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713 名前:桜の幹[sage] 投稿日:2009/05/18(月) 13:12:27 ID:ZxkbSc9Y
多分、給食費の盗難事件から始まったんだと思う。
小学校の頃、皆が親から預かってきた給食費が消えたことがあった。
発覚が一時間目の前にあるホームルームだったので、担任の教師はこの中に犯人がいると、すぐさま持ち物検査を強行した。
勿論、犯人はあっけなく捕まった。
犯人はランドセルの底にびっしりと給食費の封筒を隠していたのだ。
教師は犯人を咎め、クラスメート達は侮蔑の目で犯人を突き刺した。
「何でこんなことをしたんだ!!」
教室中に響き渡る怒号と、胸を締め付けられる様な罪悪感。
でも、咎められているのは、
「答えろ!幹也!!」
何故か、この僕だ。
それから、僕は担任に何度も小突かれ、初めて六限目まで説教された。
最後の終わりの会で皆に謝れと教師に命令され、クラスメートの前で土下座をさせられた。
ここで終わるならまだ「そんな事もあったな」なんて冗談めかして言えるのだろうけど、事の収拾はそれでは済まなかった。
翌日から、クラスメート達からの視線は変わり、陰湿なイジメが始まった。
靴を隠される、リコーダーを折られる、机が消える。
そんな事が毎日毎日続けられた。
悔しくて、悔しくて、毎日寝る前に泣いた。
教師に相談しようにも、担任にだけにはこの事を言いたくなかった。
もう担任の顔も、イジメの内容もハッキリとは思い出せなくなってきたけど、毎日毎日悔しさを噛み締めていたのだけは今でも覚えている


もう、五年も前の話だ


714 名前:桜の幹[sage] 投稿日:2009/05/18(月) 13:13:01 ID:ZxkbSc9Y
「幹也君、帰ろう?」
あの頃と変わらない口調で幼馴染の石田さくらはそう言う。
勿論、僕の答えは決まっている。
「うん、帰ろうか」
教室でも、廊下を歩いていても、話しかけられるのはさくらだけ。
皆、僕の事なんか気にも留めない。
靴を履いて、校門を出ると、さくらは急に腕を絡めた。
「幹也、今日は何かあった?」
もうこれも定石になりつつある。
「何にも」
そっか、と嬉しそうにさくらは絡めていた腕にまた力を込めた。
小五のあの事件から今まで、さくらはずっと僕と帰ってくれている。
それは多分可哀相だとか、同情とか、その辺のもんが色々混ざり合ってこうなってるんだと思う。
見事なまでに社会に打ちのめされた僕にとってさくらは唯一の友人であり、
「ねぇ、幹也」
「ん?」
「今日さ、家に誰もいないんだよ」
「・・・・・」
「だからさ、今日も・・・しよ?」
唯一の関係を持てる相手だった。


「それとも・・・嫌?」
「嫌って事も無いけど・・・」
「じゃ、決まりだね」
僕が知る中で、石田さくらはかなりの美少女の部類に入る。
髪型はボブカットで、身長は僕とあまり変わらない。大きな瞳は少し垂れていて、鼻はこれ以上どうすれば可愛くなるのか教えて欲しいと

言わんばかりに通っている。唇は血色のいいまま可愛らしく定位置に鎮座。おまけにプロポーションも抜群で、何と言うか色々な意味で反

則的なまでに遺伝子の恩恵を受けている。
おかげで中学では告白された回数も凄まじかった。
仕舞いには教師からも告白されていたくらいだ。
転じて僕は何の取り得も無い普通のイジメられっ子。
小学校五年生から現在の高校一年までイジメられなかった年は無く、おかげで性格には起伏があまり無い。
一日の内、会話が成り立つのは家族とさくらだけだった。
携帯にはさくらと家族のアドレスしか入っておらず、メールの大半はさくらとだ。
いつからこんな事になってしまったのだろう?
僕は隣で嬉しそうに僕と腕を組むさくらを見てそう思った。



