1 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23:42:07 ID:XYiRIWTj
ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。

■ヤンデレとは?
・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
→(別名:黒化、黒姫化など)
・転じて、病ん(ヤン)だ愛情表現(デレ)、またそれを行うヒロイン全般も含みます。

■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫 @ ウィキ
http://www42.atwiki.jp/i_am_a_yandere/

■前スレ
ヤンデレの小説を書こう!Part20
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1226635080/

■お約束
・sage進行でお願いします。
・荒らしはスルーしましょう。
削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
・作品はできるだけ完結させるようにしてください。
・版権モノは専用スレでお願いします。
・男のヤンデレは基本的にNGです。

2 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23:47:28 ID:be9wfhq9
>>1乙

3 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/08(木) 23:48:18 ID:BBHtzqf8
>>1
おつです。

4 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/08(木) 23:52:15 ID:A2uwStz6
>>1
お兄ちゃん乙

5 名前:tuktukZ[] 投稿日:2009/01/08(木) 23:59:58 ID:2x3Kc5/6
なんか作ってくださいよー
初心者です

6 名前:sage[] 投稿日:2009/01/09(金) 00:21:24 ID:m1hB8xQQ
>>1乙です

7 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 00:23:09 ID:m1hB8xQQ
>>6ミスりました

8 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 00:24:56 ID:NaFRM9SG
>>1乙ですね・・・ふふ・・・

9 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 00:49:33 ID:E+AYtRGC
>>1
おつ

10 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/09(金) 16:38:33 ID:PlcTQN2t
いちもつ

11 名前:乙>1[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 15:42:44 ID:uRJk/BY5
ヤンデレの焔 1

少しいじめっ子だけど、みんなのリーダー
そんなノブ君の周りには、いつも元気な友達がいっぱい

ノブ君に恋心なのはミッチャン
周りが見えない性格のミッチャンは時にやることが行きすぎちゃうことも…エヘ

ノブ君とケンカした子を追い込んで消しちゃったり、ノブ君の親友に嫉妬して腐った魚食べさせようとしたり

でもでもミッチャンはいつも真剣
こんなにノブ君のこと想ってるのはミッチャンだけだもん

そんなミッチャンはライバルのことが気になります
最近何かとノブ君にベタベタするのはランちゃん
ノブ君もその子が気になってるようだけど…
絶対にノブ君は渡さないんだから

…え? 今度その2人がお泊まり旅行?
絶っっっ対に許さないんだから!
あんな泥棒猫に盗られるくらいなら……


12 名前:乙>1[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 15:44:04 ID:uRJk/BY5
ヤンデレの焔 2

天正10年6月2日
山城国本能寺にて明智光秀の謀叛により織田信長戦死

13 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 16:14:21 ID:ZV1VV9Uq
過去スレの雑談で似たようなネタあったなあ
皆考えることは同じなのかw

14 名前:変歴伝[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 20:00:22 ID:eka351fP
初投稿です。
歴史物で、史実の人物も出てきます。
エロは、まったく自信がありません。
では、どうぞ

15 名前:変歴伝 1[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 20:44:52 ID:eka351fP
五畿七道の一つ、山陰道は多くの旅人達でごった返している。
それに目を付けた商人が水や食べ物を路上で売っているのが見える。
所変わってここはとある森の中。
「…迷っ…たこ…こはどこ…だ…」
「業盛(なりもり)様、食べながらしゃべるのは止めてください」
口の中を干し葡萄でいっぱいにしていた業盛に、平蔵は水を差し出した。
業盛が水で口を潤すと、今度は干し柿に手を出し始めた。
この二人、さっきまでは都を目指して山陰道を歩いていた。
大江の関も越えて、後少しで都に着く所だった。しかし、途中の道で、
「平蔵、見てみろ。あの森を」
業盛の指差す方を見てみると、赤松がうっそうと茂った森があった。
「あの森がどうかしたのですか?」
平蔵は訳が分からず聞いた。
「まったく、お前も鈍いな。今の季節は秋。秋といえば松茸だろ。
あれだけ赤松が生えていれば松茸もたくさん生えているに決まっているだろう」
業盛はにやにや笑っていた。きっと松茸を売って大金持ちになった妄想でもしているのだろう。
この性格はいつまで経っても変わらないな、と業盛は思った。
「業盛様、いけませんよ。私達は平清盛様の元に行かなければならないのですよ。
都まで後少しなのですから早く行きましょう」
「まったく、お前は糞真面目だな。その松茸を手土産にすれば、我々の心証も上がるだろう。
私が、ただの金儲けのために松茸を採る訳ないだろう」
そうは言っているが、業盛の顔には金という字が書いてあった。思わず、思います、と言いそうになった。
「ですが業盛様、赤松が生えているからといって松茸が生えているとは限りませんよ」
平蔵はごく当然のように言ったが、
「あれ…?」
そこに業盛はいなかった。
業盛は平蔵の話に飽きて、とっとと森に向かって行ってしまったのだ。
「業盛様…人の話は最後まで聞きなさいと、あれほど言ったのに…まだ分からないのですか。
まちなさーい」
平蔵も、業盛を追って森に向かった。
そして、今に至るのである。


16 名前:変歴伝 1[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 21:12:28 ID:eka351fP
「まったく、松茸は採れぬわ、迷うわ、最悪だな」
業盛は不機嫌そうに言った。
あなたのせいでしょう、と平蔵は言いかけたが、疲れるだけなので言うのを止めた。
さっきからどれほど歩いただろう。平蔵は空を見上げた。日は傾き、もうすぐ夜になろうとしていた。
「もう日が暮れます。これ以上動いては余計に迷いますので、今日はここで野宿にしましょう」
平蔵は辺りに落ちていた枝を拾ってくると焚火を始めた。
平蔵は乾燥米を、業盛は未だに干し柿にかぶりついていた。
「まったく、とんだ災難ですよ」
平蔵は焚火に枝を突き刺し、いじくりながら言った。
「ま…いいで…はない…か。明…日辺りに…は出ら…れるだ…ろう…」
干し柿で口の中がぐちゃぐちゃになり、しゃべりにくそうに話している業盛に、平蔵が水を差し出した。
「食べながらしゃべるのは止めてください、と何度も言っているではないですか。
それに、いい加減その呼び方止めてください」
平蔵はそう言ったが、業盛はなにがなんだか分からない。
平蔵は、やれやれと頭に手を置いた。
「私の名前は赤井源蔵景正。いったいどこから平蔵なんて出てきたのですか」
「あれ…お前の通称って、源蔵だったんだっけ。てっきり平蔵だとばっかり…」
「…もう…いいです…平蔵で…」
平蔵はひどく傷ついたようだ。
こんなくだらない口論を、二人はしばらく続けたが、だんだん馬鹿らしくなってきたので、
どちらからとなく、この口論は終結した。


17 名前:変歴伝 1[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 21:43:08 ID:eka351fP
夜も更けてますます寒くなった。平蔵は焚火に枝をくべて暖を取っていた。
業盛はその内眠ってしまった。平蔵も残りの枝をくべると眠りについた。
次の日、二人はすさまじい体のかゆみで目が覚めた。蚊やダニが、業盛と平蔵の体を蹂躙していたのだ。
歩いている時、業盛はひたすら体を掻きむしったので、血がにじみ出てしまい、
平蔵は出来たぶつぶつを、爪で押し潰し、体じゅうが十字の爪痕だらけになってしまった。
しかし、本当に悲惨な目にあったのは業盛だった。
獣の糞は踏むわ、蜘蛛の巣に突っ込むわ、蚊が執拗にたかってくるわで散々な目にあった。
怒り狂った業盛は、刀を抜いて枝を伐採し、森に火を付けようとして平蔵に止められた。
日が暮れる頃、二人は虫の息だった。特に業盛が。
「見てください業盛様、虫の死骸の山ですよ」
これは比喩でもなんでもなく、本当に虫の死骸の山が出来ていたのだ。
「一騎当千ですね、業盛様」
「それは…嫌みとして受け止めていいか…平蔵?」
「いえいえ、どんなことでもここまでやればたいしたものですよ」
「嫌みと認識して間違いないようだな…」
二人はこんな会話を交わしたが、この夜も蚊やダニにやられ、二人は惨劇を繰り返してしまった。
その日、業盛の歩いた後には虫の死骸の山が出来たのは言うまでもない。
業盛が虫の死骸の山を築いて五度目になった時、今日も今日とて業盛は虫の死骸の山作りに精を出していた。
虫の死骸の山も三合目に達した頃、二人は歩いている道が整備されていることに気付いた。
街道に出られるかもしれない。二人はそう確信した。
しかし、しばらく歩いていると、街道ではなく村に出てしまった。
二人は少し落胆したが、街道に出る道が分かるかもしれないと考えを改めた。
幸い、すぐ近くに家があったのでここから攻めることにした。
「誰かー、誰かいませんかー」
業盛が戸を叩きながら言った。すると若い女性の声が返ってきた。
「どなたでしょうか?」
出てきた女性は長い髪が印象的な美しい女性だった。二人とも思わず見惚れてしまった。
「お侍様ですか…」
刀を見た女性は一瞬顔をしかめた。
「私達はまだ誰にも仕えていないから、まだ侍ではないな。
この刀だって、使ったといえば木の伐採と、虫の死骸の山作りぐらいだ」
業盛が笑いながら言った。それに釣られて女性も笑い出した。
「面白い人ですね。それで、ここになにか…?」
「実は私達、道に迷ってしまい街道に出る道を探しているのですが、
もし知っているのならば教えて欲しいのです」
「街道に出る道ですか…今すぐ教えてもいいのですが、今日はもう遅いのですし…どうでしょうか?
今日はここに泊まっていきませんか?」
彼女はそう言うが、実際はまだ日も沈んでいないので遅いとはいえないが、
せっかくの好意を無駄にするのもよくないので、二人は彼女の提案を受け入れることにした。

18 名前:変歴伝 1[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 21:44:36 ID:eka351fP
今日はここまでにします。
変な文章になっていたらごめんなさい。
投稿の仕方にも多少不安がありますが、間違っていたらご指摘ください。
お願いします。

19 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/10(土) 21:53:59 ID:2a1xnsXz
歴史モノって珍しいんで楽しみというか。
ところで書きながら投下してるんですかねえ?
不都合が無いのであればある程度事前に書いておいてからまとめて投下の方が良いと思うけど


20 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 03:43:57 ID:6SL5xfl8
GJ!!
次回に期待!!

21 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 16:43:40 ID:h6XKE3lO
今さらヤンデレとか

22 名前:変歴伝 1[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 18:09:26 ID:LSgCYW8W
いまさらですが、出来たら修正お願いします。
書き出しの17行目の、
この性格はいつまで経っても変わらないな、と業盛は思った。
の所を、
この性格はいつまで経っても変わらないな、と平蔵は思った。
に修正してほしいのですが、お忙しくなければお願いします。

23 名前:変歴伝 [sage] 投稿日:2009/01/11(日) 18:28:11 ID:LSgCYW8W
投稿します。がんばります。


24 名前:変歴伝 2[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 18:56:48 ID:LSgCYW8W
軽い感じで来てしまったが、いまさらになってこの女性になにか不安を感じてしまった。
男二人を家の中に入れることになんの躊躇いもない所が、その際たる所である。
もしかしたら、寝込みを襲って身包みを剥ぐつもりなのかもしれない。
だが、それならば常に警戒をしていればいいのであり、襲い掛かってくるのなら、
その時は軽くひねって街道への道筋を聞き出して、さっさと村から出てしまえばいいのである。
まあ、日頃から鍛えてきたので、そこらへんのごろつきと戦ってもかつ自信はある。
業盛は考えを改めることにした。
女性は菊乃(きくの)と名乗った。ニッコリ笑って、警戒心もなにも抱かせない笑顔だった。
「菊乃さん、旦那さんとかはいないのですか?」
平蔵よ、なぜそのようなことを今聞く。
「いいえ、いませんが、それがなにか?」
菊乃の答えになにを満足したのか、平蔵は右手を握り締めていた。狙っているのか?彼女を?
「菊乃さん、私達になにか手伝うことはありませんか?」
平蔵がまたなにか言い出した。なにを言っているのだ、こいつは…。
「せっかく泊めて頂くのに、なにもしないというのも、後ろめたいですし…ねぇ…」
平蔵がこっちを向いて目配せしてきた。なぜこっちを向く。
「そうですか…でしたら明日、お米の収穫があるのでそれを手伝ってもらいたいのですが、いいですか?」
「喜んで!」
俺に選択の余地はないのか?
「決まりですね。明日はよろしくお願いしますね、菊乃さん」
有無を言わさず平蔵が決め付ける。こいつ、こんな性格だったけ、と今更ながら平蔵にそんな疑念を持ってしまった。
菊乃は所用があると言って出て行ってしまった。二人きりになり、平蔵が話し掛けてきた。
「いやー、業盛様のわがままも、たまにはいいことがあるのですね」
そうだな、と業盛もそのことに同意した。そして、自分の性格に嫌気が差してきた。
一時の利益に目が眩み、このような事態を招いてしまったのだ。
いい加減、この性格を本気で直したいと思った。
平蔵の遠回しの嫌みを聞き流していると、菊乃が帰ってきた。帰ってくるなり夕食の支度を始めた。


25 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 19:08:04 ID:f0gEb6Hj
ですから書きながら投下するのはお控えください
ここはあなたの専用スレではありません
ちゃんと一定量書き終えたものをまとめて投下してください

26 名前:変歴伝 2[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 19:11:37 ID:LSgCYW8W
料理が出来ると真っ先に平蔵が食い付いた。業盛はしばらくそれを眺めていた。
どうやら、痺れ薬などは入っていないらしい。入っていたら、さっきの嫌みの仕返しが出来るのに…。
「あの…お気に召しませんか…?」
菊乃が心配そう聞いてきた。
痺れ薬が入っていないのなら、食わないなんて法はない。業盛は野菜の汁物を啜った。
味は…美味かった…。
やることもなかったので、明日の収穫に備えて早めに寝ることになった。
二人の寝息が響く中、業盛は少し離れた所で寝ている菊乃の動作に意識を集中させていた。
なにかおかしな動きをしたら、すぐにでも行動できるようにしていたが、そのような素振りはまったく見せなかった。
やはり思い違いだったようだ。そう思うと急激に眠くなってきた。
明日は収穫の手伝いがある。早く寝なければ。業盛はゆっくりとまぶたを閉じた。
業盛が寝息を立て始めた頃、菊乃はふと起き上がり、業盛の方を見た。
顔は暗くてその表情を伺うことは出来なかった。
そして、なにかを呟いたようだが、声が小さくて聞き取ることは出来なかった。
しばらくして、菊乃は再び横になった。それから再び、菊乃が起きることはなかった。

