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570 :天使のような悪魔たち 第9話 ◆UDPETPayJA [sage] :2009/06/30(火) 20:52:07 ID:pQ/f0jQf
―――まだ、間に合うと思うか…?

その問いかけに、俺の最愛の女性(ひと)はこう答えた。

「大丈夫だよ。歩、君は僕の…いや、僕たちの運命を変えることができた。……運命は、ひとつきりじゃないよ。さあ、行くといい。―――きっと間に合うよ、お兄ちゃん」
「光、晶…有難う。―――行ってくる」

俺は、奴の…神坂 飛鳥の自宅付近で待ち構えていた。未来が見えたときには既に奴は学校を離れていたので、下手に探すよりこうして待っていた方が確実だと踏んだんだ。
そして案の定、奴は帰ってきた。時間は19時58分。俺は神坂に声をかけ…ようとした…のだが…


571 :天使のような悪魔たち 第9話 ◆UDPETPayJA [sage] :2009/06/30(火) 20:53:18 ID:pQ/f0jQf
*****

「やい神坂飛鳥!今日という今日は落とし前つけてやるぜ!」

声をかけてきたのは、今時珍しく特攻服を着た、見るからにヤンキーな男だった。
よくよく考えてみれば、大して聞き慣れたわけではないな。一応、確かに聞き覚えはある声だが。しかし…

「…誰だっけ?」

そう、思い出せない。

「キィー!忘れたとは言わせねえぞ神坂飛鳥!」
「だから、なんで俺の名前知ってんだよ。つうか名乗れよ」
「キ…サ…マァァ…フン、まあいい名乗ってやる」

男は目一杯息を吸い、大きな声で言った。

「俺こそは結意ちゃんファンクラブ会長、瀬野 遥! どうだ、思い出したか!」
「いや全然」

俺はしれっと言い返した。だって…知らないものは知らないし……名前聞き覚えないし?
あ…顔真っ赤にして怒ってる。ちょ、木刀なんかどっから出したんだ!? やべぇ、なんかすごい殺気―――

『―――どこ行くの? 飛鳥くん』

―――背筋がぞくりとした。
こいつか? いや、こいつは寒気がするほどの殺気じゃない。じゃあ一体…?
い、いやそれよりもこいつをどうにかしないと!?

「…わかった。頑張って思い出す思い出すから落ち着けって!」
「…チッ」

瀬野は舌打ちして、構えを解いた。ふう、助かったぜ。さすがに丸腰ではきついものがあるしな…
さて…どこで会ったっけな? 声には聞き覚えがあるんだけど…まてよ?

「お前、今何のファンクラブって言った?」

よく考えたらこれは重要なヒントだ。さっきはつい聞き流してしまったが…?

「決まってんだろ!? 俺たちのエンジェル、結意ちゃんのファンクラブだよ!」
「いやだから…その結意って…まさか!?」

まさか。まさかあの結意!? あのストーカー女のことか!?

ああ―――だんだん思い出してきた。

あれはそう、今から4か月くらい前のこと――――


572 :天使のような悪魔たち 第9話 ◆UDPETPayJA [sage] :2009/06/30(火) 20:54:07 ID:pQ/f0jQf
*****

俺は町を買い物か何かでうろついていた。そしたら―――

『ちょっ、た、助けてよぉ!』
『―――ちっ、めんどくせえなあ』

ストーカー女と出くわしたんだ。その時は互いに面識はなかった…はずだが、大声で助けを求められては見捨てるわけにもいかない。んで俺は路地裏に自ら踏み込み。

『オイイヤガッテルダロハナシテヤレヨ(棒読み)』
『あ゛ぁ!? 誰だお前! 外野は引っ込んでろ!』
『いやー俺もそうしたいんだけど…ねぇ?』

と、ちらと結意を見やる。結意は仔犬のような目で助けを求めてる…気がする。
『くそっ、バカにしやがってぇ!』と、男の一人が殴りかかろうとして…

【ガスッ】

『!?』

ついカウンター入れちまったんだ。男はそのままダウン。残る二人も襲いかかるが、俺の敵ではなかった。結果、三人とも地面とフレンチキスすることに………

*****

「思い出したぜ。俺とお前は確かに以前会ってる」
「…気付くのおせえよ」

瀬野は悪態を突きつつ、俺を睨む。

「…んで、今さら何の用だ?」
「ああ、俺はな…」

ん? なぜまた木刀を構える? ちょ、冗談よくない! 落ち着けって! 話せばわか―――
瀬野は大きく木刀を振りかぶった。

「結意ちゃんを泣かせたお前が許せないんだよぉぉぉ!」

と叫びながら振り下ろしてきた。やべ、止まって見える。ああ―――俺、死ぬのかな?

