1 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/06/04(水) 13:30:42 ID:VeqZuhpd
ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。

■ヤンデレとは?
・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
→(別名:黒化、黒姫化など)
・転じて、病ん(ヤン)だ愛情表現(デレ)、またそれを行うヒロイン全般も含みます。

■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫(本保管庫)
http://yandere.web.fc2.com/

ヤンデレ臨時保管庫 @ ウィキ(臨時保管庫)
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/

■前スレ
ヤンデレの小説を書こう!Part15
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1208961158/

■お約束
・sage進行でお願いします。
・荒らしはスルーしましょう。
削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
・版権モノは専用スレでお願いします。
・男のヤンデレは基本的にNGです。

2 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 13:41:25 ID:uoExHnAq

';:::::::::::::i:::::::l]:::::l]::;:=、___;;:::::」、
/`"' ー-'--─ ''"7::::::ヽ.   i `ヽ.
,'     /  パ_ i:::::::::i -!、ハ  ',
.i  ./  ,'   /'´| ハ::::::パハ | i |
|.  i  イ  /,ア;ニ;ヽ V .オ`i`i | ,ハノ >>1
|.  ',  i  ,〈 .ト |    トノ.ノ レ'!   乙けーね!
.|  ヽ、ヘレ|  ゝ'    ,  ,,|:::| |
| i  |ヽ|:::|"   ,. -‐ァ  ,.イ:::| |
| |    |:::|ヽ.、, i _ノ / |;:::!
.| |   |::::ト、, `,7T"i´ヽ! | ! 
|  |  ,.ヘ!:::::|:::::`ヽ」ヽ、! / レ'' (,,,.
|  !/  ヽ、|へノ::ヽム:n、    <、 びしっ!
| ./      Yヽ、/:::/´ '"´`i  ̄、
|〈       〉:::::::7     i'  ノ、
',くゝ、 、 イゝ:::::/     ノ r'´ヽ〉

3 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/06/04(水) 15:17:17 ID:jyiSPYEf
しかし>>1ぬるぽ

4 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 16:37:12 ID:RL3zNSkk
>>3
しかしガッ

5 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 21:26:27 ID:hLF2tzhC
問5 ヤンデレヒロインに絶対言ってはならないNGワードを答よ。

6 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 21:39:35 ID:4ne9SBoD
今日から一緒に帰るのやめないか?
いや、俺もさ、お前以外との友達付き合いがあるしさ

7 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 21:43:14 ID:l5osXX8Y
俺、これから○○(違うの女の名前)さんに告白しようと思うんだ。

8 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 21:51:58 ID:9OLdn/Nd
俺、女に興味ないんだ。

9 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 21:56:21 ID:903TpF+D
俺、女なんだ。

10 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 21:58:34 ID:JOT1DfDK
A.お前ん家、おっばけやーしきー!

「お前ん家、おっばけやーしきー!」
↓             
「お化けいそうな家だな!」

「そんな所に愛するお前を住まわせておけるわけない!」

「ほら、何をしてるんだよ。うちに来い!」 

同     居

11 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 22:38:13 ID:U+NwFers
>>10
あるある

12 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 22:40:48 ID:meCLUN3Z
>>5
こなたは俺の嫁

13 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/04(水) 23:33:37 ID:4nQ+dUVr
>>5
○○さんがお弁当を作ってくれるからもう俺に弁当は作らないでくれないか?

14 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 00:26:28 ID:1rdEtT1A
>>5
お前はずっと俺の親友だ

15 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 00:39:05 ID:J2MV1Sk/
何を言っても何も言わないよりはいいはず

16 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 00:57:09 ID:CYnUDJa/
>>5
1「お前ウゼーわ…もう話しかけんなよ」

2「お前が近くにいると勘違いされんだよ。迷惑だからもう近寄んな!」

3「わり、お前に告ったの、アレ罰ゲームだから。お前なんかにマジになるわけねーだろ?」

4「やっぱお前ダメだわ。○○じゃないとな」

5「お前キモイ…」

6「近寄んなっつったろこの豚がッ!! ああ、ごめん○○。コイツストーカーでさ…」

7「お前のこと大嫌いだから。顔も見たくない」

8「一回ヤッただけで彼女面すんなよな」

さあ、(刺されるの)どーれだ?

17 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 01:30:39 ID:PJBH6tjb
>>1
ぜんぶ!

18 名前:17[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 01:31:34 ID:PJBH6tjb
>>16

19 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 02:37:40 ID:HqLQi5da
>>16
全部刺される気はしないなあ
強いて言うなら4辺りか?

20 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 07:55:41 ID:b7MhH0Wo
>>16
8は刺殺フラグ立つだろうけど、ヤンデレとはまた違う気も。

21 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 09:40:41 ID:pHmkdH0F
もうこの流れ飽きた

22 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 10:17:25 ID:fKraHHMb
>>16
5と7は逆に悦ばれる危険が・・・

23 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 10:17:43 ID:js4aBjvO
じゃぁもうくんな

24 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 12:43:31 ID:tnodCV7y
>>16
その関係のヤンデレって、関係がなりたってる背景しだいじゃない?

男の方が病んでるような展開もありかも

25 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 13:17:21 ID:HqLQi5da
http://news.www.infoseek.co.jp/topics/society/n_misui__20080605_22/story/20080605_yol_oyt1t00310/
これが逆ならなあ……

26 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 19:59:19 ID:GCoaIzad
テレビの「逢わせ屋」すごかったな。
心身を病んで入院した先で看護士学校に通いつつ病院でバイトする男に惚れてどっぷり依存。
「何度も電話してるのに何で出ないのよ!」などと切れる。
しばらく距離を置こうといわれても電話攻撃はやめず、
そしてついに男に逃げられ、探してもらうためにテレビに依頼。
すばらしい。


惜しむらくは、男が患者に適当に手を出してみただけっぽいのと、
女が二目と見られぬデブスで、しかも「新しく好きな人が出来たからすっぱり忘れるために会いたい」なんて言ってたことだ。

27 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 21:59:28 ID:HqLQi5da
現実なんてそんなもんだ

28 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 22:09:51 ID:mRv1Q4cr
患者に適当に手を出す看護士?
それってm(ry

29 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 23:19:40 ID:mA5cRH/E
じゃあ、看護婦だったら?・・・・あれだ、遊びのつもりで適当に手を出したらいつの間にか本気になってて、退院の日が近づくと退院を引き伸ばそうとわざとケガさせて、ばれてクビになって病院にいったらもう退院してて、探すために「逢わせ屋」に
たのむ!ってことでいいだよね?

30 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 23:28:49 ID:HeK9cz40
日本で物語で最古のヤンデレは清姫?

31 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/05(木) 23:52:21 ID:csuLFtqA
イザナミは?

32 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 00:36:18 ID:6WzpC2tt
カン太がサツキに監禁されるのか
あの家なら出来そうだ

33 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 01:32:00 ID:KY0j/2Fs
>>29
男が弱い立場萌え派って結構いるよね(*´Д`)
モテる男がヤンデレに捕まるってのは昔のドラマに多すぎて飽きた。

34 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 16:23:25 ID:vXFEoU+A
阿部定は?
……病み方が尋常じゃないぞ。

35 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 16:31:08 ID:SGhFpifo
三次元はスレ違いです

36 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 19:41:33 ID:vXFEoU+A
>>35 実在したのか!? 
俺はどこかのホームページの小説のヒロイン?を挙げたのだが…

37 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 19:53:53 ID:d8arAbPr
>>36つ阿部定事件

38 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 21:45:23 ID:oh6tlwxo
ヤンデレ好きなら阿部定事件くらい知っといて損はないよ
wikipediaでも見とけ

39 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 22:20:11 ID:ALllMdit
思わず股間を押さえてしまった。
KOEEEEEEE!

40 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 23:13:29 ID:vXFEoU+A
写真と資料見ました。
思わず股間を握りしめてしまいました。
えげつねえ……………

41 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/06(金) 23:31:49 ID:vXFEoU+A
主人公浮気→病み娘キレる。
泥棒猫を殺害後、病み娘、男を尋問。
口論の末、男刺殺され、阿部定エンド…
その後病み娘と男の陰茎を見た者は居なかった。
そんな話はイヤだ。  

42 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/06/07(土) 08:27:13 ID:whDEkMlS
傍観者まだ?

43 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 15:00:28 ID:D2DTyvdl
>>42
いい加減うざい
作者の事も考えろ
そしてsageろ

44 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 16:50:26 ID:IU+LpQKq
例大祭も終わったしいない君はそろそろ来るかな?

45 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/06/07(土) 16:57:14 ID:whDEkMlS
>>43
傍観者の作者はおめーのもんじゃねーだろ。声援にいちいち嫉妬してんじゃねーよ。

46 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 17:03:26 ID:lun7lzim
>>45
一々反応すんなガキ。
そしてsageろ

47 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 17:14:25 ID:BvGuqp8E
>>46
触っちゃらめええええええええ

48 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 18:45:43 ID:wyZohCG3
貧乳ヤンデレに天然巨乳の魅力を語ってみたい

49 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 18:53:23 ID:8ymfuQY6
俺にだって
守りたいものがあるんだ!

50 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/06/07(土) 19:15:55 ID:whDEkMlS
>>46
ヤンデレスレらしくパスを受けたらボールを回せってorz

せっかくネタを振ってもこれだもんなあ。そのくせクダラネー雑談ばかりしやがって。

51 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 20:02:13 ID:D2DTyvdl
>>50
とりあえず
私は長くからここに居て空気嫁てますよ
みたいな発言する前にsageてな

52 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 20:18:29 ID:SJUWdUTi
>>48
俺は逆だ、天然巨乳に貧乳ヤンデレの魅力を語ってみたい。
あ、天然のヤンデレは居ないかw
天然って馬鹿だし。

53 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 20:58:47 ID:hY3BUn7J
むしろ馬鹿なヤンデレもそれはそれで・・・
愛ゆえに病んでくれれば謀略術数に長けてたり戦闘力に長けてたりしてなくてもいいんだ

54 名前:部屋とナイフと暗殺者[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 21:20:36 ID:NZ2KX8FX
俺の後ろにはアイツがいる。
俺は女性にモテない。何故なら、イージスシステム真っ青の防空…対女性能力を持った幼馴染みが居るからだ。
歩く武器庫、妄想保管庫、女性キラー等の二つ名を持つアイツは今日も誰かを始末する。
今日、廊下で告白してきた女の子、かわいそうに。
たぶん今頃、"鉄道自殺" させられているだろう。
…オマエは何で俺の部屋でナイフを磨いている。
そして、何本隠し持ってる。
わざわざおもむろに太股のホルダーから警棒引き抜かなくて良いから。
「アンタの事、ずっと守ってやるからな…」      
アイツは俺の目の前でセーラー服を脱ぎ、防刃ベストとサラシ、パンティを脱ぐと、風呂場に入っていく。
…まるで熟練の暗殺者が返り血を流すように。そして、殺した相手の体臭を落とすように。
風呂から出て来た。相変わらず胸が無い。
本人曰く「掃除に支障きたすし、防具が付けられないから別に良い」らしい。
そして、ベッドで三戦交える。
この生活はアイツの両親が逃げるように海外赴任してからずっと続いている。
もう初体験から四年たったのか。
そんな高二の夏。     

55 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 21:24:04 ID:Rpqv+M2U
>>53
それはあるな。
盲目的にというか純粋に病みつつ愛してくれれば素晴らしい。
ヤンデレ娘と一緒にお風呂に入って主人公の体を洗っている時に「何か」に気が付いて
詰問とかたまらん。

56 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 22:16:57 ID:udoNiAs7
天然=バカ
じゃないだろ
天然はバカってよりずれてるんだろ

57 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 23:07:18 ID:2FA9pauA
>>54
別に文体が似てるとかじゃないのに深見真作品を思い出した。

58 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/07(土) 23:46:37 ID:SJUWdUTi
>>56
余計ダメじゃんww

しかし、もうそうしてたら普通のヤンデレよりゾクッて来たわ。
普段は天然なのに主人公が好きな人が出来たとか言ったときだけ目つきが変わるあれ。

59 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/08(日) 14:34:15 ID:C3xv1c1J
こんにちは。
ヤンデレ家族が、午後二時三十分ぐらいをお知らせします。

投下します。

60 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/08(日) 14:35:30 ID:C3xv1c1J
自宅にたどり着くまでに要した時間は、これまでの下校時間の記録を塗り替えるほどのものだった。
しかしそれは非公式。なぜなら、俺はタイムなど計っていないから。
日頃、時刻を確認できる道具を携帯電話しか持たない俺には、ストップウォッチなど縁遠い代物だ。
とはいえ、仮に持っていたとしても今はそんな些細なことを気にする余裕は無かったから、計りはしなかっただろう。
自宅の敷地を出てすぐそこにある電柱に手をついて、息を整えながらそんなことを思う。
何かに寄りかからないと立っていられない。これほど必死になって走ったのは久方ぶりだった。
別に走るのが久しぶりな訳じゃなくて、死力を尽くすのが久しぶり。
葉月さんと一緒に下校し送り届けた後、自宅へ帰るまでの道のりを結構なハイペースで走るという日常を
送らされてきたため、俺の心肺は錆び付いてはいない。
それでも、ペース配分など無視して足の動く限り地面を蹴り続けたら、さすがにバテる。

やれやれだ。どうしてここまで必死になれる。
妹に助けを求められたぐらいで、ここまで後先考えない行動を取るとは。
「シス……こーん、な、俺…………」
自覚した。というか、自分の体で証明してしまった。
そりゃ、前々から弟や妹に対して甘いと気付いていたが、まさかここまでとは。
弟が十四日帰ってこなかった時でもここまで変貌しなかったくせに、妹のこととなるとこうまで変わる。
誰がどう見たって妹想いの兄貴そのものじゃねえか。
否定しても、チャック全開にして歩いていたのにその事実を認めない男みたいに、嘘吐いているのが丸わかり。
「……かっこ、悪うござん、した」
俺は何も言わずに背中で語り、遠くから弟と妹を見守る男でいようと思っていたのに。

自宅を取り囲む塀を支えにして、玄関へ進む。
止まっていた時間は一分にも満たないぐらいだったが、呼吸を自分で制御できるぐらいにまでは回復した。
今朝は自宅で目を覚まさなかったから妹の顔を見ていない。
でも、たぶん家にいるだろう。弟を待つために。弟が帰ってきたらいの一番に出迎えるために。
だから、誰かが家の玄関を開けたら真っ先に飛び出すはず。
助けを求めてきたのは、玄関を開けた相手が妹にとって恐れの対象だったからだ。
果たして誰が妹の前に現れたのか。
答えは、玄関を開けて家の有様を見て、ようやく明らかになる。


61 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/08(日) 14:37:02 ID:C3xv1c1J
玄関のドアを開けた。
飛び込んできたのは昨日の朝に見た我が家の玄関の光景、そのままであった。
いや、一つ違った。
見慣れない靴が一足、転がっている。
置いてあるのではなく、文字通り投げ捨てたかのように放置されていた。
家族の誰かがそんな不作法をしたのならば、真っ先に靴を揃える俺であるが、今日はそうしない。
見慣れない靴、それすなわち家族以外の誰かが入り込んでいるという証拠だ。
見たところ、靴の種類はスニーカーで、サイズは俺のものと比較したら小さめ。
女……か? これだけじゃわからないけど、可能性は高い。
――――いや、相手の詳細など誰でもいい。
「おーい、妹? いるか?」
呼びながら、靴を乱暴に脱ぎ捨てる。不作法は承知の上。後で揃えるだけだ。
とりあえず、真っ先にリビングを覗き込む。
キッチン、テーブル、ソファー、天井、異常なし。
どこも散らかったりしてないし、誰も居やしない。
……てことは、他の部屋。
妹が居そうなところといえば、弟と妹が共同で使用する部屋ぐらいしかない。
妹からメールが送られてきてから、すでに十分以上経過している。
どこかに連れ去られた、なんてことになっていなければいいのだが。

弟に続いて、もし妹までさらわれたら、どうすりゃいいんだ。
一番ろくでもない長男が残ったって、意味がないのに。
弟と妹が危ない目に遭わないように面倒を見るなんて単純なことすらできず、
俺一人だけ無事でいるなんて、端から見たらただの無責任な男でしかない。
人にどう思われようと、今更何しても遅いからどうでもいい。
ただ、弟を無事に家に帰し、妹を助けられればそれでいい。

時間が惜しいので、一番妹がいる可能性の高い場所を当たることにした。
弟と妹の部屋。二人の名前が、ベニヤ板の上に木で象った文字で書かれている。
そういえばこの表札を作ったのは俺だったっけ。久しぶりに思い出した。
たぶん弟も妹も覚えてないだろう。俺が忘れてるぐらいなんだから。
それはともかくとして、ドアを軽く三回叩いて、声を掛ける。
「俺だ。……入っていいか」
しばし待つ。が、返事はない。
「あと十数えて返事しなかったら勝手に開けるぞ」
一応予告をしておく。
もしここで返事があれば、入る必要はない。
はやる気持ちを抑えつつ、十からカウントを始める。
ゼロまで数え終えても妹からの返事はなかった。物音すらしない。
予告の通り、ドアノブをひねって二人の部屋に入る。


62 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/08(日) 14:39:10 ID:C3xv1c1J
「なん…………だ、これは」
部屋中がひっくり返されていた。
正確に言えば、部屋に置いてあるあらゆるものがでたらめに床に散らばっていた。
弟と妹がそれぞれ使っている机。
二つともが机の上をまっさらな状態に変えられていた。引き出しも不揃いに出されっぱなし。
本棚の中身は全て床にぶちまけられ、辺り一面に本の海が出来ている。本棚も倒れて、背中を見せている。
テレビなんかも床に直接置かれ、台と離ればなれになっている。
それ以外にも、文房具やら服やら壁掛け時計やら、なんでもかんでもが床にあり、四方の壁がすっきりしてしまっていた。
しかし、中でも一番ひどい有様になっていたのは二段ベッドだ。
弟と妹、どちらが上か下か知らないが、今となっては知ったところで無駄なこと。
上のベッドと下のベッドが、別々に分離した状態に変わり果てていた。
誇張ではなく、本当に言い表したまま、上のベッドを支える四隅の支柱がへし折れていた。
下段のベッドは本来ならあり得ない、横倒しの直立状態になっていた。布団ももちろん剥がれている。
そして、上段のベッドは壁に斜めに寄り掛かっていた。
おそらく、置いてあったベッドをそのまま倒したら上のベッドが壁にぶつかり、支柱からぼきりと折れてしまったのだろう。
どう考えてもこれは、悪意のある人間の仕業だ。
とすると、妹が無事であるとは、限らない。

「誰? …………お兄さん?」
小さな声を耳にして、乱れていた思考が落ち着きを見せた。
「その声、妹か? 無事か? どこにいる?」
声は聞こえども姿は見えず。
災害に遭った後みたいな部屋の様子では、妹がどこに隠れているのかわからない。
「怪我はないよ。 それより…………駄目」
「なにが駄目なんだ」
「見せられない。隠れてなきゃ」
「なんでだよ」
もしかして、顔に怪我をしてしまって、そのせいで……?
「居るもん。あの人がまだ、部屋の中に」
部屋の入り口から前方、左右、天井、ついでに後方まで確認する。
「誰も居ないぞ? お前が気付いてないうちに帰ったんじゃないか」
「…………居る。そこ」
「どこだよ」
「………………ベッドの裏」
ベッドへと目を向ける。
無惨な有様になってはいるが、ベッド単体としての形はまだ保たれている。
横倒しになった下段のベッドは、死角を作り出していた。

妹以外の気配は感じられない。
しかし、耳を澄ますと一定の間隔で呼吸の音が聞こえる。
これ……まさか寝ているのか? 
自分で部屋を荒らしておいて、逃げもせずにその場で寝るなんてどんな馬鹿だ。
だけど、これはチャンス。捕まえるなら今しかない。
床を見て武器になりそうなものを探してみるが、分厚い辞典ぐらいしか見あたらない。
仕方なく、辞典を片手にしてベッドへと忍び足で近寄る。
ベッドを背にして裏側を覗き見る。
まず見えたのは、ニーソックスを履いた長い足。
さらに覗き込むと、スカートが見え、次にセーラー服が見えた。
寝ているくせにその胸がやけに隆起している。いや、そんなことはどうでもいいのだ。
それより、目にした制服のデザインが、俺の通う高校の女子の制服だったことに気になった。
誰だ? 俺の家を知っていて、部屋を荒らし、妹には危害を加えない、そんな人間は。
澄子ちゃん……は無いな。体型がまるで違うし、ここにいる可能性は低い。
弟のファンクラブの子? 中には荒っぽい子がいるかもしれないけど、いまいち解せない。
他に弟に好意を抱いているのは――――花火がいる。


63 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/08(日) 14:41:45 ID:C3xv1c1J
ニーソックスに、絶対領域に、スカートに、女子用の制服に、でかい胸。
以上の特徴を持ち、かつ俺の家を知っている人間。
そんなやつ、花火ぐらいしか居ない。
でも、花火は何をしている? 何をしに来た?
俺の家を荒らして嫌がらせなんかしたって、俺への恨みは晴れないだろう。
それ以外で花火が動く理由というと、姿を消した弟の捜索。
――――そうか。こいつ、そのつもりで。

「来るのが遅いよ、アニキ」
びっくりして、辞典を取り落としそうになった。
今度は俺が花火の死角に入る番だった。
花火に対して、俺はどれぐらいの警戒をするべきだ?
部屋を荒らしたのだから、最大レベルの警戒であたるべきかもしれないが、
寝ていたということは、花火はもうこれ以上のことをする気はないのかも。
妹を傷つけていないのも、きっと目的を果たすのに必要ないからだ。
「そんなに警戒するなよ。私はただ、この部屋を調べに来ただけ。
用が済んだら、さっさと帰るよ」
「……じゃあ、なんでまだここに居る? ここまで荒らしたなら、これ以上調べる場所なんてないだろ」
「用があるからだよ。私一人じゃ見えないものがある。別の人間から見た、現状を教えて欲しい。
アニキ。何か手がかり――――あいつの居場所を掴めたか?」
「いいや、特になしだ」
隠れてて良かった。もし向かい合っていたら、嘘を吐いていることが絶対にバレていた。
居場所はともかく、誘拐の実行犯の正体はわかっている。
けれど、教えるわけにはいかない。
他の人間ならともかく、花火にだけは。

