229 :ツンデレ+ヤンデレ  ◆AW8HpW0FVA [sage] :2009/02/21(土) 14:35:13 ID:hawjO/d/
「暇だな…」
多くの生徒が惰眠と、喪失感を味わう五月。
世界史の授業中に窓の外を眺めながら、幸斗(ゆきと)は呟いた。
授業がつまらない。
いっそのこと、インフルエンザが流行って、学級閉鎖になればいいのにと考えてしまう程だ。
聞こえてくるのは板書の音と、書き取り音だけしか聞こえなかった。
「川原、1077年に北イタリアで起こった出来事はなんだ?」
世界史の教諭は、僕が授業に参加していないことに腹を立てたらしく、いきなりあててきた。
幸斗はかったるそうに首だけ教諭に向けた。
「…カノッサの屈辱…。ハインリヒ4世とグレゴリウス7世が聖職叙任権で対立して、
ハインリヒ4世が結果的に土下座する羽目になった事件…。…これでいいですか?」
「…正解だ…」
「…先生…今中国史をやってるんですよね…。
なんでいきなりヨーロッパ史が出てくるんですか?」
教諭は幸斗の問いに答えず、ばつが悪そうに再び板書に取り掛かった。
幸斗は再び窓の外を眺め、暇だな、と呟いた。



230 :ツンデレ+ヤンデレ  ◆AW8HpW0FVA [sage] :2009/02/21(土) 14:36:31 ID:hawjO/d/
退屈な午前の授業が終わり、昼休みになった。
多くの生徒が、学食や購買に向かう中、幸斗は弁当を食べていた。
「幸斗、一緒に食べようぜ」
中学校からの親友である翔太が机をくっつけてきた。
別段断る理由もないので幸斗は頷いた。
頭の良い幸斗と、頭の悪い翔太という妙な組み合わせだが、二人は意外なほど釣り合っていた。
幸斗曰く「気張らなくていいから楽」らしいのだ。
「所でさ、弁当なんて持ってきていいのか?今日だって来るだろ、あの人」
雑談の合間に、翔太はおかしみを込めて言った。それと同時に、教室のドアが勢いよく開かれた。
教室にいた生徒は驚いてそちらの方を見て、またか、という様な顔をした。
入ってきたのは、ツリ目・金髪(地毛)・ツインテールという、
これでもかというくらいツンデレを自己主張した美少女だった。
一空間では、「ツンデレは貧乳であるべきか巨乳であるべきか」という論争をしていたが、
それは無視した。
「幸斗、き…今日、お弁当作り過ぎて余っちゃったから、あんたにあげるわ。
べ…別に、あんたのために作ったんじゃないからね」
見た目だけでなく、性格までも典型的なツンデレであった。
教室の一空間だけが、いつもの様にお祭り騒ぎになった。しかし、幸斗はそれを無視した。
「あの…、七尾(ななお)さん。僕、ずっと前から言ってますよね?
弁当は自分で作るからいらないって」
幸斗はうんざりする様に言った。すると七尾は顔を赤くして、
「あんたねぇ、私がせっかくお弁当を分けてあげるって言ってるのよ!
男だったらつべこべ言わずに食べなさい!」
と、言った。ついでに、一空間からも非難の声が上がるが、幸斗は無視した。
「あんなの全部食べられるわけないじゃないですか!」
七尾の弁当は確かに美味しかった。だが、余った割りに、異様に量が多いのだ。
残そうしたり、誰かに分けようとすると、七尾は急に泣きそうな顔になるので、
幸斗は意地でも七尾の弁当を完食しなければならない。
弁当を食べ終わった頃には、幸斗は机に突っ伏して、うめき声しか上げられない。
七尾は帰り際にいつも、「いつもこんなことがあるとは思わないでね。
き…今日は偶然なんだからね!」という捨て台詞を吐いて出て行くのだ。
ちなみに、その捨て台詞が履行されたことは一度もない。
「なに女々しいこと言ってんのよ!これくらいなんともないでしょ!」
「あんなのを毎日食べてたら、僕が死んじゃいますよ!」
今日こそははっきり言わないと、この負の連鎖が続いて身が持たない。
幸斗はいつもより厳しく言った。
間近で見ている翔太や、一空間の住民達はへらへらしながらこの論争を楽しんで見ていた。
「い…いいわよ。分かったわよ!
せっかく私が好意でお弁当をあげてやってるのに、
食べないって言うなら、もうお弁当が余っても、あんたには絶対あげないんだからね!」
七尾は顔を真っ赤にし、目に涙を浮かばせながら教室から出て行った。
「あ~ぁ、石川さん泣かせちゃったよ。いいのか、追わなくて?」
「いいんだよ。まったく…」
幸斗は冷えたご飯を口に運んだ。
一空間では「ツンデレが貧乳だろうが巨乳だろうが、両方とも愛するのが真のツンデラーだ」
という結論が出ていたが、そんなことはどうでもいいことだった。



