
会社に入社してから何度か、弘行さんは自分が生き残ってしまったことは間違いだと漏らしたことがある。
学生時代とかわらずに愉快にも冗談を言って私を楽しませてくれる彼の豹変を私は心配した。
おそらく、他の社員から何か言われたのかもしれない。
私の目の前にそんな事をするものが居れば、容赦なく矢を射掛けるくらいはしただろう。
それはさておき、数年前に心配した彼の本心をその発言から窺い知る事ができた。

弘行さんはいまだ、あのことを悔いているのだろう。
しかし、彼の言うように生き残ったことが罪だとすれば、私だって生き残った人間なのだ。
私とて罪であろう。
特別に悔恨の念など抱くことは無いが、優しいが上にも優しい弘行さんの見方によれば、私は理沙を殺したとも考える事ができる。そう、考えるならば、私とて同罪である。寧ろ、私のほうが罪は重いかもしれない。
だから、弘行さんはそんな事を心配することは無いのだ。
傍に居て幸せをくれるあなたを私は守ってあげるから―。
そして、もしそれすらも辛いならば、もう何も考えることは無い。
私と堕ちて行けばよいのだ。
堕ちたままでいいのだ。彼が苦しむ姿を見るくらいなら、堕ちたままでよい。
それによって、私は弘行さんと結ばれることができたのだから。


270 名前:和菓子と洋菓子[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:13:29 ID:Fe03hxK+
あの真紅の装丁の本の結末は、ヒロインが失明し、想い人と結ばれる事なく悲劇的に終わるのだ。
しかし、想い人である、王子はヒロインの失明を聞いて、自分を責め、最終的には自殺をする。
ヒロインもそれに従って、自殺をするのだ。

けれども、私は足の自由と罪悪感という代償と引き換えに、想い人の弘行さんと結ばれたのだ。
きっと、王子とヒロインが結ばれたとすれば話の結末も違ったものだろう。
私もお話の中のヒロインも自殺という思い切った方法を取ることができるのだ。
その力を精一杯使って、幸せを享受することだってできる。

門が開く音が聞こえた。
今日は私の誕生日なので、弘行さんは早く帰ってくるといっていた。
門のほうへと車椅子を動かしていく。
手にケーキを持ち、スーツに身を包み、優しい表情をこちらに向けてくれる、世界でたった一人愛する人がそこにはいた。
「ふふ、お帰りなさい、弘行さん。」
「ただいま、時雨。」

271 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 02:15:58 ID:Fe03hxK+
以上です。
誤字やミスが多くて申し訳ないです。
ずいぶんと稚拙な文章でしたがそんな文でも読んでくださった方に感謝します。
ありがとうございました。

272 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 04:09:37 ID:y4ORv37q
>>271
GJ!!だがね

273 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 06:54:44 ID:30A4t5LB
目の前で完結したの見て、ついに読み専やめてしまった。
最後の『一緒に堕ちていく』のくだりで時雨の内面に封印されたヤンデレがまだ生きていることが確認できた
なにはともあれ、GJ!!

274 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 07:36:09 ID:vobOCk3D
これは『相棒』だな!
GJ!

275 名前:ヤンデレマシン[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 07:56:49 ID:eYwl8cbQ
ふと思いついたネタができたので2レスだけ使わせていただきます

「お目覚めの時間であります」
何時もどおりの時間。私は御主人様(マスター)を起こすために部屋へ行く。
「……おはよう。エイミー。」
御主人様は私の顔を見ながらそう答えてくる。
私の名前はエイミー。御主人様のお母様に作られた女性型ロボットだ。
お母様は死ぬ前に御主人様を守るように命じられた。
「朝ごはんができております」
御主人様は間食はしない。何時ものように健康チェックを行い、異常が無い事を確認する。
「行ってらっしゃいませ」
学校へと見送り、私は家の清掃を行う。
台所のゴキブリは全て退治した。布団についていたノミも既に死滅させている。
私は御主人様が何処に居るのかを確認しながら、帰りを待つ。

276 名前:ヤンデレマシン[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 07:57:25 ID:eYwl8cbQ
御主人様には3人恋人がいたができた。
一人目は、軽薄そうな女性で何人もの男とできていた。
経済的リスク高。そう判断した私は、彼女を『排除』した。
二人目は、なよなよした男だった。
社会的リスク高。そう判断した私は、彼を冤罪で警察に突き出した。
3人目は、今付き合っている女性だ。
なかなかに理解のある人で彼女なら彼と上手くやっていけると思う。
だが、もし御主人様へと危険が及ぶようならば……

私は、腕に装備された暗器の確認を常に怠らない。
私は、人を排除する手段を常に確認する。
なぜなら私は機械だから………。

☆  ☆  ☆

すいません割り込んでしまいました。

277 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 09:14:05 ID:lqMPvANH
>>271
最終回でドンデン返しが三回ぐらい起きた感じ
驚きっぱなしだったけど最後は二人が普通にHAPPY ENDでよかった。
完結乙でした。

>>276
発想は好きだけど、これだけだと主人にデレテるのか
使命に忠実なだけなのかが分からないのが惜しいな。

278 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 10:13:23 ID:sUFvFUO0
>>276
マシンの設定もいい感じだな
だがお眼鏡に叶う女性なら許すって表現だと、制作者(母)に忠実なマシンの域を出ない気がする