「ふうん、そう。
ところで、ちっさい妹に聞いたけど、アニキは昨日家に帰ってこなかったんだって?」
「……まあな」
「どこに行ってた? 夜通し遊びまわってたわけじゃないんだろ。
今のアニキの性格じゃ、そんなことしないのは知ってる。聞きたくもないのにあいつが教えてくれたからな。
ごまかしても、無駄だよ」
心の中で舌打ち。弟め、要らないことまで喋りやがって。
一番無難な答えができなくなってしまったじゃないか。
「……友達の家に泊まってたんだ」
「嘘くさい。自分の性格を理解してない。なにより、昨日の状況でそんなことをするはずがない」
「何を根拠に……」
「あいつから色々聞かされたって言っただろ。
まず、アニキはとにかく現状維持に努める。その代わり、新しいことや変化を望まない。
だからこそ、あいつが居なくなったことに不安になった。
今の状況で、一日連絡を取らずに、自分の家族、特に妹をさらに不安にさせるようなことはしない。
昨晩何の連絡もなかったという時点でおかしいんだよ」
大当たりだ。ここまで理解されてて、ある意味嬉しく思う。
仮に高橋の家に俺が泊まったとしよう。
その場合、真っ先に俺は家に連絡する。友人の家に泊まるから今日は帰らない、と言う。
弟だけじゃなく、俺まで居なくなったらさすがに両親まで不審に思うだろう。
いや、もしかしたら昨日の朝の時点で、すでにもう。
だから、昨日澄子ちゃんを見かけなければ俺は弟捜索を打ち切って家に帰っていた。
「あの女、葉月の家に泊まったなんてことはまず無い。そうすれば連絡しないのも頷けるけど。
アニキはあの女を恋人にする気なんかないんだろ。返事を保留にしているのがその証拠だ。
彼女にするほど好きじゃないのか、タイミングが掴めないのか知らないけどさ。
本気じゃないなら、彼女にはしない。返事をせずにごまかし続ける。
関係の変化よりも維持を優先。それがアニキの接し方。
そういうところが、いや、そういうところも含めて――――最低だ」


64 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/08(日) 14:43:32 ID:C3xv1c1J
なるほどね。わかっていたけど、昨日の別れ際の台詞はそういう意味だったんだ。
好意を寄せられていると知りながら、好きだと告白されていながら、何の返事もしない。
そりゃあ、腹も立つだろう。クラスの皆も同じ事を思っているはずだ。
「花火。葉月さんに、俺は返事をしようと」
「ああ、そんなことはどうだっていいんだよ。返事しようがすまいが、私には関係ない。
アニキと私を関わらせる要因は、あんたの弟だけ。
あいつの居場所さえわかればこれ以上何も言わず、消えるよ。
……で、結局アニキは昨日どこにいたんだ? 家族の誰にも連絡を入れず、友達の家以外で、どこで夜を明かした?」
「それは――――」

言えない。
地下倉庫に居たことを知られてしまったら、さらに追求され、犯人のことまで問い詰められる。
もし喋ってしまったら、澄子ちゃんが危ない。
去年の文化祭で、花火が自分の名前を呼んだ軽薄な男に対して奮った暴力的な一面。
あの場は弟が収めてくれたが、そのまま放って置いたら、あの男は顔をひしゃげさせられていただろう。
大げさな表現ではない。本当に花火は実行してしまう。
しかも澄子ちゃんは弟をさらった人間だ。
自分にとって一番大切に思うものを奪われたら、人は一体どんな行動をとるのか。
例えば俺の場合だったら。だったら――――どうするんだろ。というか、何が大事なんだ?
妹だろうか。……恥ずかしいけど、さっきは必死に走ったぐらいなんだからそうなのかもしれない。
でも、妹が居なくなって、俺がどんな気持ちになるのかはわからない。その時が来ないとなんとも言えない。
取り乱す様はすぐに思いつくけど。
俺の例えはともかくとして、花火だったらどうなるか。
弟が居なくなって、会いたくもない俺まで捜索に使おうとするぐらい焦った。
葉月さんが弟を狙っている人間だと早とちりして殴りかかった。
怒りの矛先が定まったら、そんなの、止まらなくなるに決まってる。

「それは、何?」
「昨日、俺は…………」
「早く言えよ。こうやって話してるだけで不愉快なんだ。私が冷静でいるうちに答えろ」
「言いたくない」
「はあ?」
「言いたくないし、言う必要があるほど大した場所には行ってない」
ここはなんとかしてごまかすしかない。
花火だって、俺と話すのはあまり好きじゃないんだから、深く追求はしてこないはず。
「俺にだって内緒にしたいことがあるんだ。だから聞かないでくれ。
弟捜しは、これからまた…………?」

気配を感じて、右を見る。
ベッドを挟んで向かい側にいた花火が、回り込んできていた。
無機質な瞳が俺を見下ろしている。
「今の、なんだ」
何の感情もこもっていない花火の声。
「聞こえなかったのか。私は、昨日アニキがどこで何をしていたか聞いてるんだ」
「……だから、答えるほどのことじゃ」
突然伸びてきた腕に襟を掴まれた。
続けて振り回されて無理矢理立たされ、壁に押しつけられる。 
「ぐっ!」
背後の壁と、いまさら爪先に落ちてきた辞典がさりげなく痛い。
襟を捻られ、締め上げられる。
呼吸できないほどではないが、徐々に踵が浮いてきているのがわかる。
「気にくわない答えだ。最高にイライラする。
アニキよ、あんたに聞いたのは質問の答えだ。
昨日どこにいたのか。そんな簡単なことすら答えられないか。いつもそこまで忘れっぽいのか」
「ああ、実はそう――――」
「へらへらするんじゃねえ! 言いたくないの次は、忘れただ? 言ってることが変わってるぞ!
ごまかそうとしてるのバレてんだよ! 卑怯者!」
襟を締める花火の手が顎にくっついた。さすがに苦しい。
でも、言う訳にはいかない。言ったらそこで、澄子ちゃんは。

65 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/08(日) 14:45:37 ID:C3xv1c1J
花火を見つめ返す。目があった瞬間に、明らかに不快そうな顔つきになった。
「むかつく。去年顔を合わせてから今までで、一番殴りたい顔つきだ。
それとも、最初からその気か? 私に殴られたいか? 
その方が、アニキの気持ちも正直になるから、そうした方がいいか?」
「好きにしろ。殴るだけの正当な理由が、お前にはある」
「好きに? …………ははっ、それは無理。まだ、今は無理さ。
私がアニキを好きにしたら、たぶん、良くても半殺しにするだろうから。
だから、そうだね。今は」
突然内臓に鋭い衝撃が走る。痛みがのど元に達する前に、より固く、強いものが腹に突き刺さった。
腹を抱え悶絶しないよう耐える。
今度は、背負い投げの形で放り投げられた。
柔道のように畳の上に着地せず、本と小物と家具の破片だらけの床に、背中から衝突した。
手加減無しだった。手加減していたなら、俺は花火に手の届く位置に落ちたはず。
投げっぱなしの背負い投げは、俺を一メートル以上、花火から遠ざけた。
背中と腹から襲い来る痛みが混じり、感覚をそれだけで占領する。
胃をへこまされたみたいに感じるが、吐き気は起こらない。
昨日の昼から何も食べていないことに感謝した。

横を向いて痛みをこらえていると、目の前に花火の足の爪先が見えた。
それ以外に見えるのは床だけだ。余裕なんかひと欠片もありはしない。
「これぐらいにしておくのが後々楽だ。
下手に怪我でもさせたら、あいつが気付くからな。
……さて、アニキ。返事はしなくていいから、首を動かして答えろ。
昨日何をしていたか忘れたなんて嘘で、本当は覚えてるんだろ?」
頷かない。頭は動かせるけど、床に置いたままにする。
「こんだけやってもだんまりか。だったら」
うつぶせにさせられた。背筋を避けて連続で踏まれる。
足の裏じゃない。一点集中した痛みからして、踵だ。
肩に衝撃が走ると大量の空気が押し出されて息苦しい。
内臓を蝕む痛みはさらに深刻化する。
それでも、まだだ。
せめて、花火の気が済むまで耐えさえすればいい。
俺が白状したら澄子ちゃんの安全は保証されない。
自分の選択で最悪の選択を回避できるなら、これぐらい耐えてみせる。
「……なるほどね。そういうわけか。それなら、口を簡単に割るはずないよな」
なんだ? いきなり蹴るのをやめた?
これで終わったのか? 
それならそれで構わないけど、なんだ、今の花火の台詞は。
何かに気付いたような……?


66 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/08(日) 14:47:09 ID:C3xv1c1J
「そこまで強情になるってことは、誰かをかばっているんだろ。
誰か。つまりそいつがあいつをさらった犯人、もしくは犯人に繋がる関係者だ」
――気付かれた! まずい、ごまかさないと!
「ち…………、違う! 俺はただ、お前が……気にいらない、から……言わないだけだ」
「嘘つけ。ますます怪しいな。そこまで必死になるなんて。
別にアニキから本当に嫌われてようと、とっさに吐いた嘘で嫌いと言われようと構いやしない。
どうせ、私があいつと結ばれるまで、仕方なく持っている関係に過ぎない」
嘘吐いたことまでバレバレかよ。ちくしょう。
――ん、おかしい。
なんで「嫌われようと構わない」、なんてわざわざ言ったんだ?
言う必要なんかない。黙ってても、花火が俺のことを虫けら程度に思っていることは伝わってる。
俺は花火が嫌いじゃない。
対して、花火の認識は「俺は花火を嫌っている」となっているはず。
だけど――――だけど、なんだっけ。
駄目だ。体の痛みが頭の回転を鈍らせてる。

「アニキが口を割らないなら、こっちにも考えがある」
花火の足が動いて、視界の外へ消えた。遠ざかる気配が感じられる。 
回復して、体勢を立て直すなら今しかない。
呼吸は落ち着いてる。痛みは完全に消えてないけど、ピークは過ぎた。
後は手と足だけど――――うん、こっちも動く。
両手で床から体を剥がして、折った膝を滑り込ませる。
右膝を立てる。首を上げて、前方を見やる。
そこに居たのは俺を見下ろす花火。
「嫌だ…………やめて。怖いよ、助けて…………おにいちゃん、おにいちゃん」
それと、花火に髪の毛を掴まれ腕で抵抗する、虚ろな顔をした妹だった。

「花火、一体何をしてる!」
「あれ、もうそんな声が出せるまで回復したのか。
頑丈だな。その辺の不良なんかよりよっぽどタフだよ。感心する」
「質問に、答えろ」
「うるせえよ。今から答えるところだ。
…………今から試すんだよ、アニキ、あんたをさ」
なんだと? 
妹を使って、一体何を試そうって言うんだ。
「分からないってツラだな。ま、言うより見てもらった方が早い、と」
花火が妹の髪を放し、両肩を掴んでまっすぐ立たせた。
そして、一瞬だけ微笑み――――平手で叩いた。
乾いた音が響いた。手加減をしていない。動いた右手が振りぬかれてる。
「や、やめ……やめ、て。お願い」
「…………ふん」
鼻で笑い、今度は反対側の頬を打つ。
妹は頬を押さえて、その場に尻餅をつくように座り込んだ。


67 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/08(日) 14:48:21 ID:C3xv1c1J
歯ぎしりの音。俺の顎が噛み合い、擦れ合ってできた音。
頭に血が上ってくる。拳の震えが肘、肩、首、頭まで伝わってくる。
「何してやがる! 妹は関係ないだろうが!」
「ああ、たしかに関係はない。何にも悪いことはしていない」
「この……こいつ! だったら手を出すな!」
「騒ぐなよ。音がでかいだけで、腫れることはない。
今回の誘拐に関しては、ちっさい妹は悪くないよ。
でも、個人的に妬む理由がある」
妹の髪が大雑把に掴まれ、顔が持ち上がる。
俺の目と妹の目が合う。
妹は泣いていた。顔をくしゃくしゃにして、涙を流し続けていた。
口が動いているけど、動きだけで声は出ていない。
しゃくり上げる嗚咽だけがはっきり耳に届く。
「手を離せ! 今すぐにだ!」
「断る。こうする理由が、私にはあるんだよ。
ちっさい妹は、同じ家に住んでいるってだけで、あいつにくっついていられる。
風呂にも一緒に入っている。同じ部屋で寝てる。
簡単に言うと、私はちっさい妹に嫉妬してるんだよ。
あいつに近づこうとする大量の女の群れよりも。
あいつをさらった今回の犯人よりも、かもな」
花火がしゃがんで、妹の顔を横から覗き込んだ。
小さな悲鳴と共に、妹がさらに顔を強張らせる。
「どうしてだろうな? なんで妹のくせに、血の繋がった姉弟のくせに、あいつに近づくんだ?
胸は小さい。背は低い。目の前で部屋を荒らされても何も言えない。今も、泣きじゃくるだけ。
そんなやつは、あいつにふさわしくない。そうは思わないのか?」
「わ、私…………お兄ちゃん、お兄ちゃんが好きだから…………」
「ああ、そう。本当、憎らしいよ。
あいつに近づいているところも、私にこんな想いをさせるところも。
…………なあ、アニキ。どうしたらいいと思う?」
「そんなことより、手を」
「聞けって。真剣な質問なんだから。
私が、もう二度と不安な思いをしないために、ちっさい妹をどうすりゃいいのかな?
全身の毛を剃ろうか? 顔の形が変わるまで痛みつけようか? 両手足を折ってやろうか?
ああ――でも、そんなの面倒だし、あいつがさらに構うようになったら困るから、いっそのこと――」

殺してやろうか。


68 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/08(日) 14:49:37 ID:C3xv1c1J
聞こえた瞬間には体が動いていた。
間合いを詰めて、右足を花火の顔目掛けて奔らせていた。
しかし、空振り。
体勢を崩して、その場にくずおれた。
足を叩いて一喝。
立ち上がって振り返る――――と同時に、脇腹に伸びた足がめり込んだ。
吹き飛ばされる。机にぶつかり、椅子を巻き込んで倒れた。
痛みへの反応が喉を閉ざす。冷や汗が肌に浮かぶのが分かる。
「いい一撃だったよ。あと二三センチで私の鼻は折れてたろうな」
拳を床について、肘を伸ばす。すかさず肘に蹴りを入れられて、また床にぶつかった。
「いくら私が相手でも、まさか女の顔を蹴ろうとするなんてね。
さすが、小学生の頃に頬を切りつけただけはあるよ。
これがアニキの本性さ。凶暴で、残忍で、冷酷で、大事な人間以外は思いやらない。
体には犯罪者の習性が刻み込まれてる。血には異常者の遺伝子が受け継がれている。
肉親を好きになるところなんか、親そっくりだ。
あいつにそんな一面がなくて、本当にほっとするよ」
「お前…………知って、るのか……?」
「まあな。あいつに聞いた。というか、カミングアウトされたよ。一方的に」
嘘だろ。
絶対に誰にも言うなって、ことあるごとに言ってるのに。
弟の奴、何を考えて……?

「さあてと。お返しを、させてもらおうかな」
悪寒。と同時に顔面に蹴りを見舞われた。
痛みが鼻から後頭部まで突き抜ける。涙腺を刺激され、涙が出た。
鼻腔を生温くてどろどろしたものが流れる。血の匂いが口の中を満たした。
髪を掴まれる。目の下から流れ落ちた血が床に落ちて跳ねた。
続けて俺の顔が床に叩きつけられる。
一回、二回、三回と。
途中から目を瞑っていたから、もっと多かったかもしれない。
聴覚にも聞き取る余裕はなかったようだった。
それでも、花火の声だけは律儀に拾う。
「……まあ、こんなもんでいいか。
あいつに問い詰められたら、アニキが暴力を振るったから喧嘩したって言えば済むレベルだ。
血も滴るいい男になったじゃないか。間違っても惚れたりはしないけど」
ダメージを受けた箇所は脇腹と顔面だけ。
それだけで体の命令が隅々まで行き渡らない。
あっさり満身創痍。簡単すぎる。


69 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/08(日) 14:55:24 ID:C3xv1c1J
髪を解放された。床と顔面がぶつかってから、襟を掴まれて上体を起こされた。
「二つ、選択肢をくれてやる」
眼前に花火の左手の人差し指があらわれた。
「一つ。私の質問に正直に答えて、これぐらいの怪我で済ませる」
そんなの、できるか。
あの子――名前は思い出せないけど――を危険な目に遭わせるわけには。
花火の左手の中指が立った。二つ目の選択肢。
「二つ。質問に答えず、このままここでちっさい妹と一緒に、仲良くずたずたにされる。
これじゃ駄目か。ベッドにくくりつけられ、ちっさい妹が痛めつけられるところを最初から最期まで見る、にしよう。
こっちの方が、アニキには堪えるだろう?」
「…………ん、が」
「ん?」
「俺が…………大人しく、言うとおりに、すると」
「私が、言ったとおりのことをするんだよ。あんたは答えるだけでいい。
言うまでもないだろうけど、私の労力はどっちにしても変わらない。
ちっさい妹をいたぶるのも、犯人をぐちゃぐちゃにするのも同じことだ。
真剣に考えな。妹の身の安全と、弟をさらった誘拐犯の手助け。こう言えばわかりやすいだろ」
俺が選べば、片方だけ助かる。
でも、選ばなかった方はそこで終わる。
「どう、して…………俺が」
「そんなこと自分で考えろ。でも、自分は何も悪くないとか、自分には関係ないなんてふざけた考えはするな。
弟妹を守るのは、兄の役目だろ。状況を受け入れろ。とっくに普通じゃないんだ。
アニキの漫然とした平和な日常は、とっくに崩壊してるんだ」
迷う。どちらが大事かなんて、わかってるのに。
ふんぎりがつかない。
本当は等価値なのか。俺にとって、妹と澄子ちゃんは。
選ぶって、こういうことなんだ。
複数の内の一つを手にして、他を切り捨てる。
そんな経験、一度もない。十七年生きてきて、覚えている限りでは。

背中を横倒しのベッドに押しつけられた。
逃げられない俺に、花火が顔を近づけてくる。
そして、あることに気付いた。
「こんなこと、本当は言いたくなんかないんだけど、なり振りに構う余裕がないから言ってやる」
花火の目の下には隈が浮かんでいた。
目尻には乾いた涙の跡。
金色の髪もところどころ跳ねていて、艶が失われていた。
「私が、あいつを無事に連れ戻してやる。絶対にだ。だから――早くあいつの居場所を教えろ」
それらは、花火が弟を想ったゆえの行動。言葉は、命令でも脅迫でもなく、願い。
弟を助けるために、花火はここまで必死に捜し回った。
ならば、その思いに応えることに、俺は。
「教えてくれ…………アニキ」

俺は、迷わない。


70 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/08(日) 15:01:19 ID:C3xv1c1J
* * *

時が過ぎ、花火が立ち去った部屋の中。
俺と妹はまだその場から動けなかった。
妹が動けないのは、未だに花火の恐怖から覚めていないからだろう。
俺は、心に引っ掛かるものがあって、機能低下した頭でずっと考えていた。
ただ、答えを導き出す以前に、問いが思い当たらない。
なんだっけ。 
たしか、俺は倒れていたはず。そう、こうやって。
前のめりに倒れる。両腕と両足が伸び、大の字になった。
床の木目を見ていると、問いを思い出した。

花火がどうして、俺に嫌われても構わないと言ったのか。
嫌い嫌いと言ってくる相手を好意的に思う人間なんて、そうそう居ない。
俺みたいな、相手を嫌いになる資格のない人間はともかくとして。
――――まさか、いや、でも。
もしも花火が、俺の考えに気付いていて、あんなことを言ったのなら。

「……はっ、ははは、は…………くだらねえ」
自意識過剰にもほどがある。
花火が、俺に嫌われたいと願っているなんて、馬鹿な答えだ。零点だ。
あいつは俺のことをなんとも思ってない、虫けら程度に思っている、というのが正解だろう。
俺にどう思われても、花火はどうだっていいはずなんだから。

ぺたぺたという音が聞こえた。ゆっくりと近づいてくる。
俺の体が動いていない以上、妹が立てた音だと考えるのが妥当。
「お兄さん、そこ……危ないよ。早く、早くどいて」
何が危ないというのだ、妹よ。
お前が俺を心配するだなんて、二月の中旬から桜が咲き綻ぶんじゃないか、ハハハハハ。
「ベッド、ベッドが」
ベッド? そういや、支柱が真っ二つに折れてたな。
スケールモデルのベッドならともかく、1/1サイズはまだ敷居が高くて手が出せない。
というか、そこまでいったら家具屋の仕事だ。
修理、いや買い換えることになるな。思わぬ出費で我が家の家計は真っ赤っか。洒落にならん。
「倒れ、倒れそ……ううん、倒れるって!」
妹の目は恐怖のあまり節穴に?
俺はとっくにうつぶせに倒れているぞ。
「駄目…………だめえっ! 危ない!」
妹にのしかかられた。
これは初体験。体の天地を逆転させた相手が背中に乗るって結構悪くない。
でも、軽いな。もっとたくさん食べろよ。花火みたいに巨乳になれないぞ。

セクハラ発言を心の中で身内に対してしつつ、斜め下を見る。
俺の右手の甲は、床に落ちた本の上に乗っていた。
肘は浮いている。
もし今、花火に肘を踏まれたら折れるのは間違いない。あの女、えらい馬鹿力の持ち主だから。
骨折って意識が覚醒した状態で心臓マッサージや人工呼吸されるより痛いのかな。
なんて考えると同時に、肘に衝撃が走った。
色々あり、もはや痛覚のメーターは麻痺している。
その状態で受けた今のダメージは、先刻のどれよりも深刻だと理解した。

腕が折れていた。
支柱が肘に乗っていた。
目を疑う。信じられない。現実味が無い。あっさりしすぎている。
じわじわじわじわ、頭のてっぺんから爪先まで痛みが浸透する。
黒板に爪を立ててひっかいた時の擬音が神経を伝導していく様を想像した。

ああ、ちくしょう。
痛えなあ。


71 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 15:02:57 ID:C3xv1c1J
以上で今回は終了です。

次回、死闘編の決着。またここでお会いしましょう。

72 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 16:42:11 ID:HY6Y9NiA
一番槍GJ!