715 名前:桜の幹[sage] 投稿日:2009/05/18(月) 13:13:33 ID:ZxkbSc9Y
あの事件の当日、僕は罰として教室の大掃除を一人でやるように言い付けられた。
ワックスを持って三階の教室まで行く途中、僕の中でまた悔しさが湧き上がり涙が零れてしまった。
下校から一時間経っても、帰れない僕は両目を腫らして、教室に戻った。
すると、
「んしょ、んしょ」
雑巾で落書きされた僕の机を丁寧に磨いているさくらが居た。
「あっ、幹也!」
僕は、腫れた両目を伏せる。
「何してんの?さくら」
「幹也の机がさ、ほら」
多分、油性マジックで書かれていたんだろうけど、さくらの必死の処置で薄められた「泥棒幹也」の文字が見えた。
「皆、酷いよ。幹也は何も盗ってないって言ってのにさ。あれ?幹也?」
僕は多分両目が痛いって言ってるのに泣いてたんだと思う。
さくらは困った顔してから、無理な笑顔を作って僕を励ましてくれた。
「大丈夫だよ幹也、私だけは幹也を信じてるから」
僕はぐずりながら、さくらはそんな僕を励ましながら、下校時間ギリギリまで掃除を続けた。

716 名前:桜の幹[sage] 投稿日:2009/05/18(月) 13:14:15 ID:ZxkbSc9Y



玄関を開けて、靴を脱いで入るとさくらはすぐに僕に接吻を要求する。
いつもの事だ。そう言い聞かして、僕はさくらの唇に触れる。
「んっ」
すぐに離す。でも唇を離した直後、乱暴にさくらに頭を鷲掴みにされて今度は強引な接吻を強制される。
「んっ!?」
舌が入ってきた。そのまま僕の舌に絡めてから次は歯茎を舐め取っていく。
そしてまた舌を絡める。
そんな事が長い間繰り返されて、さくらはゆっくりと唇を離した。
「「はっ」」
互いに同時に呼吸する。さくらはそんな事がおかしいのか微笑む。
「ベタベタになっちゃったね」
さくらはそう言うと、今度は僕の口の周りを丁寧に舐めた。
よし、と言ってさくらは満足したように笑う。
「今日も、たくさんエッチな事しようね」
さくらは妖しく僕の唇を指でなぞる。
いつから僕らはこんな関係になってしまったのだろう?
さくらは肉欲のために僕を求め、僕は唯一の君を繋ぎとめるために君の肉欲を満たす。
きっと、僕がいなくてもさくらは誰でもいいんだろう。
都合が良かったのが僕だっただけで、他の理由が思い浮かばない。
でも、それでも僕は構わないと、そんな理由でも傍にいて欲しいからと、僕は君からの要求には逆らわない。
そんな僕の陰鬱な思考が、君を狂わせてしまったのかもしれない。
ごめん・・・・・さくら。




717 名前:桜の幹[sage] 投稿日:2009/05/18(月) 13:14:49 ID:ZxkbSc9Y
◇◇◇
「幹也、帰ろう?」
もう私だけにしか喋らくなった彼に私はいつも通りの声を掛ける。
彼は眼鏡の向こうから、私を一瞥するといつも通り弱々しく、こう答える。
「うん、帰ろうか」
教室でも、廊下でも、彼に話しかける人は誰もいない。
着実に、そして加速していく彼の孤独に私の心はいつも醜く歪んでいく。
私は彼の孤独を演出していく、私は彼の孤独を加速させていく。
そして彼が着実に私の物になっていく。
私の色に染まっていく。
それが私を喜ばせ、満たしていく。
校門を出て、私はすぐさま彼と腕を組んだ。
彼は困ったような顔をするが、断れないのを私は知っている。
念には念を、私は彼に尋ねる。
「幹也、今日は何かあった?」
彼は悲しそうに「何にも」と呟く
「そっか」
今日も異常無し。私はそれが嬉しくてまた幹也の腕を強く抱きしめる。



