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1 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/04/23(水) 23:32:38 ID:sNl+0M+K
ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。

■ヤンデレとは?
・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
→(別名:黒化、黒姫化など)
・転じて、病ん(ヤン)だ愛情表現(デレ)、またそれを行うヒロイン全般も含みます。

■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫(本保管庫)
http://yandere.web.fc2.com/

ヤンデレ臨時保管庫 @ ウィキ(臨時保管庫)
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/

■前スレ
ヤンデレの小説を書こう!Part14
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1204261770/

■お約束
・sage進行でお願いします。
・荒らしはスルーしましょう。
削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
・版権モノは専用スレでお願いします。
・男のヤンデレは基本的にNGです。



2 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/23(水) 23:37:25 ID:PdxkNS+F
-‐ '´ ̄ ̄`ヽ、           -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、          -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
/ /" `ヽ ヽ  \         / /" `ヽ ヽ  \      / /" `ヽ ヽ  \
//, '/     ヽハ  、 ヽ    //, '/     ヽハ  、 ヽ     //, '/     ヽハ  、 ヽ
〃 {_{ノ    `ヽリ| l │ i|     〃 {_{ノ    `ヽリ| l │ i|   〃 {_{       リ| l.│ i|
レ!小l●    ● 从 |、i|     レ!小l●    ● 从 |、i|   レ!小lノ    `ヽ 从 |、i|
ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ│     ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ│.   ヽ|l ●   ●  | .|ノ│
/⌒ヽ__|ヘ   ゝ._)   j /⌒i !  /⌒ヽ__|ヘ   ゝ._)   j /⌒i !     |ヘ⊃ 、_,、_,⊂⊃j  | , |
\ /:::::| l>,、 __, イァ/  /│. \ /:::::| l>,、 __, イァ/  /│    | /⌒l,、 __, イァト |/ |
.        /:::::/| | ヾ:::|三/::{ヘ、__∧ |    /:::::/| | ヾ:::|三/::{ヘ、__∧ |.     | /  /::|三/:://  ヽ |
`ヽ< | |  ヾ∨:::/ヾ:::彡' |.   `ヽ< | |  ヾ∨:::/ヾ:::彡' |    | |  l ヾ∨:::/ ヒ::::彡, |

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ちゅるやさんAは、>>1乙を唱えた!                             ┃
┃ちゅるやさんBは、>>1乙を唱えた!                              ┃
┃ちゅるやさんCは、スモークチーズを欲しがっている。                     ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

3 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/23(水) 23:43:45 ID:JZRmxXR0


4 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 00:55:56 ID:8rvuLuFC


5 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 02:44:51 ID:Uj7HMpBS
>>1


6 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 02:48:27 ID:rkzo8kjy
ナイス>>1乙……!
素晴らしい乙……!

7 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 04:38:25 ID:9lD4ju2W
1乙

8 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/24(木) 06:05:52 ID:g2jL+wwz
>>1お兄ちゃんの乙を独占したいの

9 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/04/25(金) 01:03:30 ID:4FqnX7n3
高1春 男
高校に入学して1ヶ月がたった。
地元の中学からこの高校に入学したのは俺だけだったので不安もあった。
でも、友人もでき、問題なく学校生活を送っていた。
部活はテニス部前から興味があった。それだけだ。
順調にどこにでもいる高校生になっていった。

高1夏 男
学校生活にも慣れてきた頃、クラスで気になる女子ができた。
彼女はクラス、いや学年でもトップクラスの容姿だった。だが漫画に出てくるような容姿端麗、頭脳明晰
というような娘ではなく、成績は中の下くらいだった。性格はおとなしく、化粧もしていないようで、同じようにおなしい
性格の友人とグループを作っていた。


10 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/04/25(金) 01:03:57 ID:4FqnX7n3
高1秋 男
夏休みが終わり、2学期が始まった。
彼女は夏休み前と変わっていなかった。
もし、派手な風貌になっていたらどうしようと身勝手な心配していたので安心した。
そんな風に彼女を見ていたら目があってしまった。
あわてて目をそらした。俺は女子にはまったく免疫がないんだ。

文化祭が近づいているので放課後も残って準備することが増えてきた。  
俺は意図せず彼女と同じ班になっていた。
黒板の希望するグループのところに自分の名前をさっさと書いて友人とふざけていたら
彼女もこのグループに来てしまったのだ。
俺はただでさえ女子に免疫がないのに、気になる娘がそばにいるととても平静ではいられない。 
放課後の作業も部活だとか塾(嘘)だとか言って逃げまくっていた。
しかし、いざ文化祭が近づくとそんな言い訳も通じなくなり、いやいや参加していた。
俺は異常だと自分でも思う。好きな娘と事務的な用事について話すだけでも嫌なのだ。
心臓がバクバクいって自分のヘタレた部分を見せ付けられるようでとても耐え切れないのだ。

文化祭は2日間に渡って行われる。
周りの友人はクラスだの部活の女子だのを誘い一緒に校内を回るようだ。
だが俺にはそんな発想はまったく無かった。
はっきり言って好きな娘ができても恋人になりたいなどと思ったことはない。
前に述べたようにヘタレなのものあるが、何より俺は自分に自信が無かった。
成績ははっきり言って悪い。運動も部活はしているが試合に勝ちたいとかそういう気持ちはなく、
いわば、前からの興味と運動不足を気にしてのことだった。
最後に容姿だが、これは実は周りからの評判は悪くない。といっても女子に免疫のない俺が女子の評判を耳にする機会などあるわけもなく、
もっぱら、男連中からだ。まあ要は信用ならない情報だ。
当日は部活の出し物のない時には教室の出し物に顔を出すことにした。
教室に行くと彼女が居た。 
俺達のグループで入るのは彼女だけのようだ。目が合ってしまったのでしかたなく平静を装って彼女の方に向かう。
いつから当番をしているのかと尋ねてみるともうすでに3時間もここに居るそうだ。
俺は彼女に自分に任せてくれてかまわないと伝えたのだが、しかし
彼女は友人も男子とどこかにいってしまっているのでいいと返してきた。 
俺は困ってしまった。彼女にこの場を任せるように言ったのは自分のためでもあったのだ。
俺は文化祭前に何が何でも彼女を落とすと豪語していた友人の登場を願った、心の底から。
すると友人ではなく誰だか知らない男が現れ、彼女に話しかけた。誘っているのだろう。
しかし、彼女はそれを断っているようだ。男はしばらくねばっていたが、やがてあきらめていってしまった。俺を睨み付けて・・・
結局文化祭が終了するまでの間俺はずっと彼女と一緒にいた。 
その間彼女には10人以上のお誘いがあった。
しかし彼女は誰の誘いにも乗らなかった。そのせいで俺は10人以上に睨まれるはめになってしまった。 
でも、彼女も彼女だと思う。相当なイケメンもいたのに振ってしまうなんて持ったいない。
イケメンをふって10分に一度「人あんまり来ないね・・・」「うん」なんて会話しかできない俺といるなんて矛盾している。
もしかしたら彼女も俺と同じ気持ちなのかもしれない
俺と同じで異性が苦手なのだ。
ちなみに彼女を落とすと豪語していた友人は前日にはもう振られていたらしい。
それを聞いて俺はホッとした。 
身勝手だと思う。 
彼女と二人になってしまった時には来い!そして誘え!と思っていたというのに。


11 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/04/25(金) 01:04:34 ID:4FqnX7n3
高1冬 男
俺の耳に恋愛の噂はあまり入ってこない。
俺自身が好きな人をまわりに言ったりしないせいだと思う。
クラスの中で三角関係が起きていたことなど、三角関係に決着が付いた後に知った程だ。
だが、噂の当事者が学年でも評判の美少女となれば話は別だ。
彼女に好きな人がいるらしい
俺は正直ホッとした。付き合っているという噂ならショックを受けただろう。
しかし、好きな人がいるというのはいいことだと思う。
自分のことは棚にあげるが、彼女にはいい恋をしてもらいたいと思う。
はっきりいって俺のような青春は駄目だ。
それに好きな人がいるらしいという段階から聞ければ、付き合っていると聞いてもショックは和らぐだろう。

2月14日はバレンタインデー
中高生男子にとっては審判の日だろう。
女の友人でもいれば気軽に構えてられるのかも知れないが、俺のような人間にそうはいかない。
というか、俺自身はそんな気にしてないのだが、同じ系統の人間が俺を巻き込んで騒ぐのは迷惑極まりない。
結果の見えているのにいつまでも教室にいるのは見ていて哀れになる。
俺はさっさと部活に行くことにして教室を出た。
その時についいつもの癖で彼女を見てしまう。
目が合う。合ってしまった。
後悔した死ぬほど
勝手に期待していた身の程知らずの男と思われただろうか。

彼女は意中の相手にチョコを渡すことはできなかったようだ。
彼女の性格なら十分にありうることだ。
普段、親しくしているならまだしもそうでない相手にチョコを渡すことは告白に等しい。
彼女は家で泣いたりしたのだろうか


12 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/04/25(金) 01:05:50 ID:4FqnX7n3
即興で書いたのを勢いで投下しました。
うん、ごめん

13 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 01:23:25 ID:l41RQECY

ねぇちゃんを鈍器で打ったらヤンデレになっちゃったよぅ・・・うっ・・・うっ・・・

14 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 01:24:12 ID:4+RlTjWH
いんや、面白かったぜ!
スピーディーで良かったよ。
続きに期待してます!!

15 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 01:42:03 ID:aQ3WnBEo
続きに期待
でも、誤字脱字が目立ったから、一度推敲してみることをオススメする

16 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 06:08:48 ID:1Il//wuQ
誤字脱字以前の前にsageろ
そんで辞典片手に20回は読み直せ。あまりに酷すぎる。いままで読んだSSの中で一番最低だ
謝るくらいなら投下するな。即興で書いたとか言い訳するな。即興かどうかなんてこっちは知ったことじゃない
ハンパなもん投下する奴が一番タチ悪い。中学生レベルなら身の程をわきまえろ


17 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 06:33:36 ID:ivsGyO8x
どのへんにヤンデレがあるの?
どのへんにヤンデレがあるの?

18 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 07:54:51 ID:l41RQECY
携帯小説レベルと言われても仕方ない出来


19 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 08:47:35 ID:5S3SRATj
>>12
GJ!!
続くのかな?
だとしたら全裸で待機してるよ

20 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 08:53:30 ID:cpVrKqtR
>>16
喚くなハゲ

21 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 09:02:36 ID:1Il//wuQ
>>21
黙れ糞虫。日本語も読めないゲロカス以下は死ね。今日中に死ね

22 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 09:08:42 ID:1Il//wuQ
自爆った…>>20ね
は、恥ずかしくなんかないんだからね!言い過ぎたことを後悔なんかしてないんだから!

23 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 09:12:36 ID:kxQIA+gg
何か暴れている奴は腐女子のような気がするな

24 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 09:15:11 ID:kxQIA+gg
批判者というのは自分に書く能力がないのに態度だけは偉そうなのはどうしてなんだろうか?


25 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 09:24:44 ID:hf5zHBt6
文法的な間違いってどこかな?

26 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 09:24:47 ID:NZ0Pv+NW
ID変えて擁護乙

27 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 11:31:35 ID:a0ffIId0
気に入らなきゃスルー
それくらい常識だろ

28 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 11:55:35 ID:h9LX2Vum
これから病んでくるじゃない?なぜ騒ぐ?わっかった!みんな中毒だヤンデレの!

29 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 11:56:30 ID:kxQIA+gg
ヤンデレみたいな彼女が現実にいたらいいんだけどね


30 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 12:01:24 ID:kxQIA+gg
鋸を持ったヤンデレに襲われる夢を見た奴が勝ち組なんだよ!!

31 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 12:36:15 ID:ks/S5VkT
女にストーカーされたあげく刺された夢を見た私が参上

32 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 12:43:55 ID:2KNIWV7m
>>31
なんと言うレズ

33 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 15:55:40 ID:ks/S5VkT
男だよ

34 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 17:47:46 ID:2KNIWV7m
ほんとは知ってたんだけどなにか俺の中で期待があったのかもしれない(´・ω・)

35 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 18:24:30 ID:sNNVpEsu
それは本当に夢だったのかな?

36 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/04/25(金) 18:45:54 ID:yR4FV587
五時脱字なんてこのヤデレスレには似あわないよ

37 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 19:45:24 ID:SGNkNkQw
>>36
つっこまないぜ

38 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/25(金) 21:09:32 ID:yaTEmfKK
, -‐ァ‐- 、
/>:<´  ..:ヽ
, -‐ヤ .:rt:ァ;゙´ ,」:\
` ̄`ヾ"`ヾ:::7 シ.: : :ヽ
ト-、 ` ツ:.: : : : :\
l    ㍉:、 : : : :.:.、\
',    .: :ヾ、:.:.、:.:㍉ミゝ、
'、      ` ‐㍉ミミミミ、
ヽ.      _,`''=ミミミミ:、
`7>- ニ..ミ三彡ヘヽ\ `
/´       /  ヾ:\ヽ
、,/       /    ヾ.:ヾ\
 ̄/         __/      ヾ:.ヽヾ、
/ ヽ    
ヒョウロンカキドリ  山梨県 富士樹海

他の鳥が作った巣に難癖をつけ、攻撃する習性を持つ
しかし自分では巣を作らない
ケイタイ虫と呼ばれる寄生虫を飼っており、それによって
凶暴化しているという学説も有る


39 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08:05:45 ID:eYlfZSYl
投下します。
十一話目です。ちなみに、九話から死闘編ということになっております。

40 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08:09:12 ID:eYlfZSYl
* * *

ああ、愉快愉快。
あの金髪女ったらあんなに取り乱しちゃって。ざまーないわね。
そんなに彼の姿が見えないのが不安でならないのかしら。
全く情けない。アタシなんか彼の姿が見えなくったって幸せな気分でいられるっていうのに。
ま、無理もないかも。あの女、葵紋花火の友達は彼だけ。
知人と呼べそうなのは体目当てに誘ってくる性欲猿みたいな男子生徒たちだけ。あ、彼のお兄さんも知り合いかな? 
ともかく、彼が居ない時の葵紋花火はデパートのおもちゃ売り場で迷子になった子供みたいな感じ。
他に頼れる人がいないんだもん。その唯一の人がいなくなったんだから、取り乱しても当然か。
沸騰した頭で考えてでたらめに行動したって、なんの結果も生み出せないのに。
彼が今どこにいるのか、突き止められはしないのに。

あまりのおかしさに喉だけでくつくつと笑ってしまった。肩もちょっと揺れてる。
もう、お昼なんか要らないかも。あの女の焦る顔を見ているだけで腹一杯。
「どうしたの澄子ちゃん? いきなり笑ったりして」
「ん? んーん、なんでもないない」
話しかけてきたのは机をくっつけて一緒にお昼を食べている桃ちゃん。
桃ちゃんの箸はあまり進んでいない。小さなお弁当箱の中身は半分も減ってない。
この子の神経の細さじゃ、さっきの光景を見たショックに耐えきれないから当然か。
「……ねえ、大丈夫かな。私たち」
「何が?」
「だってほら、さっきの……さっきみたいに、葵紋さんが……」
「大人しくしてればなんともないよ。だってアタシたち、誰にも言ってないから気付かれてないでしょ? 
あの子たちみたいに群れたりするからいざとなった時狙われるんだよ。平気平気」
「そう、だよね……うん。ありがと」
そう言って桃ちゃんはようやく箸を動かした。
でも口が開いてない。小振りなコロッケを半分に割って食べているようじゃそのうちに昼休みは終わってしまう。

アタシと桃ちゃんは彼に憧れる同士。
と言っても桃ちゃんは内気な性格だから彼にアピールしない。アタシもさりげなく止めてるし。
だって積極的になり出したら敵として認識しなければいけなくなる。できるなら、それは避けたい。
あまり頼りにならない勘だけど、昔のアタシと桃ちゃんは似てる気がする。
内気なところとか、声が聞き取りにくいところとか、諦めから物事に取り組むところなんかが。
アタシは彼と気持ちよく話すために普段から明るく振る舞っているけど、内面ががらっと変わったわけじゃない。
一人で部屋に居るときや、彼が葵紋花火に話しかけるところを見ていると一気に気分が落ち込んでしまう。
それでも彼が優しくしてくれると、彼を掴まえて独占したくなる。
なにかのきっかけがあれば桃ちゃんも今のアタシみたくなる可能性もある。ないとは言えない。
だからアタシは彼と桃ちゃんをなるべく接触させない。
罪悪感もある。だけど、彼はアタシだけの恋人なんだから仕方がない。
それにもし桃ちゃんまで本気になったら、排除しなくちゃいけなくなる。
アタシは一応桃ちゃんのこと友達だと思ってるから、できればそれは避けたい。


41 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08:10:17 ID:eYlfZSYl
「さっきの……葵紋さんが殴った子。どんな様子なのかな」
「さあ。さすがにそこまでは。大事にはなってなければいいんだけど」
桃ちゃんは小さく頷いた。あんな子を心配するなんて優しいね。
アタシがさっき口にした言葉は嘘。本当はとっくに大事になっている。
葵紋花火は昼休みになると同時、彼を狙う有象無象の輪の中に突っ込んでいって、いきなりグーで殴った。
自分が心配している時に、あーだこーだと彼の行方を推測する人間達に腹を立てたと思われる。
腹を立てていたのはアタシも同じだけど、さすがに殴らなくても。
殴られた子は吹き飛ばされて、机を三つほど巻き添えにして床に叩きつけられた。
とっさに隠したみたいだけど、口から溢れる血と一緒に、折れた歯が床に落ちるのをアタシははっきり見た。
手加減ってものを知らないのかしら。それともただ後先を考える余裕がないだけ?
そのままずっと心を乱したままでいればいい。
校内で暴れ続けていればさすがに教師の目に留まる。
停学、もしくは退学処分になればあの女の目障りな金髪を目にすることがなくなる。