279 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 21:25:55 ID:S5Y59o8v
>>271完結お疲れ様です。
あーなんか凄すぎて、逆に具体的な賛辞が出てこない。
とにかくGJとしか言えない。初めてだわこんな感じ。

280 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/05(金) 23:08:52 ID:LXpg15JV
>>271
GJ!良かった。
でも、何だか最後の展開が速すぎた気がするなあ。

281 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/06(土) 00:45:07 ID:TD6otezU
>>271
ううう・・・鬱だ
しかし乙

282 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/06(土) 01:27:34 ID:ZGsf1hoQ
>271
大作お疲れ様でした! いや、どうなることかと思いましたがハッピー風味エンドなので嬉しかったです。
>276
流石に投下時期が悪かったやも。設定は膨らませられそうなので期待。

283 名前:名無しさん@ピンキー[ae] 投稿日:2007/10/06(土) 04:02:16 ID:0GT4CRN5
保守

284 名前:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/10/06(土) 18:12:50 ID:+StY7qvv
大作の後ですが投下します。

285 名前:大好きにはなれないね(仮題) ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/10/06(土) 18:15:12 ID:+StY7qvv
昔のドラマの主人公にオメダというあだ名のキャラクターが居た。
周りの奴らに「お前はダメだ」といわれ続け、「お前はダメだ」を略して「オメダ」というあだ名になったそうな。
はん。
まさに俺じゃねーか。
ジリリリリンと鳴った目覚まし時計を、止めると俺は万年床となっている布団から体を起こした。
時計を見ると午前十一時。
……、んー、俺は確か八時にセットしてたはずなのにな……。どうやら、無意識のうちに止めまくってたみたいだ。
「ねみぃ……」
昨日遅くまで深夜ドラマ見てたからなぁ。NHKめ、なにもこんな深夜にアルフの再放送を5時近くまでやってんじゃねぇ。一話二〇分足らずだからつい次も見ちゃうんだよ。
寝癖だらけの頭をぼりぼりと掻いて立つ。部屋の畳に散らかったリモコンやゴミを押しのけて、窓まで歩いてカーテンを開く。頂点近く昇った太陽の陽で寝起きの瞳にはまぶしすぎる。
「……えーっと」
なんだっけな。俺、何で目覚ましなんてかけてたんだっけな?
「それは私を家に呼んだからじゃないの?」
「うわっ!!」
突然、背後から話しかけられて俺は思わず大声を出して飛び上がってしまった。途端ごつんとガラス窓に頭をぶつける。いてて。
「起きたかしら?」
「起きてますよっ。つーか、居るなら居るっていってくださいよ」
「居るわよ」
「今言わないでください!」
振り向けば、そこにはエプロン姿の眞子さんが立っていた。ゴミだらけの床の上も平然と長いニーソックスで踏み分けている。
こんな部屋で涼しい顔して仁王立ちしている姿はまるでゴミ溜めの中に咲く一輪の胡蝶蘭のようだ。胡蝶蘭がどんな花なのかは知らんが。
「いつから来てたんですか、眞子さん」
「その前に、その下着からはみ出してるものをしまってくれないかしら?」
眞子さんの冷たい視線が俺の股間あたりを直撃している。俺もそれにつられて視線を落とせば、まぁなんというか。トランクスにタンクトップという格好で寝ている俺が悪いんだな。見事にトランクスの裾から球体が覗いていた。
やっべぇ。視線が刺さってる!
「すいませんっ。眞子さん!」
「すぐにズボンでも履いてきたら?」
言われなくてもすぐしますっ! 俺は散らかっていた洗濯物の中からGパンを探しだすと、それをいそいそと履く。ついでに隣にあったシャツも掴んで着込む。一番したのボタンが外れてるけどいいだろ。
俺がきちんと着込んだのを見ると、眞子さんはやれやれといった風にため息をつくと、台所へ戻っていった。
そうだったなぁ。俺はようやく思い出す。今日は眞子さんが来るんだった。それでこの部屋を大掃除しようと思って、早朝に起きようとしてたんだったわ。やっぱり昨日のうちにするべきだったなぁ。
っていうか、台所! 台所は確かカップラーメンの空き容器とかでいっぱいだったはず! そんなところで眞子さんはなにか作っているのか!?
おそるおそる、引き戸で区分けされた台所を覗いてみる。
……なんだこのうまそうな匂い。味噌汁……。そういえば一人暮らしはじめてから味噌汁なんて食ってなかったなぁ……。
見ればアレだけ酷かった台所周りがきれいに片付いていた。いや、床にたまったゴミ袋とかはそのままだけど、少なくとも流しまわりはあれだけあった汚い割り箸やプリンのカップはすべてきれいになくなっている。
そんな台所でとんとんと包丁で音を奏でる眞子さんの後姿。なんかすっげぇキュンとくる。
真剣な表情で俺のための味噌汁を作る眞子さん。おでこでかっちりと一直線に切られた前髪に覗くすらっとした高い鼻とふさふさのまつげ。すらりと伸びた首筋、後ろでまとめた髪と底から覗く白いうなじ。
視線を降ろせばエプロンを押し上げる双球がぷるんと自己主張し、さらにその下にはひざ上まであるニーソックスがぱっつんぱっつんの太腿をさらに艶っぽく際立たせている。
「眞子さん。朝メシつくってくれてんですか?」
「ええ。どうせあなたまともなご飯食べてないでしょうから。迷惑だったかしら……?」
「いえ、ぜんっぜん! 嬉しいですよっ。あ、でも材料って……。その前に鍵は」
「鍵は開いてたから勝手に入った。冷蔵庫開けたらなにもありゃしないじゃないの。だから材料は全部私が買ってきた」
「まじすか」

