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453 :『ドラゴン一人乗り。』(前編) [sage] :2007/10/15(月) 22:32:44 ID:+Glh4y0p
 星空が映る湖の岸辺に、声が響く。
 歌だ。
 ドの音階、ラの単語で始まるそれを、少女は歌う。
 目を伏せ、スカートの裾と髪を風に踊らせながら、しかし身を動かさず、少女は思う儘
に声を連続させてゆく。頭に思い浮かんだリズムに即興で歌詞を乗せるそれは、それ故に
明確な終わりというものが存在しない。だからこそ、彼女は思った儘に紡いでゆく。
 快い、と思いながらも歌を止めたくなくて、その感情は言葉として出てくることはない。
ひたすらに、その感情も込めて、ただ歌が流れてゆく。
 それが暫く続き、どれだけ歌っていたのか時間を確認する為に月を見上げようとして、
少女は目を開いた。完全な暗闇だった視界に光が侵入し、周囲の光景が意識に入り込んで
くる。目を閉じていたことで普段と比べて夜目が利く状態になった現在では左手側、暗い
森の中もある程度は視認することが出来る。
 だから、彼女は気が付いた。
「いつから居たのですか?」
 この場所に居るのは自分一人だと思っていたが、それ以外、森の中に人影があった。
「ここは立ち入り禁止となっているのですが」
 その言葉に応えるように、人影が一歩踏み出してくる。
 それは青年だった。
 身長は高く、体は全体的に太い。だが太っているのではなく、衣服越しでも分かる程に
筋肉がついているからだ。青年の左右の側頭部に生えた二対の竜角は彼が竜であることを
示しているが、それ自体は珍しいものではない。竜証としてはありふれたものだし、この
地方では特に竜角を生やしたものが多く生まれるので普通以上に見慣れている。
 どれも平凡な特徴だが、彼女はすぐに青年の名前を思い出した。
「ガリスさん」
 名前を呼ばれた青年は、体躯に似合わない穏やかな笑みを浮かべ、短く刈った髪を掻く。
「覚えておいででしたか」
「はい。大事なお客様ですから」
 三日前に来たばかりなので記憶に新しい、というのが、ガリスの名前をすぐに思い出す
ことが出来た理由の一つだ。それに実際に会うのは初めてだが、客分ということなので、
それだけ印象も強い。彼は旅の薬売りだ、と聞いている。実際に病気が治ったという者も
僅か三日の内に何人も出ていて、それもまた記憶に強く残らせている原因の一つだ。
「ですが、それと決まりは別問題です。今すぐここから離れて下さい」



454 :『ドラゴン一人乗り。』(前編) [sage] :2007/10/15(月) 22:34:15 ID:+Glh4y0p
 静かに少女が告げると、ガリスは礼を一つ。
「失礼致しました」
 踵を返して数歩進み、そこで振り返った。
「あの、最後に一つ尋ねても良いですか?」
「何でしょう?」
「いつも、この辺りで歌っているのでしょうか?」
 その言葉に、少女の心臓が跳ねた。
 聞かれていたのか、という疑念を視線に込めて見つめると、癖なのだろうか、ガリスは
照れたように再び髪を掻いた。表情を見る限りでは特に咎める様子もなく、単純に疑問に
思ったようだ。それに安堵し、少女は吐息する。
「はい、そうですね。隠しても仕方がないので、認めます。ですが、その、このことは、
出来れば口外しないで下さい。貴方を咎めておいて図々しい話だと思うかもしれませんが、
儀式以外のときには歌ってはいけない決まりになっているのです」
 それを聞いて、ガリスは若干寂しそうな目をして髪を掻いた。これで三度目になるが、
感情とは別物の仕草だ、と少女は判断する。もう体に染み込んだ、自分が歌うときに目を
伏せるようなものだと。
 沈黙。
「残念です」
 それを破った言葉の意味が理解出来ずに視線で尋ねると、ガリスは髪から手を離す。
「それはつまり、滅多に聞けないということでしょう。綺麗な声だったので、この場所で
なくとも聞ければと思ったのですが、それも難しいみたいですね」
 歯の浮くような台詞だ、とは思ったが、しかし少女は初めて笑みを見せた。それは少し
唇の端を吊り上げただけのもの、笑いの声さえも漏らしていない。しかも掌を口に当てて
隠している。だが誰が見ても喜んでいると判断出来るものだ。
 それを見てガリスは首を傾げたが、すぐに同じ笑みを返す。
「すいません、はしたないところを見せてしまって。ええ、そうですね。本当は、好きに
歌いたいのですけども、全く残念な話ですね」
「我慢はしなくても良いと思いますよ。それが」
 一息。
 ガリスは空を見上げ、少女も釣られて空を見上げた。曇一つない、無数の星が輝く空が
目に映り込んでくる。綺麗だ、と思う意識に入ってくるのはガリスの言葉の続き。
「それが、生きるということですから」