桃ちゃんが箸を置いた。まだ中身の残ったままの弁当箱に蓋をして、嘆息する。
「葵紋さんが暴れたのって、やっぱり彼が今日休んでるのが原因かな」
「たぶん、そうだと思う」
「でもたまには休むことだってあるだろうし。どうしてあんなに荒れてるんだろ。
彼が休むたびにあんなんじゃ、私落ち着いて学校に行けないよ」
「たまたま、二日目とぶつかったんじゃない? 
大丈夫だって。アタシたちは絶対に狙われることなんかないから」
「うん……うん、そうだね。ありがと、澄子ちゃん」
弁当箱を布でくるむと、桃ちゃんは自分の席へと戻っていった。
アタシは唇だけを動かして呟く。
「なんにも心配要らないよ。もうすぐ恋に悩む必要すら無くなる。
……彼はアタシが手に入れたんだから」

彼の居場所を知っているのはアタシだけ。
彼が昨晩何を食べたか、何をしていたのか知っているのはアタシだけ。
彼の全て、心も体も考え方もコントロールできるのはアタシだけ。
今はまだだけど、これからそうなっていく。アタシがそうする。

そして、最後。
これこそが葵紋花火にとっては最大の屈辱。
――――彼の初めての味を知っているのはアタシだけ。


42 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08:11:37 ID:eYlfZSYl
* * *

「知ってるんだろ、アニキならもちろんさ。なんたってお兄さんなんだからな」
短いなかに俺への悪意が強く感じられる、花火の言葉。
これでもこいつにしては抑えている方だろう。本来なら胸ぐらを掴み上げられてもおかしくない。
そうしないということは、ここへは話を聞きに来たのだろう。
「どうなんだ、アニキ」
「わからん」
「…………は、なんだって?」
「わからないんだ、本当に。弟は昨日学校から帰ってこなかった。で――」
「その後で変なメールが送られてきた。そうだろ?」
花火がスカートのポケットから携帯電話を取り出し、開く。
画面に映っているのはメールの文章だった。
でも、これは……。
「あいつが私にこんなメールを送ってくるはずない。絶対にありえない。
昨日あげたチョコ、あいつは貰ってくれた。大切に味わって食べるって言ってくれた。
だから、急にこんなメールを送ったりするほど気変わりするわけがない」
花火の言うとおり、メールの文章は弟ではなく、弟になりすました誰かが送ったとしか思えないものだった。

いきなりだけど、大事なお願いがある。
二度と僕に近づかないで欲しい。
僕の前に姿を現さないで。
僕は花火のことが好きじゃないんだ。 
花火が僕のことを好きじゃないのと同じで。
さよなら、花火。

「こんなの、こんなのあいつじゃない! 誰かがあいつの携帯を奪ったんだ! 
あいつと仲のいい私を嫌ってる誰か、男か、女か、年上年下同い年……どいつでもいい! 
昨日この学校であいつを奪った奴がいるんだよ! 許せるかっ、そんなのっ!」
花火の掌が机を激しく打った。瞬間的に椅子ごと揺らされたような錯覚を覚えた。
「答えろ、考えろ、思い出せ! 何か一つぐらい心当たりがあるんだろ、アニキ!」
教室中を静寂に陥れる叫び声。しかし、隠し切れていない怯えが裏にある。
花火の手が小刻みに揺れる。
弱い。今の花火には弱さだけがある。俺に怒りをぶつけてきた時の勢いは欠片もない。
でも、俺には励ましの言葉を言う権利や、状況を利用して軽口を叩く勇気もなくて。
可哀想だけど、もっとも誠実に、期待を裏切るような言葉を言うしかできない。

「悪いけど、本当に知らないんだよ。俺のところにもそれと似たようなメールが来た。妹にもだ。
昨日はずっと寝ずに待っていたけど、帰ってこなかった。連絡をとろうとしたけど返事もない。
とりあえず今日まで様子を見てみて、明日になっても同じようだったら警察に連絡するよ」
「遅いんだよ、そんなんじゃ。
明日まで待つだって? 明日まであいつが無事で居られる保証は? 警察が発見する確率は?
一日もあれば、人間一人ぐらいどこにだってバレずに移動させられるんだぞ。
アニキはあいつのこと心配じゃないのかよ」
「……まったく心配していないわけじゃない」
「なら、こんなところで座ってないであいつを捜しに行きなよ。
捜してるのは私だけだ。本気で心配してるのも私だけ。どいつもこいつも憶測するか、待つしかしない。
もうこの際、なりふり構ってられない。アニキにも手伝ってもらう」
右手首を掴まれた。力の全く籠もっていない手が強引に体を引っ張り上げようとする。
振り解こうとすればできたけど、今の花火を拒絶することはできなかった。
過去に花火を傷つけた罪悪感が、従う以外の選択肢を許さない。
もしかしたらまだ完全には嫌われていないのかもしれない、なんて甘い考えが脳裡を掠める。
そんなことはありえない、と自分に言い聞かせると少しだけ寂しくなった。


43 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08:12:37 ID:eYlfZSYl
花火の手に引かれるまま椅子から腰を浮かせ、後をついていく。
教室の入り口前に辿り着いたところで、突然花火が止まった。背中にぶつかりそうになるのをなんとか堪える。 
見物人でも溜まっていたのだろうか。花火の肩越しに進行方法を見遣る。
見えたのは、腕を組んで入り口のど真ん中に佇んでいる葉月さんの姿だった。
「どけ」
花火の声を聞いても葉月さんは動かない。眉さえぴくりとも動かさない。
ただまっすぐに目前の相手を見据えているだけ。
「詳しく話を聞かせて欲しいの。さっき、そこの彼の弟のことを話していたでしょう」
葉月さんの目が俺を捉えた。その目が少しだけ細くなったのは何故だ。
もしや、怒っている? 
――あ、そういや葉月さんには弟のことは一言も話していなかった。
相談されなかったからのけものにされたとでも思ったのかもしれない。
こっちにそのつもりはなかったけど、ごめんなさい。

葉月さんの視線が花火の方を向く。真摯な目をして、ふざけた調子のない声で喋り出す。
「私も彼の弟が心配なの。あなたの言うとおり何かがあったとしたら助けないといけない。
動くなら早いほうがいいもの。そうでしょう?」
「……その通りだ」
「それじゃあ、私も一緒に捜すから」
「いや、その必要はない。協力しないで欲しい。私とアニキの二人だけで探す」
葉月さんの表情が怪訝なものに変わった。おそらく今の俺も似たような顔をしていることだろう。
花火はなぜ葉月さんの協力を拒む? 人を捜すなら人海戦術をとった方が有利だということはわかるだろうに。
「どうして協力したらいけないのかしら? 理由は?」
「……話す必要がない。これは私とあいつと、アニキの問題だからだ」
「そんな理由じゃ納得できないわ。弟君のことを心配しているのは私だって同じよ。
もし何かあったりしたら私だって困るもの」
「……なに?」
「だってそれは、将来……他人じゃなくなるんだから。無事でいてもらわなきゃ、私の計画が崩れちゃうわ」
うつむきながら葉月さんが呟く。昨日もだったが、言葉だけでは葉月さんの考えを読めない。
計画ねえ。将来の計画、進むべき未来の予想図、これからやりたいこと。
俺には模型作りの趣味以外にやりたいことがすぐに浮かばない。
同い年でありながら先のことを考えている葉月さんは立派だと思う。
まあ、そんなことはどうでもいい。今考えるべきなのは花火が葉月さんの協力を拒む理由だ。


44 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08:14:11 ID:eYlfZSYl
「そんなわけだから、私も弟君を捜すの手伝うから」
「お前の名前は?」
「私? 葉月よ」
「葉月……葉月。そうか、お前が、か」
花火の声が幾分低くなった。
「二年D組の、葉月。お前もか。お前もそうなのか」
花火が一歩踏み出す。表情は俺の位置からは見えない。しかし声を聞く限り、穏やかであるとは思えない。
正面から向かい合っている葉月さんの様子も少し違う。表情が固くなったというか、あまり動かなくなった。
ふと気づいた。昼休みだというのに、葉月さんと花火の近くにいる人間は俺一人だ。
そのせいで緊迫した空気に俺まで飲み込まれた気分になる。
関係者ではあるのだが、にらみ合いに混ざっているわけでも、こうなった原因を作ったわけでもないので立ち位置の判断に困る。
もしかして、二人を止める役どころをクラスメイトに期待されていたりしないだろうな。
実家が道場を開いていて自身も武道を習っている葉月さん。ぱっと見てもじっと見ていてもアウトローに見える花火。
葉月さんには過去四回ほど投げられたことがある。花火には一度殴られたことがある――こっちは自業自得だが。
ともあれ、口論で事態が収まらないのだとしたら、体を張らなければならない。
二人の衝突を見過すことなどできないのだから。

葉月さんが口を開く。それだけのことで驚いて心臓の鼓動が速くなる気がした。
「私も、って? 私が今あなたに何かしたかしら」
「私にじゃない。あいつに、だ」
「あいつ……弟君のこと?」
「葉月、お前のことはあいつから何度か聞いた。
私と一緒にいるとき、あいつが女のことを話すのは少ない。せいぜい自分の妹のことぐらい。
だが、最近になってお前のことも話題に上るようになった。
そのことを、気にしすぎだと思っていなくて良かった。警戒していて、良かった。
私の予想通りに、葉月――お前は、あいつを奪おうとしていた!」
目の前にいる花火の肩が少し揺れた。そして、たったそれだけで事態は急変した。


45 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08:16:00 ID:eYlfZSYl
拍手の快音に似た音がひとつ生まれた。しかし誰かが拍手したわけではない。
言うなれば、葉月さんと花火が協力してできた音だった。
花火の右拳が葉月さんの顔面を真正面から狙った。それを葉月さんが両手を使って止めたのだ。
葉月さんが口を開く。いつもより声が一段階低い。
「……そっか。あなたもやっぱり弟君のこと」
「ああ。お前と同じでな!」
花火の体が小さく傾ぐ。左足のシューズが床から離れている。
この動きが蹴りだと気づいた瞬間、左足が跳ね上がり、葉月さんへ向かっていった。
蹴りを受け葉月さんの体勢が低くなる。
途端に背筋が寒くなった。葉月さんが倒れる――と思ったが、そうはならなかった。

予想だにしなかったことだが、今度は俺の体に衝撃が走る番だった。
蹴りを出したはずの花火の体がいきなり俺の体にぶつかったのだ。
そう、花火は後ろに下がった。蹴りを放った体勢のまま。
「は…………はああ?」
何が起きた? 蹴りを受けた葉月さんじゃなく、どうして攻撃した花火が下がる?
「く、お前……!」
「やめて。あなたは誤解してる。私はあなたが心配するようなこと、考えてない」
「そんな台詞は聞き飽きた!」
右腕を花火に掴まれた。腕を引かれ、体を振り回される。
強制的に葉月さんのもとへと押しやられる。
このまま抱きついてしまおうか、なんて考えたがすぐに思考を止め、次にもつれる足を止める。
花火に一言文句を言うために振り向く。
目に映り込んだのは、右足を振り上げた花火の姿。足の軌道は床と水平。高さはみぞおちまで。
衝撃に備えるのが間に合わない。反射的に目を閉じる。 

右方向への強制的な浮遊感、いやむしろ、転倒する感覚。
脇腹に痛みは覚えない。だというのに明らかに体は傾いていた。事実、立っている位置が変わっていた。
花火と向かい合っていたはずの場所から、葉月さんを背にして右にいた。
目の前に黒板の右の壁に貼られている時間割がある。今日の五時間目は国語。
「ち、奇妙なことを!」
声がした方向を向く。花火が目を剥いていた。視線の先にいるのは俺ではなく、葉月さん。
葉月さんの立ち位置は一切変わらない。花火の蹴りを食らったような様子もない。
「もう一度言うわ。やめて頂戴。
こんな言い方嫌いなんだけど、私は護身術みたいなものを習っているから、さっきみたいなことをされると体が反応するの。
最初の蹴りは足が伸びきったところを掴んで押した。さっきのは彼を右に動かして、あなたの蹴りを腕で逸らした。
反撃しようとすればできた。けどやらなかったのは、反撃したくなかったから。
頭に血の上ったあなたじゃ無理。私の膝を床に付けさせることはできない」
「そんなの、絶対だなんて言えるか!」
「ああ、もう――――少しは話を聞けないの!?」


46 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08:17:17 ID:eYlfZSYl
耳をふさいでしゃがみたくなるほどの大音声。間近で聞いたから鼓膜が本当に痛い。
葉月さんが花火を指さしながら言う。
「私は弟君のことなんか――じゃない。弟君を狙ってたりしないわよ!
だってわたしが、……き……なのは、別の人なんだから!
勘違いされちゃ困るわ! 本当に困る! もし誤解されたらどうするのよ!」
……うむ。なんていうか、照れる。
葉月さんが好きなのって、俺――なんだよな、たぶん。昨日バレンタインチョコもらってないから自信ないけど。
でも、ここまで必死になって弟との関係を否定されるとちょっとだけ嬉しい。ライバルが一人減った気になる。
必死の叫びを聞いた花火はまだ納得できていない顔をしていたが、握り拳を解いていた。
「今の言葉、本当だな?」
「ええ。彼だけじゃなく、クラスにいる全員に誓ってもいい」
「そうか。なら――謝る。すまなかった」
花火が会釈ぐらいの角度で頭を下げた。意外にも、花火は自分が悪かったときは非を認めるらしい。

「わかってくれたならいいの。それじゃ、早速弟君を捜しに行きましょ」
「……それは駄目だ。やっぱり断る」
「ええ? どうしてよ。やっぱり誤解してるんじゃ」
「違う。ただ単に一人で捜しに行こうと思い直しただけだ」
花火が入り口方向、葉月さんのところへ歩き出した。
葉月さんが花火の前に立ちふさがった。しばし二人が見つめ合う。
ほどなくして、葉月さんがため息をついて道を譲った。顔には諦めが浮かんでいる。
ふと、思い出した。花火が教室に来たのは俺を弟捜索の応援に駆り出すためだったはず。
なのにいきなり一人で捜しに行くなんて、どういう心境の変化があったんだ。
「花火、俺を連れて行くんじゃなかったのか?」
「……もういいよどうでも。ていうか、着いてこないでくれ、アニキ」
扉に左手を懸け、肩越しに花火が俺を見た。 
「アニキ。やっぱり、あんたは最低な人間だ」
――え?
「ちょ、ちょっとあなた、なんてこと言うのよ。彼はそんな悪い人間じゃないわよ」
「葉月、あんただってそう思うはずだ。今はまだでも、アニキとの関係を続けていればいつか必ず」
「……どういうことよ、それ。返答次第じゃただでは済ませないわよ」
葉月さんが花火へと詰め寄る。花火は首を廊下へと向け、教室から出て行った。
「待ちなさいよ! どういうことなのか説明しなさい!」
昼休み終了のチャイムが間もなく鳴る時間帯、教室に戻る生徒が行き交う廊下に葉月さんの声が響く。

花火の足が止まる。窓から指す陽光を反射する、流れるように滑らかな金髪も一拍遅れて動きを止める。
「はっきり言ってやろうか、葉月」
「ええ、言ってみなさいよ。彼のどこが悪いって言うの?」
「私からすれば存在自体なんだけど、あんたに言っても無駄だろう。
ひとつだけ言わせてもらうよ。アニキの絶対的な欠点。
人の気持ちに不誠実なところ。平気で裏切るとか、いつまでも相手の気持ちに答えないとか。
忠告しておいてやる。アニキに関わったら、いつかあんたまで不幸になるよ」
「そんなのっ……」
「言いたいのはそれだけ。じゃあ」
言い終わると花火は歩き出した。
葉月さんはその場に立ちつくし、階段のところで花火の姿が見えなくなる頃になってようやく口を開いた。
「仕方が……ないじゃない。駄目だって、まだ無理だって。
私には……待つことしかできないんだもん。あなたなんかに何がわかるのよ」
泣いてはいなかったが、声は悲しみに沈んでいた。
拳は固く握りしめられ、小さく震えていた。

昼休み終了を告げる鐘の音が鳴る。
葉月さんにかける言葉を見つけられなかった俺は、鐘の音を聞いて心が安らぐのを自覚した。

47 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08:17:57 ID:eYlfZSYl
十一話はここで終了です。それではまたお会いしましょう。

48 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08:24:38 ID:uHljBazC
うおおぉ!
リアルタイムGJ!
兄貴の記憶にない過去が気になるなあ

49 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 08:48:36 ID:tCb0nO5E
初期に保健室でクロロホルムの話をしていたのは澄子ちゃんではなく桃ちゃんでいいの?
澄子ちゃんとはキャラが重ならないから、どこ行っちゃったのかな?と思ってたんだ。


50 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 10:31:27 ID:CzLvOW/t
確かに兄貴ってびっくりするほど行動しないよな。
もう少しアクションがあってもいいと思うんだけど。
その辺含めて後で語られるのかな。
楽しみにしてます。

51 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 13:09:35 ID:H+tKNrpX
GJ!やっと来たぜ新作。こりゃ、長いことになりそうだな。葉月さんはこれからヤンデレにはならない…かな?結局病みそうなのは誰だ?花火?妹?澄子?