27 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 19:13:03 ID:7Z8+62uL
さすがにスレのテンプレを守らない人にはNGしておいた
許容できる範囲を越えている

28 名前:変歴伝 2[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 19:47:28 ID:LSgCYW8W
寝起きは最悪だった。まだ日が上がらぬうちに平蔵に叩き起こされたのだ。
俺は無駄な警戒のせいで寝不足だ。こいつはいいな、得な性格をしていて。
準備は着々と進んでいく。野良仕事用の服に着替え、鎌を持ち、出発した。
田畑には既に人が集まっていた。まずは稲刈りである。平蔵は、業盛と田畑を一つ隔てての作業となった。
業盛はひたすら稲を刈り取っていった。しかし、刈り取るというよりむしろ、引き千切っていると形容した方がいい。それに、刈り残しも目立った。
そんなことも業盛は気にせず、あたかも黄金の野を駆けるイナゴのごとく田畑を蹂躙した。
さすがに危機感を感じた菊乃が止めに入った。
「あの…鎌はそんなに力を込めてやるのではなく、もっと力を抜いて、引くように切って下さい。こんな風に…」
そう言って、業盛の手を取り教えてくれた。肘が菊乃の胸に当たった。意外と…でかいな…。
これが俺ではなく、平蔵だったら昇天ものだろう。あいつ、菊乃さんのこと狙っているみたいだし。業盛は少し面白く思った。
菊乃の教えを踏まえて、業盛は稲と格闘していた。少し前より、かなりマシになっていた。
慣れてきたので刈り取る速度を上げようとすると、ちょうど休憩の時間になった。
業盛は菊乃から渡された握り飯にかじりついていた。
なんとなく横の田畑を見てみると、平蔵が他の女性と親しく話しながら握り飯を食っていた。乗り換え早いな、あいつ。
そう思いつつ、少しからかってやろうと平蔵の元に向かった。
「平蔵、誰と話をしているのだ?」
「な、業盛様!」
平蔵がこちらを見て言った。なんだその「いい所なのだから邪魔しないでくれ」と言いたそうな顔は。
あいにく、お前の邪魔をするために声を掛けたのだから、そんなことは百も承知で話し掛けているんだよ。
「で、平蔵。誰と話しているんだ?」
そう言って横の女性に目を向けた。
目に掛かる程伸びた前髪で暗いという様な印象を受けたが、鼻筋ははっきりしているし、体も引き締まっていて、菊乃とはまた違った美しさを醸し出していた。
言ってしまえば、菊乃を陽の美と例えれば、彼女は陰の美と例えられた。
「彼女は葵(あおい)さん。さっき知り合いました」
業盛と目が合った葵は、目を逸らしてしまった。警戒されてるなぁ、おい。
「…景正様…この人…誰…?…あと…平蔵って…?」
人見知りが激しいらしく、蚊の様な声で平蔵に話し掛けた。通称ではなく、忌み名(実名)の方で呼ばせている様だな、平蔵よ。
「この方は天田業盛。私の主人です。あと…平蔵はなんでもありません…」
「…そうですか…景正様のご主人様ですか…。…私…葵です。…初めまして…」
「そんなに構えなくていいよ。改めまして、私の名前は天田三郎業盛。三郎と呼んでもらっても構わないよ」
そう言って微笑み掛けたが、彼女はまた目を逸らしてしまった。とことん警戒されているらしい。
「…ふぅ…どうやら嫌われてしまった様だな。まぁ、後はお二人、仲良くしてくださいな」
そう言って業盛はその場から離れた。ささやかな殺意と共に。




29 名前:変歴伝 [sage] 投稿日:2009/01/11(日) 19:49:58 ID:LSgCYW8W
今日はここまでです。出来れば一日これぐらいのテンポで進みたいです。
頭と腰が痛いです。へんなところがないか不安です。

30 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 19:53:33 ID:8cUkxi39
>>29
次から書き終えてから投下しような?大抵みんなコピペで投下してるだろうし
変なところといえばそのくらいだ。GJ

31 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 20:33:18 ID:Z2KqBogB
まあ、過去にも書きながら投下していた人はいたし完全に悪いってわけじゃないんだが、
やっぱり間が空きすぎなのでそこは改善してもらえれば。
話はどこか暗い雰囲気があって面白そうなので期待。

32 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 20:47:15 ID:pm+XQn99
ヤンデレ家族は来ないか。

33 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 20:51:30 ID:4U6lTPL2
書きながら投下禁止なんてテンプレのどこにも書いてないけどな
それどころかぶつ切りでの作品投下もアリとまで書いてるし

34 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 21:00:15 ID:6GxcQIWZ
>>33
書きながら投下だと他の作家さんが投下しづらくなるからかな
マナーってやつです

35 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 21:44:58 ID:ttLQ0peD
まさか、紙に書いたやつを直接スレに打ち込んでるのか?
にしては時間かかりすぎだが
まあ紳士は待つのも仕事のうちだ

36 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 22:24:38 ID:rCfrNZfi
人気あるスレは言うことも違うね。

37 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 22:26:04 ID:vEVb72ME
普通書き溜めてからコピペして投下するだろ

38 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/11(日) 23:19:06 ID:P5XT5u54
>>33
それとは意味が違う

39 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 00:17:26 ID:gzaQ0t+t
みんな病んでるな

40 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 09:46:20 ID:hgEnhONI
ぽけもん 黒 投下します
第11話です

41 名前:ぽけもん 黒  激戦! 桔梗ジム! ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 09:50:38 ID:hgEnhONI
しばらくポポの頭を撫でた後、もういい時間だったので一度ポケモンセンターに戻って昼食をとった。二人に尋ねたところ、二人とも体力はまだまだ余裕とのことだったので、フラッシュを部屋に置くと僕はジム戦に挑むことに決めた。
この城都地方には八つのポケモンジムという施設があり、その施設でジムリーダーと呼ばれる国から任命されたプロのトレーナーにバトルで勝って、
勝った証であるバッジを八つ集めないと石英高原へと続く唯一の道であるチャンヒオンロードには入れないようになっている。
当然、石英高原に行けなければチャンピオンリーグに参加は出来ないわけであって、となれば当然チャンピオンとなって殿堂入りすることもできないわけである。よって、トレーナーはまずこの城都地方の八つのジムを制覇しなければならないわけだ。
ポケモンセンターを出発した僕たちは、程なくしてこの街のジムに着いた。白塗りの大きな体育館みたいな形をしていた。体育館と歴然と違う点は、壁面に大きく赤い文字で「ポケモンジム」と書かれている点か。
分かりやすいな。僕たちがジムに入ろうとすると、ちょうど二人の人間がとぼとぼと出てきた。うち一人は腕に包帯を巻いて、首から吊るようにしている。大方、ジムリーダーに挑戦して返り討ちにあったのだろう。
さすがジム戦、といったところか。やはり一筋縄ではいかないだろう。気を引き締めないと。
ドアを開けた僕の目に映ったジムの内観は、外観とは異なり異質なものだった。
床は土で出来ていて、白線が大きな長方形を作るように引かれていた。さらに白線の内側の地面は、低部と高部を比べると僕の背丈の半分はあるだろうと思われるほどの大きな凹凸がなだらかにあり、平らな場所がほとんどない。
確か桔梗市のジムリーダーであるハヤトさんは鳥ポケモンをパートナーにしていたはずだ。それにあわせて、飛べる者に有利に働くようにジムを作ってあるのだろう。自分に有利な環境で戦うってことは戦術的には正しいことなんだろうけど、なんだか卑怯な気がする。
「お、君も挑戦者?」
入り口の向かい側、正面の壁のすぐ傍に片目を覆い隠すほどの長い前髪を持った男と、ポポに似た見た目のポケモンが二人いた。つまり相手もポポと同じ種族ということだろう。
ジムリーダーの使うポケモンはある程度規制されていて、序盤のジムではジムリーダーはそんなに高い経験を積んだポケモンは使えないようになっている。
しかしポケモンの年齢や経験自体は低くてもジムリーダーによって鍛え抜かれている上に、ジムリーダーの的確な指示と道具の使用があるから、決して侮れはしない。
「はい、そうです」
僕はその男の呼びかけに答えた。
「じゃあ、早速始めようか。ハタ、クウ、大丈夫だね?」
彼は脇に控える二人のポケモンに指示を出している。この様子からすると、彼がジムリーダーのハヤトさんみたいだ。
「大丈夫です」
「はい、行けます」
そう答えて二人の少女が進み出た。年齢の低いほうでもポポよりは年上に見える。なにより、二人ともうちのポポより大分賢そうな顔つきをしている。いや、賢そうな顔つきをしているから年上に見えるだけなのかな。

42 名前:ぽけもん 黒  激戦! 桔梗ジム! ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 09:51:30 ID:hgEnhONI
「いいんですか? 先ほどバトルがあったみたいですけど」
「構わないさ。先ほどの彼、気絶してしまって、しばらくここで休ませていたんだよ。だから僕らは十分に体力を回復している。それに、最初から相手にもならなかったしね」
随分と自信があるようだ。そしてこの自信は実力による裏づけのないものではないだろう。
「僕はハヤト。見てのとおり、ここ桔梗市でジムリーダーをしている。知ってのとおり、鳥ポケモンをこよなく愛する、鳥ポケモン使いさ」
愛するって、この人は何で自分のフェチを告白しているんだろう。それ以前に、一夫多妻制を公言してはばからないような人だな、この人は。そりゃあ、ジムリーダーだから多くの女性を養えるような財力は持っているんだろうけど……。
そういえば、ジムリーダーという人種は皆パートナーとするポケモンにかなりの偏りがあるんだっけ。そう考えると、なんだか変態集団みたいだ。
……いやいや、僕は何を考えているんだ。目の前の人のせいで、一瞬パートナーイコール恋愛対象、みたいなおかしな錯覚を覚えてしまった。そ、それはおかしいぞ! そしたら僕だってそういうことになってしまうじゃないか!
ハヤトさんは僕の葛藤など知る由も無く、話を進める。
「それに、僕のパートナーで今回君達の相手をする、ハタとクウだ」
「ハタです」
そう言って、年下のほうの子が軽く会釈した。こっちがハタさんか。すると年上に見えるほうがクウさんだな。
「クウです。よろしく」
「僕はゴールドです。よろしくお願いします。こっちが僕のパートナーの香草さんと、ポポです」
僕が紹介するのにあわせて、二人も軽く会釈した。
「ほう、君も中々話の分かる人間みたいだね。いい趣味をしている。しかし、そっちの草ポケモンはないんじゃないかい? 草ポケモンなんて所詮は鳥ポケモンに踏みにじられる存在、それ以外に価値はないね」
「き、聞き捨てならないわね。何か言った? 鳥なんて劣等種族好きの変態」
ハヤトさんの変態的かつ挑発的な発言に香草さんが噛み付いた。
香草さん、それブーメランだよ。身内にもダメージだよ。劣等種族って、それじゃあポポの立場はどうなるのさ。
「劣等種族ってなんですか?」
そう思っていたらポポが僕に小声で尋ねてきた。よかった、無知は罪って言うけど、時には身を助けることもあるんだね。
ハヤトさんはやれやれ、といった様子で、香草さんの発言を意に介していないようだ。
「とにかく、誰が戦うか決めようよ」
「私がいく!」
「ポポがいくです!」
僕が言うと、二人同時に名乗りを上げた。はあ、予想通りとはいえ、困った。
「何よ、アンタみたいなバカじゃ相手にならないわよ!」
「香草サンのほうがバカです! あいしょうを考えてないです!」
「な、アンタだけにはバカって言われたくないわよ! このバカ!」
「バカじゃないです! バカは香草サンです!」
「そもそも、アンタ、サンまで含めて私の名前だと思ってるでしょ! 私の名前は香草チコなんだから!」
「で、でもゴールドは香草サンって呼ぶですよ?」
「さんは敬称だよ。ええっと、敬称っていうのは、丁寧な言い方っていうか……」
「分かったです。じゃあチコって呼ぶです」
「……アンタに呼び捨てにされるのもなんか癪ね」
「あー、二人ともやめようよ」
「ハハハハハ、随分と愉快な子供たちだね。まだ僕に挑むには色々と早いんじゃないかな?」
ハヤトさんが野次を飛ばしてきたが、いちいち構っていては話が進まないので無視する。
「じゃ、じゃあじゃんけんで決めよう! じゃんけんで! それで、勝ったほうが先に戦う、負けても勝っても一回交代。これなら文句ないでしょ?」
「あるわよ!」
「あるです!」
予想通りの二人の返答に、僕は額を抑えた。

43 名前:ぽけもん 黒  激戦! 桔梗ジム! ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 09:52:12 ID:hgEnhONI
「二人とも、自分一人で十分だって言いたいのは分かるけど、相手はジムリーダーなんだよ? こんなことでもめてる場合じゃないよ」
「ふん、あんな変態、私の敵じゃないわ!」
「おお、頼もしいね。せめて彼女達のウォームアップになればいいけど」
ハヤトさんはこっちの発言が聞き捨てならないのか、単純に暇なのか、さっきからいちいち口を挟んでくる。
もうハヤトさんうっとうしいんでしばらく黙っててください。
「分かったから、はい、ジャンケン――」
と、ここまで言って気づいた。
「そもそも、ポポはジャンケンできないね」
翼だしね。手ないしね。
「ジャンケンってなんです?」
ポポは不思議そうに小首をかしげている。尋ねてくるのが遅いよ……。
「このバカ!」
香草さんはポポに向かって怒鳴る。このままだとまた口げんかになるのは目に見えていた。だから僕は再び喧嘩になる前に慌てて打開案を打ち出した。
「じゃ、じゃあクジで決めよう! 赤い色がついていたほうが先に戦う、それ以外のルールはさっきと同じで」
というわけで、僕はティッシュを使い急遽即席のクジを作った。
「はい、じゃあ同時に引いて――」
と、ここまで言って気づいた。
「そもそも、ポポはクジを引けないね」
翼だしね。手ないしね。
「クジってなんです!」
今度は抗議するように翼をバサバサと震わせる。どの道遅いよ……。
「……もう黙ってなさい」
香草さんも、もう馬鹿にする気力もないらしい。
「しょうがない、香草さんがクジ引いて、あまったのがポポのってことにしよう」
「ホントに……しょうがないわね」
香草さんは手で半眼を覆いながら、クジに手を伸ばした。引かれたティッシュの先には、赤いインクがしみこんでいた。
「赤ね」
「赤だね」
「赤です」
「じゃあ香草さんが先行だね」
ようやく順番が決まった。
まさかバトルじゃなくてバトルの順番を決めるだけでこんなに疲れることになるなんて。
僕は安堵の息を吐きながら香草さんの肩に手を置いた。
「やった! さあ来なさいでかいほう! ギッタギタにしてやるわ」
香草さんはとても嬉しそうに白線の内側に入る。
「おいおい、鳥ポケモンに対して草ポケモンを出してくるとは。この僕も随分と舐められたものだね」
ハヤトさんは前髪を掻き揚げながら言った。
「うっさい! 早くしなさい!」
「君みたいな品のない子供相手に本気を出すのは大人げないってものだね。いっておいで、ハタ」
ハヤトさんの言葉を受けて、ハタさんも白線の内に進み出た。
「では、これより若葉町出身ゴールド対桔梗市ジムリーダーハヤト、試合を開始します。」
突然、そんな言葉がアナウンスされた。驚いてあたりを見回せば、ちょうど両者の中間あたりの端に、審判と思しき、赤と白の二つの手旗を持った男が立っていた。胸にはピンマイクと思しきものが付けられている。さすがジム、なんだか本格的だ。
彼は続けて、試合のルールを説明した。ルールと言っても、普通のバトルのものと特に変わらないものだった。
違うところといえば、白線の外に出てしまったら負けになってしまうことくらいだ。同意を求められたので、僕、ハヤトさん共に同意した。僕達の同意を受けて、審判は赤い旗と白い旗を高く掲げ、一気に振り下ろした。
「試合、開始!」
そのアナウンスがなされるやいなや、ハタさんはすぐに上空へ飛び上がった。
「香草さん、蔦で相手の足を掴んでそのまま地面に引き摺り下ろすんだ!」
「言われなくても!」

