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880 :最高!キネシス事務所☆ ◆mGG62PYCNk :2009/07/22(水) 19:06:42 ID:U4ivAY+h

「ご注文は何になされますか。」
「にゃんこストロベリーパフェを2つ。」
「かしこまりました。」
「………。」
俺たちは今喫茶店にいる。
シックな色の木を基調とした床や柱があり、高い天井にはよくあるプロペラみたいなやつ(名前わかんね)がゆっくりくるくると回っている。
壁にはアンティークな時計や小さなにゃんこの絵がいくつか飾られている。
全体の雰囲気としてはモダンアンティークといったところか。

人気の店だから客も結構入っている。女子高生や会社の制服を着た女性、サラリーマンが書類を広げていたりする。
小さな談笑と店内で流れているジャズが心地いい。
雰囲気に浸っていると、さっきの男性店員がパフェを運んできてくれた。

「にゃんこストロベリーパフェでございます。」
「どうも。」

彼女は喜んでくれるだろうか。今後少しでもやり易いように親交を深めたいところなんだけどな。
スプーンを手に取り、バニラと生クリームとスライスされたイチゴをすくった。バランスよくすくうのが大事なんだ。
……うまい!疲れた体に甘さと冷たさが染みる。

彼女も食べている。
「おいしい?」
「おいしいです。」
「甘いもの好き?」
「はい。」

……ふと思った。俺はがっつきすぎなんじゃないかと。アイスにではなく、彼女に。
ロリコンの変態と勘違いされてなければいいんだけど。
勝手に困惑の渦に巻き込まれていると彼女が話しかけてきた。

「……私は、あなた方のように笑ったりすることができません。」

………笑ったりすることができませんって。
しばらく考えた。というより言葉を失った。


「……どうして?」
「『施設』ではそういった教育を受けていません。私は必要最低限の日本語と超能力の訓練しか受けていません。だから笑うということを理解できません。」

なんの躊躇もなく、いつものように淡々と答えた。
…………施設、か。
おそらく島田さんや俺がいる事務所の事ではなく、島田さんに拾われる前にエリーがいた場所だろう。

笑うことができないなんて考えられない。
でも、もしかしたら喋ることも許さず笑うことも許さず、ただ超能力の訓練だけを行う施設で育てられてきたとしたら、あるいはそういう事があり得るのかもしれない。
……こんなときどういう顔をすればいいのかわからない。おそらく今の俺の顔はお通夜の日そのものだろう。




881 :最高!キネシス事務所☆ ◆mGG62PYCNk :2009/07/22(水) 19:09:15 ID:U4ivAY+h

彼女の表情や声に躊躇した様子はなかった。このまま彼女について聞いてもいいのだろうか。


………いや、今日は止めておこう。
彼女から話しかけてくれたってことは少し心を開いてくれたってことだ。もし聞きすぎて傷つけてしまったら元も子もない。

とりあえずこのお通夜ムードをどうにかしなければ。………まあお通夜ムードなのは俺だけかもしれないが。俺のスプーンは止まっているにも関わらずエリーは淡々とバニラを口に運んでいるし。


……そうだ。犯人の似顔絵を描こう。

「………?」

俺が学校の鞄を漁っているのを不思議そうに首をかしげて見ている。
ノートと筆記用具を鞄から出し、机に置いた。
「似顔絵描くって言ったろ?今から描いてやるよ。」
「頑張ってください。」

「……………できた!」
「……速すぎませんか?」

「赤がかかったセミロングで、鎖骨より少し下まである毛先がちょっとだけ巻かれてる。
服はハーフパンツにごついブーツが特徴的だった。なっ。」

俺的には特徴を捉えたつもりだった。顔のパーツはあやふやだったが、とにかくケバくてつり目だったのを表現できている。

「…………わかめか何かですか?」
「えっ。」
「わかめか何かですか?」

わかめ………?巻き髪だっつの。

エリーは軽くショックを受けた俺に追い討ちをするかのように続けた。

「こんな物ではわかりません。だいたい服だっていつも同じものを着ているとは思えません。」
「………ごめん…。」
……密かに自信があったものを否定されるってのは結構へこむよ。
……俺は静かに筆記用具を鞄へ戻した。
そういやさっきから俺の後ろの女子高生が笑ってるのは何なんだ。

それでもさっきよりも空気は和やかになったきがする。肩の荷が降りたというか。
……いや、無理矢理俺が振り落としたんだ。またいつか背負わなければいけない。

そろそろパフェも食い終わりそうだ。エリーはとっくの昔に食べ終わっている。



「人様にぶっかけといて何だよその態度はよぉ!!!」
「申し訳ございません……。」
突然後ろの方から女性の怒号が聞こえてきた。
見てみるとどうやら店員がお客さんに飲み物か何かをかけてしまったようだけど、こけた様子もないしさっきまでそんな大きい音は聞こえなかった。
店内の和やかな空気は一変、張りつめた空気になり女子高生はお互い顔を見合わせたりしている。




882 :最高!キネシス事務所☆ ◆mGG62PYCNk :2009/07/22(水) 19:11:18 ID:U4ivAY+h

「あーあー。てめー最低だよなぁ。平謝りするだけだもんなぁ。」
「………。」
よくみるとさっきパフェを持ってきてくれた男性の店員だった。かわいそうに……。
「もういい。帰る。こんなとこ二度と来ねえよ。」
吐き捨てるようにいい放ち、わざわざ観葉植物の鉢を蹴ってカウンターへ向かった。
さっきまで怒られていた店員はすぐにこけた植木を立て直し、土をもどしている。
遠くだけど、あきらかに涙目だ。


さっきのクレーマーが俺の席を横切ろうとしている。
こいつケバいなぁ。つり目で嫌味そうだ。
赤がかかったセミロングの髪で、毛先が巻かれている。


………………あれ。こいつ見たことある。
…………あ、こいつ、犯人だ!!

横切った犯人はカウンターで立ち止まることはなくそのまま外へ出ようとしている。
「お、お客様お支払を」
「てめーら人様にぶっかけといて金払わすのかよ。」
「………。」

……最低だ。人間として。
とにかく俺らも追いかけてみよう。住所がわかるかもしれない。
エリーに言おう。周りに聞かれないように静かに。

「今のやつ、犯人だ。」
「私もそう思いました。」
「追うぞ。」
「はい。」

急がなきゃ見失う。