52 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 13:27:12 ID:w26y1BI/
新作だと?

53 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 14:04:38 ID:tCb0nO5E
つうかさ、クリスマスにはラブコメっぽかった澄子ちゃんがいきなり病んでるのはなぜ(?_?)。
おいらが一話見落としているのか、それとも弟視点話で澄子ちゃんが独白してくれるのか・・。

54 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 14:05:04 ID:obck4Il3
>>47
葉月さんは可愛いなあ
それにしても、ここまでボロクソに言われる過去の兄はどんなんだったのだろうか。
今はただ鈍いだけだが

55 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 14:24:53 ID:KbLm19Xk
いや、これは全員病んでるんじゃないのか?

56 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 17:54:00 ID:6XAW3pct
>>50
タイトルに傍観者と銘打ってるわけだしいいんじゃないか?
あまり積極的に動きすぎると看板に偽りあり、ってことになっちまうしな

57 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 22:09:42 ID:CDAbNtRH
傍観者なのにクソミソ言われてるのも妙な話だが

58 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 23:03:30 ID:UCq/AwTP
連載当初は確かに傍観者だったよ。そこからどんどん周りに巻き込まれたんだろ

59 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 23:43:28 ID:UvqDZ014
花火に殴られた娘が可愛そうです。
弟を無事見つけられたら反省してほしい

60 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/26(土) 23:49:18 ID:5GOgZQ5A
実は本当の傍観者は弟の方なんじゃね?

61 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 00:44:21 ID:F+toZw+R
どっちにしても主人公なんだから兄貴は最後にカッコよく決めてくれると信じてる。
さすがにこの状況でいつまでも傍観者を気取ってはられまい。

62 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 00:46:00 ID:tyGbB3JU
記憶の一部分が無いことやら、告白された美人への返事やら
複雑な家庭環境やらどうみても自分が関わってるのに傍観者
のごとく問題を静観するだけで投げっぱなしだしな
思考も解決しようとするのではなく問題先送りにしてるだけだし
よく考えるとダメ人間な気がw

63 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 03:14:56 ID:sf04hmCW
ヤンデレの主人公なんて基本ヘタレな気もするがw
ただまぁ、妙に感じ方が奇妙なのもあるな。誰が喋ってても言葉の意味を考えようとはしてないし

64 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/04/27(日) 06:19:40 ID:QhHgTSQ+


65 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 12:55:33 ID:dHJVDZqA
まぁ書き手が書きにくくなっちゃいかんからあんま詮索しないほうがいいだろうがな。
あっ後みんなおはよう。ツンデレっ娘に怒られてたらいつの間にか眠くなってヤンデレっ娘に
監禁される夢見たよ。すっごく幸せだった。

66 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 18:07:36 ID:JZZlC6BC
馴れ合いうぜえ

67 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 19:30:17 ID:U8TKeMm8
>>65
ヤンデレの夢はごくたまに見るけど夢の中でもまだ監禁されたことがないから正直少し羨ましい
血とかはないけど中~重度の依存症気味の女の子
やはり脳内の理想のヤンデレ像とかヤンデレ娘に言われてみたい言葉が影響しているんだろうか

68 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 19:55:27 ID:izKGek9N
ヤンデレとか実際いいもんじゃないぞ
たとえ顔がかわいくてもね、やめてほしくなる

69 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 19:55:59 ID:+r8g0N6n
去れ

70 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 20:17:30 ID:/PKThdUc
>>68
そりゃ三次元だろ。
たぶんだけど俺らは大半が二次元のヤンデレ萌えだと思う。
70年~90年代のヤンデレが出てくるやつ見た奴はとくに。

71 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 20:18:06 ID:YMec9AVg
このタコが

72 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 20:41:26 ID:dHJVDZqA
>>67 監禁は愛の究極体だということがよく分かったよ

>>68 君はいったいここをどこだと思ってるんだい?

73 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 21:20:52 ID:izKGek9N
すまん別に批判してるわけじゃないんだ
実際俺も体験するまではこのスレの話読んで俺もヤンデレに愛されたいなーとか思ってたし

74 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 21:22:00 ID:+r8g0N6n
\み会行きたくない…   orz   ……orz     /orzorzorzorzorzorzorzorzorzorz
. .: : : : : \  orz   orz  彼女にアニオタだってバレ/orzorzorzorzorzorzorzorzorzorz
. .: : : : : : : \ノジョにフられた……   orz  …    /orzorzorzorzorzorzorzorzorzorz
. . : : : \  ……    orz     友達と喧嘩/ ■■■  ■ ■■ ■■■■■
. . .... ..: : ::\orz   女の子のアドレス30件しか /■    ■  .■        ■
Λ_\ ……orz   …orz     /  ■    ■ ■        ■  
リア充→ /:彡ミ゛ヽ;\ …     経験人数が一/  .■    .■ ■      ■
/ :::/:: ヽ、ヽ、\ … ∧∧∧∧∧   /    ■■■  .■     ■■■■■  
/ :::/;;:   ヽ ヽ ::l\<     自  >/ orzorzorzorzorzorzorzorzorzorzorz
 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄<      虐  > orzorzorzorzorzorzorzorzorzorzorz
<      風  >orzorzorzorzorzorzorzorzorzorzorz
―――――――――――<  の   自  >――――――――――――
36名前:学生さんは名前 <  予   慢  >   OTL  セックスしすぎて…
東大に入って、昨日の駒 <  感      > OTL  彼女が… orz 
彼女に運ばれて、今日の <  !!       >     高学歴なのに… orz  
/∨∨∨∨∨\ 友達が… OTL mixiで…
24 名前:学生さんは名前が/          \      合コンで… orz
彼女から着信あるとマジで/   リア充[ピーーー]よ!\´  OTL イケメンなのに…
連続ですごいかけてくる /∧_∧ ∩         \サークルが… orz
正直しんどいです…   /( ;´Д`)ノ______     \ orz 180cm65kgで…  
/ (入   ⌒\つ  /|      \ 女の子が… OTL
427 名前:学生さんは/  ヾヽ  /\⌒)/   |       \  バイトの…
童貞に戻りたい…orz/   || ⌒| ̄ ̄ ̄|              \ 

75 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/27(日) 22:40:22 ID:OKmGdIja
お茶会を全裸で待つ。

76 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 00:58:36 ID:KKL5Vf+f
主人公の男が引きこもりだったらヤンデレはどんな行動をとるのか…

77 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 01:13:16 ID:HyG/K924
監禁する手間が省けるだけです

78 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 01:22:17 ID:9UNdHfr7
社会復帰を全力で阻止する

79 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 02:15:30 ID:enBNyxon
>>78
えぐいな…だが興奮を禁じえない

80 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 09:36:20 ID:oNPhMG0c
>>75
例大祭終わるまで待ってやれよw

81 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 11:53:43 ID:BuOZBwvN
『殺し愛』の一部のパターンはヤンデレだと思っている私は異端でしょうか?
殺し合う=愛し合う的な思考回路のヒロインはやっぱヤンデレとは言えないんかなー

82 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 13:00:16 ID:Ohei2eNI
>>78
最悪じゃんwww
と思ったらそこから妄想が膨らんで萌えた。
男「初めて女友達できた^^」
女「!」

83 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 13:08:00 ID:6nIYF+Oi
>>82 つまり世話焼きでツンデレな幼馴染が駄目駄目NEETの主人公を働かせようとして
紆余曲折ながら嫌々NEETは仕事始めるんだけど
段々と働くことが楽しくなってきてそこで幼馴染は寂しさを感じるんだけど主人公のためだと思って我慢しとく
でもあるとき主人公が女と親しく話してるところを見て、

「あの女誰なの・・・?」

的な感じで主人公を追い詰め始める的な?w

84 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 13:35:05 ID:0BVZQyst
むしろ引きこもらせた原因を作ったのがその娘っていうね

85 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 15:28:06 ID:zz9erowk
愛ゆえに!


素敵……そういうのシビれちゃう……

86 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 18:11:06 ID:0BVZQyst
というか昔そういうヤンデレもの考え付いて途中まで書いた
投げたけど

87 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 19:41:36 ID:Ohei2eNI
>>86
さあ、お前の「ヤンデレ.txt」の中にある文章を素直にここに出しなさい(`・ω・´)
出さないと俺の知ってるヤンデレの番長に焼きいれてもらうからな。

88 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 22:43:22 ID:TyV8OtB8
ふと思い出したことだが、
7,8年くらい前に何かの宗教の女教祖が逮捕された事件があったな

その女教祖はある好青年(確か名前はユタカ)にベタ惚れしてて、
自分の宗教の信者達には「ユタカ様」と言わせて自分と同じように敬わせていたんだと

しかし、信者の中に
「ユタカ様とドライブしてみたい」とか「ユタカ様ってかっこいい」と言う女がいれば、
「お前には狐がとりついておる!」と言い出し、
他の信者たちを呼び、集団リンチで殺していたそうだ

この女教祖が逮捕された後の話は、
その時俺がヤンデレに興味がなかったせいか、どうなったのかはよく覚えていない

89 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/28(月) 23:35:13 ID:aXXMwxmi
>>88
前半の文でカルタグラを思い出し
中の文でこの女痛いなと考え
後半でカルタグラの再プレイを決めた

90 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 22:11:24 ID:JI5inxaN
ヤンデレを3日間ほど徹底スルーしたらどうなるんだろう

91 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 22:24:48 ID:vrW15ifj
前スレ落ちた?
1000いくかと思ったのに

92 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/29(火) 22:39:12 ID:BnF9RCyL
>>90
1週間というSSが保管庫にあってだな

93 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 01:39:50 ID:b2ceXhLE
>>90
今の未来日記が似たような状況だと思う

94 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 01:43:41 ID:WjciKzqG
>>90
腕組まれたり添い寝されたり、やりたい放題される

95 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 15:16:55 ID:dKFi3s8/
ヤンデレ女にやりたい放題されたいな。
ああ二次元が出てきてくれたいいのに

96 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 15:49:53 ID:AZsNBQud
>>94

「ほら男くん。腕くんでみようね…」
「お、女さん…そ、それなんか違う…!!」
「ん~?じゃあ上に乗っかっちゃうよ」
「ああ!!女さんの体温は感じるけど、かなり違う気が!!」
「……ワガママばかり言うと!!」
「あだだだだ!!!!」


ヤンデレ柔道娘?

97 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 12:11:47 ID:7Pwbiol6
捕手

98 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 13:04:30 ID:J3V1WISz
投手

99 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 13:17:48 ID:i6U3Ixs2
86だけど、短いが一応形になった
というわけでこれから投下する

100 名前:ヒキコモリと幼馴染 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 13:18:45 ID:i6U3Ixs2
「お、7777だ」
僕がよく行く、全員が固定ハンドルネームをつける馴れ合い掲示板がある。
今日もいつものようにいったら、アクセスカウンターが7777という、縁起のよさそうなキリ番になっていた。
「七誌さん、おめでとう~」
「ちくしょー、俺が踏むつもりだったのに!」
「七誌オメ」
すぐに掲示板にそんなカキコミがならんだ。
ちなみに七誌とは、僕のハンドルネームである。
7777、いかにもいいことがありそうな数字じゃないか……といっても、ヒキコモリの分際でにいいこともなにもないか。
僕は、そのキリ番を踏んだことを少しうれしく思いながらも、その喜びはすぐにこの“ヒキコモリ"という、負け組としかいいようのない、自分の境遇に対する絶望に上書きされてしまった。
僕は一つため息を吐くと、掲示板にキリ番を踏んだことの報告をし、そのまま別のサイトを開いた。
ちょうどそんな時だ。俺の部屋の窓ガラスがコツコツ、と鳴ったのは。
カーテンがしてあり、外の様子は窺い知れないが、その音の原因ははっきりと分かってる。
だから、僕はそれを無視して、またサイトを眺める。
「信也くん、起きてるよね」
うるさい。
その声自体は、大して大きくもなく、いや、むしろ遠慮がちで、うるさいという形容詞からは程遠い声だ。
だが、僕にとっては、うるさくて、不快でしかたがなかった。
ヒキコモリ続けて早半年。
教師なんて言うまでもない。心配し、そして叱責してきた父、媚び諂ったかと思えば、何をどう考えたのか知らないが、自殺未遂までしてみせた母。
彼らですら、とうの昔に僕に干渉し、社会復帰させることを諦めてしまっている。
それなのに。
そんな中、この糞女――古閑風香、僕の幼馴染だ――だけは、未だに僕に対して接触を謀ってくる。
いい加減にして欲しかった。
彼女が知っている昔の僕とは違って、もはや現実世界をまともに生きていく気なんて微塵もなく、
パソコンの中のささやかな幸せや楽しみが世界の全てとなっている僕にとっては、現実世界をまともに生きている彼女は、それだけで、存在するだけで、僕にとっては猛毒にも等しい。
その猛毒が、積極的に自分にアプローチをはかってくるのだ。
小鳥のさえずりの様な可愛らしい声も、小動物のような、キョトキョトとせわしなく動く仕草も、僕にとっては、聴覚や視覚に訴えかけてくる毒に他ならない。
それなのに、彼女は僕の気持ちなどまったく顧みず、どんな罵声を浴びせようと彼女は毎朝毎晩僕にいちいち接触を試みてくる。
うんざりだった。
もう僕は経験から、どんな誹謗中傷も意味を成さないことを知っている。
だから僕が取る選択はたった一つ。
無視だ。
息を殺し、じっと彼女が立ち去るのを待つ。
しかし、いつもはしばらく無視すれば立ち去るというのに、今日はいつになっても立ち去らず、それどころか、起きてるのは分かってるだの、出てきてくれだの、僕に声をかけてきやがる。
時計を見ればもう九時、とっくに学校は始まってるはずだ。
と、そこで気づいた。今日は土曜日、休日だ。
最悪だ。もう寝た振りしていてもしょうがない。僕はパソコンをカチカチを弄り始めた。
「あ、やっぱり信也くん起きてたー。ねえ、今日はいいことあったんだから、久々に外に出てみようよ」
なんてヤツだ。僕がこれだけ無視しているのに、まったく意に介した様子も無く、明るい口調で話しかけてきやがった。
最悪だ。
僕はヘッドホンをつけると、大音量で音楽を流し始めた。そろそろ寝ようと思っていたのに、とんだ災難だ。
しかも、こんな生活をしている僕に、いいことなんてあるわけないだろ。しいて言えばあの掲示板のキリ番を踏んだくらいだ。
その思考に至った瞬間、背筋に寒気が走った。
いや、まさかそんなはずはない。僕がいつもアクセスしている掲示板でキリ番を踏んだことなんて知っているはずもない。ただの偶然。ただ僕の気を引くためのでまかせがちょうど当たったってだけだ。

101 名前:ヒキコモリと幼馴染 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 13:19:42 ID:i6U3Ixs2
音楽で彼女が何を言っているかは分からないが、まだ彼女がいて、何かを言っていることも分かる。
彼女は何を言っているのだろうか。まさかとは思うが、僕を監視していたりするのではないか。
僕は、ヘッドホンを外した。
馬鹿馬鹿しい。ただの偶然なのに。
自分で自分に嘆息する。ヒキコモリ生活のせいだろうか、こんなくだらない妄想に囚われるなんて。これは彼女の言に従うわけではないが、少し外に出たほうがいいのかもしれない。
「ね? 一緒に神社まで散歩しようよ、ほら、いい天気だよ」
外にでるっていっても、てめえと一緒に出る気なんてさらさらねえよ。
「ほら、紅葉でも見たいって言ってたよね? 神社なら綺麗だよー」
僕はガタンと跳ねた。
当然、僕が彼女にそんなこと言ったわけじゃない。家族とだってもう随分会話してないんだ、まして他人なんかとそんな会話をしているわけが無い。
しかし僕は思い当たる節があった。
あの掲示板に、紅葉の写真が添付されたときに、見に行きたいと書いていたのだ。
いいことがあったとか、紅葉を見に行きたがってるとか、どうして知ってるか。
誰でもすぐにこの思考に至るだろう。
『アイツはこの掲示板を知っていて、俺の固定ハンドルも知っている』
糞っ! 胸糞悪い。一体どこから洩れたんだ! つまり今までずっと僕のカキコミは彼女に駄々漏れだったってことか。
思わずキーボードを机に叩きつけて破壊しそうになった。しかし破壊してしまえば、外界と接触を取らざるをえなくなるため、すんでのところでそれを堪えた。
「死ねこのストーカー女! 気持ち悪いんだよ! 警察に通報するぞ!!」
意味が無いと分かっていながらも、窓の向こうのアイツに向けて悪態を吐く。
返事は、無い。
糞っ!
再び悪態を吐いた後、僕はこの掲示板のブックマークを削除するために、ブラウザのブックマーク一覧を開いた。
ブックマークにマウスの矢印を重ねて左クリック。
それを実行しようとした瞬間、窓ガラスがコツン、と鳴った。
誰もいないものと思っていた僕は驚いて、その拍子に右クリックしてしまった。
そのことによって掲示板は更新され、現在の書き込みが表示された。
その更新されていた内容。それを見て、僕は愕然とした。
「どうして分かってくれないの?」
「私はあなたのことを思っているだけなのに」
「誰がなんと言っても、私だけは信也くんの味方だから」
僅か数分の間に書き込まれていた書き込み。
そして、その書き込みを行っているハンドルネームは一つだけではない。
この掲示板の、主に書き込みをしている住人全員のものだった。
愕然とし、咄嗟に窓ガラスのほうを向く。
窓ガラスにはカーテンがかかっていて、外の様子は窺い知れない。
でも……。
僕はゴクリと唾の飲み込み、深呼吸をすると、意を決してカーテンの前まで歩く。
目を瞑り、開き、勢いよくカーテンを開けた。
朝の眩しい陽光が注がれる。
反射的に目を覆い、そしてその手を序々にずらす。
そこにあったのは、ただの何の変哲も無い庭だった。
はあ……と安堵のため息を漏らす。
まあ特にあの女がいなかったからいなかったからといって、何の問題の解決になる訳でもないのだが。
それでも安心して、カーテンを閉じると、もう一つため息を吐いて、天井を仰いだ。
そして、風香と目が合った。
思考は停止し、目のピントは固まってしまったかのように、彼女の目から逸らす事ができない。
天井板の一部を外し、天井から風香が僕を見ていた。
「信也くんのこと、ずっと見ているよ」

102 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 13:20:04 ID:i6U3Ixs2
投下終了です

103 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 13:36:31 ID:WnfULUJc
これは神作品の予感!!!
GJ!!