231 :ツンデレ+ヤンデレ  ◆AW8HpW0FVA [sage] :2009/02/21(土) 14:37:12 ID:hawjO/d/
幸斗が七尾と出会ったのは本当に偶然だった。
高校が始まる前日に、暇潰しで東京に遊びに行っていた時、
路地裏で彼女がチンピラに絡まれているのを助けたのがきっかけだった。
だが、幸斗が声を掛けると、彼女はいきなり顔を真っ赤にし、
「なに勝手なことしてんのよ!」
と怒鳴って、どこかに行ってしまった。
その時はなんとも思わなかったが、まさか同じ高校の入学者だとは思わなかった。
まるで漫画の様な展開だが、現実世界でもその様なことが起こるものなのだと、
世界の広さを痛感した15の春だった。



232 :ツンデレ+ヤンデレ  ◆AW8HpW0FVA [sage] :2009/02/21(土) 14:37:58 ID:hawjO/d/
「さすがにあれは言い過ぎたかな…」
下駄箱で靴に履き替えた幸斗はそう思った。
あの弁当には、あの時の感謝の意が込められているのは間違いない。
だが、彼女には節度というものがない。
それが彼女なりの感謝の仕方なのだろうが、それではこっちの身が持たない。
「本当にもう少し弁当の量が減ってくれれば、喜んで食べるんだけどな…」
「それ、本気で言ってるの?」
「えぇ、本気…って、うわぁ!な…七尾さん。いつからそこにいたんですか!?」
いつの間にか七尾が背後に立っていたので、幸斗は心臓が止まるかと思った。
「あんたが間抜け面でブツブツ呟いてた時からよ
それに、人を幽霊みたいに失礼ね」
なぜか胸を強調するかの様に腕を組み、見下す様な目付きで言ってきた。
「…で、なにか用ですか?」
「き…今日、私と一緒に帰りなさい」
さっきの見下す様な目付きから一転、急に顔を真っ赤にして言った。
「あの…いつも思うんですけど、あなたの家、隣のアパートなんだから、
一緒に帰る必要ないんじゃ…」
幸斗がそう言うと、七尾が目に涙を溜め、無言で睨みつけてきた。
「わ…分かりましたよ…。一緒に帰りましょう…」
無言の圧力に耐え切れず、仕方なく承諾してしまった。
「まったく…、一緒に帰りたかったら最初からそう言えばいいのに…」
どこか仕方なさそうに七尾は言ったが、本当に仕方がないのは僕の方だ、と幸斗は言いたかった。
次の日になって、七尾が再び弁当を持ってきた。
どうゆう訳か、弁当の量が適量であったのに驚いた。
一空間では「ツンデレのデレ期はどんな時が一番萌えるか?」という論争をしていたが、
そんなことは本当にどうでもいいことだったので、幸斗は無視した。