73 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 17:44:58 ID:sDqUvg+3
うっわ花火超ムカつく!

74 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 18:31:23 ID:JmqxEm6V
視点がやられる方だから非常にムカつくな。
澄子、または葉月と戦うのは明白だし、
ボコボコにされて新たに顔の傷が追加されるフラグだなw
まあ、兄か弟が空気を読まずに止めそうだけど。


75 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 19:26:17 ID:vYbHf5sd
果たして兄貴は五体満足で最終回を迎えられるのか!
衝撃の死闘編完結までGJはとっておきましょう。>>71乙。

76 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 19:36:56 ID:LiiA365m
なんか兄貴がここまで現状維持というか優柔不断だと
過去に相当な事があったんだろうなと思えてくる。

77 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 20:33:03 ID:3WT7NoCU
>>76
あぁ、やっぱり過去はまだ語られてないんだ
なんか作中で当たり前のように話題にあがるもんだから、読み飛ばしたかと思ってた



78 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 21:45:55 ID:UCX0DCy0
花火やりたい放題だなぁ
>凶暴で、残忍で、冷酷で、大事な人間以外は思いやらない。
これってそのまままるっきり花火に返せるんじゃないのか

79 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/06/08(日) 22:01:48 ID:lU3QqJUX
来週日曜の最終回が楽しみだな。

80 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 22:15:27 ID:f9d917ly
>>79
勝手に終わらすなよ

81 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 22:36:13 ID:sDqUvg+3
>>78
まるで自分の姿がうつった鏡に罵倒しているようなものねw

82 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 22:52:13 ID:C1mhThDW
>>79
(兄の命が)最終回ってことですね、わかります

冗談はさておいて、死闘編最終回ってことだろ

83 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 23:03:23 ID:oi8QEnfz
GJ!

ああしかし兄貴いいな
こういう普段は人畜無害の癖に本性は冷たい。
だけど好きな奴にはとことん甘いという、ルルーシュみたいなシスコンは大好物です


84 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/08(日) 23:39:53 ID:/8kC0GLJ
間違いなく花火にとってのハッピーエンドはありえないだろうな

85 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 00:36:47 ID:YZjjosiW
一方的に罵倒されたり理不尽な暴力にさらされたりしすぎだろ
それでも受身かつ自罰的な精神のあり方が変わらないとか、この兄貴異常にタフだ・・・

86 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/06/09(月) 00:40:11 ID:bzXHmMm6
弟はなぜ両親のことをばらしたのか気になります。 次回がまちどうしい

87 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 01:10:01 ID:MQzsU8QU
弟→誘拐されるが、少なくとも身の危険はない。

兄→弟が行方不明となるや、いきなり顔見知りの女が現れて、一方的に人格批判と罵倒をされたのち、弟の捜索の途中で誘拐犯に監禁され、縛られたまま一晩放置されて強制野宿、
その起き抜けに腹部を圧迫され気絶し再び意識喪失、起きるも、気絶させられたクラスメートの女子に誤解から詰問を受け、それを無理やりかいくぐって、気絶から起きてすぐであるにも関わらず、妹の危機に全力疾走で帰宅、
着くも、再び現れた顔見知りの女に投げる殴る蹴るなどの暴行を加えられ、罵倒され、妹を人質に脅迫され、破壊されたベッドに潰されて片腕骨折。

これはひどい。いっそヤンデレ家族といじめられっ子の兄に改題すべきとか思っちゃうほど。
頼むから兄貴に救いを与えてやってください……。

88 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 01:34:16 ID:a5GU6kyQ
>>87
兄はそろそろ怒っても良いと思う

89 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 01:41:17 ID:ygjKQ4PD
そういや、全然傍観できてないな
むしろメイン被害者
でも葉月さんに好かれてるというだけで十分過ぎるほど救われてるじゃないか

90 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 02:00:20 ID:C4CY0qJW
兄貴カワイソスwww
俺なら数発で半死にになってるな。
兄貴、本物のタフだな。

91 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 04:50:46 ID:1vBJBpd6
実は弟が兄を憎んでるんじゃないかと邪推してしまうな
葉月さんの性格を知りながらチョコあげてみたり花火に両親のこと話してみたり
誘拐も実は狂言で兄を苦しめるつもりで燈子を利用しただけだったりして
花火が兄を嫌わなければならないって言ってたのも
弟が兄を嫌っている→私も嫌わなければならないってことだったりしてと妄想

92 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/06/09(月) 06:31:14 ID:Rivw5zkW
>>83
おまいがそんなこと言うから、

兄貴→ルルーシュ
弟 →ロロ
妹 →ナナリー

って考えちゃったじゃないか。

93 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 06:32:27 ID:Rivw5zkW
sage忘れた。すまぬ

94 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 06:48:36 ID:QMPZ1bLx
GJ!
兄貴当分プラモ作れないな
案外それに1番怒ったりして。

95 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 08:35:03 ID:UUJAZtko
>>92 なぜか俺は弟がスザクっぽいとおもってるのだが・・・

96 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 14:29:30 ID:YbZh7+do
>>95
んじゃ葉月さんはC.C.だな

97 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 17:28:09 ID:nL1ST453
コードギアスの小説みたが、
ロロはルルーシュの妹 ナナリーに嫉妬してたが
あれもヤンデレ?

98 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 17:28:38 ID:UUJAZtko
>>96 葉月さんが兄貴に
「童貞」とかいうんですねわかります

99 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 18:37:16 ID:ygjKQ4PD
>>97
ヤンデレだとしても、男のヤンデレは死ぬべきだ
>>98
それはそれで見てみたいw

100 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 19:19:52 ID:wwCpe+ZC
男のヤンデレは生まれてきたこと自体が犯罪。
存在がウザいから首吊って死ね。

101 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 19:22:07 ID:2E62HCXl
というかコードギアス自体が・・・

102 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 20:34:41 ID:BAY3I4h3
>>84
花火にとっては弟さえ自分を受け入れてくれるならハッピーだろ。
他のすべての人間は邪魔でしかないんだし。
しかしこの状況をあっさり受け入れるなら弟も相当の人でなしになるな。

103 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 20:58:11 ID:v5xLwfVp
そういえば傍観者の投下スピード速くなってるな。
読み手としては嬉しい事この上ないが無理は禁物だぜ。
次回にwktk! GJ!!

104 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/09(月) 21:08:57 ID:C4CY0qJW
俺の昼寝の夢・~ヤンデレに戦闘車を与えたら~

「●●君はやらせない!●●君を殺そうとするのは死ね!」
ぶつぶつ呟きながら重機関銃で集落を掃討。
「こちらマイレディ52!CAS要請!ポイントは…」
近接航空支援を要請し、愛する人に近づく泥棒猫を消す。
「こちらエリック23、デッカイのをプレゼントだ!巻き込まれるなよ!」
泥棒猫の乗っているパールライダー61は密林の敵もろとも燃料気化爆弾の餌食に…
その戦いで昇進した女の子は部下として愛する人を配置、いつも二人+機関砲手で出撃
ゲリラの掃討から大攻勢まで戦い抜いた二人は終戦後結婚。
部隊婚を行う。しかし新たな敵が!女士官 対 女性事務官 の戦いが…

そこで起きちまった。

105 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/10(火) 01:56:37 ID:/2nMHf7K
続きよろしく

106 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/10(火) 23:29:54 ID:b/zwtTk5
あの名曲+ヤンデレ スーダラ節

チョイト一杯のつもりで飲んで♪
いつの間にかはしご酒♪
気が付いたらどっかで監禁♪
君は受付の木村さん♪
ア、ホレスーイスイスーダラダッダスラスラスイスイスイ♪ 
(略)



107 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/06/11(水) 00:30:48 ID:3Wxplgdo
病めば病むほど強くなる

病拳

108 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 01:08:12 ID:JA9Zgdx9
此処でもキモウトスレでもsageない奴が増えてきたのは気のせいだろうか?

109 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 03:56:07 ID:Os9sQ5He
投稿します。
ヤンデレになるきっかけまでの導入部分です。
プロットみたいなものですね。

110 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 03:56:47 ID:Os9sQ5He
【変身少女】


≪あのさ、俺たち少し距離を置いて付き合わないか≫

祐(ゆう)くんが目の前でそう、あたしに告げた。
「えっ、あ……うん」
その時は頭が真っ白でそう言うのが精一杯だった。一瞬、何を言われたのか
分からず、祐くんにただ笑顔を見せようと、私はニコニコしていたと思う。
「俺さ、ずっと忍(しのぶ)の事大切な友達だと思っているから。それに、忍は
美人だし頭もいいしさ。俺も羨むくらいの女の子だから、大丈夫」
「……そんな気にしないで」
私の言葉を聞くと、祐くんは少しホッとした様に自分の家に入っていった。
私はこの時、祐くんとのこの関係はこれからもずっと続いていくものだと少しも
疑わず、その場で≪バイバイ≫と手をずっと振っていたのを覚えている。


祐くんとは小学校5年の時に初めて出合った。私よりも少しだけ背の大きいその
男の子は、私の隣の席に座ると手を差し伸べてきた。
「今日からよろしく」
「……えっ」
「いや、俺、隣にこんな可愛い子が座るなんて思わなかったからさ、ラッキー
だったかなって」
その男の子は小声で私に囁いた。
「……あの……かわいい?」
「そうだよ」
顔が真っ赤になった私をからかう様に、男の子は舌をぺろっと出してあっかんべー
をした。

111 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 03:57:39 ID:Os9sQ5He
それから祐くんと私はずっと一緒。祐くんはスポーツ万能で勉強もそこそこできた。
お喋りも面白くてクラスの人気者。対する私は内気で眼鏡をかけていて、クラスでも
目立たない存在だった。でも、そんな私を祐くんは全く気にせずに、いつも話しかけて
きてくれて仲間に誘ってくれた。そんな優しい祐くんを私はすぐに好きになっていった。

「お前、忍の事好きなんだろ」
「あぁ、好きだよ」
「……ちょっ、……祐くん……」
「じゃあ、結婚するのか?」
「そんなの分かるかよ。まだ子供だぞ、俺」
「そんなブス、好きなんて変わっているな」
「……何だと!」
「……祐くん……いいから」
「お前、変わってんな~。こんな女とよぉ」
「謝れ!」
「何だやるのか?」
「うるせぇ、忍を馬鹿にするな!」

こんな事もあった。でも、凄く嬉しくて、私はその晩ずっと祐くんの事だけを考えて
眠れなかった。


≪んっ、あ……んくっ≫

中学1年の時、初めてのキス。キスがしたいと言われて、俯いたままの私を強引に
引っ張って行って祐くんは校舎の影で唇を合わせてきた。凄く恥ずかしいのに、そうされる
事で、祐くんに愛されているんだと認識できた。私も祐くんが本当に好きなんだ。
そう思うと、下半身が熱くなる。体の力が抜け、何をされてもいいという気持ちになってくる。
私は、その夜に自慰というものを始めてした。祐くんにセックスされる妄想をしながら。

112 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 03:58:12 ID:Os9sQ5He
その一週間後。私は母親に頼んで、コンタクトレンズを作ってもらった。今までろくに
手入れをしていなかった髪を美容室に行って綺麗にカットを入れてもらう。

【少しでも祐くんに相応しい女の子になろう……】

勉強の時間も増やした。祐くんと同じ高校に行くためには、私のテストの点は余りにも
低かった。塾に行き、夜にまた勉強をする。祐くんは一緒にいられる時間が減ったと怒ったけど、
2年生の3学期になる頃には祐くんと同じ位の点を取れるようになった。

「あの、付き合ってもらいたいんだけど」
「……はい?」
「ずっと、見てました。その、好きです」
この頃、私の周りで変化が起きる。私に告白してくる男の子が現れる様になった。小学校の時、
ブスとか言われていたのに……。
「……ごめんなさい」
そう、私には他の選択肢はない。私の外観や優等生の仮面だけ見て告白してくる男子。
そんな男の子は全く興味が無い。その頃、私の胸は同級生と比べても大きかった。
腰まで伸びた黒髪、大きな胸、切れ長の目。母親も自分の娘がモデルのように成長してくれた
と近所に自慢するようになっていた。でも、そんな事私には関係ない。だって、この体は
祐くんの為にあるんだもの。

「……くっん、あっ、あ、ぁぁ……いいよぉ……祐くぅん」
≪くちゅ、ちゅっく、ちゅぷ……≫
真夜中にいつもやっている事。この頃のあたしは、毎日自慰に明け暮れていた。祐くんも、
進学校に進むために有名な塾に通っている。だから、一緒に帰るのは週に1度か2度だけ。
その寂しさが、私を自慰の世界に引き込んでいく。祐くんはキス以上の事をしてくれない。
お互いを大事にしようねと、優しくしてくれている。
2度程、胸を軽く揉んでくれたけど、それ以上の事はしてくれなかった。その度に私の
ショーツの中にある産毛はびっしょりと愛液に濡れ、体から溢れる淫欲がそれ以上の
行為を欲する。私は妄想の中で、公園のトイレの中、校舎の屋上、誰もいない保健室と
犯される場所を変えながら、自慰に没頭するようになっていった。

113 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 03:58:39 ID:Os9sQ5He
「よしっ、これで一緒の学校にいける」
「……うん」
「それにしても、忍も頑張ったなぁ。まさか、一緒の高校に行けるとは思ってなかったよ」
「……祐くんの為だから……私、頑張ったんだよ」
高校受験は無事、希望した高校に合格することができた。これで、また3年間は一緒に
いられる。私は嬉しくて小躍りしそうだった。そして、これで堂々と祐くんと……。
受験勉強に縛られた1年半は、苦痛以外何ものでもなかった。でも、それもこれで報われる。
私と祐くんは、他の人が羨むようなカップルになるはずだ。


≪あれ?何で私、泣いているんだろう≫
高校1年の夏、私は自分の部屋で自問自答していた。

≪あのさ、俺たち少し距離を置いて付き合わないか≫

これ、どういう意味だろう。私、何か悪い事したのかな?うんん、男子からの告白は
全部断っているし、エッチな事だって自慰だけ。祐くんに気に入られるように、エステに
行ったりして綺麗になる努力だってしている。そう、何にも問題ないよね。そうだ、きっと
高校生らしく、目立たないように付き合っていこうってことだと思う。私は携帯を開くと、
祐くんに電話をかける。

≪現在、電波の届かない状況にあるか、電源が入っていないためかかりません……≫

あれ?充電し忘れちゃったのかな。几帳面な祐くんにしては珍しいな。う~ん、今日は
凄く祐くんに会いたい気分だ。そうだ、家に直接会いに行けばいいんだ。
私と祐くんの家は、歩いて10分も離れていない。小学校の同じ学区内で、直ぐに行ける
距離だ。自転車に乗ればそれこそ、5分で会える距離にいる。


114 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 03:59:01 ID:Os9sQ5He
【驚くかな。最近、祐くんの家に行ってないし。学校で距離を置いて、こっちで会えばいいんだ】

祐くんの家の近くまで来た時、玄関の前に2つの影を見つける。祐くんと……妹さん?
あれ、祐くんは確か一人っ子だよね。

「祐……」

玄関の前の影が重なった。影と影が重なり、一つになる。やがてその影は2つに別れ、
祐くんは玄関の中へと消えていった。そして、もう一つの影が私の横を通り過ぎる。
ボサボサの髪に眼鏡。冴えない少女。目立たない少女。地味な少女。
≪誰よ……貴方……≫
声が出ない。それはどこかで見たような少女だった。そう、遠い何処かで。それは……。

≪何で、こんな子が祐くんと……キス……何で……こんな地味な……なんで……なんで……≫
私は猛スピードで家に戻った。布団を頭から被り、大声で泣く。

「私は、祐くんの為に綺麗になった、処女だっていつでも捧げられる、祐くんは、私だけに
優しくて、そう、私だけに優しいのよ。あんな地味で眼鏡で、ブスな子が祐くんと釣り合う
訳がないじゃない!」
何度も、何度も叫ぶ。声が枯れるまで。わたしは、一晩中叫んで泣いた。


【おしまい】


115 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 04:00:53 ID:Os9sQ5He
直球ですが、プロットはこんなもんでいいのかな?
ヤンデレは初めての挑戦ですが、壊す過程は楽しいですね。

116 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 07:25:04 ID:uTMTWeB8
>>115
イイよイイよー
忍カワイソス、祐くんからさらにひどい仕打ちをされそうだけど
それが楽しみな俺がいる

117 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 09:19:55 ID:Kh+xds0n
佑くんはB専か地味専かw
あるいは目立たない女の子救済部隊か

118 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 09:45:09 ID:EWGCc9GF
いやいや、誠ということも考えられるぞ

119 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 09:59:48 ID:RF03uV/Z
忍と謎の地味娘の因縁?らしきものが気になる。

120 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 11:02:47 ID:0/cNddCK
>>119
地味娘と忍に因縁があるわけじゃなくて、昔の地味だった忍自身と地味娘がダブって見えただけだとおも。

121 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 13:03:04 ID:uiXYhhC2
俺もおにゃのこに祐君と呼ばれたい…

122 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 14:58:50 ID:/xcQPi75
地味なのに可愛くてヤンデレ気質とか・・・
何というストライクゾーン!!

123 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/11(水) 16:52:45 ID:J8eccUW0
変身の「変」の部分を最初に見て間違えて「変名おじさん」と読んでしまった俺ガイル。
とりあえずGJ。早く続きが読みたいぜ。

124 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 01:12:27 ID:yMVbCASj
>>110です
こんなにたくさんの感想いただきありがとうございます。
お茶濁しのプロット投下でしたが、続きを書いてもいいという方が
いらっしゃるので拙い文章ですがもう少し書いてみたいと思います。

もう少しだけ時間をください。
よろしくお願いします。

125 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 06:18:57 ID:6P7FNUR5
見たことがある、というあたり、もしかしたら忍が見たのは過去の自分の幻影なのかもしれない

126 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 18:06:36 ID:9KNA1QgK
>>106のネタに影響され一曲。
元曲 仰げば尊し
1.殺意が見えたぞ~お前の顔 女の気配にも敏感すぎ~♪
思えば~俺~の弁当 酸っぱい♪
今~こそ中身を教えてくれ~♪
2.包丁しまえよ~危ないから何故に俺ん家の台所に♪
忘るる間ぞ無き往く年月~そろそろ同棲五周年~♪      

127 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 19:46:41 ID:nzVI9vPb
元曲 21世紀の精神異常者(和訳)

忍び足 鉄の包丁
あの女の匂いがすると叫ぶ
彼とのエデンへの入り口
21世紀の精神異常者

血の棚に有刺鉄線
泥棒ネコを火葬する薪の山
恋敵は嫉妬の炎に蹂躙される
21世紀の精神異常者

死の種は撒かれ、盲目の愛が始まる
愛に飢え、近づく女は血まみれ
彼にに必要な女は自分以外にいない
21世紀の精神異常者

128 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 21:45:03 ID:yMVbCASj
投稿します。
>>110からの続きです。

129 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 21:45:33 ID:yMVbCASj
【眠っている時は天使が誰にでも平等に幸せをくれるって……そう思ってた】

祐くんがこちらを見てニコニコと微笑んでいる。白いタキシードに身を包んでカッコいい。
あれ?私、両手を広げて何やってんだろ。花束?私……手に小さな花束を持ってる。
泣いているんだ……私、泣いてる。祐くんのタキシード姿を見ながら……。

≪ピピピッ……ピピピッ……ピピピッ……≫

「ん……夢?……あれ、どんな夢だったっけ」
最悪の目覚めだった。ひょっとすると、目の下にクマが出来ているかもしれない。
ベッドから起き上がると、クラクラ目眩がする。目覚ましを止めると、時計の針は朝6時を
指していた。姿見を覗き込むと案の定、目の下にクマができ、黒髪がピョンとはねた
無残な自分の姿があった。
「洋服のまま寝ちゃったんだ。シャワー……浴びてこよう」
ふらふらと浴室に向かうと、デニムのパンツと白い半そでのレースシャツを脱ぐ。
「うっ。ベトベトだ」
寝汗を掻いたのか、しっとりと濡れた下着が肌にまとわり付いて気持ち悪い。ブラジャーと
ショーツを洗濯カゴに無造作に放り込むと、浴室でシャワーを浴びる。
「また、少し大きくなった……」
自分の胸を下から支えると、ずっしりとその手に重さがかかる。形のよい乳房が片手から
溢れるほどになっていた。男の子には分からない悩みだろうが、胸が大きくなりすぎるのも
考え物だ。肩は凝るし、運動だってやりにくい。何より、昔、さりげなく祐くんに好きな女性の
タイプを聞いた時、胸の大きな子が特に好きって感じじゃ無く、普通でいいとか言ってたのが
とても気になる。

シャワーを浴びていると昨日の記憶が蘇り、重い不安感が圧し掛かってくる。
「祐くん……」
昨日の女の子は誰だったんだろう。遠めに見て祐くんとあの女の子はキスしているように
見えた。お下げで眼鏡の女の子。もしかしたら、見間違いかもしれない。たまたま来ていた
親戚の子かも。目にゴミが入って取ってあげていたという可能性もあるし。
「そうよ、何かの見間違い。わたし、祐くんを疑ったりして一人で落ち込んで泣いたり。
そんな事じゃ、本当に嫌われちゃうよ」
一人で落ち込み、怒り、泣いていた自分が何だか恥ずかしくなってくる。
「私、変な女の子なのかな。直ぐ考え込んだり、妄想したり……オナニー好きでエッチだし」
シャワーの温水を内腿に近づける。ザーという音の中に、くぐもった吐息が混じる。
「んっ……ちょっとだけ……なら」
肉襞を激しい水圧が刺激する。水圧で押し広げられた肉襞からぷっくりとしたクリトリスが
顔を覗かせる。ビリビリとした刺激と、ゾクゾクっとした電流が体を駆け巡る。
「ふぁっ、んんっ……んっ、い……それっ……そこ、いいっ」
右手で左乳房の乳首を摩擦し、抓る。激しく指先が上下に動き、乳首がツンと勃起してくる。
それを指先で弾き、乳輪を親指でこねくり回す。
「ごめんっ、疑ったりしてっ、んっ、だから、ふぁっっ、好き……好きぃ…してくださ……い
……祐く……っっ!」
トロトロした愛液が水とは違った感覚で太ももに絡み付いて、気持ち悪い。
タオルでふき取るが、まだ感じているのか、膣内からまた新たな湿り気が溢れてくる。
「また、やっちゃった…………自己嫌悪……うぅっ、……反省」
行為が終わると、いつも罪悪感が襲ってくる。こんなエッチな女の子じゃ祐くんに
相応しくないんじゃないか、という自責の念だけが心を支配する。。
「早く、用意しよう……」

