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544 :533 [sagege] :2009/03/20(金) 05:13:24 ID:VP9rjp1S


授業はどうして、こう…人を退屈と感じさせるのだろうか
後にその授業に有り難味を感じる事になるのだろうが
今の俺には、微塵も有り難味を感じない、むしろ鬱陶しい存在だ
もし人がこれを聞いたら俺は間違いなく『学生失格』のレッテルを貼られ
進学校に行ってるような連中には『残念な人』と言われることだろう

そんなバカで残念な俺の名前は「スズキ タロウ」おそらくこの名前は
平凡の極みであろう、そんな気がする
俺はいわゆる『何処にでも居そう』な人だ、なんだか曖昧な表現だが
一番、的確な表現とも言える
カッコ良くもなく、不細工でもナシ
成績は………中の下だろう…そう信じたい
体力だけは絶対の自信がある、誇れるのはソレだけだが…

野郎の自己紹介なんかこんなもんでいいだろう?

「オイ!スズキ、この問題を解いてみろ」
「へ?」
「先生の話をしっかり聞いてたらすぐに答えられるハズだが?」
「ええと…」

急に俺を名指しで当てやがった…畜生め
こういう場合、教師は答えられないのが、わかりきっていて生徒を当てる
その生徒を授業に集中させる為に
案の定、俺はすぐに答えることが出来ない

「え~っと…」

考える素振りをして黒板を見る
今「数学」の授業だという事を確認、俺が解く問題は…アレか…なるほど

「えー…ワカリマセン」

アッサリと俺は諦める事にした、わからないのに悩んでもムダだからな
すると、教師はこうなる事はわかっていたクセに呆れた様子で

「…全く、しっかり授業を聞いておけよスズキ!」
「ハイ!!」

殆どの生徒はこうなった場合無言だろう、
だが、俺はハッキリした声で返事するという行動にでた
その結果、教室内でクスクスと小さな笑いが生じた
俺って今、バカにされてる?バカにされてるよな…


545 :533 [sagege] :2009/03/20(金) 05:14:24 ID:VP9rjp1S

「よぉ、返事だけはしっかりしてんな」
「うっせ、バーカ」

少々恥ずかしさでうなだれ気味の俺に
ニヤニヤ嬉しそうに前の席の男が小声で話しかけてきた
この男の名前は「タカダ アツシ」という
俺の幼馴染、いわゆる『腐れ縁』というヤツだ
整った顔立ちの世間様で言う「イケメン」だ
成績も学校内で上位に入る位頭もイイ
運動も中々出来る、部活には入っていない
性格もまぁ…悪くは無い………訂正しますイイ奴です

「どうせまたボーっと『退屈だな』とか考えてたんだろ」
「まぁ…だいたい当りだな」
「ノート後で移させてやるよ」
「迷惑かえてばかりですまんのう…」
「一つ貸しだからな」
「了解~」

持つべきものは友だよな~とベタな事を思ってしまった
どうやったらここまで『出来た子』が生まれるのかアツシの親に聞いてみたい

「おい!そこ、授業中に私語は禁止だぞ!」
「ハイ!!」

俺が反射的に返事をすると
教師が「…またスズキか」と漏らすと教室に笑いが起こった
アツシも俺の目の前で俺を見て笑っている…共犯のクセに
むぅぅ…今は笑いを取れた事を純粋に喜ぶとしよう
そうすれば恥ずかしさも半減するだろう…多分…

キーンコーンカーンコーン―――

「よーし、今日はここまでちゃんと今日の所を復習しておくように」
「起立、礼」

ようやく退屈な時間が終わり、昼食の時間、俗に言う『昼休み』という時間帯が始まる
弁当持ちは教室やら中庭やらと移動して食べる
食堂組は食堂へ一直線だ

「よう、タロウ昼メシどうするよ?弁当だろ、外で食うか?」
「いや、教室でイイぞ、いつものイベント待ちをするから」
「は?」

そう間も空かないうちに教室のドアが勢い良く開けられる
あのような開け方したらドアが痛むのでは…まぁいいか


546 :533 [sagege] :2009/03/20(金) 05:15:03 ID:VP9rjp1S

「アっちゃ~ん!!お昼持って来たよ!!」
「ほら来た」
「アヤ!?お昼って…その手に持ってるヤツか?」
「そうだよ~張り切って作ってきたんだから」

あれはどう見ても重箱だ、今日は特別な日でも何でもない事だけ言っておく

この若干痛そう(褒め言葉)な子は俺の幼馴染でもあり
アツシの事が大好きな女の子「ナナセ アヤ」ちゃんだ
運動、成績ともに平均より少し上位だが
容姿が抜群の可愛い、かなりの高ランクである事は確かだ
決してケバくなく純粋で正統派な可愛さ、この学校のアイドルと言えよう
アツシに対する言動は多少アレだが、基本はイイ子&出来る子
校内で両性共に敵が居ないようで、教師にも好感
胸は…大きくない、小さくもない、適乳だ
「アツシ」は『アっちゃん』俺は『タロウ君』と呼ばれている…同じ幼馴染なのにこの差一体