286 名前:大好きにはなれないね(仮題) ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/10/06(土) 18:15:53 ID:+StY7qvv
冷蔵庫を開くと、中には普段めったに買わない食品や納豆、野菜、牛乳、お茶パックがいっぱい詰まっていた。うえぇ? 確かこの冷蔵庫は昨日まで丸大ハムしか入れてなかったはずだぞ?
「コンビニ弁当や惣菜ばっかりの食事だったみたいね。栄養が偏るわよ」
「は、はぁ」
「私がいくつか必要になりそうなもの入れといたわ」
「は、はい。さーせん」
眞子さんの好意に俺は返す言葉も無かった。牛乳って、パックじゃなくて県内の有名牧場で直売されている系の瓶入り牛乳だよ。こんなものスーパーでも通常の倍近くの値段だぞ。
封を切って直接口をつけて一口飲んでみる。うん、こくまろであまーい口どけだ。
「私にも」
「はい」
眞子さんに瓶を渡すと、俺が口をつけた牛乳瓶になんの躊躇も無く口をつけてごきゅりと飲んだ。
「間接キスですね」
俺がニヤニヤしながら言うと、
「馬鹿」
眞子さんは牛乳片手に頬をすこし桃色に染めて照れながら言った。

なにか手伝おうかと思ったけど、台所に居る俺に眞子さんは邪魔だといわんばかりに動き、手で自分の部屋へ戻れとおっしゃられるので俺は仕方なく自室へ戻った。
とりあえず、早朝起きてするはずだった、部屋の掃除でもしようかとあたりを見渡す。まずこの万年床を片付けないとな。相当中の毛布が寄っている布団を折りたたむ。これを……えーっと押入れの中に。
……待て、押入れの中はたしか俺のエロい漫画がかなりの量あったはず。いまここでむやみに押入れを開けてばっさり眞子さんに見られたら何言われるかわかったもんじゃない。布団ははじっこに寄せとこう。
それと、そうだ。ちゃぶ台ちゃぶ台。眞子さんがせっかく朝飯作ってくれたのにいつものとおり床に置いて食うなんて出来ないだろ。ちゃぶ台を出さなきゃ。
ちゃぶ台は壁に立てかけてあるものを引っ張り出す。側面が見事にほこりを被ってやがる。ふうふうと息を吹いてほこりを取ると、真ん中へちゃぶ台を置いた。
あとはいくつか、眞子さんが座れるスペースを……。なんとかものを寄せて……よし、これくらいならいいだろ。
と、ちょうどいい具合に眞子さんが台所から顔を出した。右手と左手には味噌汁が二つづつ漆塗りお椀に入っている。漆塗りおわんなんてうちにあったっけ? あ、これも眞子さんが買ってきたんですか。
「眞子さん。料理並べるのぐらいは手伝いますよ」
「いえ、いいわ」
「いいからいいから」
俺は味噌汁のお椀を無理やり眞子さんから奪うと、いま並べたちゃぶ台へ味噌汁を置いていく。あ、そういえば箸も居るな。箸はたしか割り箸が二つ残ってたからそれを……。
「ちゃぶ台は拭いたの?」
……拭いてねぇッス。
「もう、しょうがないわね」
俺の無言を肯定と受け取った眞子さんは今並べた味噌汁お椀をまたちゃぶ台から取り上げる。台所まで一度戻り、今度は布巾を持って入ってきた。
俺の目の前で眞子さんはちゃぶ台をきゅっきゅっと拭き取っていく。全面拭いた布巾の表面を眞子さんは無言で見せる。情けないくらいグレーだった。

眞子さんの作ってくれた料理は、味噌汁にアジの干物に野菜サラダ。白いふっくらご飯には黄色のタクアンがきれいに添えられている。
時刻はもう12時前だというのに朝飯定番メニュー。なんだか変な感じがした。まぁ俺は休みの日はほとんど朝が菓子かカップ麺だから、普段と比べればコレはとてつもなく立派な真人間的食事なんだけどさ。
「なんだ、もしかして朝はパンのほうがよかったのか?」
「いえ、頂きます」
二人で向かい合って食う朝食。料理はどれもめちゃくちゃ美味かった。