104 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 13:50:58 ID:i6U3Ixs2
神作品も何も、続き書く予定ありません

105 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 14:01:51 ID:Dh/6G0Ao
住人は全員風香の自演かw
GJ

106 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/05/01(木) 14:55:05 ID:kaumOuSf
GJ!
他の言葉は見つからぬ

107 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 14:55:38 ID:kaumOuSf
すまない。ageてしまった

108 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 15:55:18 ID:7Pwbiol6
それでも続編を望む

109 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 16:04:21 ID:bH11oGiA
GJ!
でも、この展開だと続きは書けないよな
出来たとしても質が下がりそうだしさ……

なので、違う短編も書いてみて下さいなw
自分的には、とても良かった


110 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 16:26:49 ID:Hu78xs5+
「こ~こはど~この箱庭じゃ?」を思い出した

111 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 16:40:29 ID:aDjeonJL
>>110
俺も俺も

112 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 20:11:32 ID:rwAih/+8
ところで5/3のやみなべ祀行く人居る?
今回は都産祭の一環で今までより規模が大きいみたいなんだけど
前回のようにクレームがきて当日会場が混乱しないか不安だ…

113 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 20:51:51 ID:WnfULUJc
>>104
続きを書いてくれたら近所のヤンデレあなたに差し上げます。
更にさらにさーらーに、もう一人、予備のヤンデレもおつけします。

114 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 22:37:42 ID:T5hsuvVS
このスレの人間は肉体的にはドMなのに
精神的にドSな人間が多いと思うのだが、どうだろう?

115 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23:17:25 ID:Dh/6G0Ao
心も体もMな俺が参上

116 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23:49:10 ID:i6U3Ixs2
>>108、>>113
もし続き書くとしたら、登場人物の背景や性格が微妙に俺好みではないので、その辺を直した別物を書くことになるでしょうね
プロットにしたらほぼ同じものですが
>>110-111
元々このプロットはホラーものとして書いたものなのであながちはずれでもありません
しかしヤンデレ好きになった今考えてみると、アレはいいヤンデレ


というわけで、連投臭くなってしまいますが、第三話を投下します

117 名前:ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23:50:13 ID:i6U3Ixs2
空が微かに白み始めたころ。
香草さんが大きな伸びをして起床した。
「……起きてたの?」
香草さんは木の根元にもたれかかっている僕を見るなり、そう言ってきた。
「火の番が必要だからね」
「相談してくれれば、私だって……」
香草さんは珍しく柔和な態度をとっている。これが見れただけでも、半徹夜の価値はあったかもしれない。
「無理しなくていいよ。その代わり、今からよろしく。僕はこれから少し寝るよ」
僕はそう告げると、寝袋に包まって即時に夢の世界に旅立った。


――――――――――――――――――


「……なさい!」
甲高い何かが聞こえる。まったく、なんだよ人が気持ちよく寝てる時に……。
「起ーきーなーさーいー! 一体いつまで寝ているつもりよ!」
耳朶を叩き壊さんばかりの大声と、甘い香りで目を覚ました。
声のした右のほうを向けば、鼻の頭がぶつかりそうなほどの超至近距離に香草さんの顔があった。
反射的に飛びのこうとしたが、両手両足が寝袋で封じられているため、飛びのくことも出来ずにただ変なポーズをとっただけになってしまった。首がグキリとなる。
「あいたっ!」
「もう、なにバカやってんのよ。もうアンタ以外準備出来てるんだからね」
「あ、朝飯は?」
「……あの鳥が木の実摘んできたわよ。それと虫も! 信じられる? 虫を食べるのよ!?」
うわー、露骨に不快そうだなあ。
虫かあ……まあ僕も食べたことが無いわけでもない。都会の人間はあまり食べないみたいだけど、若葉町なんか思いっきり田舎だからなあ。
「あ、ゴールド起きたです! 木の実食べるですー? それとも虫食べるですー?」
軽快な声とバサバサという羽音が聞こえた。頭を少し持ち上げてみれば、ポポが僕のほうに飛ぶように跳んでいるところだった。
待て待て、ちょっと待て、まさかそのまま……。
僕の顔から見る見る血が引いていく。その憂慮どおり、彼女は両膝で僕の腹の上に着地した。
当然声にならない悲鳴を上げた。意識を失うほどでないだけ、昨日よりはマシだったが。
「どうしたです? 具合悪いですー?」
「な、なんでもないよ。大丈夫だから早く僕の上から降りて……!」
軽い拷問だ。早くどいて貰わないといろんな秘密を意味もなくゲロってしまいそうだ。
ポポは多分事態を理解できていなかっただろうが、僕の上からはどいてくれた。
「あ、虫潰れちゃったですー」
体を起こして見てみれば、ポポの鉤爪には潰れた虫と思しき液体と物体が付着している。彼女は体を器用に丸めて、それをペロペロと舐めていた。
他人の食生活にとやかく言う気は無いが、これは結構キツイ光景だな。
ちゃんと契約して登録したら、そういうのは控えてもらうようにしよう。
僕はその後、普通に木の実を食べると――この木の実がやたら苦かった。どんな錯乱状態でも一瞬で正気に戻りそうな苦さだ。甘い木の実もあるというのに――、荷物を片付け、火を消し、そのまま吉野町に向けて出発した。
「あのさ、昨晩考えたんだけど、折角人数増えたんだし、協力しない?」
「協力?」
「そう、ポポに僕らの上を飛んでもらって周囲の警戒をしてもらうのさ。草むらの中じゃあまり早いうちから野生のポケモンが分からないだろう?
上から見て、それを伝えてもらって、早期発見早期撃退ってね。それに多分鳥ポケモンが目立つ位置にいるってだけで虫ポケモンは逃げ出すはずだし」
「いらないわよ、そんなの」
「まあまあそう言わずに、物は試しだと思ってさ。いいね、ポポ?」
「分かったですー!」
ポポは素直でいいなあ。前方を肩を怒らせて歩いている香草さんに見習わせたいよ。
と、思っていたら、早速ポポが大声を出した。

118 名前:ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23:50:34 ID:i6U3Ixs2
「ポケモンいたですー!」
「どの辺ー?」
「あっちのほうにいるですー!」
あっちかよ!
思わぬ不意打ちに僕と香草さんはこけそうになる。
そういえば、野生で暮らしていれば方角を指す言葉なんて知っているわけが無いな。
「ポポー、一度下りてきてー」
教えないといけないな、と思ってポポを下ろした。
「どうしたです?」
「あっちってその方向さ?」
「あっちですー」
ポポはビシッと翼を二時の方向に向けた。
「『蔓の鞭』」
香草さんがその方向に二本の蔓の鞭を伸ばせば、何かにぶつかった音と短い悲鳴が同時に聞こえ、その後草むらを僕達から遠ざかるように走り去る音が聞こえた。
やっぱり思った通りだ。草むらにおいて二人は相性がいい。……ポポの問題さえ解消できれば。
「よしポポ、勉強の時間だ」
「勉強? それ食べ――」
「食べられないよー。勉強ってのは、頑張って頭をよくしようってことだよー」
「勉強したらいいことあるです?」
「食べ物たくさん食べられるようになるよー」
「やるですー!」
ポポの扱い方がちょっと分かってきたかもしらない。
「何『ちょろいな!』みたいな顔してんのよ、気持ち悪い」
な、中々厳しいな……。
「やっぱり役立たずじゃない。だから私はあんなのとは」
「はいはいはいはい」
ここで全自動愚痴聞きマシーンになってもよかったが、時間が勿体ないから悪いとは思いつつ流す。
ああ、間違いなく彼女は怒るんだろうなあ……。
予想通り、彼女は大声でわめき散らしている。でも暴れたりしないからまだマシか。
「いいかポポ、正面が十二時、背後を六時とする。で、こっちの翼のほうを三時、こっちの翼のほうを九時だ。覚えた?」
「覚えたですー」
「よし、じゃあ次はそれぞれの間を三つに分けるんだ。十二時と三時の間に一時と二時、三時と六時の間に四時と五時、六時と九時の間に七時と八時、九時と十二時との間に十時と十一時。分かった?」
「よ、よくわかんなくなったです……」
「あはは、一気にやりすぎたか。まあ三時六時九時十二時さえちゃんと覚えてくれれば、後は適当でいいから。じゃ、出発しようか」
ポポは再び飛び上がり、香草さんは僕が走ってなんとか追いつけるような速度で進みだした。
ポポは混乱していたみたいだったが、実際は割とよく理解できていたみたいだ。
ここからは本当に順調だった。ポポが指示した先に香草さんが蔓の鞭を伸ばし追い払う。ほとんど歩を止めることすらなく、昼までにかなりの距離を進んだ。
僕にもっと体力があればもっと進めただろう。
もっとも、人間離れした体力があれば、だが。
「ぜはーぜはー」
「情けないわね」
肩で息をしている僕に、香草さんは理不尽な言葉を浴びせてくる。
「は、早いよ、進むの」
「普通よ、このくらい」
大部分の人間にとっては普通じゃないんだ。
昼食のために止まったが、もう動き出せそうに無い。
「木の実とってきたですー」
「お、ポポ、おかえりー」
ポポが木の実を摘んで戻ってきた。
「何か水がある場所あった?」
「なかったです……」
うーん、木の実のおかげでかなりの節水になってるから、吉野町まで水分補給できる場所がなくても大丈夫といったら大丈夫なんだけど、それでも不安だなあ。
「まあいいや、じゃあお昼にしようか」
「はいですー!」
こうして僕とポポは木の実を食べだした。
今度の木の実はやけに冷たい。先ほどまで火照っていた体が、今はもう寒気すら感じる。
僕とポポは普通に談笑しながら木の実を食べていたが、香草さんは僕らから距離をとって、会話に加わろうとするどころか近づこうとすらしない。

119 名前:ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23:51:43 ID:i6U3Ixs2
うーん、中々難しいなー。
元々他の種のポケモン嫌いに加えて、天敵の鳥ポケモンだから、ポポと仲良くするのは相当難しいだろう。
でも、僕はどうせならやっぱり皆仲良く旅をしたい。
その旅がたとえ途中までの短いものであったとしても、だ。
「もう行くわよ」
僕が木の実を食べ終わったころ、見計らったように香草さんが声をかけてきた。
僕はこんな短い休憩では満足に疲労がとれるわけもなく、本音を言えば一歩も動きたくなかったが、早く体を温めないと明らかにやばい気もする。
「ポポ、もう大丈夫? 多分また休憩無しで日が暮れるころまで飛びっぱなしになると思うんだけど」
「大丈夫です……。それより寒いから早く動きたいです……」
ポポが食べた実も、僕が食べた実と同じ実だったみたいだ。香草さんだけが、僕らの様子を見てキョトンとしている。
彼女のそんな顔が可笑しくて、にやけそうになるのをなんとかこらえる。
もうこれ以上怪我を増やしたくないし。

ポポが空高く舞い上がったのを確認すると、僕達は再び歩き出した。
時たまポポが野生のポケモンの存在を伝え、遭遇する前に香草さんがそれを迎撃するだけで、他のトレーナーや人に会うことも無い。
速度的には僕達はかなりハイペースだし、最後尾からのスタートなんだろうから、出会ってもおかしくはないと思うんだけどな。
そんなことを考えていたとき、ポケットに入っていたポケギアが突然激しく振動した。
ポケギアの画面を見れば、宇津木博士からメールが来ていた。
香草さんとポポに止まってもらって、そのメールを確認した僕は、我が目を疑わずにはいられなかった。
「そ、そんなことって……」
「どうしたのよ?」
香草さんは怪訝な顔をしながら僕のところまで歩いてきた。そして僕のポケギアの画面を見て、僕と同じような強張った表情を浮かべた。
「ロケット団復活ですって!?」
「し、信じられない……」
「どうしたですー?」
僕らの様子が気になったのだろう、ポポも地上に降りてきた。
「ポポ、字読める?」
「読めないですー」
ポポは元気に右の翼を掲げながら言った。
「だよねえ……。ロケット団って知ってる?」
「知らないですー」
ポポはさらに元気に右の翼を掲げながら言った。
「だよねえ……。ロケット団っていうのは、とっても悪い人たちの集団のことだよ。ポケモンを正式な契約無しに捕獲して売りさばいたり、自身の技を使って犯罪行為をしたり……三年前に壊滅させられて解散したって聞いたんだけど……」
「それで、そのろけっとだんってのがどうかしたです?」
「復活したんだよ……それで、宇津木博士から、『この辺での目撃情報はまだ無いけど、一応念のため、今は使われていない旧街道を使うように』って。その街道は通行には不便なんだけど、見通しがいいから、多分警察の人たちが何人か派遣されてるんだろうね」
「で、どうするのよ」
香草さんがズイッと僕の視界の前に来た。
「どうするもこうするも……旧街道のほうに――」
「何ふぬけたこと言ってんのよ! 他のパーティーがちんたらしてる隙にリードするチャンスじゃない!」
僕の言葉を最後まで待ってもくれない。
「で、でも、もしロケット団と会ったりしたら――」
「所詮チンピラの集まりじゃない! それに、三年前壊滅させたのだって、私達と同い年くらいのパーティーだったらしいじゃない! なら大丈夫よ!」
僕の言葉にかぶせるように彼女は自信満々に言った。一方の僕は、彼女が自信を持てば持つほど、自信が無くなっていく。
「そ、そんなのただの噂話じゃないか……」
「昨日も言ったでしょ? 私は、誰にだって負けないんだから」
その赤い双眸には、強い光が宿っていた。
はあ……と僕は軽くため息を吐いた。彼女にはかなわないな。
「分かったよ。でも、一つだけ約束して。戦闘中……もし戦闘になったらだけど、ちゃんと僕の指示を聞いてよ。昨日みたいに暴走するのは無しだからね」
「う……そんなの、分かってるわよ!」
彼女の頬がぽうっと赤く色付く。一応昨日のことは恥ずかしく思っているんだな。
「たとえ逃げる、っていう指示でも、だよ」

120 名前:ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23:52:17 ID:i6U3Ixs2
「うう……分かったわよ!」
彼女はかなり癪なようだ。声がほとんど怒り声になっている。まあ彼女のプライドから考えたら逃げるなんて絶対に嫌なんだろうなあ。
でも、古くの言葉にすら、三十六計逃げるにしかず、なんていうものもあるくらいだ。逃げることの有効性は確かなものなのに。
「じゃあ、逃げるときの合図を決めとくよ。僕がリュックに手を入れたら即座に戦闘を中止して、僕の後を追って一目散に逃げてね」
僕はそう言って、リュックから手のひらサイズの筒を取り出した。
「にゃんにゃかにゃんにゃんにゃーん。シルフカンパニー製、怪しい光曳光弾ー」
僕はそれを頭上に掲げながら、だみ声を作って言った。少しでも場を和ませようと思ってだ。
「……ナニソレ?」
しかし、僕の期待を見事に裏切って、彼女はポカーンとしている。
「怪しい光と同じ効果がある曳光弾。だから絶対に光を見ないでね」
「いや、そうじゃなくて、その前の」
「アレ? 知らない? そういう感じのシーンのある有名なアニメあったじゃない?」
「……知らない」
うっわー、完全に滑ったな、こりゃ。
「ま、まあいいや、そういうことだから」
僕は無理やり話を終わらせると、逃げるように歩き出した。
ものの三十分で後悔した。
僕の足とスタミナはあっさりと限界を突破した。
というわけで、今僕は香草さんに蔓の鞭でずるずると引きずられている。
もうだめだ、休憩しようと言ったら、アンタなんかに付き合ってらんない、と香草さんが蔓の鞭で僕を縛り上げ、そのまま引きずって歩き出したからだ。
草がうっそうと生い茂っているお陰で痛くは無いが、ズボンとリュックは黄緑色に染まっていることだろう。
僕を引きずったまま香草さんは無言で日没間際まで歩き続けた。
日没間際なので、当然夜目の利かないポポは木の実を探すこともできなかった。