「アヤ悪いけど俺、弁当持ってきてるし…」
「え?…」
「気持ちは有難いのだが…アヤの弁当は要らない…」
「そうだよね…私が作った、お弁当なんか要らないよね…」

どんどん暗くなっていくアヤちゃん、ソレを見てアツシは

「いや!そんな事は無いぞ!アヤが俺の為に弁当作ってくれるのは本当に嬉しいし」
「でも…要らないんでしょ、」
「ぐ…それはそうだけれども…」
「やっぱり、私が作ったモノなんか食べたくないんだ…」
「いやいやいや、ナゼそうなる!俺は!食べたくないとは言ってない」
「じゃあ、貰ってくれるお弁当?」
「ええと…それは…」

やはり学校で昼休みに、この二人のこのやり取りを聞かなければ
昼休みという感じがしないな…これぞ「ザ・夫婦漫才」

だが、いつまでもこのやり取りを続けさせるのも可哀想なので
俺も定例通り、この事態の収拾することにする

「アツシ、オラ弁当忘れただ、お前の弁当さ貰うべ」
「はぁ?お前さっき自分の持って…ってもう食うとるがな」
「アイヤー助かったアルヨ、アツシさん心広いアル私とても感動したネ」
「人の弁当食いながらボケるとはいい度胸だ」
「まいうー」
「…よし、死ね」

狩人と化したアツシから逃走し
俺らのやり取りをボーっと見ていたアヤちゃんの後ろに隠れ言う

「ア、アヤちゃん」
「何?タロウ君」
「この飢えた可哀想な学生アツシ君に君の弁当をあげてくれ」
「へ?」
「アツシ君は不道徳な輩にお弁当を盗み食いされてしまって…」
「お前が食ったんだろうが!!」
「はてさて?何のことやら」


547 :533 [sagege] :2009/03/20(金) 05:17:41 ID:VP9rjp1S
「アっちゃん」

アヤちゃんがアツシに語りかけると同時に
アヤちゃんからさり気なくはなれ、自分の席に移動する
二人の邪魔しちゃ悪いし、俺だって馬に蹴られて死にたくないからな

「何だ?」
「えっと…お弁当で要る?」
「そうだな…アホに弁当食われたし、ありがたく頂きます」
「どうぞ、召し上がれ!残しちゃ嫌だよ!」
「残さねぇよ」

ぱぁっと明るくなったアヤちゃんだったが
”グゥー”とアヤちゃんから腹の虫の声がした
アヤちゃんが真っ赤になっていく…
ココでツッこまないのが男道

「なんだアヤ腹減ってたのか、一緒に食おうぜ」
「うん」

さすがアツシだ無意識で男道を行くとは…
恥ずかしそうにしながらもアツシと席について
食事を始めるアヤちゃん

「おお!!上手いぞアヤ!!」
「そう?アっちゃんそういってもらえると嬉しいな」
「料理のウデは抜群だな~」
「エヘヘ…あ、これも食べてみて」
「おお、煮物か」
「アっちゃん、はいアーンして~」
「バ、バカ!!やめろ!!」
「アイヤ~、お暑いネ~お二人さんまるで新婚さんアルヨ」
「ゴフッ!タ、タロウ何言ってやがる!」
「………」

無言のアヤちゃん顔が真っ赤、アツシもアツシで焦りすぎだろ

これにて一件落着、めでたしめでたし



548 :533 [sagege] :2009/03/20(金) 05:19:41 ID:VP9rjp1S
昼食を済ませた後、3人であーだこーだと色々話しをした
流行の映画、芸能人、昨日見たテレビ番組などありふれた学生の会話だ
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り
アヤちゃんが自分のクラスへ戻る前に

「タロウ君、さっきはアリガト」
「かまわんよ」

そう言って”キラッ”と効果音が出そうな笑顔をくれた
あんな笑顔をみせられたら恐らく10中9人はアヤちゃんに
惚れてしまうだろうな…

「アっちゃんまたねー」
「おう」

教室を後にするアヤちゃん
そのアヤちゃんが惚れてんのはアツシ、アツシもアヤちゃんに惚れている
二人ともハッキリしてないが、急いでハッキリさせる必要もないだろう
いずれ、二人がハッキリさせるだろう…
昔からグダグダしている二人に「きっかけ」を作ってやって…
助けつつも助けられて、いびつながらも安定したそんな関係

別に俺はこれでいい、今の平和な状態が続けばそれでいい…


『平和とは手に入れるより、維持するほうが何倍も困難』


俺がその事を思い知るのはもう少し後の事となる…