287 名前:大好きにはなれないね(仮題) ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/10/06(土) 18:16:46 ID:+StY7qvv
流しで眞子さんがお皿を洗っている。皿洗いぐらいは手伝おうとしたがこれもやんわりと拒否された。
だから俺は部屋でぼーっと写りの悪いテレビを眺めていた。ノイズまじりの画面と片方壊れたスピーカーから流れる出演者たちの声。拾い物だから仕方が無いとしても、その音は雑音に近い。
俺はなんだろうなぁ。と一人で自問自答しようとして……、面倒くさいからやめた。
「生気の無い顔して、どうかしたの?」
気がつけば、エプロン姿の眞子さんが隣に来ていた。
「あ、いえ。なんでも……ないです」
「ふぅん。そう」
しばし沈黙。
「眞子さん、そういえばメガネ、どうしたんですか? 今日は無かったから一瞬誰だかわかんなかったですよ」
「へぇ……」
またしばしの沈黙。あれ? なんで、沈黙なんだよ。俺。いつもならもっと盛り上がるだろ?
「ああ、そうだ。眞子さん。今日はどこへ行きますか?」
俺は沈黙を打ち破るように、わざと大きな声で眞子さんに話しかける。そういえば本来の目的をすっかり忘れていた。今日は俺と眞子さんのデートの日なんだ。
待ち合わせはどうしようと話してたときに、眞子さんが俺の部屋っと言ったから、俺の部屋になったわけで。
ぶっちゃけ、料理とかは想定外だったんだよなぁ。
だから、本来の目的であるデートに話題を持っていく。
が、しかし、眞子さんは静かに首を振った。
「ん? どうしたんです?」
「デートよりやらなくちゃいけないことがあるわ」
俺は頭に疑問符を浮かべる。眞子さんはエプロンのポケットから一枚、水色のナプキンを取り出した。それをまとめた自分の頭にかぶせる。
「眞子さん?」
「掃除」
「え?」
「そ・う・じっ!!」
真剣な表情で語彙を強め言い放つ眞子さんに俺は思わず肩をこわばらせた。改めてみれば、眞子さんの頭のナプキンにエプロンって確かにまるっきり年の暮れの大掃除の時の格好だ。
「え、掃除って。デートは……」
「あなたの部屋がこんなに汚いとは思わなかったわ。デートよりまずは掃除! それとモノを片付ける!」
え、ええ?
「掃除っていきなり言われても……それに片付けって今さっき……」
「それは片付けじゃないわ。ただ物を寄せただけでしょう! これから毎日来ることになるんだから、この部屋を徹底的に綺麗にするわよっ」
ん? 毎日……? いま、なんて言っ……、
「ほら、この布団とか。折りたたんでただ部屋の隅に置いただけじゃない! こういうものはちゃんと押入れに収納するの」
そう言って、眞子さんは俺が寄せた布団を両手で抱え上げると、そのまま押入れに入れようとする。あ、待て! 押入れには俺のエロ漫画が!

ガラガラ。

どさどさり。

が、一歩遅く眞子さんは押入れのふすまを開けてしまった。しかも運の悪いことに積み上げていたエロ漫画が押入れのふすま側に重量をかけていたため、俺のコレクションの数冊が見事に押入れから転がり出てしまった。
少年コミックとはちょっと違う、ちょっぴり大きめA5でピンク色と肌色と白濁色がふんだんに表紙に使用された本が三冊ほど眞子先輩の足元へ落ちた。
「ああっ、これは違います!」
俺は座った姿勢のまま飛び掛るように四つんばいで走り、落ちたエロ漫画を回収っ。表紙を見られないように拾ったTシャツの中へ隠す。
「えーっと、これはなんでもありませんから! マジですよっ!」
「……それを隠してもこっちにいっぱいコレクションは揃ってるみたいだけど?」
あああああっっ!
そうだった。今落ちた三冊を回収しても、押入れの中にはまだ大量のエロマンガが揃っていたわけで……。眞子先輩は涼しい顔で布団を床へ一度置くと、押入れで積み重ねられているエロ漫画を一冊手に取る。
ぺらりと中身を開き、その冷たい目で内容をザッピング。たしかあの本は委員長である真面目な女の子を一匹狼の不良がいやらしく調教して行くっていうかなり濃い内容だったはず……。
俺は背中に冷や汗がだらだらと流れまくっていた。一気に体温が冷え、眞子さんの顔を見ることが出来なくなる。ドキドキと鳴る心臓。
「ま、眞子さん……」
「最悪ね」

288 名前:大好きにはなれないね(仮題) ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/10/06(土) 18:17:42 ID:+StY7qvv
眞子さんはパタンとエロ漫画を閉じた。
「いつもこんなの読んでるの?」
「え、えーっと」
毎日読んでますっては言えないだろ。
「こういうの好きなの?」
「………」
「まぁ好きならこんなに買わないわよねぇ……」
うう。眞子さんの視線が痛い。
「で、でも」
「なに?」
「でも、俺も男ですからっ。こういうものは持っているものですよ」
「ふーん……」
うわぁ、納得してないっていうかめちゃくちゃ怒ってる時の顔だ。唇をむっつりとへの字に曲げ、冷めた視線で俺を捕らえる。頭からアニメのようにぷしゅうぷしゅうと湯気が出ているようで、俺の額に流れる汗は三割増し。
ぶっちゃけ、たとえばさっきの掃除をするって言い出した時の眞子さんはほとんど普段どおりの眞子さんだ。怒っているようにも見えた眞子さんだったが俺に対してはあれが普通。
怒っているときの眞子さんは普段にも増して無口になる。そして、Vシネマのヤクザよろしく『目で殺す』といわれるように、強く強く相手をにらみつけるのだ。