718 名前:桜の幹[sage] 投稿日:2009/05/18(月) 13:15:16 ID:ZxkbSc9Y
私の幼馴染、菅野幹也は昔から私の特別だった。
小さい頃から二人で近所を駆け回り、小学校低学年ぐらいまではずっと私と二人っきりで遊んでいた。
幹也はあの頃から素敵だった。可愛い黒縁眼鏡に、華奢な体。でも声も性格も気持ちいいほど良く出来てて、誰もが構いたくなってしまう魅力を持っていた。
対して私は空っぽで、私は幹也を楽しませるといる事で満たされていた
だから私は幹也と遊ぶために幹也の好きな話題を探し、幹也の好きな遊びをするために私は駆け回った。
でも、それも小学校四年生ぐらいまでで、幹也に私より面白い友人が出来た途端、幹也は私とあまり遊ばなくなった。
私はそれが面白くなくて、なんとか幹也を取り戻せないか毎日悶々としながら眠る前に考える様になっていた。
やがて、幹也は私と帰らなくなってきた。
「さくら、帰ろう」
いつもならこう言って、私に駆け寄ってきた幹也は私以外の奴と楽しそうに談笑しながら帰っていた。
私はそれを見て、脱力感と共に危機感を覚えた。
このままではいけない。
このままでは幹也が私を忘れていく。
でも、どうすればいい?
あんな奴、殺してもいいけど、殺人なんてしたら簡単に事件が暴かれて私はきっと幹也の傍にいられなくなってしまう。
もっと良い方法を、考えなくちゃ。
自分でも醜いと、冷たいと思ってしまう心が渦を巻いていく。
なんて、無様なんだろう。
幹也を思うためにこんなに歪んだ心持ち。こんな心、幹也に見せたらきっと拒絶されてしまう。
          • そうか。
アイツらがどれぐらい醜いか、どれだけ簡単に幹也を裏切るか、幹也に教えなくっちゃ。
そうじゃないと、幹也が騙されちゃうもんね。
幹也のために、幹也のために誰が一番幹也の事を考えているか教えなくちゃ。



719 名前:桜の幹[sage] 投稿日:2009/05/18(月) 13:16:03 ID:ZxkbSc9Y
玄関に入り、私は靴を脱いだ幹也に接吻をねだる。
幹也は恥かしがって触れる程度のしかしないけど、私はもうそんなのじゃ我慢できない。
唇が離れた瞬間、私は強引に幹也の頭を掴んで引き寄せる。
唇が優しくプレスされる。
それだけで私の脳内の化学物質は変化し、甘い痺れを全身に送信する。
背中に走ったそれは、毛穴にまで分散して均等に私を痺れさせていく。
(堪らない・・・・・)
舌を、入れる。
幹也は舌を引っ込めて空しい抵抗を取るけど、そんなのはまさしく逆効果、火に油を注いでる。
私は抵抗された方が燃えるのかもしれないないよ?幹也。と内心毒吐きながら、幹也の舌を引きずり出す。
まるで絞り取るようにして唾液を飲み込むと、今度は歯茎を舐めていく。
そんな事を満足するまで続けた。
「「はっ」」
ほぼ同時に息を吸う。
私の唾液でベチョベチョになった幹也の顔に私は満足を覚えて微笑む。
「ベタベタになっちゃったね」
そう言って彼の顔を舐める。
(嗚呼、私今ものすごく感じてる)
舐め終わり。幹也は呆然と言った様子で私を見つめていた。
幹也の瞳の中には私しか映っていない。
それだけで私は興奮してしまう。
「今日も、たくさんエッチな事しようね」
私は微かに震える指で彼の唇を形に添ってなぞった。



720 名前:桜の幹[sage] 投稿日:2009/05/18(月) 13:20:46 ID:ZxkbSc9Y
私が幹也の身体を求めるようになったのは小学校六年生ぐらいの頃からだった。
あの事件からすっかり幹也は人を遠ざけるようになった。
これもあの糞担任の「愛の鞭」というやつのおかげだろう。
幹也を殴ったときはPTAに直訴してやろうかと思ったけど、あれのおかげで幹也は私以外の他人に疑心暗鬼になってくれたのだから。
あの事件からまた幹也は私と登下校を共にするようになった。
それが堪らなく嬉しかった。
修学旅行の時も私としか行動しなかった幹也。
勿論、教師達が撮った写真の中の幹也は私としか写っていない。
その写真をわざわざ私は二枚ずつ買って、幹也と分けた。
幹也には私しかいないって事を教えるために。
それから私はその写真の中の幹也を夜な夜な眺めるようになるのだけれども、私はその写真を眺めるたびにムラムラとした気持ちになり、

