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292 :ワイヤード 第十六話 ◆.DrVLAlxBI [sage] :2009/01/24(土) 23:47:35 ID:PqgTn3fx
第十六話『イロリ汚いなさすがイロリ汚い』

「ん、ちーちゃん、もう帰っちゃうの?」
「ああ、ちょっと野暮用でな」
「ええー。カナメちゃんの親睦会をしようと思ってたのにー」
頬をふくらませるイロリに苦笑いしつつ、千歳はぷらぷらと手をふって教室を出て行った。
「前から思っていたが、お前は千歳をそんなに好きだというのに、必要以上にべたべたくっついていかないんだな」
「うん。ちーちゃんに、迷惑かけたくないから」
「……?」
イロリの返答の意味を図りかねたナギは、首をかしげたがその後は追及をしなかった。
ただ、イロリは過去に起こった何かが原因で、千歳に若干遠慮をしているのだということはかろうじてわかった。
「とにかく、本題は、カナメだ」
「さんをつけなさいな、デコスケおちび」
「サイクロン掃除機に吸い込まれたような髪形のやつが言うな」
ひたすらに高圧的なカナメと、それに真っ向から噛み付くナギ。
相性はあまりよくないようだ。
いや、むしろ似たもの同士なのかもしれない。
「ま、まあまあ」
いつもは周囲を振り回す側のイロリが、今は仲裁役に回っている。カナメの登場は、人間関係を良くも悪くも変えてしまったようだ。
「とにかく、繁華街にでようよ。そのほうがいっぱい遊べるから」
「まあ、それがいいだろうな」
「賛成ですわ」
なんとか二人も納得してくれたようで、イロリはほっと息をはいた。

 ♪ ♪ ♪



293 :ワイヤード 第十六話 ◆.DrVLAlxBI [sage] :2009/01/24(土) 23:48:05 ID:PqgTn3fx
屋上。立ち入り禁止のその場所だが、警備もなにもあったものではなく、千歳は頻繁に出入りしていた。
もう一人の住人とともにだべるのが目的である。
そして、もう一人の住人は、今もここにいて、寝そべり、空を見ていた。
「やっぱここかよ、彦馬」
「……千歳。やっぱり、君がきてくれるんだね」
「カナメ……いや、カナさんじゃなくて、不満か?」
「ううん、そういうわけじゃないよ。僕は、千歳のことも大好きだから」
身体を起こし、彦馬が千歳に笑いかける。
彦馬は決して男として格好が良い部類ではない。ほそっこいし、背も低いし、全体的に軟弱だ。
性格も、お調子者だが基本へたれであり、空回りしがちで報われない。運動も成績も普通だ。これといった長所はみあたらない。
が、女性的な顔つきはどこか美しさを感じさせる部分があった。今では、それがカナメの双子であるからだと納得できるが、他の誰も気付いていなかった要素だろう。
「なんだよ、男同士で大好きとか……。恥ずかしいやつだな、お前は」
悪態をつきつつも、優しい表情のまま隣に座る千歳。長い付き合いだ。互いに、『分かっている』。
「ははっ、そうかもね。いい男が二人集まったら、一部の女性達の妄想は始まるから」
「いい男って、自分で言うもんじゃねえよ」
「それもそうか。……それに、僕は……いい男じゃ、ないしね」
沈んだ顔になる彦馬。
珍しい。長い付き合いだが、千歳はここまで心から打ちひしがれた彦馬を見るのは初めてだった。
いつもはなにかあっても三十秒で回復するようなやつが、ここまで。
――あたりまえか。
(俺だって、人のことはいえねえもんな。もし、百歌と別れちまって、次にあったときには別人で……)
考えたくも無い。百歌は、ばらばらになってもう滅多にあえない家族の中で、唯一一緒にいてくれる。
それが、消えてしまう。
俺の世界が、消えてしまうんだ。
「お前の泣いたとこ、見たこと無いな」
「そういう千歳だって」
「俺は……影では泣き虫だったさ。ただ、百歌に涙を見せたくなくてな。だから人前では泣かない習慣がついた」
「僕は……たぶん、本当に泣いたこと無いのかもね。たぶん、カナがいなくなってからずっと泣いて、尽き果てたんだと思う」
「そうか」
彦馬の顔を横目にちらりと見ると、確かに泣き顔のようなくしゃくしゃした表情をしていたが、涙は流れていなかった。
意識的に耐えているわけではない。すっからかんで、もう出ないような。
そんな、歪んだ顔。
「なら、お前は前に進め。涙が止まったなら、もう止まるな。強くなれ」
「……!」
「おーおー、驚いた驚いた」
「だって……だって……」
「お前、俺が慰めに来たとでも思ってたのかよ。俺がそんな優しい奴に見えたか? 俺は努力してるやつにしか手は貸さんぞ」
「……ちがうよ。千歳の言葉が、あまりにも僕の予想通りだったから」
「……」
「だから、嬉しいんだ」
「……そうか」
二人は顔を見合わせ、不器用に笑いあった。