44 名前:ぽけもん 黒  激戦! 桔梗ジム! ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 09:53:06 ID:hgEnhONI

「ハハハ、ハタはそんな蔓なんかにつかまるほど遅くは……」
ハヤトさんが言い終わらないうちに、ハタさんは蔦につかまりそのまま地面に強烈に叩きつけられていた。
地面に叩きつけられたハタさんは小さく痙攣するのみで、ハヤトさんの呼びかけにも、審判のカウントにもまったく反応しない。
「ふん、目障りな小鳥ごときが、この私に勝てるとでも思ったわけ? 生物として格が違うのよ、格が」
香草さんはハタさんを見下ろすと、そう吐き捨てた。
「は、ハタ戦闘不能!」
審判がテンカウントを終え、そう宣言すると、救護班と思しき人たちが慌ててハタさんを担架に載せてフィールドの脇に運び出した。
「やりすぎだよ香草さん! 引き摺り下ろすだけだって言ったじゃないか」
僕は思わず香草さんに怒鳴る。ハタさんの様子はただ事ではなかった。気絶くらいで済んでいればいいけど、もし命に関わるようなことがあったら一体僕はどうすればいいんだ。
「アンタはいちいちやり方が消極的過ぎんのよ! 敵に容赦なんていらないわ! それに、殺すほど強くはやってないわよ」
その自信は一体どこから来るのだろうか。でも、ポケモンは人間と違って丈夫だし、香草さんがそういうのなら大丈夫なのかな……。
僕は白線の外でハタさんに応急処置なのか治療なのかを施している救護班の人を見やる。救護班の人はスプレーのようなものをハタさんに浴びせている。
傷薬の類だろうか。スプレーを浴びせられること数十秒、どういう原理かは分からないけどハタさんは意識を取り戻した。僕はほっと胸を撫で下ろす。
「ほら。言ったとおりでしょ。さあ! 早く来なさい次の鳥!」
香草さんは語気荒くハヤトさんに呼びかける。なんと好戦的なのだろうか。
「約束が違うです!」
もう香草さんは誰にも止められない。僕にはそう思われたが、そう思ったのは僕だけだったのかもしれない。自分に代わらず再び対戦しようとしている香草さんにポポが食って掛かった。
「知らないわよそんなの!」
見事な否定だ。めちゃくちゃなことを言っているというのに、ここまでくるといっそ清々しくすらある。でもあっさりその清々しさに従うわけにはいかない。
「香草さん、ルールは守らないと」
「……分かったわよ」
香草さんは僕の予想に反してあっさりと引き下がった。絶対にまた一騒動起こすかと思ったのに。
「クウ、早く相手を倒してあの女をフィールドに引きずり出してやれ。敵討ちだ」
ハヤトさんは心中穏やかではないらしい。口調はまだ冷静だけど、雰囲気からは怒りの感情が透けて見える。自分の自慢のパートナーがあっさりと一撃昏倒させられたことにプライドが傷つけられたのか、それとも自分の愛するものが酷く痛めつけられたことに対して怒ったのか。
「はい、マスター」
クウさんは凛とした表情で、フィールドに足を踏み入れた。
両者がフィールドに出揃うと、再び審判によって戦闘開始が宣言された。
今回は間違いなく空中戦になるだろう。それなら先に後ろをとったほうが有利になる。

45 名前:ぽけもん 黒  激戦! 桔梗ジム! ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 09:53:50 ID:hgEnhONI
僕の予想通り、二人ともバトル開始直後に宙に浮いた。
「ポポ、電光石火で相手の後ろに回りこめ!」
「クウ、電光石火で回避」
ハヤトさんが僕の仕掛けるのを待っていたのか分からないけど、僕たちが初手を取ることができた。ポポは素早くクウさんの背中側に回り込む。しかし相手も高速で回避した。だが、電光石火のキレはクウさんよりポポのほうが上に思える。
「ポポ、追いつけるぞ! 追いついたらそのまま背中に飛び掛るんだ!」
僕はこのまま一気に押し切れると踏んで、ポポにそう指示を出した。
僕はこの時点ではまだ気づいていなかった。ハヤトさんの戦略にまんまと乗せられていたことに。
クウさんは素早く、上下左右、縦横無尽に、自然界に比べれば圧倒的に狭いジムの内部を器用に飛び回る。最高速度はポポのほうが上なのだが、急な方向転換の所為で中々追いつけない。
しかし僕は彼女の動きを見ているうちに、急な方向転換をとる前にはある程度減速することに気づいた。これでクウさんの行動を少しだけど先読みできる。僕はそれを踏まえてポポに指示を出す。
僕の指示のお陰か、クウさんに攻撃がかすり始めた。後一歩。後一歩で相手に大きなダメージを与え、地面に落とすことができる。
何度目か、再び壁が迫ったときだった。このまま進んでいけば確実に壁に激突する。しかもクウさんの飛んでいる角度からして、彼女は急な方向転換をせざるを得ないと思われた。
これはチャンスだ、と思った。クウさんが減速したところに突っ込んでいけばいいだけだ。実際、ポポにはそれができるだけの速さがあった。
「ポポ、速度を上げるんだ!」
だから僕はこんな指示を出した。
いよいよ壁が迫ったとき。クウさんは今までと違い、まったく減速することなしにV字に曲がって壁を回避した。僕は勝ちを確信して、完全に油断していた。
嵌められた。そう気づいたときには、もはやポポはすぐに止まれるような速度ではなかった。しかもポポはクウさんと違い、急カーブの類の技術を持っていない。
ぶつかる!
僕は怖くて目をつぶった。しかし、衝突音は聞こえてこない。僕は恐る恐る目を開けると、ポポは壁の手前でかろうじて止まっていた。僕はホッと胸を撫で下ろす。
「ポポ、場外! 勝者クウ!」
が、レフェリーの声によって僕はすぐに現実へと引き戻された。なんとか壁にはぶつからなかったものの、白線からは明らかにはみ出していたのだ。
「ゴールド、ごめんなさいです……」
ポポは明らかに肩を落として、ふらふらと戻ってきた。目の端には涙の粒が浮かんでいる。
「謝るのは僕のほうだよ……あんな見え見えの策略にまんまと乗せられて……。周りが見えていなかった。ポポは良くやったよ。お疲れ様」
そう労いの言葉をかけたものの、ポポは相変わらず落ち込んだままだった。
今回の敗北の責任は明らかに僕にある。慰めとかそんなのじゃなくて、本当にポポが落ち込む必要は無いのに。
溜息を吐きそうになるのを寸でのところで堪えた。今溜息をついたりなんてしてしまったら、ポポが負けたことでポポに落胆しているのだと誤解されかねない。
「ハハハ、バトルは単純な強さばかりでやるものでないことが分かってもらえたかな。特に、そちらの凶暴なお嬢ちゃんには」
勝ったハヤトさん上機嫌だ。
その挑発を受けて、香草さんは目を細めてハヤトさんを睨みつける。
「殺……」
「殺しちゃダメだよ香草さん!」
物騒な単語を吐きながら、ゆらりと体を相手のほうに向けた香草さんをすぐさま宥める。
彼女なら、本当にやりかねない。
「だってあいつら卑怯じゃない!」
香草さんは僕の制止を振り切ろうと僕に食って掛かる。
「ハハハ、卑怯でもなんでもない、ただの戦略さ。まあ君みたいな野蛮な子には分からないかもしれないけどな」
またこの人は余計なことを……。
「殺……」
もうすぐさま飛び掛らんばかりの香草さんの進路を塞ぐようにして香草さんを抑える。
「だからダメだって香草さん! アレは僕が迂闊だったのもいけなかったんだ」
ハヤトさんの言うとおりだ。バトルは単純な強さばかりでやるものではない。もしそうなら、トレーナーなんて何の価値もない。

46 名前:ぽけもん 黒  激戦! 桔梗ジム! ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 09:55:13 ID:hgEnhONI
相手の種族、性格、相手トレーナーの傾向、そして自分のパートナーの種族、性格、自身の傾向、そして持っている道具、地形、天候、他諸々。
それらを考慮し、最善と思われる作戦を考え、パートナーに分かりやすく指示を与え、パートナーが自分一人で戦うよりも有利に戦えるようにする。
それこそトレーナーの役割だ。僕は、ポポや香草さんの強さに甘えていたのかもしれない。なにせ二人ともとても強いから、僕が特に何も考えず、何も指示を与えなくても彼女達は結果を出せてしまった。
そのことが僕自身の怠慢を生んだのかもしれない。しかし、同じ失敗は二度は繰り返さない。
クウさんの能力、ハヤトさんの考え、香草さんの能力と性格、それらを考慮し――それをすべて考えられていたというのは僕の思い上がりかもしれないけど――、僕は作戦を考えた。
「だから今度は……」
僕は作戦を伝えようと香草さんに顔を寄せる。一瞬、香草さんが驚いた顔をしたかと思うと、次の瞬間には僕の腹部に香草さんのボディーブローが突き刺さっていた。
こうかは ばつぐんだ!
「ご、ゴールド!?」
体中からいろんな体液を噴き出しながら地面に倒れた僕に、目線を合わせるように彼女も屈みこむ。
体重の乗ったいいパンチだった。格闘技のことは良く知らないから、本当のところどうなのかは分からないけど。
僕の属性は間違いなくノーマルだな。一撃で瀕死になりそうだ。
「ち……違うんだよ。ちょっと……耳打ちをしようかと思って……」
僕は自分の目に浮かんだ涙を拭いながら、誤解を解こうと説明する。
香草さんは僕にあまりいい感情を持っていないのを忘れていた。でも、さすがにこんな力で思いっきり殴られるのは想定外だったな。
「大丈夫!? で、でも、急にあんなことしたアンタがいけないんだからね!」
彼女はツンと僕から視線逸らす。
そうだよね、好きでもない相手にいきなりにじり寄られれば、そりゃあボディーブローだって出ちゃうよね。しょうがないよ、うん。
「うん……そのとおりだよ。昼ご飯が喉の辺りまで上がってきたけど、もう大丈夫だよ……。それでさ、ちゃんと耳打ちするから、香草さんには絶対に指一本触れたりしないから、だからちょっと耳を貸してください」
僕はそう言いながら起き上がると、荒い呼吸を整える。
「だ、だからそういうつもりじゃなくて……」
香草さんの弁明は嬉しいけど、今はそんなフォローを長々と聞くつもりはなかった。
香草さんの耳に口を近づけると、僕は今回の作戦を説明する。
香草さんに近付くと、彼女の頭の葉っぱから漂ってくる甘い香りがことさらに強調されて感じる。
それに、ただ耳打ちしているだけなのに、香草さんは「ひゃ!」とか、「はうっ!」とか、悩ましい声をあげてくる。耳が弱いのかな。でも、こう、僕の精神衛生上あまりよろしくないから、できれば抑えてもらえると嬉しいんだけどな……。

「焼き付け刃の作戦が俺に通用するかな?」
「やってみなくちゃ、分かりませんよ」
不敵に微笑んでくるハヤトさんに対して、僕も笑みを返してやった。
香草さんとクウさんはフィールド上で互いに睨みあっている。
「挑戦者ゴールド、チコ対ジムリーターハヤト、クウ……バトル開始!」
今度も、審判のバトル開始の宣言と共にクウさんは空中へと飛び上がった。
「香草さん、蔦で捕まえて!」
僕の命令に答えて、香草さんは無数の蔦をクウさんに向けて伸ばす。が、クウさんの速度はポポよりは遅いとはいえハタさんより上、しかもハタさんのときのように油断してないときた。
クウさんは先ほどのポポとのバトルでの疲労もあるはずなのに、まったくそれを感じさせない。先ほどのように何もせずに捕まえることは難しそうだ。とはいえ、ここまでは予想通りだ。
「香草さん、眠り粉!」
僕が指示を出すと、香草さんの頭の葉っぱと袖口から、無色の粒子が噴出した。
細かい粒子に太陽の光が乱反射して、香草さんの周りがキラキラと輝く。
それは、とても戦闘中とは思えないような幻想的な光景だった。
「フフ、自分の周りを眠り粉で覆ってしまえば攻撃されないと考えたのかい? 甘いね! クウ、風起こしで彼女の周りの眠り粉を吹き飛ばせ!」