233 :ツンデレ+ヤンデレ  ◆AW8HpW0FVA [sage] :2009/02/21(土) 14:38:43 ID:hawjO/d/
これといった祝日も行事もない、せいぜい7月までのつなぎ的存在な6月。
昼休みに、七尾がいつもの様に弁当を持ってきた。ただ、いつもとは違っていた。
「今日から、私もここで食べるわ」
そう言うなり、空いている机を幸斗の机にくっつけた。
昼食は、幸斗、七尾、翔太とにぎやかなものとなった。
「そういえばさ、あんた、彼女とかいるの?」
七尾が箸で幸斗を指した。
「いませんけど…、なにか…?」
「やっぱりね。あんたみたいな奴に女がいるはずないか」
「それ、地味に傷付きます…」
幸斗はアスパラの肉巻きを口に入れた。
「そう言う石川さんにはいるんですか、彼氏?」
隣から翔太が口を出してきた。
「私に見合うような男はこの学校にはいないわ」
「やっぱり…」
幸斗と翔太の答えがシンクロした。
こんなわがままで一言多い女を彼女にしたら、彼氏の方は心労で倒れてしまいそうだ。
こういうのを「地雷女」と言うのだろうか。
「あの~、もう一つ聞きたいんですけど、なんでいつも幸斗に弁当持ってくるんですか?」
翔太はやはり気になっていたようだ。
自分の目の前で繰り広げられる、ギャルゲー、もしくはエロゲ的展開を。
「前から言ってるでしょ。作りすぎて余ったから、仕方なくこいつにあげてるって」
「それって毎日の様に起こることですか?
それに、なんでよりによってあげるのが幸斗なんですか?」
「そ…それは、知らない奴にあげたら、そいつが盛って襲い掛かってくるかも知れないじゃない」
「つまり、石川さんは幸斗のことをだいぶ前から知っていたと…」
「そ…そう言うことになるわね…」
「ふ~ん…」
翔太はどこか納得したらしく、再び自分の弁当に口を付け始めた。
その後、三人は雑談をしながら昼食を楽しんだ。
七尾は帰り際、いつもの捨て台詞を吐いて、教室を後にした。
七尾が出て行ったのを見届けると、翔太が近付いてきた。
「幸斗、お前も大変だな」
「はぁ?なにがだ?」
「いずれ、分かるさ…」
翔太が気になることを言って、教室から出て行ってしまった。
幸斗は翔太の言っている意味が分からなかった。
一空間では「二人きりの時にデレるのは最高。
たまに人前でデレるのは至高」といつだったかの論争の結論を出していた。
まだやってたのかよ。今回は無視できなかった。



234 :ツンデレ+ヤンデレ  ◆AW8HpW0FVA [sage] :2009/02/21(土) 14:39:26 ID:hawjO/d/
高校生にとって一番うざったい期末考査と、夏休みが重なる心情的に少し微妙な七月。
幸斗はとある決心をした。告白である。
相手はクラスメートの中山美優。
某地雷女と違い、彼女は優しいし、おしとやかだ。
容姿では劣るが、それでも美人のランクに入る。
こういう女性を彼女に出来れば皆に自慢できる。
それに、夏休みになればどこにでも遊びに行ける。
既にテスト前一週間で、皆、部活を休んで勉学に励んでいる。
ここでやり損ねると、約一ヶ月も家でむなしく過ごさなければならない。
それだけは死んでも嫌だ。
急がば回れ、と言う言葉があるが、そんな甘っちょろいことは言ってられない。
幸斗は美優に放課後に屋上に来てくれ、と言った。
周りから歓声が上がった。皆、この言葉の意味を理解している様だ。
たぶん彼女は来るだろう。律儀だし。

放課後の屋上は、夕焼けで赤く染まっている。
まさに告白には最高のシチュエーションだ。
階段を駆け上る音が聞こえる。振り向くと、やはり美優さんだった。
「遅れてすいません」
「いえ、僕も今来た所です」
とりあえず社交辞令を述べた。
「で…、わざわざここに呼び出して、なんの御用ですか?」
胸の辺りが急に熱くなる。早くこの熱を吐き出したくなった。
「あなたのことが好きです。付き合ってください」
ハッキリと言った。後は彼女の答えを待つだけである。
「………」
美優が沈黙した。これって、断られる空気ではないだろうか。幸斗は緊張した。
「…私なんかで…いいんですか?」
返ってきたのは、肯定と疑問の入り混じる返答だった。
「それはどういう意味で?」
「幸斗さんは、石川さんと付き合っているんじゃないんですか?」
どうやら、彼女は誤解しているようだ。
「いえ、彼女とは付き合ってはいませんよ」
「ですけど、石川さん。毎日の様にお弁当を作ってきて、
あなたと親しそうに話してるじゃないですか?」
「あぁ…あれ彼女なりの恩返しですよ」
「恩返し?」
「えぇ、以前彼女が困っている所を助けてあげたことがあるんです。
たぶん、それの恩返しです」
「本当なんですか?」
彼女はまだ少し疑っているようだ。まぁ、当然だろう。
「本当です。それに僕は彼女に恋愛感情なんて抱いていません。
僕はあなたみたいな優しくて、おしとやかな女性が好きなんです」
ここまで言えば、彼女も納得してくれるだろう。
彼女はまた少し考える素振りをしだした。
「分かりました。お願いします」
どうやら、納得してくれたようだ。
幸斗は心の中でガッツポーズをした。