「……なにこれ」
僕が差し出したものを見て、香草さんは不服そうな顔をしている。
「何って、乾パンと水だよ」
「見れば分かるわよ、そんなの。……それよりもどうしてこんなものしかないのって聞きたいの」
「しょうがないだろ。香草さんが日が暮れるまで止まってくれないからポポは木の実を探しにいけなかったし、火を使ったら野性動物やポケモンは逃げても、ロケット団は逆に寄ってくるだろうし」
「……」
文句を言いつつも、香草さんはきっちり完食していた。
そして今日も昨日のようにメタモンガムを噛み、就寝の準備をする。
ちなみにポポが、「ポポもそれ食べたいですー」と言ってきたので、一応の効能を説明してガムをあげたら、噛むのもそこそこに飲み込んだ。大丈夫だよな? 人体に対しては無害なはずだよな?
ガムの効能を説明している間も、飲み込んだことを叱っている間も――ポポは「おいしくないです……」とか言っていてまともに聞いてなさそうだったが――、
香草さんはずっと不機嫌で――と言っても昼間のような過激な不機嫌さではない。空気を澱めるような、ダウナーな不機嫌さだ――、僕達のそばに寄ろうともしかなかった。
はあ……と軽くため息を吐いた。
ポポは僕のため息の意味が理解できないのか、ぼおっと僕を見ている。
「香草さん」
僕は藪の中で横になっている香草さんに声をかける。
「……」
返事がない。もう寝てしまったのだろうか。……いや、この空間を伝わってくる不機嫌オーラで分かる。彼女はまだ起きている。
「……何?」
「今晩は火を焚かないじゃない? だから用心のために固まって寝たほうがいいと思うんだけど……」
「絶対イヤ」
即答だ。予想通りだけどさ。
僕はその後、一言も言葉を発しなかった。
ポポは当然すぐに寝てしまったし、そして……。
「……香草さーん」
小声で呼びかける。しかし返ってくるのは規則正しい寝息の音だけ。
よし、もう寝たみたいだな。
僕は香草さんの……というか大部分の草ポケモンの性質上、夜に弱いということが分かっていた。だから僕がちょっと待っていれば香草さんはすぐ眠ってしまうわけで……。
僕は寝ているポポを抱きかかえ、同じく寝ている香草さんのすぐそばまで移動した。

121 名前:ぽけもん 黒 ロケット団復活 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23:53:07 ID:i6U3Ixs2
月の光に照らされた香草さんの寝顔はとても美しく、どこか幻想的な雰囲気すら纏っている。
こうして見つめている分にはいいんだけどなあ……。
はあ……、とまた一つため息を吐くと、僕も眠った。

「起きるですー」
頭とペシペシと叩かれる感覚。どこか舌足らずな声。
それらで僕は目を覚ました。
ポポの幼い顔が僕を覗き込んでくる。
「おはよう。香草さんは?」
「離れて木の実食べてるです」
ポポの指すほうを見れば、こちらを見ながら無表情で木の実を食べている香草さんがいた。
「そうか……。ポポはさ、香草さんの態度、気にならない?」
「気になるって何がです?」
「いや、かなり距離とってるだろ?」
「草ポケモンは皆近づいてくれないです」
ああ、そういえばそうだ。ポポにしてみたら、香草さんの態度は当然のものなのか。うーん、色々考えさせられるなあ。人間とポケモンの共存はもちろん、ポケモンごとの共存も難しい問題なんだな。
そんなことについて考えながら食事を終え、再び吉野町に向かって歩き出した。
やはり行進は順調そのもので、まともに遭遇したポケモンは一人もいない。
相変わらず空気は最悪だったが。
今日は僕は昨日の疲れもあり、午前中から引きずられることになってしまった。
やはりほとんど会話もないまま昼食を取り、ほとんど休まずに歩き続けた。僕は歩いてないけど。

そうして、日が傾き始め、そろそろ吉野町に着くかな、と思ったころ。
僕達の上を飛んでいたポポが、大きな声を出した。ポケモンを見つけたときより焦っているように見える。
「十二時の方向に、全身真っ黒の怪しい人たちが三人いるです!」
僕は慌てて蔦をほどき、体勢を立て直した。
「服に赤い字で何かかかれてない?」
「書かれてるです!」
やっぱり! ほぼ間違いなくロケット団だ! まさか町の入り口近くで張っていたのか!?
どうしようかと考えていると、向こうにも目の効く者がいるのか、こちらに気づいたらしい。高らかな笑い声が聞こえてくる。
「ハーッハッハ!」
「我々はロケット団だ! ガキ共、おとなしく――」
ロケット団の演説は途中で中断した――いや、させられた。
草むらの間を縫う、低い蔓の鞭が三人の足を絡め取り、逆さ吊りにしたのだ。
彼らの着ている服は、やはりロケット団のものだった。
ロケット団は人間の男が一人にポケモンが男女二人か。多分、どっちもコラッタかな?
「コ、コラ、人の話は最後まで聞けと――」
男が何か喚いたが、香草さんはそれをまったく意に介さず、左の林に向かって高く放り投げた。
罵声、絶叫、悲鳴。その三つの声が順番に発せられた。
その声もかなりの距離飛び、林に突っ込むころには聞こえなくなった。
唖然とする僕とポポ。
「なんだ、やっぱり大したことないじゃない」
平然としている香草さん。
「香草さん! いくらなんでも死んじゃうよ!」
「別に死んでもいいじゃない。どうせゴミよ。それに、多分生きてるわよ。ちゃんと加減したから」
あ、あれで加減したって言えるのか?」
「で、でも警察にちゃんと突き出さないと――」
「警察に一体なんて言うのよ? そんなことしたら私達が迂回しなかったことがばれちゃうじゃない」
そ、それはそうだけど……。
僕は何も反論できなかった。
香草さんはしばらく僕を見ていたが、話は終わり、と言うようにプイッと向き直り、そのまま無言で進み始めた。
僕は僕で、かけるべき言葉が見当たらず、一瞬の逡巡の後、彼女を追って歩き出した。
ポポも困惑しているようだが、僕達に続く。
そうして、それからすぐ僕達は町に着いた。

122 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/01(木) 23:54:29 ID:i6U3Ixs2
と、いうわけで投下終了です
話は全然進んでいませんが

123 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/02(金) 01:09:06 ID:DnlCmsuZ
>>122
非常にGJ!
香草さんはツン→ンデ→ヤンとみた!
蔓の鞭って拘束に便利ですよね

124 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/02(金) 09:39:21 ID:yX3Vqd3Z
>>122
ずっと待ってたよ、gj!

香草さんかわええw

125 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/02(金) 11:44:25 ID:YUUYxXst
ぽけもん 黒キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

126 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/02(金) 22:41:53 ID:PMsXYit9
ロケット団がちょい役すぎるな。たった数行じゃないか。

127 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 08:57:53 ID:yChHOa4d
ロケット団の宿命ですw

128 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 10:02:02 ID:xYjM7rLE
ヤンデレな幽霊のSSはありませんか

129 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 11:00:39 ID:aPnxtwm4
「今日はすごい雨だなぁ…」と思ってたら、ふとこんな事考えた。雨の中、ヤンデレに言われたいセリフはなんだろう

130 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 11:46:42 ID:fRKPB0kl
雨に濡れながら主人公を待ってるっていうのは定番だけに人気もあるのでは

131 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 12:21:01 ID:CyM/iuM7
主人公に頼まれて一緒に空手の練習をしていたヒロイン。
ある日、主人公が乗っていたバスが高速道路で大規模な事故に巻き込まれる。
ヒロインは初めのうちこそ楽観していたが、次々と舞い込んでくる絶望的な知らせに精神を疲弊させられていく。
日付や時間の感覚をなくしたヒロインは、主人公と二人きりで練習していた場所で待ち続ける。
周囲が闇に染まっても、どしゃぶりの中でも、毎日毎日、ずっとずっと……

みたいな妄想が浮かんだ。

132 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 14:53:39 ID:yxzQn2KP
>>131 それヤンデレかな?

133 名前:触れられない優しさ[] 投稿日:2008/05/03(土) 15:32:59 ID:ZfWXD8eZ
書いてみました
投下してみます


>>128
書いてみた

――か、体が動かない。どうやら金縛りにあったらしい。また、か……
「こんばんはぁ、健ちゃん」
僕の脳の中で甘ったるい女性の声が反響する。その声の主は、僕が愛した女性の声だ。名前を由梨という、二年前に事故死した彼女の。
「ふふ、また来ちゃった」
目を開けると、向日葵のように微笑む、生前のままの由梨の姿があった。透き通るような長い黒髪も、陶器のような白い肌も、睫の長いぱっちりとしたかわいらしい瞳も……
「健ちゃぁん……さっき、どこ行ってたの?」
そして異常なまでの僕への独占欲も。全て生前のままの彼女だった。

134 名前:触れられない優しさ[] 投稿日:2008/05/03(土) 15:33:54 ID:ZfWXD8eZ
「い、いや……別に」
声が出せないので心の中で呟く。幽霊ってのは心の中まで覗けるのか、声が出せなくても会話はできた。
「別にって……私に言えないことなの……?」
悲しみとも怒りともつかない声が脳内に響く。聴覚を介せず、直接脳に語りかけてくる声からは逃れられない。
「私には分かるよ。健ちゃん、女の家にいってきたんでしょ?」
そう、確かに僕は今晩女の子の家に行ってきた。でも、別にやましいことをしてきたわけじゃない。言い訳はできないのは分かっているが、説明したところで、彼女が理解してくれるか怪しかった。
「健ちゃん……私のこと嫌いになったの?忘れちゃったの?」
由梨が僕の頬に手を伸ばす。だが、彼女の半透明の手は僕の体をすり抜ける。幽霊である彼女は、生きている僕の体に触れることはできないのだ。それでも彼女は幾度となく触れようとした。そしてその度にうなだれた。
「嫌いにもなってないし忘れてもないけど……ごめん」

「……なんで謝るの?」由梨は無表情で僕を見下ろしていた。見る者すべてを凍り付かせるような目で。それは、僕が由梨以外の女の子と話したりご飯を食べたりしたときの表情。
そしてなまじ美しいだけに、恐ろしかった。

135 名前:触れられない優しさ[] 投稿日:2008/05/03(土) 15:34:24 ID:ZfWXD8eZ
投下終わります

136 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 15:57:57 ID:xYjM7rLE
>>135
GJ!!
まさか書いてくれるとは思わなかったよ!!
ありがとう!

137 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 16:03:55 ID:ZfWXD8eZ
>>136
いや、なんか恩きせがましいこといってすいませんでした
要は閃いたといいたかったんです

あとsage忘れすみませんでした…

138 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 16:23:46 ID:Fj87ocXr
>>137
素晴らしい、もっとくれ!

139 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 19:06:38 ID:iGVVwY+0
>>112
微妙に遅レスですが、やみなべ祀一般参加で行ってきました。

やみなべ祀としての規模自体は前回とあまり変わっていないという印象でした。
ただ、他のイベントと合同&雨でしたので会場に入る時が多少混雑していたかな?

前回盛り上がった落書きスペースのヤンデレしりとりは健在で、前回は最後の文字
が1番目の文字に繋がるように終了しましたが、今回は中央部分に書かれていた
"中に誰もいませんよ"に繋がった後、最後は"よろしく誠君"でめでたく終了。
と思ったらなんとヤンデレしりとりIFバージョンとして第2弾が開始。
こちらの方も最後が"ん"になる言葉で終了。
またこれも前回あったナイスボートでの外周埋めですが、今回はあまり埋まらず
途中から前回参加した方がネタを交えて1人でナイスボートを埋めて
こちらも終了。
そして終了間際、女性スタッフの方が来てヤンデレしりとりの内容を途中まで音読
してくれるというサプライズがありました。
アフターイベントは前回同様ヤンデレカルタ大会でした(自分は不参加)。
なお、次回開催は11/3、川崎で開催を予定しているみたいです。

ヤンデレのマグカップ(ヤンデレカルタ大会参加者に抽選でプレゼントされた)欲しかったな・・・。

140 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 19:45:31 ID:yxzQn2KP
川崎だと……!?地元だ……。

141 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 20:25:10 ID:xTbUXORb
地球なんて言うからには、この惑星は球体なわけで。今僕を苦しめるこの暑さを知らずにいる人々がたくさん居る。
それはひどく不公平だと思う。
完全に自分勝手な考えではあるけども、訂正するつもりはないし、異論も認めない。
暑苦しいのは気候だけで十分だ。
夕方の空が藍色に染まっていくのを縁側で眺めながら、僕は夕涼みをしていた。
涼は景観から、と取り付けた風鈴は少しも揺れていない。
ふと聞こえた吐息に僕はため息を吐いた。続いて振り向く。
背後には一式の敷き布団とそこに横たわる少女。
艶やかな黒髪が汗ばんだ肌に纏わりついて、ほんのり朱に染めた頬と喘ぐような吐息。乱れた浴衣姿と寝具は情事の余韻のようでもあるが、実際はそんなに色っぽいものでもない。
彼女は僕が奉公している屋敷の娘さんで、時代が時代なれば『お嬢さま』と『下男』なわけだ。そんな僕らが関係を持つなど有り得ないし、あってはならない。

142 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 20:26:26 ID:xTbUXORb
では、一体何なのだ。
その答えはとても込み入ったものではあるが、端的に言うなれば僕の『仕事』なのかもしれない。
僕は縁側から這うように彼女の下へ向かった。
僕の接近に築いた彼女は、探るようにその手を辺りに漂わせた。彼女の腕は周囲のものを気にせず漂い、枕元の水差しにぶつかってしまう。けれども水差しは倒れない。間一髪伸ばした僕の腕が受け止めていた。
ふと下を見遣れば僕の胸の中に彼女が居た。
艶やかな黒髪と同色の目隠しと猿轡。それらがよく映える白磁の肌。
純粋に、極々純粋に、綺麗だと思った。
僕は慣れた手つきで目隠しを取る。それを巻いたのは僕なのだから外す手つきが慣れているのは当たり前だ。
目隠しの下、血の色の瞳が真っ直ぐに僕を見つめていた。
途端に痛みを覚え、声を洩らす。痛みを感じた右腕は彼女のそれに力強く握られていた。彼女の白磁には幾許の青筋が走り、長い爪が僕の肌に食い込んでいる。
僕は視線で彼女に拘束を解くよう促す。しかし、彼女は首を横に振る。

143 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 20:28:38 ID:xTbUXORb
仕方無く僕は左手だけで猿轡を解いた。手元が覚束ないのでひどく手間取る。
自由を得た彼女の唇はまさしく水を得た魚のように言葉を紡いだ。
「愛しています」
僕は気にしない。
彼女は言葉を紡ぐ。次々に、次々に。
愛しています。
愛しています。
愛しています。
愛しています。
愛しています。
「うるさい」
僕が制止の言葉をかけると彼女は微笑んだ。
「やっと聞いてくれた」
彼女の笑みがあまりにも可憐で見取れてしまった。
それがいけなかった。
しまった。と考えた頃には既に彼女の左腕が僕の首に伸びていた。
柔い細腕のどこにこんな力があるのかと思うほどに強く、万力のように締め付けられる。
意識を失いそうになる。
しかし、すんでのところで僕の意識は『仕事』を果たす目的に踏みとどまった。
「ごめん」
水差しを強かに打ちつけた。

144 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 20:30:55 ID:xTbUXORb




夕焼けはとっくに終わっていて、風鈴を月明かりが照らしていた。
僕の傍らで安らかな寝息をあげる彼女の黒髪を梳く。愛しさとかが胸の内に湧き上がるものの、首筋に残る赤い手形に寒気を感じてしまう。
でもこれが僕の『仕事』。
元来彼女の家の家系は狂気に囚われやすいらしく、更に女性はそれが顕著に現れる。彼女も例に洩れず、狂気と正気の狭間で揺れている。
僕らの家系に代々与えられる仕事はその狂気を受け止めること。
彼女たちが狂気に堕ちてしまわぬように、よき伴侶を得るその日まで。

145 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 20:31:20 ID:xTbUXORb
つまるところ、僕が感じるこの思いは作り物なわけで、僕は彼女にとっての繋ぎでしかない。
彼女が僕を愛していることすら、その場しのぎでしかないかもしれない。

故に望む。
彼女がいつの日か本当に愛しい人と結ばれるなら、それが本当に幸せであるように。
僕がその時には死んでいるようにと。


それまで僕は死ねない。


彼女が呟く。
「愛しています」
それはきっとただの音の羅列に過ぎず、意味なんて無い、見出しちゃいけない。
「僕もだよ」
言ってから気付いた。この想いはきっと報われない。
僕は少しだけ涙した。
月は霞んで消えてしまい、僕と重なった。

146 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 20:33:24 ID:xTbUXORb
誰もいない!
(゜Д゜≡゜Д゜)
投下するなら今だ!