ちゅ、ちゅーか。エロ本見つけたぐらいで怒りすぎだろ! 眞子さんっ!! なにが悪いんだよ!
「えーと、眞子さん」
でも、勢いよく反論できない俺。ヘタレ。
「ねえ」
「はいっ!!」
「あなたは、こういうのが好きなの……?」
眞子さんはエロ漫画の表紙を俺に見せ付ける。なんだかこの時の眞子さんの表情に俺は少しだけ違和感を感じた。
「え。えええ。ええ、まぁ……」
でも、俺はそんな表情の変化で眞子さんの微妙な感情を読み取って対応できるほど人間が出来ちゃいなかった。馬鹿正直に答えちまった。
「好きですよ……ええ」
「そう……」
眞子さんは何度か俺の言葉を反芻するように頷く。
「……私より魅力?」
え?
俺は耳を疑った。
「ま、眞子さん?」
が、聞き返した時にはもう眞子さんはごにょごにょと口元を動かして、そのまま口をつぐんでしまった。なんだか妙に眞子さんの頬が赤くなっている。
魅力……? み、みりょくって。
「え、えーっと。眞子さん」
俺は頭の中で慎重に言葉を選びながら口を開く。
「……?」
「お、俺。確かにそういう本は好きですよ。うん、見ればわかるかもしれないですけど。で、でも。眞子さんが嫌なら……俺、その本全部捨てます」
かっこよくないかもしれないけど……。
「そういう漫画っていうのは……、えーっと。魅力とかじゃないんですよ。そもそも漫画と実物は全然違うわけですし……。俺は……、俺、こんな風にだらしなくて、全然だめなヤツですから、
女の子と付き合ったことも無かったんですよ。だから、ほら、えっと。寂しさの穴埋めみたいなものなんです。うん、多分、ですけど」
そうだろう。うん、そうだろう?
「でも。今、いまは眞子さんがいます。眞子さん。眞子さんが俺の寂しさを埋めてくれてるんですよ。だから、眞子さんが居ますから、俺、もうそういうのは……無くて、いい、です」
何度も噛みそうになった。でも、最後の一文だけははっきりいわないと。
「俺、眞子さんが居てくれれば幸せですから」

ふっ。


289 名前:大好きにはなれないね(仮題) ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/10/06(土) 18:18:56 ID:+StY7qvv
気がつけば、俺は眞子さんに抱きしめられていた。ぎゅうっと眞子さんの腕が俺の背中をまわり。眞子さんの細い体が俺にぴたりとくっつく。
俺の肩に顎を置いて、眞子さんの髪の毛の匂いがふんわりと俺の鼻腔をくすぐった。
眞子さんは言葉を話さない。表情は見えない。どんな顔なのかもわからない。ただ、俺を抱きしめただけ。でもそれだけで眞子さんの想い・感情が伝わってくる。
優しい抱擁。しばらく俺と眞子さんは一緒に抱き合っていた。
長い間そうしていたのか。もしかしたら一分くらいだったのかも知れない。
眞子さんの体が離れる。
顔を見ると、眞子さんは普段の表情へ戻っていた。よかった。怒りは収まっていつもの調子に戻ったようだ。俺はくすりと表情を緩める。
「眞子さん」
「よし。じゃあ、捨てようか」
……へ?
「私が居れば、こんないやらしい漫画なんていらないのでしょ? 全て捨てるわよ。こんなもの」
ああ、本当に、いつもの調子に戻った眞子さん。
「よく考えればこんな布団は干さないといけないわね。私は干すから、あなたは押入れの中にあるものを全てビニール紐で纏めて頂戴」
「え。今から全部!?」
せめて三冊ぐらいは、最後に一回……。
「ほらほら、立って。あと床もゴミが散らかってるんだから。徹底的に掃除しないと。今日は一日あなたの部屋を丸洗いよ」
「……マジすか」
デートはお預け?
はぁ。
「返事!」
「はーい」
眞子先輩はその言葉に満足げに頷くと、布団を担いでベランダへ向かう。すれ違い俺は押入れへ。
ああ、俺の夜を支えたレディたちよ……。ジュンコ、ヨウコ、ナツコ、クミコ、ヒロミ、アユミ、カオリ、ハルカ……。
さようなら、さようなら、さようなら……。お前は次の俺みたいなヤツのために頑張ってくれ……。



『眞子さんが居てくれれば幸せです』って言葉はもちろん嘘じゃなかった。
少なくとも、この時までは。
(続く)


290 名前:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg [sage] 投稿日:2007/10/06(土) 18:20:57 ID:+StY7qvv
>229のプロットから電波受信させていただきました。
とりあえずよづりも居る手前、そこまで長くはしないつもりです。
次回投下は未定です。

291 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/06(土) 19:37:02 ID:dX/dPpzo
期待

292 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/06(土) 21:11:34 ID:rgoUjAP+
>>290
新作ktkr!
容赦ない眞子さんかわいいよ眞子さん。
今はバカップルの二人がどう変化していくのか楽しみです。

293 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/07(日) 00:36:20 ID:AreITkIC
駄文落とします。

294 名前:天秤[sage] 投稿日:2007/10/07(日) 00:37:48 ID:AreITkIC
真っ暗な闇の中、僕は一人道路を歩く。車も通らず、街頭も着いていない道路をただ歩く。
兄の名を、呼びながら。母の名を、呼びながら。
義母の名を、呼びながら。義姉の名を、呼びながら。
父の名を、呼びながら。あの子の名を、呼びながら。

彼女の名を、呼びながら。

―――ああ、いつもの夢だ。もう見飽きるほど見た夢。遠い過去と少し先の未来の夢。
うっすらと、少しずつ世界がひらけてくる。現実の暗闇の中、よく知った天井が見えてくる。
視線を左に動かせば、よく知ったクローゼットが見える。
視線を右に動かせば……そこに彼女がいる。

穏やかな吐息と、甘い匂いを感じながら僕は彼女のきれいな髪に指を通す。
整った顔立ち、スレンダーだけど均等の取れたプロポーション、絹のようなやわらかい髪。
本当に、彼女は美しい。
僕とはまるで違う、生き物……