130 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 21:45:55 ID:yMVbCASj
今日、早く目覚まし時計をセットにしたのには、ちょっとした理由があった。
祐くんは両親が共働きのせいか、毎日学食か購買部のパンを購入している。
だが、水曜日は4時間目が体育の授業の為、どうしても他の生徒よりも一歩出遅れてしまい、
人気のパンや限定数の定食などは食べられない。そこで、わたしはそれを理由にその日だけ
祐くんにお弁当を作っていた。そうとでも理由をつけないと、祐くんは恥ずかしいと言って
絶対お弁当は受け取って貰えないからだ。
「泣いて、落ち込んで、寝たわりにはちゃんと目覚ましセットしてるし。習慣て恐ろしい」
エプロンを付けて腰まである髪を後ろゴムで縛り、ポニーテールにする。料理をする時の
わたしのスタイルだ。
「祐くんを疑った罪滅ぼし。うん、今日は頑張って作ろう」
祐くんの好きなおかずをたくさん作る。ピーマンの肉詰め、卵焼き、ポテトサラダ。
「今日はお弁当に愛のメッセージでも入れて見るかなぁ」
ご飯に海苔と桜でんぶでハートメッセージでもと考えたのだが、ここで手が止まる。

《距離を置いて付き合わないか》

昨日の祐くんの言葉。自分でも少しは遠慮しないと。
「友達の前であからさまにそういう事するのは……やめよう。………んー。うーん。
…………そうだ!」
ご飯の部分に隙間を空け、6本のウインナーを並べる。焼き串でそこに
《I LOVE 祐》の文字をつけた。
その上に、ご飯とウインナーを覆うように海苔でそれを隠す。
「お弁当のノリを食べると、ウインナーからメッセージが出るようにしてみました」
自画自賛ぽく、ガッツポーズをとる。これなら、友達にもばれないですむ。
祐くんだって、喜んでくれるだろう。これを見たときの祐くんのリアクションを
想像すると、おかしくて笑みがこぼれる。
「えっと、最後の仕上げ」
お弁当に入れる、お箸の先をペロリと嘗める。
「えへへ……間接キス。」
この位は許されるよね。

「ちょっと、忍。そろそろ学校に行く時間じゃない?」
「えっ。あ、もう、そんな時間!?」
母さんの声で現実に引き戻される。多分、今のわたしを他人が見たら、完全に引くだろう。
この妄想癖、何とかしないと……。残ったウインナーと卵焼きをあわてて口にほお張り、
2分で歯磨きを終えるとわたしは陸上選手並のダッシュで家を飛び出した。


「おはよっ」
「あっ、うん……おはよう」
学校に行く途中、わたしは祐くんの家に寄る。わたしの家の方が学校に遠い為、
登校は必ずこの順番になる。
そこから二人でバス停まで向かい、学校前までバスに乗るのがいつものコースだ。。
「はい、お弁当」
わたしは作りたてのお弁当を祐くんに手渡した。学校で手渡しても良かったんだけど、
そこはわたしの祐くんへの配慮というやつだ。
「忍……いいのに」
「遠慮しないでいいよ。これはお昼にコッペパンしか食べられないであろう、
可哀想な祐くんに対するわたしの配給なのさ」
ちょっとふざけた口調で祐くんに甘える。
「ほら……いつも悪いし」
「ふふん。たいした物なんか作って無いから安心したまえ。どうせ、がっついて
ろくに味わいもしない人に、手の込んだお弁当なんかもったいない」
「……そっか。じゃあ貰っておくよ」
あれ?ノリが悪いなぁ。いつもなら、どうせ美味しくないだから味わうなんて
無意味だよ、とか返してくるのに。

バス停までの間、さりげなく祐くんと手を繋ぐ。祐くんの手から温もりが伝わってくる。
それは、わたしと祐くんの絆の証し。そうしている時間が、わたしは一番好きだ。


131 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 21:46:21 ID:yMVbCASj
お昼になった。高校で別のクラスになっているわたしと祐くんは、校舎の端と端で
かなり距離がある。しかも、今日はグラウンドにいるはずだから、会うにはかなりの
労力が必要になる。
「屋上での一緒のお弁当。今日は来るかなぁ」
祐くんにお弁当にを渡した時は、屋上でよく一緒に食べていた。ただ、他の生徒に
見られるのを極端に嫌がる祐くんは、誘っても2回に1回しかOKしない。まして、
昨日のあんな事言った後だから、来る可能性はほぼゼロに近いと思う。
「でも、反応みたいなぁ。どんな顔して食べているんだろう」
わくわくしながら屋上でお弁当を食べていると、お昼休みも後10分になった。
「よし、顔だけでも見に行こう」
自分のお弁当箱をバックに仕舞うと、祐くんクラスへと足早に向かう。
「あの、立花くんはいますか?わたし、A組の如月っていいます」
「いないよ。そういえば、今日は昼休みずっといないなぁ」
そう言われて教室を覗くと、確かに祐くんの姿はそこにはなかった。
「……あっ、そうですか。ありがとうございます」
軽く会釈をすると、帰ろうとする。

「忍……」
振り向くとそこには祐くんの姿があった。手にはわたしのお弁当箱を持っている。
「今日、外で食べたんだ。屋上には……来なかったね」
誰にも聞かれないように小声で話す。
「……あぁ」
「で、感想は?」
「え、うん。美味かったよ。俺の好きなものばかりで。ピーマンの肉詰め、卵焼き、
ポテトサラダ。どれも忍にしては上出来だった」
「……それだけ?」
「……ん?なっ、何だよ、それだけって」
「……いい……何でもない」
わたしは軽くなったお弁当箱を手に取ると、とぼとぼと肩を落としてクラスに向かった。
途中でトイレに寄って便座に腰かけると、深いため息をつく。
「……馬鹿……鈍感……ちょっと位、感動してくれてもいいじゃない」
リアクションを期待していたわたしは、あまりのリアクションの薄さにがっかりしていた。

《ねぇ、今日、見た?立花君》
トイレの外で女子の声がする。立花君って、言っていたような。
《A組の如月っていう人と付き合っているんじゃなかったの?》
《中庭で三井さんとお弁当食べてたでしょ》
「!?」
《あんな子とお弁当箱食べるんなら、私も誘えば良かった。A組の如月と付き合って
いるって聞いてたから諦めてたのに》
《如月って、結構男子に告白されているっていう美人でしょ》
《そうそう、今日もさっき来てたわよ》
《それより、立花君。その如月から貰ったお弁当平気で返してたけど、あれの中身、
ごみ箱に捨ててたわよ》
《えっ、それマジ?》
《私、見ちゃった。中庭のごみ箱にお弁当捨てて、そこにお弁当箱隠してた》
《それ、本当ならちょっと幻滅。酷いことするのね》
《本当も本当。だってその後、その子のもって来たお弁当食べてたもん》
《あっ、午後のチャイム鳴っちゃった。早く行こ》

「…………」
嘘だ。
「…………」
何言ってるの。そんな事ある訳無い。
「…………」
祐くんが、祐くんが、そんな事するわけないじゃない。
「…………」
だって、今日も手を繋いで来たんだよ。お弁当渡して。

「そんなのっ、嘘に決まっているじゃないっっ!!」

132 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 21:46:38 ID:yMVbCASj
トイレのドアを力一杯殴る。ガンッという音がトイレに響き渡った。その拍子に
空のお弁当箱がタイルの床に転がる。そして、お弁当箱蓋が開いた。全く何も入っていない
空のお弁当箱。
「何も……入ってない……?」
わたしはそれに違和感を感じる。おかずを分けていた仕切り紙、中に入っていた楊枝。

【全部入ってない】

私は誰もいない廊下を全速力で走った。中庭のごみ箱を見るために。例え1%でもいい、
あの女の子達の話を、わたしの不安を裏切ってと祈りながら。誰もいない中庭に置いてある
ゴミ箱の中を確認するために。

他のゴミと一緒に。

《それは……あった……》

蟻が群がっている。ぐちゃぐちゃになったそれは入っていた。慌ててご飯をかき分けると、
6本のソーセージが現れる。
「……駄目」
そのソーセージを拾い上げる。
「食べちゃ駄目……」
群がっていた蟻を払い落とす。
「食べちゃ駄目って言ってるでしょっ!これはっ、祐くんの何だからっ!」
両手ですくい上げた6本のソーセージ。それを大事に抱え上げる。
「汚れちゃった。奇麗にしなきゃ。祐くんにこのままじゃ食べて貰えない」
口元に汚れたソーセージをもって行く。
「奇麗にしなきゃ……ね」

《…………ぴちゃっ》

133 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 21:46:56 ID:yMVbCASj
「……忍、先に帰ったんじゃなかったのか」
わたしに祐くんが話しかける。そう、わたしの祐くんが来た。
「今日は委員会で遅くなったから、祐くんを待ってたんだ」
「手、どうしたんだ?」
包帯の巻かれたわたしの手を見ながら、祐くんが心配してくれる。
「ぶつけて怪我したの。心配しないで。たいした事ないから」
「そっか……悪いな……あの、忍……実は、俺さ……」
「気にしないで。ねぇ、何を謝っているの?それより、今日は部活でお腹減ってない?」
「そりゃ、サッカーやってりゃお腹は減るけど……」
私は包みに大事にしまっておいた≪それ≫を差し出す。
「残りで悪いけど、祐くんウインナー好きでしょ?」
「……あぁ、好きだけど」
「あげるね。もったいないから食べて」
楊枝に刺した一本のウインナーを祐くんに差し出す。
「これ、何で焦げ跡で数字が書かれているんだ?1とか0とか」
「何でかな。気にしないで食べて。美味しいよ」
わたしは、1本のソーセージを口に頬張る。
「……サンキュ。もらうよ。折角だしな」

わたしはソーセージを飲み込んだ。祐と書かれたソーセージ……美味しいよ。




【眠っている時は天使が誰にでも平等に幸せをくれる】

……全く……本当に当てにならないね……早く起きなきゃ。



【おしまい】


134 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 21:48:32 ID:yMVbCASj
ここで終わりです。
では、失礼します。

135 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 21:53:02 ID:9KNA1QgK
GJ!!!  忍の迷走しちまった感が俺にはウケた!

136 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 22:12:07 ID:+Zxnwnwr
GJ!
男ひでぇ…受け取った手作り弁当をゴミ箱に捨てるとか人間の所業じゃないだろ…

137 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 22:46:46 ID:9PaT93C5
GJ!
最初の頃の優しさはどこにいったんだw

138 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 23:12:04 ID:Ck6E5Rw1
GJ。男が誠にしか見えねぇ。

139 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 23:16:20 ID:yMVbCASj
感想ありがとうございます。
祐やっぱり人気無いですね。
これ、祐視点だと180度変わります。
勿論、訳があってのことなんですけど、これじゃ見えないですね。

誤植もあるしorz

そして、お弁当箱蓋が開いた。→そしてお弁当箱の蓋が開いた。
「食べちゃ駄目って言ってるでしょっ!これはっ、祐くんの何だからっ!」→なんだからっ

すみません。

140 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/12(木) 23:25:43 ID:ZuP7XTsy
>>139
乙です
続き待ってます!

何故か楓と忍が被る…

141 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 00:38:58 ID:HIsa1oAL
GJ!!
でも忍かわいそう…(´・ω・`)



142 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 01:20:09 ID:KqmqA3eO
>>139
頑張って! 続き、楽しみにしてます。
訳かぁ……。食い物を駄目にするほどの事情ってなんじゃろうね?

143 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 01:22:11 ID:f8Zl1Qkh
>>133で最後にウインナーをソーセージとか書いてます。
ちゃんと読み返したつもりだったんですが、何で分からなかったのか。
もうちょっとちゃんと修行してからきます。
何度も本当にすみませんでした。



144 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 02:01:45 ID:f8Zl1Qkh
後、申し訳ありませんが、保管庫への登録を辞退させてください。
理由は上記の為です。
ウインナーと書くべきところとソーセージと7箇所も書き間違えています。
不完全な恥ずかしいSSを保管庫に残すのは、本当に恥ずかしく申し訳ないので。
よろしくお願いします。


145 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 02:59:41 ID:B7bdDo6+
待てwikiなら編集もできるよ

146 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 06:18:28 ID:h6fFAb1z
>>144
>>145も言ってるが、
wikiは修正できるから大丈夫だよ

147 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 08:19:19 ID:4xfZIvV4
>>139GJ!
最近投下がちょっと増えたかな?
でもやっぱり少ないから続きを頼みます

148 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 08:37:51 ID:AObGaD/F
このスレにタザリアを購読している人いる?
リネアがジグに対して最初はSだけだったのに執着しだして、今じゃ片足切断の首輪幽閉とかw
更に切断した片足の骨でペアリングって、病みすぎだろw
まあ、男臭い所があるから駄目か……
しかも、メインヒロインじゃ無さそうだから、いずれ退場かも知れないしな


149 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 09:10:02 ID:dbY0IfdV
>>133
GJ!
男視点での話も見たいな。コメントが気になる。

しかし、この場合男は完全に忍を切ってるようだから誠とは違うような

150 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/06/13(金) 11:56:33 ID:Q8diy22s
あと2日でヤンデレ家族の最終回か。一週間って短い。

澄子ちゃんがあまり酷い目に遭わない事を祈りたい。

151 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 11:57:20 ID:KqmqA3eO
>>149
そうか? 一方的に別れを切り出して、事情も言わず『切った気になっている』だけなら言いたくはないがmと一緒だぞ。
お互い納得できるまで話しあってこその誠意だろう。
まあ、これ以上の考察は興が削がれるのでやめにするが。

152 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 12:20:59 ID:uiNhgbuT
>>150
だからあくまで一部完みたいなもんだと(ry

153 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 12:33:30 ID:huPE5Xk4
>>150
最終回ではないと何度言えば(ry

154 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/06/13(金) 12:36:57 ID:uiNhgbuT
じゃあまあまともなssがくるまでの繋ぎとして、ぽけもん 第四話、投下します

155 名前:ぽけもん 黒  吉野町と解氷 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/06/13(金) 12:37:52 ID:uiNhgbuT
吉野町に着くと、そのまま町役場へ行き、すぐにポポとのパートナー契約の書類を作って申請した。
ポポは今まで野生だったため住民票が存在せず、そのために若干手続きに手間取ってしまったが、一応つつがなく契約を終えた。
その後は、もうほとんど日が暮れていたこともあり、ポケモンセンターに向かうことにした。
その途中。
通りの左前方に、たくさんの服が陳列されている建物が目に入った。確認するまでもない、服屋だ。
それでようやく思い出した。
ポポ服着てねえ。
危なかった。ここ数日でそれがナチュラルだったもんだからすっかり慣らされていた。
役場の受付の人がやたら不審な目でこっちを見てくると思ったらそういうわけか。
まあ羽毛で素肌はほとんど見えないから問題ないって言ったら問題ないんだけど、気分的なものもあるし。
というわけで、香草さんに頼んでみることにした。
「あのー、香草さん?」
「……なによ」
振り向いた香草さんの顔は夕日で紅に染まっていて、思わずドキッとしてしまう。
それを表面に出さないように押し込んでから、口を開く。
「ポポって服着てないよね」
「うん」
「だからさ、服買ってきて欲しいんだよね」
ほぼ無表情だ。それは拒絶のようにも取れる。
「……予算は?」
一応聞いてみるだけ、という口調で香草さんが聞いてきた。
「に……二千円以内で」
「二千円!? 少ないわよ!」
「だってしょうがないだろ、食料とか道具とか補充しないといけないし。それに、田舎なんだからリーズナブルなものもあるはずだし」
「道具って?」
そういえば、早急に補給する必要のある道具ってあったっけ……? いや、たとえなくてもお金は大事だよ。
「ね、眠り粉とか」
苦し紛れに、つい先日使い切ってしまった眠り粉を挙げてみる。
「いらないわよそんなの」
もちろん一蹴された。まあしょうがない。僕もどうしても今補給しなきゃならないと思っているわけでもないし。
「いるって! アレなければ死人が出てたかもしれなかったんだから」
しかし、一応必要性を強調しておく。これに関しては香草さんも負い目があることだろうし。
「大体アンタは消極的過ぎんのよ! 何で何よりも逃げること優先なのよ!」
う、痛いところを突かれた。確かに、僕は基本的に臆病だ。だから何よりも逃げることを優先して物事を考えてしまう。
「死んだら元も子もないからに決まってんだろ!」
気にしていることを言われたことで、思わず語気が荒くなる。
「ケンカはやめるです! ポポは服いらないです!」
僕達を見かねたのか、ポポが僕らの間に割って入った。
「いや、そうもいかない」
「そうよ、いるに決まってるじゃない」
「なんでです?」
沈黙。なんでって言われても……。
「も、モラル的な問題かな」
「モラルって何です?」
「こう……なんというか、とにかくダメなんだよ」
その後も服屋の前でもめ続けること数分。なんとか香草さんに折れてもらった。
そして待つこと数分。香草さんがビニール袋を提げて店から出てきた。
早速中を見れば、黒のワンピースが一着に、女児用のパンツが二枚。
僕は可愛らしいパンツを見た瞬間、思考と行動が停止した。そして香草さんに目潰しを喰らった。
「ギャー!」
「何女の子の服をチェックしてんのよ、この変態!」
至って正論だ。でも、これはなんというか、不可抗力というか。
袋を受け取ると、僕は激しく瞬きを繰り返しながら歩き出した。痛いが目は無事らしい。
ほどなくして、ポケモンセンターに到着した。
ポケモンセンターはポケモントレーナーとそのパートナーに対して無償で寝床と風呂、そして食事を保障している施設のことだ。まさに僕達旅のトレーナーとポケモンの味方だ。

156 名前:ぽけもん 黒  吉野町と解氷 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/06/13(金) 12:38:15 ID:uiNhgbuT
久々にまともな寝床と食事にありつける。施設に踏み入った僕は、それだけで少し浮かれていた。
ジョーイさんに簡単な施設利用の説明を受けると、そのまま与えられた個室に移動した。
与えられた部屋は二段ベッドが二つあり、それだけでほとんどのスペースが埋まってしまっているくらいの小さな部屋だ。
でも、久々の布団だ。文句はない。
荷物を置くと、すぐに浴場へ向かった。
浴場は当然ながら男女に分かれている。
「じゃあ、ここで。香草さん、悪いんだけどポポのことお願い。今まで風呂に入る、なんて習慣無かっただろうし」
まあ思ったとおり、香草さんは思いっきり顔をしかめている。
「……なんで私がそんなことを」
「香草さんしか頼れる人がいないんだよ。このとおり!」
そう言って頭を深々と下げた。
チラ、と上目遣いで顔を覗き込めば、相変わらずの渋い表情だ。
「……しょうがないわね」
しかし渋々という感じながらも承諾してくれた。
「ホントに!? ありがとう! じゃあよろしくね。ポポ、ちゃんと香草さんの言うことを聞くんだぞ」
「はーいです!」
元気よく返事するポポに、今日買った黒のワンピースと、下着を持たせた。タオルや体を洗うものは備え付けになっているとのことだ。
脱衣所で服を脱いで、浴場の扉を開くと、そこには銭湯のような光景が広がっていた。
先客も数人。皆同じ年頃だ。よく見れば、出発前に見たような、見なかったような顔もある。
簡単に体を流すと、すぐに浴槽に入った。
暖かなお湯が、疲労と怪我の溜まった体を優しく包み込む。
ああ、なんという至福……。
筋肉痛で痛む全身を優しく癒してくれるようだ。
つい目を閉じ、ぼーっとしてしまう。
「コラッ! ちゃんと体洗いなさい!」
「目が染みるです! いやです!」
そこそこに厚いはずの浴室の壁の向こうから聞こえてきた大声で、僕の穏やかな時間は強制終了した。
その後もドタバタという音と黄色い声が断続的に聞こえてくる。
「ダメよ! ちゃんと体洗いなさい!」
「ひゃ! くすぐったいですー」
「暴れないの……きゃ! 何するのよ!」
「お返しですー!」
「く、くすぐったわよ! あっ……」
だんだんこちら側にいる野郎共が前かがみになってきているぞ、オイ。
僕も、前かがみになる前に出よう。
煩悩を鎮めるためと、彼女達との今後の旅を憂う、二重の意味でのため息を吐いて、僕は風呂から上がった。
さっさと体を拭き、さっさと着替え、さっさと備え付けの洗濯機を回し、さっさと部屋へ戻った。どう考えてもあの場に留まることは得策ではない。
部屋に戻った僕は、そのままベッドに仰向けにダイブした。
スプリングが硬めで、少し痛かった。
それでも、地面とは雲泥の差で、快適なのは言うまでも無い。
数日間野宿をしただけで、これほどまでに快適に感じるとは。
このまま眠ってしまいたい。でも夕食は食べたい。それに洗濯物も回収しなきゃ。
そう思っていても、意識は意思とは無関係にどんどんと沈んでいく。
あっという間に僕は心地よいまどろみに呑まれ。
「ゴールドー!」
そのまどろみはドタバタという激しい足音と、バターンという勢いよく扉を開く音と、そして腹部に与えられた衝撃で霧散させられた。代わりに失神という形で意識を失いそうになったけど。
「ど、どうしたんだよ」
僕は激しく咳き込みながら起き上がり、ポポを腹の上から下ろした。最近の僕の腹部にかかる衝撃は明らかに過剰である。
「すごいですー! スースーするですー! 水浴びと違うですー!」
トコトコと静かな足音が部屋に入ってきた。
「石鹸使ったからね、当然よ」
ああそうか、そりゃあ自然界には石鹸なんてないもんなあ。ポポは今まで味わったことの無い感覚にすっかり興奮しているというわけか。ならしょうがない。僕の腹部の痛みもしょうがない。しょうがない……。
「よ、よかったね」
僕は腹部の痛みで引きつる頬をなんとか誤魔化す。
「どうしたの?」
誤魔化しきれてなかったのだろう、香草さんに不思議そうに尋ねられた。
僕は、なんでもないよ、と誤魔化した。