47 名前:ぽけもん 黒  激戦! 桔梗ジム! ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 09:56:26 ID:hgEnhONI
クウさんは空中で激しく羽を羽ばたかせることによって香草さんの周りに立ち込めていた眠り粉を吹き飛ばした。しかし、これこそ僕の狙いだった。風を起こすために羽ばたいている間は、彼女の移動は制限される。
「香草さん!」
「分かってるわよ!」
香草さんは強風の中で瞬時に数本の蔦を束ね、クウさんに向けて勢いよく伸ばす。
「風起こしで身動きがとり難くなっている内に蔦で捕らえる作戦か。甘いね! そんな柔な蔦ごとき、この風で容易に切り裂ける!」
「この私を、その辺の柔なのと一緒にしないでよねぇ!」
確かに、一本じゃこの風に耐えるのは難しいだろう。でも、何本も束ねた蔦ならば、多少の風じゃ容易には切り裂けないはずだ!
僕の予想通り、蔦は見事にクウさんを捕らえた。
「何!」
「おおおおおおおおおおおおおおお!!」
ハヤトさんは慌てるが、もうすでに勝負はついていた。香草さんは雄叫びと共に、クウさんをブンブンと振り回し、勢いをつけて壁に向かって投げつけた。壁にしたたかに叩きつけられたクウさんは、そのままずるずると地面へと落下した。
「ク、クウ場外! 勝者チコ! よって挑戦者ゴールドの勝利!」
審判によって、僕の勝利が高らかに宣言された。
「今度はちゃんと加減したわよ?」
またやりすぎだよ、と諌めようとする僕を制するように彼女は言う。
加減したといっても、相手は今度も気絶してるみたいだけどね……。

戦いを終えた僕とハヤトさんは、フィールドの中央で向かい合った。
「クソッ、俺の負けだ。草ポケモンだからといって、甘く見ていたようだ……。だが、彼女達の実力はまだまだこんなものじゃない。それを誤解しないで欲しい。
それと、これがこのジムのバッジ、ウイングバッジだ。それにこれも持っていくといい。これは技マシン31、泥かけだ。君のパートナーに覚えさせるといい」
「ありがとうごさいます」
僕はハヤトさんからバッジを小包を受け取った。
「ウイングバッジ、ゲットだぜ!」
僕はバッチを高く掲げると、天井に向かって大きな声でそう言ってみた。
「どうしたの突然」
香草さんに怪訝そうに見られた。僕は慌てて弁明する。
「い、いや、なんだかこう言わなきゃいけない気がしてさ」
「ふーん。変なの」
そう言って、香草さんは上機嫌にクスクスと笑った。

48 名前: ◆wzYAo8XQT. [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 09:58:22 ID:hgEnhONI
投下終了です
サブタイトルはあまり考えずにつけてるので、本文の内容とそぐわなくてもご了承ください

49 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 10:06:41 ID:UqF7+w/V
待ってました!GJ

50 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 10:14:37 ID:EAWUoW1i
グッジョブ!!

51 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 10:49:44 ID:WFSrqLvP
GJ-

52 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 11:14:00 ID:FHldhcFj
キター!!!!!!
GJ!

53 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 11:15:26 ID:SVOaVGJ9
やはり、ヤンデレはレナみたいな女の子に限るわ

54 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 11:24:37 ID:cpwpISGN
>>53
帰れ

55 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 12:51:33 ID:1qV+KQ5J
GJ!
そういやジムリーダーで思いだしたけど
金銀にはアカネにミカンが・・・ゴクリ。

56 名前:変歴伝 3[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 13:59:19 ID:+i2fP80o
投稿します。
前回は管理者、閲覧者の人たちに迷惑をかけて申し訳ありませんでした。
コピペの意味がよく分からず、しばらく考え込みました。
次からはこのようなことがないようにがんばります。
ではどうぞ。

57 名前:変歴伝 3[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 14:01:12 ID:+i2fP80o
休憩時間が終わり、作業が再開した。
こつをつかんだ業盛は、速度を上げて稲を刈り取っていき、さらに刈り取った稲を干す作業も行った。
全作業を終わらせ家に帰る頃、すでに日は沈んでいた。
「あーよく働いた。今日はぐっすり寝て明日の出発に備えるとするか」
「…そうですね…」
なにやら平蔵が暗い。その理由は考えるまでもない。少し鎌をかけてみるか…。
「そんなに葵さんと離れるのが嫌か?」
「い…いえ、そんなことは…」
動揺しているな。分かり安すぎる。
「そう隠すな。今日、お前等二人を見ていたが、よっぽど気が合った様に見えたぞ」
「た…確かにそうですが…これ以上出発を延期するのは…」
まったく、そんなことを心配しているのか。だったら仕事を手伝うなどと言わなければいいものを…。
まあ、仕方がない。少し助け舟を出してやるか。
「菊乃さん、もうしばらくここに滞在したいのですが、よろしいですか?」
「えっ…まあ…いいですけど…どうかしたのですか?」
「いえいえ、たいしたことではありません」
平蔵は驚いて業盛を見ている。ここは一つ、いいことを言っておかないと。
「お前の決心が付くまでここにいるがいい。お前が葵さんとどうなろうと、私はなにも言わないよ。まあ、悔いを残さないことだな」
そう言うと、平蔵が泣きながら「ありがとうございます」と頭を下げて言った。
そんな顔を見て、いまさら見返りを期待しているなど口が裂けても言えない、と業盛は思った。
次の日から、平蔵がニコニコしながら農作業に向かっている。
農作業は葵さんと話すための口実でもあるが、まあ、作業自体はやっているので文句は言われないだろう。二人の仲が深まっていくのは、遠くから見ていても察することができる。
そして、見ているこっちは非常にいらいらした。
帰り道、平蔵が駆け寄ってきて言った。
「業盛様、明日、葵さんに家に招待されることになりました」
速いなあ、おい。平蔵、お前、彼女になにを言ったんだ。いくらなんでも展開が速すぎるだろう。
「これも全て業盛様のおかげです。本当にありがとうございました」
平蔵が笑顔で頭を下げた。前言撤回。やっぱり見返りを要求しよう。それも倍の量を。
家に帰ってから、平蔵から散々のろけ話を聞かされ続けた。むかむかしてきたので業盛は夜風に当たりながら散歩にしゃれ込むことにした。


58 名前:変歴伝 3[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 14:02:07 ID:+i2fP80o
急がなくては。決心が付くのに時間が掛かってしまった。
私は胸の辺りを少し撫でた。冷たい、ひんやりとした感触が伝わってきた。
これは決別の証。今までの全てと決別するための証。
あの女はまだ待っているのだろうか。私は待ち合わせている森に向かった。あそこならば誰にも見られる心配はないからだ。
女は待っていた。腕を組んで、さぞ不機嫌そうな顔をして。
「あんた、私をこんな時間に呼び出してなんの用だい」
女の顔は怒りで酷く歪んでいる。醜い。彼はなぜこのような女に声を掛けたのだろう。こんな女と話すのも虫酸が走るが、言わなければならない。
「…あ…あの…」
このような時に、私はいつものようにどもってしまう。それが口惜しかった。
「…もう…これ以上…景正様に声を掛けないで…ください」
言った。途切れ途切れだけど言えた。すると女の顔が少しずつ赤くなってい
った。
「はあ、あんたなに言ってんの?私が誰に声を掛けようと私の勝手でしょう。なんで私があんたにそんなことを咎められなきゃなんないのよ」
やはりこれだけでは分からないらしい。低脳な女だ。ならば低脳でも分かるように説明しなければなるまい。
「…どうしても…どうしてもなんです…。…私…景正様が他の女性と話しているのを見ていると…胸が苦しくて…苦しくて耐えられなくなるんです。…だから、もう景正様に声を掛けないでください。それだけでいいんです。お願いします」
「はあ?あんた、頭おかしいんじゃないの?そんなことで胸が苦しくなる?医者に見てもらったほうがいいんじゃないの?そんなくだらないことに呼び出して…時間の無駄だったわ」
これだけ言っても分からないか…。所詮はけだもの。けだものは男に腰を振るしか能がないのだ。私が理解を求めたのが間違いだったのかもしれない。
女は私に背を向けている。考えるより先に、私は胸から包丁を取り出して女にぶつかった。
女が振り向いて驚いたような顔をした。その顔は滑稽だった。
最初からこうすればよかったのかもしれない。けだものと交渉してもなんの進展もないことぐらい初めから分かっていた。でも、やはりどこかに良心が残っていたのかもしれない。でも、それも吹っ切れた。
私は包丁を捻りながらさらに深く、深く突き刺していく。グチュ…グチュという嫌な音が響く。
女は私に抵抗らしいことをしなかった。ただ「やめて…助けて」と、か細くつぶやくだけだった。
いい加減その声も聞き飽きてきた。私は突き刺している包丁をえぐるようにして引き抜いた。勢いよく血が噴き出してくる。包丁には太い管が巻きついていた。
「…見て…包丁引き抜いたら、あなたのはらわたも出てきちゃった。…もう、助からないわね…」
私はおどけて言ってみせた。女はこの世の終わりでも見るような顔をして自ら血の海にその身を浮かべた。
私は女の脇腹からはみ出ているはらわたを踏み潰した。グチャ…という音と鼻を突き刺す悪臭がした。
私は笑っていた。変わった。変われたのだ。今だったらなんでも出来そうだ。こんなにすがすがしい気持ちは何年ぶりだろう。
「あーあ、服が汚れちゃった」
服は女の返り血で黒く染め上げられていた。
「この服はまたいつかのために取っておこっと」
またいつか、この服を着なければならないときが来るかもしれないし…。
そういえば景正様、いつも菊乃さんと一緒に来てたなあ。あの人とはどんな関係なんだろう?
…もし付き合っていたら…どうしよう?その時は…。
私は月を見上げて笑っていた。月は狂おしいほど美しい満月だった。


59 名前:変歴伝 3[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 14:04:39 ID:+i2fP80o
とんでもないものを見てしまった。あの葵さんが…蚊も殺せそうにない葵さんが人を殺したのだ。
森に入っていく葵さんを付けてみただけなのに、なぜこのようなことになってしまったのだろう。
このことを平蔵に告げねば。そして二人を別れさせなければならない。
恨まれるだろうなぁ。しかし、これも平蔵のことを考えてのことだ。
家に帰るなり、平蔵に今さっきあったことをすべて告げた。平蔵はポカンと口を開けている。
「業盛様、なにを言っているのですか?葵さんがそんなことをするわけないでしょう」
「本当のことなのだ。葵さん…いや、葵に近付くのは危険だ。明日は葵に話しかけられても無視しろ。家にも行くな。いいな」
「なんで業盛様にそのようなことを言われなければならないのですか。業盛様、言いましたよね。
『お前が葵さんとどうなろうと、私はなにも言わない』と。あれは嘘だったのですか?」
「嘘じゃない。本当だったさ。しかし状況が変わったのだ。お前がこのまま葵と付き合ったら、お前は間違いなく殺される。
私はお前のためを思って言っているのだ。頼むから言うことを聞いてくれ」
これだけ言っても平蔵は首を縦に振らなかった。再び説得しようとしたが平蔵は聞きたくないとばかりに横になって寝てしまった。
こうなってしまっては平蔵はてこでも起きない。仕方がない。明日、時間いっぱい説得しよう。それで駄目なら強硬手段に出るしかない。
来てほしくない朝が来た。今日、平蔵が帰らぬ人になるかも知れないのだ。
目の前で知人が死ぬのはとても後味が悪いことだ。朝起きて再び平蔵を説得する。しかし平蔵はしつこいとばかりにさっさと支度して出て行ってしまう。
人がこれほど言っても話を聞かない平蔵にいい加減いらいらしてくる。
平蔵は今、葵としゃべっている。今まではなんとも感じなかったが、葵の平蔵の見る目がおかしい。目に輝きがなく、まるで底なし沼でも覗くかのように淀んでいる。
それは背筋をなめられるかのような嫌悪感を抱かせた。
もう時間がない。早く説得せねば。
「平蔵、考え直したか?」
葵の家に行く準備をしている平蔵に問い掛ける。
「まだ言っているのですか?いい加減にしてください。私は考えを改める気はありません。そろそろ時間なので失礼します」
やはり駄目か…。仕方ない。やはりこうするしかないらしい。
「平蔵…」
平蔵に呼びかける。平蔵が不機嫌そうに振り向く。
俺は平蔵の腹部に殴り掛かった。
「な…業盛様、なんのつもりですか!」
平蔵は跳躍して避けた。当然のように平蔵が驚き、非難の声を上げる。
「もはや…もはやこれしか方法がないのだ」
再び一歩踏み込んで平蔵に殴り掛かる。しかしそれは誘いの手だ。本命は平蔵が一歩引いた直後に回し蹴りを叩き込むことだ。だが平蔵はこれを読んでいた。回し蹴りを腕でいなした。
「業盛様、あなたがそこまでして私と葵さんの仲を裂きたいのは分かります。ですがお願いします。行かせてください」
「駄目だ。何度も言うが行ったら殺される。私は助けられる友を助けずに後悔をしたくないのだ。そのためなら、私はお前の手足をへし折ってでもこの村から出て行く」
平蔵は構えを崩さない。今まで平蔵と組み手をして、平蔵が俺に勝ったことはない。構えを崩すことは敗北に繋がる。
しかし、平蔵が構えを解いた。諦めてくれたのだろうか。
「業盛様、私があなたと戦って勝てるとは思いません。今まで何度も負けているのですからね。…ですけど、私にもあなたに勝てるものがある」
平蔵が足元を蹴り上げた。砂が舞い上がり一瞬平蔵を見失った。平蔵はその隙に逃げ出した。
しまった。平蔵は俺より足が速かったのだ。くそ、撒かれたら探すのが面倒になる。
そう思い走り出そうとすると誰かに手を掴まれた。
「き…菊乃さん…」
手を掴んだのは菊乃さんだった。
「放してください。このままでは平蔵を見失ってしまう」
「業盛…様、行かないで…ください…」
なぜこのような時そのようなことを言い出すのだろう。菊乃さんは保護欲を掻き立てるような潤んだ瞳で見つめてくる。しかし、今はそれ所ではない。平蔵の…友の危機なのだ。
俺は菊乃さんの手を振り払った。後ろから声が聞こえる。泣き叫ぶ悲痛な声だ。胸が痛くなったが、今はそれを拭い去り平蔵を追った。


60 名前:変歴伝 3[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 14:06:40 ID:+i2fP80o
投稿終了です。
とりあえずこれでいいのでしょうか。
非常に不安です。
また、少し忙しいので、しばらく書けません。
では、またいつか。


61 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 14:43:28 ID:8N0NcqAz
GJ

62 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 15:43:42 ID:oVR3cw+d
>>60
乙乙、盛り上がってまいりました。
菊乃さんにもぜひ病んでもらいたいw

63 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 18:53:23 ID:YCbnbYKd
パソコン慣れしてないのかな?
ともかく応援するぜ

64 名前: ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 20:49:02 ID:ZYnT4MCg
お久しぶりです。
本来ならもうすこし間隔をあけて投下すべきなんですが、
パソコンの利用時間が限界に迫っていて、次はいつ使えるか分からないので今投下します。
ご容赦下さい。

