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343 :良家のメイドさん 中編B-side (1/4) ◆6AvI.Mne7c [sage] :2009/04/23(木) 23:38:30 ID:np2bNnLo
 
「おはようございます、弟さん」
 知らない女性の声で、俺は目を覚ました。
「ああ、おはよう……!?」
 そこでふと気づいた。メイド服を着たアンタは、いったい誰ですか?
 
 あ、知らない人は始めまして。俺はとある中流家庭の長男坊っス。
 名前は、晴(はれ)。けれど、皆には何故か音読みで「せい」と呼ばれている。
 年の頃18歳。現在実家を離れて、大学生活を満喫中だ。
 そういや、美人でブラコンの姉貴がいたけど、こないだ金持ちんトコに嫁いで行ったっけ。
 
 
「ええっと……、その、アンタはいったい、どなたですか?
 この部屋――もとい俺の実家にも、アンタみたいなメイドを雇う金なんざ、ないんだが……」
 これは事実だ。ウチには姉貴の嫁ぎ先みたいに、給仕さんを雇う余裕など、ひとつも無い。
 むしろ、1ヶ月前までは、今は亡き親父の借金で、困っていたくらいだ。
 
「ええ、存じ上げておりますわ。ですが、別に心配はいりません。
 私は、あなたがたのために、ここに派遣されてきた者ですから」
「ふえ!? そうだったのか? そんな連絡はもらってないけど……」
 まさか、姉貴がこっそり、メイドさん派遣を手配したのか?
 いやいや、多分それはない。なぜなら俺の姉貴はブラコンだからだ。
 姉貴は結婚するまで、異常なほどのブラコンで、常に俺にべったりしていた。
 だから、俺は今まで恋人もいなければ、姉貴以外の女の子と、手をつないだことも無い。

 
「あの、お恥ずかしいことに、私が若奥様――あなたのお姉さまに粗相を働いてしまいまして。
 今朝になって、急に若奥様の勅命で、こちらに来るように指示されたのです。
 もちろん、アナタのご母堂には、連絡を通してますので、ご安心ください。
 最低でも、こちらには1年近くは、お邪魔する予定になっておりますので――」
「そうっスか…………」
  
 正直なところ、姉貴も心が狭くねぇか、と思わないでもない。
 なんというか、それってほとんど、左遷じゃないかよ。
 それこそ、1年間も追放されるなんて、屋敷所属のメイドさんである彼女には屈辱だろう。
 だから、なんとかして姉貴に口利きして、彼女を屋敷に返してやれれば――
 
「あなたは、優しいひとなんですね。
 こうしている今も必死で、お姉さまに私のことを、許してもらおうと考えています」
 突然目の前の女性に指摘されて、すこしビックリした。
 どうやら、俺は考えていたことを、うっかり口にしていたらしい。
 
 
「それほど心配していただかなくとも、構いません。
 私だって1度でいいから、屋敷の外で働いてみたかったのですから」
 そう言って俺の手を、両手で優しく包み込んでくれるメイドさん。
「そうっスか……。じゃあメイドさん、今後ともヨロシクお願いします」
 初めて姉貴以外の女性に、正面から手を握ってもらえた。
 なぜだか懐かしい気分になりながら、俺は今日からの生活を考えてみた。
 



344 :良家のメイドさん 中編B-side (2/4) ◆6AvI.Mne7c [sage] :2009/04/23(木) 23:43:07 ID:np2bNnLo
 
 だいたい2時間程度経ったのだろうか。
 俺はメイ(呼び捨てで構わないと本人談)と、色々な話をした。
「晴(はれ)さま。あなたになら、私の本心を、話してもいいのかもしれませんね」
 突然そんなことを言われて驚いたが、俺は真剣に、彼女の言葉に向き合った。
 
「実は今回の派遣は、晴さまのお姉さまに、私のほうから頼み込んだのです。
 私には、ほんのささいなことですが、屋敷に居たくない理由がありました。
 なので、今回の粗相の件を機会に、ここまで逃げ出してきたのです。
 私は――あのお2人に、私の居ないところで、幸せになって欲しいのです――」

 メイらしい、敬語で取り繕った、不器用な心情の告白。
 俺はこのたった数時間の会話の中で、完全にメイに惚れてしまっていた。
 基本的に、なにかと姉貴のことを通して俺を評価する連中の多い中で――
 俺のことだけを真っ直ぐ見てくれる、その真摯さに惚れてしまったのだ。
 
 
「晴さま、私はショックを受けて逃げ出した、卑怯で臆病なメイドなのです。
 私は坊ちゃま――もう手の届かない彼の許に居るのが、とても辛かったのです。
 私にとって、坊ちゃまは雇い主にして、片思いの相手だったんですから……」
「ああ……、確かに俺も、姉貴が嫁いだってのには、結構ショックを受けたな。
 今までずっと一緒だったから、なんかいなくなって、寂しいしなぁ。
 ホントは俺、姉貴に嫁になんて、行ってほしくなかったのかもしれない――」
 
