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228 :Chains of pain [sage] :2009/04/15(水) 03:15:36 ID:JVkwr/Bz
「うん、それじゃあまた明日、七海……」
「また明日。ちゃんとカレー、食べてよね」
「もちろんだよ」
春斗の手にはカレーのタッパーがあった。
「……優花ちゃんによろしくね」
「わかってるって」
笑顔でそう返すと、春斗は歩き出した。
「…………また……明日……」

「ただいまーーーっ、ごめんね優花」
いつものように扉を開けて入る。
「お帰りなさいお兄ちゃん」
優花の足音が近づいてくる。
春斗は自分のタッパーではない別の匂いに気がついた。
「……お兄ちゃん、今日はカレーだよ」
優花は春斗の前で立ち止まると、さっそくタッパーに目が留まる。
「……あぁ、これ? 七海の家で教えて貰ったんだ」
「…………へぇ、教えて貰ったんだ……七海さんに……」
「どうかした? 優花、顔が暗いよ?」
その一言に優花は我に返ると、苦笑いをした。
「そう? なんでもないって」
「ならいいけど……でさ、これ僕が作ったんだ」
タッパーをじっと見つめる優花。
「……そうなんだ、七海さんにも手伝って貰ったんでしょ?」
「う~ん、僕だけだったらこんなに上手く作れないよ」
「…………あの女が作ったんだ……」
あれ? 今、何か言ったよな?
「それでさ、自ぶ……」
「うん、お兄ちゃんが作ったんでしょ? あたしが味見してあげる」
笑顔でそう遮ると、優花は僕からタッパーを取り上げた。
「……どうしたの? 優花……変だよ?」
「そんな事ないよ。お兄ちゃんが作ったんでしょ? うれしいな……」
靴を脱いで家に上がる。
「ご飯を用意してあるから食べてね」
「あれ? 優花は食べないの?」
「……あたしは、先に食べたから……」
今一瞬、笑顔が消えた気がした。
「そっか……じゃあ食べるね……」
優花はタッパーを持ったままキッチンの方へ歩いていく。
その後姿は、普段あんなに明るい優花とはまるで別人な気がした。
「……いただきます」
席についてテーブルの上に置いてあるカレーを見る。
やはり優花のカレーは綺麗というか、完璧なつくりだった。
(やっぱり優花はすごいな……)
スプーンを左手で持つと、いつもの様に口に運んだ。



229 :Chains of pain [sage] :2009/04/15(水) 03:16:00 ID:JVkwr/Bz
食器を洗い終えると、部屋に戻ることにした。
「優花、ご馳走様」
「うん、おいしかった?」
優花は丁度リビングに入ってきたらしく、いつもの笑顔で聞いてきた。
「すごいおいしかったよ。あれってどうやって作ってるの?
なんだかルーで作るのとは全然味が違うというか……」
「ひどいよお兄ちゃん、ちゃんと香辛料の調合から作っているんだよ?
ルーからなんて邪道だよ」
「香辛料の調合……って、そんなに大変な事をしているの!?」
幸せそうに笑う優花。
「もちろん、ルーだと思うような味がだせないんだよ?」
「……大変じゃないの?」
「大変じゃないよ、最初からそうだもん。慣れちゃったよ」
知らなかった。今まで何も気にせず食べていた自分が恥ずかしい。
「ごめんね、そんなに手が込んでたなんて……」
「あれ? なんでお兄ちゃんが謝るの?」
「……気持ちの問題かな……」
「えへへ……お兄ちゃんは楽しいね。ところでこれからお風呂?」
「……そう……だけど、どうかした?」
「な、なんでもないよ」
顔を赤らめながらキッチンの奥へと消えていく優花。
今日の優花は変だと、改めて思った。

リビングの時計は二時を指していた。
もう既に春斗も寝てしまっている。そんな時間に薄暗いキッチンに優花はいた。
「…………このカレー、あの女が一緒に作ったんだ……」
カレーを生ゴミの入った袋に突っ込む。
「このカレーをお兄ちゃんだけが作ったんだったらあたしは喜んで食べるのに……」
袋を縛ると、その袋を大きなゴミ箱に投げ入れる。
「これで安心だね、毒物はちゃんと処理しなくちゃ」
うつむいた優花は歯をかみ締めた。
「……お兄ちゃん……」