455 :『ドラゴン一人乗り。』(前編) [sage] :2007/10/15(月) 22:36:09 ID:+Glh4y0p

 ◇ ◇ ◇

「……ア様、アムシア様!!」
 肩を揺すられ、アムシアと呼ばれた少女は薄く目を開いた。朧気な意識の中にあるのは
先程まで見ていた光景の記憶。それと眼前の光景を比較して、つい眠ってしまったのだと
自覚する。夢の中に出てきた青年のように髪を掻けば、自分を起こした侍女、ニグベスの
「はしたない」とたしなめる声が飛んできた。
 だがニグベスの表情はすぐに心配するようなものに変わり、
「どうされたんですか?」
 その言葉に、素直に寝不足だと答えようかという気分になる。普段から人前では真面目
に振る舞っているので、まさか規則を破り連日夜中に歌っていだなど誰も思わないだろう。
何か思われたとしても、それは寝付きが悪くなったという程度のものだ。そうなったら、
薬を貰うという名目で昼にもガリスに会うことが出来るかもしれない、そんな打算もある。
 口を開こうとして、しかしアムシアは黙った。それでガリスに迷惑を掛けてしまうかも
しれないし、夜に歌うことに注意をされるかもしれない。確かにガリスは自分の歌を快く
聞いてくれてはいるが、根は真面目だ。儀式の妨げになるかもしれないという理由で歌う
ことを注意されるだろう。そうなれば本末転倒だ。
 少し考え、
「夢を、見ていました」
 強引な話題の転換だが、ニグベスは興味を持ったらしい。
「一月程前の、少し面白かった日のことです」
 長老がボケて曾々孫とパンを間違え、娘に叱られていた日だ。それを思い出したのか、
ニグベスも小さな笑い声を漏らす。本当は違う夢を見ていたのですけど、と小さく呟き、
長い金色の髪を揺らしながらアムシアは立ち上がる。
「あ、そうそう。一月前と言えば、その頃に来たガリス様。アムシア様は御会いになった
ことは無いかもしれませんけれど、あの方は良い人ですよ。是非一度御会いになった方が
良いと思います。楽しい話も色々知っていますし、御体が悪いなら何か薬でも」