65 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 20:49:53 ID:LwRP0GbY
GJ!!
葵さん病むの早いなw

66 名前:天使のような悪魔たち 第9話 神坂 明日香 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 20:51:24 ID:ZYnT4MCg
「迎えに来たよ、お兄ちゃん。」

声の主は身長145cm・茶髪のツインテールで、フリフリのスカートを身につけた幼女…そう、明日香だった。
お兄ちゃん、なんて呼ばれたのは小学校時代以来だ。懐かしいなぁ。

「こんな時間に一人で出歩くなんて、変なオジサンに捕まっちゃうぞ?」

俺は軽くジョークを飛ばす。こういうときの明日香のリアクションもお決まりだ。

「私だっていつまでも子供じゃないんだからね!」
「いや子供だろ、見た目は。」

すかさず的確な突っ込みを入れる。明日香は「もー!お兄ちゃんてば!!」と怒って―――

ばふっ、といきなり俺に抱きついてきた。かすかに石鹸の香りが漂う。月明かりに照らされた茶髪が、とてもきれいだ。何で今日はそんなことが気になったんだろう……

「お兄ちゃん…すき。」
「…俺もだよ、明日香。」

くしゃくしゃ、と髪を撫でてやる。明日香はまるで額を撫でられた猫のように身をよじる。猫にしては少々大きいが…かわいい。
だが、次の言葉で俺の中からそんな余裕は消し飛んだ。

「ちがうの…私はお兄ちゃんを、お兄ちゃんとしてじゃなくて…」
「…え?」
「異性として、一人の男の子として……神坂飛鳥を………、愛してます。」

―――おい明日香、冗談にしてはちょっと重すぎないか?
たしかにちっちゃいときはよく「大人になったらお兄ちゃんとケッコンする!」なんて言ってたけど、
大きくなるにつれて、この国の婚姻制度を詳しく知るようになってからは言わなくなったはず…俺の記憶が正確ならば。

「ずっと昔から…ううん、産まれた時から好きだったのかもしれない。いつでもお兄ちゃんとひとつになるのが夢だったの。
……でもお兄ちゃんはいつもいつも、私を妹としてしか見てくれなかった! もう我慢できないの…胸が痛くて苦しくて裂けちゃいそうで…。」
「………本気、なのか? ―――だとしても、それだけはだめだ明日香! 俺たちは兄妹だぞ!?」

俺は明日香の肩をつかんで、引き離した。明日香の眼からは涙が流れている。…おかしい、明日香の瞳はもっと澄んでいた。なのになんで、こんなにくすんでいるんだ?
……分からない。いったい何を考えているんだ?

67 名前:天使のような悪魔たち 第9話 神坂 明日香 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 20:52:02 ID:ZYnT4MCg
「やっぱりお兄ちゃんはそう言うんだね? でも大丈夫だよ。お兄ちゃんをばかにする奴がいたら私が消し去ってあげる。
こんな婚姻制度を作ったやつらがいけないんだよね、だったらみんな殺してあげる。お兄ちゃんは私だけのもの……誰にも渡さない。」

それだけ言って明日香は、俺の眼前に手をかざしてきた。そして瞬いたのは…黒い光だ。
なんで"黒い光"なんて言葉が出てきたのかは自分でも分からない。だが、もっとも近しい表現だと思う。

―――もしかして……俺は、この光を知っているのか?



68 名前:天使のような悪魔たち 第9話 神坂 明日香 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 20:52:54 ID:ZYnT4MCg
* * * * *

次に目が覚めたとき、俺はベッドに横たわっていた。起き上がろうとする、だが、それは叶わなかった。手首足首を何かでベッドの脚に拘束されていたからだ。
じゃら、と金属質の音がする。これは…極限まで実用性を重視した以下略の………

「おふぁよ、おにいひゃん。」―――明日香だ。
さっきまで身に纏っていた可愛らしい服はどうしたんだろうか。何で明日香は裸なんだろうか? そして、ソコで何をしているんだ?

ぴちゃ…ぺろ…じゅる…

とても卑猥な音がする。そして、俺の相棒に何か生温かい、ぬるぬるした感触が与えられている。―――っ! ダメだ、もう!

どぷっ…びゅる… 俺は迸りをそこに…明日香の口内に放ってしまった。明日香はソレを、実に旨そうに飲み下した。
その上気した表情はもはや妹などではなく、立派に一人の女としてのものだった。その姿に、俺の情欲も掻き立てられてしまう。……だめだ、妹に感じるなんて絶対に!

「…まだ、できるよね。ほら、見てお兄ちゃん。」

明日香は俺に跨がり、自分の大事な部分を俺に見せびらかすようにして拡げた。
初めてみるソコはピンク色で、お漏らししたかのように糸をひきながら粘液が垂れ落ちている。産毛すら見当たらない分、細かいところまでくっきりとわかる。
そして、その真下には俺の………

「――――もうやめろ、明日香! 今ならまだ引き返せる!」
「引き返して、どこに行くっていうの? 私の帰るところはココだよ。」

明日香は、ゆっくりと腰を落とした。その狭い入り口に尖端が埋まり、徐々に進行してゆく。そして、とうとう………

「――――っ!」

純潔の証である鮮血が流れた。もう引き返せない、俺たちは…堕ちてしまった。

「…うふふ……やっとひとつになれたね、お兄ちゃん。」

明日香の目尻にはうっすら涙がにじんでいる。痛いのだろうか、もしくはそれ以上に感動しているのか…?
ゆっくりと、運動が再開された。
はっきり言って、首を締め付けられかのようにきつい。明日香のなかは、体格相応に狭かった。

「~~~~っ!! はぁ、はぁ…っ…ああああああっ!」
「……やめてくれ…明日香、痛いんだろう!? なんでそこまでするんだよ!」
「はぁ…はぁ…きまって、るじゃ、ない…っ! すき、だから…あああっ!」

もはや苦痛をこらえるその姿を見てはいられなかった。だから俺は顔を背けた。………後悔したよ。またもや信じられないものを見つけたから。

69 名前:天使のような悪魔たち 第9話 神坂 明日香 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 20:53:51 ID:ZYnT4MCg
そこに転がっていたのは、結意だった。ただし、ナイフを心臓の部分にに突き立てられた状態の。
…もう訊くまでもないだろう。誰がやったかなんて、明白だ。

「…ああ、そいつね…邪魔だか、らっ……ころ、しちゃった……あぁん!いい!もっと、もっと突いて!お兄ちゃあん!」

いつの間にか苦痛をこらえた声は、嬌声に変わっていた。さっきまでよりスムーズにピストン運動が行われている。分泌される液も、徐々に量が増している。
明日香が動くたびに、にちゃ、にちゃと粘っこく糸をひく。…俺は悪い夢でも見ている気分だった。夢なら早く覚めてくれ―――

「ふふふふ…あは、あはははははははっ! 気持ちいい、気持ちいいよお兄ちゃん! あはははははは!あはははははははははっ!!!」

この世のものとは思えない、不気味な笑い声を上げながら欲望をぶつけてくる明日香。
…もう、我慢できなかった。俺は再び迸りを、今度は明日香のなかに直接放つ形になった。

「あはっ…いーっぱいでてるねぇ…お兄ちゃん。」

明日香は再び、結合部を見せつけてきた。そこは、明日香の透明な粘液と俺の迸とわずかな鮮血とでべとべとになっていた。

そして明日香は、もう一度手を額にかざしてきた。



70 名前:天使のような悪魔たち 第9話 神坂 明日香 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 20:54:51 ID:ZYnT4MCg

―エピローグ―

あれから1ヶ月が経った。

明日香の力は私のソレを上回っていた。なぜなら、対象物を消滅させるだけではなく…
自らの力によって消し去ったものに限り、もとどおり再生できる力を持っていたのだから。でも、その力には心当たりが有る。……彼が、その力の持ち主だから。

あの日からずっと明日香は、飛鳥を完全に手中に納めていた。朝は普通にご飯を食べ、学校へ行く。帰宅し、夕食を済ませたあとで記憶を"すり替える"。

それがどういうことなのかって? 簡単よ。今の飛鳥は、二つの別の記憶を交互に与えられてるの。
昼は今まで通り、仲の良い兄妹。その中に、妹と"繋がった"記憶は含まれていない。
夜になれば、再び…いえ、飛鳥にしてみれば、あの日以来ずっと犯され続けているようなものね。明日香はうまい具合に、夜の記憶だけを繋げているの。
ちゃんと学校には行っているから、行方不明なんてことにはならないし…
飛鳥も、そのときは記憶自体がないのだから振る舞いも至って普通、誰にもバレはしない。さすがは私の妹ね。
でも、それも長くは続かないだろう。

なぜなら、明日香の命は……もう長くはないから。
もともと、私の中にある3本の染色体は突然変異によるもの。遺伝性のものなのか、そうではないのか、未だにはっきりしない。では飛鳥と明日香は?

二人目まではまさに奇跡だった。都合よく、私と同じように3本多く持って生まれたのだから。
ただ、私とは能力が異なっていたはず…当然ね。そう簡単に全く同じとはいくはずもないわ。
でも、母さんはその子を実験の道具にはさせたくなかったみたい。だから当時父さんの研究グループの一員だった、斉木博士にその子を託した。それが、斉木 隼くん。

飛鳥は、もともとは斉木博士の子供。交換を提案したのは、むしろ斉木博士からだった。隼くんと同い年だし…もちろん染色体は46本、一般的な人間。
飛鳥と明日香は、実は血が繋がっていなかったの。ただ、それは絶対に秘密にしなければいけなかった。今となっては、多少後悔しているけれど…

では明日香は? その答えは簡単だ。私と瓜二つな容姿。加えてほぼ同じ能力、成長の停止…ことごとく私と同じ。
もうお分かりでしょう。明日香は、父さんが私のバックアップとして造り上げた、クローン体。
ただ今の技術では完璧なクローンなんてものは造れない。結果、明日香の細胞はあちこち穴だらけ、欠けたパズルのよう。
もうすでに細胞の劣化が始まっているわ。このままなら、あと数ヵ月で……

でも、お兄ちゃんと幸せになれて幸せよね、明日香。大丈夫よ…ちゃんと、あとから飛鳥も同じところに送ってあげるから。そうしたら、独りぼっちじゃなくなるでしょ?

私が全ての罪を背負ってあげる。だから…精一杯今を生きなさい、明日香。


-Bad end-

71 名前: ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2009/01/12(月) 20:57:20 ID:ZYnT4MCg
明日香ルート終了です。
お騒がせしてすみませんでした、以後気をつけます。>>60へのgjは僕をすっ飛ばしてお願いします。

>>60 gj! wktkで期待してます。


72 名前:名無しさん@ピンキー[] 投稿日:2009/01/12(月) 22:30:36 ID:16arPOqI
GJ!!!
明日香…ブワッ

73 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 22:31:20 ID:16arPOqI
sage忘れ…orz

74 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 22:32:46 ID:NHpBVS3D
>73(´;ω;`)ブワワッ

75 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 22:40:01 ID:QiAJufK1
>>71 GJ! 結意派の俺にはつらいけど、別ルートでの救済を……!
あと、いろいろ残ってる謎が気になります。続き待ってます。

76 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/12(月) 22:54:22 ID:5H3nrFKn
GJ!!

77 名前: ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2009/01/13(火) 00:11:07 ID:DHmMVECW
携帯からです。
>>70の"幸せになれて幸せよね"を、"幸せになれてよかったわね"に脳内保管しといてください。
日本語おかしいことに気付きましたorz

78 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/13(火) 00:50:23 ID:SQFSy48l
前スレの埋めがちょっと怖い

79 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/13(火) 04:23:55 ID:cGqRGD6A
いつもまとめサイトの更新だけチェックしてこのスレにはあまり来ないんだけど
更新された作品読んでたら笑ってついこっちに来てしまった
スレ内のちょっとした揉め事も一緒に転載されるんだなw

80 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/13(火) 08:06:16 ID:z4rkLFjT
>>71
GJ!
ちょっと弟くんに冷たくない?って思ってたが実弟じゃなかったのか
あれ、じゃあ子ども作れないってのは嘘? 続き気になります

81 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/13(火) 12:29:48 ID:KP4MJRMS
>>79
消すの忘れてた(´・ω・`)

82 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/13(火) 16:27:37 ID:nKyzD1Jz
書くのここじゃないかもだが、保管庫にログを置いてくれた方に激しくGJといいたい!マジ嬉しい。

83 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/13(火) 19:30:28 ID:zUdDulz3
そういやpart16以降のログは保管されてないの?

84 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/14(水) 20:58:31 ID:SuPxi5IE
ヤンデレ家族と傍観者の兄楽しみだわあ
最終話も近いみたいだし裸でいるのも我慢できそうだ

85 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/14(水) 21:08:23 ID:Xv2m5oKr
なんと甘い見通しだろうか
貴様にヤンデレの心が読めるのか

86 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/14(水) 21:12:55 ID:rO5Tw7Au
84「読めない・・・けど、85の考えてることは分かるよ」

って事だろ。
裸で待機の84(*´Д`)ハァハ(PAN!!