【ばすっ】

………ん? 生き…てる?

「ふぅ…避けるかガードくらいしろよな? 神坂」
「お前…佐橋?」

どこからともなく現れた佐橋が、瀬野の木刀を鞄でガードしていた。

「て、てめえ誰だよ!?」と瀬野は慌てふためく。対して佐橋は、

「…北中の玄武、と言えばわかるか?」とクールに返す。それを聞いた瀬野は顔を蒼くした。

「北中の玄武…かつて北中に乱入してきた30人もの不良をたった一人で返り討ちにした、伝説の中学生。 まさかお前が、お前があの…佐橋 歩!?」
「そうだ」

からん。瀬野は手にしていた木刀を落とした。さっきまでの覇気は感じられない。どうやら佐橋を恐れているようだ。

「ちなみに神坂は中学時代、"南中の朱雀"と呼ばれていた。そうだな?」急に佐橋が俺に会話を振ってきた。
俺は「ん? ああ、確か…な」と返した。


573 :天使のような悪魔たち 第9話 ◆UDPETPayJA [sage] :2009/06/30(火) 20:55:10 ID:pQ/f0jQf
もう随分と昔のことだ。近所をバカみたいな轟音をたてて走り回る暴走族がいた。俺は「うるさくて眠れない」といつも俺の布団に逃げてくる明日香の為に、そいつらをフルボッコにしてやったんだ。
族のヘッドの鼻と腕を折ってやり、片っ端から群れる雑魚どもを鉄パイプでいなしてやった。
連中の大半は失禁する始末で、その夜以来この街からは爆音は消えた。ったく…最近の若者は根性が足りんよ根性が。
なぜか翌日にはその一件が知れ渡り、それから変なあだ名がついたんだ。
ちなみに明日香はその晩、
『お兄ちゃん! 何であんな危ないことしたのよぉ! 馬鹿…ばかぁ…! うあぁぁぁん…』と泣きながら抱きついてきた。いやー、かわいかったなあの時の明日香。
それにしても……あん時の連中は木刀どころの騒ぎじゃなかったのに、木刀ごときでびびるなんて俺もヤキが回ったか?

と、瀬野はさらにガクブルしていた。

「お前が…南中の朱雀だと…か、勝てねえ…」
「ああ、やめておいた方がいいな」と佐橋。…そんなにびびられても困るなぁ。ああ、これだから俺はいつまで経ってもDTなのか?


「ところで瀬野。」

俺は瀬野に尋ねてみた。

「さっきの、『結意を泣かせた』っての…どういう意味だ?」

すると瀬野は再び顔を赤くし、

「ふざけんな! お前のせいで…お前のせいで結意ちゃんは泣いてるんだ! どうして結意ちゃんは…お前なんかのことを…!」
「……? 俺の、せい?」
「ってめえ…!」

怒りの形相で掴みかかってきた。おい、さっきのビビり様はどこ行った?
しかし俺は冷静に、瀬野の手首を掴んでくるりとキメてやった。

「落ち着けって瀬野? さっきから何の話をしてるんだ?」俺はもう一回尋ねた。
「っ痛ぇ…とぼけんなよ! てめえ、結意ちゃんのこと捨てやがっただろうが!」
「結意を…捨てた? 俺が?」
…今朝のアレのことを言ってるのか? こいつどこまで見てるんだよ?
確かにあの言い方はキツすぎたかもしれない。ムシャクシャして結意に当たる形になっちまったし、そこは反省べきだろう。
けど、捨てたわけじゃない。俺はただ、振っただけだ。俺はそう瀬野に言った。瀬野は、