 ♪ ♪ ♪



294 :ワイヤード 第十六話 ◆.DrVLAlxBI [sage] :2009/01/24(土) 23:48:39 ID:PqgTn3fx
「げ……げぇむせんたぁというのは初めてきましたが、なんと言うべきか、壮観ですわね」
ゲームセンター『シューティングスター』に訪れたイロリとナギとカナメ。
カナメは、その強大な威圧感――それは逆説的な言い方だが、本来的に言うなら、閉鎖性の生み出す圧力の大きさに圧倒された。
このシューティングスターは、関東でも屈指の強さを持つゲーセンである。
選りすぐりの精鋭たちがひしめき合い、腕を競っている。
「わたくし、ビデオゲームはあまり経験が無いのですが」
「徐々に慣れればいい。お前は見たところ、センスがありそうだ。脳をフルパワーで運用できるんだろう?」
「そうですが、なぜそれを?」
「気にするな」
ナギはそう言いつつも、北斗の拳の筐体にコインを入れた。
「とにかく、見ているといい。北斗は初心者には敷居が高いが、慣れればこれほど面白い物は無い」
カナメはとまどい、隣をみたが、イロリは真剣な目でナギを見つめている。
カナメもそれに従い、それきりだまった。
ナギのトキはレイで遊んでいたモヒカンを即行で瞬殺した。
「うん……。やるね、ナギちゃん!」
「当たり前だ。私は中野でも修羅の称号は持ってる」
イロリとナギがいろいろ納得している中、カナメはあまりついていけていない。
(格闘ゲームというのは、かのような奇怪な動きをするものでしたかしら。わたくし、ウメハラ氏が『小足見てから昇竜余裕でした』といったことくらいしかしりませんわ)
カナメも、昔――カナだった時代には、ストリートファイター2などはやったことがある。
その時は兄の操るザンギエフを待ちガイルでフルボッコにしていたが、この『北斗の拳』は、そんなものとは次元が違うように見える。
「ふむ……だれか、このゲームのデータのようなものを持っていないでしょうか」
「お嬢様」
突然現れたのは、黒服の男、高崎である。
「ここに、このゲームのシステム、キャラクターごとの詳細データ。コンボレシピ、バグ、技フレーム、判定、全ての数値系が記録してあります」
「まあ、仕事が早いのですね!」
「い、いえ……私はここの常連でして……」
「……わたくし、あなたの私生活が気になって仕方がなくなってきましたわ」
「それはまた後ほど。今はご学友との交流をお楽しみください。では」
すっと高速移動して、高崎は消えた。このスピードがあればオリンピックにでても余裕で優勝なのではないかと思うが、高崎はそういう興味は無いらしい。
運動能力はカナメ以上だというのに、もったいないことだ。カナメは少し残念だったが、まあそれは保留として。
「ふむふむ……」
ぱらぱらと、分厚い紙束をめくる。
すっと目を通しただけで、具体的なキャラクターの判定の形状、スピードなど、全てはが頭の中で思い描かれる。
「完全純化した理論値では、ユダと、レイというキャラクターが強いようですわね。しかし、人間同士の闘いではトキというキャラクターのスピードが最強と……。なるほど」
だが、どこか気に入らない。
もっと、自分の性格に合致したキャラクターが欲しい。
「拳……王……!? これですわ! ラオウ様こそが、わたくしには相応しいわ!」
強烈な攻撃力と、永久コンボ。目押しが重要な、職人系のキャラクターだ。
まだ経験の浅いカナメには、慣れとアドリブが必要な別キャラより、差し込みさえ成功すれば永久を狙えるキャラのほうが望ましい。
なにより、王という名前に惹かれる。
「よし……キャラ対策などのデータも覚えました。あとは実戦あるのみ、ですわ」
カナメはずかずかと2P側に座ると、コインを投入してナギに乱入した。
「ほう、初戦で私にいどむか。いい度胸だ」
「わたくし、自慢じゃございませんが、勝負事で他人に負けた覚えはなくてよ」
「自慢だろうが……」
戦いが始まる。