87 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/14(水) 21:20:40 ID:SuPxi5IE
>>85
ブログにオチは考えてあるって書いてあったからつい分かったような気になっちまったようだ
ちょっとヤンデレの邪魔して刺されてくる

88 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/15(木) 03:02:57 ID:oMf9LPPg
朝歌さんを待ちくたびれたんですが…

89 名前:ヤンデレウイルスβ2 ◆iIldyn3TfQ [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 00:10:35 ID:OWRYLE9i
久々なのでID間違えてるかも、はわわっ。
投稿予告で、いいんだっけ。投稿しますよー。

90 名前:ヤンデレウイルスβ2 ◆iIldyn3TfQ [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 00:11:15 ID:OWRYLE9i
TIPS
金城康二 保菌形態β 主人公
金城さとる 保菌形態α ヤンデレ好きのキ▲ガイ科学者。
金城篝 αの感染者。
佐藤亜麻 βの感染者。

蒲公英:該当情報、皆無。

外見的にちょっと背が伸びて精神年齢↑なとらドラの大河・・・ロングヘアーが好きなだけですサーセン。




誰だってハレムの夢を抱くことが、ある/あった/あるかもしれない。
だが、このウイルスの保菌者は墓穴を掘ることになりかねない。
俺だって好きで何股してる訳じゃないんだ。
人は問うだろう。「ならば何故なんだ」と。

<s>単純明快。ハーレムを築きたいから。</s>

感染者を一人でも放置プレイすることは、悲惨な結末を招くからだ。
異性とは彼にとって爆弾。感染者の扱いはさながら無数のリード線。
ただ爆発を解除することができず遅延させるだけの効果しか意味を成さない。
それしか期待できないのは、映画と違い皮肉ではあったが。

『運命に、邂逅する夜』英訳の如く結末が転がりかねる状況で彼は生きる。
「え?結末ってデッドエンドのことですよ。」


金城康二のとある独白。



91 名前:ヤンデレウイルスβ2 ◆iIldyn3TfQ [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 00:12:10 ID:OWRYLE9i
「はははぁー、やぁ蒲公英ちゃん。お久しぶり」
「・・・どうも」

金城夫妻の家にして、悟の研究所であり、康二の実家。
研究室を彷彿させる長方形型な白の建物の目前には、悟と篝二人、それと年頃の女性がいた。

たんぽぽ、タンポポ、蒲公英。
可憐だとか、飾り気のない栗色の髪は色艶やかなものではなく、
むしろ粗暴な様を際立だった顔立ちに、肩口に掛かったくせっ毛の少女だ。

「しかし、蒲公英さんも変わりましたね」微笑む金城篝。
「・・・いつまでも子供では要られませんから」ぷいっと顔をそらす蒲公英。

目は吊り上っており、そこはかとなく猫か虎を連想させた。
全体的な体つきはパーカーによって遮られるが至って平均的に見える。

「ささっ、とりあえず入ってよ」手招きする悟。
「ぇ? 」吃驚した様子で開口したままの蒲公英。
「ささ、どうぞ」篝に背を押され、仕方なく玄関へと。

おっとりとした容姿と雰囲気の篝だが、
意外にも押しが強いことを今更ながら蒲公英の脳裏に浮かび上がる。

「あ、ちょっ・・・えっ?」
「ははは、いっつもギャップで驚かれるんだよねー」

白のコントラストな病院ちっくな外見とは打って変わって和風な作り。
彼女が悟を訝しげな表情で睨めば篝がお盆を持って開口一言。

「ふふ、悟さん。でもこれ以上感染させたら八つ裂きにしますよ」
「ははは、母さんや。果物ナイフが首に当たってるんですけど?」
「当ててるんですよ」「さよですか・・・あ、一応定員にはなってるけど」


92 名前:ヤンデレウイルスβ2 ◆iIldyn3TfQ [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 00:13:25 ID:OWRYLE9i

まったく顔の笑ってはいない伴侶に、苦笑いしつつも悟はコーヒーを啜った。

「なら、今回勘弁してあげますね、あなた」
「さて、こんかい呼んだのはだね・・・」

かなり使い込んだ様子の大学ノートを取り出す悟。
その表面にはでかでかと"にっき。かねしろこうじ"と明記してある。

「実は、我が息子に面白いことを発見してねっ。まぁノートなのだけれども」
「古ぼけた日記帳じゃないですか?それがどうしたと?」

したり顔で悟は少女の眼前でプラプラと左右に振らした。
案の定に蒲公英は顔こそ伏せれど、目はノートを追っている。

「昔、うちの息子が君を不用意に傷つけたことはなかったかい?
遠ざけたことは? 嫌悪したことは? 無視したことは?」

思い当たる節があるのだろう、彼女の瞳は意識的にとある方向へと向く。
眸には明らかな困惑と、一握りの焦燥の色が浮かべられた。
半ば奪い取ろうとする蒲公英の手から逃れると、
悟はさらにはもったいぶるような素振りで。

「その事実は、ここに入っている。
もっとも、私が知ってはいるのだけれども君が見たほうが面白いだろしね」
「も~悟さんったら悪趣味ですね~♪」

万年バカップルの二人を見やって蒲公英は訝しげな表情。

「精々面白い展開に発することを祈るよ。そろそろ、かn」
「あいつ、・・・いや、そんなわけ、・・・でも・・・」
沈黙が場を制すること数分、少女の顔には驚愕、焦燥、恥辱、安心、様々なモノが入り混じっていた。


93 名前:ヤンデレウイルスβ2 ◆iIldyn3TfQ [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 00:14:33 ID:OWRYLE9i


「さて・・・」

悟が眼鏡を掛け直し、口を開いた瞬間。
蒲公英は茶渋の立たない茶に眸を写すと呆然とした少女の顔が浮かんだ。
湯飲みを包み込むと振動を表す波動が起きていた。
上方を見上げようとして顔を上げると勢い良く和室の戸が開く。
バタンッと地を振るわす轟音が和室に響く。

「おいっ、親父。なんなんだっ、バイト先に電話までして呼び出して!!
今日給料日だってのにッ!」
「おお、当事者が来たことだし、失礼するよ」

ノートの持ち主が現れたのだ。
当の本人は息子の心情などそ知らぬ様子で離れへと移動する。
息が荒くなった青年は、久しい幼馴染を視線の端に捕捉して。

「っ!? お前、それは俺の」なにやら拙い事だけは理解し。
「ふぅ~ん、そんなに見られたくないのか」

長らく顔を合わせなかった彼方の顔が驚愕のあまり目を見開く。
その様子に満足してか見せびらかして蒲公英はニヤつく。

「ッ!!!てめぇ、人んちに入って何をしているっ!?」

彼は、蒲公英に近寄って手ごとノートを掴む。
蒲公英の手からノートを弾いたことに安堵して前のめりで畳みにぶつかる。
足を払われたことに気づくのは世界[しかい]が九十度変わってから。

畳の上に無様な受身を取る康二に対して、蒲公英はすぐ馬乗りになって彼の両手を塞いだ。
こころなしか、彼方の表情が崩れ、朱色に染まっている。


94 名前:ヤンデレウイルスβ2 ◆iIldyn3TfQ [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 00:14:58 ID:OWRYLE9i

彼の心臓は、ドクッ、と少し異常な速度で鼓動を早めた。
ドクッ、ドクッ、ドクッと異常動作を繰り返す臓器に、
ハッと我に返って康二は蒲公英を振り払おうとする。

幾ら中肉中背の青年とはいえ、馬乗りになって両手を封じる少女に。
否、少女の真実を知りたいという決意に、青年は勝てないのだ。

「この感覚っ!! たんぽぽっ、どけっ!」

自らの体[たいえき]がうごめくような感触。
わだかまる不可思議な感触、感覚を、彼は理解っている。

ヤンデレ、ウイルス、タイプβ

だが突き放そうとするも、鍛える筈の身体でも暴力幼馴染の方が腕力で勝っていた。

「おいっ、これ以上近寄るなよっ!!」
「なんだって、こーじ君? え、どけたらいいじゃ、ぐすっ、ないか」

彼女から雨が降ってきた、ぽつり、ぽつりと。
次第に、どしゃ降りへと変わり、康二自身は辿りそれが何なのかを知る。

「お前、泣い――――」
「―――泣いてなんかないっ!」
「大体、なんなんだよっ! あの日記。
お前はあの時も、オレ様の思いを踏みにじってっ!!」
「仕方ないじゃないかっ!」
「人の想いを切り捨てることが仕方ないっていうのかよ、テメェは!?」


(あの時は愛おしかった君が歪むのを恐れて。
でも、不器用な助け方しか俺にはできなかっんだよっ)

金城康二の事情を知らない。だからこそ、よりあの行為は最低最低だった。


95 名前:ヤンデレウイルスβ2 ◆iIldyn3TfQ [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 00:17:32 ID:OWRYLE9i


「さて・・・」

悟が眼鏡を掛け直し、口を開いた瞬間。
蒲公英は茶渋の立たない茶に眸を写すと呆然とした少女の顔が浮かんだ。
湯飲みを包み込むと振動を表す波動が起きていた。
上方を見上げようとして顔を上げると勢い良く和室の戸が開く。
バタンッと地を振るわす轟音が和室に響く。

「おいっ、親父。なんなんだっ、バイト先に電話までして呼び出して!!
今日給料日だってのにッ!」
「おお、当事者が来たことだし、失礼するよ」

ノートの持ち主が現れたのだ。
当の本人は息子の心情などそ知らぬ様子で離れへと移動する。
息が荒くなった青年は、久しい幼馴染を視線の端に捕捉して。

「っ!? お前、それは俺の」なにやら拙い事だけは理解し。
「ふぅ~ん、そんなに見られたくないのか」

長らく顔を合わせなかった彼方の顔が驚愕のあまり目を見開く。
その様子に満足してか見せびらかして蒲公英はニヤつく。

「ッ!!!てめぇ、人んちに入って何をしているっ!?」

彼は、蒲公英に近寄って手ごとノートを掴む。
蒲公英の手からノートを弾いたことに安堵して前のめりで畳みにぶつかる。
足を払われたことに気づくのは世界[しかい]が九十度変わってから。

畳の上に無様な受身を取る康二に対して、蒲公英はすぐ馬乗りになって彼の両手を塞いだ。
こころなしか、彼方の表情が崩れ、朱色に染まっている。

彼の心臓は、ドクッ、と少し異常な速度で鼓動を早めた。
ドクッ、ドクッ、ドクッと異常動作を繰り返す臓器に、
ハッと我に返って康二は蒲公英を振り払おうとする。

幾ら中肉中背の青年とはいえ、馬乗りになって両手を封じる少女に。
否、少女の真実を知りたいという決意に、青年は勝てないのだ。



96 名前:ヤンデレウイルスβ2 ◆iIldyn3TfQ [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 00:19:04 ID:OWRYLE9i

いつの間にか彼女の手からノートが零れ落ちていた。

『○月△日、キチガイからおしえられた。
ぼくのからだはへんだって。だれかをふこうにするって。
たんぽぽをきづつける? いやだ、いやだ。そんなの。
それぐらいならっ』

「なぁ、オレ様がどんな思いしたと思ってんだッ!?
どれだけお前のことを考えていたと思ってるんだ!?
幾星霜の月日がお前への告白で埋め尽くされたっ!

オレ様がどんな思いでお前からの告白を、
待ち望んで、渇望して、あの日をになったと思う!?

思いもしなかったさ!

拒絶をこめたものだなんてよっ!」

目を逸らそうとした俺に覆いかぶさるようにしながら。
蒲公英は一度言葉を切り、口調を変え―――否、戻した。

それは、青年が過去に知っていた、少女そのものの貌。

興奮した様子の少女は、むしろ幅を狭めるように。
近づく唇、高鳴る鼓動、うごめくウイルス。

馬乗りになった幼馴染を俺は、
振り払うことなんて出来るはずもなかった。

「ボクは君の事とても好きだったよ。今でも愛しています。
君が遠ざけた理由なんてもうどうでもいい。

君がたとえ亜修羅の道を、悪道の道を進もうとも、
私はあなたのためだけに、尽くし続けます。

だから、ボクに誓いの口付けをさせて下さい」





97 名前:ヤンデレウイルスβ2 ◆iIldyn3TfQ [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 00:20:41 ID:OWRYLE9i
そして少女からは自らの花言葉を篭めて永久の誓言となる、
青年からは好いているからこそ危惧した最悪の口づけを交わした。

無垢な生娘のぎこちない仕草のまま、
だけども濃厚で、淫妖に貪るように。

接吻を終え、たらり引いた銀糸を拭うと彼は独白するように、口を滑らす。

「俺は、お前をまきこみたくなかったのに・・・」
「なんで?   ボクなら君のウィルスに掛かってもいいよ。
ねぇ? 知ってる、ボクの、蒲公英の花言葉って」
「どーでもいいっ、お前はコレの凶悪さを知らないからいえるんだよ」


生を享けてから、四捨五入して二十年。
彼はウイルスを自意識である程度抑えることは可能になった。
だが、自意識を制御できない条件下、それも粘膜接触となれば感染を免れない。

頭が蕩けたように、視線が定まらない表情で蒲公英は虚空を見つめていた。
目が濁ったように、どろどろした何かを以って少女は彼方を睨んでいた。

「はーい。おめでとー。」クラッカーを鳴らす馬鹿が登場する。
『カップル誕生おめでとー☆』と掲げる母親、篝もいた。

「ッ!? ・・・糞親父ぃーーー!」
「あらあら、大変わねーあなた。でも、お腹を痛めた子と旦那がするなんて母さんうれし泣きしちゃうわ」

どうにも今回の主犯格だと確信し、蒲公英を押しのけて。

「蒲公英良く聴け。ここ、数日。多分胸が心理的に締付けられるような感覚になるが、気にするな。
それはまやかしだ。いつわりだ。何一ついい事などない」



だが、遅かった。

すでに彼女の胸には感染が相乗して、恋慕が募り、そして―――.