彼女―――三島葵に僕―――風間真樹が出会ってからどのくらいの時が過ぎただろうか。
正確な時間はわからない。
ただ、担当者として彼女の書く小説に携わり始めた時、彼女の小説を読んだときからきっと僕は彼女に惹かれていた。

彼女が書く小説は不思議な魅力で満ち溢れていた。文体も話も平凡なものであるはずなのになぜか惹かれてしまう。
読者はその魅力の正体がわからず余計に小説にのめりこむ。正体不明の麻薬のような魔性の魅力が彼女の小説にはあった。
そしてその魅力は彼女自身のものでもあった。
彼女は不思議な女性だった。明るく、社交的に見えて、実はとても内向的で。冷たいようにみえるけど、実はとても涙もろくて。
彼女の不思議な二面性からあの魔の魅力を持つ小説が生み出されているのだろうか。いや違う。
これは本当の彼女を隠すためのカモフラージュなんじゃないか。
僕は彼女が知りたくなり、どんどん彼女の魔の魅力に取り付かれていった。
彼女と話をし、彼女の手助けをし、とにかく彼女と関わりあった。
今にして思えば彼女もまた僕に似たような理由で惹かれてたのかもしれない。
仕事での相棒だった僕達は次第にプライベートでも関わり合う様になった。

そんな日々が続いたあるとき、彼女の作品を読んでいた僕は気づいた。
彼女の魅力の正体がわかってしまった。
彼女の作品には愛や情がない。あったとしてもそれは一方通行の想い。決して敵わない想い。
物語は絶対にハッピーエンドにならない。けどそれでいて登場人物達が機械的になることもない。
それは彼女の技術と才能のなせるものなのかもしれないけれど、でもとても悲しいことだと思った。
彼女は愛されたことがないのだ。だから思いは常に一方通行。
愛に飢えた人。悲しい人。
そのときようやく気づいた。だから僕は彼女に惹かれたのだ。
僕もそうだから。孤独だから。

愛されることの意味がわからないから。

295 名前:天秤[sage] 投稿日:2007/10/07(日) 00:38:31 ID:AreITkIC
―――似たもの同士の二人は似たような想いで自然と繋がった。
それが傷の舐めあいでしかなくてもそれが僕らにとって正しいことだった。


彼女の髪からゆっくりと手を離しベッドを降りる。彼女が起きないよう、なるべく音を立てないように。
寝室を出るとそのまま台所に向かい、冷蔵庫から昼食の材料を取り出す。
コンロに火をつけいつものように調理を始める。もう何百回と繰り返してきた行為。
でもそれでも僕が彼女にしてあげられる数少ないことだから、決して手は抜かない。
このマンションは台所から寝室までずいぶんと離れているので思い切って音をたたてもだいじょうぶ。
調理が終わったらいつものように食器に盛り付け、いつものようにラップにつつみ冷蔵庫にいれておく。
書置きをテーブルに残し、その後洗面所に向かう。
相変わらず不健康そうな自分の顔とにらめっこをつづけながら外にでるための準備をすませていく。
偽りの自分を演じるための仮装を施していく。
すべての準備が終わってから彼女の様子を見るために再び寝室に赴く。これもいつものことだ。
安らかに吐息をたてる彼女にむかってきっと聞こえないであろう一言を言って部屋を出る。
玄関に向かい開けたくないドアを開け、重い足をひきずって外に出る。
後ろを振り返り、ドアノブに鍵を差し込む。鍵をまわす。
ゆっくりと、ドアから離れる。ここにまた帰ってこれるように祈りながら。

これが僕の日常。これからも続いていくであろう、僕の幸せ。
彼女の仕事を手伝い、彼女の世話をさせてもらう。それだけで生きているって感じる。
僕が彼女の役にたってるって感じる……

296 名前:天秤[sage] 投稿日:2007/10/07(日) 00:39:19 ID:AreITkIC
彼女の過去になにがあったのか、くわしい話は聞いていない。
でもポツリ、ポツリと時々話をしてくれることがある。
父に暴力を受けていたこと、母が見てみぬふりを続けていたこと。
親友と思っていた人に裏切られたこと、恋人に酷い目に合わされたこと。

僕の人生とほとんど同じ。大事にしていた人に裏切られて、見捨てられる。
本当に似たもの同士。似たような人生を送ってきてる。
だからふたりで支えあって、生きている。傷を舐めあうようにして逢瀬を重ねる。


……でも本当は僕にはわかってるんだ。似ているのはそこだけ。そこから先はまるでちがうもの。
彼女はすべてを持っている。外見的な美貌も、富も、才能も、未来も。人望も。
きっと本人は分かっていないと思うけれど彼女はすごく周りに愛されている。
人に傷つけられた分、他人に優しくできている。周りの人を愛そうとしてる。
彼女は自分が愛されたいからそうしてるっていうけれど、きっと彼女の性格がそうさせてるんだと思う。
だって同じような境遇の僕にはできてない。イメージが沸いてしまから。裏切られるイメージが。
だから怖くてできない。同じような体験をしている彼女に対してはできているのかもしれないけれど、
人間がみんな僕らみたいな人であるわけがない。多少は経験していてもそれは規模が全然ちがう。
でも彼女はそんなこと気にしてない。どんな人にも優しくできてる。慈しみを持てる人なんだ。