157 名前:ぽけもん 黒  吉野町と解氷 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/06/13(金) 12:38:58 ID:uiNhgbuT
香草さんは納得していないようだったが、それ以上尋ねてくることは無かった。

僕が興奮してはしゃいでいるポポを適当になだめたり相槌を打ったりしていると、食事の時間が来た。腹痛も大分治まってきたことだし、夕食を食べに食堂へ向かうことにした。
食事はポケモンの種族のことを考えてか、野菜オンリーのAコース、野菜肉魚なんでもありのBコース、肉類のみのCコースの三コースに分かれていた。
僕はBコースに、それプラス御飯と味噌汁で定食化する。久々のちゃんとした食事に胸が躍る。考えただけでよだれが出てきた。
ポポと香草さんも僕とまったく同じものを頼んだ。……香草さんはともかく、ポポは箸を使えるんだろうか。
配膳に並んでBコースのおかずを受け取る。肉野菜炒めに鯖の味噌煮のようだ。ああ、なんという真っ当な食事。なんか感動してきた。
僕に続いて、香草さんが受け取り、さらにポポが両の翼で抱えるようにして受け取った。……あれぇ? 冷静に考えたら箸どころの問題じゃないような。そもそもポポには手が無いんだから。
空いているテーブルを見つけ、僕とポポは座った。香草さんはというと、僕達から離れたテーブルに一人で座った。うーん、少しは仲がマシになったと思ったんだけど、中々道は険しいな。
「いただきます」
両手をあわせると、僕は料理に手をつけた。まずは鯖の味噌煮から。
うん、口の中でとろけるようなよく油の乗った鯖に、甘辛い味噌がよくあって……うまい!
と、僕が至福に浸っていると、ポポが泣き出しそうな顔で料理と箸と僕とを交互に見ていた。
可愛いからこのまま少しほうって置こうかな、なんて少し意地悪な思考が頭をよぎったが、そんな思考に従うことなく、ポポに声をかけた。
「どれから食べたい?」
ポポは僅かな逡巡の後、鯖の味噌煮を指差した――いや、指じゃなくて翼だから、翼指したとかになるのだろうか。
僕は箸で適当な大きさに鯖の味噌煮を割ると、そのままポポの口に運んであげる。
「はい、あーん」
「あーん…………おいしーです!」
ポポの顔がパアッと明るくなった。うん、やっぱりポポはニコニコしてるのが一番似合うな。なんだかこっちまで和やかな気持ちになってくる。
そんな調子だから食事にいつもの倍以上の時間がかかってしまった。
食事を終えた後、食堂を後にしようと食堂の出入り口へ向かうと、扉の陰から緑の葉っぱが覗いて見えた。
食堂を出ると、そこには不機嫌そうに両腕を組んだ香草さんが立っていた。
僕達が食べ終わるのを待ってくれていたのだろうか。
「ご、ごめん、遅くなっちゃって」
「……いいわよ、別に」
……いいわよ、と言っている割には、その口調も不機嫌そのもので、まったくいいという感じがしない。
微妙に気まずい空気のまま、三人で部屋に戻った。
そして沈黙。僕は、とか何を言ったらいいのか分からず、あー、とか、えっと、とかしか言えないが故に。ポポはそんな必死な僕と不機嫌そうな香草さんの顔を不安そうに交互に見ているが故に。そして香草さんは……多分話したくないが故に。そういうわけでの沈黙。
「あ! そうだ! もう洗濯と乾燥終わっただろうから、服とってくるよ!」
逃げではない。ちょうど今思い出したんだ。……うん。
「……じゃあ私も取りに行くわ」
……ほら、逃げではなくなった。
「ポ、ポポもついていくです」
そういうわけで、僕達はまた三人で部屋を出た。
そして無言。沈黙は長引けば長引くほどその痛さを増していく。
「ご、ごめんね」
「……どうして謝るのよ?」
「い、いや、香草さんを怒らせちゃったかなー……なんて」
「……別に怒ってなんか無いわよ」
「……そ、そう」
本当に怒ってないなら、もう少し普通に話して欲しいものだ。……怒ってるんだろうけどさ。
浴場と部屋との往復の間に交わした言葉はそれだけである。
さて、部屋に戻ったわけだが。
することがない。

158 名前:ぽけもん 黒  吉野町と解氷 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/06/13(金) 12:39:44 ID:uiNhgbuT
することが無いなら、することは一つだ。
「よし、寝よう。じゃあ僕はここで寝るね」
そう言って、左の二段ベッドの上に上がり、毛布に包まった。
それに続くように、ベッドの梯子を上る音が聞こえた。
そして、その音を発していた物体はそのまま僕の隣で停止した。
「ぽ、ポポ?」
「どうしたです?」
「い、いや、ベッドは四つあるのに、わざわざ僕と一緒に寝なくても」
「……ここがいいです。……だめです?」
ポポは僕が包まっている毛布に半分包まり、潤んだ瞳で僕を見つめながらそう言った。
しかし同時に香草さんの、僕を非難するような鋭い瞳で見つめられているのもひしひしと感じる。
……ぼ、僕は……僕は!
叫び声を上げながら逃げ出したいという衝動を何とか押さえ、笑顔を作って言った。
「いや、ポポがそうしたいっていうんなら、いいよ」
不安気だったポポの顔がほころんだ。そして一層僕に密着してくる。
香草さんは……見えないのでよく分からないが、多分しばらく僕に対して軽蔑の目を向けた後、音からして右の下段のベッド――つまり僕達のベッドから一番遠いベッドだ――に入って、そのまま蔓の鞭を伸ばして電気を消した。
僕はいろんな意味で眠れなくなりそうなので、できるだけ何も考えないようにしていた。
だが寝れない。隣のポポはすぐにすやすやと安らかな寝息を立てているというのに。

それから、どれくらい経ったのだろう。
「ねえ、起きてる?」
香草さんが、話しかけてきた。
「起きてるよ、どうしたの?」
僕は動揺しつつも、大きな声を出さないように注意しながら答えた。
「……どうしてあの子ばかり大切にするの?」
か細く、弱弱しい声。
「……あの子? もしかしてポポのこと?」
「そうよ」
僕がポポばかり大切にしている? そうなのだろうか。確かに大切にしてはいるだろうけど、だからといって香草さんをぞんざいに扱っているつもりはなかったんだけど……。
「そんな、特にそんなつもりは……というか香草さん、あの子、はないんじゃないか? ちゃんとポポっていう名前があるんだし」
「鳥の名前なんてどうでもいいじゃない」
険のある声が返ってきた。嫌悪の念。よく分からないが、そういうものが滲んでいるように感じられる。
「良くないよ。それに、鳥だとかいうのも良くない……と思うよ」
「な、なによ! そんなにあの子が大事なの?」
冷静だった語気が荒くなった。でもこれは怒っているというより取り乱している、というほうが正しいような感じだ。そんなにまずいことを言っただろうか? 僕は普通のことしか言ってないと思うんだけど……。
「大事といえば大事だよ。長旅のパートナーになるんだし」
「それなら私だってそうじゃない!」
「え……マジで?」
「なによそのリアクション……私と一緒にいたくないってこと? だからあの子……ポポのことばかり」
まずい! 香草さんの声色は今にも泣き出さんばかりな感じだ。いくら驚いたからって、マジで? はないだろ僕! 最低だろ!
「い、いやいやいや、そんなことはないよ! ただ、香草さんは……その……」
「……その?」
どうする? ここで僕の本心を言ってしまっていいものだろうか。しかし、それ以外にこの場をなんとかできるようなものは考え付かないし……。ええい! どうせダメなら同じことだ!
「その……石英高原で殿堂入りするまで一緒に旅する気は無いんじゃないか、って思ったから」
「……私、そんなこと言った?」
泣き出しはしなかったものの、まだ声は潤んでいる。
「い、言ってないよ! でも、その、態度とか、そういうのから、その……」
「私は絶対に殿堂入りするわ。それで、『私の種族こそ最強!』ってことを、草ポケモンは弱いって言っている世間に知らしめるのよ」
思わぬ独白。まさか彼女がこんなことを考えていたなんて。
「そう……なんだ」
「……ごめんなさい」
「え!?」
「私……そんな誤解されるような態度とってたなんて思わなかった。私、自分の種族以外の人とまともに話したこと無くて、それで、人付き合いとか、そういうの、どうしたらいいか分からなくて」

159 名前:ぽけもん 黒  吉野町と解氷 ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/06/13(金) 12:40:50 ID:uiNhgbuT
不安そうな声で僕にそう告白した。
ああ、なんだ。
僕は馬鹿だ。
勝手に思い込んで。勝手に決め付けて。
彼女はただ、自分の種族に誇りを持っている、ちょっと不器用なだけの女の子だったんじゃないか。
小手先だけの、額面上だけの知識を身につけて、色々あらぬ想像巡らせて。
そんなので賢しいつもりになっていた。
……実際は、ただの自信過剰で、無駄に妄想力豊かなだけの、最低なガキじゃないか。
こんなんじゃ、ポケモンの研究に携わるなんて夢のまた夢だ。
「僕のほうこそ、ごめん。勝手に香草さんのことを決め付けて」
「いいわよ。私が悪かったんだから」
もうその声はいつもの彼女のものに戻っている。
「じゃ、じゃあ、悪かったついでに、一つお願いしても……いいかな?」
「何?」
「色々あるし、あったんだと思うけどさ、せめてこの旅の間だけは、種族による差別とか、そういうの、やめようよ。……難しいってことは分かってるけどさ、それでも……」
「…………頑張る」
「え?」
「私、できるだけ頑張るわ」
静かな、しかし凛とした声で彼女は答えてくれた。
香草さんは、それきり黙ってしまった。
「ありがとう!」
僕も気が楽になったのもあって、それからすぐに眠りに落ちてしまったから、本当は何か言っていたのかもしれないが。





「……ねえゴールド? 私、人間もそんなに悪くないかな、って思えてきたの。きっと、ゴールドのお陰かな。……ゴールド? 寝ちゃったの? ……ふふ、まったく、やっぱりダメね、ゴールドは」

160 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/06/13(金) 12:42:26 ID:uiNhgbuT
というわけで第四話終わりです
後半が若干手抜き気味な気もしますが、直してもゴチャゴチャするだけな気がするしこのままで

当初の予定では十話くらいで完結するはずでしたが、今のペースだと十話までに病むかどうかも厳しいという……

161 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 12:52:54 ID:y/TTA+KU
壱番屋

162 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/06/13(金) 12:55:24 ID:i483FMMu
やっとデレたか。

163 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 13:13:46 ID:HIsa1oAL
これが繋ぎ…だと…
GJ!!だぜ
ってか不覚にもポポに萌えてしまった…ヤンデレラー失格だな俺…

164 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 13:36:42 ID:B7bdDo6+
ポケモンに萌える日が来るとは…


165 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 15:35:51 ID:vIMuaZm+
10話までに病まないだと・・・
これは長編を期待してもいいんですね?w

166 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 15:42:27 ID:ygP0yE6W
何故、ヤンデレスレにポケモンが?
該当スレなら神扱いだろうにもったいない。

167 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 15:47:40 ID:fr+UWNjj
ポケモンスレでヤンデレやっても
「該当スレでやれ」といわれるのは想像に難くない

168 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 16:42:55 ID:OW9zr7mH
ポケモンきた!!
いつも楽しみにしてます

169 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 17:00:14 ID:18khLeD7
早く6人のヤンデレに囲まれるゴールドが見たいw

170 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 19:19:30 ID:DzslZQO8
サナギになっている間に主人公争奪戦に出遅れる子とか

171 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 20:08:16 ID:p3666zGq
サナギのなかに主人公を取り込もうとするんですね

172 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 21:15:07 ID:xMEPr7CR
問6 以下の状況に陥った場合の最善策を答よ。

主人公は追い詰められました。包丁を持ったヤンデレヒロインが薄っすらと笑みを浮かべて、
こちらに近づいています。
DEAD ENDを回避するためにはどうすれば良いか?


173 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 21:19:43 ID:fy/Ro6wI
窓から123で下の階のベランダにGO!!! ミスったら転落死。

174 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 21:19:45 ID:Ri3MNRjQ
答 地の果てまで逃げ続ける

175 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 21:36:35 ID:afDzE8xj
答:そもそもヒロインがどういう娘で主人公はどういう事をしたのか、で最善策は全く異なる。
よって"回答不能"が正解。

176 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/06/13(金) 21:52:19 ID:RYVBybrE
ヒロインの言うことをなんでも聞く

177 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 21:57:16 ID:9l0q0rwz
キスをする

178 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 22:00:16 ID:ntZ3+9nL
暴走してるヤンデレは抱きしめたりしたら大人しくなりそうな気がする。

179 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 22:22:28 ID:fy/Ro6wI
刺さってナンボのもんじゃい! な感じで押し倒し、ベットへGO。

180 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/13(金) 23:10:54 ID:fy/Ro6wI
先生、女の子が散弾銃持って俺のいるスポーツジムに乗り込んで来ました!どーすれば良いですか?
某M容疑者の女みたいな最後は勘弁www

181 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 00:01:32 ID:HIsa1oAL
抱きしめてあげる


ヤンデレは少し精神的に不安定なだけで一途な女の子ですよ
愛された側としては素直に好意を受け取るべき

182 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 00:08:24 ID:SB1+2Ygw
>>172
まな板と大根で応戦。もしくは悲鳴を上げてみっともなく這いつくばって逃げる
まあそうなる前に選択肢をミスらないことがベストだな。包丁出されたら大抵死ぬ以外に道はない

>>180
撃たれたらMATRIXばりのアクロバティックな動きで避けろ

183 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 00:18:33 ID:Zb8irHat
>>181
問題は受け入れてやっても安定化しない、もしくは安定化してもそれが長続きしないということだな、
物理的に二人っきり無人島コースでもないかぎり、安心できない。

184 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 00:21:22 ID:/FE3MhbE
心が読める能力者なヤンデレなら大丈夫

185 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 00:52:11 ID:eOOWNoj4
>>184
「大丈夫だ! 刺されても僕は君を受け入れるから!」(『刺されたら痛いだろうな……でも彼女の方が大切だ!』)
「○○君……」>包丁を取り落とし駆け寄る
「もう離さないからな……」>ぎゅっ


(『あ、今通りかかった娘はなかなか可愛いな。91点』)
「○○君……!」>首をぎゅっ

186 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2008/06/14(土) 01:03:24 ID:v5L28tL5
>>166
ちょっと話の流れをぶった切る格好になってしまって申し訳ないのですが
元々この話は前々スレだか前々々スレだかの「アニメのポケモンのチコリータはヤンデレっぽかった」という発言を見て行き当たりばったりで書いたものですので

187 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 02:04:22 ID:QzlVJG6Q
なんか特殊能力持ったヤンデレいる?


188 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 02:34:10 ID:NUTVIGps
病むまでの過程が大事と考えている俺は、病むまであと何話かかろうがついて行くぜ

189 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 07:14:16 ID:ZA2Kn7N0
投下します。
>>133からの続きです。



190 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 07:14:59 ID:ZA2Kn7N0
「立花君、ちょっといい?」
三井が声を掛けて来たのは、3時間目が終わった後の休み時間だった。三井とは高校に入学して、
同じクラスメートという以外は、あまり面識がない。ショートボブの髪に赤い眼鏡。クラスの中でも、
目立たない生徒だ。クラスの委員長をやらされているのも、投票でそれっぽいからという理由で三井に
なっていた。
「放課後、相談に乗って欲しいんだけど」
俺に相談?意外な申し出だ。もっといい、適任者ならごまんといるぞ。横に座っている
秀才の石井なんかどうだ?俺が答えられるアドバイスの2倍はいい情報を持っていると思うが。
「う~ん、彼じゃちょっと駄目ね。これは立花君じゃないと解決できないことだから」
そうなのか。俺は放課後に用事があるんだがと、やんわりと拒否反応を出す。
「直ぐに終わるわ。そうね。一時間位かしら」
どうしても今日じゃないと駄目なのか?
「お願い。なるべく早く終わらせるから」
「……わかったよ」
俺がそう言うと、本当にありがとうと言い残し、三井は席に戻って行った。どうせ、プリント
運びだのそういった類いの力仕事をしてくれという相談だろう。クラスで一番暇そうにしてたからなぁ。


「祐くん、優しすぎるよ」
やっぱり。予想通りのリアクションが返ってきた。そうは言ってもな、もう引き受けたんだから
仕方ないだろ。忍はほっぺたをぷぅっと膨らませてすねている。水曜日の昼休み。屋上で俺は忍の
弁当を食べながら、これまでの経緯を説明していた。
「クラス委員長直々のご指名だからな。ちょっと遅れる」

はぁ……と、わざとらしく大きなため息をついて、忍がこちらを睨んだ。
「テストが終わったら、部活は1日休みになる。そうしたらカラオケに付き合ってもいいって
言ったのは、祐くんの方だよ。もしかして、サッカーのヘディングをやり過ぎたせいで、
若年性痴呆症にかかっちゃったのかなぁ?」
いや、俺、まだ高校生なんですけど。
「……チョコレートパフェ、3回分」
マジ?それはきついだろ。せめて1回にしろ。
「じゃあ、間を取って4回」
増えてる。よし、俺がいい案を思いついた。これから先、忍とは一生カラオケには行かない。
そうすれば、チョコレートパフェをおごらずにすむ。
「……ずるい。もう……1回でいいよ。その代わり早く来てね」
忍が甘い声を出した。こうなったら、俺の負けだ。
「あぁ……わかった、終わったらダッシュで行く」
照れ臭い。全く、女はこういう時、得に出来ている。

忍とは小学校以来の腐れ縁だ。小学校の時は目立たない眼鏡の女の子って感じだったのに、女って
言うのは恐ろしい。いつの間にやら、美人になっちまった。腰までのサラリとした黒髪。切れ長の目。
眼鏡も外してコンタクトになった。正に、変身前、変身後という感じだ。まぁ、そこまでなら何処に
でもいる美人なんだが、問題はその体型だ。
「忍、またでかくなっただろ」
忍はさっと胸を隠す。最近、忍をからかうのは大抵、この話題だ。
「……ううっ」
「何食ったらそこまで大きく育つんだ?」
「……くっ!」
「脳に行く栄養がそこに集まっているとしか思えん」
「……ばっ、馬鹿、エッチ!」
忍が俺から食いかけの弁当箱を取り上げて走り去った。やべぇ、鳥の唐揚げ、最初に食べて
おくんだった。

191 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 07:15:43 ID:ZA2Kn7N0
放課後、掃除が終わった後、俺は三井を待っていた。クラスにいる生徒は、もう数人しかいない。
テストの結果を悲観するもの、好成績に歓喜するもの、どちらもテストという嫌なものから解き
放たれた開放感で足早に学校を後にする生徒が多かった。
「遅いな。三井……」
教室に残っていた最後の生徒がいなくなる頃、三井は教室に入ってきた。
「ごめん。待たせてちゃった」
これでカラオケハウスに行くのは、更に15分は遅れそうだ。こりゃ、今日のカラオケ代も折半って
訳にはいかないだろうな。
「先生がプリントの原本をなかなか用意できなくって」
やっぱり、コピーとそれを運ぶ役目か。
「自分一人じゃちょっと無理だから。立花くん、早速お願いね」
やる事さえ分かっていれば、後は簡単だ。それを完遂するために一生懸命働けばいい。

40分程で全ての作業は終わった。こんなに一生懸命動いたのは、サッカー部でもそうはない。
「凄い。もう終わった……」
そりゃそうだ。今月の俺の小遣いが大ピンチだ。カラオケハウスには、こういう時だけ小悪魔になる
忍が手ぐすね引いて待っている。
「本当にお疲れ様。これ、食堂で買ってきたジュース。先生のおごりだから、遠慮しないで」
サンキュ。でも、俺には落ち着いてそれを飲んでいる時間は無いんだ。じゃあな、アディオス、
ごきげんよう。

「では、本題の立花君への相談をするわね」
一瞬、教室の空気が凍りついたように感じた。おい、今、何とおっしゃいました?冗談にしても
笑えないんですけど。
「立花君じゃなきゃ解決出来ない相談をしたいって、言ったはずだけど」
いや、確かにそうだけどさ、これ、普通の流れだと、今までのプリント作業だって思うだろ。
「こんなの勉強だけが取り得の、石井君にだってできるじゃない」
にっこりと微笑んだ三井は、俺の顔を覗き込んでそう言った。それ、ひでえよ……三井。
石井、泣くぞ。
「それで相談って何だ?手っ取り早く頼む。忙しいんだ」
「ねぇ……立花君ってA組の如月さんと付き合っているの?」
はぁ?なんだそりゃ。それの何処が相談だよ。俺に対する質問じゃねえか。
「それはお前に関係ないことだろ」
「大いに関係する事なんだけど。単刀直入に言うわ。私と付き合わない?」
「悪いな。俺、帰るわ」
「如月さんが美人だから?眼鏡ブスには興味が無いって事かな」
三井、女だからって言っていい事と悪い事がある。俺が忍と付き合っているのは、顔とか関係ない。
告白は嬉しいけど、お前とは付き合えない。
「そう。でも、女は変わるの。それが好きな人の為なら」
「……えっ」