98 名前:ヤンデレウイルスβ2 ◆iIldyn3TfQ [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 00:21:45 ID:OWRYLE9i
ヤンデレウイルスとは感染者にとってみれば麻薬そのものだ。
母さんたち慢性的な感染者になれば異なるが初期の感染は重い。
躯の芯まで蕩ける快感、保菌者への緊縛する一筋の喪失感。

一度感染すれば保菌者との接触を是が非でもしたくなる。
だが、感染者が一定期間距離を保つことで死滅させることができる。
だが一定期間保菌者との接触を行えば定期的な菌の育成が出来てしまう。

次第に、想いは黒く冥く、濁った想いが拡張させていくのだ。
そこが恋患いと違う最大の点である。

金城さとるの効果は十人というリミッターが掛かるが、
金城康二の場合は無尽蔵に感染を広めていくことが可能だ。

先天性遺伝子 ・・・固体値によった誤差。
金城康二が安全に暮らすには感染を最小限に留めておきたいのだ。
それだから洗脳ともいえる選択肢の誘導や心理学で亜麻を左右させた。
善悪を置いてなお、彼が生き残るためには仕方の無いことであろう。



少なくとも行動を起こすのは彼の目の届く範囲だけと確約させている。
むしろだからこそ亜麻一同のようなに過激行為を起こす場合があるのだが。

「あなたの体の一部ホルマリン漬けにさせて」とか
「私の体(もしくは体液)入りのご飯食べて」とか
「あの、・・・その、私いじめられたいから切り裂いてください」
とか

自己主張をやんわりと趣向を改悪して、正して。
とりあえず血液の見ない方向へ回避している事実はあったりなかったり。




99 名前:ヤンデレウイルスβ2 ◆iIldyn3TfQ [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 00:22:13 ID:OWRYLE9i
感染が一次症状となった幼馴染を押しのけて。
白衣姿の父親を鷲掴みにして外へと連れ出した。

「てめぇ、好い加減にしろよ」
「お父さんに向かっててめぇはないでしょぉ♪」
「・・・もう一度繰り返す、好い加減にしろ」
「なーんのことっかなー♪」
「とぼけるな。何故だっ!てめぇ、あんなモノ模造しやがった!」

金城康二に日記を綴るメルヘン染みた趣味はない。
ならば、だ。巫山戯たことを仕出かす人間に検討が付く。

「何故、お前があんなもの書きやがった」
「おやおや、僕は嘘をついた覚えは無いよ?
蒲公英ちゃんには『ここに事実が入っている』とはいったケド、
でもしかし康二自身が書いた日記だとは言ってない」

「それが僕お手製の悪戯でもネ」すっ呆けた様子の実父。
「はハHA、葉刃派ハhaは。ふざけ」

渾身の一撃を見舞おうとして康二が躯を捻ると、
的確な掌底が水月へと間髪なく打ち込まれる。

「かハッ!?」肺から消費するはずだった空気が吐き出され膝を突く。
「やっぱり君は理解してないね・・・」
「はぁっ、何がだ、糞親父」強がる位みせるのが男の意地だ。

達観した眼差しで、眼鏡を押し上げる
光が乱射する硝子の向こうで覗くのは漆黒の眸。

「君は我が愛しのヤンデレ篝との息子だ。
だが、それと同時に君は永遠の研究材料なんだよ」

否。漆黒と云うには違和感がある。

濁り。

精神を摩耗しきったような、
濁りきった濁流のようなその眸――――深淵[ふかみ]に覗きこまれ。

それはそう、実験対象を見る冷静な/冷徹な/冷酷な瞳で。
にこやかな表情とは裏腹に感情の篭ることを知らない。





100 名前:ヤンデレウイルスβ2 ◆iIldyn3TfQ [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 00:22:52 ID:OWRYLE9i
背筋に伝う冷気と、何かを感じた康二は悪態をつく。

「ほざいてろ、キチガイマッド」
「うん、ありがと~♪ 天才とキチガイは紙一重なのだよー」

自らが望むのは振り切れた所だ、と称すキチガイ。


燦然たる夕日から逃げる吸血鬼のように、
混濁とした闇黒へ生者を誘うかのように、

白衣を翻して玄関の戸をゆっくりと開ける。
悟の背中からは何も察することはできない。

「本当にね、人間って二種類しかいないんだよ。
異常を許容するか、それとも異物と知りながら奥底に仕舞うか」

世界一大嫌いで、異物である筈の親父の背中が、
扉の向こう側へと消えていった実父のそれが、
何故か少しだけ寂しく感じ取れたのだった。





金城康二、つまり俺は已むに得ない状況で、遺憾なくヤンデレウイルス送信中。
なお公共電波では感知できないので無視してよろしい。
拝啓、天国に逝って欲しいお父様、蒲公英は真心の愛を意味するらしいです。


――――――管理人さんへお願い―――――――――――
<s></s>のタグなっているところは、取り消し線が表現できるようお願いします。

101 名前:ヤンデレウイルスβ2 ◆iIldyn3TfQ [sage] 投稿日:2009/01/16(金) 00:24:33 ID:OWRYLE9i
>>95 ミスりました、すいません。_|~|○

二話目もお疲れ様だじぇー。というわけで、お疲れ様でした。

102 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 11:52:27 ID:uXP8Z887
ぐっじょぶ!

103 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 16:37:05 ID:4+Y8MHtT
ヤンデレウイルス大好きだ!

GJ!

104 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 18:40:57 ID:q6d36th+
よかった
GJ

105 名前:変歴伝 4[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 19:51:43 ID:kcgAUQqH
余暇が出来たので投稿します。
お願いします。

106 名前:変歴伝 4[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 19:53:01 ID:kcgAUQqH
ここまで来れば大丈夫だろう。業盛様は葵さんの家を知らない。
撒いてしまえばこっちのものである。
それにしても業盛様はどうしたのだろう?あれほど応援してくれていたのに。
業盛様は嘘を言うような人ではない。
だから葵さんが人を殺したと聞いた時、
馬鹿なという気持ちと、もしやという気持ちが同時に浮かんだ。
しかし、その気持ちはすぐに消えた。
葵さんがそんなことをするはずない。きっと業盛様が見間違えたのだ。
そうでも考えないと自分の考えを正当化できなかった。
葵さんは今まで見たこともないような笑顔で出迎えてくれた。
この笑顔を見ると葵さんが人を殺したなどとは露にも思えない。
やはり、業盛様の勘違いなのだろう。
中に入ると料理が準備されていた。囲炉裏には鍋が掛けられている。
そこから食欲をそそるいい匂いが漂う。
早速料理にがっつく。
旨い。それしか言えなかった。菊乃さんの料理も旨かったが葵さんの料理はもっと旨かった。
食べながら葵さんが尋ねてきた。
景正様、き…菊乃さんとはどんな関係なのですか…?」
「菊乃さん?菊乃さんは私達が今滞在している家の主人だよ。それがどうかしたのですか?」
「い…いえ、景正様は菊乃さんのことをどう思っているのかな、と思いまして…」
「どう思うって…それはやっぱり美人だと思うけど…」
「…私よりも…ですか…?」
平蔵は彼女の放つ威圧感に一瞬圧倒された。なんなんだ。このどす黒くて嫌な空気は。
「ねえ…景正様…。私、今日奮発してお酒を買ってきたのですけど…飲みますよね…?」
この時、彼女の言動、仕草に気付くべきだったのだ。
平蔵は気付けなかった。単なる嫉妬だと思ったのだ。
しかし、それは嫉妬の一言で片付けられるようなものではなかった。それはなにもかもを憎悪し、そして破壊する狂気だった。
平蔵は酒が飲めなかった。しかし、断れるような空気ではなかった。
仕方なく、平蔵は猪口に注がれた酒を一息で飲み干した。
飲み干した時、葵の口が半月の様にゆがんで見えた。
「あ…あれ…?」
手から猪口が滑り落ちた。…体が…痺れて…。
「景正様…どうしたのですか…」
葵が言った。心なしかその言葉にはおかしみが含まれていた。
「あ…あお…あお…い…」
舌が痺れてうまくしゃべれない。目もかすんできた。
「景正様…眠たければ眠ってもいいのですよ…。
これからは私が…いつまでもずっと…ずっと…ずっと…一緒にいてあげますから…」
その場に崩れ落ちた。指先一つ動かすことも出来ない。
ああ…業盛様…申し訳ありません…。
あなたの言葉を聞いていれば…こんなことには…こんなことには…。
もう…私は…私は…私は…
視界がどんどん薄れる中、最後に聞こえたのは葵さんの心底嬉しそうな笑い声だった。


107 名前:変歴伝 4[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 19:54:02 ID:kcgAUQqH
「くそ、平蔵の野郎、どこに行きやがった」
いらいらして思わず素が出てしまう。
もう平蔵は葵の家に行ってしまったのだろうか?だとしたらもう手遅れだろう。
もう殺されているだろうか?いや…違うかもしれない。
わざわざ家に招くのだから、もしかしてじっくりと殺そうとしているのかもしれない。
拷問だろうか…。
竹串、やきごて、鞭打ち、爪剥ぎ…考えてみればいろいろな拷問が思い浮かぶ。
考えるだけで指を隠したくなる。
業盛は嫌な想像を振り払い、再び葵の家を探す。
日が暮れて始め、辺りの家が蝋燭に火を灯し始めた。
うっすらとした蝋燭の火の光が星の様に見えた。
「どうすればいいんだ!ちくしょう」
お手上げだった。もう少しで完全に日が暮れる。
そうなれば葵の家を見つけるのは不可能だ。業盛はその場にへたり込みたくなった。
完全に日が暮れて、空も地上も星だらけになった。
業盛は松明を片手に葵の家を探していた。
いい加減に諦めようと思っていると、おかしなことに気付いた。
行灯の付いていない家が一つあったのだ。
直感だったが、業盛はその家に足を運んでいた。
戸の近くに来てみて、業盛はその異変に気付いた。
戸を通しても漂ってくる、鼻を刺すような…血の臭い。
葵の家はここだ。どうやら拷問ではないらしい。
しかし、遅かったのには違いない。
それにしても、どんな殺され方をすればこんなに臭いが漂ってくるんだ。
打ち首か?串刺しか?もしくはバラバラか?
見たくはなかったが、せめて平蔵の墓ぐらい立ててやらねばならない。
意を決して戸を開けた。


108 名前:変歴伝 4[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 19:55:13 ID:kcgAUQqH
目の前には葵がいた。いや、倒れていた。
頭はいびつな形にゆがんで、目玉が飛び出し、歯も折れている。
背中は何度も刺され、際限なく流れる血が血溜りを作っている。
戸を何度も引っ掻いたらしく、爪は剥がれて、戸には引っ掻き傷と血が生々しく残っていた。
平蔵はいなかった。家の中は激しく争ったらしく、鍋や椀が散乱していた。
平蔵がやったのだろうか。一瞬の隙を突き、頭を砕いて逃げた…。
あれ…おかしいぞ。平蔵ほどの力のある男が、
女性のような柔らかい頭を殴れば一撃で殺せるはずだ。
しかし、この死体は殴られた後、激しく抵抗しているのだ。
平蔵がわざと力を抜いた。いや、ましてや平蔵がここまでやるはずがない。
せいぜい気絶させるぐらいだろう。
平蔵ではないのなら、これは第三者がやったのだろう。
だとすれば、ずいぶんと残酷な性格であることが分かる。
力を抜いて何度も何度も、まるで、いたぶるかの様に殺している。
よっぽどの恨みがあるのか、もしくは無差別か…。
だとすれば、平蔵はどこにいるのだろう?
その第三者が殺してしまったのだろうか?
ならばここに平蔵の死体があるはずなのに…。もしくは連れ去ったのかも…。
だが、なんのために…?
さまざまな考えが浮かんでは消えていく。
結局分かったのは、葵が誰かに殺され、平蔵が消えたということだけだった。


109 名前:変歴伝 4[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 19:56:28 ID:kcgAUQqH
投稿終わりです。
今回は少し調整するため少し短めです。
申し訳ありません。

110 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 20:23:42 ID:+6CEGLo5
>>109
GJ……しかしこれは怖いなw

111 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/16(金) 20:52:49 ID:q6d36th+
GJ!

112 名前: ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2009/01/17(土) 19:44:08 ID:ADEi3wlQ
投下します。
注意点として、
・擬人化のような表現がありますが、擬人化ではありません。そこは後々…
・主人公の設定上、女装する場面がのちのち出てくるかも。アッーな展開には絶対しませんが。



113 名前:血塗られしソードマスター 第壱話:御影 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2009/01/17(土) 19:45:48 ID:ADEi3wlQ
佐久本 朱里(しゅり)は、一言でいうと風変わりな男だ。

中性的…やや女性的な顔立ち。加えて、肩にかかるくらいの長さで、生まれつき色素が薄いのか、やや茶がかった色をしている髪の毛。
そのせいで幼少の頃から頻繁に女子と勘違いされ、高校一年になった今でもそれは変わらずにいる。
文化祭の出し物として、朱里の属する1年3組ではメイド喫茶を開いたが、そこで男子生徒のなかでただ一人女装させられてメイドとして働かされたことは有名だ。
何しろ、3組の売上高はその年では2位以下に倍以上の差をつけたのだから。
朱里は世間で言う、いわゆるモテるタイプだが、女子に告白された回数と男子に告白された回数はさほど変わらないという事実が、朱里がそこいらの女子生徒よりも美女…も

とい、美人であるという裏づけとなっている。
両親は朱里が4歳のときに交通事故で他界。祖父に引き取られ、今の今まで育てられてきた。当時、朱里を引き取ろうという親族はいくらでもいたのだが、
財産目当ての者は一人としておらず、生前朱里の両親に世話になったというあるという人ばかりだった。
しかし祖父が名乗りを挙げれば、あっさりとそれに従った。否、それがベストだと皆思ったのだ。
祖父の教育の賜物か、はたまた両親に似たのか、朱里は人当たりのよい性格を持っており、誰とでも分け隔てなく接することができた。
それは昨今の社会情勢からしたら希少価値、天然記念物クラスといえよう。
朱里がモテるのは単に容姿だけではなく、そういった要素が手伝っている部分もあるのだろう。

そんな朱里がソレの存在を知ったのは、東京に今年初めての雪が降り積もった二月半ばのこと。――祖父、佐久本 武雄の葬儀が執り行われた日であった。
葬列は式場いっぱいにまで及び、その中にはテレビニュースなどでよく見かける、財界の顔ぶれもわずかながら含まれていた。
式自体はとてもシンプルなものだった。武雄は晩年より「儂は昔から念仏というものが退屈で仕方なかった」と愚痴をこぼすかのごとく言っていたので、
念仏はまるごと省略されることとなったのだ。にも関わらず、焼香を済ませ、遺影に一礼をして席に戻るという行程だけで二時間は費やされた。
朱里は武雄の人徳を、今更ながら実感したのだった。

夜、宴会室を借りきって行われた、いわゆる"故人を偲ぶ会"。生前の武雄を懐かしむ人もいれば、涙を見せる者も…
まさに、十人十色を体現したかのような空間となっていた。
だが、朱里は浮かない表情をしていた。彼の頭に今あるのはひとつの思念だけ。それは、武雄のことではなく…ある一本の刀のことだった。。


その刀は、代々佐久本家に伝えられてきた逸品だ。鍛え上げられてからすでに三百年は経っているらしいが刃こぼれどころか錆びひとつなく、
鞘から抜けばぬるりとした鈍い光沢…見事な職人業だ。
鍔のすぐそばにはこう刻まれている。それはこの刀に付けられた名前なのだろう。

<松代 鳩蔵作 / 御影>


114 名前:血塗られしソードマスター 第壱話:御影 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2009/01/17(土) 19:46:43 ID:ADEi3wlQ
祖父の遺言は、"偲ぶ会"の直前になって顧問弁護士より親族に伝えられた。残された遺産は法にのっとり分配。当然、孫である朱里は多く受けとることになるが、
反対するものはいなかった。これも朱里の両親、そして武雄の育て方がよかったからだろう。朱里は、十分すぎるほどに信頼されていたのだ。
財産分与については何の滞りもなく完了した。だが、最後に弁護士が伝えた一文には、一同はわずかにどよめいた。

「"御影"を朱里に継がせること。ただし、これに関しては代理人ではなく必ず本人が所有せよ、とのことです」

朱里は誰に対してというわけでもなく、漠然とこう呟いた。

「みかげ、って何?」

御影は、祖父の居間に飾られていた。実は朱里も何度か目にしたことはあるのだ。しかし、ソレ=御影だとは思わず、今の今まで全く気にも止めなかった。
だからこそ、御影が何であるかが分からなかったのだ。
その疑問に答えたのは祖父の弟であり、代理人として朱里の継ぐ財産を預かり成人するまで管理する財産管理人を選任された、仁司(ひとし)だった。