295 :ワイヤード 第十六話 ◆.DrVLAlxBI [sage] :2009/01/24(土) 23:49:10 ID:PqgTn3fx
ナギのトキは、ナギを使わずに攻めを開始する。いわゆるひとつの舐めプレイだ。
が、ナギ無しトキの固めはナギ有りよりよほどぬるい。カナメはかろうじて対応していた。
(レバーとボタンに慣れることができれば、わたくしの能力で『理論値による運用』が可能なはず……!)
耐えつつも、立ち回りによる勝負に持ちこむカナメ。初めて故にぎこちない動きだが、ナギなしトキの火力の低さに救われる。
1ラウンドがナギに先取された。
「どうだ、北斗は楽しいだろう」
ナギがふふんと鼻をならしながら、優越感丸出しで話し掛けた。
「本当に、そうですわね。しかし……」
「?」
「これからが、もっとおもしろくなりましてよ」
2ラウンド目からのカナメの動きは明らかに違っていた。まるで、何年も鍛錬をつんだ修羅のごとき動き。
軽々とトキに差し込み、サイを入れる。長い長い目押しコンが。自分との闘いが始まる。
「なっ……こいつ、まさか……! いや、そんなはずはない。素人が目押し完走など……!」
「そういう舐め発言は、死亡フラグでしてよ」
「何……!」
裏サイにも成功し、カナメのラオウは見事永久コンボを完走してしまった。
がやがやと、ギャラリーが集まってくる。
「おい、初心者が目押し完走したぞ……!」「天才じゃ、天才の出現じゃ!」「北島マヤ、恐ろしい子!」
「まさか『ミス・ファイヤーヘッド』が負けるなんて……」「名前の由来から考えると不自然じゃないけどね」
ちなみに、『ミス・ファイヤーヘッド』とは、ナギのこのゲーセンでのリングネームである。
由来は、ウルトラ戦士隊長ゾフィーの、『ミスターファイヤーヘッド』という異名から。
彼が某鳥っぽい怪獣に頭を燃やされた挙げ句ぼろっかすに負けて殺された衝撃シーンから、そう呼ばれる。
つまり、ナギのリングネームは死亡フラグ満載だった。
「馬鹿な……!」
「そろそろ、お認めになっては? わたくしが、『王の器』だということを」
「くっ……なるほどな。認めねばなるまい。お前は確かに『天才』と呼ばれる部類の人間らしいな。ならば、本気をだそう。その強さに敬意をもって」
ナギの雰囲気が、目に見えて変化する。
深紅の髪は鈍い発光を始め、その瞳も怪しく光る。
(なるほど。野々村ナギさん。どれほどのものかと思いましたが、千歳様のご学友だけあります。……底知れないですわね)
カナメは、ナギから発せられる力がどういうものか、はっきりと今わかっていた。
(この方もまた、『王の器』ということ……。面白くなってきましたわ)