456 :『ドラゴン一人乗り。』(前編) [sage] :2007/10/15(月) 22:37:35 ID:+Glh4y0p
 知っています、と言いかけて、また口を閉じた。会ったことも無い筈なのに知っている
などと言ってしまったら、そこから騒ぎになる。表情を薄い笑みに変えて、楽しみですね、
と言って視線を横へ。上手く出来ただろうか、と考えながら見た先にあるのは、いつもと
何も変わらない湖と森の風景だ。
「それで、ガリス様ったら……」
 続いているガリスの話を聞きながら、ふと気が付いた。
「あの、様付けをしてるのは」
 比較的医者に近い立場にはあるがガリスは正式な医者ではない、旅の薬売りだ。自分の
ように特殊な地位に居る訳でもなければ、貴族でも何でもない。それなのに普通に様付け
で呼ばれていることに疑問の言葉を投げ掛けると、ニグベスは面白そうに笑った。
「あ、それですか? 実際に会えば分かると思いますが、あの方はどこか浮世離れをして
いると言いますか、どこか天上人のような雰囲気がありまして。人当たりも良いし、取り
巻きと言うのでしょうか、要は惚れ込んだ娘が何人も出来て。いつの間にかガリス様って
いう言い方が定着したんですよ。まあ、今では私もその一人ですけどね」
 薄く赤に染まった頬を押さえて腰をくねらせるニグベスを見て、アムシアは吐息を一つ。
通りでよく話す訳ですね、と心で呟いて、わざと足音を鳴らし一歩前に出た。その足音で
現実に戻ってきたのかニグベスは真面目な顔に戻り、アムシアの後方に立った。
「少し早いのでは?」
「遅くて困ることはあるでしょうが、早ければ待つだけで済みます」
 失礼致しました、と礼をするニグベスを視界の端に捕えて、更に一歩前へ。改めて前へ
向けた視線の先にあるものは、石で出来ていることを剥き出しの質感で示すバルコニーだ。
窓の外から聞こえてくる声からは既に人が集まっていることは分かっているし、強い風が
長い僧衣の裾をこちらから見える程に揺らし、なびかせていて、司祭が待機しているのも
確認出来る。後は自分が出るだけ、という状況だ。



457 :『ドラゴン一人乗り。』(前編) [sage] :2007/10/15(月) 22:38:52 ID:+Glh4y0p
「行きましょう」
 ここから先は『巫女』であるアムシアと司祭だけの世界になるので、『神世』の部外者
であるニグベスからの返事は来ない。しかし、それが当然なので構わず前に進む。右手を
伸ばせば普段と変わりない質感と重さの剣が存在し、それを掴んだアムシアは周囲を気に
することなく刃を宙に踊らせた。
 室内の空気が変わる。
 『巫女』が剣を走らせるのは、周囲を断ち切ることを意味する。周囲のものを意識の内
から外すという意味と、空間を切断するという意味を持つからだ。床や壁、柱や調度品、
それが例え侍女が相手だとしても、『傷付いた』ことを意識してはいけない。『何も存在
しない』、と意識すれば空気は自然とアムシアから『巫女』へと切り替わる。
 目を伏せて、『巫女』は意識を剣へ集中させる。彫り込まれた『咎殺し』という文字を
指先の感覚で読み取り、足音を殺し前進。まるで歌うように、言葉を重ねてゆく。
 目を伏せたせいで黒く染まった視界の中に、光が生まれた。
 『巫女』は思い浮かべる、遥か昔の神々の時代の一つの話を。
 かつて神と人は共存していた。人々は神を恐れ、そして敬い、慈悲深い神々はその人々
に恩恵を与えていた。それにより人々は豊かな暮らしを行うことが出来、国はどこよりも
栄えていた。全てが幸福の内にあり、それは永久に続くと思われていた。しかし、それは
続かなかった。一組の男女の強い想いから、決して取り返すことが出来ない一つの悲劇が
起きたからだ。男は神官で、女は神に遣える巫女だった。二人は恋仲で結婚の誓いまでも
行っていが、巫女は神の嫁という役目を背負っていた為に結ばれることは不可能だった。
男は神に対し怒りを露にし、巫女を妻にすると決めたという雨を司る神との契約を恨んだ。