仁司の語るところによると、御影とは300年以上昔、江戸時代末期に松代 鳩蔵という職人によって鍛えられた太刀だそうだ。
しかし鳩蔵は御影を鍛え終わると、完成したばかりのソレを使い、実の娘を殺害するという凶行―むしろ、狂行というべきか―を犯し、自らもそのまま腹を斬り、果てた。
それ以来御影は色んな…主に侍と呼ばれる人たちの手に渡ることとなるが、所有者となった者たちは皆、変死している。
変死というのは、乱心し御影を辺り構わず振り回し、血の海を作ってなお飽きたらず、自害して果ててしまうという悲惨な死に方を指している。
御影は俗に言う、"呪いの太刀"というものなのだ。
だが唯一例外があった。それこそが武雄の…そして朱里の先祖にあたる、矢坂 晋太朗という侍だ。 彼はこのいわくつきの刀を手にしたが、
終生誰一人として殺すことはなかった。故に、御影はその男の一族に代々受け継がれることとなった。
実際、晋太郎の血を引く者のなかで、御影に"飲まれた"ものは今日まで一人も現れなかった。この話をそのまま受け止めるなら、
次の御影の継承者には確かに朱里こそが相応しいが…彼はまだ成人すらしていない。
皆が皆、太刀の呪いなんてものの存在を鵜呑みにしているわけではないが、単純に、刀なんてものを与えていいのだろうか、という思慮がこの空間を占めていた。
だが一同は朱里を見やり、そして安堵すを覚える。この子なら大丈夫だ。呪いが実在したとしても、ちゃんと己を御せるだろう。
そういった、確信めいた期待を朱里に抱いていた。


115 名前:血塗られしソードマスター 第壱話:御影 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2009/01/17(土) 19:47:45 ID:ADEi3wlQ
そして今に至る。朱里はテーブルに盛られた料理のなかから、好物である鶏料理を皿にとり、もぐもぐと食べていた。
これも武雄が生前から言っていたのだが、「儂は葬式でしけた面をされるのはごめんだ。せめて、料理くらいは豪華にしよう。満腹は人を笑顔にするものだ」と。
故人の意思を尊重したのか、宴席に出された料理は懐石弁当なんて無粋なものではなく、本格的なバイキング形式のものだった。
武雄のこういった性格も、親子三代に遺伝しているのだろうか。武雄は長い生涯のなかで、明確な敵対関係を作ったことはなかった。
その息子…朱里の父親、佐久本 健司(けんじ) も然り。朱里は、冒頭で説明したとおりだ。

定められた全ての日程が終わり、家路につく朱里。頭の中には未だに"御影"のことが巡っていた。
――どうすればいいんだろう…とりあえず、僕の部屋に飾っておけばいいかなあ。朱里はそんなことを考えていた。祖父に比べると割と能天気な性格のようだ。
がちゃり、と玄関のドアの鍵を回し開ける。日付が変わって午前一時、家のなかは真っ暗だ。外同様に冷えた空気が充満しており、廊下は氷のように冷え切っている。
素足で踏み入ると、とたんに足が冷たくなる。
慣れた手付きで電気をつける。十年以上ここで暮らしているのだ。目を瞑ってもこれくらいたやすい。そのまま朱里は祖父の居間の襖を開いた。
武雄が入院して以来、この部屋へは久しく入らなかったが…御影の存在が気になったのだ。なんだかんだ言っても朱里も年頃の青少年、好奇心は人並みにある。
ただ、珍しいことにそれが性的関心に向けられたことは一度もないのだが。

そして、ソレはすぐに見つかった。掛け軸の下に飾ってある、黒い鞘に納められた太刀。朱里はそれを手にとり、抜いてみた。
ずしり、と手に伝わる重さ。きっとそれは御影自身の重さに加えて、今までに御影によって流されてきた血の重さも含まれているのだろう。
見つめていると、吸い込まれそうなほどの艶。朱里はとたんに身震いし、すぐに鞘に納めようとした。だが――

「――痛っ…」

わずかに指先を切ってしまった。この程度なら絆創膏で大丈夫なのだが、朱里は、必要以上に狼狽してしまった。
朱里は決して臆病なわけではない。むしろ、どんな困難にも立ち向かう、祖父譲りの強い精神の持ち主だ。
その朱里がこれなのだから、常人なら足が震えて立てなくなるだろう。
朱里は、御影をもとの場所に置き、自室へと向かった。普段の朱里ならそんなことはないのだが、今は家に独りきりという、この状況が怖かった。
だから、部屋に入ってすぐお気に入りのアーティストのCDをかけ、特に何を見るというわけでもないのにテレビをつけた。
たとえ電気がもたらす擬似的なものでも、人の声がするというのはそれなりに心強いものだ。
朱里はそのままベッドに伏し、恐怖心が薄くなるにつれて、逆に増してくる睡魔に身を任せ、夢の世界に墜ちた。


116 名前:血塗られしソードマスター 第壱話:御影 ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2009/01/17(土) 19:48:45 ID:ADEi3wlQ
―――朝、朱里は目覚まし時計が鳴るより早く目を醒ました。昨晩からつけっぱなしだったテレビは、ちょうど星座占いを映し出していた。
それによれば、今日のワースト1位は乙女座。奇しくも、朱里の生まれ月だった。挽回のラッキーアイテムは、紫のニーソックス……朱里は朝っぱらから複雑な気分になった


とりあえず朱里は、学校の制服に着替えることにした。クローゼットからエンジ色のブレザーとチェック柄のズボンを取りだし、代わりに喪服を収納する。
……一瞬、星座占いの解説を思い出した朱里。今日はその通りに紫色のニーソックスを履くことに決めた。
なぜそんなものを持っているかというと、文化祭にて女装メイドに扮したときに用いたからに他ならない。

着替えを終え、パンでも食べようと台所に向かった。時計の針は6時57分を指している。学校に行くときははいつも7時半に出発しているのだ。
少し時間がなかったため、今日は買い弁にしようと考えていると、台所の方から香ばしい薫りが漂ってきた。
――なんだろう…ここには今は僕しかいないはず。誰かいるのか? 朱里は歩を早め、台所にいる侵入者の姿を捉えた。

その侵入者…いや、少女は腰まで長く伸びた銀色の髪をもち、すらりと引き締まったスタイルをしていた。背は朱里と同じくらい、170センチ前後といったところか。
きりっとした切れ長の瞳をはじめとする、端正な…まるで人形のような顔立ち。まさに、美少女という呼び名がふさわしかった。

「おはよう、朱里」美少女は口を開いた。「朝ごはん、今できたところなんだ。温かいうちに食べてほしいな」
「…君は、いったい誰?」

当たり前の質問だ。朱里の記憶の中には、この少女の存在は含まれていなかったのだから。しかも、飛びきりの美少女だ。
そんな少女がいきなり朝ごはんを作ってくれているなんて、まったく意味が分からないだろう。
だが…次に少女の口から発せられた名前は、聞き覚えのあるものだった。

「ボクは美景だよ。美しい景色って書いて"みかげ"って読むんだ」
「……みか…げ…!? まさか、そんな!?」
「そう、君が思ってるとおり。ボクの父は松代 鳩蔵。銘刀・御影を作ったそのひとだよ」
「じゃあ君は…御影なのか!? 本当、に…っ」

朱里の唇に、突然温かく、柔らかいものが触れた。…それは美景の唇だった。舌を無理やりねじ込み、朱里の口内を食いつくさんばかりに舐め回す。
朱里はわけがわからず、ただなすがままにされる。
ちゅ…といやらしい音を立てて唇が離される。唇と唇に、唾液の橋がかかっている。朱里は、自分の心臓の鼓動が激しくなっているのを感じた。

「つれない顔しないでくれ。ボクはもう、キミだけのものなんだよ。自分で言うのもなんだけど、こんな美少女を独占できるんだよ?
それとも、オンナノコには興味ないのかな?」
「そ…ういうわけじゃないよ。…わけがわからないだけ」
「そう…じゃあ、期待して待ってるよ。とりあえず、学校に行かなきゃ、だね。ほら早く食べて? 今朝は朱里の好きな鶏肉にしたんだよ」

美景から離れた朱里は、おぼつかない足取りで椅子に座り、コップに注がれた牛乳を流し込み、料理に箸をつけた。
夢か現か、今の朱里にはわからないことだらけだ。だが、そんな中でもひとつ発見があった。

美景は、料理が上手だ。

(続)


117 名前: ◆UDPETPayJA [sage] 投稿日:2009/01/17(土) 19:50:40 ID:ADEi3wlQ
終了です。
「天使のような」の方は完成しだい投下します。

118 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/17(土) 21:49:19 ID:5zpBYqME
GJ

119 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 09:38:41 ID:Ece7CzbX
これはいいお嫁さん

120 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 20:04:03 ID:j3P7y22b
なんてうまやらしい。

121 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 22:36:41 ID:GxVa5xTH
馬がやらしいとな!?


122 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 22:42:31 ID:dNA4qiOw
雌馬
これは新しい

123 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 23:02:01 ID:UXU0J9nK
馬はどちらかというと男に使う感じだよな、種馬、馬並とか

124 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 23:17:20 ID:SKad6gzg
女が男に馬乗りになって

「あなたの…馬並みに大きい……」
「私だけの種馬になって下さいね…」



ここまで浮かんだ。

125 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 23:24:15 ID:/S1MgeEh
「私の愛馬は凶暴です」

126 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 00:04:35 ID:jFccUO2o
「なるほど…エロい事…するんだ…」

127 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 00:05:38 ID:KhWuHvzR
「そう…エロい事だ。」

128 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 00:44:17 ID:ww8ryHt0
不愉快だわ

129 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 14:55:52 ID:r8K70LR9
どこかにヤンデレ美少女に変化する妖刀落ちてないかなと思いました。

130 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 16:19:00 ID:NUg0CoQv
>>117
ストーリー的には面白そうだし、全然GJなんですが、気になった点を一つ。

>御影とは300年以上昔、江戸時代末期に松代 鳩蔵という職人によって鍛えられた~~

大政奉還が1867年。
現在が西暦2009年。
300年前は幕末(江戸時代末期)ではありえません。
重箱の隅をつつくようで申し訳ないのですが、
ヒロインの出自に関わる重要な設定事項だと思ったので一応申し上げました。
お気を悪くしたら申し訳ありません。
では、続編期待しております。



131 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 17:00:48 ID:zFUjXq86
家に日本刀が2本あるが可愛い女の子に化けてくれないかな?
ついでに言えば、飼ってるクロの縞縞柄のぬこがぬこまたとかになって、(性的な意味で)襲ってくれないかな?
ついでに言えば、できればヤンデレで(ry

132 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 17:22:24 ID:9BMJUVZx
木刀と模擬刀ならあるんだけどだめかな?

小太刀はロリになりそうだけど

133 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 18:35:29 ID:hQpp5fme
刀擬人化は修羅場スレの九十九の想いがあるな

134 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 20:18:40 ID:7UBIesI3
>>131
猫又とかババアじゃねえか
お前も物好きだな

135 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 20:27:10 ID:zFUjXq86
>>134
人間に10年ぐらい買われた猫が・・・じゃ、なかったっけ?
猫にとっての10年ではない、人間にとっての10年なのだ。
つまり、炉利ッ子というわ(ry

136 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 20:44:47 ID:7UBIesI3
>>135
20年じゃなかったか?
10年くらいだと普通に生きるだろ

137 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 20:56:42 ID:zFUjXq86
ほう?20年とな!食べごろではないか!(以下自重

138 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 21:48:46 ID:TpyT12wL
バレンタインのチョコに尿を仕込む女子集合
ttp://imijiki.blog7.fc2.com/blog-entry-285.html

139 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 23:01:30 ID:/LjFmKVp
擬人化と言えばこのスレでは妖しの呪縛が近いか
一話で中断してるのが惜しい

140 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 23:24:48 ID:Q5JcWH0o
>>133
あれ好きなんだけど止まってるなぁ
と言うよりあのスレ全体が止まってると言った方が良いかな・・・

141 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 23:27:27 ID:hQpp5fme
全盛期は勢い50以上あって日に投下5本とか来てたのにな…
悲しいもんだ…

142 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 23:30:16 ID:/LjFmKVp
他スレの話はその辺りで止めとけ

143 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/20(火) 00:37:51 ID:67fNEbgL
擬人化+ヤンデレか…
物凄く良い…

144 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/20(火) 03:15:09 ID:vweVORex
そういや自分は3スレとも見てるけど何で分割したんだろう・・・
キモ姉妹スレは分かるけどココと嫉妬ではどういう風に
使い分けてるのだろうか?


145 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/20(火) 04:18:19 ID:+qHSBRMA
>>144
ここ…ヤンデレならOK
嫉妬スレ…嫉妬や三角関係などが絡んでいればOK(病んでなくても)
キモウトスレ…キモ姉・キモウトが出ればOK

深く考える必要はないと思われる。現状でも混合してるし。

とりあえず、ここに居る俺らは皆ヤンデレが大好きだ!それで十分じゃないか!
とキモウトヤンデレ好きな俺が叫んでみる。

146 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/20(火) 06:00:57 ID:Vb1w8Ak8
まぁもともとはスレ数からみてもわかるように嫉妬修羅場が最初にできたんだが
ヒロインが2人以上いて修羅場をしなくてもいいから
ヤンデレを出せと言うことで分派してヤンデレスレができて

そのヤンデレスレからキモウトキモ姉スレが特化スレとしてまた分派した感じじゃね?

147 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/20(火) 06:19:53 ID:yUWuCmEf
キモスレはあそこの初代>>1が荒らし誘導で勝手に立てたんだ、
おかげで初期は重複だなんだで散々揉めた。
今もあるかは知らないが荒らしが便乗してストーカースレとか言うのも立ててた。

148 名前:144[sage] 投稿日:2009/01/20(火) 09:50:35 ID:vweVORex
成る程 そういう棲み分けだったのか
アリガト エロい人方。

149 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/21(水) 10:31:37 ID:gIhlGT0P
ヤンデレに『さっきのどういう事ですか?ねぇねぇ』とか言われたいものだ

150 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/01/21(水) 13:11:51 ID:e+dNf17c
姉か妹、もしくは従姉妹と一緒に外出してるところをヤンデレに見られたい

最終更新:2009年03月14日 08:03