彼女は光輝く人。僕じゃ決して届かない人。
いつか彼女はそのことに気づくだろう。いやもう気づいているのかもしれない。
そのときこそ、彼女と僕の別れのとき。彼女が「向こう側の人」になるとき。
そのときがきたら僕はきっと泣くだろう。懇願するかもしれない。でもきっと、とめられない。
仕方のないことだから。それがあるべき姿だから。彼女にふさわしい男が他に必ずいるから。
僕はただそのときを待つだけ。怯えながら、恐怖しながら、でもどこかで喜びながら。
彼女は光輝く人。幸せになるべき人。僕の愛する人。
だからせめて踏み台になる。僕を捨てることで彼女が前に進めるように。
それが僕の「愛する」ってこと。

297 名前:天秤[sage] 投稿日:2007/10/07(日) 00:40:09 ID:AreITkIC
真っ暗な闇の中、私は「彼」と手をつないで道路を歩く。
車も通らず、街頭も着いていない道路をただ歩く。
でも少しも怖くない。「彼」が隣にいるから。どこまでも歩ける。少しもつらくない。
歩き続ける。どこまでも歩き続ける。
気がつくと、いつのまにか左手にたしかにあった暖かい感触がなくなっている。
私は当たりを見回し必死に「彼」を探す。
すると急に光が見えてそこに「彼」が立っている。
私は大声で「彼」を呼ぶのだけれど、「彼」は私に全く気づかず、そのまま光の先へ進んでしまう。
私は大急ぎで「彼」を追うのだけれど、決して追いつけない。
「彼」はそのまま私に気づかず光の先にいる「私でない誰か」の元へ行ってしまう……

「くあっ……はぁ……はぁ」

またあの夢だ。見たくもない最低の夢。何度も何度も見る嫌な夢。
「彼」が真樹がいなくなる夢。私のそばを離れ、他の女のところにいってしまう夢。
そんなことあるわけないのに。真樹はあいつらとは違うのに・・・
瞼を開けるとそこはよく見知った部屋。
真樹の匂いのする、私にとってこの世でただひとつ、安心のできる場所。
今は暗くてなにもほとんどなにも見えない部屋だけれど、左隣にたしかに気配を感じる。

「真樹……」

身体を起こし、私の隣で死んだように眠る真樹の顔をゆっくりと覗き込む。
真樹はいつもこうだ。まるで本当に死んでいるんじゃないかってくらい無表情で眠る。
一応いつものように耳を済ませて真樹の呼吸音を探る。

「スゥー……スゥー……」

「はぁ……よかった」

安心した私はそっと真樹の頬に触れる。これもいつものこと。
どんな夢を見ているんだろう・・私の夢だといいな。
顔の輪郭をなぞりながら、徐々に指を下へ下へとおろしてゆく。
夢……そう、あの悪夢をみるのも……

「いつものこと……なんだよね。」

298 名前:天秤[sage] 投稿日:2007/10/07(日) 00:40:55 ID:AreITkIC
真樹は私にとってこの世で唯一自分と同じ傷みと想いを感じあうことのできる男性だ。
同じように人に裏切られ、同じように愛する人に捨てられた。
真樹は人に捨てられる苦しみを知っている。人に裏切られる怒りと悲しみを知っている。
だから真樹が私を捨てるはずない。私のそばからいなくなるわけがない。
私達は「愛し合っている」んだから。それだけじゃない。
他のカップルとは違って「理解しあって」もいる。
深い深いところで繋がっている。絶対に離れることなんてない。
それはわかっている。だからあんな夢、ただの夢だ。
でも……でももし真樹が他の女を選んだら?私じゃない他の誰かのところに走ったら?
もし私に飽きたら?私のことがいらなくなったら?

「やだ……そんなの絶対やだ……」

両手の指は首にまでかかっている。その指に少しずつ、少しずつ、力をこめていく。
誰かに取られるくらいなら……他の誰かと歩く真樹を見るくらいなら……
どんどん力が強くなる。ここで真樹をこの手で……そうれば真樹は永遠に私の……

「うっ……ぐっぐぐぐぐ」

真樹の苦しい声が聞こえてくる。はっ、として慌てて手を真樹の首から離す。これもいつものこと。
あの夢を見て、真樹の首を絞めて、我にかえる。成長しない私。

「ごめんね……真樹。もうしないから許して……」

これもいつものこと。どうせまたあの夢をみたらやってしまう。最低な私。
真樹を失うのが怖い。他のものなんていらないから神様、真樹だけは奪わないで。
もう失いたくない、裏切られたくない……
濡れてきてしまった目尻をぬぐい、横になり、真樹の手を握る。これだけで安心する。
高ぶった心と身体が、ゆっくりと落ち着いていく。
再び意識が暗い闇の底に沈んでいく―――

次は真樹と笑って歩いている夢がみたいな……

299 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/10/07(日) 00:41:52 ID:AreITkIC
―――自然に、ゆっくりと瞼がひらいていく。どんな夢をみたのか、全然覚えていない。
見知った部屋、見知った匂い。でも左隣りの気配がない。

「真樹!」

掛け布団を思いっきり投げ出し、真樹の姿を探す。

「真樹どこ!真樹!真樹ぃぃ!」

胸の鼓動がどんどん早くなってるのがわかる。まさか・・・まさか!
寝室からリビングに出、台所を見渡す。
いつも二人で食事をしているテーブルの上に紙がおいてあるのが見えた。
急いでテーブルに向かいむざぼるように読みこむ。
そこにある真樹のにおいを感じられるようにじっくりとゆっくりと。