ってノリでやった
反省はしない
後悔はしている

147 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 20:51:52 ID:6Yz5zL3h
>>146
しかしいるぜ。
なんだか情景がきれいな感じだ、GJ

148 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 21:17:03 ID:bV45Habb
短編投下します
例によって書きながらなのでちょっと時間かかるかもしれません
のんびり見ていただければ幸い

149 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 21:19:14 ID:xYjM7rLE
>>148
全裸でお待ちしております

150 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 21:26:22 ID:bV45Habb
ぴちゃりと――
小さな水音がするのは、彼女の行儀が悪いからだ。誰も食べ方など教えなかったし、教えたところで
彼女は覚えようとしないだろうし――覚えなかったとしても、誰もこまりはしなかったから。地下室に
いるのは彼女と私だけで、それ以外に人の目はなく、誰にはばかることもなかった。
思う存分に、
思うがままに、
彼女は食事を楽しんでいる。

「――――――」

私はそれを見ている。美味しいかい、とも、慌てなくてもいいよ、とすらいわない。
ただ、見ている。
見ているだけだ。決して手は出さない。地下室に存在するモノは椅子が一つきりで、その椅子を私は専有して
いる。自然、彼女は剥き出しになったコンクリートの上に座ることになるが、それを苦と思う様子はない。
そもそも――
彼女が何かを思うのか、私はよくわからなかった。ものを食べているとき、嬉しそうにしているから、感情は
あるのだろうが――それが本当に『嬉しい』という感情なのかも、私にはわからない。
誰も彼女に教えなかったから。
生まれたばかりの赤子、どころではない。生まれるまえの胎児にすら等しいのだ。

「――――――」

私は無言のままに部屋の中を一瞥する。部屋、というのもおこがましい。箱、と呼称するのが
正しいであろう空間。地下の深く深く深く深くに封じられた地下室。壁を突き破ったところで、
その先にはどこまでも続く土の重圧があるだけだ。外へと繋がる戸と、換気のための目に見えな
穴。外部と繋がるのはそれくらいのものだ。
外部。
その言葉にどれほどの意味があるのだろう? 彼女は、外を認識していない。彼女にとって、外
など存在しないのではないか。私はただ、『どこからともなく現れて食べ物をくれる人』としか思
われていないのではないか。
そう、思った。

「――――――」

視線を部屋から中央に座る少女へと移す。水溜まりのなかに膝を曲げて座りこみ、口も身体
も汚しながら一心不乱に食事を続ける少女。小さな少女だ。抱きあげれば壊れてしまいそうな、
生きるために必要最低限な筋肉すらない壊れかけの少女。かつては白かったウェディングドレ
スは、今では真っ黒に染まっている。
ただの黒ではない。汚れて、澱んだ、黒ずんだ色。かつては紅かったものが、時間とともに
黒くなって――ウェディングドレスは、黒と白に染まっている。
水溜り。
色は紅で、存在は血だ。食べ物から滴り落ちる血を浴びて、食べながら、少女は笑っている。
微笑んでいる。
嬉しそうに。
幸せそうに。
自身と同じ体構造のモノを食べながら――微笑んでいる。

151 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 21:34:40 ID:bV45Habb

ぴちゃり、
ぴちゃりと――だらしなく食べるたびに、口から毀れた血と肉が血だまりの中で跳びはね、彼女の
ウェディングドレスを染めていく。自身が食べた記録を積み重ねるように。
私は、
私はそれを見ている。何も知らない少女の、何も知らずに食人行為を重ねる少女を、ただ見ている。
見つめて、
観察し、
待ち、
焦がれている。

「――――――――」

そんな私の視線に気づく様子はない。彼女は微笑んでいるが、その頬笑みは私へと向けられた
ものではない。誰にも向けられることのない、ただの純粋な感情の発露。だからこそ――それを
私は尊いと思うし、見つめているのだ。
微笑んでいる。
自分の肩から生えた腕と、食べているものが同じカタチであることにも疑問を思わず。皮をち
ぎり指を食み腕を噛む。切りとられたそれを、嬉しそうに食べている。
彼女は、
純粋だった。
何も余計なものを与えられていない、余分なものを与えられていない、人間として究極すぎるほど
に先鋭化された存在。道具を遣うこともできず、言葉を話すこともできず、そんな存在さえ知らない。
与えられたものを甘受し、ただただ満たされて育ってゆく。
そこに不幸はない――幸福はないから。
そこに絶望はない――希望はないから。
地下の深くの、閉ざされた世界。
まるで楽園だ。神の作りあげた世界のようだ。けれどここには禁断の木の実もなければ
蛇もいない。楽園はいつまでも閉ざされていて、外に出ることはない。少女は知恵をつけ
ることもなく、永遠は永遠として続いている。
それを、
私は、

「――――――――」

少女が腕を食べ終わる。切断面から洩れた血が地面に水たまりを作り、その上にはこぼした
肉片がいくつも浮かんでいる。もったいないと、純粋にそう考えたのだろう。少女は尻を突き
あげるようにして四つん這いになり、ぴちゃぴちゃと、血だまりを舐めはじめる。
手でかきよせるようにして肉をあつめ、舌ですくうように食べる。真っ赤な唇。真っ赤な舌。
紅く紅く、血よりも紅い彼女の臓器は、何よりもの生きている証左だ。
ぴちゃぴちゃと、
ぴちゃぴちゃと――血を舐める音だけが、静かな箱に響き渡る。



152 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 21:42:57 ID:bV45Habb

美味しいとも、
不味いとも、
彼女は言わない。言うことができない。その口はただ、肉を食むためだけにある。その体
は育つためにある。
足りない。
まだ、足りない。
何が?
時間が。
あるいは、全てが。
足りていない。

「――――――」

だから私は見る。ただ、見つめている。閉ざされた世界での少女の成長を。姿を。
四つん這いになり血を舐めるその姿を。猫のようだ。失われた動物のように、彼女は
音を立てて血を舐める。跳ねた血が、文様のように彼女の肌に痕をつける。生まれて
から一度として陽の光を浴びたことのない肌は白く、一度として切ったことのない髪
もまた白い。すべては白かった。それが少しずつ、血と時間で紅く黒く染まっている。
育っていく。
汚れて、穢れて。
彼女は、育ってゆく。

「――――――――」

私は何も言わなかった。彼女が満足がいくまで舐め終わるのを待ち、更には満足げに眠る
まで動きすらしなかった。椅子に座り、彼女の生態を観察する。彼女にとっては――私は此処
にある椅子と同じようなモノに過ぎない。視線をやることもなく、丸くなって眠りについた。
いつものように。
そして私はいつものように椅子を立ち、眠る彼女の元に歩み寄る。濡れたタオルで彼女の汚
れた肌と、血の跡がつく髪を丁寧にぬぐい取る。時間をかけて、優しく。起こさないように、
傷をつけることのないように。最後に彼女の下着を脱がせ、確認し、新しいのを履かせて傍を
離れる。
寝た子を起こす趣味はなく、
私は何の声をかけることもなく、閉ざされた箱を後にした。

……ぱたん。


153 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 21:48:30 ID:bV45Habb

――箱。

それは彼女の部屋だけではなく、この場所全てがそうだと言えるのだろう。
箱。
閉ざされて、開かれることのない箱。
そもそもが蓋の存在しない箱。蓋の開け方は失われてしまった。強引に外に出たところ
でそこは土の壁があるだけであり――数百メートルと続く壁を越えて『上』へと出たとこ
ろで、そこはもはや人の住む世界ではないのだろう。
かつてから変わっていなければ、だが。
だがもはや確かめる方法はない。『上』で変化が起き、誰かが来てくれるのならばわか
るかもしれないが――それはただの夢物語である。
世界は閉ざされている。
箱は閉じ切っている。
ずっと昔から、そうであったように。
――だからここは楽園だ。楽園の内側だけで循環する、外側を必要としない閉じた
世界。
彼女と、
私と、
二人しかいない――楽園。さながらアダムとイブのように。

「……いや、」

久しぶりに声を出して否定する。彼女のいる部屋にいる間は、声を出すことができない
から。自分の声を聞くのは自分だけだ。
いや、と否定する。
さながら、ではない。
ある意味では――本質的には。
そのものだ、と自嘲するように呟いた。

「……構わない」

そう、
構わないとも。
世界にいるのは私と彼女だけであり、それだけで世界は成り立っている。楽園は閉ざされている。
彼女は禁断の果実を食べることなく、幸せを甘受して生きている。だからこれは私だけの苦しみだ。
一足先に禁断の木の実を食べてしまった、彼女よりに先に食べてしまったという、それだけのことなのだ。
構わない。
今更――悔やむはずもない。
世界には私と彼女しかおらず、
私は彼女を――愛しているのだから。
そうだ。
そのはずだ。

世界はそうやって成り立っている。



154 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 21:54:36 ID:bV45Habb

かぶりをふり、私は余計な思考を振り払う。悪い癖だ。どうしても考えてしまう。彼女が
成長すれば成長するほどに、考えてしまうのだ。
思考は余計だ。
思索は無意味だ。
後悔も躊躇も必要がない。
世界はこうなっているのだと、受け入れるしかない。
狂ってはいない。
初めからこうだっただけだ。
私たちはこうあることしかできず、
それならばきっと――外のほうが狂っているに違いない。禁断の木の実を食べ、楽園を捨て、
自ら滅びるほどに発展し繁栄した外のほうが。
それでも――

「神様を――恨まずにはいられない」

アダムのように、私は呟く。
イヴのように、私は呟く。
私たちがアダムとイヴならば、それを作った神がいる。
比ゆではなく。
確かに――いるのだ。ただ神と名づけることしかできないだけで、それは私たちと同じような
モノなのだろうけれど。この地下室を造ったものは、確かに存在する。
彼は、
彼女は、
何を考えて――こんなものを作ったのか。
希望をこめてか。あるいは絶望とともにか。不幸のどん底からのがれるようにか、希望を求めるためにか。
それとも。
私は思う。それを作ったのも、あるいは私なのではないかと――思わずにはいられない。
だとすれば、自業自得としかいいようがなく、

「――――――ははは」

いつものように私は笑った。
何度目か数えきれない思考は途絶えることなく、私は笑う。
閉ざされた箱の中で、笑い声は反響し、消えることはない。

155 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22:03:04 ID:T4P/z52t
書き上げてから投下しろ

156 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22:05:57 ID:bV45Habb
いつも通りはいつまでも続く。次の日も私はいつものように食べ物を持って彼女の部屋を訪れ、
いつものように彼女はそれを食べた。その日は左足で、彼女はそれを抱きかかえるようにして食べていた。
血だまりの中で。
食べにくいのか、貪るたびに彼女の体が揺れ、必至で挑むように食べている。
ゆらゆらと、
白い髪が、
白い身体が、
黒い婚姻服が揺れる。
ゆらゆらと、揺れている。
振り子のように揺れる姿を、私は椅子に座ったまま見つめている。手をのばしても届かない距離だ。
彼女から手を伸ばしたことは一度としてなく、私から手を伸ばしたこともまた、ない。
まるで箱だ。
お互いが箱に詰められていて、外側を知り得ることはないのだ。彼女にとって、私など、食べているソレ
と大差はない。
私にとって――
私にとって、
彼女はどうなのだろうと、考えた。

「――――――」

考えるだけだ。決して答えは出さない。出す必要もない。
初めから出ているのだから。
言葉にする必要など――どこにもなかった。
いつものように彼女は食事を終え、いつものように寝転がる。今日は珍しく食べる量が少なく、
床に散乱する肉と血だまりはそのままだった。身体が倒れたときに、ばしゃりと大きな音と
ともに血だまりが跳ね、波のように広がった。
仕方なく、私は血だまりを踏むように歩き、彼女のもとへと歩み寄る。身体を拭くためには
場所を変えなければならない。だが、そうすれば彼女は起きてしまうだろう。思案し、先に確
かめることにする。黒いウェディングドレスのスカートをまくり、下着を下ろし、

「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」

手が止まる。
視線が固まる。
意識は硬直し、心音だけが、高く深く跳ねた。
ずりおろした白の下着は、汚れていた。
外側からではなく。
汚物でもなく。
初めて。
初めて――内側から、紅く汚れていた。

――初潮の、紅。

「――――――――は」

何よりも先に笑いが漏れた。
手よりも視線よりも先に、それらを全て忘れたように、口からは笑いが出た。

「は――――はははははは」

視線は穢れた下着にとまったままに、口だけが我を忘れたように笑い始める。はは、ははは、と。
彼女が起きるかもしれない、など思いもしなかった。何を考えることも放棄して、笑っていることを
意識できないほどに――私は笑う。
笑う、
笑わずにはいられない。
待っていたものが――ようやく訪れたのだから。
そうして、私は。

157 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22:15:15 ID:bV45Habb

「×××××」

初めて、彼女の名前を呼んで、
その体を、押さえつけた。
小さく、細く、壊れそうな体を――壊すかのように押さえつける。白い髪が散らばり、
押さえられた頬が血に埋まる。眠りについたばかりの彼女は、浅い眠りから叩き起こされた。
目を覚ます。
目を開けて――私を見た。
初めて。
おそらくは初めて、彼女は私を認識した。背景の一部でしかなかったモノが、突如として自身の
身体を押さえつけていることに驚くように目を開いて。そのことに私の方が驚いてしまう。彼女が
驚くとは思わなかった。何をされているかわからず、世界の一部として受け入れるかと思ったのだ。
構わない。
驚くが、驚くまいが――このあとの展開が変わるはずもない。

「――――――――」

彼女の視線を見返しながら私は動いた。ずりさげた下着はそのままに、めくりあげたスカート
もそのままに。血を受けて黒く染まるウェディング・ドレス。逃れられないように、細い両手首
を片腕で抑え込み、
残る片腕で、自らの服を脱ぎ、性器を露出させる。

「――――――」

彼女は無言だった。無言のまま、私を見上げていた。何も言わない。何をされるかも、
わかってはいないのだろう。私が動いていることに驚いているだけで、行為そのものに
頓着はしていない。
構わない。
反応を――求めているわけではない。
委細気にすることなく、私はすでに張りつめていた性器を、何ひとつ愛撫していない
彼女の秘所に突き刺した。愛液ではなく――血に濡れる秘所へと。
短剣のように。

「――――――――!!」

流石に劇的な反応があった。行為の意味は知らずとも、痛みだけは明確な事実として存在する。
突然内臓を抉られたようなものだ。無理やりに押し開かれた秘所の痛みに、彼女は暴れようとする。
無理だ。
細い腕は暴れれば自ら折れそうなほどに弱いのに――逃れられるはずもない。ばしゃばしゃと、血の
水たまりをかき混ぜるように動くことしかできない。逃れることができない。一部で繋がり、一つとな
った体は、前へ進むことすらできない。
悲鳴をあげる。
声ではなく、
音を張りだすように、彼女は痛みからのがれる悲鳴を叫んだ。
――ああ。
良い音だ、と思う。それは初めて聞く彼女の音だった。微笑みではない、彼女の内側
から発せられる意図だった。他人から与えられるとはこんなにも良いものなのか。突き
さした性器は痛いだけで快楽などなく、その音によって恍惚を得る。
縛っていた手を放し、彼女を後ろ向きに組み伏せるようにする。自由になった手をばた
ばたと動かすが、やはり血をかき混ぜるだけだ。必死に前へ――私から離れようとするが、
しゃくとりむしのように前後するだけで、一歩として前へは移動しない。
ばしゃり、
ばしゃりと、血が跳ねる。
血の海で、溺れている。

158 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22:23:09 ID:bV45Habb
初めての性行為を心地よいとは思わない。知識でしか知らなかったことを体験したところで、
快感があるはずもない。痛い。ただ痛い。彼女が突き刺される痛みに悲鳴をあげるように、私は
締めつけられる痛みに臓器を持っていかれそうになる。当たり前だ、たった今、今日、初めて変
わったばかりの体なのだ。性交渉に向いているとは思えない。
けれど、
向き不向きに関わらず、
彼女はもはや、未熟ではない。
未成熟ではない。
熟している。
果実は、熟れた。
受け入れることができる。

子供を造ることができる。

それだけが全てだった。
無作為な前後運動を繰り返す。自身は動かない。後ろから抱き締めるように彼女の
身体を固定するだけでいい。彼女は這って逃げようとし、逃げられずに戻ってくる。
鈍感な往復運動。内臓で内臓が擦られる。
熱い。
痛くて、熱い。はちきれそうなほどに。
堪える理由など、どこにもありはしなかった。
迷いなく、
繋がったままに、
解き放つ。

「……………………!!」

一瞬――視界が白く、真っ白に染まる。自身の腰が意志と関係なくはねる、抱きしめた
彼女の身体が同じように跳ねるのがわかる。同じように、彼女の意識もまた白ずんでいる
のかもしれない。意志を、力を、生命を、絞り込むように彼女の中へと放出する感触。
注ぎこまれる感触が、彼女をむしばんでいる。
腰がはねる。止まらない。二度、三度と放出し、そのたびに彼女の身体が痙攣する。逃
げようとしていた身体が止まる。力の抜けた身体が血の海に突っ伏し、だらしなく開いた
口から唾液とともに舌が零れ、無意識で血を舐めていた。
そっと――
つきさし、今は萎えたそれを抜き取る。白と紅に汚れてたそれを抜き、しまうことなく、
私は彼女を見下ろす。
動かない。
死んではいない。初めての外的接触に意識だけが飛んでいる。私もそうしたかったが――
最後の力を振り絞るように立ち、彼女の箱を後にした。

……ぱたん。


159 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22:38:20 ID:bV45Habb
戸を開け、しめる。それだけで世界は隔離された。

「……………………」

小さな部屋だ。箱状で、彼女が生きる部屋と大差はない。地下深くに沈められた世界は、
二つの箱が繋がりあうような構造になっている。本来ならば向こうが居住区であり、こちら
が生命維持のための部屋だったに違いない。地上から離れても、長く長く生きていられるように。
再び『上』が命溢れる世界になるまで逃れるために。
生命維持。
それは――間違っていない。確かに向こうの部屋が停滞ならば、こちらの部屋は生命だ。

――禁断の果実がここにある。

彼女が食べることのなかった果実が、私の前に広がっている。
ずるずると戸に背を預けて座り込み、私の箱を見遣る。箱は狭い。純粋な大きさは彼女の箱と
変わりないのだろうが、モノがあるかないか、という一点で印象の差がわかれている。
彼女の箱には、椅子しかない。
この箱には椅子はない。椅子を埋める間もないくらいに――みっちりと、機械類が詰められている。
命を維持するための機械と、
命を造るための機械が。

