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803 :そして転職へ:2009/07/18(土) 17:07:56 ID:62EFIxCr



明日で16になる自分に、父の記憶はない。自分が生まれる前に
死んだそうだ。また、父は光の勇者だと言われていたがそれは嘘だ。
勇者のみが扱えるといわれる稲妻の魔法。父は勇者でなかったので、
地獄のいかずちを召喚して魔物を倒していた。
父はあまたの魔物と戦い、経験をつんだのちに様々な困難に立ち
向かったともいわれるが、実際は逃げ惑う特定の魔物(銀色、硬質で体は
丸く頭が尖がり逃げ足が速い。倒したものは莫大な経験を得ることが
できる。その名はメタルスr…ごめんなさい)達に魔人のごとく斬り
かかり、殺戮の限りを尽くしてきただけだ。

そんな父は、もともと王国の一門番にすぎなかった。顔は十人並みといった
ところだったけど、剣の腕も魔法もいたって平凡。とても強そうには
見えなったらしい。ある日森にキノコを一人で取りに行った彼は魔物に
囲まれてしまい、命欲しさにこともあろうかその場で悪魔を呼び出して
契約をした。
『助けてくれ!命が助かるならどんな代償を払ってもいい!』
ならば、と悪魔は言った。
『望みどおりお前にあらゆる魔物を退ける力をやろう。ただしこれは
呪いの力、力を得たお前の血には生涯消えぬ呪いが掛かる。
おまえはお前を愛する者の手にかかって命を落とすことになるだろう。
おまえにとって愛されることはなによりも耐えがたい苦痛と死に変わるだろう。
その救われぬ魂は私がいただこう。』

そして彼は力を手に入れた。同時に呪われた運命も。



804 :そして転職へ:2009/07/18(土) 17:08:55 ID:62EFIxCr
さて、文字どおり『あらゆる』魔物を退ける呪いの力を手に入れ、
むらがる魔物たちを自分に力を授けてくれた悪魔ごと叩きのめした
彼はそのままひとり旅に出た。とくにあてもあるわけではなかったが、
この力は彼の奥底に眠っていた冒険心を呼び覚ました。
たいていの魔物は敵にならなかった。どんなに強靭な牙をもっていようと、
空が飛べようと、火が噴けようと、悪魔が授けた邪悪な呪いはそれらを
すべて根絶やしにした。戦いにおいての彼は全知全能といってもいい。
人には扱えぬ地獄のいかずちも彼は呼び寄せた。
身につけたら命を落とすような呪いの防具も彼は難なく着こなした。
左手の「破壊の剣」により散った銀色硬質ちびっこ魔物は数知れず、
右手からは魔界の炎を召喚し、暴れ狂う暗黒の火炎からなる龍が全てを…
トガシ?な…何のはなしだい?
だが、やがて簡単すぎる戦いにうんざりしてきた彼はとうとう魔王討伐
にのりだす。魔王軍は数も膨大ながら精鋭ぞろい。彼も日ごとに体の
傷が増えていった。

そんな彼にも仲間ができた。旅の途中で知り合った僧侶だ。美しく、優しい
女性だった。呪いの力により聖なる力による回復呪文が利かなくなった
彼に豊富な知識と薬草で作った薬を作ったのは彼女だ。暗黒の力を使う
彼を彼女は神職でありながらも受け入れ、常に支え続けてきた。
何?そんな完全な人間はいない?なにかしら欠点くらいあるはずだ?
…強いて挙げるなら忘れ癖があるところ。現に彼の呪いのことは覚えていても、
どういった内容の呪いかまでは一日も待たずして忘れてしまったらしい。
更に挙げるとするなら、彼女が彼に恋をしてしまったことかな。



805 :そして転職へ:2009/07/18(土) 17:10:08 ID:62EFIxCr
そんな二人に悲劇は訪れる。魔王の城までもうひと踏ん張りといったところで、
奮い立つ闘志に乗せられて、彼の口が滑ってしまう。
『もうすぐだな…。…実は俺、この戦いが終わったら○○国の王女と
結婚するんだ…。』
彼女の顔色がその時変った。止めようとする彼の手を払いのけ、森の中に
泣きながら逃げで行く僧侶。
夜になり戻ってきた彼女は、何事もなかったように焚き火をおこし夕食の
支度を始めた。彼は、彼女の泣いた理由に心当たりが無く当惑したものの、
いつもどおりに戻った彼女をみて、追及しなかった。
もう少し、焚火が強かったら…もう少し辺りが明るく照らせていたら…
彼は彼女がこっそり森から採ってきた『媚薬効果のある薬草』とか
『精がつきそうだが、副作用も半端なさそうなキノコ』『身体がしびれて
動けなくなる木のネッコ』等に気づけたのではなかろうか。
食事をたいらげた彼はしばらくのち、指一本動かぬままおいしく頂かれた。
これがこの話の語り手である自分…『ぼく』の誕生秘話。
物語はまだ続く…。

朝になって、事態はクライマックスになっていた。
体の自由が利くようになった彼に彼女は
『もう駄目、やはり心が結ばれぬのであれば意味がない。せめて心を命ごと
奪い去る。』
…といった趣旨の発言により、攻撃を仕掛けていた。
逃げ惑う彼の周りで暴走した魔力が爆発をひきおこす!
もはや賢者のレベルをも超えた彼女の猛攻に彼はついに追いつめられる。
切り立った断崖の上、あろうことか彼は足を踏み外し…

マグマ煮えたぎる火口へと落ちて行った…。

世界にとって最大の損失と言われた事件、勇者オルデガの死亡の誰も知らぬ
真相は実はこんなものだった…。



806 :そして転職へ:2009/07/18(土) 17:10:49 ID:62EFIxCr
星空を眺め、僕は思考する。
明日になれば、僕は勇者の子としてお城に連れて行かれ、勇者として魔王を
倒しに行かねばならない。逆らうことはできないだろう。
でも、僕は嫌だ。世界とか、勇者とか、魔王などどうでもよく、ただ生まれ
育ったこの町で静かに生きたいんだ!
勇者が僕の生まれ持った職業であるのなら、そこから逃げればいい。
転職してやる!
運命は自分で変えるものだ。自分の道は自分で切り開く!
この世のどこかにあるという究極の職業安定所『ダーマ』。ありとあらゆる
転職が可能になる聖地。
明日からの僕の旅の終着点にして、勇者の終わり。そして運命から解放された
「未来」の始まる場所だ。
ランプを消して、床に就く。そして決意を胸に夢の世界へ飛び込む。
勇者をやめたら僧侶になろう。神の教えに生きれば、きっともう一つの
運命からも逃れられる。
暗闇に響く心臓の鼓動。そこから送り出される血にこびりついた父と同じ呪い。
父から子へ渡された世にもおぞましい贈り物を捨て去ることで

僕は新世界の住人になる!


                   続く?