「神坂ァ…ふざけんのもたいがいにしやがれ!」と、怒っている。まったく意味不明だ。

「てめえ、結意ちゃんと付き合ったろうが!」
「はぁ?」
「俺たちは、ずっと結意ちゃんのこと見守ってたんだ! とぼけたって無駄だ! てめえが結意ちゃんの家で一晩過ごしたことだって知ってる! …複雑な気持ちだったが、結意ちゃんがあまりに幸せそうだから俺たちは喜んだよ!」


574 :天使のような悪魔たち 第9話 ◆UDPETPayJA [sage] :2009/06/30(火) 20:56:01 ID:pQ/f0jQf
それってスト…と言いかけて、やめた。瀬野の表情は真剣だ。とても嘘を言ってるようには思えない。
俺の隣では佐橋が腕を組みながら話を聞いている。会話の分析でもしてるのだろうか?

瀬野はさらにまくしたてる。

「けどてめえは結意ちゃんを傷つけた! その気にさせといて…ヤっといて捨てるなんて…あんまりじゃねえのか!?」
「ヤっ…えぇ!?」

おい待て、俺はまだ童貞だぞ!? 何だ…ますます訳がわからねえぞ。

「…だいたいの話はわかった」

ふいに、佐橋が口を開く。何がわかったんだ?

「俺の見た映像…まあ、未来のなかに不思議なものがあったんだ」
「映像? 未来? 何の話だ?」瀬野は佐橋に尋ねる。代わりに俺が答えてやった。

「佐橋は未来予知ができるらしいんだ」
「はぁ!? それなんて厨二だよ?」
「まあ、とりあえず佐橋の話を聞こうぜ瀬野。…俺だって、未だに信じらんないんだから」

ちっ、わかったよ。瀬野はそう言い、佐橋に向き直った。

「んで佐橋、不思議なものって?」と俺は尋ねる。
「俺が見たのは神坂、お前が殺される映像だが…」
「ちょっと待て。俺死ぬのかよ!?」さらっと爆弾発言しやがって!だが佐橋は、
「まあ落ち着け。それを回避するためにこうして話してるんだ。」と、あくまでCOOL。

「それで、見えた映像の中に、小学生くらいの女の子の遺体が見えた。もちろん、お前を手にかけた奴もな」
「…誰なんだ?」
「誰なのかはわからない。会ったこともない奴だからな。ただそいつは、遺体の少女と瓜二つだった。遺体の方は髪を二つ結びにして、犯人はストレートだったが」」

―――ツインテールとストレートヘアの少女。心当たりがあった。だけどそれは一番、そうであって欲しくない二人…俺の姉妹だ。
そういえば昨日明日香は、結意の家に殴り込みに行った。そのとき姉ちゃんと再会したんだ。
姉ちゃんと二人で結意の家に駆けつけ、鍵を壊し……あれ? あの時なぜ俺は結意の家に迷わずに行けたんだ? しかも、どうやって鍵を壊した? まったく思い出せない!
そういや、あのとき姉ちゃんは何か大切な話をしていたはず…それも思い出せない。
しかも瀬野はさっき、俺と結意は付き合っていたと言った。…ヤったとも。そこで俺は、ひとつの結論に達した。


575 :天使のような悪魔たち 第9話 ◆UDPETPayJA [sage] :2009/06/30(火) 20:56:29 ID:pQ/f0jQf
―――記憶が、抜けている? だとするならば、やっぱ……

「…瀬野、結意は今どこに居る?」
「多分、自宅だと思うが…神坂、どうする気だ?」
「今から、結意のところに行く。お前らも、来てくれるか?」俺は二人に同意を求めた。

「構わない。お前を救うためだ」と佐橋。
「ったりめーだ! 嫌だっつってもついてくぜ!」と瀬野。

「…サンキュー。それじゃ、行くぞ!」

こうなったら結意本人に直接訊くしかあるまい。…俺一人で行く度胸はないが、幸いにも今はこいつらがいる。なんとかなるだろう。
もし結意が嘘をついたとしても、瀬野をシメあげ…もとい瀬野に確認をとればわかるはずだ。