458 :『ドラゴン一人乗り。』(前編) [sage] :2007/10/15(月) 22:39:56 ID:+Glh4y0p
 そして悲劇は起こる。
 雨の神から祝福を受けた剣を持ち出し、神を呼び、そして殺した。
 悲劇は続く。
 雨の神を殺されたことにより他神も怒り狂い、この地は長い不作が続いた。病は流行り、
獣が溢れ、蛮族に襲われ、何もかもを失ってゆく。人々は苦しみ次々と死に絶えていった。
巫女は悲しみ、嘆き、神々にどうすれば良いのかと尋ねた。
『全ての罪を終わらせろ』
 神の指示に従い巫女は剣を清め男を刺し殺し、そのことを悲しみ、自らの命も絶った。
『神』の剣は『神殺し』の剣へと変わり、『神殺し』の剣は『咎殺し』へと変わった。
 神は巫女の腹の中に宿っていた娘を育て、時は流れ、
「それは私へと続いてきた」
 軽音。
 足音が生まれたことと足に来る感触が変わったことでバルコニーに出たことを理解して、
『巫女』は目を開いた。眼下にあるのは街に住む者、ほぼ全員の姿。竜族、人間、視線を
巡らせると老若男女様々な、だが見慣れた人々の姿が見える。
「アムシア様」
 声を聞き、『巫女』は左を向いた。
「アムシアの意味を唱えよ」
「『巫女』であり、人であり、そして『雨の神』である名前でございます」
「その証を唱えよ」
「長く伸び、稲穂の如き輝を持つ金色の髪にございます」
「然らば、私の在り方を示せ」
「貴方の力がここに」
 頷き、剣を水平に構えると、司祭は麦の束を刃に滑らせる。長い年月を経た刃は、その
長さ越えてきた事実を感じさせない程簡単に束を切断した。風に巻かれて飛んでゆく穂を
短い時間見つめた後で、『巫女』は再び眼下へと視線を向けた。
「私は、ここに存在する」
 口を一旦閉じ、僅かな溜めの後に、『巫女』は歌い始めた。



459 :『ドラゴン一人乗り。』(前編) [sage] :2007/10/15(月) 22:41:27 ID:+Glh4y0p

 ◇ ◇ ◇

 窓の外から聞こえてくる声に耳を傾け、ガリスは薬茶を口に含んだ。元から苦味と酸味
と辛味が混ざったものな上に濃く煎れてあるので強烈な味になっているが、それに対する
反応といえば僅かに眉根を寄せただけだ。意識は依然窓の外に向いていて、視線と指先は
数分前から変わらず売り上げの計算表の上を滑っている。
「そう言えばガリス様、儀式は見に行かないんですか?」
「そういうナムこそ行かなくて良いのですか?」
 掛けられた声に振り向き、言うと、ナムと呼ばれた少女は笑みを見せた。
「アタシは良いんですよ、昔から見てるし。アムシア様に変わった後も何回も見てますし、
それに絶対参加って訳でもないですから。逆にガリス様は一回も行ってないですよね?」
 問うてくるナムに首を振り、立ち上がった。遠目で見たときなら何度かあるし、歌声を
聞くのならば現在住んでいる、この家でも充分なものだ。広場で行われている儀式の声は
街の外れにあるこちらまで届いているし、不足はないと考える。自分はこの街に住んでは
いるが、所詮は旅の者なので参加する資格はないと思い、それも参加を躊躇わせていた。
それに口には出さないが、参加出来ない大きな理由もある。
 どう答えようかと考えていると、袖を引かれた。
「今度はどうしましたか?」
「あの、物凄い勢いで染みが広がってますけど」
 ナムが指を指した先を見れば、言葉の通り、計算表の上に垂れた薬茶が勢い良く領土を
拡大していた。慌てて雑巾を持ってきて拭き取るが濃く煎れたせいで粘度が非常に強く、
布に染み込まない薬茶は雑巾の動くままに紙の上に広がっていく。結果、元の白さは欠片
も感じられない程、見事褐色に染まった紙が出来上がった。
「書き直しですね。文字も読めないので、計算も最初からになりますね」