235 :ツンデレ+ヤンデレ  ◆AW8HpW0FVA [sage] :2009/02/21(土) 14:40:20 ID:hawjO/d/
次の日の昼休み、幸斗は七尾、翔太が来た所で、昨日のことを告げた。
「幸斗、お前、美優さんと付き合うのか!?
俺はてっきり、石川さんと付き合うもんだと思ってたぜ!」
「だから、そんなんじゃないって言ってただろ。
僕と七尾さんはあくまで友達。そうですよね、七尾さん?」
「そ……そう…よ…。わ…私達は…あくまで…友…達…よ…」
途切れ途切れの物言いからは、動揺がひしひしと伝わってきた。
よっぽど、僕に彼女が出来たことがショックだったんだろう。
「それから七尾さん。明日から弁当作ってこなくていいから」
「えっ…!どう…して…!?」
「明日からは美優さんが弁当を作ってくれるって言うから。今までありがとう。七尾さん」
「えぇ…。私もこれから早起きしなくて清々…するわ…」
「夏休みに入ったら、美優さんを誘って、海とか山とかに行くことを考えてるんだ。
あぁ~、今から楽しみだな~」
二人は幸斗の惚気話を黙々と聞いていた。
特に七尾はなにかの感情を押し殺すように黙って聞いていた。
一空間では「ツンデレとヤンデレの相性について」論争していた。
こいつ等暇だな。幸斗はそう思った。



236 :ツンデレ+ヤンデレ  ◆AW8HpW0FVA [sage] :2009/02/21(土) 14:41:15 ID:hawjO/d/
遂にテスト期間に入った。
テストが始まるまで、多くの生徒が教科書やノートを見ている。所謂悪あがきだ。
幸斗はさっさと始まってほしかった。
こうゆう時に限って、教諭はゆっくりとしている。もっとはきはき動けないのだろうか?
プリントと問題が配られる。
面倒臭い…。それが幸斗の感想だった。
スピーカーから、いつもと違った音楽が流れた。テスト開始の合図だ。
初め、と言う教諭の一言で、皆テストに取り掛かった。
幸斗は机に突っ伏していた。


「98…95…100…100…99…か…」
終業式の日に、国語、数学、理科、社会、英語と順にテストが返された。
別にテストの点など、どうでもいい。
翔太は五教科全てヤバイ点を取って、夏休みの補習が確定していた。
横で翔太がさめざめと泣いていたが、幸斗はそれを無視した。
幸斗の頭の中では、夏休みに美優とどこに行こうかという考えでいっぱいだった。
すると、美優が幸斗の所にやって来た。
「あっ、美優さん。どうしましたか?」
「ひっ…あ…あの…幸斗…さん…」
なぜか怯えたような声を出した。どうしたんだ?
「あ…あの……私…別れて…ほしいんです…」
「はぁ…はぁ!?」
まったく予測できない言葉に幸斗は大いに動揺した。
「美優さん。僕、あなたになにかしましたか!?昨日だって一緒に帰ったじゃないですか!?
いったい、どうして!?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
彼女はただそう呟くだけだった。
一空間で、なにやらまたブツブツと論争していたが、
幸斗にはそれを無視する余裕も、突っ込みをする余裕もなかった。