「………………ようやく、」

私はひとりごとを呟く。ここにいるのは独りではないが、独り言でしかない。
彼女たちは、聞きはしない。
眠りにつく彼女は、ただのモノでしかない。
それは命だ。
食糧にして――命だ。

「…………前へと、進めそうです」

私は呟く。笑いたかった。けれど、きっと笑いは浮かんでいなかっただろう。
むしろ――笑ってほしかった。
彼女に。
彼女たちに。
私は見上げる。隣の部屋で成長する××××と同じ姿を。巨大な試験管に詰まった彼女の姿を。
箱の中にみっちりと詰められた試験管の群れを、その中で眠り続ける彼女たちを。無限に造られ
ながらも生殖機能を持ち得ない彼女たちを。
――楽園は完全だ。閉ざされている。死すらなく、子供を作る必要などない。
酷い冗談だ。この中にいる限り死ぬことはなく、それが故に子供を作る機能がないだなんて。
それを得たければ、外で育てるしかないだなんて――コレを食べながら。
禁断の木の実。
すべてが、それだ。彼女そのものが。それを食べてしまった以上、二度と楽園へは戻れない。

私は、独りでは生きられない。

だから幾度となく続けるのだろう。彼女が子を成すまで。私以外のモノが生まれるまで。自分以外の
他者が生まれるまで。たとえ同一のモノから生まれたとしても、それは別のモノだろうから。
愛すべきダレカが生まれるのを願って――私はぼんやりと、立ち並ぶ試験管を、
私と同じ姿をした彼女たちを、ずっと見つめていた。

世界は狂っている。狂ったダレカが作ったから。初めから狂った私たちは、独りでなくなることを祈り、願う。
はやくおおきくなあれ、と。

(了)

160 名前:はやくおおきくなあれ ◆msUmpMmFSs [sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22:41:17 ID:bV45Habb
投下終了です。時間かかってごめんなさい
ふと思い立って投下した短編ですが、相変わらず主人公側が病んでるとか色々アレです
血の池でカニバリするドレスの女の子は好きですか

お茶会はもうしばらくかかりそうです
待ってくれてる人、ありがとうございます

161 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22:44:42 ID:Mcfx0Opk
よし、今から見る

162 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 22:45:17 ID:6Yz5zL3h
>>160
お茶会の人か!
途中鬱入りそうになったけど、相変わらずの独特の世界観で乙でした。
いない君はいつでも待ってますよ

163 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/03(土) 23:12:08 ID:xYjM7rLE
カニバリは苦手だ…

164 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 00:55:55 ID:cxdzbSC4
彼は刈ったばかりの芝生の上に横になってる

私の全てを魔法みたいに変えてくれたのに
酷く思いつめてた

あなたが私にしてくれたように
あなたの全てを私が変えてあげた

でも今あなたの目は死んでる

だいたいそんな感じ
ギャグ漫画日和

165 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 02:00:18 ID:Q4rBVE8/
>>139氏も書いていますが一応やみなべレポ。

大雨の中、都産祭という合同イベントなのでかなりの人数が開始前からセンター前に並ぶ。
今回は並んでいる最中もしくはカタログ購入時に18歳以上の人は身分証を提示して
証明のためのリストバンドをつける形でした。

最近の東京都はこの辺の問題に敏感だし、前回はそれで一悶着あったのでこの手間は
センターを気持ち良く利用するためには必要だと思います。

で、中に入って3Fへ。
今回はやみなべ・ハルヒ・初音ミク・クィーンズブレイドが同室で開催。
やみなべのサークルは大まかにハルヒ・スクイズ・オリジナル。比率はオリジナルが多めで前回より
ハルヒ・ひぐらし・シャッフルが減少。(ハルヒは隣が普通のハルヒオンリーだったからかも?)
前回・前々回あったサークルさんが来ない卓は今回は全くなし。

そして毎回恒例落書きコーナーが、これまた毎回恒例超カオスに。
外周で「ヤンデレしりとり」と「NiceBoat」が同時勃発。外周を埋めつつ周囲の絵や文のために
グネグネと曲がるしりとりは圧巻。
NiceBoatはヤンデレしりとりに食われる形で早々に止まるも、途中から馬鹿が「ひとりBoat」を決行。
「NiceBoat」「良好小船」「内酢棒斗」「誠ボート」「ブルーアイズアルティメットNiceBoat」
「ドロー!NiceBoatカード!ドロー!もうやめて誠はとっくに生首よ!」とネタを混ぜながらも
NiceBoatで外周一周も成し遂げる。おつかれ、自分。

終了間際には女性スタッフがヤンデレしりとりの文を読み上げるというお遊びが始まり、
中にはかなり際どい文章も。「できちゃった…あなたの子供」を書いたのは自分ですごめんなさい。

終了後はアフターイベント。4イベント共同じゃんけん大会とやみなべアフターであるヤンデレカルタ。
前回ヤンデレカルタはスタッフがその場で読み上げていましたが、今回はカルタ付属の読み上げCDを使用。
景品は非売品ポスター、非売品マグカップ、売品カルタ+読み上げCDでした。

最後に主催者様の挨拶で次回からは、神奈川に入り川崎で開催とのこと。



今回も前回に引き続き個人的にヤンデレ娘に改造したフィギュア(Pinky:st)を持ち込んだところ
はるか昔にこのスレに投下したフィギュア+SSを見たという方と遭遇、驚きました。
以前の作品(Wikiじゃない保管庫の彩 味香(仮))のに加えてもうふたりほどいますので
折角だしアップしてみます。
ttp://xtp0001.s3.x-beat.com/cgi-bin/up/source/Sonata_24612.jpg
ttp://xtp0001.s3.x-beat.com/cgi-bin/up/source/Sonata_24613.jpg

長文失礼しました。

166 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 07:09:37 ID:Hd6oCBIQ
>>160
カニバリズム大好きな俺には超GJ!
この狂った感じたまらんw

いない君はずっと待ってるのでゆっくり書いていってね!

167 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 11:53:43 ID:NDne1Qh0
>>146
こういうの好きだ
GJ!

168 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 12:00:17 ID:mXK3jQCC
>>165
>途中から馬鹿が「ひとりBoat」を決行。
>NiceBoatで外周一周も成し遂げる。おつかれ、自分。

本人かw
連休中だからか懐かしい人達帰ってきてるなあ。皆さん、乙

169 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 13:03:30 ID:sVl/SzWw
ほトトギすの人まだかな。そろそろ終盤だからかなり待ち遠しい。

170 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 15:34:10 ID:y/qEogVB
無形氏は俺のよm(ry

171 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/04(日) 23:14:27 ID:MUzDDzl7
紳士なら全裸で待て

172 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:22:51 ID:VyAnuljW
みなさんおはようございます。
今日も元気に、ヤンデレ娘に(性的な意味で)迫られる妄想に励みましょう。

第十二話、投下します。

173 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:24:19 ID:VyAnuljW
「掃除用具入れ、異常なし、と」
しけった匂いを放つロッカーの扉を閉める。使い倒された扉の金具が大袈裟な音を立てた。
窓の外に目を向ける。夕方の太陽が放つオレンジ色が雲に映り、鮮やかな光景を作り出していた。
俺が何をしていたのかというと、校内の各教室巡りである。授業が終了してからこの時間までずっと続けていた。
そして、最後の教室である多目的室に到着し、何の収穫も得られなかったことに落胆した。

弟が隠されている場所を探し、一度も入ったことのない多目的室までやってきたが発見できず。
すでに頻繁に利用される教室は全て見回った。男子トイレと、女子トイレまで人がいないタイミングを見計らって調べた。
職員室に備え付けられている更衣室まで掃除という名目で入り込んだ。しかしどこにも弟はいない。
校舎の中で探していない場所というと校長室ぐらい。
しかし、いくらなんでも頭髪に相当の白が混じっている年齢の人間が弟をさらったりはすまい。
残るは部活に所属する人間が動き回るグラウンドと体育館のみだ。

俺がこうしているのは、つい一時間ほど前、帰りのホームルーム終了後に葉月さんから話を持ちかけられたのが始まりだった。
「今日は暇がある? もしあるんなら、今日は弟君を探しに行かない?
やっぱり心配だもの。本当に事件に巻き込まれたのかもしれないし。あなただって、そうでしょう?」
もちろん頷いた。昼休みに花火と一悶着あったせいで、朝よりもずっと弟のことが気にかかっていたから、
葉月さんに声をかけられなくても探しに行くつもりだった。
葉月さんは今、俺の近くにはいない。
俺が学校内を捜索、葉月さんが弟の友人知人に直接話を聞きに行く、という役割分担で動いているからだ。
まあ、妥当な配役である。葉月さんが校内でうろちょろしていたらいろんな人に声をかけられて動きにくいだろうし、
俺は弟の友人知人なんてろくに知らない。
人付き合いのスキルにおいて俺よりも葉月さんの方が上回っているのはほぼ確実だ。
さりげなく話を聞き出すなら、話慣れしている人間の方が上手くやれる。
印象の薄い人間の方が、あちこち探っていても人目につきにくい。
そういうわけで、俺は一人で放課後の校舎を隅から隅まで見て回っているわけである。

多目的室から移動し、振り出しの地点である弟の教室へと向かうことにした。
校舎の一階にある弟の所属するクラスへ向かう。
廊下から窓ガラスの向こうの教室を見ると、誰も残っている人間はいなかった。
遠慮なしに入り口のドアを開ける。
そうしたら俺の目の前に弟が立って――いれば楽なんだけどなあなんて思ったが、もちろんそんなことは起こっていなかった。

この教室には、去年文化祭の準備で一週間ほどお世話になったことがある。
当時の弟の席は窓側の列の中ほど、夏場に窓から差し込む日差しを避けられる壁のある箇所だったはず。
かつての弟の席の机の中や、鞄掛けフックには何も残されていない。机の上の落書きまでない。
果たしてここが現在も弟の席であるのかどうかはわからない。それでも意味もなく座ってみた。
窓の外を見る。空はいつのまにか黒の成分を増量させ始めていた。
もうじき夜が来る。夜になると人に限らず捜しものをするには困難な状況になる。
それに部活をしているわけでもないのにいつまでも校内に残っていたら、教師に目をつけられてしまう。

というわけで休憩終わり。同時に再スタート。
まだ捜索していないグラウンドと体育館へ向かうため腰を浮かす。


174 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:25:26 ID:VyAnuljW
廊下を歩いていると、突然制服の上着の内ポケットが振動した。素早く小刻みに動く携帯電話を取り出す。
電話をかけてきているのは葉月さんだった。通話ボタンを押して応答する。
「もしもし、葉月さん?」
「……あれ? 声……」
「もしもーし。聞こえてる、葉月さん。俺だよ」
「あ、うん。聞こえてるよ。ごめんね、一瞬誰か別の人にかけちゃったかと思っちゃった。
電話を通して聞く声って普段と結構違うんだね」
「そう?」
「うん。顔が見えてないからかな。よくわかんないや」
俺は葉月さんに限らず、声の調子で相手の表情をなんとなく読めるのだが、葉月さんはそうではないのだろうか。
普段の連絡の手段に電話ではなくメールを活用するのは、電話するのが苦手だからか。
――ん? 待てよ。
「葉月さんって、電話苦手じゃなかった? なんで今は?」
「……うん、ちょっとだけ苦手。でも今は、今だけは別だよ。
あなたの声が聞きたかったの。なんだか不安だったから。
弟君が居なくなったから、もしかしたら次はあなたの番なんじゃないかって思っちゃって」
「……ありがとう、心配してくれて。でも俺は大丈夫だから」
「うん。声聞けたから、安心した」
それは何より。
俺がさらわれることなんてことはありえないから無駄な心配ではあるが。
弟みたいな人気者ならともかく、俺をさらって得をする人間などいないはずだ。
まあ、俺が葉月さんと仲良くしている様子を妬んだ男や女にとっては腹いせになるだろうけど。

「それじゃ私、今から学校に行くね。一緒に帰ろう」
「え、ちょっと待って。学校にくるって、葉月さん今どこに居るの?」
「学校から歩いて二十分かからないくらいの場所。走れば十分もしないうちに着くから、待っててね」
「いやいや、葉月さんこそ待って! そのまま帰った方が安全だって。わざわざ学校に戻らなくても」
「いいの! 一緒に帰りたいんだから、そうするの!」
「それは嬉しいんだけどだからってここまで…………って、もう切ってるし」
携帯電話からはツーツーという無機質な音が聞こえてくる。
こちらからかけ直そうかと思ったが、葉月さんを説得しているうちに葉月さん自身が学校に到着するかもしれないので、諦めた。
呆れてやれやれと呟くべきか、嬉しくてにこにこと笑うべきか。
二つの選択の中間、ため息を吐き出す行為をとった後、携帯電話をしまった。

葉月さんがここまでするのは心配しているからだろうが、なぜ心配しているのかというと、
まだ俺のことを好きでいるからなんだろう。
俺は以前葉月さんに告白された。
だから気持ちに応えるため、なんらかの返事をしなくてはならない。
昼休みに花火が俺を非難したのは、俺が葉月さんと中途半端な関係を続けているから。
花火は昼休みのやりとりで、葉月さんの抱く思いと、それに対する俺の反応を読んだ。
告白されたのに、俺が白黒つける回答をしていない、と。


175 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:26:17 ID:VyAnuljW
葉月さんのことを好きか、嫌いか。
嫌いという回答はまずありえない。そんなことは欠片も思っていない。
それではどう思っているのか。胸に手を当てて自問する。
答えはすでに準備してあった。
「俺は葉月さんのこと――大事にしたい。仲良くしたい」
声にすると、心の中のもやは晴れる。
でもこの答えは葉月さんの期待しているものではないはず。
要は、あなたはいいお友達です、ということ。
少し言葉の捉え方を変えれば、いいお友達でしかありませんよ。
もし言ってしまったら、葉月さんは離れていってしまうのではないか――いいや、離れていく。
だったらこのまま答えを保留し続けてもいいはず。

嫌なことから逃げて何が悪い?
一体俺を、誰が責められる?


176 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:27:15 ID:VyAnuljW
不意に、開け放たれた窓から風が吹いてきた。
冷たい風。冷たくて、思考までがぬるま湯状態から、この季節に蛇口から流れる水ぐらいまで冷えた。
「……そんなんじゃ駄目だろ、俺」
誰が責めるか? 二人いる。まず俺、もう一人は花火。
昼休みに葉月さんが呟いた言葉で、葉月さんは俺との今の関係を快く思っていないということが知れた。
でも、答えを出すまで待ち続けるとしたら、葉月さんはいつまでも悲しい顔を隠し続ける。俺に気付かれぬように。

最低じゃねえか。
真剣な気持ちで告白してくれたのに、友達の関係のままでいたいからって応えない。
大事にしたい? 仲良くしたい? 
相手を思うなら真剣な気持ちで応えるべきだろ。
これから仲良くしていくうちに好きになっていくかも? ――本当にそうか? それは具体的にいつになる?
というか、これから先がどうこうという時点で話が違っているだろう。
今の俺が、葉月さんをどう思っているのか。それを葉月さんは知りたがっているんだ。
あえて問い質さずともわかっている。すでに答えは出ている。
全ての始まり、葉月さんに告白されたその日、その時に、確たる答えを導き出していた。
言おう。葉月さんが校門に現れたとき、面と向かって口にしよう。
ごまかし続けるより、嘘を吐くより怖いけれど、言わなくてはならない。

決断すると、不思議なことに足取りがふっと軽くなった。
すっきり起きられた朝に、緩やかな陽光の注ぐ庭で、晴天を見上げながら鳥のさえずりを耳にしているよう。
静かで、気持ちがどこまでも落ち着いている。
頭の中のざらざらした感覚が一切合切払われていた。
俺は今まで告白への返答のことで悩んでいたのだ、と悟ると同時に、罪悪感を覚えた。葉月さんに対して。
だって、あなたの告白の返事を考えていたら頭の中が重くなっていました、なんて言ったら可哀想だ。
むしろこっちの方で葉月さんが傷つくかもしれない。
……このことは言わなくてもいいよな。言うべきことではないし。言うべきは俺の気持ちだし。
結局、一つ答えを出した代わりに、一つ内緒にすることが増えた。

ま、いいか。
頭の中が完全に自由になるよりも少し悩みを抱えている方が俺らしい。
それに、葉月さんのことで悩まなくなったらそこで関係が終わってしまいそうだ。
葉月さんが俺の家に来て妹を一回、俺を数回ぶん投げたあの日、俺が言った言葉は嘘じゃないんだから。


177 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:29:54 ID:VyAnuljW
一階廊下側の窓はたった一つだけ開いていた。俺の位置から五歩前方。
非模範的生徒になろうとしてもなれない俺の足は勝手にオープン状態の窓へ寄っていく。
無視するのも忍びないので、窓を閉じたうえで鍵をかける。
窓の向こうに見える中庭はすでに明度を低くしたテレビ画面のようになっていた。
こんな暗い中、葉月さんを家まで送っていくのか。
嫌だなんて一切思わない。問題は送っていく途中ではなく葉月さん宅に着いてから。
葉月さんの家の玄関、のさらに向こう側、家の中からじっと見つめられている気がするのだ。
家に住んでいるのは葉月さんと葉月さんの両親だけらしいから、視線の主は父親か母親のどちらかだろう。
俺が葉月さんを暗くなるまで連れ回していると思われている、なんて誤解されているかもしれない。
そうなった誤解を解かなければならないわけだが、解くことができるかがわからない。
もしあまり印象を持たれていなかった場合、言葉選びを間違ったり視線を一瞬逸らしただけでミッションオーバーになりうる。
クラス一実年齢と後ろ姿から推測される年齢がかけ離れている、と高橋に評されている俺である。
説得失敗する可能性が濃厚だ。