僅かにくすぶる疼きを気にするようになった。
卒業式の前日の晩、私はついにその一線を越えた。
なぜ疼くのか怖くなった私はそこに触れてしまったのだ。
触った瞬間、感じたことも無い衝撃に体が震えた。
それからは無意識に幹也の名を呼んでいた。
写真の中にいる筈も無いのだけれども、私は写真の中で笑う幹也を犯した。
それが、私の決意をさらに明確な輪郭に決めた。
「み・・・・・きや。幹也には私がいるもん。他には何も要らないよね?ね、幹也」
多分、私はこのとき薄く笑みを零していたのだと思う。
だって、初めて少し自分の中が自分の手で埋めれたと思ったから。



721 名前:桜の幹[sage] 投稿日:2009/05/18(月) 13:22:34 ID:ZxkbSc9Y
初めての幹也との情事は中学を卒業してからの春休みの半ばだった。
中学も順当にイジメ生活を送っていた幹也は勿論受験を終えてしまった春休みに私以外に遊ぶ相手なんかいる訳も無く、ほぼ毎日私と惰眠

を貪っていた。
私はこの頃から、もうオナニーごときでは満足出来なくなっていて、『幹也とエッチなことをしよう』と企んでいた訳だ。
今でも覚えてる三月二十九日。
合格発表を共に喜んで、私と幹也は私の家で昼食を食べる事にした。
家に着いて、食事を終えた直後、幹也が私の肩に『桜の花びらが着いてる』と気付き取ろうと近づいた時。次に私は、幹也を押し倒してい

た。
私を仰ぎ見る幹也の瞳には私しか映っていない。
我慢できず口が開く。
「幹也、しよ」
この頼みを幹也が断らない確証があった。
元々、幹也は人が良い性格のため、人に頼まれたら断れない性分だった。
それに、たった今幹也には家族以外に関係を持つ人物は私しかいない。
畳み掛けるみたいに私は口走る。
「それとも幹也は、私のこと・・・・・嫌い?」
断れば幹也は孤独に堕ちる。
幹也は断らない、絶対にだ。
「・・・・・」
沈黙。
幹也にも分かっている筈だ。喉元にナイフが突きつけられている事ぐらい。
「沈黙は、了解でいいって事だよね?」
私はその事を確認する様に幹也に口付けをする。
何度も、何度も。
徐々に間隔を短く、接する時間を長く、そして深く。
初めての接吻を終えて、私は呟いた。
「幹也、私がずっと傍にいてあげるから」
そう言って幹也の瞳の中にいる私はひどく上機嫌に微笑んでいた。



722 名前:桜の幹[sage] 投稿日:2009/05/18(月) 13:26:20 ID:ZxkbSc9Y
情事を終えて、私は幹也の胸板に顔を埋める。
幹也は仕方無しに私と身体を重ねてる。それは知ってる、だってそれをキッカケにこうして今も身体を合わせていたわけだし。
こうやって幹也と抱き合うのには概ね満足はしている。
でも、私はもっと自分を満たそうとしている。
幹也が私を仰ぎ見たときに映った私だけしかいない幹也の世界。
それを垣間見ることが出来たあの瞬間に私の全ては満たされる。
だから私はこれからも幹也の孤独を深くしていくだろう。
幹也を他の色が混ざる余地が無くなるまで染めていくだろう。
大丈夫、ここまでやって来たのだから。
小学校の頃クラスメートの給食費を幹也のランドセルに詰めた時だって、心は痛んだけど幹也のためを思うと我慢出来た。
中学に入った頃だって、幹也の嘘で固めた悪評を流した時も、私は幹也のためにと心を鬼にして出来たじゃないか。
今年だって・・・・・。
幹也、幹也のために今までやってきた事で私は間違いなんて一つも犯してない。
だから大丈夫。
幹也は私だけに、私だけを知ってればいい。
友達なんか要らない。私がいくらでも面白い話を聞かせてあげる。
恋人なんて私以外認めない。いくらでも幹也の空洞を埋めてあげる。
だから幹也は私だけでいいよね?
私は心の中でそう呟いて、横に眠る幹也の頭を優しく抱きしめた。