237 :ツンデレ+ヤンデレ  ◆AW8HpW0FVA [sage] :2009/02/21(土) 14:41:51 ID:hawjO/d/
「最悪だ…」
幸斗は机に突っ伏して、さめざめと泣いていた。
よりにもよって夏休み直前。そんな時に別れを切り出された。
美優はただ、ごめんなさい、と呟くだけでまったく話にならない。
分かったといった瞬間、彼女は逃げるようにして教室から出て行った。
そこまで嫌われていたとは思わなかった。
今は動きたくない。幸斗はしばらく机に突っ伏していた。既に教室には誰もいなくなっていた。
「ぶざまねぇ~、幸斗」
七尾の声である。それも随分と嬉しそうである。
「七尾さん…。今はしゃべりかけないでください…。すっごくへこんでるんで…」
「数週間前まではあんなにへらへら気持ち悪いくらい笑ってたのに、
その落差を見ると、笑いが止まらないわね」
言葉に哀れみも容赦ない。生粋のSだな、この人。幸斗はそう思った。
「まったく、いつまで泣いてんのよ。男でしょ、あんた」
「だったら、少しぐらい慰めてくださいよ」
「慰めてほしいの?慰めてほしいんだ?そんな年して…。あっ…あっはははは…」
この人にこんなこと言うんじゃなかった。幸斗は非常に後悔した。
「いいわよ、慰めてあげるわ。私の家に来たら、好きなだけねぇ…」
七尾の慰めるは、まったくといっていい程、いい予感がしなかった。
「いや…いいです。もう少し、こうしています。心配してくれて感謝します」
「あんたねぇ…。いつまで、あの女のこと引きずってんのよ!?
あの女はあんたのこと捨てたんでしょ!?だったらあんたもあの女のこと忘れなさいよ!」
「………」
もう、ほっといてほしかった。
なにも言わない幸斗に、七尾は痺れを切らしたようだ。
「あぁ~、もう!決めたわ!私、なにがなんでもあんたを慰めてあげるわ!来なさい!」
と、言うなり、幸斗の手を取って引きずる様に教室から出ようとした。
そのため危うく転びそうになった。
「な…七尾さん。分かりました。一人で歩けますから。だから、手を離してください」
そう言って、やっと幸斗の手は開放された。
「まったく…分かればいいのよ」
七尾は顔を赤くしながら言った。
こうして、幸斗は七尾の家に強制的に連れて行かれた。

「お茶入れるから待ってなさい」
そう言って、七尾は台所に向かった。
幸斗はリビングのソファーに座っていた。
女性の部屋に入るのは初めてだ。
もう少ししたら、美優さんの家に上がれたかもしれないのに…。
それを思い出すと、再びへこんでしまった。
「あんたねぇ…まだ落ち込んでんの?」
七尾がトレーに紅茶や茶菓子を載せてやってきた。
「しつこいと、誰にももてないわよ」
「いいですよ別に…。今年の夏は家で寝て過ごしますから…」
幸斗はそう言いながら紅茶を啜った。
「美味しいかしら、それ?」
「えぇ…、美味し…」
そこから先、言葉が紡がれることはなかった。
「あら…、ずいぶんと早く効くのね」
七尾がにやにや笑いながら言った。
なぜだか身体がだるい。それに、しゃべるのも面倒臭くなってきた。
七尾が近寄ってきた。
七尾が幸斗の隣に来た辺りで、幸斗の意識が途切れてしまった。