上手くやる方法はないかなんて考えていたら、ふとあることが浮かんだ。
気だるさが体外に自然放出される。前のめりになるところを、窓枠を掴みガラスに額を押しつけることで耐える。
「あーあ……そうだったよ」
今日一緒に葉月さんと帰れるかわからないじゃないか。
告白の返事をして、その後でどんな反応が返ってくるかいまいち予想できない。
いや、予想したくない。考えると返事する気が削がれそうだ。
だって、だってだぞ。もし泣かれたら――――――
「あああああ、やめやめやめやめ、止め!」
額をぐりぐり窓に押しつける。次に打ち付けようとしたところで、ガラスが割れる光景が浮かんだので停止する。
ネガティブな想像をしたらネガティブな気分になるだろうが。ただでさえ背景は薄暗いってのに。
ともあれ、まずすべきは校門に現れるはずの葉月さんを迎えることからだ。それ以外は考えるな。
たとえ、中庭を一人で横切ろうとする女子専用制服を着た人影が通り過ぎたとしても。

校舎の出入り口へ向けて歩を進め――急停止した後にバックステップ、という行動を体がとった。
今し方目にした光景をスルーするなと脳が拒んだだけである。断じて舞台に備えて演技の練習をしているわけではない。
中庭を観察する。校舎内に目もくれず歩いていくのは確かに同じ高校の女子生徒だった。
葉月さんではない。暗い中でもはっきりわかるぐらい身長に差がある。
髪型も違う。葉月さんは黒のロングだが、視線の先にいる彼女はショートヘアー。
スカートは短い。といってもそれは女子用制服のデフォルトである。
だが彼女のようなか細くないのにしまっている足は、全女子に共通しているわけではない。
みんなああだったらいいのになあという感想はさておいて、観察を続けるべく腰をかがめて移動開始。
校舎内から女子生徒を追い抜き、気付かれぬよう窓の下に隠れ、女子生徒の顔を観察する。
ふうむ、んー……暗くてわからん。

というか、何をやっているんだ俺は。
なんで人気の無くなった校舎内で一人かくれんぼをしている。まるで女子生徒のストーカーじゃないか。
改めて自問しても答えは出ない。なんとなく、中庭を歩いている彼女のことが気になっただけ。
とはいえ、誰かに見つかったら答弁しようがないな。
もうしばらく、女子生徒が誰かわかるまで先生が来ないよう祈るのみだ。


178 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:31:26 ID:mtcrNc77
支援いたす

179 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:34:47 ID:VyAnuljW
中庭にいる彼女と校舎内の俺が距離を空けて肩を並べた時、突然窓ガラスが揺れた。
人為的なものではない。おそらく強風が吹き付けてきたのだろう。
「わひゃあっ!」
小さな悲鳴が聞こえた。女子生徒の方を見ると、彼女はスカートの前を両手で押さえていた。
さらに窓が揺れる。女子生徒のスカートの後ろ側が風によってめくれる。
「もう、何するんですかいきなり!」
女子生徒は俺に背を向けるように反転して尻を押さえ、風に向かって抗議の声をあげる。
俺はというと、心の中で風にエールを送っていた。いいぞ、もっとやれ!

だが、応援の甲斐無く風は活動を止めてしまった。
彼女のスカートの中身は、俺と女子生徒の位置関係、および膝上十センチ以上は死守すべきと
たたき込まれてきたかのような彼女の鉄壁の守りによって、一切見えなかった。
「まったくもう。人が居なくてよかったですよ。きっと見えちゃってたもん」
いいえ、見えませんでした。ですが見たかったわけではありません。
俺はただ必死にスカートを押さえる女の子の姿を見たかっただけ。
ふわりと浮く柔らかなスカートの裾や、さりげなく露出度の上がった白いフトモモ、必死に二本の手で抵抗する女の子の仕草がいい。
同じクラスの女子からは引かれ、男子からは同意を得られない嗜好かもしれない。
だが、悪いことだろうか? 
女子のスカートというものは隠れた向こう側が見えないからこそ魅力があるのだ。
向こう側を知っている、もしくは常時見えている状態であれば興味をそそられない。
そんなものは、引いたら必ず目当てのものが出てくるガチャガチャのようなものである。
ロールプレイングゲームの二周目のボスを倒しても、一周目の時のような感慨も湧かないのと同じだ。
俺は今後「風が吹いてもスカートは役目を全うすべきの会」の代表者として活動し高橋をはじめとする友人から仲間に
引き込んでゆきゆくゆくは春一番と緑風と秋風と寒風の吹き始める季節のそれぞれに会合を開いてゆく所存だ。

「……なんてな」
もちろん本気ではない。自分でもわけ分からなくなってきた。
きっと気分が軽くなっているせいだ。そうに違いない。


180 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:35:30 ID:VyAnuljW
さて、俺は女子生徒が風によって翻弄される光景を目の当たりにしたが、下半身だけに集中していたわけではない。本当だ。
まず、声を聞いた時点で相手の見当をつけられた。丁寧語が印象に残ったからだろう。
続けて、中庭にいる女の子の容姿と予想した相手の容姿を比べた。結果はほぼ一致。
最後に、彼女が俺に背中を向けている間に目を凝らし、女子生徒の顔を確認した。
相手は予想の通り、木之内澄子ちゃんであった。
その澄子ちゃんは、制服の乱れがないかを確認した後で再度目的地へと進路をとった。
今は建物の死角に入ったから姿は見えない。
「怪しい……」
傍から見れば一番怪しいのは俺であるが、それは除外して澄子ちゃんに焦点を絞り込む。
現在の俺の目的は弟の捜索。
弟が自分の意志で俺や花火に黙って失踪したのでなく、何者かの手によって姿を現せない状態にあるとしよう。
そう仮定した場合、第一容疑者は澄子ちゃんということになる。

理由は二つ。
その一。彼女には弟をさらう動機がある。
澄子ちゃんは弟に恋している。
もっとも、身を焦がすような恋をしていても容疑者候補に挙げるには足りない。
それだけで容疑者にしたてられるなら、花火や弟のファンクラブの子たちも疑わしくなる。
しかし彼女には他の女子と違う点がある。
それこそが理由その二。彼女には前科がある。
去年の文化祭の一日目、弟は行方不明になった。犯人は忍者のコスプレをした澄子ちゃん。
事実を知っているのは俺だけだ。もう二度と同じことはしないと信じていたので、かばうつもりで葉月さんと妹には伏せていた。
けれど、同じ事態になった以上はもうかばいようがない。
涙を流しながら縋り付かれても、俺は澄子ちゃんを第一容疑者として認識する。
その第一容疑者が夕方の学校の中を一人歩いている。怪しむのが当然だ。


181 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:37:20 ID:VyAnuljW
急いで靴を履き替えて外に飛び出す。早足よりちょっと早いぐらいの速度で中庭へ向かう。
地面の砂利を踏む音を立てないよう歩くという小細工を使っているつもりだが、音は少なからず発生する。
砂利の音と緊張感が俺の精神をやすりで削るように縁からじわじわと削りカスに変えていく。
削り取られて少し五感が鋭くなった気がした。錯覚を事実として強引に認識。
腕利き諜報員のつもりで建物の陰から中庭を観察する。
澄子ちゃんはすでに中庭にはいなかった。しかし、概ね行き先は絞り込める。
もし澄子ちゃんが弟をさらったなら、今から隠し場所へ向かう可能性が高い。
校舎内は俺がすでに見て回った。弟が校舎にいないことは九割方確信できる。
校舎内に弟がいるなら、澄子ちゃんは中庭から一直線に校舎へ向かい、俺と遭遇するはず。
しかしそうはならなかった。つまり、まだ俺が捜索の手を伸ばしていない体育館かグラウンドに向かった、ということ。

ヤマをはろう。倉庫と床下のスペースがある体育館か、部室棟と屋内練習場の建ち並ぶグラウンド、どちらか。
部活見学さえやらなかった俺は、運動部の部室の内部がどうなっているのかは知らない。
体育の授業で剣道場や弓道場に入ったことはあるが、隅から隅まで見たことはない。
体育館はまだ馴染みがあるが、詳しく知っているかというと否。
「――ふうむ」
顎に右手の指を添えて唸ってみる。
葉月さんはいつやってくるかわからない――いや、そろそろ正門をくぐった頃かも。
なんにせよ、二月の寒空の下歩き回っては体調を崩しかねない。
待たせないためにも、ここは戸の総数の少ない体育館へ向かおう。
部室棟はちょっと数が多い。野球部、サッカー部、ラグビー部、陸上部、テニス部、……エトセトラ。
その点、体育館は正面、裏口、舞台の袖、左右に一つずつだから比較的少ない。
澄子ちゃんがすでに中に入っていたら中から鍵をかけるかもしれないが、澄子ちゃんは間の抜けた部分があるのでかけ忘れる可能性がある。
初対面した日にクロロホルムの効果のほどを知らずにそれに頼ろうとしていたこと、
文化祭の日に弟を自分の体で引きずって移動させていたこと、
クリスマスイブに弟を見失った後でいい年したサラリーマンにつきまとわれていたこと。
あのドジが再発したならば、運良く弟の隠し場所にビンゴするかもしれない。
もし期待以上の成果があったとしても俺は行動しない。すぐに教師を呼び、事態を収拾してもらう。
俺が一人で突っ込んでいっても返り討ち、もしくは二人目の犠牲者になるだけ。
情けないが、自分の実力も図れずに動くよりはずっとマシというものだ。


182 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:39:46 ID:VyAnuljW
足下の怪しい夕刻の渡り廊下を通過し、体育館前へ到着した。
正面入り口の両脇には電灯が設えられていた。
おかげで入り口に至るまでの階段で足をおそるおそる差し出さずに済んだ。
スライド式のドアを開こうとしてみるが、開かない。
諦めて別の入り口へ向かってみる。
時計回りにぐるりと体育館を回ってみたが、どのドアも開いていない。
てことはハズレか。悔しさの中に一滴の安堵がこぼれ落ちて波紋が生まれる。

仕方なく正面入り口前に戻り、葉月さんに連絡をとるため携帯電話を取り出す。
通話ボタンを押す直前、ディスプレイ以上に頼りになる光源の電灯に何気なく視線を向ける。
「む、ん? ……あれ?」
正面入り口のドアが開いている。
わずかではあるが、右と左のドアの間に隙間ができている。ここに来た時には開いていなかったのに。
入り口に近寄り、隙間に両手の指を入れて開くと、重い手応えと一緒にドアは動いた。
何故だ? 誰か忘れ物を取りに戻ってきた生徒がいる?
違うか。生徒に体育館の鍵を管理させるほどこの学校の教師はユルユルではない。
すると見回りにやってきた教師が開けた可能性が濃厚。
その次に、澄子ちゃんが開けた可能性が浮上する。
俺が他の入り口を探している最中に入れ違いで体育館の正面入り口から入り、鍵を閉め忘れるというドジっぷりを発揮した、とか。
中にいるのが教師か、澄子ちゃんか。
どちらにせよ、中に入ってみなければ。もちろん誰にも見つからないように。

体育館のフロアを覗きこんでも人影は無い。見回りをしている教師なら懐中電灯を使うはず。
おかしい。静かすぎる。人が居るなら足音や、戸を開ける音が聞こえるのが普通。
それがない。すなわち誰も居ない、もしくは隠れている。
もしも後者であるなら、隠れる理由はなんだ? 
見つかりたくないから、見つかる訳にはいかないから。
たとえば、他人に知られたくない何かが――――

静寂を打ち砕くような轟音。体育館内の壁とガラス、おまけに自分まで揺れる気がした。
突然の音は正面入り口からやってきていた。外灯の明かりがドアの窓枠の向こうに見える。
入る時は左右どちらかのドアを全開にしたままだったはず。それが今では閉めきられている。
ということは。
「誰かが、閉めた」
としか考えられない。
見回りの教師が今頃来て、体育館の入り口を閉めていったならまだいい。
それ以外なら。俺が中にいることを知りながらドアを閉め切ったのなら、その目的は?
「まさか、俺を、閉じこめ」
「――るのが目的ですよ、先輩」


183 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:42:16 ID:VyAnuljW
不意に聞こえてきた女の声に体が反応する。勝手に足が後退したせいで背中と壁がぶつかり、また驚いた。
「そのっ、声は」
「はあい。木之内澄子ちゃんですよ。いつか先輩の義妹になる、恋する女の子です」
左から右、右から左へと目を泳がしても暗いだけで、澄子ちゃんらしき人影はない。
どこだ、一体どこから喋っている。
「先輩、今アタシを探してますね。よーく見えますよ、ここからなら」
「ここってどこだよ! 姿を見せろ!」
「あれあれ? 焦ってますねえ先輩。怖がらなくてもいいですよ。ここにはアタシと、彼だっているんですから」
彼? 三人称で言われてもわからんぞ。
「でも、先輩が一番早くここに辿り着くなんて思わなかった。
てっきり葵紋花火がくるものだと思って色々用意していたのに。
まあ、いいです。アタシの邪魔をする人、彼を奪っていく人。そんな人たちには相応のやり方で応えます」
花火? 邪魔? 奪って? 応えます?
何を言っているんだ。わからない。耳と脳を繋ぐ回路が混線してるせいだ。

腹部に違和感。同時に耳障りなモーターの音。
攻撃を加えられたわけではない。制服のポケットに入れていた携帯電話が動いただけ。
慌てて止めようとするが、手をコントロールできない。内ポケットは右と左どっちにある?
駄目だ、わからない。制服を脱いで床に敷き、携帯電話を探る。
……よし、見つけた。
本体を開いて、電源ボタンを押そうとして――首に冷たい異物が触れていることに気付いた。
首をぐるりと巻いているこれは、鉄線?
「見ーつけた、せんぱい」
声がとても近くから聞こえた。
強制的に冷められた頭を働かせて、澄子ちゃんの位置を探る。
前、居ない。左、右、居ない。肩越しに背後を見る。誰もいない。
前後左右以外の方向でこんなに接近できる居場所は。もしや。
ゆっくりゆっくり、緩慢に首が上がる。
直上を見上げたとき、そこには。

「ようやく、アタシを見つけられましたね。
まったくもう…………先輩ったら、ほんとうに、キヅくのが、オソインデスネ?」

俺の頭上に居ながら、目と鼻の先で不気味に微笑む澄子ちゃんを見て、その場に尻餅をついた。
澄子ちゃんの口から漏れる音は聞こえない。何か言っているようだったけど、耳が働かない。
次第に霞んでいく意識の中、鉄線が首に食い込む痛みと、携帯電話の放つ緑の光だけを認められた。
振動音と、床を跳ねる音が重なっていく。

ぶぃぃぃん、がたがた。
ぶぃぃぃぃん、がたがたがた。
ぶぃぃぃぃぃん、がたがたがたがた。

いつまでも、音は鳴り止まない。


184 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:43:31 ID:VyAnuljW
十二話は終わりです。

ちなみに最終回ではありません。次回がエピローグなわけでもありません。続きます。

185 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:47:25 ID:5FZBvvDq
>>184
リアルタイムGJ!

186 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 08:49:04 ID:mtcrNc77
>>184
ぎゃあああぁぁあ!!!!
危ない危ないと思って読んでたら案の定捕まりやがった!
葉月さん、葉月さーん! たーすーけーてー!
やっぱり下手人は澄子ちゃんか。ちょっとは信用してたんだけどね。
心臓がばくばく言ってます。超GJ

187 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 16:43:15 ID:03Zdusic
>>184
GJ!
でも、鉄線って体重なんてかけたら首切れない?

188 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 17:33:52 ID:+RqJeO+8
まさかの主人公生首→ヤンデレのターゲットは弟だから物語はそのまま続行
→傍観者編終了、新章突入

189 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 18:44:43 ID:03Zdusic
その後葉月さんはnice boatするんですね、わかります

190 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 20:29:58 ID:vKVVyCW/
別れ話をスルーする女はヤンデレですか。

191 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 20:33:12 ID:mtcrNc77
>>190
かなり近いと言わざるを得ない。

192 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 21:16:02 ID:vKVVyCW/
そうかー、(´・ω・)親父うらやましす

193 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/05/05(月) 21:53:28 ID:DN9Kek6c
だが我々は突っ込まない

194 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/05(月) 22:06:13 ID:vqPF+91Z
sage

195 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/06(火) 00:42:33 ID:0Hny20+I
↓が突っ込みなら俺にヤンデレの友達が出来る

196 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/06(火) 00:52:42 ID:ErT801K5
そんなこたぁない。

197 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/06(火) 01:17:29 ID:uLnTxaht
ヤンデレ なのに 友達?
とんだ矛盾だな

198 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/06(火) 01:20:28 ID:zn9wmRD9
>>195 ←友達→ ヤンデレ ―恋愛感情→ 男

…ということだろう、たぶん。

199 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/06(火) 01:26:15 ID:uLnTxaht
ヤンデレは惚れた男以外にはただのヤンだぜ?

200 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/05/06(火) 01:32:50 ID:h+i77S8x
病みもしないだろ、男以外は華麗にスルー