 ♪ ♪ ♪



296 :ワイヤード 第十六話 ◆.DrVLAlxBI [sage] :2009/01/24(土) 23:49:40 ID:PqgTn3fx
「さて、なんだかんだで、彦馬には解決できないこともあるしな」
手伝ってやらねばなるまい。千歳はそう確信し、ある場所へ向かっていた。
学校の裏にある山の、最奥。相当な樹齢に達するという神木。
その根元の部分に、よりそうように眠っている少女がいる。
「やっぱ、ここか」
千歳はあきれたようにふんと息を吐いてから、少女のもとにかけより、肩を揺さぶる。
「起きろ、久遠(くおん)」
少女は応えない。死んだように眠っている。
千歳は冷静に脈を確認する。死んでいない。
「久遠、俺だ、千歳だ」
「……うぅん……いま、ねているから、おこさないで」
どう考えても起きている口調。
「……どうすりゃ起きる? 前みたいにチューペットでも買ってやろうか?」
ふるふる。
少女は頭を横に振った。どう考えても起きてるだろ、これ。
「ちとせ、ちゅーしれ」
「……はぁ?」
「ちゅーしれ」
目を閉じながら唇をとんがらせる少女。
「……」
千歳は、冷静に、なぜか都合よく持っていた激辛めんたいこ(!?)を取り出し、少女の口に押し付ける。
「ちゅー……っ!? ――ん――!!」
瞬間、目を見開いて飛び起きた少女。
しばらく周囲を走り回って、やっと戻って来たかと思うと、千歳の胸にダイブした。
「ちとせ! ひさしぶりっ! くちびる、からいね!」
「アホか」
「ちとせ、くおんバカっていった。くおんバカじゃない。ちとせまちがい。ちとせバカ」
「うるせぇよ。ツッコミだろツッコミ」
「ならなっとく! くおんかしこい?」
「ああ、賢いよ。久遠は賢い」
「くおんかしこい! ちとせすき!」
「ああ、ありがとな」
「すきだから、ちゅーする」
「どこで覚えたんだよ、それ」
「すいーつ!」
「携帯小説のことね……」
――極限まで出来の悪い妹を相手にしているみたいだ。
千歳は自分の体力が順調に削られているのを実感した。自分の実妹が百歌でよかったとも思う。
「おらぁ、てめぇ久遠姐さんになにしとんじゃ! ……って、千歳さんか。ご苦労様です」
「ん?」
いきなり現れていきなり納得した男。どうみても893。千歳には見覚えがある。というか、顔見知りだ。
「ああ、久遠の護衛の人か。悪いけど、しばらく二人っきりにしてくれ」
「へい、もちろんですぜ! それと、親分から伝言です『久遠を女にしてやってくれ。そのかわり俺の家を継げ』とのことです!」
「……おっさんに、『余計なお世話だくそじじい』って言っといてくれ」
「む、むちゃな注文ですぜ……」
「まあ、それに類することを頼む」
「合点承知!」
男はさっさとどこかへいってしまう。
「ふぅ……お前の家のやつは疲れる」
久遠が首をかしげる。
「ちとせ、どうしたの? くおんになにかよう?」
「ああ、ちょっと、訊きたいことがあってな」
「くおんをおんなにしてくれるんじゃないの?」
「そういうことを白昼堂々言わないように教育すべきだったな」
「じゃあ、どうしたの……?」
「うーん。話すと長くなるな。近くに山小屋があったろ。そこで話そう」
「うん!」

 ♪ ♪ ♪



297 :ワイヤード 第十六話 ◆.DrVLAlxBI [sage] :2009/01/24(土) 23:50:11 ID:PqgTn3fx
白熱した第3ラウンドは、ついに終わった。ナギを解禁し、かつ経験の差とキャラ性能の差をしっかりと活用したナギに、当初はカナメが押され、体力は瞬く間に一ドットにまで減らされる。
が、その一ドットが果てしなく長い。
固めの中、甘えたバニシングを放ってしまったナギのトキに対し、カナメのラオウは見事に無想転生を発動。
そのまま永久コンボに移行し、見事に逆転勝利を収めたのだ。
沈黙。
誰もが、二人の熱すぎる闘いに口をあんぐりと開けることしかできなかった。
ぱちぱちぱち。
その沈黙を破ったのは、にっこりと満面の笑みを浮かべたイロリだった。
つられるように、徐々に拍手が増えてゆく。
誰もが、二人の闘いをたたえていた。
「……私の、負けだ。お前は、すごいな、カナメ」
「久々に、ここまで緊張しましたわ。どのような勝負事でも軽く勝って来たわたくしですが、ここまで本気になれたのは久しぶりです。ありがとうございました。ナギさん」
どちらからでもなく、二人は手を前にだし、互いに握り合った。
「さーて、勝ったカナメちゃんには、もれなくエクストラステージが待っています!」
「え……?」
「この私、西又イロリがお相手するよ!」
カナメも、ナギも顔を見合わせ、ぷっと吹き出す。
今更行く所まで言ってしまった自分達に対し、イロリごときがついてこられるのかとでも言っているようだった。
――王の器でもないくせに。
少なくとも、カナメはそう思った。
が、ナギはすぐに考え直していた。
(いや、イロリなら、あるいは、この天才にも……)
イロリは決して才能溢れるタイプではない。
だが、それ以上に何か、もっと深い……もっと大きな。王の器など、問題にもならないような何かが。
確信も無いし、証拠もなにもないが、ナギの感覚にひっかかる、何かがある。
もしかしたら。