そして俺たちは結意の家に向けて走り出した。


576 :天使のような悪魔たち 第9話 ◆UDPETPayJA [sage] :2009/06/30(火) 20:57:02 ID:pQ/f0jQf
*****

「―――すごいよお姉ちゃん! この力があれば、あの雌猫を殺すことだって簡単よ!…いえ、もっと惨めな目にあわせてあげることだって…くふふっ…」

明日香は、"力"に目覚めた。目の前にあった卑猥な雑誌はもう一冊残らず消されている。…やはりこの子も力を受け継いでいたのね。

「ふふっ…早くお兄ちゃん帰ってこないかなあ? そしたら頭の中きれいにお掃除して、私以外の女に目が行かないようにしてあげるのに♪」

……明日香のとろうとしてる方法は人として間違っている。けど、それは口にはださない。時間がない。明日香の幸せのために、もはや手段なんて選んでられないの。早くしなければ明日香は……。

「…ええ、そうね。早く帰ってくるといいわね?」
「うん、すごく楽しみだよ!お兄ちゃんとあんなことやこんなこと…きゃははっ」


さて、私は夕食でも作っておこうかしら。なにしろ、腹が減っては戦はできぬと言うし。
私は飛鳥の部屋を出て、台所に向かった。時刻は20時32分。…少し、帰りが遅いわね。なにか嫌な予感がするわ…


577 :天使のような悪魔たち 第9話 ◆UDPETPayJA [sage] :2009/06/30(火) 20:57:54 ID:pQ/f0jQf
*****

「さて、ここが結意の家なんだが…そうだな瀬野?」
「ああ、間違いねえ」

俺達は白塗りのアパートの前に来ていた。距離にして、俺ん家からダッシュで約10分程度か。昨日もそうだが、やはり迷わず来れた。
俺は結意の部屋の呼び鈴を押した。が…返事はない。もう一度押してみる。しかし反応は同じだ。

「おかしいな…この時間は家にいるはずなのに」とつぶやく瀬野。

―――やはり瀬野はストーカーだな。あえて口には出さないが…今度警察にチクってやろうか。それにしても…結意は今どこに?

「ちょっと待ってろ」瀬野は携帯を取りだし、どこかにかけた。

トゥルルルルル……ピッ

「もしもし…。………。…………、………そうか、わかった」ピッ
「どうしたんだ瀬野?」と聞いてみる。
「仲間に聞いてみたんだが…20時半過ぎに白曜の制服を来た男子と歩いてたらしいが、見失ったと」

白曜の制服。それは今俺が身に纏っているものと同じだ。

「…その男子の、特徴は?」
「特徴は聞かなかったが…結意ちゃんはそいつのことを"サイキ"と呼んでいたらしい」

心当たりはあった。…斎木 隼、俺の親友だ。俺達はマックで穂坂のノートを写していた。解散したのは20時半。
あのあとすぐに結意と合流した、という仮説は成り立つ。だが…どうして隼が? 一体どういうつもりなんだ?

「―――っ!」

不意に、佐橋が頭を抱えた。なにやら、苦虫を噛んだような表情だ。
「どうしたんだ佐橋?」瀬野が心配そうに声をかける。だが佐橋は

「…おい神坂、今すぐお前の家に行くぞ!」と言った。そのひとことで俺は全てを察した。
「――まさか、何か見えたのか?」
「…ああ。結意とかいう女、このままだと殺される! 急げ!」

瞬間、俺はダッシュしていた。二人も俺についてくる。走りながら俺は佐橋に尋ねた。

「殺されるって、誰にだよ!?」
「…落ち着けよ? お前を殺すであろう奴がだ」
「姉ちゃんが!? まさか、そんな!」
「とにかく、急ぐぞ神坂、瀬野!」
「ああ!」

姉ちゃんが俺を殺すってことすら信じられないのに、この上結意まで手にかけるというのか!?もう、訳が分からない。
とにかく、急ぐしかあるまい。そうすれば、すべてが明らかになる……自信はないけれどな。
俺は全力疾走しながら、ふと空を見上げてみた。そこに広がるのは、星ひとつ見えない濁った夜空と…不気味なくらい赤い月だった。
その赤い月は、これからの俺の運命を暗示しているかのようで………。

とりあえず、斎木に電話をしておこう。俺はブレザーの内ポケットを探った。だが手ごたえがない。
……そうだった、俺の携帯今壊れて……あれ? そういや、どうして俺の携帯は壊れたんだっけ?