192 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 07:16:11 ID:ZA2Kn7N0
目の前にいる少女に、俺は一瞬、息を呑んだ。眼鏡を取り、ボブショートの髪を掻き揚げた三井。
間違いなく、美少女だった。それも、並大抵のレベルじゃねぇ。モデルって言ったって、普通に
納得するレベルだ。
「中学時代からうっとおしい男子を追い払うために、こうやってカモフラージュしてる。わざわざ
ソバカスとか描いてるの。さっきはごめん。立花君が女の子を顔で選ぶような人ではないって
知ってて、ワザと言ったの」
なら、俺がその美人の素顔を晒したって、関係ないって知ってるだろ。
「知ってる。立花君には隠し事の無いようにしておきたかっただけ」
その顔なら、俺よりもずっとマシな男が幾らでも見つかるぜ。じゃあな。
「……そう。やっぱりね。どうしても駄目か……」
ちょっと可哀想な気もするが、俺は二股かけられるほど器用じゃない。急いで教室を出ようと
すると、三井がまた声を掛けてきた。
「ここで立花君が帰ると、如月さん、学校を辞める事になるわよ」
おい、今、なんて言った?
「この学校のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のコミュニティに、今日如月さんの
あるファイルが流れる。そのファイルが流れたら、如月さんは終わり」
いい加減な事言うなよ、忍が学校を辞める事になる?冗談はよせ。
「嘘だと思うのなら、これを聞いてごらんなさい」
三井がイヤホンを差し出した。渋々、そのイヤホンを耳に差し込む。
「!?」


≪祐くん、テスト勉強って言ったって、真面目にやりすぎじゃないのかなぁ。仮にも彼女が自分の
部屋に来ているっていうのに、3日間手を出さずに終わりって信じられないよ≫
これは……。耳から聞こえてきたのは、確かに忍の声だ。
≪今日で祐くんとの勉強も終わり……。はぁ……寂しいよ。う~ん、買出しってどの位かかるんだろうね≫
明瞭に聞こえる音声が断続的に流れている。
≪これ、祐くんのシャツかな。……ん~いい匂い。祐くんの匂いがする≫
やめろよ。何でこんなのがあるんだよ。
≪…………んっ≫
そこから暫く、忍の声は聞こえ無くなった。微妙な衣擦れの音だけが微かに聞こえる。
≪んっ……あっ、祐くぅん……これ、祐くんが……ぁんっ……使ってたシャーペン……≫
「消せよ……」
静まり返る音の中に、淫音が聞こえてくる。
≪ちゅくっ……ぬちゅ……駄目ぇ……祐くんの部屋で……くちゅっ……こんな事……あっ、ぁっ、んっ≫
「消せって!」

193 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 07:16:29 ID:ZA2Kn7N0
俺は耳からイヤホンを外した。そして、三井を睨みつける。
「お前、俺の部屋に盗聴器仕掛けたのか?」
「知らないわ。ただ、サッカー部のある人が私に面白いファイルがあるって、持ってきてくれたの」
「聞いたらビックリ。オナニー大好き少女の声が延々と続いているじゃない」
俺の家に遊びに来たサッカー部員……何人もいるな……。
「お前、サッカー部員を……誰だそいつは」
「妙な言いがかりだけはやめてね。さて、ここで立花君だけにしか出来ない相談。このファイルを私が
何とかするから、立花君も私のお願い聞いてくれない?」
脅迫するのか?忍の痴態を収めた音声ファイルをチラつかせて。
「何もそんな酷い事言うわけじゃないわ。3日だけ。そう、3日だけ立花君の彼女にしてよ」
そんな気持ちになれる訳無いだろ。お前が女じゃなければ、とっくに殴っているところだ。

「なら、ここで相談は終わり。でも、もっと凄いファイルがあるかも……映像ファイルなんてあったら、
私なら恥ずかしくて死んじゃうかもね」
おい、まさかそんなものまで、あるんじゃないだろうな。
「立花君が3日我慢してくれれば、私が全部何とかする。そうね、でも、立花君も可哀想だから
彼女って言ったって限定でいいわ。3つだけお願いを聞くだけでいい」
そこまで俺だって馬鹿じゃない。そんなやばい事、承諾できるか。
「疑り深いのね。じゃあ、動詞限定ならどう?拾ってとか、そういうのだけ」
「本当にそれだけなのか」
「勿論、私と居ない時は如月さんと会ってもいいわ。私とは1日1時間だけでいいから」
「本当にファイルは何とかするんだな」
「約束は守るわ。私だって立花君が好きなんだし。そこまで嫌われたくない」
「それなら……3日だけなら。お前の要求を飲んでやる。その代わり、3日経ったら、もう2度と
俺に話しかけるな」
「はぁー。私だって大変なのに。ちょっと位は役得が欲しいなぁ」
「用事はそれだけでいいんだろ。俺はもう行く。明日からでいいんだろ」
「今日からでもいいわ。しかも、今日だったら10分だけでいい」
10分だけか?1時間じゃなくて。嘘じゃないのかと、もう一度聞きなおす。
「そう、10分だけ。立花君、とっても忙しそうだし、手伝ってくれたし。でも、約束は守ってね」
「俺はどうすればいいんだ?」
「そうねぇ。じゃあ、そこに立ってて」
「立ってればいいのか?それだけ?」
「そう。その代わり、絶対に動かないでね」
10分立っているだけ。簡単じゃないか。何なんだ。こいつ。
「いいぜ。そのかわり10分きっかりだ」


194 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 07:16:52 ID:ZA2Kn7N0
俺は指定された場所に立った。何だか変な感じだ。悪い事をして教室に立たされているみたいな。
そして、三井が俺の前に立つ。
「立たされているんだから、直立不動でお願いね」
「ああ、わかっている。今ならどんな地震が来ても10分間は動かない自信がある」
「……立花君。私、今日如月さんと一緒の香水つけているって知ってた?」
そう言うと、三井が目の前に立ち、顔を近づける。思わず顔を背けるが、三井の唇が頬に触れた。
「もう、雰囲気も何も無いのね。まぁ、唇は如月さんのものなんだろうから、許してあげる。でも、
今度動いたら、もう本当にこの話は終わりだからね」
くっ、俺としたことが。でも、不幸中の幸いだ。もし、三井にもう一度立っててという要求を
されたら絶対拒否だ。
「唇はあげるわ。でも、こっちは……動いちゃ駄目だからね」

三井が両膝をついた。髪の毛の匂いが鼻腔をくすぐった。そういえば、忍と同じ匂いがする。
「後、7分」
突然、三井が俺のチャックを降ろした。馬鹿野朗、何しやがる。
「結構、大きいんだ。立花君……彼氏で、立花君も変か。祐って呼び捨てにしよ」
「くっ、何してる……」
≪ちゅぷ、ちゅっ、……レロレロ……祐……おっきい≫
「お前、ふざけるなっ、よ」
≪後、5分……ちゅっぱ、ちゅっく、……ぴちゃ、ぴちゃぴちゃ≫
三井がその小さな唇を俺の咽頭に這わす。陰茎と亀頭と尿道に唾液が溢れ、舌先が上下に往復した。
「うっ、っく」
先ほどの忍の声がまだ耳に残っている。それに、三井の香水。まるで忍にやられているような錯覚
に陥りそうだ。
≪後、3分……んっく、んっく、ちゅっちゅ、んんっ、んく……祐、すっごく大きくなってきた≫
自分で呼吸を整えようとするが、それが無意味だって悟る。こいつ、凄く上手い。
≪後、1分……んっんっ、んっんっんっ……ぷはっ、もう、我慢しないでいっちゃっていいのに≫
後30秒、後15秒、俺は頭で数を連呼して、その刺激に耐える。くそ、絶対、思い通りには
させない。
≪んっんっ……ちゅっ。時間切れか。凄いね、祐≫
大きくなったそれを名残惜しそうにズボンにしまうと、三井は立ち上がった。
「もう、10分か。早いなぁ」
もう、直立不動は無しだ。いいな。三井。
「祐がそう言うなら、もう無しにしてあげる。じゃあね」
俺はその言葉を聞き終わる前に、その場から全速力で走り出し学校を出た。


195 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 07:17:16 ID:ZA2Kn7N0
「あっ、祐くん。来た来た。もう、始めちゃってるよ」
忍がカラオケハウスでニコニコしながら話しかける。さっきの事は幻だったのか?俺は、生返事を
繰り返していた。
「もう、さっきからわたしばかり歌わせて。喉がカラカラだよ」
とりあえず後2日。俺が我慢すれば、この話は終わる。でも、忍にその事を悟らせては駄目だ。
忍は見た目しっかりとし、強いようだが実は心が脆い部分もある。だから、三井との事は絶対に
悟られないようにしないと。
「なぁ、忍。ちょっと話があるんだ」
「何?チョコパフェおごるの無しっていうのは、駄目だからね。約束なんだから」

≪あのさ、俺たち少し距離を置いて付き合わないか≫

そうだ。後2日は距離を置こう。なるべく悟られないようにするには、一番いい。
「えっ?あ……うん」
「俺さ、ずっと忍の事大切な友達だと思っているから。それに、忍は美人だし頭もいいしさ。俺も
羨むくらいの女の子だから、大丈夫」
忍は少しショックを受けたようだ。すまん、2日経ったら元に戻る。それまで、我慢してくれ。
俺はその後、悪いと言ってカラオケハウスを出た。忍の笑顔を見ているのが、何より辛かった。

次の日。三井の要求は夕方の1時間だけのデート。その翌日は昼の1時間、手作り弁当を一緒に食べて
欲しいというものだった。ただ、三井は最終日のこの日、俺が持ってきた忍の弁当を捨ててという
願いをした。最後の思い出に弁当を食べるのに、忍の弁当だけは目の前で見たくないという理由だった。
俺は抗議したが、最後だからと涙目で訴えられて、渋々要求を呑む事になった。
「今日で終わりだ。例のものはどうなんだ」
「そっか、残念。もう、最終日かぁ。早いね。もうちょっとだけ延長する?」
冗談は顔だけにしろよ。俺は三井を睨みつけた。
「酷いなぁ。祐の盗聴器はもう使えないし、ファイルも全消しして貰った。もし、そのファイルが
出てくるようなら、その人訴えてもいいよ。私も証言してあげる」
そうか。なら、お前とはもう終わりだ。二度と話しかけるな。
「了解……。じゃあね」
俺は何も言わず、足早に校舎に戻る。隠しておいた弁当を抱え、忍に返そうと誓う。そして、たくさん
遊ぼう。友達宣言を撤回して。


196 名前:変身少女[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 07:17:39 ID:ZA2Kn7N0
「…………恋人ゴッコも終わりね」
中庭に三井が立っている。眼鏡を外し、髪を掻き揚げた。
「ねぇ、いる?」
そう言うと、二人の少女が三井の横に現れた。
「私は祐との約束で何も言えない。でも、あなた達は違うわよね」
「……あの、例の件は……」
「あぁ、貴方達の事?勿論、内緒にしてあげる。私を裏切らない限りはね。そうそう、最後の命令。
如月に弁当の事さりげなく伝えてくれない?あのゴミ箱にあるってね」
「……わかりました」
二人の少女が慌てて、校舎に戻っていく。

「祐。確かに如月のファイルは処分してあげた。約束だからね。でも、あの時、鞄から撮影していた
ビデオ。そっちは約束の対象外。有意義に使わしてもらうわ。あの時、気がつかなかった?
中学生の時、祐に告白して無残に振られたあたしの事。折角、本当の顔を出してあげたのにね。
気がついてくれれば、祐のおもちゃを壊すまではしなかったのに……残念ね。本当の地獄は
これからよ」
クスクスと笑いながら、三井は嬉しそうに校舎に戻っていった。


【おしまい】

197 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 07:19:20 ID:ZA2Kn7N0
以上です。

時系列がちょっと戻り、祐視点の話です。
まぁ、三井さんはこんな人だったという事で。

では、失礼します。


198 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 07:46:55 ID:vPQfue9x
朝からGJ!!

まさかこんなことがあったなんて……

199 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 08:28:26 ID:EalYLaMF
逆恨みと身勝手な妄執の塊ですね >三井

200 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 09:18:28 ID:VjHVjv5U
こいつら、どんな惨めな死に方するんですか?

って期待すると、大した報復が行われずストレスだけが残ったりするからなぁ。

201 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 09:26:38 ID:U8B9aZSA

でも、この手のSSのお約束だが何で男の思考回路はおかしいんだろう

>≪あのさ、俺たち少し距離を置いて付き合わないか≫
普段からべったりひっついていたヒロインにこんなセリフ吐くなんて馬鹿だろ
これで頭の良いキャラ設定だったりするから余計違和感が
脅されて精神的に不安定だったという考えもあるがそれでもちょっと…
だが、ここで落ち着いた対応を見せるとお話が終わってしまうからしょうがないかw

>これ、祐視点だと180度変わります。
冷たい糞野郎と感じてたが、お馬鹿な思考回路でどつぼにはまるガキに見方が変わりましたw

202 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 11:09:08 ID:0H/r8jVS
GJ!
まさかこういう裏があるとは思わなかった。

>>201
まるで自分なら最良の対応が出来るみたいな言い方だね
下衆な茶々入れはやめたら?そういう性格だとリアルで友達減らすよ。

203 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 11:26:23 ID:x4BtRcXB
GJ!
忍が可哀想すぎる

>>201
地震が起きた時、必要もないのに枕もって逃げる人いるよね。
そんな感じじゃないかな?

204 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 11:39:13 ID:a0aURn2L
ないとは思うけど、NTRやレイプ描写があるなら警告お願いします。
うまく収拾つくといいな。続き、楽しみにしてます。

205 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 12:03:55 ID:9RiIC3Wf
201は可哀想な人だな。
何はともあれGJです。祐くん誠じゃなかったや。

206 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 12:28:46 ID:bZM6KbmT
しかしどうしよう
前話の保管断られているから、
これ保管すると話つながらなくなってしまうんだけど。
この作品自体未収録にした方がいいのかな

207 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 16:13:09 ID:a09jsTKS
保管の際にミスを修正してくれればおk
って許可を作者さんが出してくれれば良いんだろうけどね

208 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 18:55:11 ID:ZA2Kn7N0
感想ありがとうごさいます。
参考になります。

最初、プロットの思いつきだけで書き始めた変身少女も、随分長くなりました。
やっぱり、整合性を取るのは難しいですね。

>>206
保管庫の管理人さんへ。
いつもお疲れ様です。
もし、よろしければ校正したファイルを上げましたので、こちらを保管庫に
入れていただけませんでしょうか。
大変お手数をお掛けしますが、よろしくお願いいたします。

http://ossan.fam.cx/up/uploda2/loda.cgi?mode=dl&file=2156

DLKeyは   ヤンデレ    です。



209 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/14(土) 20:21:13 ID:0H/r8jVS
>>208
お疲れ様でっす


しかし、こうしてみると続きが気になりますな
ええ乳した女性が不幸な目にあうのは許せない性質でさぁ

210 名前:無形 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 00:46:11 ID:r6GuVZQE
投下します。

211 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 00:48:26 ID:r6GuVZQE
広い、と云う感覚は、孤独を認識させられることがある。
僕が通った廊下も、通された一室も。
広く、高く、長く。
どこか心細さを掻き立てられる場所であった。
傍に誰かが欲しくなるような、そんな感覚。
だからと云って、「人外」がそこに在っても、不安が紛れる事は無い。
楢柴綾緒。
今僕の前に居る従妹は、その面に化生を貼り付けている。
――泣増(なきぞう)。
綾緒が付けている能面は、そう呼ばれるものだ。
広い客間で僕らは相対している。
彼女は僕が座ると、言葉を発するよりも早く。
唯、深深と額を地に着けた。
綾緒は一言も発しない。
僅かに身を振るわせるだけである。
「・・・綾緒」
僕が声をかけると、着物姿の化生は静かに身を起こす。
完成された所作だ。
背筋が通り、風格のある座仕方だった。
「にいさま・・・」
能面越しに籠もる声は、正しく従妹のもの。
綾緒はもう一度にいさまと呟いてから、両手を着いた。
「急な御呼びたて、申し訳ありません。本来ならば兄の君に御足労願う等あってはならぬことですが、
綾緒は楢柴の屋敷を出ること叶わぬ身。どうか御容赦下さいませ」
「・・・何故、面を?」
身体を起こさせた僕は、そう質した。
他に云うべきことはあるはずだけれど、“それ”には触れたくなかったからだ。
「今の綾緒は・・・にいさまにあわせる顔がありません」
「・・・・・」
“どういう意味”で、あわせる顔がないのだろうか。
内罰的な意味か。
外罰的な意味か。
「とうさまには・・・・会われたのですよね?」
「ああ」
「そう――ですか。ならば、にいさまと綾緒の将来も、聞かされたのですよね?」
「将来、と云うことでもないだろう。唯、以前のように戻っただけだ」
そう。
綾緒が僕を呼ぶとしたら、当然婚約の話だろう。
文人氏は僕にこう云った。
あれが罪を自覚できるようになったら謝罪させると。
今、この場に僕を呼んだのは、綾緒だ。
文人氏が同席している訳でもない。
つまり、それは――
「綾緒は悔しゅう御座います」
この従妹は、何も変わっていないと云う事だ。
彼女はくぐもった声を僕に向ける。
「綾緒は、唯、お慕いするにいさまと共に在りたいだけなのです。その為に、総てを捧げ、一身に尽す
つもりです。それだけで、他はいらないのです。とうさまだって、それは理解してくれていたはずなの
です。なのに、突然に綾緒とにいさまの仲を裂こうとされた――。理由も告げぬままに。にいさまには
何と云って御詫びをすれば良いか、綾緒には思惟を絶することに御座います。本来ならば、このような
不始末、死して償う事ではありますが、考えているうちに・・・唯、にいさまに逢いたいと・・・」
それは、静かな感情の爆発であった。
ゆらり。
ゆらりと。
感情の爆風が、行動となって顕れる。
ぶるぶると震える腕が伸び、僕の両肩を掴んだ。
力は強い。肩が鬱血しそうな程に。
「綾緒」
「にいさまっ」

212 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 00:51:03 ID:r6GuVZQE
綾緒は僕を抱きしめていた。
息をすることが困難になるくらい、力一杯。
「綾緒、離れてくれ」
「嫌です!綾緒は、にいさまを離したくありません。これ以上、離れることは出来ません」
「・・・・」
そう。
これは確かに爆発だ。
中心が弾けて、周りを巻き込み爆ぜるだけ。
根本的に。
僕と綾緒では考え方が違うのだ。
この娘は狂おしいほどに僕を愛している。
だけど、僕には綾緒に女としての感情を持っていない。
普通ならば、ここで従妹を諭すべきなのだろう。
お前の気持ちには、伯父の存在を抜きにしても答えられないと云うべきなのだろう。
けれど――
「・・・・・」
爪と、耳が疼く。
云って聞く可能性は、酷く低い。
ここで綾緒が狂乱したとしたら、文人氏は、また心を痛めるだろう。
対処の方法が思いつかない。
ここへ来たのは失敗だったのだろうか?
否。
対応叶わなくても、綾緒の心を鎮める事は出来るはずだ。
鎮めて、心が平らになれば、自己を客観的に見れるはずだ。
そうすれば、綾緒と文人氏の間も、改善に向かうのではないか?
そんな脆い期待を抱いてここへ来た。
僕の身体にしっかりと腕を回す従妹に声をかける。
「綾緒。お前とは、きちんと話しをしたい」
「はい。にいさま。綾緒も・・・にいさまとお話をしたいです。ずっと、ずっと、その御声を聞きたい
と願っておりました」
従妹の指が、僕の身体に喰い込んで往く。
その痛みが、どれだけ僕を想っていたかを知らせていた。
綾緒と顔を合わせたのは、ついこの間だ。
それなのにこの美しい鶯は、もう渇き餓えている。
「にいさま・・・ここではなく、綾緒の部屋へいらして下さい」
こもった声がそう嘆願した。
盤根錯節に遇わずんば、なんぞもって利器を別たんや。
少し迷ったけれど、僕は頷いて移動する。
鶯の、巣へ。

綾緒の部屋は、和風そのものである。
公家と武家は相反する観念を持つことがあるが、ここでは公武が見事に調和されている。
武を嗜む公家か。
或は、雅を解する武家か。
そのどちらかの娘の部屋と云われれば、即座に了解出来ただろう。
荘重にして明媚な一室は、けれど不必要に広い訳ではなかった。
これは綾緒の考えか。それとも文人氏の意向だろうか。
いずれにせよ、名族楢柴本家令嬢の部屋にしては、狭いと云える。
僕は根っからの中産階級者である。
狭い部屋のほうが断然落ち着く。
この従妹の部屋へ来たことも幾度かある。
だから、唯の一点を除いて、違和感を感じることは無かった。
その一点――僕はそれを指差した。
「綾緒、それは何だ?」
それ。
畳の上に敷かれた、寝具。
つまり、蒲団だ。
従妹は基本的にカッチリした人間なので、敷きっ放しにするとは思えないのだが。
(いや――)

213 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 00:53:33 ID:r6GuVZQE
敷きっ放しにしては、整いすぎている。
まるで、敷いたばかりのように。
「にいさま・・・」
僕が綾緒に顔を向けると、従妹は一歩僕に近づいて面を上げる。
「にいさま、“これ”を外して頂けませんか」
これ――泣き増面である。
意図の読めぬままに、見慣れぬ顔を除いた。
その下にある従妹の姿。
それは、泣き腫らしたかの様に赤い眼をしていた。
事実、泣いていたのだろう。
実情はどうあれ、この娘は僕に愛されていると思っている。不可解に引き裂かれたと思っているのだか
ら。
僕が能具を傍らに置くと、堪りかねたかのように綾緒は胸に飛び込んだ。勢い、僕が抱きしめる形にな
る。
「にいさま、にいさまぁ・・・・!」
ぽろぽろと。
大きく美しい瞳から、水滴が零れた。
事情を知らなければ、或は“相手”が僕でなければ、すぐにでも慰めてやったことだろう。
しかし――
「にいさま、綾緒は、綾緒は、悔しゅうございます。初めて御逢いした時から・・・いいえ、生を受け
る以前より御慕いしていたにいさまと漸くひとつになれるはずでしたのに・・・、とうさまの・・・と
うさまの誤った命で、それも儚いことにされてしまいます・・・」
「・・・・」
何と云うべきだろうか。何と云ったら良いだろうか。
激発させず、鎮めることだけに集中するにせよ、言葉は慎重に選ばなければならない。
綾緒は僕の胸板に頬を擦り付け、涙ながらに不遇を訴え続ける。
「綾緒」
僕は両肩を掴んで、少しだけ距離をとった。このままでは顔が見えないからだ。
綾緒は潤んだ瞳で、じぃっと僕を見上げた。
取り敢えず落ち着かせること。
それだけを決めて口を開こうとした矢先、従妹は僕の首元を凝視した。
「にいさま・・・それは・・・?」
「え?」
そこにあるのは、一ツ橋に貰った御守り。
ある女性から渡された。
そんなこと、云える訳も無く。
落ち着かせようとしているのだ。余計な発言は避けねばならない。
言葉を捜していると、従妹は奇妙に煌いた瞳を僕に向けた。
「にいさま・・・それを・・・綾緒に見せて下さいませ」
「・・・・」
首から外して従妹に手渡す。
すると、彼女は小さく震え始めた。
「あ・・・あ・・・あぁ・・・」
「綾緒?」
泣いていた。
従妹は再び涙を流していた。
泣きながら、御守りを抱きしめるようにその手で包んでいた。
「嬉しい・・・。嬉しいです。にいさまが、綾緒と同じことを考えていて下さったなんて・・・」
「え?」
当惑するのは僕のほうだ。
同じことを考えた?それはどういう意味だろう?
僕は部屋を見渡した。“広いが広くない”部屋には、綾緒の意図を感じさせるような変化は何も無い。
否。
“ひとつ”だけ、あった。
僕の足元。
そこに敷かれているもの。
そして――
従妹の手の中の御守り。
『それ』は、何を祈願したものであったか。