298 :ワイヤード 第十六話 ◆.DrVLAlxBI [sage] :2009/01/24(土) 23:50:56 ID:PqgTn3fx
「あー、私を舐めてるなー! これでもめっちゃやりこんでるんだからね! ハイスラでぼこってやる!」
「まあ、お相手いたしますわ」
カナメは明らかに馬鹿にした動作で2P側に座る。
イロリはナギに変わり、1P側に座った。
キャラ選択。先ほどに引き続き、カナメはラオウ。既に、最上級者の域に達している。生半可なレベルのラオウではない。
対して、イロリはシン。世間的には弱キャラとして扱われている彼である。
ギャラリーは、半ばイロリに対し、「死んだな」とでも言いたげな同情の目を向けていた。
第一ラウンドが始まる。
(さあ、どうきますの……?)
弱キャラを使うからには、慎重な攻めが要求される。カナメは、イロリはまず様子見からくるであろうと見越して、開幕は慎重に入った。
が、イロリは違った。
ゴクトをぶっぱしたのである。
「か、開幕ゴクトだー!! 汚い、このシン、汚い!」
「恥知らずなシン使いがいた!」
だれともつかないギャラリーの一人が、興奮して叫んだ。
(な、なんですの、この人、データとは全く違う……予測できない動き……!)
ペースを完全に乱されたカナメは、次の差し込みもイロリに負けてしまう。
やりこんでいると言うだけあってコンボをミスらないイロリ。体力をごっそり奪っていく。
そのまま壁に追い詰められ、起き攻めを連続される。
「くっ、このままだと思わないことね!」
カナメは反撃を開始……できない。
ラオウの技を、パワーゲイザー、もとい、ライシンで見てからつぶしてしまったのだ。まさに超反応。
そのまま汚い攻めにあい、ダメージは加速した。カナメは瞬く間に1ラウンドを失っていた。
「そんな……わたくしが……!」
「ふふーん。私を舐めた罪は重いよー。次は、開始四秒でやっつけてやる!」
「な、何をいって――っは!?」
第二ラウンド開始と同時にブースト投げ。そのまま一撃。そこにはぼろぼろになった金髪の雑魚がいた。
瞬きする暇もなく、イロリのシンがカナメのラオウを倒してしまっていた。
「そ……そんな、バカなことが……」
わなわなと震えるカナメ。カナメの寿命はストレスでマッハだった。
そんな彼女に、イロリは優しく話し掛ける。
「ジュースを奢ってやろう」
と。
「きー! くやしいー!! これではっきりしましたわね、わたくしの恋のライバルは西又イロリ、貴女なのですわ!」
「ようやく気付いたようだね。そう、私こそがちーちゃんのハートを射止める(予定)女よ!」
「千歳様と添い遂げる未来を掴むには、まずあなたから倒さねばならないようね。勝負ですわ!」
「望むところっ!」
テンションが上がってゆくイロリとカナメ。
「なんなんだこいつら……」
ナギは、若干置いてきぼりになるのを感じていた。
(ボケキャラばかりでツッコミがいない……。千歳、これほどお前が恋しくなったことはない)
が、ナギは、千歳がかつて無いボケキャラと相対している事実を、まだ知らなかった。

十六話 終