「でも、私は自分で、あのお2人から身を引く覚悟を決めました。
 そして、私が自分から本家に戻ることは、おそらくありません。
 あのお2人が幸せになってくだされば、それが私にとっても、最良なのです」
「幸せに――か……。なれるのかな、俺の姉貴と、姉貴の選んだ『坊ちゃま』は――」
「なれますよ。なんたってあのお2人は、とても魅力的な人たちですから。
 だから私は、これから自分の新しい幸せを探します。協力してくださいね、晴さま?」
 



345 :良家のメイドさん 中編B-side (4/4) ◆6AvI.Mne7c [sage] :2009/04/23(木) 23:46:28 ID:np2bNnLo
 
 そんな俺たちが愛し合う関係になるのに、それほど時間は掛からなかった。
 最初にセックスをした日は、大学も休みだったので、つい調子に乗ってしまった。

 不思議なことに、その時のセックスは、なにか懐かしい感じがした。
 お互い初めてだというのに、夢の中で何度も経験していたような気がした。
 夢の内容がさらに鮮明になって、より鋭敏になったような、とても最高な時間だった。
 
「ああ、愛しています、晴さま――いいえ、晴(せい)くん……」
「ああ、俺もだ。大好きだよ、メイ……」
 
 
 
 そして、あの日から5ヶ月が過ぎた。
 俺とメイは、相変わらず仲睦まじく、恋人関係を続けている。
 そしてつい先日、メイから、妊娠した旨を告げられた。
 どうやら、3ヶ月目らしい。母子共に健康だそうだ。
 
 俺の身分的にはちょっと厳しいかもしれないが、とても嬉しかった。
 最初の日から、何度か避妊なしのセックスを重ねていたから、そりゃ妊娠するよなぁ。
 おふくろが「孫の顔は見れるのかねぇ~」と常にぼやいてたので、ちょっと安堵してるけど。
 
 
 俺たちは、この件をおふくろに報告するため、長期休暇を利用して帰省した。
 懐かしい町並みを、恋人であるメイを連れて歩くのは、なんだか誇らしかった。
 実家に帰ると、おふくろもそこそこビックリしていたけど、とても喜んでくれた。
 まあ、姉貴が嫁ぐ前の状態がアレだったから、おふくろもすごく心配していたしな。
 まっとうに家庭を持つことができそうな俺に、安心してくれたんだろう。
 



346 :良家のメイドさん 中編B-side (4/4) ◆6AvI.Mne7c [sage] :2009/04/23(木) 23:50:21 ID:np2bNnLo
 
 違和感を感じ始めたのは、いつごろからだったのか。
 
「いいえ、本家に妊娠を報告するつもりは、いっさいありません」
「あ~、でもそれだと、メイの雇い主たちに申し訳ないんだけど――」
 そうだ。メイが頑なに、本家との連絡を拒み出した時だった。

 メイが派遣されてきてから数ヶ月、彼女は本家に向けての連絡を一切絶っていた。
 理由を聞いても、彼女らしい敬語で、ひたすらごまかされるばかり。
 そこで、納得のいかない俺が、勝手に彼女の雇い主たちに連絡しようとした時。
 
 
「まったく、駄目じゃないですか、そんな無礼なことをしては。
 私を派遣してくださった若奥様に、ご迷惑が掛かってしまいますよ?」
 メイが言うと同時に、俺の両腕が急に動かなくなり、持っていた電話機を落としてしまった。
 何かよくわからないが、かなり強力に固められているようで、もがくことさえ不可能だった。
 
「いや、だから俺は――姉貴に直接――れんら、くしよう……と……」
「ですから、その必要はないと、申し上げているのです」
「なんでさ!? 姉貴には、なるべく迷惑かけないように――するから」
 
 
 俺のその言葉に反応したのか、メイは突然、豹変したように笑い出した。
「うふふ、うふふふ、あはははははは!
 まったく、まだ気づかないのかなぁ――せ・い・きゅん?」
 
 最初に俺は、自分の耳を疑った。
 突然目の前にいた、メイであるはずの人物から、姉貴の声音で、あの呼び名が聞こえたから。
「!? な、なんで――アンタ……、姉貴、なのか……!?」
 
 驚愕する俺に、彼女は喜々として、満面の笑みで言葉を紡いできた。
「うん、そうだよ。最初っから、私はあの『メイ』ってメイドと、入れ替わっていたの。
 だから、せいきゅんはずっと、私と交わっていたのよ。びっくりしたでしょ?
 入れ替わった方法は――知ってるよね? 私が得意だった催眠術――『操心法』だよ♪」
 
 すべては、あの瞬間から始まっていた? いや、しかし――だとしたら――!?
「待ってくれ、姉貴!? それじゃあ今、本家――嫁ぎ先はどうなってるんだ!?
 本物の『メイ』って名前のメイドは、どうなったんだ!? 答えろ――」
 
「さあ、そんなちっちゃいことは、どうでもいいじゃないの?
 ふふふっ、さあせいきゅん。また今夜も、2人きりで愛し合いましょう?」
 
――そして俺は、もう何度目かもわからない、姉貴とのセックスに流されていった。