238 :ツンデレ+ヤンデレ  ◆AW8HpW0FVA [sage] :2009/02/21(土) 14:43:07 ID:hawjO/d/
目が覚めると、裸の七尾が幸斗の陰茎を扱いていた。
「気持ちいかしら…。幸斗」
七尾が幸斗の陰茎を扱きながら言った。
身体が動かない。よく見ると、両手足をベッドに縛り付けられていた。
「な…なにを…してる…んっ…ですか…」
「なにって、見ての通り、慰めてあげてるんじゃない」
七尾は扱くのを止めずに言った。むしろ、扱く手付きが速くなった。
「や…止めて…ください…。こんな…度の…過ぎた悪ふざけは…」
幸斗は下半身から来る快感に耐えながら言った。
「あんたねぇ…、ここまでしてるってのに、まだ悪ふざけだって言ってるの?
まったく、あんたって本当に鈍感ね」
七尾の扱く手付きが更に速くなった。もう既に我慢の限界である。
「あんたのことが…好きだからやってるのよ」
七尾がそう言ったのと同時に、幸斗の陰茎から精子が吐き出された。
「あらあら、こんなにたくさん出して…。そんなに溜まってたのかしら?」
七尾はそう言いながら、手に付いた精子を丁寧に舐めた。
「そんな、この学校に好きな人はいないって言ってたじゃないですか!」
「あんなの嘘に決まってるじゃない。私はあんたのことが好きだったのよ。
私のことを助けてくれた時から…ずっとね」
「でも…いくらなんでも別れてすぐにこんなことをするなん…うぐっ…」
幸斗がなにかを言おうとするが、七尾は胸を幸斗に押し付けて口を塞いでしまった。
大きくて、肌理の細かい、真っ白い胸が幸斗の顔を圧迫した。
「あの女のことはどうでもいいの。私はあの女の様に途中であんたのことを見捨てたりはしない。
あんたのためだったら、どんなに恥ずかしいことだってしてあげるから、
私の駄目な所、全部直すから、だから…だからお願い…。私のこと…抱いて…」
七尾が泣いている。抱きしめられて顔は見えないが、声が涙ぐんでた。
なんだか自分が馬鹿らしくなってきた。
自分のことを慕ってくれる子がこんな近くにいるのに、今まで気付かなかったことにだ。
そう言えば以前に、翔太が「お前も大変だな」とか言っていた。
翔太はこのことを予期していたのではないだろうか。
だとすると、翔太は予知能力者であろうか?馬鹿の癖に…。
そんなことを考えている内に、七尾がゆっくりと離れて行った。
思った通り七尾は泣いていた。
涙が頬を伝い、胸の谷間に溜まって池を作っていた。
彼女を元気付けたい。幸斗は自分の頭をフルに使って考えた。
「ありがとう…。僕も…あなたのことが…好きです…。
今まで気付かなくて…ごめん…なさい…」
出てきた言葉はなんの飾り気もない言葉だったが、七尾は喜んでくれたようだ。
七尾が再び抱きついてきた。顔がまた胸に圧迫された。




239 :ツンデレ+ヤンデレ  ◆AW8HpW0FVA [sage] :2009/02/21(土) 14:43:45 ID:hawjO/d/
しばらくして、幸斗は両手足の縛めを解かれた。
解かれた手で、幸斗は七尾の胸を揉んだり、吸ったりしていた。
柔らかくて、胸が手の形にたゆんだ。
「幸斗…さっき…から…胸ばっかり…。まるで…赤…ちゃん…みたい…」
七尾は顔を赤くしながら言ったが、まんざらでもない様だ。
「ねぇ幸斗…今度はこっちも舐めてぇ…」
そう言って、七尾はお尻を幸斗に向けてきた。
七尾の女性器がすぐ目の前にあった。
幸斗はひたすらそれを舐めた。
奥から、次から次へと愛液が湧き出てきて、幸斗は溺れそうになった。
七尾も幸斗の陰茎を舐めていた。お互いそろそろ限界になってきた。
「ねぇ…幸斗…。最後はこっちに…ね」
そう言って、七尾は幸斗の陰茎を自分の膣口にあてがい、一気に腰を落とした。
その瞬間、七尾の中のなにかが切れる音がした。結合部からは血が流れてきた。
七尾は処女だったのだ。
「な…七尾さん!だ…大丈夫ですか?」
「つっ…ちょっと…痛いけど…大丈夫…。動くね…」
七尾はそう言うなり、腰を動かし始めた。
快感が波の様に押し寄せてきた。
それに、彼女の裸体が、匂いが、矯正が、そして下半身から来る快感が、
幸斗の理性を溶かしていった。
もう限界だった。幸斗は七尾の中に精子を吐き出した。
精子は逆流し、彼女の膣から溢れ出ていた。
「幸斗…愛してるわ…」
「僕も愛してます…。七尾さん…」
そう言って、繋がったまま二人はゆっくりと口付けをした。
明日から、七尾と一緒に夏休みを過ごせると思うと、幸斗は嬉しくてたまらなかった。
最終更新:2009年09月12日 03:57