214 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 00:56:08 ID:r6GuVZQE
(まずいぞ!)
たとえば。
婚姻関係で揉める親子を是とさせる現象。
僕の母が、どういう理由で険悪な本家との仲を解消させるに至ったか。
「にいさま!!」
思考がそこに辿り着いた時、僕の身体は蒲団へ倒されていた。
従妹は僕に覆い被さり、熱の籠もった顔が近づいて来た。
「待て綾緒!違うんだ!その御守りは、違うん・・・んぅっ!!」
身体が固まった。
今、僕の口に押し付けられているものは、何だ?
口の中を這い回っているものは、何だ?
「ん、んぅ・・・」
「んっ・・・にい・・・さまぁっ・・・」
くちゅり。くちゃりと。
爆ぜた感情が蠢いて往く。
従妹は自らの唇で僕の口を塞ぎ、一心不乱に、舐め、吸っていた。
「や、やめ、んぐっ・・・」
再び口を塞がれた。
何とか抵抗しようとしたが、綾緒の行為は思考を鈍らせた。
脳味噌が蕩ける。
僕にはこういう経験は無いけれど、それでも何故だか判った。
今僕のされている行為は、他の人間とするよりも、ずっと上質で淫靡であるということ。
他人とこういうことをしても、恐らく、ここまで脳は蕩けない。
楢柴綾緒という人間を構成するパーツは恐ろしく出来が良く、その行動は魔性の趣があった。
(やばい・・・)
のぼせた様に顔が熱くなる。
血液が沸騰し、“どこか”に血が集まって往くのが判った。
(こんな・・・恋愛感情どころか、男女の感覚も持っていない相手に・・・・)
身体だけが、反応させられている。
天性のものなのだろうが、それだけ上手なのだ。
僕は抵抗を試みるが、
「うぁぁっ」
頬を押さえていた両の手。その片方が、すぐに反応した部位を握っていた。
「にいさま・・・」
綾緒は完全に入り込んでしまっている。
その瞳はどこかとろんとしていて、僕の知らない女としての表情を浮かべていた。
「にいさま。綾緒も・・・こういったことは初めてです・・・。至らない点があるかとは思いますが、
どうか御容赦下さいませ」
初めて?
これで初めてなのか?
僕の下腹部に伸びる手は別の生き物のように独立して動き、思考と行動を遮断した。
従兄の表情を見ながら、的確に弱い部分を学習して往く。
このままでは・・・・。
「や、やめてくれ・・・・」
叫んだはずの声は、酷く弱弱しかった。
まるで形だけの抵抗の様に。
「ふ、ふふふふふふ・・・」
綾緒は穏やかに。けれど、どこか淫蕩に微笑む。
「いつもそう・・・」
「うううぅっ」
「いつも、にいさまは口だけは駄目だ、嫌だって云うんですよね?」
ジ、ジジと。
聞き慣れた音がする。
従妹は僕を見据えたまま、ジッパーを引き降ろしていた。
「どの様な時でも、最後は必ず綾緒の願いを聞いてくださるのですよね?今も、そう」
(ち、違う)
従妹は完全に誤解している。
恐怖。
或は痛み。

215 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 00:56:28 ID:BcFk4sd1
紫煙

216 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 00:58:39 ID:r6GuVZQE
僕がそれに屈してきたことを、良い様に解釈してしまっている。
「だから・・・」
「うぁぁっ」
外気に晒された僕のものを。
綾緒は、丁寧に扱き上げて往く。
「いつもの感謝も籠めて、綾緒が精一杯、御奉仕致しますね?」
「う・・・い、嫌だ・・・やめてくれ・・・」
僕は首を振る。
蒲団から這い出ようともがいた。
けれど綾緒の腕は僕を掴んで、脱出を阻んだ。
「愛しております。綾緒のにいさま」
紅を塗ったような赤い唇を形の良い舌がなぞった。
「だ、駄目だっ!」
これ以上先に進んでしまったら、完全に引き返せなくなる。
「にいさま」
「うわぁっ」
「にいさまは、何も考えなくて良いのです。総て綾緒に御任せ下さいな。にいさまはただ、綾緒を感じ
ていてくれればそれで良いのです。幼子のように、綾緒を求めて下されば、それで」
馬乗りになった綾緒は着物をずらして往く。
雪の肌の中に見える女の部分は、しっとりと濡れていた。
「にいさまだって、寂しかったでしょう?そうでなければ、あんなことをしませんよね?」
「あんな、こと?何の話だ・・・?」
「云ったはずですよ?織倉由良を、家にあげないように、と」
「――」
何で・・・。
「そのこと・・・っ」
「それも云ったはずですよ?」
綾緒は乱暴に僕のものを握りこむ。快楽よりも痛みを優先させるように。
「綾緒は何時でも、にいさまを見ています、と」
「う、ぁ・・・」
従妹の表情は淫蕩なそれのまま。
けれど、その瞳は暗く濁っていた。
「罰を与える――本来ならば、そうするところです。でも、綾緒と逢えなくて、にいさまも寂しかった
のですよね?とうさまを説得出来なかったのは綾緒の落ち度です。ですから、織倉由良の件でにいさま
を責める様な真似は致しません。だって、大切なのは“これから”ですからね・・・」
ゆっくりと。
綾緒は僕のものを自身の中に宛がう。
繋がる。
それはあってはならないこと。
「や、やめろ!やめてくれぇ!」
「やっと・・・やっと愛しいにいさまとひとつに・・・・」
「駄、駄目っ、うあああああ!!」
躊躇は無かった。
僕に跨った綾緒は、全身を重力に任せていた。それは、進んではいけない道へ足を向けることと同じで
あった。
「んぅっ・・・にい、さまァ・・・!!」
何かを突き破る様な感覚。それは一瞬のこと。
従妹は顔を歪め、すぐに呆けた笑顔で僕を見おろしていた。
「う、うわぁぁっ」
自分の口から漏れる悲鳴。
それは、起きてしまったことに対する恐怖と、それを上回る快楽からだった。
締め付ける。
そう云う表現は聞いたことがあるけれど、綾緒のそれは、そんな次元を超越していた。
まるで全方向から舌で舐め上げられる様に。絡みつき、僕という存在を絞りつくすかの様に。
男を悦ばせることに特化した器官と動きは、僕の思考を壊すには充分だった。
「んんぅっ・・・にいさま。綾緒の、にいさま・・・」
どこか夢見るような瞳。
念願かなったからか。それとも、行為自体に酔っている為か。

217 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 01:01:13 ID:r6GuVZQE
とろんとした表情の従妹は、にいさま、にいさまと呟きながら、一方的に腰を振っていた。
痛みを感じていないのか。
陶酔は、痛みをも甘美な快感へと変質させているのか。
鶯の鳴き声は、どこまでも艶やかだった。
「うああ、うぁぁぁ」
僕は何も考えることが出来ない。
恐怖と、悔恨と、快楽と、自失。
脳内がどろどろに溶けて、叫んでいるのか呻いているのかも判らなかった。
「あ、ぁぁぁ、にいさま。にい、さまぁ・・・!」
綾緒が上下する度に、僕の意識が飛びそうになる。
自分がどの様な表情をしているのかすら判らない。
あるのは奇妙な恐怖と、恐ろしい程の快楽だけ。
「ああぁ、にいさまぁ、にいさまァ!綾緒の中に、にいさまを・・・んっ・・・にいさまを感じます。
もっと、もっともっともっとぉ、もっとにいさまを、綾緒に感じさせて下さい」
綾緒の中は際限なくきつく、気持ち良くなっていく。
限界が訪れるのは、時間の問題だった。
「お願いだ、綾緒、もうっ・・・もうやめてくれ・・・」
「にいさま・・・にいさまも、気持ち良いのですね?綾緒を感じてくれているのですね?」
「こ、こんなの・・・駄目、だ・・・」
「云ったはずですよ?にいさまは・・・にいさま、は、何も考えなくて良いと。唯、唯、綾緒に・・・
綾緒に、甘えていれば良いのです」
笑う従妹の顔は。
恐ろしく妖艶で、恐ろしく高圧的であった。
綾緒は僕に尽くしているつもりで、どこまでも僕を支配して往く。
今この瞬間も、僕を見定め、思う通りに動かしていた。
恐怖と。痛みと。そして、快楽。
綾緒は従兄をコントロールする術を完全に身につけていた。
どう動き、どう攻めれば良いのか。
知悉し、楽しんでさえいた。
(身体が、おかしくなってる・・・)
まるで望んでいない相手としているのに。
(もっと・・・もっと動いて欲しいと思ってる・・・・)
感覚が一点に集中し、その場に齎される快感だけにのめり込んで往く。
知性も。理性も。
何もない。
貪ることだけを身体が欲していた。
日ノ本創という人間が、楢柴綾緒という化生に喰われて往く。
心も、身体も、何もかも。
綾緒の口は僕をしっかりと啄み、“それ”を飲ませろと無言で要求していた。
「さあ、にいさま、にいさまの子種を・・・綾緒に授けて下さいませっ・・・・」
弄ぶことを止め。
絞り尽くすことに集中した従妹に抵抗する術は無い。
「う、うあああああああああ」
僕は泣いていた。
泣きながら、綾緒の中に果てていた。
「んぅぅっ。にいさま、にいさま。まだ、まだまだ足りません。もっと、もっと授けて下さいませっ」
それは、僕の中の僕と、僕の中の綾緒の消滅だった。




218 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 01:03:30 ID:r6GuVZQE
家についたのは、夜になってからだった。
どうやって帰ってきたのか、覚えてもいない。
楢柴の車を断ったことは記憶にあるので、何時間も掛けてふらふらと歩いて来たのだろう。
あの後――
綾緒は壊れた僕を抱き続けた。
身も心も枯れ果てる程に絞りつくし、満足そうに笑っていたように思う。
愛しそうに自らの腹を撫で、何か呟いていたように見えた。
玄関についた僕は、その場にへたり込んでいた。
家に帰ればホッとするはずなのに、涙が出て止まらなかった。
膝を抱えたまま、ずっとそうしていた。
廊下に置かれた電話が鳴ったのは、その時だ。
普段の習慣がそうさせたのだろう。
僕は受話器を耳に当てていた。
片耳は心同様壊れている。
聞こえる方の耳に、受話器をあてた。
僕の口から声は出ない。
その気力がなかった。
「あ、日ノ本くん?やっと繋がった!さっきからずっと電話してたのよ?」
「・・・・・」
それは誰の声だったか。
親しい先輩・・・いや、僕の恋人だったか。
どちらでもいい。
「日ノ本くん、お昼のことはどういうつもりだったの?朝歌ちゃんには謝罪されたけど、日ノ本くんの
言葉を聞きたいの。ねえ?私の覚悟、まだ伝わってなかった?もう一度命を掛けなきゃ駄目?」
「・・・・・・」
何かを云っている。
よく聞き取れない。
こちらの耳は、壊れていないはずなのに。
「ねえ、日ノ本くん、私、寂しいと死んでしまうのよ?」
「・・・・・・」
「聞いてるの?返事をして!」
「・・・・・・」
「どうして返事をしてくれないの?それとも、何かあったの?」
「・・・・・・」
「何かあったのね?判った。今すぐそっちに往くから待ってて」
電話は一方的に切れた。
何が判ったのだろう。
自分でも自分が判らないのに。
兎も角、誰かがここに来るらしい。
誰が来るかは判らなかったが、逢ってはいけない人のような気がする。
ここも、僕にとっては安住の地では無いのだろう。
壁に掛かっている能面が、じっとこちらを見つめている。
貴方を見ていると、誰かが云った。
心身が摩耗していて、それも誰の言葉か思い出せない。
僕は受話器を澱んだ瞳で見つめると、そのままにして外に出た。
家の鍵は掛けたろうか。
どうでも良いか、そんなこと。
靴も履いていない。
ただ、どこへともなくフラフラと歩いた。
心身悉く吸い尽くされたせいか。
それとも別の理由か。
総てが消耗し、意識が摩耗している。
自分が生きているのか死んでいるのか、それすらも識別出来ないくらいに。
どれくらい歩いたろう。
5分か、10分か、それとも1時間か。
疲労に疲労が重なった頃。
ぎゅっと。
何かが僕の手を握っていた。
いつの間にか、すぐ傍に誰かがいたのだ。

219 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 01:05:47 ID:r6GuVZQE
酷く小さく、華奢な人影がそこに在った。

「何をしているんですか。こんな所で」

抑揚の無い声。
痩身の少女は、じっと僕を見つめている。
「・・・・・」
僕は答えない。
これは誰だったろう。思い出せない。
唯、逃げなければいけない相手では無いような気がした。
少女は僕の手を握ったまま見つめていたが、やがてどこかへ引っ張り始める。
抵抗はしない。
そんな気力は無い。
少女に腕を引かれて、唯のろのろと歩くだけ。
やがて、どこかに到着する。
すぐに着いたような気もするし、結構歩いたような気もする。
時間の感覚も無い。
到着した場所は、どこかの家の中。
澱んだ瞳に映るのは、大量の本。
廊下にも、階段にも、部屋の中にも。
目に入る範囲に、形大小様様な書籍が積まれている。
どこか見覚えのある光景だった。
懐かしい感覚。
僕はここへ来たことがあったようだ。
通された場所は、矢張り本だらけの一室。
なんだか安心する。
そう思った瞬間、力が抜けた。
地面に張り付いて、動くことも出来なかった。
ちいさな誰かが、何か云っているが、答える気力は僕には無い。
深い闇の中へと意識を沈めるだけだった。

意識を取り戻した時視界に入ったのは、本の山。
窓からは陽の光が射し込んでいる。
どうやら僕は眠っていたようだ。
ここはどこかの部屋の中。
大量の本に埋もれた部屋の中。
本の山は綺麗に積まれているが、その量が多すぎるために雑多な印象を受ける。
「どこだ?ここ?」
場所が判らない。
何となく見覚えはあるのだが。
そもそも自分は、何でこんな所にいるのだろう?何でこんな所で寝ていたのだろう。
辺りを見回す。
すると、すぐ傍に気配を感じた。
ちいさな身体が、僕に寄り添う様にして、穏やかに寝息を立てていた。
痩身矮躯を猫の様に丸めて、僕の服を握っている少女の姿があった。
「ひ、一ツ橋?」
何で僕はここにいて、一ツ橋が隣で寝ているんだ?
理解が追いつかないが、兎に角、本人に聞かないことには始まらない。
僕は寝息を立てる後輩の身体を揺さぶった。
「お、おい、一ツ橋?起きてくれ」
「ん・・・」
昔馴染みは僅かな振動で目を覚ます。
無表情だが眠たそうな目のままで身体を起こした。
「おはようございます、お兄ちゃん・・・」
「おはよう。って、何でお前はここで寝てるんだ?」
「私が私の部屋で寝ていることが不思議ですか」
「え?」
僕は改めて周囲を見渡す。
云われてみれば成る程。

220 名前:ほトトギす ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 01:08:33 ID:r6GuVZQE
ここは博識な教授と、その娘の暮らしている家屋に相違なかった。
「待てよ、じゃあ何で、僕はこんな所にいるんだ?」
目の前の人間に問いかけたのか。
それとも自分の記憶を探ろうとしたのか。
僕がそう云うと、一ツ橋はじっとこちらの目を見つめた。
表情は無い。だけど、真剣さの伝わる瞳だった。
「僕は・・・昨日・・・・」
(!!!)
思い出した。
吐き気の催す様な出来事を。
鶯の巣で起こった、忌むべきことを。
かたかたと身体が震える。
目の前が霞んで、寒気が全身を包み込む。
その瞬間――
僕の頭を小さな身体が抱きしめていた。
「一ツ橋・・・?」
「大丈夫です」
無機質なのに、穏やかな声。
「大丈夫・・・。怖がらなくて良い」
「ぅ、あ・・・でも、僕は・・・」
綾緒と・・・。
「大丈夫・・・」
一ツ橋は僕の頭を撫でる。
心臓は痛いくらいに鳴り響いているのに、不思議と心が凪いでいた。
「私が護ります」
表情は見えない。
声に抑揚も無い。
けれど、一ツ橋からは強い意思のようなものが感じられた。
「お兄ちゃんを不幸になんてさせません。私の人生と引き換えにしても、幸せにしますから」
だから泣かないで。
一ツ橋はどこまでも静かに。
「っ・・・・」
僕は再び身を震わせる。
涙が出た。
身体の震えが止まらなかった。

221 名前:無形 ◆UHh3YBA8aM [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 01:10:38 ID:r6GuVZQE
投下ここまでです。
では、また

222 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 01:15:35 ID:q+d8LvQT
GJ!!

223 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 01:29:27 ID:Wtd2bxHO
なんという投下ラッシュ。
作家の皆さん、GJです。

224 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 03:03:20 ID:GDaLKlsV
な ん と い う ヘ タ レ(褒め言葉
そして綾緒の素晴らしいガロード・ランっぷりにヤンデレの光を見た
惜しみないGJを

225 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 03:21:02 ID:ncTRLDAq
ついにきたほトトギす!GJです!兄ちゃん軽く壊れた時の朝歌の慰め方めっちゃ良い。というか、綾緒の親父さんは、死んだということになるのか?
続き待ってます。
あとはことのはぐるま待つだけだぜ

226 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 05:13:34 ID:GiOiCHHv
久々の朝歌キタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
二体のヤンデレモンスター相手にどう動くか楽しみです。

そして親父さんの安否が気になる…

227 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2008/06/15(日) 11:44:15 ID:VLeSTx3p
そろそろヤンデレ家族の時間だな。

228 名前:ヤンデレウィルスに感染してみた[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 12:45:12 ID:vC+4sfDU
『ゲームソフト』

「さて、ラスボス倒して今日中にクリアだ」カチッ

「あれ、嘘だろ」

うふふ

「データが、ラスボス前のデータが」

まだ終わらないで、もっと遊びましょ

「消えてる・・・・・・」

あは、アハハハ!

「ちくしょおおおおおおお!」

ずっとずっと遊んでね・・・・・・


229 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 12:47:50 ID:vC+4sfDU
バイトおわたら他のも投下してみる

230 名前:名無しさん@ピンキー[ ] 投稿日:2008/06/15(日) 13:57:50 ID:SDpcmFzd
美月のバイトしてるガソリンスタンドってリッターいくら?