460 :『ドラゴン一人乗り。』(前編) [sage] :2007/10/15(月) 22:43:02 ID:+Glh4y0p
「そうですね、何故こんなことになったのでしょうか?」
「ガリス様の特殊な趣味が悪いんじゃないですか?」
「あの喉に絡み付くような粘度と最悪な味が良いんですよ!!」
 そうですか、と半目で見つめるナムから目を反らし、ガリスは吐息。棚から帳簿を下げ、
ページを捲り始める。ナムは既に雑巾を洗いに行ったらしく、台所の方向から窓の外から
聞こえてくるものと同じ旋律の鼻唄が聞こえてきた。
「もう一月か。私は後、どのくらい居れるでしょうか」
 ペンを止め、呟く。
「何か言いましたかー?」
「何でもないです、ただ綺麗な歌だと」
 もう十何年も聞いてますからね、と言って雑巾を干すナムに、笑みを向ける。生まれた
頃から聞いているのだから、それは誰でも歌えるようになるだろう、と思う。ガリスにも
似たようなものがあり、それを思わず口ずさみそうになり、
「馬鹿か、私は」
 出すべきではない、と自重する。
 代わりに口から流れてくるのは一月の間に聞き覚えた曲、ナムが歌っているものと同じ
メロディの歌だ。当然上手くはないが、それを補うようにナムが声を重ねてくる。それを
快いと思いながら、夜に会うアムシアのように目を伏せて歌う。
「このように、感じているのでしょうか」
 誰が、とは言わない。
 思い浮かべたのは金色の長い髪を持つ少女と、それを見上げる人々の姿だ。どのような
ことを考えながら、どのような気持ちを抱きながら歌っているのだろうか。決まっている、
今の自分と同じように、声とリズムによって重なることを楽しんでいる。
 楽しむ。
 自分で考えた言葉に、誰にも気付かれない程小さな失笑が混じった。すぐに消えたそれ
は小さな罪悪感と、目に見えない程の後悔だ。自分が進行形で重ね続けている嘘を、更に
大きくするようなもの。それを自覚して、続けていた歌が途切れた。



461 :『ドラゴン一人乗り。』(前編) [sage] :2007/10/15(月) 22:45:28 ID:+Glh4y0p
「……馬鹿め」
「……ガリス様」
 不意の感触。
 そこに目を向けると、ナムが腕を強く握っていた。
「やっぱり行った方が良いですよ。一人で、そんな辛そうに歌っているなら。文句なんて
誰も言いませんし、仮に誰かが言ったとしてもニグベスに頼んで叱って貰います」
「そう言えば、ニグベスさんは神宮勤めでしたね」
「はい、自慢の妹です!!」
 胸を叩き、今からでも遅くありません、と腕を引くナムに苦笑を返す。確かに一度だけ
ならば、人に紛れるようにするならば、それも良いかもしれないと考える。決して誰にも
見られてはいけないものも、そうすれば幾らか見えなくなるだろう。身勝手で随分都合の
良い話になのだろうが、それでも良いなら、そう考えながら歩き始める。
「早く早く、広場は逃げませんけど時間は逃げますよ!!」
 やや強引とも言える勢いは、苦笑を微笑に変える。
 だが、それは油断に繋がった。
 油断が一瞬の隙を生み、隙は普段では有り得ないミスを生む。
 鈍音。
 襟布を固定していた糸が切れ、ボタンが弾け、袖を引かれた勢いのまま一気に喉や鎖骨
が露になった。普段は殆んど顔以外の露出をしないガリスの素肌にナムは赤面したが、
「ガリス様、それ」
 それは、一瞬で青いものへと変わった。
「バレてしまいましたか」
 力の足りない視線でナムが見つめた先、そこには通常の竜族では有り得ないものが己の
存在を示していた。それを隠しもせずにナムの腕を振り解き、ガリスは一歩後退。
 歌声と音が次第に止む中で、
「私は、半竜なんですよ」
 ガリスは、儀式の参加を躊躇わせていた最大の理由を言う。
 喉元に存在する一枚の鱗が、夕暮れの光を鈍く反射していた。