「食事は冷蔵庫の中にあるから暖めて食べてください。」

たった一行だけれどそれだけで心が安らいでくる。と同時に頭も冴えてくる。
そうだ、真樹は今日は出勤だったんだ。
ふっと気が抜けて思わずへたりこんでしまった。
昨日そう言ってたばかりじゃないか。なにをしてるんだ私は。
ボサボサのままの髪をかきあげながら、冷蔵庫から真樹がつくってくれた食事を取り出す。
オムライスだ。朝から食べるものじゃないが、時計の針はもう午後2時を回っている。
真樹は私がこの時間におきること、わかってたのかな。
お昼過ぎのくだらない内容のテレビをみながらオムライスをほおばる。
真樹の料理はおいしいけれど、真樹がいないとなんだか味がうすいきがする。
きっと気のせいじゃない。真樹がいないとおいしくない・・・
真樹と会うまで一人で食事をとることなんてまるで苦じゃなかったのに。
でも今は真樹がいないとダメだ。苦しい。心も身体も、苦しい・・・

つまらない食事を終え、食器を洗うと、私はそのまま書斎へ向かう。
私の仕事場。ここは唯一この部屋で真樹の匂いがあまりしない場所だ。
この部屋は私が仕事場として購入したマンションだけれど、いつのまにか真樹と二人でここに入り浸りになった。。
私はあまりこの部屋には私物を置かず、真樹の好きなようにインテリアを任せることにしていた。
そうすればずっと真樹の匂いで包まれていられるから……

だけど、この書斎には真樹が気を利かせたのか、まるで物が置かれていない。
単純なデザインの机と、本のびっしり入った本棚。それだけ。
でも、ここには私の宝物が隠れている。真樹にも見せていない大切な宝物。
本棚を開け、一番下の棚の左から2番目の本から小さな銀色の鍵を抜き取る。
この本は全然読んでいないけれど、確か宇宙工学かなにかの本だった気がする。
鍵を使い、本棚の裏ににかかったロックをはずし、宝物達を取り出す。
真樹を隠し撮った写真のアルバム。
真樹を隠し取ったビデオ。
真樹の着た服や真樹の使った食器はここで暮らすようになってから大量に手に入るからいいけれど、
こういうものはさすがに自分で作らなきゃいけない。
一緒に暮らしてるんだから辞めようと何度も思ったけれど、やっぱりなかなか辞められる趣味じゃない。
彼のいないときはこうして彼のビデオと写真で自分を慰める。
真樹がこんな私を知ったら、どう思うかな。

300 名前:天秤[sage] 投稿日:2007/10/07(日) 00:42:33 ID:AreITkIC
真樹と最初に出会ったとき、つまり真樹が私の担当になったとき、正直嫌で仕方なかった。
男が好きじゃなかったのもあるけど私の前の担当と違って若くてあまり役に立ちそうになかったからだ。
いつものようにニコニコ笑って周りに仲のいいところアピールするだけでいいやくらいにしか、考えてなかった。
でも真樹は、そんな私の心情を知ってか知らずか、いやに私に絡んできた。
一生懸命私の世話を焼こうとするし、私のためにいろんなところを駈けずりまわってくれたりした。
私にやたら話しかけてくる真樹に不審と不快の気持ちを抱かなかったといえば嘘になるが、でもなぜか拒否する気になれなかった。
他人が自分の生活に入ってくるのを嫌がる私だったはずなのに、なぜか真樹の侵入は許せたのだ。
真樹と過ごす日々。だんだんそれは仕事だけじゃなくて、日常的な生活にも及んでいく。
真樹が私の部屋に来たり、私が真樹の部屋に行ったり。
真樹が少しずつ、私の人生に染み渡っていく。
私はいつのまにか真樹に惹かれるようになっていた。いやもしかしたら最初からそうだったのかもしれない。
真樹は私の人生になくてはならないものになっていた。

ある日、真樹は昔話をしてくれた。あまり触れようとしなかった自分の人生の歩み。
その話を聞いたとき、なぜ真樹に私が惹かれたのか、その理由がようやくわかった。
真樹は私と同じだったのだ……
ゆっくり、ゆっくり真樹は語る。自分の過去を。

兄の死、そこからくる母との別離、再婚した父との確執。
新しい家族だったはずの義姉と義母からのひどい仕打ち。
ようやくできた理解者に裏切られる絶望。
愛した人たちに捨てられ続ける悲しみ……

そこにはもうひとりの私がいた。愛されることの意味のわからない人間。
似たもの同士の私達。だから私は受け入れられたんだ。
私達は惹かれあった。お互いの傷をうめるように、舐めあうように。
互いの考えていることがよくわかる。互いの求めているものがよくわかる。
私達は恋人同士で、理解者でもあった。

私達は支えあい、生きる。人生を、手をつなぎながら歩く。
……でも私はどこかでわかっている。信じたくないけど理解してる。
いつか真樹は私を置いて一人で行ってしまう。私の手を離してしまう……
そんなの……我慢できない!そんなこと絶対させない……!
私達は一緒に幸せになる。幸せになるべき人間なんだから!
ずっと、ずっと一緒にいるべき。
私を理解できるのは真樹だけ。真樹を理解できるのも私だけ。
真樹は私に愛を教えてくれた。だから今度は私が真樹に愛を教えてあげる。
愛しい真樹。私を本当にわかってくれる唯一の人。

絶対に離さない。それが私の「愛する」ってこと。