231 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 15:53:39 ID:IxSAScLV
三井死ね三井死ね三井死ね三井死ね三井死ね三井死ね三井死ね三井死ね

232 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 18:13:42 ID:bxuyQO3U
投下します。

前回(>>71)ああ言い残しましたが、予想外に長くなったので、予定を変更してお送りします。


233 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 18:15:15 ID:bxuyQO3U
***

『二月十六日 曇りのち雨 降水確率八十パーセント

アタシと彼の同棲生活一日目。
彼ったら、新しい家で暮らすのが嫌だって言うの。
今まで住んでいた家の方がいいんだって。
そんなこと言ってえ。本当はアタシがお願いしたらノーとは言えないくせに。
彼はとっても疲れているみたいだったから、早速ベッドに寝かせてあげた。
そうしたら、口ではなんだかんだ言いつつ、ベッドの上で大人しくなった。
彼はずるい。そんな無防備な状態を見せるなんて、アタシを惑わすつもりかしら。
据え膳食わぬは女の恥。
当然体の隅から隅まで、じっくりねっとり味わわせてもらいましたとも。
具体的に言えば、シちゃいました。合体、連結、ドッキング、フュージョン、みたいな。
いやあ、はしたなくも学校でシたのも加えれば、一日に十回以上として、とっくに三十回は越しちゃった。
少ないと自分でも思う。
彼は性欲漲るぎらぎらした十代の高校生だから、もっと多くたっていいはず。
でも、十四日は初めて一緒になれた感動で泣いちゃったからあまりできなかったし。
十五日は授業に出て、さらにお義兄さんと談笑してたから時間がとれなかった。
今日だって、彼を家まで連れて行くのに手間取ってしまって、家にたどり着いたのは正午をちょっとすぎたぐらい。
ごめんね。アタシの友達、時間にルーズだから。
まあ、車を出してくれるだけありがたいんだけど。
明日は彼を連れて、また友達の車で移動。
もうすぐ、彼の育ったこの町から離れられる。邪魔者は足跡を辿れなくなる。
アタシの夢は、もうすぐ叶う。
これからの一生、好きな人と二人っきりで暮らしていける。
それを、誰にも邪魔なんかさせない。
特に、あの金髪の悪魔には。    』

「今日の分は、これでよし」
日記帳を閉じて、留め金具をはめ、誰にも見られないよう南京錠で鍵をかける。
自分一人が読むだけの、同年代の女の子たちがよくやる日記。
鍵がついてるから見た目は無骨だけど。
これでも小中と学校に通ってきたから、宿題として日記を書いたことはもちろんある。
けど高校生になってからは――――というか、あの事件の後からは、自分だけのために書いたことは一度もない。
書くことがなかったわけじゃない。めんどくさかったわけでもない。
彼を好きになってからは、書きたいこと、不満に思ったこと、嬉しかったことがいっぱいあった。
ただ、それを書けなかった。
自分のことを書こうとするたびに、あの男に犯された記憶が蘇って、気持ち悪くなってしまう。
今、日記を書けているのは、彼の愛のおかげ。
彼に抱かれてから、あの男の記憶が薄れた。
きっと、彼が記憶を上書きしてくれたんだ。
そうじゃなきゃ、こんなに体が軽くて、幸せな気持ちになんかなれないもの。
なんだか若返ったみたい。
いやいや、実年齢だって十分若いけど、そういう面のことじゃなくて、精神的に。
自分が世界で一番幸せとか、自分が世界の中心にいる、みたいに思えるようになった。
そういうこと考えてたのは、小学から中学入りたての時期だった。
それが、高校生になった今頃そう思えるようになったのは、やっぱり。
「彼が、アタシの、アタシだけのものに………………」
あー、もうダメ。
叫ばずにはいられないって。歓喜しないわけないって。机だってバンバン叩いちゃう。
アタシ、彼のお嫁さんになったんだ。彼には、アタシだけしか頼れる人居ないもんね。
本当は彼からプロポーズされたかったけど、状況が状況だから仕方ない。
アタシに告白されて、過程はどうあれ彼はアタシを抱いてくれたんだから、オーケーの返事をもらったようなもの。
それに、たっぷり中に注いでもらったから、子供だってできちゃうかもね。


234 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 18:16:23 ID:bxuyQO3U
「…………そう、だったらいいな」
でも、望みは薄い。
あの男に犯されて、一回だけ堕ろしたことがあるから。
考えないようにしてたけど、やっぱり子供をつくれないかも、っていう不安は堪える。
彼に申し訳ない。そりゃ、簡単に妊娠なんてしないものだけど、いつまでも身ごもれないのはアタシが悪いんだと思われそう。
こんな体になった原因はアタシにはないけど、その原因を彼に話していない以上、アタシの責任に思われてしまっても仕方ない。
でも、これから打ち明ける気にはなれない。
彼に嫌われたくないし、それに――――過去は過去だから。
アタシが努めるべきことは、彼の心の奥の奥まで、彼の体の隅から隅まで、アタシの色に染めること。
真心の籠もった『愛してる』を言わせること。
絶対に、言わせてみせる。
アタシは、彼と一緒に幸せになりたいんだ。

「う……ぁ……」
あ、彼が起きたみたい。
「ううう…………い、やだ……こんなの」
なんだかうなされている。
四肢をベッドに縛り付けているのが原因かな。
でも、この方が色々都合がいいから、許して欲しい。
あなたの身の安全を守るためには、アタシの目が届く位置に居てもらう必要がある。
外に出たら、怖い怖い金髪のホルスタインや、畜生みたいに血の繋がりをあっさり無視する妹さんと遭遇しちゃう。
それに、それに…………アタシ、縛られてるあなたが好きなの!
動けないあなたを犯してるのに、実はあなたに体を貫かれて犯されている、っていうのがいい。
あなたの方からアタシを求めてくれれば、こうする必要なんかないんだけど、ね?
「こんな、つもりじゃ…………なかったのに、ごめ……ん」
それにしても、どんな夢を見ているのかな?
なんで謝ってるの? 
その言い方は何かやらかした人間のものでしょう。 
「僕は、僕が…………本当に、好き……のは…………」
あら。あらあら?
寝言で告白するつもり?
理想とはほど遠いシチュエーションだけど、好きだと言ってくれるならば甘んじて受け入れましょう。
ふふふ――――さあ、打ち明けなさい。ドーンと!
「は、なび…………だから、ごめん」
……あのー、花火をドーンと打ち上げてほしいわけじゃないよ。
違うでしょ。あなたが言わなきゃいけないのは、あたしの名前。
忘れちゃった? なら思い出させてあげる。
「僕は、澄子ちゃんが好きだ。澄子ちゃんが最高に好きだ。澄子ちゃんが欲しい。アイウォント澄子。
澄子ちゃんを抱きたい。澄子ちゃんのためなら死ねる。愛してる、澄子!」
さあ、つられて言ってしまいなさい。
アタシのことが好きだと!
「助けて、花火、にいさん…………」
忌々しい金髪女の次は、先輩?
先輩は助けになんか来てくれないよ。
今頃は誰かに発見されているだろうけど、アタシの跡を追うことは不可能。
先輩はアタシの家がどこにあるのか知らない。行き先なんかもちろん教えていない。
理想郷? そんなもの、どこにもない。どんな場所にでも人が住んでいる限り悪意は潜んでる。
でも、たった二人きりの場所だったら、その限りじゃない。
彼さえいれば、アタシにとってはどこだってユートピアになる。
そう思っているのに、あなたはアタシ以外の女にしか興味を抱かない。
告白しても、アタシの気持ちを疑って、気のある素振りを見せない。
たとえ夢の中でも、アタシの割り込む隙間を作らない。
徹底的に、拒み続ける。
そんなことされたら、いつまでもあなたを好きなままのアタシは、強引な手段をとるしかないじゃない。


235 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 18:17:52 ID:bxuyQO3U
彼の頭の左右に手をついて、上から覆い被さる。
まだ彼は気付かない。眉根を寄せて眉間にしわを寄せている。
なんだかなあ。この体勢の時にそんな顔をされたら、アタシにのしかかられるのを嫌がってるみたいで、気分が悪い。
「悪い子には、おしおき……」
右手で彼の顔を正面に。何度見ても可愛い寝顔。
見るだけで、うずうずして抑えが効かなくなる。
頬が熱くなって、眠りの魔法をかけられたみたいに目がトロンとして、夢中になってしまう。
目を逸らせない。
でも、今は逸らさなくてもいい。以前とは違うんだから。
同じクラスで、遠目にあなたを見ている時は、あなたと目があったらすぐに目を逸らしてた。
片思いをしているに過ぎないアタシには、そうするのが精一杯。
それが今じゃ、あなたの命を握るまでの立場になっている。
生殺与奪――――生かすも殺すもアタシ次第。
たまらない。ゾクゾクする。こんな幸福感、普通じゃ絶対に味わえない。
手を繋いでデートしたり、ムード満点の場所で愛を囁かれることに、憧れなかったわけじゃ、ないけど。
それ以上に、あなたを独占できる今の状況は最高。
やっぱり、アタシはどこかがおかしい。世間からズレている。
いつからおかしくなっていたか。
あの男に乱暴された時から、じゃない。
あなたに出会った瞬間から、でもない。
きっと、あなたを好きになった時からだ。
そして、それからあなたの身は危険にさらされていた。
「自分で言うのもなんだけど…………きっと、アタシに出会ったことがあなたの不幸だったのよ」

彼が目を開けて、アタシを見る。
アタシは、彼の目の色が変わる前に、アタシへの拒絶を浮かべる前に、目を閉じて彼の唇を奪った。
「む……っあ、やめ…………」
顔を逸らそうとしても無駄無駄。
どのみち、アタシからは絶対に逃げられないよ。
「ん、ふ……ぁ……ん…………あっ……ん、ふふふ」
舌を絡め、彼の体に抱きついて、股間を撫でる。
縦に動かしたり、こねたり、握ったりしていると、だんだん固くなってきた。
それはアタシの行動を許可してくれた証拠。体は嘘をつかない。
彼は徐々に、しかし確実に、アタシの唇や匂いに反応しはじめている。
知覚した時には、快楽を味わえる、と。
いわゆる条件反射だ。
そういうのも悪くない。
数を数えれば、彼がどれくらいアタシの色の染まっているかの度合いが分かる。
うふふ、ふふふ。
あははは、は。……ははははは!
すぐに、アタシに、アタシの与える快楽の奴隷に、してあげる。
葵紋花火のことなんか、数日の間に忘れさせてあげる。
夢にも見られないようにしてあげる。

あなたは一人しかいないから。
あなた以外に、あなたみたいな人はいないから。
何もせずに、他の女のモノになってしまうのを見ているなんて、絶対にできない。
このチャンスは逃さない。
あなたは二度と放さない。死ぬまで、いいえ、死んでも放さない。
アタシが死ぬ時が、あなたが死ぬ時。あなたが死ぬなら、アタシも死ぬ。
あなたは同じ事を思ってくれないだろうけど。
一方通行な、一蓮托生の誓い。
そう思いこむぐらい、あなたが好き。
十分の一でもいいから、あなたに伝わって欲しい。
そうしたらきっと――――アタシのことを好きになる。


236 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 18:18:47 ID:bxuyQO3U
「お願いだから、アタシのことを好きになって…………ね?」
そう言っても、彼は首を振るばかり。
「ごめん」
「どうして、謝るの」
「何度も言ってるように、僕が好きなのは、花火だから。
澄子ちゃんを選んで、花火から離れるなんてこと、僕にはできない。
好きになってくれたのは嬉しいけど、応えられない。だから、ごめん」
言うねー。
とっても傷つくよ、今の言葉。
でも、でもね。
「謝られても、アタシは諦めない。あなたの心が、折れるまで。
また、気絶するまで気持ちよくさせてあげる」
「やめて、くれ」
「やー、よ」
彼は下半身を唯一包んでいる下着をずらす。
明らかに他の箇所とは違う熱を宿らせた陰茎が、存在を主張する。
それを、可愛がるように手で包む。
彼の顔は、それだけで何かをこらえるように固くなり、そっぽを向いた。
「我慢なんか、しなくていいのに」
「違う……澄子ちゃんにこんなことされたくないって、思ってるんだ」
「正直になりなよ。
あなたが耐えるなら、心が折れるまでアタシは続ける。
最初からさあ、受け入れた方が楽だと思わない?
もう二度と、アタシから逃げることなんかできないんだし」
「そんなこと、わからない」
「無駄よ。変な希望を抱くだけ、叶わなかったときのショックが大きくなる。
お別れしましょう。今までの環境から。
両親のこと、お兄さんのこと、妹さんのこと、幼なじみのこと。
そんなもの、重荷になるだけよ」
「そんなこと! そんなの……駄目だ。僕には、花火や兄さんが必要なんだ」
「へえ、そう」
指を動かして、彼の陰茎の裏スジに這わす。
柔らかな部分をひとさし指の腹で責める、というか弄る。
続けていると、時々びくびく動いて、硬さも増してきた。
「う……っあ」
「じゃあ、耐えてみたら? 
縄の腐りかけた橋を渡ってるときみたいに、いつかは落ちちゃうってびくびくしながら、アタシの責めに耐え続ければいい。
勝てるはずのない戦いだけど――自分の信念を貫いたなら、屈服しても納得できるよ、きっと。
僕は昔花火のことが好きだった、でも今は好きじゃない、とか言うようになる」
「……ない。絶対に、僕は負けたりなんかしない。
曲げられるものと、曲げられないものがあるんだ」
「かっこいいね。ますます、惚れちゃいそう。
これ以上好きにさせてもらっちゃ、本当にもう、困っちゃうよ」
いつか折れちゃうものを、健気にも守っている彼は、アタシの想像通りの人間。
そして、折れるまでじわじわ追い詰めるのが好きなアタシは、かなりサディスティックだ。


237 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 18:19:33 ID:bxuyQO3U
「覚えてる? 昨日の夜、あなたがなんて言ってたか。
気持ちいいって。アタシの体が欲しくて、仕方なくて、動きが止まらないって言ったのよ。
アタシがやめてって言っても、ずっとやめなかったんだよ」
「そんなの、嘘だ」
「嘘じゃ、ありませんよ?」
ふふん、都合の良いアタシの想像に決まってるじゃない。つまり嘘よ。
まあでも、こう言ったら彼の動揺を誘えるから、悪い手じゃない。
それに、まるっきり嘘でもない。
一昨日に比べて、明らかにアタシの体に慣れて、応えるようになってる。
そういうの、受け入れる側の女からすればわかるんだよ。
「あなたはアタシに傾きかけてる。そして、諦め始めてる。
それでいいの。怖いこととか、不安になることとか、これからは一度も起こらないよ」
「嫌だ。僕は……忘れたくなんか、ないんだ!」
「忘れましょう? あなたは一番幸せになれる道を選んだだけ。
誰もあなたを責めないわ。みんな、笑って許してくれる」
優しく包み込み、彼の後ろめたい気持ちを和らげる。
彼は心配してるだけ。
葵紋花火や、お兄さんに怒られるのを。
「アタシと二人で辛いことを分け合えばいい。
大事な人でも、物でも、目的でも、誓いでも、支えになる何かがあるから、人は強くなれる。
そういうの、アタシは素敵なことだと思う。
たとえ世界中の皆があなたを責めても、アタシだけは味方。
どんなになっても、見捨てたりなんかしないよ。
あなたの全てに、アタシは惚れたんだから」
彼は首を振る。
「僕が望むのは……君との未来じゃないんだ。
花火が居ないと、僕は、僕は………………」
はあ。
こりゃ、まだまだ意志は折れそうにないね。
一昨日の夜から、彼との会話はずっと平行線で、交わることがない。
でも時間はたっぷりあるわけだし。
ゆっくりと、気持ちを変えさせてあげましょう――――いただきます。愛しいあなた。


238 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 18:20:26 ID:bxuyQO3U


「うぅん、そこ、イイ……気持ちいいよぅ………………う、ん?」
閉じていた目を開けたら、いきなり快楽から解放された。
というか、単に夢から目が覚めただけか。
…………ちえ。すっごいもったいないことした気分。
寝る前にもいっぱい中に精液を出してもらったけど、そんなものじゃ足りない。
夢でも妄想でもいいから、もっと彼のことを考えていたいのに。
目の前には彼の横顔。彼もアタシとシている最中に眠ってしまったみたいだ。
今すぐ夢の続きをしてやろうかと考えたけど……安眠を妨げるのも気が引けるし、体力が回復しなかったら困る。
体を起こして、両腕を伸ばして伸びをする。
あくびをすると頭に血が巡り、眠気のもやを追い払った。
「…………ふう、今は夕方、かな?」
窓の外を見る。空に浮かぶ雲は灰色で、夕日まで沈んでいる。
時計の短針は六を指しているから、今日はまだ十六日だ。
一日眠りこけていれば十七日だけど、たぶんそれはないだろう。
携帯電話の画面に映る日付は二月十六日だ。
それに、メールも届いてないし、電話も掛かってきてない。
十七日になったら友達から連絡が来るはずだ。……忘れていない限りは。
「不安になってきたわね…………」
もし向こうが忘れてたら、ここから移動するのが遅れちゃう。
ここに留まっていたら、先輩や葵紋花火、その他のイレギュラーに発見される危険が高まる。
そもそも、アタシの頼んだ通り、明日の朝の五時に迎えに来るかが怪しい。
あの子、朝に弱そうだし。
「……連絡して、確認しよ」
彼を起こさないよう、 ベッドからゆっくりと下りる。
安らかに眠る彼。今はうなされた顔をしていない。
眠りを妨げないよう、額と右頬、最後に左頬にキスをして、部屋を後にした。


239 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 18:22:21 ID:bxuyQO3U
「お断りだ」 
なぜか知らないけど、初っ端からお断りされた。友達に。
電話をかけ、相手から開口一番にそう言われては、こっちとしても言葉を選ばなければならない。
どうして友達との電話で気兼ねしなきゃならないんだろう。
「あの、まだ何も言ってないんだけど」
「言葉を交わさずとも、伝わるものがある」
「テレパシー?」
「いいや、お前をよく知る人間としての勘だ」
伝わってないじゃん。頼み事する気なんかなかったのに。
それにいきなり断られるってどうなの? 友達って、そういうものかな?
「で、何の用だったんだ、澄子」
「ああ、あのさ、明日何時に迎えに来ればいいか、覚えてる?」
「もちろん。五時だろう」
……まあ、さすがに覚えてるよね。
「あと、約一日もあるわけだから、昼寝しても大丈夫だな」
「わかってない! 覚えてないよ! 夕方の五時じゃなく、朝の五時!」
「なに! よりによって日曜の朝に早起きして、しかもヒーロータイムを見逃せと!?」
「約束したじゃん! この間一本三万円するタイヤおごる代わりに協力してくれるって!
しかも四本だよ!? 高校生に十二万円も払わせといて契約破棄するつもり?」
「そん、な……そうと分かっていれば、断ったものを。ああ、私のライドピンクの活躍が……」
「しかも断るんだ……時間ずらすよう頼むとか、しないんだ……」
彼もそうだけど、高校生以上の年齢層が夢中になれるほど面白いものなのかな。
アタシなんか小学生の頃でも戦隊ものに興味なかったのに。
「録画しておけば後で見られるじゃない」
「わかってない! リアルタイムで見る興奮をお前はわかっていない!
いいか、録画じゃ、興奮が三割減少するんだ!」
「いや、そんなことを主張されても」
「早起きしてテレビの前に座り、CMが明けるまでの待ち遠しさ。
前回のラストシーンから始まり、続けて流れるオープニングテーマを聞いたときの、童心に帰る心地。
番組関連の玩具やソーセージのCMを挟んで見る、流れるような本編の展開。
次回予告を見る時の、もの悲しさと期待。来週もまた元気に生きようって、そう、思えるのに……」
うわあ……結構深刻そう。
そっか。この子にとって、きっとヒーロータイムは、アタシにとっての彼みたいな存在なんだ。
しょうがないなあ、もう。
「わかったわよ。何時からだっけ? 八時?」
「……七時、三十分」
「その時間になったら、途中のサービスエリアに寄って見ていいから」
「…………本当に?」
「本当、本気、真剣、マジ、嘘じゃない。だから落ち込まないの。事故ってもらっちゃ困るし」
「澄子」
「なによ?」
「愛してる」
「あっそう。アタシはあんたじゃなくて、他の男が好きなの。ごめん」
「なるほど、ツンデレか」
「アタシはツンデレじゃないんだけどね……」
あえて言うなら、彼に対してのみデレデレって感じ。
それに、どのへんがツンだってのよ。デレてもいないし。


240 名前:ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 18:24:10 ID:bxuyQO3U
「で、電話をかけてきたのは確認のためだけか?」
「え? えーっと、ね」
初めはそのつもりだったけど、今はなんだかお腹が減ってる。
「迎えに来てくれない? 今から」
「お断りだ」
「振り出しに戻らないでよ……」
またさっきの会話をリフレインさせる気はない。
向こうには、試しに会話を振ったらノってきそうな気配がある。
「どーーしても、迎えに来る気はないわけ?」
「最初から約束していたならともかく、澄子の腹の虫の面倒まで見る気はない。
歩いていけばいいだろう。コンビニが近くにあったはずだぞ」
「その距離を歩いているうちに襲われる可能性もあると、思わない?」
「それなら、また去年の文化祭の時みたく、忍者の格好でもして行けばいい」
「……ヤなこと思い出させるわね、こんな時に」
「なんの話だ?」
「いいえ、なんでも」
この子、去年の文化祭でアタシのコスプレ見てるのよね。
その日の晩に衣装ボロボロ、体をボコボコにされたことまでは知らないでしょうけど。
今回先輩を拉致監禁したのはアタシだけど、先輩がばらさない限り葉月さんが襲ってくることはないはず。
先輩の性格からして、アタシをかばって口を割らないのは予想がつく。
ああいう人って優しいから、利用しやすい。
「……ま、いいわ。自転車で行ってくるわよ」
「ああ、気をつけて行ってくるんだぞ」
「そう思うなら迎えに来なさいよ」
この子は、いちいち心にもないことを。
「気をつけて帰ってくるんだぞ。家に帰ってくるまでがお遣いだ」
「あんたは、いちいち心にもないことを!」
叫び、電話を切る。

「あ、やば」
今ので彼、起きちゃったかな?
部屋のドアを開けて見る。……よかった、まだ寝てる。
「ごめんね。ちょっとだけ一人にしちゃうけど、すぐに帰ってくるから。
寂しがらないでね? 帰ったら晩ご飯、食べさせてあげるから」
もちろん、全部あーん、で。
それとも、口移しがいいかなあ?
うーん……よし決めた!
出血大サービス。両方やろう。
澄子ちゃんの愛、文字通りお腹いっぱいに味わっていただきましょう。
「うっふふふ。くっちうっつし。くっちうっつし」
足取りも軽く玄関へ。
新婚の旦那さんって、こんな気持ちなのかもなあ。アタシの場合は奥さんだけど。
二月の夜の肌寒さもなんのその。平気、へっちゃらです。
「じゃ、行ってきまーす!」
元気よく言い残し、鍵を掛けて家を出た。


241 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 18:27:36 ID:bxuyQO3U
今回はここで終了です。

いろいろと、ごめんなさい。
次回で死闘編は終わります。

242 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 18:48:31 ID:dgQtzPSU
乙。
もう何も言わない。

243 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 18:50:25 ID:hyoyIzed
一番槍GJ!
新キャラを交えてストーリーがどんな結末を迎えるのか!
wktkwktkしながら続きを待ちます!

244 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 18:51:49 ID:n5lHQZS7


来週がただただ待ち遠しいです。

245 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 18:53:06 ID:hyoyIzed
一番槍じゃのうたorz
うぅ、悔しいのう、恥ずかしいのう

246 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 19:00:19 ID:NdWtfWKX
弟―――――ッ!!
夢オチかと思ったけど違ったか…
サービスエリアってことは高速だし2時間は走るからどこまで行くんだコレ。
兄貴は出てこないしどう転がるか全く想像がつかない。
そして死闘編は何をもって完結なんだ…
とにかく週刊傍観者、GJでした。来週も楽しみにしております。

247 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 19:10:54 ID:IxSAScLV
お兄ちゃんがどうなったのか気になる。

ともかくGJ!!

248 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 19:23:45 ID:D33g6xvz
GJ!弟より兄貴のほうが心配だwww
これって俺だけ?


249 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 19:27:13 ID:jaictH/u
澄子ちゃん、夜道には気をつけろよ。(花火的な意味で)

250 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 19:39:26 ID:AUk4Kyj4
正直、弟なんかより兄貴が気になるな。

 

最終更新:2009年03月14日 06:57